1: 2014/12/16(火) 23:15:34 ID:KydUSf62
メリー「………えっ?」

男「俺も丁度君に会いたいと思ってたところさ」

メリー「は?え?ちょっと!こっち見ないでよ……」

男「君は声も綺麗だったがこいつは驚いた、髪も綺麗なんだな」

メリー「うー……」

男「おっと、何もしないって。そんなに警戒しなくてもいいさ」

メリー「もう帰る!」

男「おいおいお嬢さん、外は雨だぜ?」

メリー「どうせもう濡れてるから……」

男「美味しいパンとスープがあるんだ、食ってけよ」

メリー「…………」

男「ほら、そんな顔してると美人さんが台無しだぜ?」

メリー「び、美人じゃな……っくしゅん」

男「暖炉の前で温まってな、すぐ準備するから」
ふらいんぐうぃっち
メリー「…………」トコトコ

2: 2014/12/16(火) 23:17:19 ID:KydUSf62
男「ほら、熱いから気をつけてね」コト

メリー「……意味がわからないわ」

男「え?」

メリー「なんで妖怪の私なんかに優しくするの?貴方は人間でしょう?」

男「別に妖怪も人間もあまり変わらないだろ?」

メリー「全然違う!!」

男「!」

メリー「私は……貴方を頃しにきたのよ?」

男「そうだったのか?」

メリー「そうよ、妖怪はみんなそう」

男「例外は?」

メリー「……多分無いわ」

3: 2014/12/16(火) 23:18:38 ID:KydUSf62
男「多分って?」

メリー「私は人を頃した記憶がないの」

男「それは頃した事がないからなんじゃないのか?」

メリー「いいえ、きっと頃しているわ」

男「………?」

メリー「私達妖怪は定期的に人間を殺さないと消えて無くなるの」

男「それは確信できる情報なのか?」

メリー「えぇ、昔からよく言われている事だわ。それに人間の頃し方だって知ってるもの」

男「その記憶は……」

メリー「消えてない、ずっと昔から私の中にある記憶よ」

4: 2014/12/16(火) 23:20:59 ID:KydUSf62
メリー「私はきっと人を何人も頃してる……」

メリー「でもこの力の代償に、記憶が無くなるのだと思うの…」

男「じゃあなんで俺のことは殺さないの?」

メリー「わからない、振り向かれた時には既に殺意は消えていたわ……」

男「そうか、そりゃ良かった。また花を枯れさせちまうとこだったからな」

メリー「花……?」

男「庭に生えてるやつさ」

メリー「本当に変わった人間ね……自分より花の心配だなんて」

男「よく言われるよ」

5: 2014/12/16(火) 23:23:28 ID:KydUSf62
メリー「パンとスープ、ありがとう。美味しかったわ」

男「まだ外は降ってるぞ?」

メリー「貴方は多分良い人、だから近くに居たくないの」

男「俺が近くに居てほしい、って言ったら?」

メリー「言わせないわ」

男「そっか、じゃあ近くにいてくれ」

メリー「………なんでなの?」

男「ダメか?」

メリー「氏ぬかもしれないのよ?」

男「それも悪くない」

メリー「貴方、妖怪みたいな人間ね……」

男「それは言われたことなかったなぁ……」

6: 2014/12/16(火) 23:26:15 ID:KydUSf62
メリー「…………」

男「暖炉っていいよな」

メリー「………そうね」

男「そういえば気になった事があるんだけど」

メリー「……?」

男「妖怪ってのは食事もできるのか」

メリー「人間程ではないけど、食べないと、多分消えるわ」

男「不便な身体だな……」

メリー「だから人間とは相入れない存在なのよ、特殊な力も人間に害があるものばかり……」

男「特殊な力、というと君でいう電話か」

メリー「……そう……ね」ウトウト

7: 2014/12/16(火) 23:27:45 ID:KydUSf62
メリー「………Zzz」

男「寝ちゃったか」

男「果たして明日無事に起きれるのだろうか」

男「おやすみ、お嬢さん」

8: 2014/12/16(火) 23:29:09 ID:KydUSf62
男「ん………」

男「あれ、朝か……」

男「生きてるよな、うん」ツネリ

男「…………」キョロキョロ

男「誰もいねぇ……か」

男「夢だったのか、消えちまったのか、もう出かけちまったのか」

男「つーか妖怪は夜にしか行動しないわな」

男「…………やれやれ」

男「そういや昨日の雨で花達やられちまってねぇだろうな」

9: 2014/12/16(火) 23:32:48 ID:KydUSf62
男「……………って」

メリー「あら、おはよう」

男「何してるんだ?」

メリー「貴方の育てている花、少し興味があったの」

男「まだ咲いてねぇけどな」

メリー「そうね、でもいい庭だわ。昨日は気がつかなかったけれど」

男「どうしても言いたいんだが」

メリー「なにかしら?」

男「妖怪は朝も活動すんのか」

メリー「そうだけどなにか?」

男「今まで実は妖怪に会ってたかもしれないのか……」

メリー「それはないわ、妖怪の数はとてもとても少ないもの。妖怪に出会うなんて宝くじに当たるようなものなのよ」

男「つまり俺はもう宝くじには当たらないのか……」ズーン

メリー「……なんかごめんなさい」

10: 2014/12/16(火) 23:33:41 ID:KydUSf62
メリー「それじゃ、さようなら」

男「またこいよ」

メリー「本当にバカね、次は氏ぬわよ」

男「あ、ちょっと待って」

メリー「………?」

メリー「はぁ、なんなの……」

メリー「…………」

男「お待たせ、これどうぞ」

メリー「!」

男「リボン、きっと似合うと思うんだけど」

メリー「なんでこんなもの持ってるのかは、聞かないでおくわ」

男「俺一応、雑貨屋なんだけどな」

メリー「そう、口リータに興味があるわけでは無いのね、安心したわ」

男「なんだかんだ着けてくれるんだな」

メリー「妖怪だって贈り物は嬉しもの、ありがたくもらっておくわ」

11: 2014/12/16(火) 23:34:36 ID:KydUSf62
男「妖怪……か」

男「また会えるといいな、メリーさん」



メリー「人間……」

メリー「あ……名前聞いてなかったわ」

メリー「いや、聞かなくて良かった」

メリー「どこか遠い遠い街に行きましょう……」

メリー「次の電話は、イヤな人間にかかりますように……」

12: 2014/12/16(火) 23:36:42 ID:KydUSf62
本日分終

15: 2014/12/17(水) 22:35:01 ID:FcLFS5Vo
継父「おい、酒買ってこい酒!!」

母「あー、私のもよろしくぅ~」

娘「は、はい!」

娘「………あの」

継父「あー?さっさといけよ」

娘「お、お金を…」

継父「はぁ?お前働いてんだろうがよ?」

娘「こ、今月はもう……」

継父「あぁ?めんどくせーな」バキ

娘「いだっ……!」

継父「なんだその目」バキドゴ

娘「やめてください…!いたい!いたいです!」

16: 2014/12/17(水) 22:35:51 ID:FcLFS5Vo
母「もう売っちゃおうよ、こんな子」

継父「それもそうだな、そっちの方が金も手に入るし」

娘「か、買ってきます!ちゃんと買いますから!!」

継父「なんだ、へそくりか?何様だよ」

娘「ごめんなさい…ごめんなさい……」

継父「つーかさっさと行けよ」

娘「……………」ダッ

17: 2014/12/17(水) 22:37:03 ID:FcLFS5Vo
娘「…………」トボトボ

メリー「なんか嫌な雰囲気の街ね…」キョロキョロ

メリー「わっ」ドン

娘「いたた……」

娘「あ!ごめんなさい!!」

メリー「いや、私も不注意だったわ。ごめんなさい」パッパッ

娘「そ、それでは……」

メリー「貴方」

娘「?」

メリー「その怪我、どうしたの?今のじゃないわよね……」

娘「あ、これは……あはは、私ドジなんです。あなたとぶつかる前に階段で転んでしまって……」

メリー「…………」

18: 2014/12/17(水) 22:43:00 ID:FcLFS5Vo
メリー「少し、いいかしら」

娘「?」

メリー「紙コップに、口を当ててみて」

娘「あ、はい」

メリー「………ふむ、なるほど…」

娘「あの、これは?」

メリー「ありがとう、もういいわ。これはいわゆるおまじないよ」

娘「お、おまじないですか」

メリー「それと、今日は絶対に電話には出ちゃだめよ」

娘「え?」

メリー「約束して?」

娘「は、はい!それでは!おまじないありがとうございました!!」

メリー「強く…生きるのよ……」

メリー「………っ」ズキ

19: 2014/12/17(水) 22:44:50 ID:FcLFS5Vo
酒屋「まいどー」

娘「……これで今月も服変えないや」

娘「…………」

娘「おっきなリボンの可愛い子だったなぁ」

娘「おまじないってなんのおまじないだったんだろう……」

娘「恋かな、それともお金かな」

娘「…………」

娘「あはは、どっちも無理だよね……」

20: 2014/12/17(水) 22:46:14 ID:FcLFS5Vo
娘「ただいま……」

母「遅い、本当にノロマなんだから」

娘「ごめんなさい…あれ、お父さんは……?」

母「あー?なんかお仕事が見つかったんだって」

娘「良かったですね!」

母「良かったですねじゃねーよ!おめーがもっと稼いでこねーからだろ!!」ゲシ

娘「ご、ごめんなさい!」

母「ん!!さっさと酒!!」

娘「は、はい!」

21: 2014/12/17(水) 22:48:31 ID:FcLFS5Vo
浮気女「ねーぇ?今日は帰らなくていいのぉ?」

継父「いいのいいの、仕事が見つかったって言ったら間抜けみたいに喜んでたから」

浮気女「なにそれおもしろーい」

継父「ま、一応電話しとくかな」

浮気女「あは、ま・じ・め…んっ…ちゅ…じゅるるっ…」

継父「おいおい、電話先に聞こえたらどうするんだ」

浮気女「こんなにガチガチの癖にぃ」

継父「ははは」ナデナデ

22: 2014/12/17(水) 22:50:56 ID:FcLFS5Vo
娘「Zzz」

ジリリリリ

ジリリリリ

母「はい、もしもし」

継父『あー、俺だ。…ワ…ちょっと仕…シメ…事先で泊…サン…まるから』

母「…は?ちょっと!女の声がするんだけど!!」

継父『も……も…ーし?、な……て…言った?』

継父『あぁ?誰だ…お前……?』

母「ちょっと、何?ノイズ?全然聞こえないんだけど」

ツーツー

母「意味不明、あの男も潮時かな……」ガチャ

23: 2014/12/17(水) 22:53:09 ID:FcLFS5Vo
ジリリリリリ

ジリリリリリ

母「ちょっと、さっきはなんで勝手にきっ……」

メリー『私メリーさん、今パン屋の曲がり角にいるの』

母「は?」

ツーツー

母「イタズラ電話?きもっ」

ジリリリリリ

母「………はい」

メリー『私メリーさん、今肉屋の前にいるの』

母「ちょっと、いい加減に……」

ツーツー

母「あ?うざ!!」

24: 2014/12/17(水) 22:55:10 ID:FcLFS5Vo
ジリリリリリ

ジリリリリリ

ジリリリリリ

……………

娘「ん……なんの音だろ」ムクリ






メリー「私、メリーさん。今貴方の後ろにいるの」

母「………………」ガタガタガタガタ

母「……………ぁ」ブシュン

メリー「…………ふふ」

29: 2014/12/19(金) 22:44:49 ID:UpfE5/RE
メリー「はぁっ……はぁっ……げほげほっ…」

メリー「うっ……っ…!!」ズキン

娘「お母さんがいない……?」

娘「あれ?貴方は……」

メリー「…………けほっ」

娘「ど、どうやって入ったの?これがお昼に言ってたおまじないなの?」

メリー「……ごめんなさい。貴方は誰?なんで生きてるの?」

娘「お、お昼に会ったじゃないですか!」

メリー「あぁ……そう……なの…」

娘「?」

30: 2014/12/19(金) 22:50:11 ID:UpfE5/RE
メリー「いえ、ごめんなさい。ビックリさせたわね」

娘「あの……お母さんに見つからないうちに早く……出て行った方がいいと思います…」

メリー「そうね、お邪魔したわ」

娘「さ、さようなら!」

メリー「…………さようなら」ガチャ

娘「……咳してたけど大丈夫かな」

娘「………あれ」

娘「受話器くらい直してくれてもいいのにな……」ガチャリ

娘「………自由になりたいなぁ」

31: 2014/12/19(金) 22:51:14 ID:UpfE5/RE
メリー「……………」

メリー「あの子は、誰だったのかしら……」ズキン

メリー「なんで人間が親しげに……」

メリー「人間………」

メリー「うっ…頭が痛い…」ズキン

メリー「はぁっ…はぁっ…水……」ヨロヨロ

ジリリリリリ ジリリリリリ

メリー「っ…!電話の音が……頭の中で……」

メリー「………」バタ

32: 2014/12/19(金) 22:54:14 ID:UpfE5/RE
ジリリリリ ジリリリリ


「はいはい、後ろにいるんでしょ?」

「え……」

「ようこそメリーさん、あなたが電話の子ね!」

「な、なんでこっち向いて……」

「かわいい…………」

「え?」

「かわいいいっ!」ギュ

「な、な!?」

「貴方なんなの?お化け?」

「……妖怪」

「妖怪!?本当にいるんだ…」

「………貴方変な人間ね」

33: 2014/12/19(金) 23:06:58 ID:UpfE5/RE
メリー「あぁぁぁああ!!!」ガバ

老人「ふぉう!?」

メリー「はぁ……はぁ……」

老人「大丈夫かね?」

メリー「ごめんなさい、大丈夫よ」パッパッ

老人「こんな時間に寝そべっていたら危ないぞ」

メリー「………」サッ

老人「そう警戒するな、助けてやったというのに」

メリー「助け……?」

老人「ほれ」

チンピラ達「ぁ……が……」ピクピク

メリー「……!」

老人「この街はこういう街じゃ」

メリー「あ、ありがとう……」

老人「礼にはおよばんよ」

38: 2014/12/27(土) 11:52:31 ID:oUXC55D.
老人「どこか行くアテはあるのかい?」

メリー「ないわ」

老人「そうか、色々大変なんじゃのう」

メリー「貴方は何者なの?ただのお爺さんではないでしょ?」

老人「元保安官……といったところかの」

メリー「……そう」

老人「こんな街じゃから、ワシみたいな者でも少しは役に立つじゃろ」ニカ

メリー「電話、貸してもらえるかしら」

老人「む?ええぞ」

メリー「行くアテが無い、というのはちょっと嘘なの」

老人「ほう、なんだか不思議なお嬢さんだ」

メリー「貴方も十分不思議なお爺さんよ」

39: 2014/12/27(土) 11:59:46 ID:oUXC55D.
老人「何ももてなせんが、あがってくれ」

メリー「お邪魔するわ」

老人「ふむ、暗くてよくわからんかったが……そのリボン」

メリー「?」

老人「随分と遠くの街で作られておる伝統工芸品じゃのう」

メリー「ふふ、鋭いのね」

老人「ま、詮索はせんよ」

メリー「別に何てことないわ、私は旅をしているの」

老人「ほう」

メリー「今までも色んな街を巡ってきたわ」

老人「そうか、では旅人さんよ、この街はどう思うかのう」

メリー「……あまり好きではないわ」

老人「ふむ、そうか……」

40: 2014/12/27(土) 12:08:24 ID:oUXC55D.
メリー「貴方はどう思っているの?」

老人「ワシ?ワシは結構好きじゃぞ」

メリー「………」

老人「確かにここの街は、汚い事をする者、弱者を虐げる者もおる」

老人「じゃが優しい心を持つ者もおる」

メリー「それはどこの街も……」

老人「そうではない、表と裏、というかのう」

老人「悪人は悪人をしっかりとやり、善人は善人をしっかりとやる、そんな街なんじゃ」

メリー「む………」

老人「はは、お嬢さんには少し難しかったか」

老人「善人の皮を被った悪人、というのは恐ろしくはないかのう。ワシはそういうヤツが一番怖い」

メリー「ふむ………」

老人「旅をするなら、しっかりと見極めるんじゃぞ」

メリー「……わかったわ」


おわり

41: 2014/12/27(土) 19:09:41 ID:Q6xZx9WA

引用: メリー「私メリーさん、今……」 男「後ろにいるんだよね」