449: 2013/10/03(木) 19:57:52.84 ID:4jex6f6Lo
【なぎさ×ひかり】


「九条さん、ちょっといいかしら?」

ひかり「はい? えっと……あなたは」

「隣のクラスの……ほら、体育の時間一緒だったでしょ?」

ひかり(ああ……そういえば)

「実はね、九条さんに頼みごとがあるんだけど聞いてもらえない?」

ひかり「え?」

「この手紙を……美墨先輩に渡してほしいの」

ひかり「なぎささんにですか?」

「そう。あなた確か美墨先輩と仲が良かったわよね?」

ひかり「はい、そうですけど…」

「お願い九条さん! 九条さんにしか頼める人がいないの!」

ひかり「分かりました。じゃあこの手紙、なぎささんに渡しておきますね」

「ありがとう九条さん!」

ひかり(この手紙……何の手紙だろう)
第11話 力を一つに!ミラクルヒーリング!
450: 2013/10/03(木) 19:58:26.01 ID:4jex6f6Lo
・・・・・・

アカネ「いらっしゃーい。あれ、今日はほのかいないの?」

なぎさ「部活で残るらしくて。たこ焼きひとつ」

アカネ「あいよ」

ひかり「なぎささん」

なぎさ「ああ、ひかり。お疲れさま」

ひかり「実はなぎささんに渡したいものがあるんです」

なぎさ「渡したいもの? あたしに?」

ひかり「この手紙なんですけど。隣のクラスの女子に頼まれて」

なぎさ「……あ~、そっか。なるほどね」

ひかり「なんの手紙なんですか?」

なぎさ「いや、何の手紙っていうか……いわゆるその……」

アカネ「ラブレターってやつ?」

なぎさ「ちょっ、アカネさん!」

ひかり「ラブレター?」

アカネ「まったくなぎさはモテモテで羨ましいですねー。このこの」

451: 2013/10/03(木) 19:59:04.08 ID:4jex6f6Lo
なぎさ「からかわないでくださいよ! ……女の子からラブレター貰ってもねぇ」

ひかり「ラブレターって、好きな人に想いを伝えるために書く手紙ですよね。そんな手紙をもらえるなんて、素敵ですね」

なぎさ「いや、素敵っていうかさ……確かに気持ちは嬉しいよ? でもね……」

ひかり「でも?」

なぎさ「女の子からじゃあね……」

ひかり「女の子からじゃダメなんですか?」

なぎさ「いや、そりゃあまぁ……ああもう、この話はおしまい!」

ひかり「読まなくてもいいんですか?」

なぎさ「いいのいいの、読む必要なし。受け取れないよ、この手紙は」

ひかり「はあ」

なぎさ「アカネさーん、たこ焼きまだー?」

ひかり「……」

452: 2013/10/03(木) 19:59:30.39 ID:4jex6f6Lo
・・・・・翌日

「あっ、九条さん!」

ひかり「あ……」

「昨日の手紙、美墨先輩に渡してくれた?」

ひかり「は、はい。一応……」

「それで、美墨先輩はなんだって?」

ひかり「それが……受け取れないそうで」

「えっ……?」

ひかり「ごめんなさい、ちゃんと渡しておいたんですけど……」

「そ、そっか……分かった」

ひかり「……」

「……ねえ、本当に渡してくれたの?」

ひかり「え?」

「まさか、あの手紙渡してないなんてことはないでしょうね?」

453: 2013/10/03(木) 19:59:59.30 ID:4jex6f6Lo
ひかり「いえ、確かに渡しました」

「九条さんってさ、よく美墨先輩と一緒にいるけど……なんであんなに仲がいいわけ?」

ひかり「それは、えっと……」

「もしかして九条さんってさぁ美墨先輩と……」

ひかり「え?」

「……いいえ、なんでもないわ。ご、ごめんなさい変なこと言って……じゃあ」

ひかり「あ……」

ひかり「……」

ひかり(彼女……どうしてあんなに)

454: 2013/10/03(木) 20:00:25.56 ID:4jex6f6Lo
……ひかりの家

ひかり「……」

アカネ「ひかり、どうしたの? なんか神妙な顔しちゃってさ。悩み事?」

ひかり「アカネさん……昨日のことを考えてて」

アカネ「昨日のこと?」

ひかり「ラブレターの……」

アカネ「ああ、あれね。あれがどうかした?」

ひかり「今日そのラブレターの子に昨日のことを話したんです。そしたらその子、ひどく落ち込んじゃって……」

アカネ「ふーん」

ひかり「やっぱりあの手紙、なぎささんは読んであげるべきだったんじゃないでしょうか」

アカネ「うーん、そうだねぇ……読んであげても結果は変わらなかったと思うよ。相手が女の子じゃねぇ」

ひかり「どうしてですか?」

アカネ「うん? いやぁ……ひかりには分かんない?」

455: 2013/10/03(木) 20:01:25.93 ID:4jex6f6Lo
ひかり「?」

アカネ「そもそもさ、ラブレターっていうのはお付き合いをお願いするために渡す手紙でしょ?」

アカネ「普通はさ、付き合うっていったら男と女がするわけじゃない? それが恋ってやつよ」

ひかり「恋……」

アカネ「でもたまにっていうか、思春期特有っていうか……女の子が女の子に恋する時があんのよ。まぁ一種の発作みたいなもんなんだけどね」

アカネ「けどやっぱさ、それは普通じゃないわけで。だからなぎさも断ったわけ。あの子の場合は頻繁に同性の子からラブレターもらうみたいだし、そこらへんもう慣れたっていうかウンザリしてるんじゃない?」

アカネ「それに女の子同士の恋って錯覚みたいなものがほとんどだし、付き合ってもどうせ長続きはしないだろうねー。お互い不幸になるだけじゃない」

ひかり「……」

アカネ「あはは、ひかりにはちょっとそういう話は早かった?」

アカネ「まぁ、好きすぎちゃって憧れが恋だと錯覚しちゃうってことなのよ。要するに勘違いの恋ってやつ? その子もたぶん、しばらくしたら夢から覚めるわよ」

ひかり「夢……」

ひかり(好きなのは……錯覚……)

456: 2013/10/03(木) 20:01:51.73 ID:4jex6f6Lo
……ひかりの部屋

ひかり「……」

ポルン「ひかり、どうしたポポ?」

ひかり「ねえポルン……なぎささんのことは好き?」

ポルン「なぎさはすきポポ」

ひかり「わたしも好き。けどあの子の場合はわたしの好きとは違うみたい」

ポルン「ポポ?」

ひかり(恋って……どういうことなんだろう)

ひかり(わたしのなぎささんに対する気持ちとはどう違うのかな……)

457: 2013/10/03(木) 20:02:19.84 ID:4jex6f6Lo
・・・・・翌日

なぎさ「じゃあ10分休憩ね。終わったらまた全体練習はじめるから」

「「「はーい!!」」」

なぎさ「はぁ、一息つこっと。……ん?」

なぎさ(あれは……)

なぎさ「ひかり! おーい!」

ひかり「なぎささん」

なぎさ「なに? 練習見てたの?」

ひかり「はい。なぎささんかっこよかったですね」

なぎさ「あはは、なんか照れちゃうな。これからタコカフェのお手伝い?」

ひかり「はい。でも……もう少しなぎささんの練習見ててもいいですか?」

なぎさ「ん? 別にいいけど、面白くもなんともないよ?」

ひかり「いえ、いいんです。なぎささんのことをもって見ていたいから」

なぎさ「へ? どうしたのよひかりってば、あはは。あっ、じゃあ時間だしそろそろ戻るね」

ひかり「はい」

458: 2013/10/03(木) 20:03:05.61 ID:4jex6f6Lo
なぎさ「パスパース! もっと早く上がってー!!」



ひかり「……」

「こんな所で何をしてるの?」

ひかり「!!」

「……」

ひかり「あなたは……」

「やっぱりあなた、美墨先輩に目をつけてるんじゃないの」

ひかり「え?」

「美墨先輩に近づこうとする私を邪魔するために、ラブレターも渡さなかったんでしょ!?」

ひかり「そ、そんなことは……」

「ずるいわよ……そんなの」

ひかり「……あの、人のことを好きになるのは素晴らしいことだと思います」

ひかり「でも、女の子同士じゃやっぱり普通じゃない……らしいんです」

459: 2013/10/03(木) 20:04:06.34 ID:4jex6f6Lo
「……何が言いたいわけ?」

ひかり「その好きだっていう気持ちは、恋とは違うもので……勘違いの恋はお互い不幸になるだけだってアカネさんが……」

「ッ……!! バカにしないでよ!!」

ひかり「!?」

「勘違いの恋ですって? 違うわ! 私は真剣なの、真剣に美墨先輩のことが好きなの!!」

ひかり「あ……えっと……」

「それなのに私がどれだけ本気かも知らないで……よくもそんなこと言えるわね!!」

ひかり「あの……ご、ごめんなさい」

「あなたは一体美墨先輩の何なのよ!? いっつも美墨先輩にひっついて、なんであなたなんかが先輩の隣にいられるわけ!?」

ひかり「それは……」

ひかり(なぎささんとはプリキュアで、一緒に戦ったりする仲間で……)

「ずるいわ……なんであなたばっかり……」

ひかり「……」

「いいいわよ……だったら直接告白するから」

ひかり「え?」

「私はあなたにも雪城先輩にも負けない! 私が美墨先輩の一番になるんだから!!」タタタッ

ひかり「あ……」

ひかり「……」

460: 2013/10/03(木) 20:04:35.09 ID:4jex6f6Lo
・・・・・翌日

ひかり(昨日の彼女……あれからどうしたんだろう)

ひかり(わたし……ひどいことを言っちゃったのかも。今度もう一度謝りにいこう)

ひかり(……あんなに怒るなんて、よっぽどなぎささんのことが好きってことなのかな)

ひかり(人のことをあれだけ好きになれるなんて……)

ひかり「……」

『あなたは一体美墨先輩の何なのよ!?』

ひかり(わたしは……なぎささんの何なんだろう。わたしにとってなぎささんって一体……)

ひかり「……あっ」




「……」

461: 2013/10/03(木) 20:05:03.23 ID:4jex6f6Lo
ひかり(あの子……あんなところにいた。せっかく出会えたんだし、昨日のことを謝らなきゃ……)

ひかり「……!!」




なぎさ「……」

「……」




ひかり(あれは……なぎささん!? なぎささんもいる!)

ひかり(ふたりで……何を話しているんだろう)

ひかり「あ……」




「ひっぐ……ぐずっ」タタタッ

462: 2013/10/03(木) 20:05:44.90 ID:4jex6f6Lo
ひかり(あの子……泣きながら走って行っちゃった……)

ガサッ

なぎさ「!!」

ひかり「あ……」

なぎさ「ひ、ひかり……!! なんでここに!?」

ひかり「なぎささん……その、たまたま通りかかって……」

なぎさ「……もしかして今の見てた」

ひかり「……は、はい」

なぎさ「あはは……ご覧の通りよ。あの子に告白されちゃったの」

ひかり「告白……」

なぎさ「それで、振っちゃった。例のラブレターの子でしょ? ひかりのこともちゃんと話しておいたわよ。誤解だって、伝えておいたから」

ひかり「……あの子、泣いてましたね」

なぎさ「え? まぁ……しょうがないって。あたしだってあの子の告白にOKするわけにはいかないしさ」

ひかり「……」

ポツ……ポツ……

なぎさ「ん?」

……ザアアアアアアア

なぎさ「うわっ!! いきなり雨!?」

463: 2013/10/03(木) 20:06:13.31 ID:4jex6f6Lo
・・・・・

なぎさ「ここで雨宿りしよ!」

ひかり「は、はい!」

なぎさ「はぁ~全く……最悪。急に雨が降るなんて」

ひかり「すごく降ってますね」

なぎさ「しばらくしたらおさまるかなー……あっ、ひかり。タオル使う?」

ひかり「え?」

なぎさ「ほら。風邪ひくよ」

ひかり「あ、ありがとうございます」

なぎさ「……」ゴシゴシ

ひかり「……」

なぎさ「……あたしさ、今までにも女子に告白されたこと何回もあるのよね」

ひかり「え?」

なぎさ「その度に断ってさ、それで泣いちゃう女の子もいてさ。なんだか申し訳ないなぁってのは思うんだけど」

なぎさ「しょうがないんだよね……どうしても」

464: 2013/10/03(木) 20:06:46.29 ID:4jex6f6Lo
ひかり「……」

ひかり(なぎささん、辛そうな顔……。そっか、なぎささんも辛いんだ)

ひかり(人の好意を断らなきゃいけないなんて、なぎささん本人もきっとすごく悲しいはず……)

なぎさ「……」

ひかり(……わたしにとってなぎささんは、いつも傍で支えてくれる人。わたしに笑顔と勇気をくれる)

ひかり(今までなぎささんと一緒にいたからこそ、わたしは今のわたしでいられる……)

ひかり(なぎささんはわたしにとって掛け替えのない大切な人……わたしはなぎささんの力になってあげたい)

ひかり「な……なぎささん!」

なぎさ「?」

ひかり「あ……えっと」

ひかり「わたし、なぎささんのためなら何だってします! だから……なんでも言ってください!」

なぎさ「ええ? ちょっと……ひかり、いきなりどうしたの?」

ひかり「わたし……なぎささんに元気になって欲しいんです。いつもお世話になってるから……今度はわたしが、なぎささんを笑顔にできたらなって」


465: 2013/10/03(木) 20:07:22.69 ID:4jex6f6Lo
なぎさ「……ぷっ、あははは」

ひかり「……?」

なぎさ「ありがと、ひかり。その気持ちだけで嬉しいよ」

ひかり「なぎささん……」

なぎさ「けどそんなこと考えなくてもいいって。あたしはひかりと一緒にいられるだけで充分幸せだよ」

ひかり「――……っ」ドキッ

ひかり(あ、あれ……?)

なぎさ「ひかりはあたしの大切な友達だもん。それにむしろいつもお世話になってるのはあたしの方だって、あはは」

ひかり(なぎささん……笑ってくれた)

ひかり(そうだ……わたし、なぎささんのこの笑顔が)

ひかり(とても好きなんだ……)

なぎさ「おっ、雨止んだみたい」

ひかり(いつも真っ直ぐな瞳でわたしのことを見てくれて、わたしのことを受け止めてくれる……)

ひかり(そんななぎささんが笑ってくれると……わたしも嬉しくなる……)

ひかり「……」

ひかり(……だけど)

466: 2013/10/03(木) 20:07:51.30 ID:4jex6f6Lo
なぎさ「うーん、でもまだ曇ってるなぁ。もしかしたらまた降ってくるかも。今のうちに早く帰ろっか、ひかり」

ひかり(さっきあの気持ち……なんだったんだろう)

なぎさ「ひかり?」

ひかり(あの、胸の高鳴りは……)

なぎさ「おーい、ひかりってば」

ひかり「は、はい!」

なぎさ「早く帰ろ。雨止んでるしさ」

ひかり「あ……はい」

なぎさ「……ひかりは優しいよね」

ひかり「え?」

なぎさ「あたしのためだけじゃなくてさ、ラブレターの子のことも想って悲しんでたでしょ?」

なぎさ「あたしひかりのそういう優しいとことろ、大好きだよ」

ひかり「!!」

467: 2013/10/03(木) 20:08:41.02 ID:4jex6f6Lo
なぎさ「さ、じゃああたしはもう帰るね。ばいばいひかり、また明日」

ひかり「は……はい……」

ひかり「……」

ひかり(分からない……なんがか急に変な気持ちに)

ひかり(心臓の鼓動が、どんどん大きくなっていく……顔が熱い)

ひかり(なんで……なんだろう)

ひかり「……」

ひかり(もしかしてこれが……この気持ちが……)

ひかり(……だけど)

『好きすぎちゃって憧れが恋だと錯覚しちゃうってことなのよ。要するに勘違いの恋ってやつ? その子もたぶん、しばらくしたら夢から覚めるわよ』

ひかり「っ……」

アカネさんの言葉を思い出したら、自分の気持ちを素直に受け止めるのが怖くなってそこから一歩も動けなくなった。
……今ならあの子気持ちが痛いほど分かる。
結局答えも出せないなまま、わたしは再び降り始めた雨の中ずぶ濡れになりながら立ちすくんでいた。


おわり

引用: 安価で指定されたカプで短編プリキュア百合SSを書く