1: 2008/06/22(日) 21:43:37.94 ID:n0GgGI9I0

5: 2008/06/22(日) 21:48:02.82 ID:lICGxk7V0

川 ゚ -゚)「もしもし?どうしたんだ妹者?」

『ひくっ……もしもし、クー……?』

川 ゚ -゚)「……泣いて、いるのか?」

『クーあのね……妹者はばかなのじゃ……』

川 ゚ -゚)「とりあえず落ち着こう、な?」

『うん…うん……』

川 ゚ -゚)「それで……どうしたんだ?」

『あのね……妹者、ちっちゃい兄者にひどいこと言ったの……』

川 ゚ -゚)「ひどいこと?」

『うん……怖いって』

川 ゚ -゚)「………」
ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
6: 2008/06/22(日) 21:51:04.95 ID:lICGxk7V0
『妹者の事、助けてくれたのに……変質者から守ってくれたのに……それなのにいもじゃね……』

『怖いって……』

川 ゚ -゚)「そっか……」

『ねぇ、どうしよう……ちっちゃい兄者と仲直りしたい……
 ちゃんと、ごめんなさいって言いたい……
 ちゃんと……助けてくれてありがとうって言いたい……
 ぐすっ……うく……うぅ……』

川 ゚ -゚)「妹者」

『……クー?』

川 ゚ -゚)b「私に任せろ。いい考えがある!」



8: 2008/06/22(日) 21:52:20.52 ID:lICGxk7V0


( ^ω^)とξ゚⊿゚)ξの鬼隠しのようです―解―

 第2話「ひぐらしのなく頃に」



9: 2008/06/22(日) 21:54:13.20 ID:lICGxk7V0

 守りたいと思う心に、嘘はなかった。
 大切にしたいと思う心は、誰よりも強いはずだった。

 でも……



l从;-;ノ!リ人「こわい……」



 俺が守りたかったはずの妹者の笑顔はそこにはなかった。
 止め処なく流れる涙の雫は、俺の所為で出るものだった。

 俺は妹者を守っているつもりでいた。
 でも、俺は………

10: 2008/06/22(日) 21:56:41.66 ID:lICGxk7V0
 手を握り拳を作る。
 そこにあったのは、確かに俺の手なのだが
 あの時の拳は恐らく血に染まった鬼の拳だったに違いない……


 そう、俺は自分でもわからないうちに鬼にとり憑かれてしまったのだ。
 妹者を守ると言う口実で俺は人を殺そうとした。

 兄者が警察を呼んでくれて犯人は捕まった。イキテイタヨウダ……
 結局、俺は正当防衛と言う事になり何の罪にも問われなかったのだが、
 俺は確かに妹者の心を大きく傷つけてしまった。


 俺は、あの日以来妹者と顔を合わせる事ができなくなっていた。
 ただ、笑顔を守りたかったはずなのに……

 俺は妹者の笑顔を失わせてしまった……

11: 2008/06/22(日) 21:59:23.18 ID:lICGxk7V0
(´<_ ` )「……ん?」

 机の上で携帯が震えていた。
 俺はベットから起き上がり、携帯を開いた。


  4/15(日)
  差出人:須名空
  件名:
  本文:
  VIP駅で待つ


 それは、須名らしい淡白な文章のメールだった。
 しかも須名からメールが来るなんて初めての事だった。

(´<_ ` )「そうか……」

 俺は確信する。
 須名の用事とは妹者に関することだろう。

 俺が妹者を泣かせたから……

13: 2008/06/22(日) 22:01:42.24 ID:lICGxk7V0
( ´_ゝ`)「おーい、おとじゃー!げんきかー?」

 部屋の外で兄者の声が聞こえる。
 兄者なりに俺に気を遣ってくれているのだろうか。

(´<_ ` )「ああ、俺は元気だ。それより妹者は?」

 その名前を発するのも随分と久しいように感じた。

( ´_ゝ`)「それが朝から出かけてるみたいでさ……
       まぁ、なんだ。早く仲直りしろよ。
       家がじめじめして居辛いったらありゃしない」

 大学に通う以外はひきこもりの兄者が何を言うか……
 でも、流石家に明るい雰囲気がなくなったのは確かだ。
 俺と妹者の冷たい空気が流石家も冷たく凍らせていたのだから。

(´<_ ` )「……すまんな。じゃあ、俺もちょっと出かけてくるよ」

 俺は一言詫びて部屋から出た。
 すれ違った兄者の顔に 女だったら頃す という妬みの念がびっしり詰まっていた事は気にしないでおくとする。

14: 2008/06/22(日) 22:04:42.93 ID:lICGxk7V0
( ´_ゝ`)「なぁ、弟者?」

(´<_ ` )「ん?」

 さっきの恨めしそうな顔と一転して、兄者は急にまじめな顔を見せる。

( ´_ゝ`)「今回だけは許す。でも、もう一度妹者を泣かせたら許さないからな」

(´<_ ` )「……ああ、わかってるよ」

( ´_ゝ`)「お前はもうずっと“弟者”なんだから妹者の事だけを氏んでも守れ。
       俺は“兄者”だからお前と妹者のことを守るから」

(´<_ ` )「…………」

 兄者はそれだけ言い残し、自分の部屋に戻っていった。
 わかってるよ……
 もう、ごっこ遊びは止めたんだ。

 俺はもう妹者だけの“ちっちゃい兄者”なんだから……

16: 2008/06/22(日) 22:06:45.34 ID:lICGxk7V0
*―――*―――*


川 ゚ -゚)「遅い!!10分の遅刻だ!」

l从・∀・ノ!リ人「遅いのじゃー!」

(´<_ ` )「へ?」

 俺は突然の出来事にただ目を丸くしていた。
 細くて分かりづらいと思われるが、精一杯に目を見開いていた。

 待て、そもそも集合時間なんて決まってなかったじゃないか。
 いや、じゃなくて……

17: 2008/06/22(日) 22:09:23.84 ID:lICGxk7V0
(´<_ `;)「な、何で妹者がここに?!」

 須名の用事が妹者に関することだとは大方予想はしていた。
 でも、本人がそこにいるなんて……
  _,、_
l从・∀・#ノ!リ人 「いちゃ悪いのじゃ?まさか、クーと二人でデートできると思っていたのじゃろう!?」
  _,、_
川#゚ -゚)「ふん、私のタイプじゃないわい!勘違いもいいとこだ」
  _,、_
l从・∀・#ノ!リ人「大体、ちっちゃい兄者はいつも時間にルーズなのじゃ!
       もっとテキパキとした行動が大事なのじゃ!」
  _,、_
川#゚ -゚)「そうだそうだ!ちんたらしている男は嫌いだ、帰れ!」

 それから何故か俺は罵声を浴び続けた。
 妹者はまだ許せるのだが、クーの一言はかなり心を抉る。

19: 2008/06/22(日) 22:12:30.85 ID:lICGxk7V0
  _,、_
川#゚ -゚)「大体なんだその湿気た面は!?私とキャラが被る!」
  _,、_
川#゚ -゚)「お前は牡丹じゃなくてただの豚よ!」
  _,、_
川#゚ -゚)「お前はいつも妹者のそばにいるなこの口リコン!!
     妹者は私の物だからもう近寄るな変O!」
  _,、_
川#゚ -゚)「変Oは屑だ! この世の癌だ!! 近寄るな病気がうつる!!」
  _,、_
川#゚ -゚)「くーず!屑はゴミ箱だこの屑!!」
  _,、_
川#゚ -゚)「くーず!屑はゴミ箱だこの屑!!」

川#゚ -゚)「大事な事なので2回言いました」

l从・∀・;ノ!リ人「もう、いいのじゃクー……」

 妹者がクーを止め、クーは息を切らしながらようやく落ち着いたようだ。
 まだ言い足りないらしいがとりあえずは満足したらしい。
 ちなみに俺の心はもうズタボロです。

20: 2008/06/22(日) 22:15:35.01 ID:lICGxk7V0
l从・∀・ノ!リ人「よっしゃ、すっきりした!じゃあ、クーどこに行く?」

川 ゚ -゚)「そうだな…… 私は遊園地と言うところに行ってみたいぞ」

l从・∀・ノ!リ人「おー! 把握なのじゃ!」

 クーは無表情ながらも目を輝かせて俺を見ていた。
 妹者も優しいあの頃の笑顔で俺を睨みつけていた。

(´<_ `;)「え~と、俺はどうすれば……」

川 ゚ -゚)「お!あんなところにレンタカーのお店が」

l从・∀・ノ!リ人「そう言えばちっちゃい兄者は車の免許を持っていたような……」

(´<_ `;)「え、えーと…… ははは……」


l从・∀・ノ!リ人「早くしないと日が暮れるのじゃ!」

川 ゚ -゚)「お昼前には行きたいところだな」

(´<_ `;)「お、俺実はペーパードライバーでさ……
       あんま車乗ったことないから運転できるかなーなんて……
       ほら、せっかく駅前なんだし電車使おうよ」

21: 2008/06/22(日) 22:17:59.91 ID:lICGxk7V0
 それを言い終えた時に何か違和感のようなものを感じた。
 それは視線だった。
 今までなかったはずの軽蔑したかのような眼差し。

 それは、目の前にいる彼女達から発せられる視線だった。

 二人は冷たい爬虫類のような目で俺を見てくる。
 落ち着け俺。
 クールになれ。

 二人がこんな目をする訳ない!
 これは被害妄想が生んだ幻に決まってる。

 ん、何だか首が痒いな……

24: 2008/06/22(日) 22:21:36.64 ID:lICGxk7V0
l从 ∀ ノ!リ人「ねぇ、ちっちゃい兄者は妹者達に嘘や隠し事してないよね?」

(´<_ `;)「あ、当たり前だろ!俺が妹者に嘘や隠し事なんて……」

l从 - ノ!リ人「嘘。妹者は知っているんだから。大学の人達と内緒でキャンプ行ったりしてる事。
       免許持ってるちっちゃい兄者が運転してないはずないよね?」

 車での運転はあまり好きじゃなかった。
 それにレンタカーなんて借りるほど金を持ってなかったし
 何より今月はもう金欠だった。
 電車の方がまだ安上がりできるし、何とか誤魔化せないかな……
 俺はとりあえず嘘を付く事にする。

(´<_ `;)「ち、違うんだよ! 俺より運転のうまい先輩がいるから俺は運転なんて全然!!」

 だが俺から咄嗟に出たのは、いい訳にもならない下手糞な台詞だった。

l从 ∀ ノ!リ人「そっかー、ちっちゃい兄者よりも運転うまい人がいるから、
       ちっちゃい兄者は全然運転なんてしないんだね」

(´<_ `;)「そ、そうなんだ。俺なんて全然……」


26: 2008/06/22(日) 22:23:42.29 ID:lICGxk7V0
 l从゚Д゚ノ!リ人「嘘だッ!!」


27: 2008/06/22(日) 22:25:45.63 ID:lICGxk7V0
*―――*―――*


数分後、そこには元気に走り回るレンタカーの姿が

(´<_ ` )「いやー、一時はどうなる事と思いましたがやっぱり運転は最高ですね」

l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者の調べは正しいのじゃ!
       ちっちゃい兄者の運転は女を惑わすとな!」

川 ゚ -゚)「ほう、車でブイブイ言わせてるのか」

(´<_ `;)「いや、兄者のでたらめだから間に受けないで……」

 俺は兄者を頃すことを頑なに誓った。
 確かに大学の合宿と称したお泊まりでの飲み会では俺は専らの運転手である。
 だけど女を惑わすなんてそんな……

29: 2008/06/22(日) 22:27:39.25 ID:lICGxk7V0
l从・∀・ノ!リ人「風が気持ちいのじゃー」

川 ゚ -゚)「まだ、ちょっと肌寒いがな……」

 妹者は窓を開けて風を感じていた。
 手を出して風に触れるとまるで女性の胸を揉んでいる感覚に陥るとか何とか……

l从・∀・ノ!リ人「クーの胸、大きいのじゃ……」

川 ゚ -゚)「ん?」

l从*・∀・ノ!リ人+「触らしてなのじゃ!!」

川;゚ -゚)「ちょっ!? 止めろ!!」

 風の風圧で感じる胸の感触に飽きたのか、妹者は実物を触りに後部座席のクーにちょっかいを出していた。
 何とも羨ましい光景だったが、妹者には妬みの念がびっしり詰まっていて怖かった。

 あの顔は今朝見た兄者の顔にそっくりだった。
 流石家恐ろしや……

30: 2008/06/22(日) 22:30:23.28 ID:lICGxk7V0

(´<_ ` )「お、観覧車が見えてきたぞ」

l从・∀・*ノ!リ人「本当なのじゃ!」

川*゚ -゚)「おぉ!!」

 二人はじゃれあうのを止め窓から顔を出す。
 須名も妹者も目をきらきらと輝かせていた。

 先程の悪魔のような顔は何処へやら。
 きっともう何に乗るか決めているのだろう。

32: 2008/06/22(日) 22:33:23.31 ID:lICGxk7V0
 遊園地には混雑とまではいかないが、たくさんの人で賑わっていた。
 だが、この二人のはしゃぎ様には適わないだろう。

l从・∀・ノ!リ人「まずは、王道のジェットコースターなのじゃ!
       いや、バンジーも捨てがたい……
       クーは何に乗ってみたい?」

川 ゚ -゚)「そうだな……
     お!! 妹者あれに乗ってくれないか!」

 須名の指差した方向にはメリーゴーランドが優雅に回っていた。
 小さい子供が列を成して並んでいる。

l从////ノ!リ人「ば、ばかを言うんじゃない!!」

川*゚ ー゚)「頼む! 一生のお願いだ」

 須名は鼻息を荒くして頼んでいた。
 でも、妹者は顔を真っ赤にさせて拒んでいる。

33: 2008/06/22(日) 22:35:34.01 ID:lICGxk7V0
l从////ノ!リ人「無理なものは無理なのじゃ!」

川 ゚ -゚)「……と、言いつつ本当は?」

(´<_ `*)「これ写メにとって兄者に送信すればきっと喜ぶぞ」

l从////ノ!リ人「おっきい兄者喜んでくれるのじゃ?」

(´<_ `*)「ああ、きっと今晩の…… ゴホンッ
       きっと家宝として大事にされるぞ」

l从・∀・*ノ!リ人「そっかぁー……」


l从・Д・#ノ!リ人「だが断るのじゃゴルァ!!」

34: 2008/06/22(日) 22:38:21.64 ID:lICGxk7V0
 俺と須名は走って逃げる。
 それを妹者は鬼のような形相で追いかけて来た。

l从・Д・#ノ!リ人「へへ、隠れ鬼なのじゃな?!
       妹者の得意分野なのじゃ!!」

 俺と須名を見失った妹者はきょろきょろと辺りを見渡す。
 そして、あっちへこっちへと忙しなく走り回っていた。
 その様子を俺達は、物影からこっそりと観察していた。

川*゚ -゚)「おい見ろ、妹者が今にも泣きそうだぞ」

(´<_ ` )「ああ、本当だ。そろそろ出て行くか」

川*゚ -゚)「いや、待て……」

 須名は俺の腕を掴んで、出て行くのを止める。

川*゚ ー゚)「もう少しだけ妹者の事見ていよう」

 須名の笑顔は綺麗だった。
 最初会ったときのような、まるで人生に退屈を感じているという顔ではなく
 日々の幸せを噛み締めているようなそんな笑顔だった。

 どこかしら俺に似た雰囲気もつ彼女をつい魅入ってしまう

36: 2008/06/22(日) 22:40:38.61 ID:lICGxk7V0
川 ゚ -゚)「むっ、なんだ人の顔を見て?
     何か付いているのか?」

(´<_ ` )「い、いやー……
       最初会った時と変わったなって……」

 須名は一瞬困ったような顔を見せる。
 でも、その後すぐに笑った。

 それはとても優しくて幸福に満ちた笑顔だった。

川*゚ ー゚)「妹者のおかげだ。
     妹者のおかげで、今この一瞬一瞬が幸せなんだ」

 それは恥ずかしいほどに真っ直ぐで嘘偽りのない本気の言葉のようだった。
 きっと彼女も本気で言っているのだろう。

38: 2008/06/22(日) 22:43:08.21 ID:lICGxk7V0
(´<_ ` )「妹者の事好きなんだな」

川 ゚ -゚)「ああ、私が女だというのが悔やまれるよ。
     いっそ、自由の国に行って結婚するのもありだな」

(´<_ `;)「いや、妹者との交際は認めねえよ」

川 ゚ -゚)「ふん、お前は何様のつもりだ?」

 冗談のつもりで言ったつもりなのだが、須名は表情を曇らせる。
 そして、冷たい目で俺を見据えてきた。

川 ゚ -゚)「お前、妹者を泣かせたんだって?」

 目の前の色が一瞬灰色になるのを感じた。
 だって、それは今一番聞きたくなかった一言だったのだから……

 そうさ、俺は妹者を……


40: 2008/06/22(日) 22:47:08.44 ID:lICGxk7V0
川 ゚ -゚)「ただお前は妹者のために戦ったのだろう?
     だったら、私はお前の事を責めたりしない」

 え…?
 俯いていた俺は顔を上げる。
 そこには笑顔の須名がいた。

川 ゚ ー゚)「むしろ私は言わなければならない。
     妹者を救ってくれて……



 “ありがとう”



 それは、たった一つの単語だった。

 でも、優しくて温かい
 一つの感情だった……

42: 2008/06/22(日) 22:49:39.34 ID:lICGxk7V0
川 ゚ -゚)「ん、どうした弟者?」

 俺は須名から背を向けていた。
 俺は不覚にも涙を流していたのだから。

 情けないほど素直に、大の男が大粒の涙を零していたのだから……

( <_  )「な゛んでもない゛っ……」

川 ゚ -゚)「ここは遊園地なんだぞ。泣くなら外で泣け」

 相変わらず須名は毒舌だった。
 でも、そんな須名から聞けた言葉。

 俺が一番聞きたかったその一言。

 “ありがとう”

 それが何よりも俺の心を温めてくれて……

43: 2008/06/22(日) 22:51:55.54 ID:lICGxk7V0
l从・∀・#ノ!リ人「見つけたのじゃー!」

 さぁ、今は泣くべき時じゃない笑うときなんだ。
 そっと涙を拭いて、この一瞬を楽しもう。

川 ゚ -゚)「逃げるぞ!!」

(´<_ ` )「ああ!!」

l从・∀・#ノ!リ人「あ、待つのじゃー!!」

 妹者は息を切らしながら追いかけてくる。
 だが、俺と須名は無情にも全速力で逃げた。
 後ろをチラリと見る度に妹者が涙目になっていることが確認できた。

 これじゃあ、どっちが鬼だかわからない。

 その後、遊園地に来たと言うのに俺等の隠れ鬼は妹者のお腹が鳴るまで続けられた。


45: 2008/06/22(日) 22:53:38.28 ID:lICGxk7V0

 TIPS

【隠れ鬼】

 隠れ鬼はかくれんぼと鬼ごっこを組み合わせた遊び。
 隠れ鬼ごっこやかくれおにごと言う場合もある。

 参加者は最初はかくれんぼと同じように隠れるが、鬼にタッチされるまで捕まったとみなされず、鬼から逃げる事もできる。
 タッチされると鬼を交代というルールそのものが鬼ごっこと同様なので、実質隠れ鬼は鬼ごっこと変わらないとも言える。

46: 2008/06/22(日) 22:56:11.60 ID:lICGxk7V0
*―――*―――*


l从・∀・ノ!リ人「相変わらずちっちゃい兄者は甘党なのじゃ……」

 妹者と須名は冷ややかな目で俺を見てくる。
 少し甘いのが好きなくらいなのにどうしてなのだろうか?

川 ゚ -゚)「人の癖にとやかく言うつもりはないが……
     家のお婆さん、糖尿病でさ……いや、何でもない……」

l从;∀;ノ!リ人「ちっちゃい兄者のおしOこは甘くなるのじゃ?
       嫌なのじゃ……」

(´<_ `;)「そ、そんな皆して……」

川 ゚ -゚)「まぁ、何が言いたいかというとジュースに砂糖入れるな」

(´<_ `;)「い、いいだろ別に……」

 確かにジュースに砂糖を入れるなんて普通じゃないかもしれない。
 しかも、これは果汁100%のジュースじゃない普通のジュースだから尚更か……

47: 2008/06/22(日) 22:58:51.83 ID:lICGxk7V0
l从;∀;ノ!リ人「ちっちゃい兄者のおしOこが甘くなるのじゃ……」

 妹者は本気で嫌な顔をしていた。
 ここまで嫌な顔をされると何か凄く悪い事をしたという気分にさせられる。

(´<_ ` )「だ、大丈夫だから!ほら、砂糖1袋だけにしたから」

川 ゚ -゚)「2袋入れるつもりだったとはな」

 俺は咄嗟に2袋目の砂糖を隠す。
 須名と妹者はそれを哀れみの眼差しで見ていた。

(´<_ `;)「そ、そうだ。午後はちゃんと乗り物に乗ろう。
       何に乗りたい妹者?」

l从・∀・ノ!リ人「うーん、そうじゃな…… 実は隠れ鬼しながら乗り物を確認しておったのじゃよ」

 そう言いながら妹者は、どこから手に入れたのか遊園地の地図を取り出す。

49: 2008/06/22(日) 23:01:35.96 ID:lICGxk7V0

l从・∀・ノ!リ人「この遊園地のメインはこのジェットコースターじゃ。
       360度回転するぞ」

川 ゚ -゚)「ほう、一回転するのかそれは楽しみだ」

l从・∀・ノ!リ人「だがしかーし、妹者のお勧めはこのバンジー!高さ90Mから飛び降りるのはマジパネェwww」

川 ゚ -゚)「高さ90Mとな…… 楽しみだ」

 妹者はそれから身振り手振りでアトラクションを紹介していた。
 須名ははじめての遊園地だった為か静かに目を輝かせていた。

 その様子は図書館で初めて須名にあった時の事を思い出させる。
 最初無表情だった須名が妹者のペースに巻き込まれて、いつの間にか笑顔になっていたあの時を。

 俺はその様子がとても微笑ましくて、つい見惚れていた。


l从・∀・#ノ!リ人「ちっちゃい兄者も議論に参加するのじゃ!協調性が足りないのじゃ!!」

川#゚ -゚)「そうだそうだ、どうせ学校でもすかしてるんだろ!」

 あの時と違うのは、須名は俺にも心を開いてくれたと言うことか。
 いや、心開きすぎだろ……

51: 2008/06/22(日) 23:04:24.31 ID:lICGxk7V0
l从>∀<ノ!リ人「と言うわけで、まず最初はお化け屋敷なのじゃー!」

川*゚ -゚)「妹者が怖くて悶えるんですね。わかります」

(´<_ ` )「頼むからお化け屋敷の中では走り回るなよ」

l从・∀・#ノ!リ人「ちっちゃい兄者は馬鹿にしすぎなのじゃ!妹者はもう子供じゃないのじゃ」

川#゚ -゚)「お前こそ怖くて走って逃げ出すなよ!」

(´<_ `;)「あー、はいはい。俺が悪かったです」


川д川「呪マース」


Σl从・д・;ノ!リ人「ぎゃあああああ!!!!」

川 ゚ -゚)「……ほぅ」

l从;д;ノ!リ人「出たのじゃあああ~~~!!」

(´<_ `;)「だ、大丈夫だから妹者……くっつきすぎだって」

川*゚ -゚)「……可愛い」

54: 2008/06/22(日) 23:06:52.30 ID:lICGxk7V0
l从・∀・ノ!リ人「続いてジェットコースターなのじゃ!」

川 ゚ -゚)「これはなかなか怖そうだ……」

(´<_ `;)「あんまり怖そうな顔してないように見えるが……」

川#゚ -゚)「むっ、失礼だな。自分だって顔の種類あんまないくせに!」

(´<_ `;)「そう言われても……」

l从・∀・ノ!リ人「何をわけの分からない言い争いをしてるのじゃ?
       ほら、そろそろ……ぎゃあああああ~~~~!!!!」

川 - )「…………」

( <_   )「…………」

l从;∀;ノ!リ人「いやああああああ~~~~……って、クー?ちっちゃい兄者?」



「「「ぎゃあああああ~~~!!!」」」

55: 2008/06/22(日) 23:09:19.33 ID:lICGxk7V0
川 - )「……………」( <_   )


l从・∀・ノ!リ人「ふぅ~楽しかったのじゃー」

川 ゚ -゚)「今のはさすがに怖かった……」

(´<_ ` )「ああ、あそこまで怖いとは予想外だった……」

l从>∀<ノ!リ人「妹者は、二人の絶叫が聞けて満足なのじゃ」

(´<_ `;)「よしじゃあ、少し休憩しようか? 何か飲むか?」

l从・∀・ノ!リ人「何を言っておるのじゃ? ほら、次バンジーなのじゃ!」

(´<_ `;)「か、勘弁してくれ……」

川 ゚ -゚)「ふん、年寄りが! 行こう妹者、二人だけで愛の絆を深めよう」

l从・∀・;ノ!リ人「最後の方何かおかしいけど、行くのじゃ」


(´<_ ` )ノ「いってらっしゃーい」

l从・∀・*ノ!リ人「べーだ」川 ゚ -゚)


57: 2008/06/22(日) 23:12:26.08 ID:lICGxk7V0
 妹者と須名は楽しそうに笑いながら、バンジー台へと駆け行った。
 それに俺は後ろからゆっくりと付いて行く。

 俺は妹者達に見えないようにして微笑んでいた。
 守りたかった笑顔は、確かにそこにはあったのだ。

 どういうつもりで、俺を遊園地に誘ったのかわからないが、恐らく須名の計画だろう。
 だったら俺は須名に感謝しなければならない。
 須名のおかげで、妹者の笑顔が戻ったのだから。

 空を見上げる。

 澄み切った青が、だんだんと赤に染まって行くのが見えた。
 そろそろ楽しかった時間もお終いのようだ。

 でも、俺は確信している。
 今日の楽しい時間が終わったとしても、これからも幸せで楽しい時間は続くのだと。


 だって、妹者はあんなにも素敵な笑顔で幸せを振りまいているのだから―――

59: 2008/06/22(日) 23:16:41.05 ID:lICGxk7V0

l从・∀・*ノ!リ人「楽しかったー!さぁ、帰るのじゃ」

川*゚ -゚)「おう、帰ろう」

 余程楽しかったのだろうか。
 二人は頬は、夕焼けと同じように赤く染まっている。

 俺はそれを見て笑っていた。

l从・∀・#ノ!リ人「むっ、何がおかしいのじゃ!?」

川#゚ -゚)「きもいぞ、変O」

(´<_ ` )「いや、悪い悪い。ただ、二人とも本当に楽しかったんだなって」

 妹者と須名は顔を見合わせる。
 そして、二人もお互いの顔を見て笑った。

60: 2008/06/22(日) 23:19:16.45 ID:lICGxk7V0
l从・∀・*ノ!リ人「クーの顔真っ赤なのじゃー!」

川*゚ -゚)「妹者こそ!」

 二人が笑う。
 だから俺もそっと微笑む。

 妹者にはずっと笑っていてほしいと思った。

 だから、絶対にもう……

 彼女を泣かせたりはしない
 たとえ何があっても見守っていく

 ……絶対

 泣かせたりしない

62: 2008/06/22(日) 23:21:38.35 ID:lICGxk7V0
l从・∀・ノ!リ人「どうしたのじゃ?」

 俺は指輪を手に取る。
 あの日渡しそびれた指輪。

 今日こそ渡すべき日なんだ。

l从・∀・*ノ!リ人「え?」

(´<_ ` )「入学祝いだ。ほら……」

l从 - ノ!リ人「…………」

 しかし、妹者は俯いたままそれを受け取ってはくれなかった。

(´<_ `;)「あ……、指輪なんてセンスなかったか?」

 俺は何とか頑張って笑顔を作りながら指輪を隠す。
 そっか、本当は妹者はまだ俺の事……

 正直、俺は浮かれていたのだろう。
 須名に「ありがとう」と言われて、
 妹者が今日一日を本当に楽しそう遊んでいるのを見て
 俺は許されたものだと錯覚していたのだ。

64: 2008/06/22(日) 23:26:33.08 ID:lICGxk7V0
l从 - ノ!リ人「違うのじゃ…… そうじゃなくて……」

 妹者は、指輪をそっと隠した俺の腕を掴む。
 そして――


l从^ー^*ノ!リ人「連れてって欲しいところがあるのじゃ」

 そんな俺の心配は杞憂に終わった。
 だって妹者はこんなにも優しい笑顔で俺を見つめてきたのだから。

65: 2008/06/22(日) 23:28:38.01 ID:lICGxk7V0
l从・∀・ノ!リ人「何をぼおっとしておるのじゃ?さぁ、早く出発するのじゃー」

 俺は車のエンジンを付け走らせる。
 助手席の窓からひんやりとした風が流れ込んでくるのだが、
 俺の火照った体を冷ますには十分ではなかった。

川 ゚ -゚)「……で、これからどこに行くんだ?」

l从・∀・*ノ!リ人「着いてのお楽しみなのじゃー」


 それから妹者の指示のもと、俺はハンドルを右へ左へと切る。
 遊園地は街から外れた位置にあったのだが、それが徐々に街の明かりが見えてくるようになる。 

 街といっても、店が立ち並ぶところと言うより住宅地に入ってきたような感じだった。

l从・∀・ノ!リ人「ここを左に曲がって大きな建物が見えたら到着なのじゃ」

67: 2008/06/22(日) 23:31:14.58 ID:lICGxk7V0
 そして着いた先は、何者も拒まぬ大きな塀に建物を象徴するような大きな扉が印象的な教会だった。
 きっと結婚式でよく使われるところなのだろう。隣にはレストハウスも見えた。

l从・∀・ノ!リ人「クー、頼みがあるのじゃ」

川 ゚ -゚)「ん?」

l从・∀・ノ!リ人「あのね……」

 妹者は須名の耳もとで俺に聞こえないように囁いた。

川 ゚ -゚)「まぁ、本当は私にやってもらいたいくらいだが把握した」

 妹者の頼みにどうやら須名は了承をしたようだ。
 そして須名は先に一人で教会の中へ入っていく。

69: 2008/06/22(日) 23:33:20.49 ID:lICGxk7V0
l从・∀・ノ!リ人「さぁ、ちっちゃい兄者行こ!」

 須名が中へ入り、程よく時間が経ったところで妹者は口を開く。
 そして、手を差し出してくる。

 俺は妹者の手を握り教会の中へ入った。


 中では須名が牧師のような真似をして立っていた。
 そして、俺と妹者はヴァージンロードの上を手を握りながら歩く。

 結婚式とはちょっと違うが、俺達には父親がいないのだから仕方ないか。
 ちらりと、妹者の方を見ると妹者は頬を真っ赤にさせていた。
 いや、もしかしたら俺も赤面しているかもしれない。

 そして、俺と妹者が須名の前に辿り着いたときに須名は重々しく口を開く。


70: 2008/06/22(日) 23:35:42.37 ID:lICGxk7V0
川 ゚ -゚)「“流石妹者”―――、
     汝病める時も健やかな時も
     この者を愛する事を誓いますか?」

 妹者は少しだけ寂しそうな顔をしてから、いつもの輝く笑顔で答える。
 
l从・∀・ノ!リ人「誓います」


川 ゚ -゚)「―――流石弟者……、
     汝、氏が二人を分かつまで
     この者を愛することを誓いますか?」

 恥ずかしいほどに火照った体温と高鳴る心臓の鼓動が、この先の言葉を邪魔する。
 だけど、それに負けずに俺は深くを息を吸い込み、誓いの言葉と共に吐いた。

(´<_ ` )「誓います」

71: 2008/06/22(日) 23:39:02.95 ID:lICGxk7V0

川 ゚ -゚)「うむ、よろしい。では、指輪の交換を」

 俺はさっき隠した指輪を取り出す。

 そして、

 妹者の左手を取り

 ゆっくりと薬指にはめた―――


75: 2008/06/22(日) 23:41:56.92 ID:lICGxk7V0
l从・∀・*ノ!リ人「…………」

(´<_ ` )「あ、ちょっと大きかったかな?」

 指輪はすっぽりと妹者の薬指に納まった。
 それは不注意で外れそうな感じの緩さがあるようにみえた。
 だけど、妹者は笑顔でいいよと言ってくれた。

l从・∀・*ノ!リ人「あ、指輪交換なのにちっちゃい兄者の分の指輪がないのじゃ……」

 妹者は少し考え込むと何かを思いついたようにまた笑う。

l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者! 左手の薬指を出すのじゃ!」

 俺は言われるがままに手を差し出す。

76: 2008/06/22(日) 23:44:38.53 ID:lICGxk7V0
 すると、妹者は俺の左手の薬指をぎゅっと握り締め

l从・∀・*ノ!リ人「妹者がちっちゃい兄者の指輪なのじゃー!」

 と、恥ずかしそうに言った。
 こっちまで恥ずかしくなる台詞に俺も顔が真っ赤になる。

 ところが須名はその様子についに耐え切れなくなったのか不満を漏らす。

川#゚ -゚)「牧師役なんてもう嫌だ。私にも指輪してくれ!」

l从・∀・ノ!リ人「じゃあ、クーは右手の薬指なのじゃ!妹者の隣に来るのじゃー」

77: 2008/06/22(日) 23:46:34.38 ID:lICGxk7V0

 須名は妹者の左隣に来ると、右手を差し出した。
 そして、妹者は須名の右手の薬指をぎゅっと握った。

 それは傍から見ればおかしな光景だろう。
 真ん中の少女が、二人の男女の薬指をぎゅっと握り締めている。
 そして、3人とも頬を赤らませて微笑んでいる。

 そこには結婚式のように祝福してくれる観客はいなかったが、
 教会の薄く燈されている灯りが俺達を祝福するかのように精一杯に輝いていた。

80: 2008/06/22(日) 23:49:34.93 ID:lICGxk7V0
l从・∀・*ノ!リ人「そろそろ帰るのじゃ」

 妹者の言葉に、俺と須名は首を縦に振る。
 本当は少し名残惜しいのだけれども、この幸せは何もここにあるというだけではないのだから。

 俺達は、この状態で車に戻る。
 そして、一旦俺達の指輪は外された。
 ぎゅっと握られた妹者の小さい手が解けた時、俺はとても大きな物を失ったような気分に襲われた。
 ミラーに映る後部座席の須名もやはり寂しそうな顔をしていた。

 それを察してか妹者は大きく笑った。
 車降りたらまたするのじゃって照れた真っ赤な顔をしながら、顔をぐちゃぐちゃにさせて大きく笑った。


 その言葉に俺は安堵し、車のエンジンをかけた。

 車の中ではみんな一言も喋らなかった。
 今日の楽しかった時間の余韻に浸るかのように、皆それぞれ幸せを噛み締めているかのような素敵な表情で窓を眺めていた。

81: 2008/06/22(日) 23:52:51.00 ID:lICGxk7V0
 集合場所のVIP駅に到着し、レンタカーのお店に車を返す。
 それから、妹者はまた俺達の指輪になり電車に乗り込む。

 俺の忙しなく働く心臓のリズムのように時間は淡々と進んでいく。
 時折妹者の指を握る力が強くなる時がある。
 妹者の顔を除くと、3人同時に目があってしまった。

 そしてまた笑う。この日、数え切れない程笑った。
 多分一生分と言っても満足するくらいに何度も何度も笑顔を作った。


「次は、ユトリ、ユトリー」

 次の駅を伝える車掌の言葉に、須名は反応を見せる。
 そして寂しそうな顔を見せた。

83: 2008/06/22(日) 23:55:26.37 ID:lICGxk7V0
l从^ー^*ノ!リ人「大丈夫なのじゃ、またみんなで遊ぶのじゃ」

川*゚ ー゚)「ああ、約束だぞ。例え何があっても絶対な」

(´<_ ` )「そうだ、その時は兄者も連れて来ようか? 更に楽しくなると思うぞ」

l从・∀・*ノ!リ人「おおー賛成なのじゃ! むしろ今日の事言ったら絶対拗ねてしまうのじゃ」

川 ゚ -゚)「兄者? ああ、弟者の双子の兄という奴か。
     同じ顔が2つもいたら面倒だな」

l从・∀・ノ!リ人「顔は同じだけど全然違うのじゃー」

(´<_ ` )「変Oだけど面白いやつだよ。きっと今の須名なら気にいると思う」

川 ゚ -゚)「そっか、会うのを楽しみにしてるよ」

 そして、電車の揺れは徐々におとなしくなっていく。

85: 2008/06/22(日) 23:58:05.62 ID:lICGxk7V0
川*゚ -゚)「じゃあな、妹者に弟者」

 須名の薬指から妹者の手が、ゆっくりと解けていく。
 須名はそれを悲しそうに見つめるのだが妹者がにっこりと笑うのを見て彼女もまたにっこりと笑い顔を見せる。

l从・∀・*ノ!リ人「またなのじゃ!」

(´<_ ` )「また、今度な」

川*゚ ー゚)「ああ、……またな」

 須名は名残惜しそうに電車から出ていく。
 そして、須名は窓の外から何度も何度も手を振っていた。

 また、一緒に遊ぶ事を確認するかのように何度も何度も……


86: 2008/06/22(日) 23:59:53.19 ID:lICGxk7V0
 須名が帰っても妹者は未だに俺の薬指を握っていた。
 ふたりっきりになると、さすがに恥ずかしかったがそれでも彼女の小さい手が何よりも心の支えになった。

l从・∀・ノ!リ人「お腹空いたのじゃー 今日の晩御飯は何なのじゃー?」

(´<_ ` )「今日は日曜日だから姉者の作る番か」

l从・∀・ノ!リ人「姉者の料理は豪華だから好きなのじゃー」

(´<_ ` )「でも、早く帰らないと兄者に全部食われそうだな」

l从・∀・ノ!リ人「それはありえるのじゃ…… よし、急ぐのじゃ!」

 妹者は俺の薬指を握ったまま走り出す。
 俺もそれにひっぱられる形で走り出す。

 妹者は嫌いだったはずの夜の暗闇に物ともせずに進む。
 今日の須名との楽しかった時間はもうお終いなのだが、家に帰ればまたいつもの幸せが待っているのだから。

88: 2008/06/23(月) 00:03:22.29 ID:E8mhWsY20

 いや、正確に言えばそれは久しぶりの幸せなのかもしれない……
 あの日を境に俺達は笑顔を無くしていたのだから。

 妹者と俺は自然とその場所で走るのを止める。

 そこは、あの公園だった。
 俺と妹者から笑顔を奪った公園。

 俺が鬼にとり憑かれた、あの公園……

l从・∀・*ノ!リ人「ほら、あれを見るのじゃ!」

90: 2008/06/23(月) 00:05:55.11 ID:E8mhWsY20
 妹者は左手の人指し指で何かを指していた。
 その方向に目をやると、そこにあったのは桜の木だった。

 あの日見た寂しげな夜桜ではなく、それは優雅に月の光を浴びて輝き散り行く桜の舞。

(´<_ ` )「もしかして、あの時妹者はこれを?」

l从・∀・*ノ!リ人「綺麗なのじゃ……」


 もう一度俺は桜を見た。
 それは朝の忙しく散る桜とは違う静かな桜。
 そいつは俺を鬼に変えた場所で静かに舞っていたのだ……

94: 2008/06/23(月) 00:08:09.51 ID:E8mhWsY20
l从 - ノ!リ人「あのね、ちっちゃい兄者……」

 妹者の方をちらりと見る。
 今にも泣きそうな悲しそうな顔をしていた。

 妹者は俺の薬指をぎゅっと握り締める。
 そして、夜桜を見上げて呟いた。

l从 - ノ!リ人「ごめんなさい……
       せっかく妹者の事守ってくれたのに……
       妹者の事、必氏になって助けてくれたのに……」

95: 2008/06/23(月) 00:10:47.65 ID:E8mhWsY20
 妹者の頬から1滴の雫が零れ出す。

l从;-;ノ!リ人「怖いって…… ちっぢゃいあにじゃの事、怖いって……」

 そして溢れ出たかのように何滴も何滴も零れ落ち、雫はやがて川のように流れ出した。
 だから俺は妹者の頭をそっと撫でた。

l从;-;ノ!リ人「だからね、ちっちゃい兄者……
       妹者言うからね…… ちゃんと言うから……」

 目の前の少女は涙を拭く。
 そして、一泊置いて息を深く吸い力強く言った。

 俺が求めいたその言葉を。
 須名からも言われたその温くて優しい言葉を―――

98: 2008/06/23(月) 00:12:55.65 ID:E8mhWsY20






l从^ー^*ノ!リ人「ありがとう」







103: 2008/06/23(月) 00:16:01.21 ID:E8mhWsY20
 俺は咄嗟に妹者を抱きしめる。
 今にも壊れそうな小さくて柔らかい体だった。

l从/////ノ!リ人「わ、わ~!? 何をするのじゃ!」

( <_   )「ごめん…… でも、少しだけこのまま……」

 俺はこの日2度目の涙を流す。
 情けない嗚咽をこぼしながら俺は妹者の小さな肩で小さく泣いた。

 その時、ふわっと頭の上が揺れる。

l从^ー^*ノ!リ人「いい子いい子なのじゃ!」

 それは、妹者の小さな手だった。
 でも、優しくて温かい大きな温もり……

106: 2008/06/23(月) 00:18:30.83 ID:E8mhWsY20
l从・∀・*ノ!リ人「あのね、ちっちゃい兄者?」

 妹者は俺の頭を撫でながら、まるで赤ん坊をあやす母親のような優しい口調で諭す。

l从・∀・*ノ!リ人「妹者はね、優しいちっちゃい兄者が好きなのじゃ。
       無表情に見えるけど、すごく素敵な笑顔のちっちゃい兄者が大好きなのじゃ」

 俺はぐちゃぐちゃの顔のまま妹者の顔を見る。
 それは、天使のような素敵な笑顔だった。
 いつもの俺の大好きで守りたいと誓った妹者の笑顔。

l从^ー^*ノ!リ人「だから、もうあんまり怒っちゃだめなのじゃ!
       ずっとずっと優しいちっちゃい兄者でいるのじゃ!」



 その後、妹者は俺の頬に優しくキスをした。
 それはとても小さくて柔らかい唇の感触。
 でも、俺の心臓は大きく揺らいでいた。



108: 2008/06/23(月) 00:20:50.49 ID:E8mhWsY20

l从・∀・*ノ!リ人「さ、帰るのじゃー」

 妹者は何事もなかったように走り出す。
 急に走り出したので薬指が千切れそうにな程痛かった。
 でも、俺の涙はその痛みで出るものじゃなかった。

 優しくて、温かくて、嬉しくて……

 小さな妹者から与えられた大きな温もり。
 それが俺をここまで泣き虫にしていたのだ。

 でも妹者は笑う。
 大きな口を開けて、可愛い顔をぐちゃぐちゃにして大きく笑う。

 だから、俺も涙を拭いて笑った。
 やっと笑ったのじゃ。という妹者の声を聞き、ありがとうの意味を込めて頭を撫でた。

 すると妹者は顔を真っ赤にさせて照れる。
 俺がそれを見て笑うと妹者も笑う。

111: 2008/06/23(月) 00:22:56.62 ID:E8mhWsY20

l从・∀・ノ!リ人「ただいまーなのじゃー!」(´<_ ` )


( ´_ゝ`)「おかえ……何してんだお前ら!?」

∬´_ゝ`)「あー、見せつけですかそうですか。流石ね、あなた達……」

 @@@
 @#_、_@      
 (  ノ`) 「さ、夕ご飯にするよ!」

 家に着くと、家族全員が笑顔で迎えてくれた。
 多少、兄者と姉者の方から嫉妬の念が含まれていたがそれでも笑ってくれた。

113: 2008/06/23(月) 00:25:26.26 ID:E8mhWsY20

l从・∀・*ノ!リ人「今日ね、あのねー!」

( ´_ゝ`)「もう、言うな。リア充の休日なんて聞きたくもない」

(´<_ ` )「よし、妹者もっと言ってやれ」


 いつまでも笑った。

 嬉しくて何度も笑った。

 それから何日経ってもその笑顔は色褪せることはなかった。

 毎日が嬉しかった、だって幸せさえも笑っていたのだから。




115: 2008/06/23(月) 00:27:29.06 ID:E8mhWsY20

 いつまでも続くと思った。
 だって、妹者はいつまでも笑ってくれているのだから。

 終わらないと思った。
 時には、センチメンタルな日があるのかもしれないけど
 それでもいつか笑顔は戻るのだから。


 でも、その日は俺の知らないところで準備をし、
 静かに訪れようとしていた………


116: 2008/06/23(月) 00:29:47.44 ID:E8mhWsY20
 TIPS

【突発雛見沢OFF】

1 :本当にあった怖い名無し:2007/06/10(日)
 封鎖も解けて早1年。
 雛見沢村で綿流しやってみないか?
 
 日時は今月の23日午後から24日の朝頃までの予定だ。
 本当は24日の日曜日がいいだがお前らも忙しいだろ?


117: 2008/06/23(月) 00:31:37.47 ID:E8mhWsY20

【メール】

 6/23(土)
 差出人:妹者
 件名:合宿ご苦労様♪
 本文:
 ちっちゃい兄者おっはー!
 相変わらず先輩にこきつかれてるのじゃ?
 とにかく、ファイトーお~なのじゃ!!d(@^∇゚)/ファイトッ♪
 あと、お土産よろしくなのじゃ(*‘ω‘ *)


118: 2008/06/23(月) 00:33:36.51 ID:E8mhWsY20
*―――*―――*


l从・∀・ノ!リ人「じゃあ、お留守よろしくなのじゃー」

( ´_ゝ`)「気をつけるんだぞ! あ、お土産よろしく!」

l从・∀・ノ!リ人「任せておくのじゃー! あ、でもわかってるのじゃ?」

( ´_ゝ`)「ああ、任せとけって! 弟者は、絶対怒るからな」

l从・∀・ノ!リ人「うん、ちっちゃい兄者は怒りん坊なのじゃ!」

( ´_ゝ`)「お、もうこんな時間!じゃあ妹者、本当に気をつけるんだぞ!」

l从・∀・ノ!リ人「把握なのじゃ! おっきい兄者こそ、ちっちゃい兄者には絶対内緒だからね!」

121: 2008/06/23(月) 00:36:11.46 ID:E8mhWsY20
(*´_ゝ`)(ああ、やっぱり妹者可愛いな)

( ´_ゝ`)(しかし、まぁ弟者のやつと無事仲直りできてよかった)


( ´_ゝ`)(……ん?)

( ´_ゝ`)(何だこの音? 虫の鳴き声…?)





( ´_ゝ`)(……ひぐらし?)



l从   ノ!リ人「じゃあ、行って来るのじゃ!」

(;´_ゝ`)「おい、妹者まっ……」

124: 2008/06/23(月) 00:38:50.82 ID:E8mhWsY20





















 かなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかな

128: 2008/06/23(月) 00:44:17.87 ID:E8mhWsY20

 綿流しの晩、今年は何かあるのかな?本日はここで終了です。
 みなさん、夜遅くまでお疲れ様でした。
 すこしでも幸せな気分に浸ることができたでしょうか?

 次からはいよいよ凄惨な宴の幕が開きます。
 これからもどうぞご期待のほどをよろしくお願いします。

 また解なのに何の解決にもなってなくてすみません。
 ただ1話と2話は解の話の中でとても重要な位置づけの話となります。
 勘のいい方なら何で問題編でなぜツンが助かり狂ったのかを
 予想できちゃうのかもしれませんね。


( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―【第3話】


引用: ( ^ω^)とξ゚⊿゚)ξの鬼隠しのようです―解―