695: 2015/03/14(土) 20:41:46.73 ID:WVG6/4Wo0


――――これは、かつてあったお話

「私は、幸運艦なんかじゃない」

――――異世界から来た勇敢な少年と、幸運と言われた鶴の少女のお話

「でも、僕はそのままでいいと思うけど」

――――この世界でただ一人、彼女だけが覚えているお話

「これをあげる。運が良くなるお守りなんだってさ」

「ゆ、指輪っ!?い、いらないわよこんなの。こういうのは好きな人にあげなさい」

「?僕、キミのこと好きだけど?」

「なっ!ば、バカ!」

「うわわっ!なんで艤装展開するの!?」

「うるさいうるさいうるさい!全機爆走、準備出来次第発艦!目標!目の前にいる天然女たらし!やっちゃって!」

――――この話は、メインストーリーじゃない。私は、メインヒロインじゃない。でも、これは――――



「私の、大切な思い出だから」



語られることのなかった一ヵ月間。その一端が、ついに語られる――――!

「未熟者の勇者くん?あなたのことは、私が守ってあげるわ」

「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ、瑞鶴」

「任せなさい!瑞鶴には、幸運の女神がついていてくれるんだから!」



特別編:「私の、大切な思い出」。明日投稿!
Model Graphix ARCHIVES 艦隊これくしょん 「艦これ」2
701: 2015/03/15(日) 22:08:29.64 ID:ka6L50uX0
初めて会った時は、特に何も思わなかった。一対一でお互いにお互いを意識した上での邂逅ではなかったし、あの頃の私は他人にあまり興味が無かった



勇者「えっと、今日からここでお世話になる勇者です。よ、よろしくお願いします」オロオロ



翔鶴「狼狽えてる……たくさんの人を目の前にして緊張しちゃってるのかしら」

瑞鶴「そうなんじゃない?」

翔鶴「瑞鶴はあまり興味が無さそうね」

瑞鶴「まあね。じゃ、私は先に出てるから。提督に何か言われたら適当に誤魔化しておいて」スタスタ

翔鶴「あ、瑞鶴!待ちなさい!――――もう、あの子はいつもああなんだから……」

702: 2015/03/15(日) 22:24:14.68 ID:ka6L50uX0
私は強くなりたかった。誰よりも強くなって、誰をも守れるようになりたかった。

瑞鶴「せい、やっ!」

クリティカル!

瑞鶴「ふぅ……」

高雄「お疲れ様です。タオルどうぞ」つタオル

瑞鶴「ありがと」

高雄「流石は最新鋭空母の翔鶴型。五航戦の瑞鶴さんですね。相変わらず惚れ惚れするような爆撃です」

瑞鶴「私なんてまだまだよ」

高雄「そんなに謙遜しなくても……」

瑞鶴「謙遜なんかじゃないわ。本当に、まだまだ……!」

高雄「……」

仲間が沈んたという報告、自分の目の前で氏んだ姉。数々の記憶が蘇ってくる。

瑞鶴「っ!」

それらを振り切るように、強く強く。何度も弓を引く。

高雄「……」

その姿を、高雄が慮るような視線で見つめていた。

703: 2015/03/15(日) 22:30:00.78 ID:ka6L50uX0
そして、彼に出会った。

瑞鶴(しまった……少し、根を詰め過ぎたかも……)

その日はたまたま体調が悪かった。それなのに無理をして訓練をしたためか、足元がふらつく。

瑞鶴「大丈夫、まだ、大丈夫……」

そう言い聞かせながら歩くも、次第に眩暈は酷くなり、やがて――――

瑞鶴「あ」

真正面から倒れる。咄嗟に手を出して体を支えようとするが、まったく動く気配がしない。

瑞鶴(やばっ!ぶつかる……)

というところで

バフッ

瑞鶴「へ?」

勇者「だ、大丈夫?危ないよ?」

704: 2015/03/15(日) 22:39:47.67 ID:ka6L50uX0
瑞鶴「だ、大丈夫よ」

勇者「でも……」ピタッ

瑞鶴「ひゃわっ!」

勇者「……うん、これはアウトだね。えっと、医務室はどこだっけ……?」

瑞鶴「な、何なの!」

勇者「キミ、熱があるじゃないか。こういう時はベッドで横になって安静にしてなきゃダメなんだよ」

瑞鶴「へ、平気よこれくらい!いいから離しなさい!」

勇者「ダーメ。それより医務室の場所を教えてくれない?春雨がいれば聞けたんだけど、今いないし」

瑞鶴「……行くなら私ひとりで行くからいいわよ」

勇者「そう言って行かないんだろ?ほら、いいから早く教えて」

瑞鶴「……」プイッ

勇者「……はあ。じゃあ仕方ない。誰か探して聞くしかないか」ヒョイッ

瑞鶴「ちょ、な、何してるの!?」

勇者「何って……こうしないと運べないじゃないか」 ※お姫様抱っこ中です

瑞鶴「バカ!いいから早く降ろしなさい!」

勇者「却下。さて、それじゃあ早速人を探そう」

瑞鶴「な、この状態で人に会うとか……!無理無理無理無理!絶対無理!恥ずかしすぎて氏んじゃうってば!おーろーせー!」ジタバタ

勇者「あそこの部屋に人がいそうな……」

瑞鶴「ぎゃー!分かった!教えるわよ!教えるからなるべく人に会わないようにしなさーい!」



結局、私が大声を出したせいで部屋にいた陸奥に見つかってしまい、ニヤニヤされることになったのだったか。あれは恥ずかしかった

710: 2015/03/18(水) 20:18:32.21 ID:uUekJSHX0
私が倒れかけてから数日後。食堂にて彼を発見した

あの時のことを少し根に持っていた私は、後ろから近付いて驚かせてやろうとこっそり忍び寄った

瑞鶴「……」ソロリソロリ

勇者「もぐもぐ」

瑞鶴「……てやっ!」

勇者「うわっ!?」

勇者「……って、なんだキミか。もう具合はいいの?」

瑞鶴「なんだとは何よ。てゆーか落ち着くの早過ぎ。全っ然面白くない」

勇者「そんなこと言われても……とりあえず、ピーマン食べる?」

瑞鶴「この流れで嫌いな食べ物を他人に押し付けようとするの!?」

勇者「いや、別に嫌いじゃないよ。ただちょっと苦手なだけで」

瑞鶴「それを嫌いって言うんだと思うけど……まあ、貰ってあげるわよ。私の方が年上だしね」

勇者「ありがとう。えっと……」

瑞鶴「瑞鶴よ」

勇者「ありがとう、瑞鶴。はい」アーン

瑞鶴「えっ?い、いいわよ。私もどうせお昼食べるし、その時にこっちの皿に移しなさいよ」

勇者「それもそっか」

瑞鶴「じゃ、じゃあ取って来るわね」スタスタ

瑞鶴(なんでちょっと残念って思ってるんだろう、私)

715: 2015/03/22(日) 20:59:54.84 ID:Im8nH42G0
ある日。私は出撃して怪我を負った

ドックで休んでいると、彼がやってきた

勇者「怪我は大丈夫?」

瑞鶴「……平気よ、これくらい。小破なんて怪我のうちに入らないわ」

勇者「小破だったんだ」

瑞鶴「ええ」

勇者「そっか。ラッキーだったね。そういえば瑞鶴は『幸運艦』って呼ばれてたんだっけ」

瑞鶴「っ!」

勇者「どうしたの?」

瑞鶴「……じゃない」

勇者「へ?」

瑞鶴「私は、幸運艦なんかじゃない」

言ってから自分の声の低さに驚いた。苛立ちが、抑えきれなかった。

瑞鶴「私はラッキーなんかじゃない。いつだって、私は誰かの不運を見てきた」

瑞鶴「私を狙った弾が偶然逸れて、他の誰かに当たる。私の上空だけが荒れて、敵の爆撃機が他の誰かに向かう」

瑞鶴「私はそんな誰かを、見続けてきた」

勇者「瑞鶴……」

瑞鶴「中破する子がいた。大破することがいた。航行不能になって雷撃処分される子もいた。もちろん……轟沈する子だっていた」

瑞鶴「親しい人たちがどんどんいなくなっていって、自分だけが残される。そんなことを、私は幸運だなんて思わない」

瑞鶴「『瑞鶴』は幸運艦なんかじゃない。ただの、呪われた船よ」

716: 2015/03/22(日) 21:10:28.76 ID:Im8nH42G0
これは紛れもない、私の本心だった。

誰かの不幸を代償にした幸運。それは最早ある種の呪いだ。

瑞鶴「『氏神』なのよ、私は」

自分以外を犠牲にする『氏神』。私は自分をそう定義づけていた

でも、だからこそ

瑞鶴「私は、強くなりたかった」

誰も犠牲にしなくていいような、誰かの不幸を遮れるような

そんな強さが欲しかった

瑞鶴「なのに、全然ダメなの」

瑞鶴「今日だって『私以外』は全員大破なの。私だけが『小破』だった」

勇者「それは……キミのせいじゃないだろう」

瑞鶴「直接的に私が関係しているかどうかは問題じゃない。問題は、私がみんなを守れなかったこと。私だけが、被害を負わなかったこと」

勇者「……」

瑞鶴「……あなたに話しても意味がないことだったわね。じゃ、もう行くから」

頭の中がぐちゃぐちゃで、どうすればいいのか分からなかった。だから逃げ出した。

――――もしかしたら、慰めて欲しかったのかもしれなかった

717: 2015/03/22(日) 21:42:21.56 ID:Im8nH42G0
誰だよ瑞鶴の特別編書こうとか思った奴。うん、私ですね

ごめんなさい。何でもしまかぜなので今日はこれで許してください

724: 2015/03/31(火) 22:14:07.45 ID:cHLaGkqT0
最近忙しくて更新できなくてすみませんでした!とりあえず落ち着いたのでしばらくは前みたいに更新できそうです

瑞鶴の特別編は一旦ここまでにしたいと思います。このままだと通常の話の進行に影響が出そうなので。きちんと最後まで書き終わったら、別スレを建てます。

明日のイベント安価を取ります。前回と同じ方式でコンマ判定していきます

①鈴谷、夕立、瑞鳳、秋月、加賀、浜風、他鎮守府(横須賀、呉)

②山城、漣、ヤミナ

榛名「榛名恋愛相談所」59人目

引用: 榛名「榛名恋愛相談所」 天龍「2件目だぜ!」