471: 2011/01/30(日) 00:03:03.37 ID:tdfySq+AO
番外通行止めらしきものを落としてみる

472: 2011/01/30(日) 00:05:07.59 ID:tdfySq+AO
 最終信号と暮らし始めて早ふた月。
 あの人の言った事なら無視したけど、あのじゃんじゃん女の言葉には何故だか逆らえなかった。
 はあ、なんでこのミサカなのよ? 一方通行に任せりゃいいじゃん、あの人の方がこのチビスケを大事にしてるじゃんと反論したが、

「なーに言ってるじゃんよ? 打ち止めだってお姉ちゃんと一緒の方が嬉しいじゃんなあ?」

 とあっさりクリアされたじゃん悔しいじゃん……やっべ、『じゃん』伝染った。

473: 2011/01/30(日) 00:06:48.31 ID:tdfySq+AO
 久しぶりに服を買いに行こうと出掛ける準備をしていると。

「ねえねえ番外個体~、あの人に会いに行こうよ~ってミサカはミサカはお出かけのお誘いをしてみる!」

 最終信号がいつものおねだり。

「はっ、何が嬉しくてあんなもやし野郎に会いに行かなきゃなんないのよ? そんな行きたきゃ一人で行ってきな」

 そう冷たく返すと、アホ毛をしょんぼりとへたらせがら玄関に向かいトボトボ歩いていく。

「はあ、あの人ガッカリするだろうなあ、最近すっごく番外個体に会いたがってるのになあってミサカはミサカは独り言を呟いてみたり」

 ……嘘つけ。
 あの人がミサカに会いたがる訳なんかないっての。
 ミサカだって……。

474: 2011/01/30(日) 00:08:07.77 ID:tdfySq+AO
 ……ミサカだって、何?
 何考えてんの? 会っていいわけないじゃん。だってミサカは……

 あの人の

『たからもの』

 壊しちゃったんだもん。

(会いたいよ……会って、ちゃんと謝りたいよ……でもさ。怖いんだ。あの人そのものまで、壊しちゃいそうで……)

475: 2011/01/30(日) 00:10:55.10 ID:tdfySq+AO
 番外個体はやっぱりついて来なかった。
 まあ、しょうがないよね。だってあの子は、

 あの人の

『たからもの』

 壊しちゃったんだもん。

「やァ、打ち止めちゃン。お姉さンは……今日も来てくれないンだね」

 あの人の病室へとミサカはやって来た。
 あの人は、以前とはすっかり変わってしまった。

「どォかした?」

「ううん、何でもないよ? ってミサカはミサカは……うん、何でもないの」

 ある日、ほんの些細なすれ違いから、この人と番外個体は深刻な仲違いをした
--初めて会ったあの日のように、頃し合いを始めてしまった。
 と言っても、この人は何にもしなかった。いや、何も『出来なかった』。
 だってこの人は、ミサカ達を守るって決めてるから。
 だから同じ『ミサカ』であるあの子だって守る対象なんだ。
 それが分かっててあの子は、この人を追い詰めた。

476: 2011/01/30(日) 00:12:10.03 ID:tdfySq+AO
 ギリギリのギリギリのギリギリまで。
 その心を、削り取られて、削ぎ落とされて、へし折られた。
 この人がピクリとも動かなくなって初めて、あの子は自分の過ちに気づいた。でも、もう遅かった。
 あの子はこの人の名前を呼んだ。必氏に、泣き叫ぶように。
 病院に担ぎ込まれたこの人の無事を、ミサカはただただ祈った。この人に手を下したはずのあの子は、ひたすら泣きじゃくっていた。
 きっと、あの子の心もぐちゃぐちゃだったんだろう。
 だってあの子は、この人の事--

「打ち止めちゃン?」

「へっ? あ、ごめんなさい、まただんまりだったねってミサカはミサカはちょっとセンチメンタル入っちゃってるかも」

477: 2011/01/30(日) 00:13:38.50 ID:tdfySq+AO
 女の子に優しく微笑む。
 よくお見舞いに来てくれる打ち止めちゃン。多分、僕にとってとても大事な人なンだと思う。この子のお姉さンも。
 最初に目覚めた時、この子とお姉さんがお見舞いに来ていた。
 僕の第一声は「どなたですか?」だった。
 その時に見たお姉さンの酷く悲しそうな顔が、未だに胸の奥で痼りになっている。

「打ち止めちゃン、お姉さン、どォして来てくれないのかなァ? もォ一度会いたいのになァ。今度は連れて来てね」

「……うん、分かったよ、ってミサカはミサカは努力してみるけど」

 打ち止めちゃンから聞いた話だと、僕が病院暮らしになっている原因をお姉さンが作ったらしい。
 何をされたンだろォか、まったく覚えてないから分からない。
 ただ、何をされたンだとしても、きっとそれは全部僕が悪かったンだって気がする。

「はァ、早く会いたいなァ」

「……どうしてそんなに会いたいの? ってミサカはミサカは訊いてみる」

「僕のせいで、哀しい思いをさせてしまった事を、謝りたいンだ」

478: 2011/01/30(日) 00:15:23.08 ID:tdfySq+AO
 意を決してあの人の病室へとやって来たミサカ。
 そして、その言葉を聞いた。
 ……なんだよ。なんだよそれ。
 なんであなたが謝るのよ? 謝らなくちゃいけないのは、ミサカの方なのに。
 謝って、それで終わり。二度とあなたの前に顔を出さない。そう決めて、ここに来たのに。
 あなたに謝られたら、ミサカはどうしたらいいの?
 そんな事、ミサカは赦さない。
 そんな事、されたら……

 ミサカは、ミサカを赦せなくなる。

「あれ? 来てたんだ、ってミサカはミサカは外にいるお姉ちゃんに声をかけてみる」

 ……あ、あのクソガキ! まだ心の準備出来てないのに!

「久しぶり、お姉さン」

 ……止めてよ。そんな澄んだ目でミサカを見ないで。

「初めて会った日、なンで泣きそうになったか分からないけど……」

 ……駄目。

「多分……僕のせいだから」

 ……止めて。

「だから……」

 言わないで!

 目を閉じ、口を紡ぎ、耳を塞ごうとして、

479: 2011/01/30(日) 00:16:01.07 ID:tdfySq+AO








「そろそろネタバレしていいですかァ?」









480: 2011/01/30(日) 00:17:27.03 ID:tdfySq+AO
 不穏な言葉が耳に届く。

「いやあ、さすがにちょっとやり過ぎちゃったかな~、だがミサカはミサカは反省していない」

「……えっ?」

「つゥかまァ、記憶が『無くなった』のは確かなンだがな。まさか打ち止めが俺の記憶までバックアップしてるたァ予想外だったぜ。おかげさンで何から何までバッチリ覚えてンだよな、コレが」

「……ふぇっ!?」

「番外個体が寝てる間に打ち合わせして、この人に記憶喪失だって芝居をしてもらってたのってミサカはミサカはネタバレしてみたり☆」

「うえっ!? 芝居だったの!?」

 驚愕に顔が歪む。
 コイツら、ミサカを騙してやがったのか……!
 いや、まあ、自業自得だからいいんだけど……いいんだけどお!

481: 2011/01/30(日) 00:19:25.55 ID:tdfySq+AO
「なんだよそれ! ミサカがどんだけ後悔したと思ってんの!?」

「どんだけ心細かったか……分かってんの? どんだけ……心、押し潰、されそう、だったか……うわああああああん」

 ミサカは堰を切ったように泣き出した。

「あ、えっと……ってミサカはミサカは、マジでやり過ぎちゃったみたい……ごめんなさい」

「す、済まねェ。冗談にしちゃ趣味が悪かった」

 一方通行はばつが悪そうに顔を歪めながら、ミサカの頭を優しく撫でた。

「……ぐすっ……馬鹿」

 ミサカって単純だなあ。たったコレだけの事で、あっさり泣き止んじゃうんだもん。

482: 2011/01/30(日) 00:20:51.87 ID:tdfySq+AO
「にしても、ホントしょうもない理由でトンデモ大ゲンカになっちゃったよね~ってミサカはミサカは今回のえびせん戦争を笑い飛ばしてみる!」

「なっ! 最終信号だってとっといたプリン食べられたらムチャクチャ怒るじゃん!」

「オイ止めろクソガキ、ンな情けねェ理由で喧嘩したなンざ思い出したくもねェっつの」

「うっ……そうそう事言わないでよ、馬鹿」

 数日前の痴態を振り返って顔を真っ赤にするミサカと一方通行。
 ホント、つまんない事で喧嘩(という名の一方的な蹂躙)しちゃったなあ、ああ恥ずかしい。
 ……あ。結局謝ってないや……まいっか、痛み分けだし。

483: 2011/01/30(日) 00:24:17.75 ID:tdfySq+AO
おしまい
なんか冒頭のせいで続きがありそうな気がしたのは作者の俺だけでいい
しかしミサワさんは食べられたらフルボッコにしちゃう程のえびせん好きだったのか……←おれがかんがえたにじせってい

引用: ▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-22冊目-【超電磁砲】