227: 2010/01/13(水) 01:08:59 ID:0FiT0MJ.

「睡眠は……永眠の為の準備動作なんです。擬似体験なんですよ」
「……開口一番に何を言い出す、宮藤」
「……重いな。なんつーか、すっごい話が重いな」
「坂本さん、シャーリーさん。今日は、月が朱いですね」
「今は真昼だ」
「てか、赤いのはお前の顔じゃないか? ……っと?」
「……何をしている、リベリアン」
「いや、なんか宮藤の様子が変だから熱を見て……って、怖いなオイ!? どんだけ睨んでんだよ!?」
「わ・た・し・は・い・た・っ・て・へ・い・じ・ょ・う・だ・!」
「い、いや、鼻息荒いし」
「もぅ、トゥルーデは。短く息を数回吐いて落ち着いてよ」
「ハァハァハ……って、何をさせるかフラウ!!?」
「……あー、少佐ぁ。やっぱり熱あるみたいですよ。かなり熱い」
「やはりか」

238: 2010/01/14(木) 09:48:29 ID:SsfCG6aM

「いぇ、私に熱なんてある訳ないじゃないですか、シャーリーさん」
「は?」
「バルクホルンさんは、『私の怪力は世界一ぃ!!』ってネウロイだって素手で真っ二つに引き裂けるんですよ?」
「脈絡なさすぎやしないか!?」
「み、宮藤? お前は私の事を一体何だと……」
「え……出来ないん、ですか……?」
「ふっ、出来るに決まっているだろう?」
「ちょ、おま、堅物!?」
「シスコーン、落ち着けー」
「宮藤が私なら出来ると信じてくれているなら!! 私に不可能なぞ無い!!」
「あらあら、何の騒ぎ?」
「よ、芳佳ちゃん!? 顔が真っ赤……って、凄い熱だよ!?」
「あぁ、ちょうどいい。リーネ、宮藤を部屋へ。とりあえず休ませよう。頼めるか?」
「はい! さ、芳佳ちゃん、行こう」
「み、ミーナ、さん――」
「宮藤さん?」
「――じゅうはっさい……」
「…………」
「あ、ねぇ、トゥルーデ。鏡餅――」
『…………』バッ
「……うふふ。今、私を見た理由を聞かせて貰えるかしら? バルクホルン大尉、イェーガー大尉?」
「い、いや……特に意味は……」
「た、たまたまです! 自分は顔を上げただけです、マム!」
「ミーナの足でー……雪見大福! なんちって」
『……ぶふッ!?』
「……フラウ?」
「うん?」
「怒られたい?」
「……ごめんなさい」
「まったく……」
「ミーナの足か……ふむ」
「あ、あの……美緒?」
「きめ細やかな肌。うむ、雪見大福とは言い得て妙だな」
「……喜んでいいのかしら」
「いいんじゃないカ? 隊長の肌、綺麗なのは本当だしナ」

229: 2010/01/14(木) 00:54:34 ID:SsfCG6aM
「あら、エイラさ…ん……どうしてサーニャさんを肩車しているのかしら?」
「夜明けのトーテムポール、だからだナ」
「ごめんなさい、意味がわからないわ」
「……エイラの機動性が0.7倍、鼻息が2.3倍にパワーアップします」
「機動性落ちてるよな?」
「……朝焼けのトーテムポール、ですから」
「名称が変わった!?」
「あ、シャーリー。ちょっとしゃかんでくれヨ」
「は? こう、か?」
「回れ右デ」
「こっち向きでか……って、お前私に乗る気だろ!? そうだな!? そうなんだな!? そうに違いないだろ!?」
「レッツ、ディバイン・トーテムポール!」
「何言ってんの!?」
「あ、あの……芳佳ちゃん、寝かせてきました」
「うむ。ご苦労だったな、リーネ」
「いえ、眼福……じゃなくて、目の保養もとい……えっと、大丈夫です!」
「……でも、宮藤さん、急にどうしたのかしらね。」
「……あー、んんっ。昨日は……元気だったよな? 堅物は何か知ってる?」
「いや、私も……私にも、否、私ですら気がつかなかった」
「シスコーン、頭冷やせー。……私が昨日の夜会った時は普通そうに見えたよ」
「ふむ、トーテムポーラーズの二人は?」
「何ですか、その呼称!?」
「……気がつきませんでした」
「トーテムサーニャ」
「それは肯定なのか!? 返事なのか!?」
「シャーリー、今日は突っ込みがトーテム絶好調だナ」
「誰が突っ込ませて……ってか、トーテムの意味はなんなんだよ!?」
「トーテムトーテム」
「無駄に欝陶しいな、オイ!!」
「あの……芳佳ちゃんの熱なんですけど……」
「トーテムどうした、リーネ」
「少佐に感染した!?」
「実はその……私、昨夜は芳佳ちゃんと一緒に寝たんですけど……」
「………………ほぅ?」
「トゥルーデ、目が怖い。てかちょっと危ない」
「それで、宮藤の寝相でも悪かったのか?」
「ここで少佐、トーテムスルー」
「だからトーテムってなんなんだよ!? てか、トーテムから離れろよ!?」
「トーテムリダナー」
「張り倒すぞ!!」
「あの……ええとですね。ベッドに入って少したってから、芳佳ちゃんの様子がおかしい事に気が付きました」
「……ベッドイン」
「フラウ、黙ってなさい?」
「い、イェス、マム」
「私はうつらうつらとしていたんですけど、身体がなんだかくすぐったくて目が覚めたんです。それで見てみると、芳佳ちゃんが……その」

230: 2010/01/14(木) 00:55:26 ID:SsfCG6aM
「……宮藤が?」
「私の身体を撫で回す様に……こう、手を動かしていて」
「……それで?」
「最初はくすぐったいだけだったんですけど、その……次第に芳佳ちゃんの手が(ヒンヤリと冷たくて)気持ちよく感じてきてしまって……」
「……ごくり」
「改めて見ると、芳佳ちゃんは(うなされているのか)息使いも荒くて、何かを求める様に手を、私に……」
「……うわぉ」
「でも、そんな(しんどそうな)芳佳ちゃんを、私には拒むことなんて出来ませんでした。私は、そんな芳佳ちゃんだからこそ、受け入れたんです」
「お、おお……」
「今思えば、熱にうなされていたんだと思います。今にも泣きそうな顔をしていましたから。だから、私は芳佳ちゃんをぎゅって抱きしめました」
「…………」
「少し落ち着いた様に見えました。でも、その後で……その……」
「……な、何があったの?」
「芳佳ちゃんが……私の(服の)中に指を……這わせてきて……」
「……!!!」
「私、芳佳ちゃん(の行動)に驚いたりしてましたし、(汗で)私の(服の)中も濡れてましたし、どうにかして芳佳ちゃんを止めようとしたんです。……やっぱり、その。(汗の臭いとか)恥ずかしい、ですから」
「……うわぁ、うわぁっ」
「でも、芳佳ちゃんの頬に涙が流れていたのに気付いたんです。芳佳ちゃんは、熱にうなされて、身体が寒くて、私(に暖)を求めようとしたんだと分かりました」
「トーテム」
「だから、芳佳ちゃんの頭をゆっくりと撫でました。少しでも安心させてあげたかったんです。……芳佳ちゃんも私が受け入れたのが分かったんだと思います。
……でも、最初は指だけだったんですけど、その、突然っ……」
「ふむ」
「最初は指で(背中を)擦る、と言うか擦るくたいだったのに、腕ごと私の(服の)中に入れようとしてきて……」
「  ! ?  」
「突然だったので私も驚きました。芳佳ちゃんを止めようとしたんですけど……私の身体は(汗で)濡れたりなんだりで大変でしたし……でも、芳佳ちゃんは全然止まらなくて……」
「わっふる!わっふる!」
「と、トゥルーデの輝きが止まらない……私の知ってたトゥルーデは何処に……」
「トーテム!トーテム!」
「何張り合ってんだよお前は!?」
「でも、両手とも(服の)中に入れられて一応満足したみたいで――」
「り、両手!?」
「え、はい。それで、その後ぎゅっと――」

231: 2010/01/14(木) 00:55:49 ID:SsfCG6aM
「ぎゅっと!!? え、その…り、両手で……?」
「はい……あの、ミーナ中佐。どうかされたんですか?」
「い、いいえ!? 大丈夫ですよ、リネットさん!!」
「み、ミーナ中佐……言葉使いが……」
「リーネ! そんな事より続きを!!」
「は、はい、バルクホルン大尉! え、えと……芳佳ちゃんの両手でぎゅっとされて……しばらくはそのままでした」
「あの……やっぱり最初は……痛かった、ですか?」
「痛い…? えと、最初はやっぱり無理矢理と言いますか突然でしたから、少しは」
「で、でも……両手、なんだろ? 大丈夫だったのか?」
「それは……まぁ。でもその、一度受け入れちゃうと、だんだん芳佳ちゃん(の体温)を腕から感じる様になりましたから、(暖かくて)気持ち良くなってくるんですよ」
「り、リーネが……遠い……」
「その後……しばらくは、芳佳ちゃんの好きな様に、されるがままでいました」
「何故だ……何故、姉である私がその場に居なかった……ッ!!」
「……もうダメだ、このシスコン」
「それで、気が付くと芳佳ちゃんたら、私の(服の)中に思い切り手を入れたまま眠ってたんですよ。ただ、もうそのままでいいかな、って私もそのまま眠ってしまって……」
「……で、起きたら朝だった?」
「はい。芳佳ちゃんはいませんでしたし、自分の部屋に戻ったんだと思ってました。私に毛布もかけてくれてたみたいです」
「ふーン?」
「……な、なぁ、エイラ。なんでお前そんなに冷静なんだ?」
「何がだヨ?」
「……エイラは、へたれで、朴念仁で、唐変木で、鈍感で……お子様」
「あの……サーニャ? もしかして、なんか怒ってル?」
「……知らない」
「サァアアアアアニャアアアアアアアッ!!?」
「肩車したままで、なんかシュールだな……」
「ね、ね、エイラ。ABCって知ってる?」
「今それ所じゃねーヨ!!」
「エイラ、ハルトマン中尉の質問に答えて」
「さ、サーニャ…? えと、アルファベットだよ、ナ?」
「そっちじゃない」
「……エイラ、本気で知らないの?」
「うぅ……こ、答えないと……ダメ?」
「だめ」
「え、Aは……」
「Aは……?」
「その……て、手を繋ぐ」
「……………………は?」
「だかラ! Aは手を繋ぐだロ!? 恥ずかしい事何度も言わせんなよナ!!」
「あの……エイラさん、Bは……?」
「リーネまデ!? すぅ…はぁ…Bは……キ、キキキ、キスだロ!?」

232: 2010/01/14(木) 00:56:09 ID:SsfCG6aM
「エイラ、Cは?」
「サーニャぁ……あの、言わなきゃ……」
「エイラ」
「分かっタ! 分かりましタ! Cは。きっ、キスしながら口の中に舌入れるんだロ!? ……うぅっ、恥ずかしいんだかんナ……」
「エイラ、それ本気か?」
「なんだよシャーリー。言わせといて本気も何もないだロ、まったク!」
「サーニャ、大変だね」
「……ありがとうございます、ハルトマン中尉」
「なぁ、ミーナ。何かエイラはその、変な事を言ったのか?」
「え、みっ、美緒!?」
「少佐まで……」
「な、なんだミーナ、バルクホルンまで」
「はぁ、リネット師匠! あの朴念仁二人に一言お願いします!」
「あ、あのシャーリーさん!? 師匠って」
「まぁまぁ、一言でいいから」
「ハルトマン中尉まで……でも私、何を言えば……」
「急に呼ばれた気がしました」
「芳佳ちゃん!」
「宮藤!?」
「宮藤、お前何処から現れたよ!?」
「そんな事はどうでもいいです。突然ですが、ここでペリーヌさんの新作パジャマコーナー!!」
「いよっ!!」
「待ってたんだナ!!」
「あ、あれ、エイラとハルトマン。なんでお前らそんなにテンション高いの…?」
「ペリーヌさんが夜なべで編んだトーテムパジャマ!! ペリーヌさんどうぞ!!」
「お前もトーテムか!?」
「オーッホッホッホッ、でしてよ!」
「滑らかなラインと淡い色使い。悠々と存在感を示すその出で立ち! テーマはマウント・富士!!」
「着ぐるみじゃねーか!?」
「そして、続いてリーネちゃん専用! ペリーヌさんの愛と友情と何かが詰まってます、どうぞ!」
「あ、あの……どうですか?」
「鳥」
「鳥だナ」
「鳥だね」
「だから着ぐるみだろ、コレ!?」
「テーマはホーク! ホークホクと暖かそうな雰囲気を醸し出します」
「駄 洒 落 か よ ! ?」
「最後は私、芳佳がお送りしますこの着ぐるm……げふん、新作パジャマ!!」
「今着ぐるみって言った!!!言っただろ!!?」
「茄子芳佳! 爆・誕・!」
「何故野菜!?」
「そんな訳で。さぁ、ルッキーニちゃん、朝ですよー」
『……!?』

233: 2010/01/14(木) 00:56:25 ID:SsfCG6aM
◇ 
 
「…………ウジュ?」
「あ、ルッキーニちゃん。おはよう」
「……芳佳? あれ、なすびじゃない?」
「……へ?」
「あ、リネット師匠。おはようございます」
「も、もぉハルトマン中尉!! あれは誤解だって言ったじゃないですかぁっ!!」
「いやぁ、だって、ねぇ?」
「……リネット。改めて聞くが……本当に、服の中だよな?」
「バルクホルン大尉まで!?」
「まぁ、仕方ないよね。まさかリーネに芳佳がフィストファっむぐ!?」
「ふ、ふふふフラウ!? おま、何処でそんな言葉を!?」
「……私も、いつまでも子供じゃないのさ」
「もっと違う場面でその言葉を聞きたかったぞ、私は……」
「あ、あはは……あ、ルッキーニちゃん、おはようございます」
「……リーネも、普通のパジャマ?」
「え?」
「あ゛ー、喉痛ぇ……、お、ルッキーニ、おはようさん」
「シャーリー! ……声、なんか変」
「……昨日、ちょっと、な!」
「なんだリベリアン、その目は。突っ込みは自己責任でお願いしたいな?」
「全員がボケばっかかますんだから仕方ないだろ!……ゲッホゲホ」
「あぁ、シャーリーさん、これをどうぞ。ハチミツレモンです」
「サンキュー、宮藤」
「あら、皆さん。こんな所で集まって何を――」
「ちぇー、ペリーヌもフツーの服ー。つまんなーい!」
「……まだ寝ぼけてますの?」
「服がどうかしたのか、ルッキーニ」
「うん! あのね、あのねっ――」
 
ウジュっと、せつめーちゅー
 
「――え、と。か、変わった夢だね」
「…………」
「…………」
「…………」
「あ、あれ、リーネちゃん? シャーリーさんも、バルクホルンさんまで、どうして視線を反らすんですか!?」
「まったく、夢は所詮夢ですわ。だいたい、どうして私がどこぞの山の着ぐるみなんて着ますの!?」
「あ、それはですね。扶桑では、年明けの初夢で見ると縁起が良いって『一富士、二鷹に、三茄子』という言葉があるんです」
「……ペリフジ、トリーネ、なすよしか?」
「意味がわかりませんわ」
「み、皆さんは、何か夢は見ましたか?」
「そういえば、私は見てないな。宮藤とペリーヌ、あとルッキーニは、年明けてそうそうに眠ってたよな?」
「他の皆は飲み会みたく騒いでたけどねー。……ついさっきまで」
「初夢なんて。そんなもの、私は……私、は………」
「…………ぁ、ぅ」

234: 2010/01/14(木) 00:56:41 ID:SsfCG6aM
「あの、ペリーヌさん? 芳佳ちゃんも、なんだか顔が赤くなって……?」
「な、わ、私の夢にまでどこぞの豆狸が……ッ、ゆ、誘導尋問を!?」
「いや、ペリーヌが勝手に自爆しただけじゃん」
「宮藤の夢にはペリーヌが出たのか?」
「……ベッドの、上?」
「!?」
「……ぁぅー」
「あれ、なんだこの二人から発せられる甘酸っぱい空気は」
「知ってる? 夜明けのモーニングコーヒーって、そんな甘い空気を入れ換える為にブラックで飲む物なんだって」
「よ、よよよ…芳佳ちゃん!!?」
『お、落ち着けミーナ!! 正気に戻れ!!』
『失礼ね!? 私は正気だし落ち着いています!!』
『なら服を脱ごうとするなッ!!』
『指揮官たるものABCくらい実践で、私が教えるもんッ!!』
『もん、とか言うなぁああああッ!!』
「…………」
「…………」
「……あの二人、まだやってたんだ」
「え、あのミーナさんを止めなくてもいいんですか?」
「……よし、リーネ師匠。あの二人に一言お願いします」
「ま、まだ引っ張るんですか!?」
 
「……ね、シャーリー」
「ん? どうした、ルッキーニ」
「おんぶして」
「またいきなりだな……ほらよ」
「え、と……トーテム?」
「ぶっ、な、何言ってんだ!?」
「なんでもっ。ね、シャーリー」
「んー?」
「今年もよろしくおねがいします」
「……ああ、私こそ」
 
「リーネ師匠!」
「お願いしますっ!」
「それは誤解なんですってばぁっ!!」
「――あの、ペリーヌ、さん……」
「宮藤、さん……」
『AはピーーーでBは■■■■なのよ!? だからCは£%#&@で、つまり、A=B=Cだから、美緒は私のモノ!!』
『ええい、それ以上近付くな! 切るぞ!? というか舌噛むぞ!?』
「……トーテムエイラ」
「トーテムサーニャ」
 
そんなこんなで、新年、明けてますがおめでとうございました。
 
 

引用: ストライクウィッチーズ避難所4