238:不機嫌 2006/08/31(木) 21:16:14.35 ID:vvr2h/yi0
朝、ハルヒはチャイムぎりぎりに教室へ入ってきた。
ハルヒと目があった。なんとなく青い顔をしている。寝不足という訳ではなさそうだ。表情はいつもと変わりはしないが、憂鬱だったときに近いかもしれない。
「おはよ、キョン」それだけ言って席に着いた。
「ああ、おはよ。調子悪そうだが、大丈夫か?」
ハルヒはアヒルのような口を作った後、俺の耳元に顔を近づけてささやいた。
「大声ださないこと。変なこと言わないこと。守れる? 守れなかったら本気で氏刑」
俺はうなずいた。うなずくしかない。
「生理なのよ。今日」ハルヒはぼそりと言った。「それでお腹痛いのよ」
ハルヒは姿勢を戻すと、にこりともせず外を眺めた。
「学校休めばよかったんじゃないのか?」小さな声で言う。
「こんなことぐらいで休めないわよ」窓の外の校庭に向かってハルヒはいった。
「でも、つらそうだぞ」
「あんたにはわかんないわよ」ハルヒは視点を雲に変えたようだ。刺が少し含まれていた。
「ま、無理すんなよ」
チャイムがなると同時に岡部が入ってきて、会話はそこまでとなった。
ハルヒと目があった。なんとなく青い顔をしている。寝不足という訳ではなさそうだ。表情はいつもと変わりはしないが、憂鬱だったときに近いかもしれない。
「おはよ、キョン」それだけ言って席に着いた。
「ああ、おはよ。調子悪そうだが、大丈夫か?」
ハルヒはアヒルのような口を作った後、俺の耳元に顔を近づけてささやいた。
「大声ださないこと。変なこと言わないこと。守れる? 守れなかったら本気で氏刑」
俺はうなずいた。うなずくしかない。
「生理なのよ。今日」ハルヒはぼそりと言った。「それでお腹痛いのよ」
ハルヒは姿勢を戻すと、にこりともせず外を眺めた。
「学校休めばよかったんじゃないのか?」小さな声で言う。
「こんなことぐらいで休めないわよ」窓の外の校庭に向かってハルヒはいった。
「でも、つらそうだぞ」
「あんたにはわかんないわよ」ハルヒは視点を雲に変えたようだ。刺が少し含まれていた。
「ま、無理すんなよ」
チャイムがなると同時に岡部が入ってきて、会話はそこまでとなった。
240: 2006/08/31(木) 21:16:51.03 ID:vvr2h/yi0
一時間目は終了し休み時間になったが、ハルヒは動かず外を眺めていた。
「気分悪そうだな」話しかけられる雰囲気ではあるので、話しかけてみた。
「あたりまえじゃない」ハルヒは一瞬だけこちらをみた。
「早退した方がいいんじゃないのか?」
「考えとく」つぶやくように窓の外の校庭にいう。「昼まではいるわ」
トイレに立って戻ってくると、ハルヒは机につっぷしていた。寝てはいないようだが。
「大丈夫か?」
「大丈夫」生気のないハルヒの声に、なぜかぞっとした。
二時間目、三時間目の休み時間も同じような会話が続いた。
まあ昼休みには荷物まとめて帰るだろうと思っていた。
だが、昼休みにもハルヒはいた。力無く席を立つ。カバンはもっていない。飯食ってから帰るのか?
「おい、キョン、今日はやけに涼宮が気になるみたいじゃねえか」谷口が弁当をもってやってきた。おまえはそんなことを観察してるのか?
「なんか調子悪いみたいだからな」
「キョンはほんと涼宮さんの保護者みたいだね」国木田が弁当の蓋を開けながらいった。「ある意味うらやましいね」
「なにがうらやましいんだ?」俺は国木田にきいてみた。
「そんなに心配してくれるオトモダチがいる涼宮さんがね。」国木田は小さく笑って、弁当を食べ始めた。
「気分悪そうだな」話しかけられる雰囲気ではあるので、話しかけてみた。
「あたりまえじゃない」ハルヒは一瞬だけこちらをみた。
「早退した方がいいんじゃないのか?」
「考えとく」つぶやくように窓の外の校庭にいう。「昼まではいるわ」
トイレに立って戻ってくると、ハルヒは机につっぷしていた。寝てはいないようだが。
「大丈夫か?」
「大丈夫」生気のないハルヒの声に、なぜかぞっとした。
二時間目、三時間目の休み時間も同じような会話が続いた。
まあ昼休みには荷物まとめて帰るだろうと思っていた。
だが、昼休みにもハルヒはいた。力無く席を立つ。カバンはもっていない。飯食ってから帰るのか?
「おい、キョン、今日はやけに涼宮が気になるみたいじゃねえか」谷口が弁当をもってやってきた。おまえはそんなことを観察してるのか?
「なんか調子悪いみたいだからな」
「キョンはほんと涼宮さんの保護者みたいだね」国木田が弁当の蓋を開けながらいった。「ある意味うらやましいね」
「なにがうらやましいんだ?」俺は国木田にきいてみた。
「そんなに心配してくれるオトモダチがいる涼宮さんがね。」国木田は小さく笑って、弁当を食べ始めた。
241: 2006/08/31(木) 21:17:39.28 ID:vvr2h/yi0
昼休みもあとわずかという時間に、ハルヒは戻ってきた。青白い顔はかわらないが、さっきよりはマシに見えた。
「すこしは良くなったのか?」
「保健室いって薬もらってきたから、少し楽になった」
「そうか」
「そうよ」すこしは笑う余裕が出てきたようだ。「これなら部活も大丈夫そうよ」
「あんま無理すんなよ。部活は休みにすればいい」
「あんた、付き添って家まで送っててくれる?」冗談も言えるようになったみたいだな・・・・・・冗談じゃないのか?
「わかった。送ってやるから休め、な」
「・・・・・・じゃあそうする」それだけ言うと、また外を眺めはじめた。
放課後。ハルヒは部室には行くという。別に教室で待ってれば俺がちょと走ってくると言ったのだが、団長の責務だからと断られてしまった。
部室のドアを開けると、長門がいた。
「ああ、有希?あたし調子悪いから今日は帰るわ」
「そう」長門は本を読むのを中断して、顔を上げた。
「キョンも用事があって出れないって」
まあ嘘ではないな。ハルヒを送って行くという用事があるのだから。
「分った。お大事に」長門は小さく手を振って、また読書に戻った。
「すこしは良くなったのか?」
「保健室いって薬もらってきたから、少し楽になった」
「そうか」
「そうよ」すこしは笑う余裕が出てきたようだ。「これなら部活も大丈夫そうよ」
「あんま無理すんなよ。部活は休みにすればいい」
「あんた、付き添って家まで送っててくれる?」冗談も言えるようになったみたいだな・・・・・・冗談じゃないのか?
「わかった。送ってやるから休め、な」
「・・・・・・じゃあそうする」それだけ言うと、また外を眺めはじめた。
放課後。ハルヒは部室には行くという。別に教室で待ってれば俺がちょと走ってくると言ったのだが、団長の責務だからと断られてしまった。
部室のドアを開けると、長門がいた。
「ああ、有希?あたし調子悪いから今日は帰るわ」
「そう」長門は本を読むのを中断して、顔を上げた。
「キョンも用事があって出れないって」
まあ嘘ではないな。ハルヒを送って行くという用事があるのだから。
「分った。お大事に」長門は小さく手を振って、また読書に戻った。
243: 2006/08/31(木) 21:18:11.17 ID:vvr2h/yi0
二人だけで下校するのはそう珍しいことではない。
いつもであればくだらない話をしながら下校となるのだが、今日は勝手が違う。
ハルヒはうつむき加減でまだ調子は悪いようだ。顔色はさきほどよりは良くなっているように見えるが、本当のところは分らない。
「歩くのは大丈夫か?」
「歩かないと家に帰れないから、しょうがないじゃない」どちらかといえば淡々とハルヒが言った。
「大丈夫かよ」
「じゃあ、あたしが大丈夫になるようになんか考えてよ」ハルヒはアスファルトを睨みつけながら言った。
さて、どうしたもんかね。なにをしても辛いというハルヒになんかしてやれることはあるか?・・・おぶってやる訳にはいかんし、な。
「なんも思いつかないの?」ハルヒはなぜかアスファルトに怒っている。「情けないわね」
裏目にでる可能性も高いが、とにかくなにかしないとハルヒの機嫌はどんどん悪くなりそうだし、俺の立場も無くなりそうだ。
まあ、とりあえず、手でも繋いでみるか。
いつもであればくだらない話をしながら下校となるのだが、今日は勝手が違う。
ハルヒはうつむき加減でまだ調子は悪いようだ。顔色はさきほどよりは良くなっているように見えるが、本当のところは分らない。
「歩くのは大丈夫か?」
「歩かないと家に帰れないから、しょうがないじゃない」どちらかといえば淡々とハルヒが言った。
「大丈夫かよ」
「じゃあ、あたしが大丈夫になるようになんか考えてよ」ハルヒはアスファルトを睨みつけながら言った。
さて、どうしたもんかね。なにをしても辛いというハルヒになんかしてやれることはあるか?・・・おぶってやる訳にはいかんし、な。
「なんも思いつかないの?」ハルヒはなぜかアスファルトに怒っている。「情けないわね」
裏目にでる可能性も高いが、とにかくなにかしないとハルヒの機嫌はどんどん悪くなりそうだし、俺の立場も無くなりそうだ。
まあ、とりあえず、手でも繋いでみるか。
245: 2006/08/31(木) 21:19:12.50 ID:vvr2h/yi0
手を繋いでみると、ハルヒは少なからず驚いたようだが、なにも言わなかった。
返事の変わりなのか、ハルヒは俺の手を強く握りかえしてきた。
ハルヒの手はやや熱っぽい。体調不良も重なってのことなのだろうか。うーん、明日は休みかな、これは。
踏み切りを渡らず、通り過ぎる。俺はハルヒの家にはいったことがない。
「どっちなんだ?」左右の別れ道でハルヒに聞いてみた。
ハルヒは繋いだ手を右に動かした。それで分るだろうと言わんばかりに。
ハルヒの家まで無言のナビゲーションで歩いた。その間、ハルヒはなにもしゃべらない。それは手を繋いでいるからかもしれないし、ただ辛いだけかもしれない。
俺には分らない。まあいつだって解らないことの方が多いからな、この世というやつは。
ハルヒの家に着いた。小洒落た家だった。ハルヒはそこで手を離した。手の平をハルヒの指がなでた。くすぐったい。
「ありがと」ハルヒは振り返らずにそれだけいうと、カバンから玄関の鍵を出した。もう俺の役目は終了なのだろう。
「じゃあな、ハルヒ。調子悪いんならちゃんと寝てろよ」
ハルヒは振り返ってなにか言いたそうな顔をしたが、結局家に入っていった。
返事の変わりなのか、ハルヒは俺の手を強く握りかえしてきた。
ハルヒの手はやや熱っぽい。体調不良も重なってのことなのだろうか。うーん、明日は休みかな、これは。
踏み切りを渡らず、通り過ぎる。俺はハルヒの家にはいったことがない。
「どっちなんだ?」左右の別れ道でハルヒに聞いてみた。
ハルヒは繋いだ手を右に動かした。それで分るだろうと言わんばかりに。
ハルヒの家まで無言のナビゲーションで歩いた。その間、ハルヒはなにもしゃべらない。それは手を繋いでいるからかもしれないし、ただ辛いだけかもしれない。
俺には分らない。まあいつだって解らないことの方が多いからな、この世というやつは。
ハルヒの家に着いた。小洒落た家だった。ハルヒはそこで手を離した。手の平をハルヒの指がなでた。くすぐったい。
「ありがと」ハルヒは振り返らずにそれだけいうと、カバンから玄関の鍵を出した。もう俺の役目は終了なのだろう。
「じゃあな、ハルヒ。調子悪いんならちゃんと寝てろよ」
ハルヒは振り返ってなにか言いたそうな顔をしたが、結局家に入っていった。
247: 2006/08/31(木) 21:20:39.74 ID:vvr2h/yi0
翌日。ハルヒは俺より先に教室にいた。
昨日より穏やかな表情で、ほっとした。
「よう、ハルヒ」
「おはよ、キョン」目の輝きが戻っている。
「元気になったようだな」そういって席に着いた。
「まあね。完全に終わった訳じゃないけど、楽になったわ」
「そうか、それは良かったな」
「昨日のはキョンに借りとくわ」ハルヒは笑顔で宣言した。
「貸した覚えはねえぞ」
「ふふん、あんたが調子悪い時はあたしが家までちゃーんと送りとどけてあげる。団員の健康管理も団長の責務なんだし」
「そうかよ」
「そんときはちゃーんと手も繋いであげるから、安心しなさい」
ハルヒのセリフに、皆の視線が集まる。にこにこ顔のハルヒと憂鬱顔の俺を見比べてひそひそ話が始まる。
本当に、ハルヒは俺をおちょくるのが好きなようだ。
おしまい
昨日より穏やかな表情で、ほっとした。
「よう、ハルヒ」
「おはよ、キョン」目の輝きが戻っている。
「元気になったようだな」そういって席に着いた。
「まあね。完全に終わった訳じゃないけど、楽になったわ」
「そうか、それは良かったな」
「昨日のはキョンに借りとくわ」ハルヒは笑顔で宣言した。
「貸した覚えはねえぞ」
「ふふん、あんたが調子悪い時はあたしが家までちゃーんと送りとどけてあげる。団員の健康管理も団長の責務なんだし」
「そうかよ」
「そんときはちゃーんと手も繋いであげるから、安心しなさい」
ハルヒのセリフに、皆の視線が集まる。にこにこ顔のハルヒと憂鬱顔の俺を見比べてひそひそ話が始まる。
本当に、ハルヒは俺をおちょくるのが好きなようだ。
おしまい
248: 2006/08/31(木) 21:21:16.46 ID:GdGVPMaq0
GJ 読みやすかった
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