1: 2008/07/06(日) 21:05:23.73 ID:/Eh6csi00

まとめさん感謝
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです【第1話】
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです【第2話】
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです【第3話】
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです【第4話】
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです【最終話】


番外編:( ^Д^) 崇殺しのようです

( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―【第1話】
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―【第2話】
( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―【第3話】

*閲覧注意*今回はちと長いです*

今宵語りますは、人が鬼へと成り変わる瞬間。
今までお楽しみくださった方も、それをご覧になるには覚悟が必要。
激しく、恐ろしき今宵は皆様の心を奪い、果ては粉々にしてしまうやも知れません。

では、長らくお待たせしました
鬼隠しのようです―解― 第3話「隠れ鬼」
どうぞ最後までお楽しみ下さいませ――

3: 2008/07/06(日) 21:06:47.78 ID:/Eh6csi00
 質量感のある硬い金属のそれは、今俺によってゴムのようにぐにゃぐにゃと柔らかい別の物質へと変わっていた。

 俺はどちらかと言えば不器用な方だろう。
 パソコンとかそういうのは得意なのだが、手先を細々と使う複雑な作業はお手上げだ。

 だが、今やっている作業は幼稚園児でも難なくこなせるだろう行為なのだ。
 誰かがどこから見つけたのであろう、鍵束の鍵の一つを鍵穴に挿して回す。

 実に簡単だろ?
 でも、それがどうも簡単にいかないんだよ……

 まぁ、傍から見ればそれはイライラとする光景だろうがそんな単純なもんじゃないということをどうにか分かってほしい。
 ほら、今も後ろからは促すような視線が送られているだろう?
 直接後ろを振り向いて確認したわけじゃないが、全員苛立っているのが目に見えてくるみたいだよ。

 だったらお前等がやれよと言いたいところなのだが、恥ずかしながら俺には怖くてそんな事を言える勇気はない。
ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
4: 2008/07/06(日) 21:07:41.60 ID:/Eh6csi00
 額から汗が滴り落ちる。

 どうして俺はこんな事をしているのだろう?
 早く家に帰りたい。
 早くこんな事を終わらせたい。
 今日をなかった事にして欲しい……
 俺は何も悪くない。
 だって、俺は何もしてはいないのだから……


 …………!?

 そう……だよな……

 ははは……


 俺は何も悪くない!!

 だって、俺は何もしていないのだから!

5: 2008/07/06(日) 21:09:13.28 ID:/Eh6csi00
 確かに俺は今、人の家のある部屋に勝手に入ろうとしているが
 こんな誰もいない村なのだから悪い事ではないはず。

 そして………

 違う。

 これは、人形だ。

 精密なまでに作られた可愛らしい人形。


 これをただ捨てるだけ……


 そう、俺は何も悪い事はしていない。
 だって、俺は何もしていないのだから……

 おれはなにもしていないのだから……


6: 2008/07/06(日) 21:10:19.56 ID:/Eh6csi00
 かちゃり、と古びた旋錠から音がする。
 開かれることを頑なに拒んでいた鉄扉の旋錠が、ついに役割を失った瞬間だった。

( A )「あ……開きました……」

 後ろからは、ようやくと言った安堵の声が漏れていた。
 だが、一人の男は俺にそっと語りかける。

(´・ω・`)「そう、ご苦労様。じゃああとは、“これ”を捨てよう。……場所は僕が指示するよ」

 俺は言われた通りに、それを持った。
 小さくて、硬くて、冷たい……壊れた人形。

( A )「そう、これは人形……」

 俺は自分に言い聞かせるように、呟いていた。
 だが、その人形からは赤黒い液体が流れ俺の腕に纏わりつく。

 気持ち悪くて、今にも地面に落としたいという衝動に駆られたのだが
 それをやつらは許さないだろう……


8: 2008/07/06(日) 21:12:24.87 ID:/Eh6csi00
 俺は、人形を慎重に持ちながら鉄扉を潜る。
 そこにあったのは深い深い闇だった……
 見るものに恐怖と狂気をあたえるだろう永遠の夜。

 俺は、足が藁になっていた。
 そこに進んでしまえば俺は日の当たる世界に戻ってこれない気がして……

 後ろから電灯の灯りが照らされる。
 早く進めと言う無言の命令なのだろうか。

 俺は意を決し恐る恐る歩を進めた。

 いくらか進んだところで灯りが灯らせられる。
 誰かが、部屋の灯りのスイッチを入れたのだろうか?


(´・ω・`)「どうしたんだ?早く来るんだ」

 前を進んでいた男が、声を掛けに来る。
 俺は、急ぐように足を進めた。

9: 2008/07/06(日) 21:14:08.17 ID:/Eh6csi00
 細い廊下を進み、何度か階段を下り。
 再び大きな鉄扉を潜り。

 そして……広い部屋に出た。
 それは、とても奇怪でおぞましい部屋だった。

 部屋は左右半分に趣が違い、片側半分は観客の為のお座敷で、
 もう半分は……人を苛め頃すための器具が点在された部屋……

 そう……ここは、地下の拷問部屋。
 まるでこの村の……
 雛見沢村の古い血塗られた風習を物語るようなそんな部屋だった。


( ゚∀゚)「こんな森深くにある地下室ならまず誰にも見つからないだろうな!で、 これ どこに捨てるんすか?」

 金髪のちゃらちゃらした男が、静寂を破る。
 その男は辺りを見渡し、数々の拷問道具に目を輝かせていた。

(´・ω・`)「この地下室には井戸があるなんて噂を耳にする。そこが一番安全だと思うんだけどね……」

 俺に指示を与えていた強面の男は辺りを念入りに調べていた。

 ……この地下室のどこかに氏体を捨てる井戸があるらしい。
 いや、この人形を誰にも見つからないように捨てるための井戸が……

10: 2008/07/06(日) 21:15:48.39 ID:/Eh6csi00
「プギャーwww見つけたぜwww」

 俺達がその部屋を念入りに調べていた時に、遠くの方から笑い声が聞こえてくる。

( ^Д^)「ほら、まだそんな所探してんのかよ?きっとこっちだこっちwww」

 ニヤニヤとした男は世紀の大発見をしたような興奮した様子で俺達に顔を見せた。
 そして、この男の誘導のもと俺達は足を運ぶ。

 そこには扉があった。
 またしても鍵が掛けられていたが、今度は強面の男が鍵を開ける。

 拷問部屋から扉を開け進むと、またしても漆黒が広がった。

 懐中電灯は壁の方に照らされ、灯りのスイッチを探しているようだった。
 スイッチはどうやら簡単に見つかったらしく、いくつかの裸電球が弱弱しく闇をかき消していた。

11: 2008/07/06(日) 21:17:48.64 ID:/Eh6csi00
(´・ω・`)「ほう、こんな場所に岩牢がね……しかも随分と広い」

 男の言う通り、そこにはむき出しの岩肌の大空洞と鉄格子の嵌められた岩窟があった。
 そこは自然の洞窟というより防空壕を跡のように見えた。

( ゚∀゚)「……でも、井戸なんてなさそうだぜ?」

 金髪の男は、一目見た感想だけを言う。
 でも、確かに井戸があるようには見えなかった。

(*゚ー゚)「こういうのは、牢屋の中とかに巧みに隠されてあるんじゃないかな?」

 俺達の中で唯一の女性になった少女が口を開く。
 ……俺はこの少女に畏怖していた。

 こんな小さくてか弱そうな少女に……
 いや、こいつは少女なんかじゃない……

 こいつは、少女の振りをした狡猾な悪魔なんだ。


(´・ω・`)「ほう……なかなかいい案だね」

 男達は少女の言った案に乗る。
 そして牢屋の一つ一つを丹念に調べていた。

12: 2008/07/06(日) 21:19:12.18 ID:/Eh6csi00
( ^Д^)「ショボンさん、ありましたよwww」

 ニヤニヤした男が噂の井戸を発見したようだ。
 ショボンと呼ばれた強面の男がそれを確かめに行く。

(´・ω・`)「なるほど、これはうまい具合に隠されているみたいだね…… さぁ、ドクオ君それを持って来るんだ」

 俺は、言われた通りにショボン達のところへ向かう。
 そこにあったのは、井戸と言うより垂直なトンネルのようだった。


 そして、俺はそれを……

 手に持っていた人形を棄てた。

 絶対に見つからないであろう井戸の底に、

 太陽が当たる事のない永遠の夜の中に……




13: 2008/07/06(日) 21:20:09.53 ID:/Eh6csi00
(´・ω・`)「ご苦労様、これで君も“共犯”だからね」


 ちがう

 おれはなにもしていない……


( ^Д^)「プギャーwww何だその顔はよぅ~www」

( ゚∀゚)「そうだ、これはお前がやったんだからな。どっちの罪が重いと言われればお前のほうだよな?」

( A )「ち、……ちが……」


 おれはただにんぎょうをすてただけ……


(*゚ー゚)「あ~あ、せっかくおもちゃにしようと思ったのにまさかあんな事になるとはね……」

 おれはなにもしていない
 おまえらがわるいんだ


14: 2008/07/06(日) 21:23:17.41 ID:/Eh6csi00
(´・ω・`)「まだ、自分の罪を理解していないみたいだね」

( A )「おれは……なにもしていない……おれは……」

 ショボンは呆れたような顔をして俺の傍まで寄ってくる。
 そして、何かを手に持って俺に声をかけた。

(´・ω・`)「これはあの子の持っていた物の一つだ。これを君に渡すよ」

( A )「え……?」

 ショボンは、スクラップ帳のような物を俺に手渡した。
 それは、あの人形だったものが持っていた物だった。

 俺にはこれを貰った意味が分からなかった。
 だが、ショボンはそれを教える。

(´・ω・`)「きっとあの子が行方不明という事で一先ず僕達が疑われるだろう。
      しかし、証拠も氏体も無いので僕達はまず捕まる事はない」

 ショボンはにんまりと口端を引き上げつつも鋭い目で俺を見据える。

(´・ω・`)「それが、もしこのスクラップ帳を君が捨てたり無くしたりして
      こことは別の全く関係の場所で見つかったらどうなるだろう?
      まず間違いなく僕達は疑われるだろうね」

 そうか、これは脅迫だ……

(´・ω・`)「いいかい?これを持って肝に銘じるがいい……」

15: 2008/07/06(日) 21:24:29.66 ID:/Eh6csi00

 本能がこの先の言葉を必氏に拒もうとする。
 しかし、良心や罪悪感といった理性がそれを不意に受け入れてしまう……

 俺は悪くない、

 だって、俺は何もしていないのだから。

 だが、目を瞑ったとしても耳は確かにその言葉を捕らえていた―――






      「君は、その子を“鬼隠し”したんだよ」







16: 2008/07/06(日) 21:25:06.48 ID:/Eh6csi00




( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―

 第3話「隠れ鬼」




17: 2008/07/06(日) 21:27:12.03 ID:/Eh6csi00
(;´_ゝ`)「弟者!!やめてくれ、俺はただ……」

( <_   )「ただ?」

 俺は自分の兄の胸倉を掴んでいた。
 そして、今まさに拳を振るおうとしている。

(;´_ゝ`)「妹者は楽しみにしてたんだ……知っているだろ?
妹者が雛見沢のオカルト話好きだって事!!」

 一発。
 自分でもわからない感情を込めて兄者を殴った。

( <_   )「ああ、知ってるさ。お前なんかより何倍もな!!!」

(;;)_ゝ゚)「あ゛がっ――?!」

 倒れて床にうずくまっている兄者にもう一発。
 今度は蹴りを入れる。

18: 2008/07/06(日) 21:28:36.24 ID:/Eh6csi00
(;´_ゝ`)「弟者!!やめてくれ、俺はただ……」

( <_   )「ただ?」

 俺は自分の兄の胸倉を掴んでいた。
 そして、今まさに拳を振るおうとしている。

(;´_ゝ`)「妹者は楽しみにしてたんだ……知っているだろ?
妹者が雛見沢のオカルト話好きだって事!!」

 一発。
 自分でもわからない感情を込めて兄者を殴った。

( <_   )「ああ、知ってるさ。お前なんかより何倍もな!!!」

(;;)_ゝ゚)「あ゛がっ――?!」

 倒れて床にうずくまっている兄者にもう一発。
 今度は蹴りを入れる。

19: 2008/07/06(日) 21:29:35.73 ID:/Eh6csi00
∬;_ゝ;)「やめなさい弟者!!!もうやめて……」

 姉者が俺の腕を掴み邪魔をしてきた。
 それでも俺は蹴る事をやめはしなかった。

(;;)_ゝ;)「妹者は……グハァッ……
      一昨日の…オフ会を゛ッ……楽しみに……ッ!!」

 うるさい。
 うるさい。
 うるさい。
 うるさい。

 姉者を突き飛ばし兄者に圧し掛かる。
 今度は顔を何度も殴った。
 何度も何度も……


( <_   )「なんでだよ……なんで俺には内緒だったんだ?!
      もし知ってたら氏んでも止めた!!!!
      何で!?何で!?何で!?」

 振り上げた拳が空中で止まる。
 また姉者が腕を掴んで邪魔をするのだ。

 鬱陶しい。
 邪魔だ…

 俺は再び姉者を突き飛ばし、兄者を殴った。

20: 2008/07/06(日) 21:31:09.00 ID:/Eh6csi00
(゚<_ ゚#)「何でだ!!???」

 
 なんで なんで なんで なんで なんで ―――― ?!


(;;)_ゝ )「俺もあいつの兄なんだ……頼りないけど……
      でも……あいつの味方でいたかったんだ……」


(゚<_ ゚#)「だから何でって聞いてるだろうがあああああ!!!!!!!!」


 渾身の一発を兄者に振り下ろす。
 怒りなのだろうか、悲しみなのだろうか……

 それとも肉親であるはずの兄を憎んでいるのだろうか?
 それとも妬み?

 わからない感情だった……

 そして、兄者はその一発を最後に動かなくなった。

21: 2008/07/06(日) 21:33:36.44 ID:/Eh6csi00
( <_   )「はぁ…はぁ…」

 
 がっくりと膝が折れ座り込んでしまった。そして肩で息をする。
 脳みそが落ち着けと命令を出しているかのようにそれは自然と起きた現象だった。

 わかっている。
 妹者はどうしても雛見沢に行きたかったという事。
 俺はそれに必ず反対すること。

 だから妹者は雛見沢オフの事は俺に内緒にするよう兄者に言ったのだ。 

 でもだからっておかしいだろ……
 妹者はまだ高校一年生なんだぞ?
 まだまだ子供なんだぞ?


 姉者は兄者の手を握って泣いている。


 なんでこんな事に……


 なぁ、妹者?


 きみはいまどこにいるんだ?


22: 2008/07/06(日) 21:34:16.17 ID:/Eh6csi00
 俺は熱い脳みそを必氏に冷ましつつ考える。
 そうだ、あそこしかない……
 俺は立ち上がり、そして歩き出す。


∬;_ゝ;)「待って!どこに行くの弟者?!」



 妹者が待ってる。

 行こう、雛見沢へ―――……



24: 2008/07/06(日) 21:36:23.57 ID:/Eh6csi00
*―――*―――*


 ブルブルっと机の上で携帯が愉快に踊りだす。
 随分と待ちわびた瞬間だ。
 さぁ、今夜は妹者からどんな楽しい話を聞けるのだろうか?
 楽しみで楽しみで仕方がなかった。



 ん?
 何だ、弟者からか。

 期待させよって……

 でも、珍しいな。








川 - )「…………」


 

27: 2008/07/06(日) 21:37:52.44 ID:/Eh6csi00


 暗い部屋の中でニュースが流れていた。
 男のキャスターが事件の内容を淡々と告げる。

「本日未明、某県鹿骨市雛見沢村にOFF会で参加していた高校1年生の流石妹者さん15歳が
 目を放した隙に突然失踪したとの110番通報がありました。
 駆けつけた警察らと近隣の興宮住民で捜索するが見つからず、何かしらの事件に巻き込まれたものとして
 捜査を進めています」




28: 2008/07/06(日) 21:39:23.87 ID:/Eh6csi00
  6/24(日)
  差出先:妹者
  件名:
  本文:
  なぁ、妹者?
  友達って言うのもなかなかいいもんだよな。
  妹者のおかげでやっと自分に素直になることができたよ。
  やっと、笑う意味を知ることができた。
  やっと、人を愛することができた。

  全部、妹者のおかげなんだ。

  だからもっと一緒にいてくれないか?

  最近忙しくて会ってなかったからまたデートしよう。
  そうだな、もうすぐ妹者の好きな夏が来るから海なんてどうだ?
  あ、私の体見て妹者が嫉妬しちゃうからだめか。

  もちろん弟者も連れて来ていいぞ。
  いや、今度は兄者とやらも連れてきてダブルデートなんてのもいいかな?
  もちろん妹者は私の彼女役だがな。


  だからさ、このメール見たなら早く家に帰ってまず家族を安心させよう。
  みんな心配しているぞ。

  母者に怒られるのが怖いって言うなら一緒に怒られよう。

  だから、頼む…

29: 2008/07/06(日) 21:41:00.40 ID:/Eh6csi00





 携帯は一向に鳴る気配はなかった。
 いつものように人懐っこい顔文字盛り沢山のメールは返ってこなかった。

 目の前の色が全て黒によって失われる……
 薄らと見えていた物の形も、今では漆黒に隠れて見えなくなっていた。

 ねぇ、妹者。

 私は君の事、

 本気で好きだったんだぞ。


 冗談だと思っただろ?


 私は本当に君の事……


30: 2008/07/06(日) 21:42:10.00 ID:/Eh6csi00
川 ;-;)「うああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 堪えていたはずの涙は止め処なく溢れた。

 止めてくれ、止めてくれ、止めてくれ

 ……頼むッ!!

 だって、泣くって事はもう妹者に会えないって認めるって意味じゃないか。
 一つ涙が零れるたびに妹者の笑顔が遠ざかってくる気がした。

 泣き止め、泣き止め、泣き止め、泣き止め―――


 自分に言い聞かせるのだが涙は一向に止まる気配はない。
 それどころか涙は余計に零れ落ちた……

31: 2008/07/06(日) 21:43:26.65 ID:/Eh6csi00
 携帯のバイブが騒がしく鳴る。
 私に幸せを運ぶ役目のはずのメール。
 でも、今日は違った。

川 - )「隠れ鬼か?
     言っておくが私は強いぞ。
     待ってろよ、妹者」


 独り言のように呟き、そして立ち上がった。




  「もう~いいよ……」



 どこかでそんな声が聞こえた気がした。

 私は、その声のする雛見沢へ向かった―――……



32: 2008/07/06(日) 21:45:11.98 ID:/Eh6csi00
*―――*―――*


 夜行バスに揺られながら俺は今、須名と共に雛見沢を目指している。
 正直場所は分からないが彼女がその辺詳しいので安心できる。

 妹者が行方不明だなんて未だに理解できなかった。
 案外、母者が先に行った興宮ってとこの警察署でカツ丼でも食べてたりして。

 泣きながらカツ丼を頬張る妹者の姿を想像して、少し不安が薄れる気がした。
 そう言えば、兄者には少し感情をぶつけすぎた。
 後で謝れば許してくれるかな?妹者と一緒にごめんなさいってするか。


 須名は窓の外を眺めて月を見ているようだった。
 その横顔はどこか強く凛々しいような感じがあるのだが、どこか寂しげな影も潜んでいるようだった。


35: 2008/07/06(日) 21:47:59.44 ID:/Eh6csi00
川川 ゚)「なあ、弟者?」


 窓の方に顔を向けながら須名が俺に話しかけてくる。
 今まで二人とも黙ったままだったから、その日はじめての会話だろうか。

(´<_ ` )「どうした?」

川川 ゚)「お前は妹者の事好きなのか?」

(´<_ ` )「ああ」

川 ゚ -゚) 「本気か?妹としてではなく一人の女として」

 少し、間を置く。
 妹としてではなく一人の女として。
 そうさ、俺は……

37: 2008/07/06(日) 21:49:34.31 ID:/Eh6csi00
(´<_ ` )「好きだ」


 ついにそれを言葉にして言ってしまう。
 禁断の恋と知りつつも……
 でも、それは須名も同じのはず。

 俺は知っている。
 須名も妹者の事、本気で好きでいる一人なのだろう。


川 ゚ ー゚)「なら、いいライバルだな。また3人でデートしよう」

(´<_ ` )「ああ」


 須名は微笑みながら携帯を開く。
 きっと、妹者にメールを打っているのだろう。

 もしかしたら永遠に読まれることがないかもしれないメール。
 でも、いつかそれを笑いあって見ることのできるように……

38: 2008/07/06(日) 21:51:08.37 ID:/Eh6csi00














    「送信が完了しました」

39: 2008/07/06(日) 21:52:14.98 ID:/Eh6csi00
*―――*―――*


 壊れてしまいそうな自分を助けるために俺は妹者が無事であることを信じていた。
 それは、須名も同じのはず。
 でも、現実はあまりにも無惨で……


(´<_ `#)「どうしてなんですか?!そんなのあんまりじゃ……」

 年老いた刑事であろう人間が告げる。

( ´∀`)「仕方ないモナ。雛見沢は未だガスの危険性がある村。
      あまり他の人を巻き込ませたくないんだモナ」

(´<_ `#)「じゃ、じゃあ妹者はどうなるんですか!?」

( ´∀`)「勘違いしないでくれモナ。警察でも引き続き情報を募集し続けるモナ」

(´<_ `#)「で、でもそれじゃ……?!」


( ´∀`)「申し訳ないモナが捜索は打ち切るモナ……」

41: 2008/07/06(日) 21:53:29.68 ID:/Eh6csi00
 捜 索 ハ 打 チ 切 ル

 それは、あまりにも残酷で冷たい単語だった。

 妹者いなくなったのは土曜日のはずだろ?
 今は月曜日の朝……
 じゃあ、たったの一日しか捜索していない??
 
 俺は立ち眩みを覚える。
 あまりに非協力的な警察……

 どうして?

42: 2008/07/06(日) 21:55:07.34 ID:/Eh6csi00

川 ゚ -゚) 「あ、あの……妹者と一緒にいた人たちは?」

( ´∀`)「ああ、昨日の晩に取調べを少しだけして帰らせたモナ。
      話を聞くに本当に突然消えたらしいモナ」

川 ゚ -゚) 「その人達の連絡先を教えてはくれませんか?
     その人達から直接、妹者がどんな様子だったか聞きたいんですが……」

( ´∀`)「あ~、無理モナね。今のご時勢プライバシーの何たらがうるさいモナ」

川 ゚ -゚) 「そ、そうですか……」

(´<_ ` )「ちょっと待ってください!妹者は、その人達に連れ去られたってことはないんですか?!」

( ´∀`) 「それはないモナ。第一、そんな事して疑われそうな人達が警察に通報するわけないモナ」

 目の前の刑事は全てに面倒くさそうに答える。
 俺はその様子に怒りを募らせていた……

 @@@
@#_、_@      
(  ノ`) 「弟者、須名さん。もう帰ろう」

 もうここでは何の期待もできない。
 いち早くここに来ていた母者にはそれが分かっているようだった。

 俺はあの刑事を睨み付ける。
 そして、須名と母者に連れられ興宮署を出た。

43: 2008/07/06(日) 21:57:05.13 ID:/Eh6csi00
 @@@
@#_、_@      
 (  ノ`) 「じゃあ、私は先に帰るよ…… 弟者、妹者は大丈夫だから警察に任せておきなさい」

 大丈夫という、無責任な言葉が母者から出る。
 俺は、それが許せなくて母者の事も睨んでいた。

 第一、あんたも警察に呆れていたじゃないか?
 自分が何も出来ないからってあんたまで諦めるのか?

 電車のドアが閉まり、動き出す。
 母者は、普段見せない悲しそうな顔を見せていた。

 もしかしたら、電車の中で泣いていたのかもしれない。

 自分の子供である俺に憎まれていた事に、妹者を助けることが出来なかった自分の無力さに……

45: 2008/07/06(日) 21:59:40.51 ID:/Eh6csi00
(´<_ `#)「くそ!なんなんだあいつらは……」

川 ゚ -゚)「少しだけだがこんな噂を耳にした事がある」

(´<_ ` )「え?」

 須名は警察の対応は仕方がなかったとでも言うように語り始める。

川 ゚ -゚)「雛見沢には園崎という雛見沢村を牛耳っている一族があるんだ。
     その一族は雛見沢だけではなくこの辺一体に大きな力を持っていて
     未だに影響力は強いらしいんだ」

(´<_ ` )「だけどその園崎家が、捜査と何の関係があるんだ?」

川 ゚ -゚)「雛見沢は恐らくとても小さな村のはず。
     捜索なんて1日もあればある程度の場所はできただろう。
     ……ただし園崎家を除いてはな」

 園崎家を除いては?
 じゃあ、妹者はそこに監禁されていると言うのか?

47: 2008/07/06(日) 22:01:37.19 ID:/Eh6csi00
川 ゚ -゚)「園崎家は黒い噂の絶えない一族らしくてな。
     まぁ、園崎組なんて言う暴力団があるくらいだから園崎家の捜査なんて
     並大抵じゃできないんだよ」

(´<_ ` )「そ、それじゃあ……」

川 ゚ -゚)「ああ、警察は圧力を掛けられている、もしくは園崎家と関わる事を避けている」

 園崎家?
 昔、雛見沢を牛耳っていた?

 ははは……

 笑いがどこからかこぼれて来る。
 あまりにも滑稽な……

 警察が、国家の安全を守るはずの警察が……

 たった一つの家のために捜査を躊躇っている。

 あまりにも馬鹿馬鹿しくて……


48: 2008/07/06(日) 22:03:21.49 ID:/Eh6csi00
(´<_ `;)「いや、でも本当に妹者は園崎家なんてところにいるのか?
     もしかしたら一緒にいたやつらに連れ去られているのかもしれないだろ!?」

川 ゚ -゚)「それは、多分ない……あの刑事の言う通りそんな疑いの掛かる真似をわざわざしないと思う。
     それに人一人を連れ去ってその状態を維持するなんて、とても大変な事だと思う……」

(゚<_ ゚#)「じゃあ、どこに妹者はいるんだよ!!?」

 俺は須名の肩を思いっきり掴み迫った。

(゚<_ ゚#)「答えろよ!! 須名なら知ってるんだろ!?」

 俺は、今どんな顔をしているのだろう?
 妹者が怖いと言った鬼の顔をしているのかもしれない。

 だって、あの須名が……

 その時、俺の頬にも須名と同じ熱い雫が流れる。
 それは、涙だった。

50: 2008/07/06(日) 22:05:24.29 ID:/Eh6csi00
川 ;-;)「わかんない……だって、私が知りたいんだ……」

 須名の涙は、ぼろぼろと零れ落ちていた。
 それは俺の目からも同じように何滴も何滴も……


川 ;-;)「妹者に会いたい……会いたいのに!! 妹者はどこにいるんだ!なあ!?」

 俺は妹者にそうするように、須名の頭を撫でた。
 すると、須名の嗚咽は大きくなり次第に子供のように大声で泣き喚くようになった。

( <_   )「ごめん……」

 俺は一言詫びを入れて須名を優しく抱いた。
 それでも須名の涙は止まらなかった。

川 ;-;)「うぐ……う……う……」

 その度に俺は須名の頭を撫でていく。

52: 2008/07/06(日) 22:07:19.50 ID:/Eh6csi00
( <_   )「……なあ、須名?」

 俺は須名のすすり泣く声が落ち着くのを見計らって口を開いた。
 須名は俺の胸から離れ涙を拭いた。

川 ゚ -゚)「すまん……なんだ?」

(´<_ ` )「園崎家へ案内してくれないか?」

川 ゚ -゚)「え……?」


 もうどんな可能性でも信じたかった。
 妹者がそこに隠されているのなら探して助けるまで。

(´<_ ` )「妹者が待ってくるかもしれない。行こう園崎家へ――……」

 須名は深く頷く。

 そう、これは隠れ鬼。
 俺達は今、遊んでるんだよな?
 妹者は隠れながら、いつもみたいに可愛い顔をくしゃくしゃにして笑ってるんだよな?

 待ってろよ、妹者。

 今、見つけてあげるから……


54: 2008/07/06(日) 22:09:21.21 ID:/Eh6csi00
 TIPS

【渋澤茂羅】

 通報を受けたのは6月24日。
 それは、6月の第4週目の日曜だった。

 そう、苦しくも雛見沢村の綿流し祭りの日なのだ。

 大方、興味本位の肝試し感覚で訪れたんだろう。
 それが、一人行方不明になるなんて……

 捜索は興宮青年団協力のもと、通報を受けた当日の日曜日に行われた。
 暑くも無く天気のいい日だったので捜索は難なく進んだのだが
 特に何の成果もなく終了し……捜索は打ち切られた。

56: 2008/07/06(日) 22:11:29.06 ID:/Eh6csi00
(・∀ ・)「先輩、やはり流石家には次女はいませんでした」

(,,゚Д゚)「なんだって? だが、あいつらは確かに流石妹者って名乗ったって言ってたぞ?」

(・∀ ・)「オフ会ですからね。ハンドルネーム的なものなのでしょうか?」

(,,゚Д゚)「で、その子の本名は何なんだ?」

(・∀ ・)「あ、はい。 “渋澤茂羅”が本名だそうです。
     どうやら、渋澤というのは流石家の親戚にあたるそうで……」

(,,゚Д゚)「……ん? どうかしたのか?」

(・∀ ・)「電車の脱線事故だそうで…… その子の両親と流石家の主、流石父者は数年前に亡くなっているんですよ」

(,,゚Д゚)「なるほどな。それで、その子は流石家の里子になったというわけか」

(・∀ ・)「……はい。特にトラブルもなく仲良く暮らしていて、家出の線はなさそうです。
     それより、ギコさんの方はどうですか? 何か彼女に関する情報は得られましたか?」

57: 2008/07/06(日) 22:13:21.07 ID:/Eh6csi00
(,,゚Д゚)「その事なんだがな…… 俺は、あいつらが怪しいと睨んでる。証拠も何もないただの勘だがな」

(・∀ ・)「やっぱり…… 俺もそう思います……」

(,,゚Д゚)「どうも話が出来すぎてるんだよ。 鬱田毒男なんてわかりやすいくらいに顔真っ青だったしな。
    絶対あいつらが何かしたに違いない」

(・∀ ・)「でも、モナーさんが勝手に帰しちゃったんですよね。 それに、所長も捜索を打ち切るし……」

(,,゚Д゚)「はあ…… きっと、面倒事には関わりたくないんだろうよ。 特にモナーさんは今年で定年退職だからな」

(・∀ ・)「面倒事って…… 人の命が掛かっているのかもしれないんですよ!?」

(,,゚Д゚)「もしかしたらもう氏んでいるかもしれないんだ…… そして、その氏体はどこにあると思う?」

(・∀ ・)「え……?」

(,,゚Д゚)「この土地のルールだとよ。 園崎家には絶対に関わるなだってさ」

(・∀ ・)「じゃあ、まさかその子の氏体が園崎家に隠されているかもしれないから捜査に消極的なんですか!?」

(,,゚Д゚)「……だとよ」


(・∀ ・)「そんな……」

58: 2008/07/06(日) 22:14:40.16 ID:/Eh6csi00

 この時、俺は何も出来ない自分の無力さに嘆いた。

 先輩のギコさんでさえ、渋るのだ。
 若い俺が何を言ったところでお偉いさんは相手にしてくれないだろう。


 俺には何も出来ない。

 でも、それは間違いだったんだ。

 何も出来なかったんじゃない……


 俺は――……



59: 2008/07/06(日) 22:17:09.95 ID:/Eh6csi00
*―――*―――*


 かなかなかなかなかなかな……

 清らかな風が吹き、ひぐらしの鳴く声が染み渡る。
 そこは、妹者に教えてもらったような残酷でおぞましい呪われた村なんかではなく
 一見して何の変哲も無い長閑な田舎村の風景だった。

 きっと妹者はここに辿り着いたときに目を輝かせていたのだろう。
 この村の全てが嬉しかったのだろう……

 でも、だからと言って妹者は家出をしここにずっと居残ろうなどとは考えないはず。
 恐らく何らかの事件に巻き込まれたに違いない。

 ……だめだ、最悪の結末が脳裏を過ぎってしまう。
 もっと前向きに行こう。
 妹者はきっと無事のはずだ。

61: 2008/07/06(日) 22:19:22.37 ID:/Eh6csi00
川 ゚ -゚)「あそこに大きな屋根が見えるだろう?あれが、おそらく園崎本家だ」

 須名の指差す方向を注視する。
 そして、遠くからでもはっきりと藁葺き屋根が見えた。
 屋根の大きさからで、その家がどれだけ大きいのかが容易に想像できる。

(´<_ ` )「噂どおりの家なんだな……」

 雛見沢村だけではなく興宮一帯に大きな影響力を持つ園崎家。
 最初はそのスケールに半信半疑でいたのだが、こうして家の外観だけでもその存在に圧倒されてしまう。

63: 2008/07/06(日) 22:21:06.52 ID:/Eh6csi00
川 ゚ -゚)「……ん? 何故あんなところに車が?」

 門の前には1台の車がぽつんと置かれていた。
 そのあまりにも似つかわしくない光景に拍子抜けしてしまう。

 ……一瞬だけ、嫌な予感のようなものが脳裏を過ぎった。

(´<_ ` )「門も開いてるみたいだし、行ってみようか?」

川 ゚ -゚)「…………」

 須名も俺と同じような嫌な予感を感じているのだろうか?
 ……いや、その予感はもしかしたら俺よりももっと残酷な結末を描いているのかもしれない。

川 ゚ -゚)「森深くに地下倉庫があるらしい。そこへ行ってみよう」

 森深くに地下倉庫?
 そんな場所に妹者はいるはずがない。
 頭では必氏に否定しているのだが、心臓の音だけがやけに騒がしく鳴っていた。

 まるで、このひぐらし達の合唱のように……

65: 2008/07/06(日) 22:23:09.35 ID:/Eh6csi00
 金持ちを思わせる豪勢な庭園から、その面影を残さぬ鬱蒼とした深い森へ誘われる。
 そして、更に奥へ奥へと足を運ばせるとやがて大きく盆地になっているところへやってきた。
 その鉢の底に、防空壕のような鉄扉があるのが見えた。

川 ゚ -゚)「……ここが、“地下の祭具殿”」

 地下の祭具殿?
 見知らぬ単語に、不快感を覚える。

(´<_ ` )「なあ……ここって一体?」

 須名は聞く耳を持たずに、鉄扉へと歩み寄る。
 そして、手を掛けた。

 ギイィ……という金属の軋む音が鳴る。
 鉄扉は、俺達を拒むことなく出迎えてくれたのだ。
 しかし、須名はその出来事に顔色を更に悪くさせていた。

川 ゚ -゚)「……弟者、ここから先は出来るだけ音を立てるなよ」

 須名は重々しく警告した。
 俺はそれにただ深く頷いただけだった。

67: 2008/07/06(日) 22:25:06.23 ID:/Eh6csi00
 鉄扉を潜ると、裸電球がぼんやりと地下室を灯していた。
 この事からもこの地下室には、俺達以外の人間が存在する事を物語っている。

 さっきの車の持ち主だろうか?
 だとしたら、園崎組? それとも……


(´<_ ` )「―――っ!?」

 何度か階段を下り廊下を進む。
 そして、その部屋に出た。

 そこには裸電球で不気味と浮かび上がる歪な形をした何かがあった。
 何かとは、何て表現すればいいのだろうか……

 いや、恐らくそれには……心当たりがあるはず……

 その奇怪で歪な形をしたのは……西洋の魔女狩りで使われたような……

 そう、拷問具のようなものだった。

69: 2008/07/06(日) 22:27:04.69 ID:/Eh6csi00
 俺は、思わず驚きの声を出してしまいそうになり手で口を押さえる。
 それは、須名と妹者に聞かされたこの雛見沢に関する昔話を思い出したからだ。

 ……確か、腸流しと言った血まみれた儀式だったはず。

 その時はタチの悪いオカルト話くらいにしか思っていなかったのだが、
 こうして見せられるとその存在に恐怖を感じずにはいられなくなる。

70: 2008/07/06(日) 22:29:25.51 ID:/Eh6csi00
 その時、須名が俺の肩を軽く叩く。
 須名の方に顔を向けると、須名は奥に見える扉の方を指差した。

川 ゚ -゚)「……声が聞こえないか?」

 須名は小声で囁くように言った。

 ……声?

 ……………………

 耳に神経を集中させる。


「……か? ゆび……」

 微かだが、確かに声が聞こえた。

 俺と須名は顔を見合わせ、その扉へと向かった。

71: 2008/07/06(日) 22:30:42.91 ID:/Eh6csi00
「ない…… じゃねーか……」

 その扉には鍵が挿しっぱなしで放置されていた。
 ……どうやら声の主はこの奥にいるようだ。
 俺達は扉の前で聞き耳を立てる。


「確かに、はめているのを見たんですね! 左手の薬指なんかにしてたから、印象に残ってました。
 でも、棄てたときにはそれはなかったのを覚えているんです……」

「お前も結構神経質なやつなんだな。 ここまで探したんだからもうないだろ?」

 扉は微かに開いていて、冷え切った空気が漏れてくるのを感じた。
 扉の向こうは、相当広い空間であることがうかがえた。

73: 2008/07/06(日) 22:31:58.50 ID:/Eh6csi00
「でも、あの“スクラップ帳”にも書いてあったし、俺も確かに見たんです!」

「あ~、ショボンから渡されたスクラップ帳だろ? でも、“指輪”なんてしてたっけか?」

 俺は一瞬耳を疑う。
 それは、確かに聞き覚えのある単語があったからだ。

 スクラップ帳に……指輪……?

 俺は小さく開いたドアの隙間から、中を何とか覗こうと試みた。
 だが、そこは他の部屋よりも灯りが弱弱しいためにはっきりと中の様子を見る事は叶わなかった。


75: 2008/07/06(日) 22:33:57.50 ID:/Eh6csi00
「あ~、しかし可愛かったなあの子!」

「……………」

「なんだよ? お前だけ出来なかったから悔しがってんのか?」


 え・・・?

 声は確かに届いていた。
 だが、心臓の音がやけにうるさくそれを聞くのを邪魔する。

77: 2008/07/06(日) 22:35:12.08 ID:/Eh6csi00
「“いもじゃ”ちゃんだっけ~? 可愛かったのに残念だよな…… つか、お前あの子とヤって童O捨てればよかったのに……」

「いや、俺は……」


 心臓は確かに忙しなく動いているはずだった。
 血は確かに体全体を駆け巡っているはずだった。

 だが、血の気が引くのを感じた。
 そして、身体中が突然震えだした。

 コイツラ ナニヲ イッテルンダ ?

79: 2008/07/06(日) 22:37:04.70 ID:/Eh6csi00
「しっかし可愛い子だったな~~~!! お前みたいなオタクはああいうのが好きなんだろ?」

「いえ……………」

「なんて言うんだっけ…… あ~そうそう萌えーだっけか? アヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!! まさにぴったりだよ」 

「別に俺は……」

「嘘つくなよ。お前だってあの子としたかったんだろ? やべ~気持ちよかったぜ」



 この扉の向こうにいる人間が何を言っているのか理解できなかった。

 それなのに、眩暈のようなものに襲われ、目の前が真っ白になったり黒になったり灰色になったりを繰り返す。
 その色が変わる、ほんの一瞬に妹者の顔が見えた気がした。

81: 2008/07/06(日) 22:38:13.51 ID:/Eh6csi00





                        l从・∀・ノ!リ人
 
 
                     ― ちっちゃい兄者! ―
 


 
「思い出したら、またしたくなっちまったじゃねーか!!! うわ~、すんげ~ムラムラしてきた!」
 

83: 2008/07/06(日) 22:39:04.28 ID:/Eh6csi00

 
  
                        l从;∀;ノ!リ人
 
 
                ― お化けが出たのじゃ~~~!! ―
 

 
 
「まぁ、おっOいが小さいのが唯一の欠点だったけど、それ以外は最高だったな~」


85: 2008/07/06(日) 22:39:49.53 ID:/Eh6csi00
 
 
                        l从・∀・*ノ!リ人
 
 
             ― 妹者がちっちゃい兄者の指輪なのじゃー! ―
 
 

  
「あ~、何でビデオ持って来なかったんだ俺! 普通、肝試しと言えばビデオカメラだろ!?」


87: 2008/07/06(日) 22:40:32.27 ID:/Eh6csi00


 
                        l从・д・#ノ!リ人
 
 
                    ― ごらー待つのじゃ!―
 
 

  
「あ、携帯で撮るのもよかったのか! それネットとかにアップしてさ~ アヒャヒャ!!!」
  
 

89: 2008/07/06(日) 22:41:10.75 ID:/Eh6csi00
 
 

 
 
 
 
 
                        l从^ー^*ノ!リ人
 
 
                     ― あ り が と う ―
 
 
 
 
 
 

91: 2008/07/06(日) 22:42:08.42 ID:/Eh6csi00

 ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ 

 聞こえるのは、俺の中で騒がしく動く心臓の音。
 ―――そして、醜悪な笑い声。品のない会話。



イモジャ

ネェ イモジャ ・・・


キミハ ナニヲ サレタノデスカ ・・・ ?



93: 2008/07/06(日) 22:43:12.14 ID:/Eh6csi00
「でも、本当もったいなかったな…… まさか、祟りが本当に起きるとはな……」



 ・・・・・・


 タタリ ・・・ ?






「ありゃあ、オヤシロさまの祟りっきゃないだろ!?」


 ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ


「まじ、あれはやべかったよな……」


 ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ


「喉をさ、ぼりぼり掻き毟ってさ……


94: 2008/07/06(日) 22:44:48.53 ID:/Eh6csi00







                    “ 氏 ぬ な ん て さ ”






99: 2008/07/06(日) 22:46:44.81 ID:/Eh6csi00
川 - )「…………」( <_   )




「結局氏ぬんなら、ここの拷問道具でいっぱい悲鳴聞かせてから氏なせたかったよな」


「アヒャヒャ!! なぁ、それいいと思わね? めちゃくちゃ興奮すんだろ!!」


「“どうせ、ここの井戸に棄てるんだしさ!!”」


「アヒャ!アーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」


102: 2008/07/06(日) 22:48:03.57 ID:/Eh6csi00
 妹者が氏んだ?

 は?

 随分と笑えない冗談だ。

 何言ってるんだ、あいつら……


 え……

 え?


 いもじゃ……?
 
 
 

105: 2008/07/06(日) 22:49:04.47 ID:/Eh6csi00
 
 
 
 
 
                        l从;-;ノ!リ人
 
 
 
                       た す け て … 
 
 
 


108: 2008/07/06(日) 22:51:13.35 ID:/Eh6csi00
 俺の中で、静かに眠っていた鬼が目を覚ます。今度は俺の中の理性は止めはしなかった。

 そうさ、俺自身が命令をしているのだから。

 コイツラヲ コロセ ト ・・・・・・

 そうか、ここにある拷問道具はこいつらを弄り頃すための物。
俺は、立ち上がり扉の向こうへ行こうとした。
 この中にいる汚らわしい人間を頃す。何、すぐ終わるさ。ものの1500秒でこいつらを消すことができるんだ。
 氏体はここに放置すれば見つかる事はないだろう。妹者をそうしたようにあいつらも誰にも見つからないだろうこの場所へ捨ててやる。
 あいつらを捨てる事何てゴミをゴミ箱に捨てるような当然の行為。誰も咎めたりしない。脳内の全不要情報を廃棄。
 この奥にいるであろう男達の殺害を最優先。頃す頃す頃す―――
 あいつらは妹者の笑顔を奪った。妹者を泣かせた。妹者を傷つけた。妹者を妹者を……
 あいつらはこの世にはいてはならない存在。間違い。世界の支障。あいつらを抹消しなければ。消えろ消えろ消えろ。

 血液が沸騰しそうなほど熱かった。
 俺ならできる。そう、妹者の為に―――

110: 2008/07/06(日) 22:53:10.85 ID:/Eh6csi00
(゚<_ ゚#)「――――!?」


 すると、何かがそれを止める。
 須名が俺の腕を掴み、扉を開ける事を防いでいたのだ。

 俺は邪魔された事に酷く殺意を覚え、須名を睨み付ける。
 しかし、そこにいたのは須名ではなかった。


川 - )「――――座れ……」

 ……そこには、俺と同じ鬼がいたのだ。

 俺と同じ殺意を身に纏った鬼。

113: 2008/07/06(日) 22:56:00.10 ID:/Eh6csi00
 結局、俺は須名の鬼のような形相に畏怖し、俺の鬼は押さえつけられる形となった……

 しかし、醜悪で下品な笑い声は未だに聞こえてくる。

 それが聞こえる度に込み上げる殺意……
 それを須名は幾度となく止める。


「あ~、つかもうここまで来たらないだろ? こんなとこにあったとしても、どうせ誰も見つけないんだしさ」

「でも……」

「なんだ、そんなに心配なのか? たかが、指輪落ちてたって誰もあの子のだなんてわかんねーよ」

「…………」

「アヒャ!アーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!! まぁ、その気持ちもわからなくはないがな」

「……わかりました。付き合ってくれてありがとうございます」

「ま、良いって事よー!今度、俺の女一人紹介してやろうか?
 今度こそびびんないで息子さんの童O卒業させてやるんだぞ!アヒャヒャ!!!」

114: 2008/07/06(日) 22:57:05.20 ID:/Eh6csi00
 俺達は、拷問具の影に隠れた。
 その前に、須名は扉の前で何かしていたようだった。

 ナンデ カクレナキャ イケナインダ ?
イマスグ コロソウヨ

俺の鬼が問いかける。
 むしろ俺が聞きたいさ。今すぐあいつらの首根っこを締め上げたい。
 だが、そうすれば須名は許さないだろう。
 きっと、彼女には何か考えがあるのかもしれない。

 だって、須名がやつらをみすみす逃がす訳がないのだから。
 俺以上に凶悪な鬼を静かに宿らせている彼女に限って……

116: 2008/07/06(日) 22:59:46.45 ID:/Eh6csi00
( ゚∀゚)「ふぅ~、やっぱこの部屋興奮するな~ 一個だけパクッていいか?」

('A`)「いえ、さすがに……」


 扉から男達が出て来た。
 すると、その瞬間に須名が冷淡な口調で囁く。
 それはまさに悪魔の囁きだった……


川 - )(しっかりと目に刻み込め、こいつらの醜い姿を、憎き不快な声色を――)


 いたのは、男が二人だけ。
 金髪の20代くらいの若い男と、ひ弱そうで色白くまだあどけさが残る少年。

 心臓の鼓動は大きく刻む。
 目は飛び出そうなほど開く。
 殺意を押さえ込むために、ちぎれそうになるまで舌を噛んだ。
 爪が掌に食い込んで血が噴出すまで拳を握り締めた。

117: 2008/07/06(日) 23:01:27.49 ID:/Eh6csi00
('A`)「ジョルジュさん、やっぱりもう行きましょう…… 本当に祟りなんてあったりして……」



   ―――ジョルジュ―――


( ゚∀゚)「んだよ~、まぁショボンにばれたらやばいしな…… じゃあ、帰るかドクオ」



   ―――ドクオ―――ショボン―――


 幸いな事に名前を知る事ができた。
 だが、それは実名とは言い難くあだ名のような感じの名称。

118: 2008/07/06(日) 23:03:07.67 ID:/Eh6csi00
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン
 ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン、ジョルジュ、ドクオ、ショボン



 それでも、呪いの如くその名前を頭に刻んだ。
 絶対に忘れまい為に。
 いや、忘れてたまるか、こいつらは妹者を汚したんだ。
 こいつらは妹者の命を簡単に弄んだんだ。

 絶対に頃してやる。
 苦しめて弄って断末魔を響かせてやる。


122: 2008/07/06(日) 23:05:09.10 ID:/Eh6csi00
('A`)「あの…… ジョルジュさん待ってください……」

( ゚∀゚)「あん? どうしたドクオ?」

('A`)「鍵…… 持ってませんか?」

( ゚∀゚)「は? お前持ってただろ…… まさか無くしたのか?」

('A`)「…………」


 鍵?
 そういえば、扉には鍵が挿してあった。

 まさか、須名がとったのだろうか?


( ゚∀゚)「んだよ…… まぁ、どうせこんな所に誰も来ないしいいだろ? ショボンには黙っててやるからよ」

('A`)「だ、大丈夫ですかね……」

( ゚∀゚)「大丈夫、大丈夫!! ショボンに知られたら俺達まで鬼隠しにされんだぜ!? アヒャヒャ!!
     つか、もう探すの嫌だし…… 帰るぜ」

('A`)「…………」


 ジョルジュと呼ばれた金髪の男は、面倒くさそうに帰って行った。
 ドクオと呼ばれた少年も、心残りのありそうな顔をしていたが結局帰って行った。

124: 2008/07/06(日) 23:07:00.53 ID:/Eh6csi00
 次第に部屋の灯りは消えて、暗闇が訪れた。

 全てが黒だった。
 どんな色もそこには存在しなかった……

 目から熱いものが流れる。
 俺はどうやらまだ鬼になりきれていないらしい。

 不覚にも俺は泣いていたのだから。
 止まらなかった。泣くたびに妹者の温もりが感じられる気がして。

 ただただ泣いた。

 だってさ……

 妹者はこんなところにいるんだぞ?

 こんな……

 こんな、妹者の大嫌いな真っ暗闇の中に棄てられているんだぞ? 

 そう、妹者はここのどこかに棄てられると言っていた。
 妹者は確かにここにいるんだ。

127: 2008/07/06(日) 23:08:53.01 ID:/Eh6csi00
 でも、俺には妹者を見つける術はなかった。
 流石の須名でも井戸の場所はわからなかったらしい。

 それに、この暗闇の中じゃ井戸の中を探すことはできない。
 もし探し当てたとしても、そこで妹者の骸を見つけることは無理なのだろう。
 警察に頼み込むことも不可能。
 いや、そんな事をしたらあいつらが逮捕されてしまうから絶対にできない。


129: 2008/07/06(日) 23:10:40.71 ID:/Eh6csi00
 ……もう、抱いてあげる事も頭を撫でてあげる事も出来ない。
 もう、ふざけあうことも笑いあうこともできない。

 なぁ、約束したじゃんか?
 今度は兄者と須名と4人で遊ぶって。

 なぁ、妹者……
 もう薬指をぎゅっと握って指輪になってくれないのか?

 あれ、すごく恥ずかしかったけどすごく嬉しかった。
 妹者の小さい手から大きな温もりを感じたんだ。

130: 2008/07/06(日) 23:12:30.73 ID:/Eh6csi00
 ……もう、抱いてあげる事も頭を撫でてあげる事も出来ない。
 もう、ふざけあうことも笑いあうこともできない。

 なぁ、約束したじゃんか?
 今度は兄者と須名と4人で遊ぶって。

 なぁ、妹者……
 もう1回だけ薬指をぎゅっと握って指輪になってくれないのか?

 あれ、すごく恥ずかしかったけどすごく嬉しかった。
 妹者の小さい手から大きな温もりを感じたんだ。

131: 2008/07/06(日) 23:13:05.47 ID:/Eh6csi00
 なぁ、妹者?

 何も特別な事しなくてもいいんだ。

 普通に遊んで

 普通に笑いあって

 普通に恋がしたいだけなんだ


 なぁ、


 ……妹者?




               l从・∀・ノ!リ人




133: 2008/07/06(日) 23:15:15.97 ID:/Eh6csi00
 涙の最後の一滴が零れ落ちた。
 それを境に左手の薬指に残る微かな妹者の温もりも、
 脳裏にある妹者の眩しい笑顔も
 全てが消えていくのを感じた……

 それは、あまりにも残酷で悲しい最後の別れだった。



135: 2008/07/06(日) 23:17:27.33 ID:/Eh6csi00
( <_   )「なぁ、須名…… どうして、あいつらを殺さなかったんだ?」

川 ゚ -゚)「あいつらだけが、妹者を頃したとは限らない。他にも仲間がいるはず……」

(゚<_ ゚#)「だったら、ここで拷問でもして吐かせたらよかったじゃないか!?」

川 ゚ -゚)「ああ、それもよかったな。さぞかし楽しそうだ」

 暗闇に目が慣れるとともに須名の顔が浮かんでくる。

 須名は、言葉とは裏腹にさぞかし退屈そうな顔をしていた。
 その態度が俺は気に入らなかった。

(゚<_ ゚#)「じゃあ、何でみすみす逃がすような真似をしたんだ! 何で!?」

 はぁ、と須名は呆れた溜息をつく。
 そして、苛立ちながらも須名は淡々と答えた。

138: 2008/07/06(日) 23:31:43.25 ID:/Eh6csi00
川 - )「あいつらはオヤシロさまを汚したんだよ。この神聖な土地で、妹者に卑劣で品のない行為をした。
     それは、許すまじ行為。あいつらには祟りが必要なんだ。オヤシロさまの祟りがな。あいつらは、
     オヤシロさまの祟りと言う戯言で妹者を陵辱し頃した。これは侮辱だ。妹者に対する、私達に対する、
     オヤシロさまに対する!そうだ来年に腸流しの儀式を来る綿流しの日にしようじゃないか。
     オヤシロさまの祟りとしてあいつらの汚らわしい血と肉の生け贄を捧げる。ほら、お前の心の中にも
     芽生えているのだろう?これは鬼達の宴なんだ。オヤシロさまのお怒りと妹者の無念を晴らすための
     鬼の儀式。鬼が淵村の古式ゆかしい方法によりやつらの腹を引き裂き川に流そう。弟者覚えてるか、
     この村の儀式について?そう、今度は私達がやろうじゃないか“腸流し”の儀式を………
     そして頃す頃す頃す自分から頃してと懇願されるまで痛みつけて頃す頃す頃すそして棄てる棄てる棄てる」


 須名は最初は無表情であり続けていたが、徐々に心に秘めた殺意が顔に表れる。
 その目にはもはや隠れようのない怒り、憎悪、恨み、殺意などの負の感情だけで満ち溢れていた。

川 ∀ )「アハハハハハハハハッ!!!!! そうだ、殺そう殺そう!!! 生きたまま腹を切り裂こう!!
     生きたまま体をバラバラにしよう!!! 指に何本も釘を打ち込もう!!!
     そして、妹者に謝らせるんだ!!!
     ごめんなさいって、何十回も何百回も言わせてやるんだーーー!!!!
     アハハハッハハハハハハハーーー!!!!!!!  見ててよ妹者!!」

 須名は楽しそうに笑った。
 それは、あの頃の妹者に教えてもらった素敵な笑顔ではなく、狂気染みた鬼の雄叫び。

 ずっと我慢していたのだろうか?
 あいつらがいなくなるまで。

 俺みたいに泣くのでもなく、ずっと胸の内に秘めていたのだろうか?

 須名の狂った笑い声は、暗闇にただ悲しく響き渡っていた。

139: 2008/07/06(日) 23:34:14.33 ID:/Eh6csi00
(´<_ ` )「なぁ、須名? お前のしたい事がよくわからない。具体的にどうしたいんだ?」

 綿流しの日に腸流しの儀式をする?
 一体どういう事なのだろうか?


川 ゚ -゚)「妹者は綿流しの日に……つまり6月の第4週の日曜日にオフ会としてここに来たんだろ?
     だったら来年のその日にもオフ会を開くんだ。そして、やつらを誘き出そう」

(´<_ ` )「おいおい、そんな簡単な方法でやつらは来るのか?」

 須名の提案は、あまりにも単純で拍子抜けするような内容だった。
 そんな方法で集められるわけがない。

川 ゚ -゚)「誘き出す方法はいくらでもあるさ。例えばこの園崎家を探索しようと書くとか」

(´<_ ` )「そんなんで、来るとは思えないが……」

142: 2008/07/06(日) 23:41:40.96 ID:/Eh6csi00
川 ゚ -゚)「ここは警察にすら捜査されない場所。そんな誰も入らないはずの場所に、やつらは人を入れたいと思うか?
     もしかしたら何か証拠を見つけられるかもしれない。きっと心配になるはずだ。
     それに、鍵を奪ったんだ。やつらはここは誰にも入られないと高をくくっていたから、途端に不安になるだろう」

 なるほど、それにやつらは妹者の指輪を探していた。
 金髪の方は大丈夫と高をくくっていたようだが、気弱そうな少年は不安でたまらない様子だった。
 絶対に痕跡を見つけられたくないのだから、もしかしたらオフ会を開くとしたら食い付く可能性もあるかもしれない。

 だが、俺はそれでも不安だった……
 それだけで、妹者の仇を全員に討てるとは思えない。


川 ゚ -゚)「まぁ、不服な気持ちも分かる。恐らくこの方法だけではやつらを全員頃すことはできないだろう」

(´<_ `#)「じゃあ、どうすんだよ!?」

川 ゚ -゚)「数人は絶対に来る。何としてでも来させる。その自信はある」

 須名の目には確信めいたものが確かにあった。
 それは、絶対を信じるのではなく当然が起こる事を分かりきっているかのような目。

川 ゚ -゚)「だが、全員来ないかも知れない。その時は、いるやつらだけで拷問し他の人間の居場所を吐かせよう。
     そして、宴が終わったらそいつを鬼隠しするんだ。 そして、ここで拷問して頃す」

144: 2008/07/06(日) 23:44:57.67 ID:/Eh6csi00
 須名の計画はまさに単純だった。
 綿流しと呼ばれる日にオフ会を開き人を集める。
 その中に妹者の仇を探し出し頃す。
 もし来ていなかったら後日に誘拐し、ここで頃す。

 そのあまりの簡単な計画に俺はつい笑ってしまう。
 須名は怪訝そうな顔をしたのだが、どうやら須名も気づいたらしく笑った。

 そう、なんて簡単なんだ!
 こんな簡単にも妹者の仇が討てる。

 だが、須名は一つ警告をした。

川 ゚ -゚)「……お前には、覚悟はあるのか?」

 その警告に俺は若干の怒りを覚えた。
 この俺に覚悟があるかだと?

149: 2008/07/06(日) 23:55:41.71 ID:/Eh6csi00
(´<_ ` )「馬鹿にするな……俺には実の兄すら頃す覚悟がある」

 それは、はったりなんかじゃない。
 俺の憎しみと殺意は、確かに兄者へも向けられているのだから。

( <_   )「あいつは、妹者がここに行く事を知っていた。それなのに止めなかった。
      そして、有ろう事かこの俺に内緒までした。
      俺がもし知っていたら、妹者をこんな目には遭わせなかった。
      あいつが妹者を頃したも同然なんだ。許さない、許さない、許さないッ!!!」

川 ゚ -゚)「だったら、尚更覚悟が必要じゃないか」

(´<_ ` )「は?」

 意味がわからなかった。
 俺にはもう何でもできる覚悟があるのに。
 俺はもう鬼なんだから。


152: 2008/07/06(日) 23:57:08.01 ID:/Eh6csi00
川 ゚ -゚)「この1年間、お前はその憎き兄の隣で笑っていられるのか?
     その煮えたぎる憎悪を胸に隠して、来年の綿流しの日まで我慢できるのか?」

( <_   )「い……1年も……?」

川 ゚ -゚)「当たり前じゃないか。綿流しのお祭りは1年に1度。
     それに今オフを開いたところでやつらに疑われて返り討ちにあうのが目に見えてる。
     最低でも1年近くは待たなければならない」

 俺には出来るだろうか?
 この1年間、兄者の前で笑っていられるだろうか?
 いつものようにふざけあうことができるだろうか?

 ――この鬼を抑えることができるのだろうか?

155: 2008/07/06(日) 23:58:41.86 ID:/Eh6csi00
川 ゚ -゚)「なぁ、弟者? お前の兄もその日に連れてくるのか?」

( <_   )「ああ、もちろんだ。 拷問まではしないが妹者に謝ってもらう必要がある」

川 ゚ -゚)「……そうか、わかった。その場凌ぎだが儀式をやりやすくなるかもしれないな」

 それを須名が言い終えた同時に、俺は須名の違和感に気づく。

(´<_ ` )「須名……?」

 いつの間にか須名の目には光るものが溜まっていて、それは今にも零れそうでいたのだ。

川 - )「この部屋は埃が多すぎる。そろそろ外に出ようか?」

158: 2008/07/07(月) 00:01:46.49 ID:N2agHEFK0
 俺は、須名をそっと胸に抱いた。
 そして、須名は小さく嗚咽をこぼした。

 それを見て心が打たれたが、俺からはもう涙は出なかった。
 だって、さっき人間を捨てたのだから。
 妹者のいる場所に、俺を置いてきたのだから。


 須名は俺の腕を握り締め、何とか泣くのを堪えようとしていた。
 だが、俺は頭を撫でながら言う。

( <_   )「今日だけはいいんだぞ……」

川 ;-;)「うっ……うるざい……私は……もう鬼なんだ……」

 いいんだ、須名。

 今日はまだ人間のままでいよう。

 そして、涙が枯れるまでここで泣き明かそう。

 俺はもう鬼だから頭を撫でてあげることしかできないけど……

 一緒に居てあげるから。

159: 2008/07/07(月) 00:04:25.44 ID:N2agHEFK0
 その日、須名は俺の腕の中で泣き尽くした。
 一滴一滴は人の心を捨て去るように。

 そして、お互い完全な鬼になった俺達は妹者に別れを告げ人間の世界に戻った。


 妹者、

 ごめんね。

 一人で寂しいだろうけど……

 絶対戻ってくるから。

 もうちょっとだけ待っててね。


161: 2008/07/07(月) 00:06:36.45 ID:N2agHEFK0
*―――*―――*


( <_   )「ただいま」

(メメ´_ゝ`)「お、弟者……」

( <_   )「兄者か、昨日は悪かったな。つい妹者のことで頭に血が上っていたんだ」

(メメ´_ゝ`)「い、妹者は……?」

( <_   )「なーに、きっとすぐに帰って来るさ。気長に待とう」

(メメ´_ゝ`)「……弟者?」

( ∀  )「モシ カエッテキタラサ エガオデ ムカエテアゲヨウヨ」


(;メ´_ゝ`)「……ああ」

162: 2008/07/07(月) 00:08:12.36 ID:N2agHEFK0
 俺は人間を演じる。
 素顔は鬼のままなので、人の仮面をうまく使い分けて
 “流石弟者”を演じきる。


 なぁ、妹者?
 俺頑張るから。

 ちっちゃい兄者は頑張るから。

 だから、どうかせめて天国で笑っていて下さい。

 それだけが、俺の望みです……

163: 2008/07/07(月) 00:10:59.81 ID:N2agHEFK0
*―――*―――*


川 - )「やー、みんなおはよう」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、クー! 昨日どうしたのー!? 風邪かなかな??」

lw´‐ _‐ノv「風邪にはこの米を茹でたお粥がよく効くぞ。試すが良い」

川 ー )「アリガトウ」

(゚、゚トソン「ねぇ、大丈夫? 顔青白いよ」

川 ∀ )「ソウカナ? ムカシ カラ コンナ カオダヨ?」

(*゚∀゚) 「アヒャヒャヒャ!! そうだね~クーはいっつも青白い顔をしてるから大丈夫か!!」

川 ー )「ソウソウ ダイジョブ ダイジョウブ」

164: 2008/07/07(月) 00:14:13.81 ID:N2agHEFK0
 妹者見てくれていますか?
 私は今、笑ってるよ。
 友達に囲まれて楽しく生活しています。

 だから、妹者も笑ってよ。

 妹者が教えてくれた私の幸せ。



ミセ*゚ -゚)リ「ど、どうしたのクー? やっぱり、今日は家に帰ったほうが……」

川 - )「あ、すまない。 心配かけたようだな」


166: 2008/07/07(月) 00:17:10.53 ID:N2agHEFK0
 一瞬だけ人の仮面がずれ落ちる。
 三瀬理達は私の素顔を見て驚いていたようだ。
 危ない危ない……

 もしかして、妹者にも見られたのかな?

 ごめん、妹者。

 今のは違うんだ……

 私ちゃんと我慢するから。
 その日まではちゃんと人間の“須名空”を演じるから。


 アー ハヤク コナイカナ ?


ミセ;゚ -゚)リ「クー………」


168: 2008/07/07(月) 00:19:39.12 ID:N2agHEFK0
*―――*―――*


 妹者がいなくても、関係なしに季節は巡る。

 妹者は夏が好きだった。

 でも、その夏は例年より雨が多くて、
 地球温暖化なんて話題に相応しくない、
 暗くて、寒い夏だった。


 妹者のいない秋は、いつも以上に短い気がした。
 葉の色はどこか寂しげな色ですぐに散っていった。


 雪が降った。
 妹者は初雪を見ると必ず雪合戦しようと言った。

 でも、その雪はただのみぞれで触れると脆くも儚く溶けていく……
 その年の冬は寒いだけで妹者が喜ぶ白の世界は見せてはくれなかった。

169: 2008/07/07(月) 00:21:14.20 ID:N2agHEFK0
 桜が咲いた。
 俺を鬼に変えた場所で、それは変わらずに舞っていた。
 だが、いつもよりどこか大人しく寂しげに桜は散り去っていくようだった。

 ただ、妹者と見た綺麗な夜桜だけは俺を慰めるように優雅に舞っていた。
 俺はそこで目を瞑る。

 妹者の笑い声が聞こえたような気がした。
 それは、いつもと変わらないあの素敵な笑い声だった……



172: 2008/07/07(月) 00:23:25.02 ID:N2agHEFK0
 そして、夏の匂いが近づく……

 耳を澄ますと、それが聞こえてきた。

 ああ、ずっと待っていた。
 お前が鳴くのを……


 もうすぐだ。


 俺の中の鬼が踊りだす。


 もうすぐ終わる


 全部終わる

 

 ―――そう、ひぐらしのなく頃に



180: 2008/07/07(月) 00:48:14.16 ID:N2agHEFK0
 TIPS

【宴への招待状】


雛見沢綿流し祭OFF

1 :本当にあった怖い名無し:2008/06/10(火)
 雛見沢村伝統の綿流し祭をしませんか?
 
 日時は今月の21日午後から22日の朝頃までを予定としています。
 (本当は日曜日にしたいのですが、みなさん忙しいと思いましたので土曜日にしました)


川 ー )


51 :本当にあった怖い名無し:2008/06/10(火)
 今回は噂の富豪S家へ行ってみたいと思います。
 また、去年に悲惨な事件があったのは承知ですが、
 オヤシロ様のお怒りを鎮めるためにも綿流しを行うべきだと思います



183: 2008/07/07(月) 00:50:53.90 ID:N2agHEFK0
*―――*―――*


( ゚д゚)「あ、みなさんは雛見沢オフ参加者ですよね?初めまして前原圭一です」

川 ー )「本名なんて堅苦しい! 私はクー、このオフの主催者だ」

(´・ω・`)「まぁ、ハンドルネームの方がオフらしいしね。 僕の名は“ショボン”」

ショボン

(*゚ー゚)「しぃです。よろしく」

( ゚∀゚)「“ジョルジュ”だ。これで全員か?」

ジョルジュ

川 - )「いえ、あと5人ほどの参加者がいるはず」

( ゚∀゚)「そっか、クーちゃんみたいな可愛い子がくればいいんだがな。 アヒャヒャ!!」


 マダダ・・・ ガマンシロ


187: 2008/07/07(月) 00:52:32.88 ID:N2agHEFK0
ξ゚⊿゚)ξ「ツンです。今日はよろしくお願いします」

( ^ω^)「おっおっおっ はじめましてブーンだお」

('A`)「……“ドクオ”です」

 ドクオ

川 ー )「よく、来てくれた。
     私はこのオフの主催のクーだ。よろしく」

ショボン ジョルジュ ドクオ

 ミ ツ ケ タ・・・

ヨカッタ トリアエズ ケイカク ドオリ ダヨ

191: 2008/07/07(月) 00:54:27.94 ID:N2agHEFK0
( <_   )「遅れてすみません。雛見沢オフの集まりですよね」

( ´_ゝ`)「まったく、みんなに迷惑をかけてんだぞ」

( <_  #)「兄者が行きたくないって駄々をこねたんだろ!!」

(*´_ゝ`)「な…… こ、怖いなんて思ってないんだからね!!」

( <_  #)「OK、今日は一人肝試しだな」


 アア オトジャ ヒサシブリ

ヨカッタ シンパイシテタケド

エンギガ デキテイルジャナイカ ?


193: 2008/07/07(月) 00:56:57.37 ID:N2agHEFK0
川 ー )「はい、どうぞ。とりあえず、砂糖は2袋つけたが足りなかったら気軽に言ってくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、ありがとうございます……」

( ^ω^)「ツンは手伝わなくていいのかお?」

ξ#゚⊿゚)ξ「手伝うタイミング失ったのよ。うるさいわねー!」

川 - )「はい、兄者に弟者。どうぞ……」


ξ゚⊿゚)ξ「―――?」



 さぁ、これで準備は万端だ。
 あとは、いかに冷静かつ大胆に行動出来るかだ。

 大丈夫、

 私達は鬼なんだから。

 だが、まだだ。

 今はまだ人を演じ続けなければ……

 獲物を狩るには、まず安心させなければならないからな。

 クスクス・・・

196: 2008/07/07(月) 00:58:48.65 ID:N2agHEFK0
*―――*―――*

 一通りの雑談を終えていよいよ宴の舞台へと向かった。

 車は2台。
 今宵の宴を遂行するためには、この車が邪魔だろう。
 夜は長いのだから、帰るなんて言い出されたら興が冷める。

 運のいい事に1つの車はジョルジュの物だった。

 まずはじめにジョルジュを頃す。
 本当は苦しめて頃したかったが、見せしめにするのだから勘弁してやろう。

 その後に、車のキーを奪えば、とりあえずジョルジュの車は使えなくなる。

 問題は今乗っているこの車。
 持ち主は前原圭一。

 年齢的にも他のメンバーの絡みから考えると、恐らく彼は妹者を汚し頃した男ではないだろう。
 だとしたら、流石の鬼の私でも殺せない……

 どうする。
 タイヤをパンクさせるか?

201: 2008/07/07(月) 01:00:52.90 ID:N2agHEFK0
( ゚д゚)「はい、着きましたよ。ここが雛見沢村の古手神社です」


 私は考え事をしている間にそこに着いた。

 そこは、待ちに待った血塗れの舞台。

 ――雛見沢村。

 夕焼けが血のように赤く染まっている。
 そして、ひぐらしが鳴き声を響かせていた……

 ああ、戻ってきたよ妹者。

 待っててね、もうすぐだから。

204: 2008/07/07(月) 01:02:52.80 ID:N2agHEFK0
 しかし、どうやら何か異変が起こったようだ。
 ジョルジュの車に乗っていた弟者達が外で何かに驚いていた。

 前原圭一は何事かとその様子を見に行く。
 同席していたドクオ達も咄嗟に車から飛び出したようだ……


 あ~あ、せっかく考えていたのにそんな簡単でいいのか?

 車のキーは付けっ放しで放置されていた。

 これを隠せばもう車での移動は不可能になる。
 私の悩みはあっさりと解決したのだ。

 あまりの運の良さに神様が私達に味方してくれているような気がした。
 ……いや、ここは雛見沢村。鬼の村なんだ。
 そう、味方してくれているのは神様ではなく、オヤシロさまなのだ。

207: 2008/07/07(月) 01:04:53.05 ID:N2agHEFK0
 私は車のキーを奪ったあと何食わぬ顔をして皆のもとへ駆け寄った。

 全員何に唖然としているのかと思えばそこにいたのはカラスの群れだった。
 まるで穢れを持ち込んだ余所者を拒むかのようなカラス達の瞳。

 いや、このカラス達は宴の観客なんだ。
 早く、始まらないのかと囃し立てているんだ。

 ああ、もう少し待ってくれ。
 今はまだ人の顔で人の台詞を吐かなければならない。


川 - )「ふむ、どうやら歓迎してくれてはいないようだが……」


210: 2008/07/07(月) 01:07:04.52 ID:N2agHEFK0
 今宵お集まり頂いた8名の皆様。
 これよりはじまりますは鬼の宴、
 “腸流し”の儀式となります。


 私達二人、まだまだ未熟な鬼ではありますが
 今宵を盛り上げようと精一杯頑張ります故、

 どうぞ、最後までお楽しみ下さい。



川 ー )「さて、祭りをはじめようか」




212: 2008/07/07(月) 01:10:43.48 ID:N2agHEFK0












 イモジャ ミテイテネ

キミニ ササゲル ワタシタチ ノ ワタナガシ ノ ギシキヲ ・・・

214: 2008/07/07(月) 01:12:03.28 ID:N2agHEFK0
 TIPS

【知り合い?】


川 ゚ ー゚)「はい、どうぞ。とりあえず、砂糖は2袋つけたが足りなかったら気軽に言ってくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、ありがとうございます……」

( ^ω^)「ツンは手伝わなくていいのかお?」

ξ#゚⊿゚)ξ「手伝うタイミング失ったのよ。うるさいわね!」


 主催者のクーさんと、もう一人の女性のしぃさんはメンバー全員にアイスコーヒーを配っていた。
 この場合は、やっぱり私も手伝わなきゃダメだよね。

 それくらい私だってまずいってわかってる……
 なのにブーンは馬鹿にしたような顔で言った。

217: 2008/07/07(月) 01:14:20.23 ID:N2agHEFK0
 後で殴ってやるから覚悟しとけよ!!

 私は心の中で悪態を吐く。

 はぁ、だめだ…… こんなことばっかり考えてるから私はブーンとの関係は未だ幼馴染の友達なんだ。
 せっかく、遠出でブーンを連れてきたのに……

 このオフでの私の目的は確かに謎に満ちた雛見沢村に行って見たいと言うのが第一だった。
 でも、あわよくばブーンとの関係を深めたいなんて事も考えていた。

 でも、この調子じゃダメかな……


 私はコーヒーを飲みながら溜息をついた。


219: 2008/07/07(月) 01:16:04.82 ID:N2agHEFK0
川 ゚ -゚)「はい、兄者に弟者。どうぞ……」

 クーさんは自分以外の最後に双子の兄弟にアイスコーヒーを配っていた。
 兄者さんにまずアイスコーヒーと砂糖2袋を置き、
 弟者さんにもアイスコーヒーと砂糖3袋を置いた。


 ――あれ?

 どうして弟者さんには砂糖が一つ多いんだろ?
 クーさん、間違えて持ってきちゃったのかな?

222: 2008/07/07(月) 01:18:07.43 ID:N2agHEFK0

( ´_ゝ`)「……弟者は相変わらずの甘党だな きめぇww」
  
(´<_ ` )「いや これくらい入れなきゃコーヒーは飲めないだろ」


 あれ?

 弟者さんは甘党?

 じゃあ、あれはわざと?

 クーさんと弟者さんが話していた記憶はない。
 もしかして、二人知り合いなのかな?

224: 2008/07/07(月) 01:19:38.54 ID:N2agHEFK0
 本日の投下は以上です。
 こんなに遅くまで支援ありがとうございました。猿め……

 あと、規制を心配して下さったのにレスしなくてすみません……
 正義さん見習って投下中は鬼になる事にしてるんです。

 案の定、祟りにあってしまいました……
 4回連続さるとはこれいかほどに?昨日は総合でも投下してたから計6回も……

 では、何か質問ありますでしょうか?


( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―【第4話】

引用: ( ^ω^)と ξ゚⊿゚)ξ の鬼隠しのようです―解―