543: 2011/01/31(月) 01:18:09.19 ID:N7t5UXuAO


打ち止め「ねえねえ、あなた」

一方通行「あァ?」

打ち止め「去年はバレンタインのチョコって何個もらったのってミサカはミサカは尋ねてみたり」

一方通行「……?」

打ち止め「あ…! ごめん、義理とかも貰えてなかった事とかを考慮し忘れちゃったってミサカはミサカは寧ろ嬉しかったり」

一方通行「バレンタイン…、何のことだァ?」

打ち止め「まさかそこから!?ってミサカはミサカは驚きを隠しきれない! っていうか学習装置に劣る学園都市最強の能力者ってどうなの?」

一方通行「うるせェな、別に氏ぬわけじゃねェだろ」

打ち止め「しょうがないなあ、そんなあなたのためにこのミサカが解説しちゃおうってミサカはミサカは意気込んでみる!」


――バレンタインの説明中――


一方通行「そォいや、コンビニとかファミレスでうるせェぐらいに宣伝してたかもな」

打ち止め「まぁ、あなたってば甘いもの苦手だもんね」

一方通行「バレンタインっつゥのは、てっきり国勢調査みてェなヤツかと」

打ち止め「それはファミレスでは宣伝しないだろうなあってミサカはミサカは至極冷静に突っ込んでみる」

551: 2011/01/31(月) 03:11:57.37 ID:98MbBbOG0

「うーいっはるーん」

「うひゃぁぁっ」

 バサッ、と羽ばたくような音がして、今日も今日とて、被害にあった布地が宙を舞う。

「な、なにするんですかっ、佐天さんっ!」

「何って、挨拶じゃん挨拶。これがないと一日が始まった気がしないよねー、っていっつも言ってんるじゃん?」

 そう言って悪戯っぽく笑う佐天に、初春は溜息をつく。

 それがいつもの一日の始まりだった。

 半ば恒例行事と言うか、伝統となってしまったこのやりとりも、お互いに信頼しあえているから出来る事。

 そう思えば、スカートくらい―――

(なんて、思えるわけないじゃないですか)

 やれやれ、と首を振り、初春はもう一度溜息をつく。

 捲られないように警戒していても、心理の裏を抜けるような動きで、確実にとらえてくる。

 いっそ短パンを履いてやろうかと、レベル5の先輩に相談を持ちかけようとした事もあった。

「いやぁ、ゴメンゴメン。なんか初春を見ると捲りたくなるっていうかさ。やらなきゃいけない気分になるっていうか」

 屈託のない笑顔で、彼女が笑う。

 口ではゴメンと言っているものの、謝っている態度ではない。

 それ以前に、心から謝る気もないのだろう。

 それでも―――

(そんな顔されたら、怒れなくなっちゃいますよ)

 ささやかな抵抗の意思を込めて、初春は頬を膨らませる。

 もっとも、そんな初春の態度を見たくて、佐天も毎日飽きもせずに『こんなこと』をするのだが。
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544: 2011/01/31(月) 01:20:24.13 ID:N7t5UXuAO


一方通行「ンで? その菓子会社の特需狙いのイベントがどォした」

打ち止め「えっとね? み、ミサカもあなたに作ろうかなあって思っていたりしてて」

一方通行「オマエが俺に? 10歳のガキが炊飯器だけで菓子作れるかァ?」

打ち止め「そこは大丈夫! なんてったってインデックスと一緒に、カミジョーの家で作る予定だから!ってミサカはミサカは胸を張ってみる」

一方通行「三下のお料理教室になンのが目に見えてンな……。 良いかァ? シスターには気を付けろ、奴は例え業務用でもペ口リと食べちまえる女だ」

打ち止め「なんと、味方が敵だったり!ってミサカはミサカは驚きを隠しきれない!」

一方通行「胃袋ブラックホールとは奴のことを指す」

打ち止め「また一つ勉強になったってミサカはミサカは実は知ってたけどね!」

545: 2011/01/31(月) 01:21:47.03 ID:N7t5UXuAO


一方通行「ンで、何作るンだ?」

打ち止め「そう、それを他ならぬあなたに聞こうかなって。 ほら、甘いの苦手だから考慮しようってミサカはミサカは思っていたりするから」

一方通行「別に何でも良い」

打ち止め「ホントに? トリュフとかババロアは嫌でしょ?ってミサカはミサカは確認してみる」


一方通行「別にィ?」

打ち止め「そうなの?ってミサカはミサカは目論見が外れて少々驚いてみたり」

一方通行「オマエが作るンだから俺にとっては一緒じゃねェの?」


打ち止め「………え…?」

一方通行(素材の味どおりになンざ作れねェだろ)

一方通行「甘かろォが苦かろォが、オマエにかかっちまえば関係ねェだろ」

打ち止め「………そ、そうなのかなあってミサカはミサカは……、その……」テレテレ

一方通行(やべェ、ガキが泣く! 流石に弄りすぎたかァ!)

一方通行「えっと、俺の人生初はオマエからだから、その……、レベルは厭わ」

546: 2011/01/31(月) 01:22:36.80 ID:N7t5UXuAO




打ち止め「…うぅ、あ、あなた、もう大好き…!ってミサカはミサカは…!」ダキッ

一方通行(!!)

打ち止め「頑張って美味しいの作ってみせるからね!ってミサカはミサカは宣言してみたり!」

一方通行(…な、何が起きたンだ)

一方通行「おォ、楽しみにしといてやる」
打ち止め「うん!」

一方通行(正直言って打ち止めからの抱き付きはかなり嬉しい誤算だが、甘いものが苦手な俺はバレンタインデーなるものを乗り切れるのかァ…?)



547: 2011/01/31(月) 01:25:04.50 ID:N7t5UXuAO
バレンタインほど女子と男子のモチベが違うイベントも無いですよね
男子が当日ソワソワしても、女子はもう闘いを終えて決着付けるだけですからね
今年は友チョコや義理チョコを何個もらえるのか楽しみです
ありがとうございました

552: 2011/01/31(月) 03:12:38.73 ID:98MbBbOG0

(まったく、もう)

 『今日は淡い水色だったねー』とか言いながら笑う佐天に釣られて、膨らませていた初春も表情を崩す。

 初春はこの佐天の笑顔が好きだった。

 彼女には笑っていて欲しかった。

 天下の往来で痴漢紛いような事をするクラスメートを怒れない理由。

 そういうと、なんだか語弊がある気がしなくもないが。

 少しでも長く、彼女の笑みを見ていたい。

 それを見ている、その声を聞いている人まで、楽しくさせるような彼女を。

(だから、っていうわけじゃありませんが)

 怒るに怒れない。

 本気で止めさせようとすれば、彼女は止めてくれるだろうか。

 一旦止めたふりをして、忘れたころに再び狙ってくるだろうか。

 それはそれで楽しいそうだな、と初春は思う。 

 だから。

 止めさせられないなら。

(ほんの少しくらい、悪戯しても良いですよね)

 佐天から見えないように、小さく拳を握る。

 殴りかかるわけじゃない。

 ただ、少しばかりの決心を秘めて。

「佐天さん、毎日やってて飽きませんか?」

「今のところは飽きる気配はないかなー」

553: 2011/01/31(月) 03:13:19.38 ID:98MbBbOG0

「まったく………他の人にもやってたりしませんよね?」

 風紀委員に拘束されても流石に庇えませんよ、と付け足す。

 佐天は少しだけ目を見開き、驚いたようにポカンと口を開いている。

「や、やってるわけないって! 初春だけだよ? そんな人に迷惑になるようなことするわけないって」

(わ、私には良いっていう判断が良く分からないんですが……)

 そう言いたくなるのをぐっと我慢する。

 もしそう言えば、いつもと変わらない。

 仕返しまではいかないものの、悪戯をすると決めたのだから。

「もし他の人にやってたら許しませんからね」

「へ?」

「だから、他の人のスカートなんて捲ったら一生、お話ししませんから」

 ふい、と佐天に背を向ける。

 困惑している彼女の顔をこれ以上見ていたら吹き出してしまいそうだった。

「えっと………う、初春?」

「私、浮気は許せないタイプなんです」

「あれ、初春……あたし、なんかした?」

 そわそわとした佐天が、初春の顔色を窺おうと回り込む。

 それを拒絶するかのように、初春は佐天の動きに合わせて身体を回す。

「スカート捲り、そんなに怒ってる?」

「怒ってないですよ」

「怒って、るよね?」

「いいえ、怒ってません」

554: 2011/01/31(月) 03:14:06.26 ID:98MbBbOG0

 笑いが出そうになるのを必氏に我慢して、初春は言葉を紡ぐ。

 出来るだけ、そっけなく。

 出来るだけ、単調に。

「ご、ごめん、初春! 謝るから! この通り!」

 パンッ、と小気味のいい音が響く。

 両手合わせて頭を下げる佐天の姿を横目で確認する。

「な、なんならパフェ奢るよ? 初春の好きな奴!」

 段々弱々しくなってきた声に満足して、初春は佐天に向き直る。

「わかりました! そこまで言うなら奢られます」

「なんでも注文して良い………って、あれ?」

 ちょっとだけ涙目になった佐天と目が合う。

 何事か理解していない彼女の向けて、初春はとびっきりの笑顔を向けた。

「偶には私が佐天さんを泣かせても良いかなー、って思ったんですよ」

「え?」

「さ、パフェ奢ってくれるんですよね、佐天さん」

「え、ええ!?」

「一番大きいの注文しますから、覚悟しといてくださいね」

 そこまで言って、ようやく理解したのか、軽く泣きそうになっていた佐天の肩がぷるぷると震える。

「う、う、初春……アンタ……」

「私だっていっつもやられてばかりじゃないんですから」

 ふふん、と、初春はその薄い胸を張る。

 偶には良いもんだな、なんて思いながら。

「こうしてやるー!!」

「きゃぁ!? な、なにするんですかぁぁぁぁ!!」

 ばさり、と青い布地が宙を舞った。

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以上になります。 感想批評いただけると嬉しいです。 では

555: 2011/01/31(月) 03:21:27.67 ID:rxhvQ1Zdo
乙乙!
安定のさてはるご馳走様でございました!

引用: ▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-22冊目-【超電磁砲】