597: 2015/03/03(火) 22:06:34.19 ID:T8EPxVZ/0


~雛祭りの鎮守府~

提督(いきなりで悪いが俺の話を聞いてくれ。今、俺はとても大変な状況に陥っているんだ)

提督(状況をしっかり伝えたいのはやまやまなんだが、生憎俺にも何が何だかさっぱり分からねえ。まるでスタンドでも使われたような気分だぜ)

提督(だが僅かなりとも俺が分かっていることもある。それは――――)

鈴谷「提督」

夕立「大人しく」

瑞鳳「迅速に」

秋月「誰か選んでください」

加賀「提督は」

山城「誰と」

漣「一緒になりたいんですか?」

提督(――――命の危機に晒されているということだ!)
Model Graphix ARCHIVES 艦隊これくしょん 「艦これ」2
598: 2015/03/03(火) 22:12:07.67 ID:T8EPxVZ/0
~十分前~

デキター!

提督「ありがとう妖精さん。ご苦労様」ナデナデ

エヘヘー

榛名「提督?何ですかこれ」

提督「雛壇だよ雛壇。今日は雛祭りだろ?」

榛名「正確には桃の節句というんですけどね」

提督「こまけぇこたあいいんだよ。で、折角だから用意してもらった」

榛名「提督にしては珍しく気が利きますね。ですがこれ……」

ドーン ←巨大な雛壇

榛名「……大き過ぎません?」

提督「まあな。これは普通の雛壇みたいに人形を飾るんじゃなくて、人が乗るタイプの奴だから」

榛名「ああ、四コマからパクったんですね」

提督「せめてパロディと言え」

599: 2015/03/03(火) 22:17:53.80 ID:T8EPxVZ/0
榛名「で、誰がどの役をやるんです?」

提督「それはまだ決めてない。全員集めてから話し合おうかと思って」

榛名「そうですか。でも、そうすると少し荒れそうですね」

提督「え?なんで?」

榛名「だって男性は提督一人なんですからお内裏様は提督に決定。じゃあ残るお雛様を誰がやるか――――」

鈴谷「あたしがやるっ!」シュバッ

提督「おわっ!鈴谷!?どっから出てきた!?」

鈴谷「細かいことは気にしない!それより、提督がお内裏様やるならあたしがお雛様やる!いいでしょ!?」

提督「俺は別にいいが……」

鈴谷「ホントっ!?じゃあ早速――――」

???『ちょっと待ったあ!』バンッ

600: 2015/03/03(火) 22:25:29.02 ID:T8EPxVZ/0
夕立「話は聞かせてもらったっぽい!」

瑞鳳「私だってお雛様やりたい!」

秋月「あ、あの秋月は別にその……あの……」///

加賀「ここは譲れません」

山城「提督がお内裏様、私がお雛様。つまり二人は夫婦……!ふふ、幸せだわ」

漣「ここはやはりご主人様の初期艦でメイドの漣がやるべきでしょう」

提督「え、いや、全員交代でやればいいんじゃないの?」

榛名「じゃあ誰が一番最初にやるかは提督が決めてくださいね?」

提督「ファッ!?」

榛名「いやー、誰が選ばれんでしょうね。一番最初ということはそれすなわち一番一緒にやりたい人。ひいては一番提督に好かれてる人ということにもなるかもしれませんねー」ニヤニヤ

艦娘たち『!』ガタッ

提督「殺気!?」

提督(こうして冒頭に至るのであった)

601: 2015/03/03(火) 22:32:40.93 ID:T8EPxVZ/0
榛名「で、提督は誰を選ぶんですか?」

艦娘たち『!』ジー

提督「え、えーっと……」

提督(どうする!?どうすればいい!?考えるんだ!考えるんだ俺!)

提督(この場における最適解。すべてを解決するたった一つの冴えたやり方は――――)

提督「これだああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」ダッ

鈴谷「あ、逃げた!」

夕立「逃がさないっぽーい!」

加賀「艦載機、全機発艦!」

提督「妖精さん!間宮のアイス一週間分で足止め頼んだ!」

タノマレタ!

ガンバルー

シャッシャッシャッドーン

榛名「あーこれは逃げられましたねー」

漣「追えー!追うんだー!隠れてるようなら草の根分けてでも探し出せ!」

瑞鳳「彩雲、行って!」

秋月「長10cm砲ちゃん!行こう!」

山城「逃げられるなんて不幸なことにはさせないわ!」

602: 2015/03/03(火) 22:45:50.00 ID:T8EPxVZ/0
~街中~

提督「こ、ここまで来れば流石にもう大丈夫だろう……」

提督(なんていうかもう疲れた……なるべくトラブルに関わらないように適当にブラついて、落ち着いた頃合いを見計らって帰ろう……)

提督「さて何か暇を潰せそうなものは、と……」キョロキョロ

ヤミナ「はむはむ」モグモグ

提督「……」

提督(どうしよう。すごく見なかったことにしたい)

提督(どうしてこう、トラブルを避けて通ろうとすると更なる厄介ごとに巻き込まれるのか。何なの?主人公体質なの?その割にはちっともモテねーぞこら)

提督「気づかれないうちに通り過ぎよう」スタスタ

ヤミナ「あ、提督じゃないですか!どうしたんですか!もしかしなくても私に会いに来てくれたんですか!やーん感激です!」ブンブン

提督(目聡過ぎいいいいいいいいいい!!!!!!!!さっきまで一心不乱にクレープかっ込んでたくせに、なんで後ろを通り過ぎようとしたら見つけるんだよバカ!)

603: 2015/03/03(火) 22:57:11.87 ID:T8EPxVZ/0
提督「よ、ようヤミナ、奇遇だな」

ヤミナ「はいそうですね!今日のこの出会いはまさに運命!提督と私は早く結婚するようにという神のお告げに違いありません!」

提督「じゃ、そういうことで」サッ

提督(これ以上関わったらアウトだ。いいな?)

ガシッ

提督「へ?」

ヤミナ「折角会ったんですからデートしましょう!そうしましょう!いざ私達の思い出の一ページを紡ぎにレッツゴー!」ダダッ

提督「ノリが意味不明な上に走る速度速すぎて酔うから今すぐ離せええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

609: 2015/03/03(火) 23:09:23.27 ID:T8EPxVZ/0
ヤミナ「提督!見てください!菱餅ですよ菱餅!」

提督「そうだねー菱餅だねー(棒)」

ヤミナ「美味しいです!」モグモグ

提督「赤城か!」

ヤミナ「提督?私とデートしてるのに他の女の名前を出すんですか……?」

提督「すみませんでしたッ!」

ヤミナ「はい、反省しているなら良しです。ほら提督、あーん」

提督「むぐっ!?もぐもぐ……餅だな」

ヤミナ「菱餅ですから♪」ニコニコ

610: 2015/03/03(火) 23:14:27.86 ID:T8EPxVZ/0
ヤミナ「ひなあられもあります!」

提督「……食わないのか?」

ヤミナ「食べたいですけど……お金が、ちょっと」

提督「そう言えばお前って金どうしてんの?」

ヤミナ「色々ですよ。頼みごとを聞いたお礼に頂いたり、取った魚やキノコ、鳥などを売ったり……」

提督(それって条例違反じゃ……)

ヤミナ「うう~でもやっぱり食べたいです~」グムム

提督「……はあ」

提督「すみません、これ一袋ください」

店員「はーい。毎度ありー」チャリーン

提督「ほら」

ヤミナ「え?」

提督「食いたかったんだろ?」

ヤミナ「で、でも」

提督「さっきの菱餅の礼だから気にすんな」

ヤミナ「……ありがとうごさいます!」

提督(というかやっぱり店員はあの姉妹か……マジで何人いるんだあの人の姉妹って)

611: 2015/03/03(火) 23:23:25.68 ID:T8EPxVZ/0
ヤミナ「あ、白酒もありますよ!ほら!」グイグイ

提督「あんま引っ張るなって……つーかさっきから食い物とか飲み物ばっかだな」

ヤミナ「お祭りですから!」

提督「飲み過ぎて酔っぱらうなよ?お前は着任したての時期に飲み過ぎて大暴走したんだから」

ヤミナ「今なら酔っても提督を襲うか提督に襲われるかの二択なのでむしろ積極的に酔っていきます!」

提督「襲わせねえし襲わねえよ!?」

ヤミナ「ぷはー。もう一杯!」

提督「既に飲んでる!?わんこそばみたいなノリで飲むんじゃありません!」

ヤミナ「てーとくー。私、なんだか体が熱くなってきちゃいました。そこのホテルで休みましょう?」

提督「ラブホとか絶対に無理だから!」

ヤミナ「ぶー。いいもん、ここで脱いじゃうもん」ヌギヌギ

提督「やめい!」

ヤミナ「やだー暑いー」ヌギヌギ

提督「にしたってこんな観衆目線の中で……ええい!」グイッ



提督「俺以外にお前の身体を見せんなつってんだよ」ボソッ

ヤミナ「!」キュン



ヤミナ「て、提督……」ドキドキ

提督「分かったらさっさと服直せ。先行くぞ」

ヤミナ「あ、は、はい!」///

612: 2015/03/03(火) 23:29:07.94 ID:T8EPxVZ/0
ヤミナ「やっぱり雛祭りと言ったらこれですよね!雛人形!」

提督「これには今日だけで既に嫌な思い出が出来たよ……」

ヤミナ「?」

提督「いや、こっちの話」

ヤミナ「それにしても綺麗ですよねー……」

提督「そうだな……ん、あれは」

ヤミナ「どうかしましたか?」

提督「何でもない。ちょっとトイレ行ってくる」

ヤミナ「?はい、いってらっしゃいませ」

613: 2015/03/03(火) 23:38:06.79 ID:T8EPxVZ/0
~そして夜~

ヤミナ「今日は楽しかったですね!」

提督「まあ、そうだな」

ヤミナ「いっぱい色んなことして遊びましたし!」

提督「トイレから戻ってきたらお前が雛人形作ってたのが一番印象的だったよ」ククッ

ヤミナ「あはは、じっと見てたら声を掛けられて……作ったと言っても、小型のストラップのですし」

提督「それでも充分に凄いさ」

ヤミナ「……照れます」///

提督「ん?」

ヤミナ「な、何でもありませんよ!それより、何でしょうあれ!」

提督「あれは……雛流しだな」

ヤミナ「雛流し?」

提督「祓い人形って人形を流して身を清める、っていう一種の禊みたいなもんだ」

ヤミナ「禊……」

提督「興味あるのか?」

ヤミナ「少しだけ」

提督「そっか、まあそんな巫女みたいな格好してるわけだしな。やってみるか?」

ヤミナ「はいっ!」

614: 2015/03/03(火) 23:43:58.73 ID:T8EPxVZ/0
ヤミナ「わあっ、いっぱい流れてますね」

提督「この光景は圧巻だな。mooi」

ヤミナ「綺麗です……」

提督「ほら、お前も早く流せよ」

ヤミナ「そうですね」ナガシナガシ

ヤミナ「……」

提督「……」

ヤミナ「……提督」

提督「何だ?」

ヤミナ「今日は、ありがとうございました」

提督「どうした急に」

ヤミナ「無理矢理付き合せたのに、最後まで付き合ってくれて」

提督「無理矢理って自覚はあったんかい」

ヤミナ「これは、そのお礼です」カラン

提督「これは……さっきのストラップ」

ヤミナ「はい。私手作りの雛人形ストラップです。大切にしてくださいね?」

615: 2015/03/03(火) 23:52:08.70 ID:T8EPxVZ/0
提督「……実は、俺からもお前に渡すものがある」

ヤミナ「へ?」

提督「俺に付き従ってくれてありがとう。未熟だった俺を支えてくれてありがとう」

提督「俺を守ろうとしてくれてありがとう。俺が氏にそうになったとき、涙をこぼして悲しんでくれてありがとう」

提督「こんな俺を好きになって、好きでい続けてくれて」



――――本当に、ありがとう



ヤミナ「提、督」

提督「やっぱちょっと恥ずかしいな、こういうの」ポリポリ

 愛しい人から差し出された、一輪の桃の花は

暗い夜の中でもなお、月の光を受けて光り輝き

 少女の心を

甘く、甘くときめかせる

ヤミナ「……私こそ、今までずっと、ありがとうございました」

ヤミナ「そしてこれからもずっと、よろしくお願いします」ペコリ

提督「……!」キュン

提督「おうっ!」ニコッ



 桃の花の花言葉。それは――――

ヤミナ(――――『わたしはあなたのとりこ』。でも、今の提督はそんなこと考えないで渡したんでしょう)

 でも

ヤミナ「いつか絶対、本当にあなたをとりこにしてみせますからね、提督」

提督「何か言ったか?」

ヤミナ「いいえ、なーんにもっ!」ニコッ

616: 2015/03/03(火) 23:54:03.12 ID:T8EPxVZ/0
~提督の脳の一部が拡張されました~

対象:ヤミナ

恋愛度:☆2

状態:忘れかけていた想い

617: 2015/03/03(火) 23:56:10.80 ID:T8EPxVZ/0
今日はこれにて終了!久しぶりにまっとうな恋愛描写書いた気がする!鈴谷の時以来だな!

次回はたぶん佐世保(ヴェルのとこ)の話やって、金剛の小ネタやります。たぶん

話の感想だけでなく、安価やコンマの取り方についても何か意見ありましたら遠慮なく挙げてください


榛名「榛名恋愛相談所」54人目

引用: 榛名「榛名恋愛相談所」 天龍「2件目だぜ!」