700: 2012/04/21(土) 02:11:17.83 ID:HGPI6wjSo
「はい、それじゃあ美樹さん、剣を構えてちょうだい」

「はーい」

応えると、あたしは片刃の剣を両手でしっかりと握り締めた。
刃の長さは基本的な剣と変わらない。と言ってもあたしは普通の剣がどれほどか知らないのだけれど。
剣の重さは木製のバットと同じかそれよりも軽いくらいだ。全身に掛けられている筋力強化魔法のおかげだろう。
威力は下がってしまうが、慣れた今ならば片手で振るうことも出来る。
切れ味は生成した時に決まってしまうので、片手で扱う時は筋力強化に回す魔法も忘れない。
魔法少女まどか☆マギカ

701: 2012/04/21(土) 02:11:45.42 ID:HGPI6wjSo

そんな物騒な代物を、あたしは魔法少女の先輩であり師匠でもあるマミさんへ向けた。
マミさんとの距離はそう離れていない。歩いて五歩か四歩、と言ったところだ。
この程度の距離ならば魔法を使わずとも、それこそ瞬く間に詰め寄ることが出来る。
だというのに、マミさんの様子は変わらない。いつもと同じ、華麗に、優雅、あるいは典雅に。
だからといってあたしは油断しない。苛立ちもしない。
そうするだけの実力が目の前の彼女にはあるのだ。それはあたしがよく知っている。

ごくり、と唾を飲み込む音がやけにくっきりと頭の中にひびいた。
そんなあたしの緊張を察してか、マミさんはやんわりと表情を緩めて口を開く。

「そう強張らなくて良いわ。今日行うのは、あくまでも簡単な演習。私の技を受けてもらう、それだけよ?」

そうだ。忘れるところだった。
緊張のせいか、あたしはついうっかり最初の考えを忘れてしまっていた。
それどころか、マミさんと命のやり取り――つまり本気の戦いを挑もうとまで考えていた。
危ない危ない、と内心で呟く。そして頷き、大丈夫です、とマミさんに意思表示する。

「それじゃ、行くわよ?」

「はい!」

叫び、もう一度剣を構える。
そしてマミさんが右手に小さなリボンを握り締めていることに気付き、静かに戦慄する。
正面にいるのにまるで気付かなかった。瞬きをするわずかな間に行ったのだろうか。恐るべき早業だ。
マミさんはリボンを握り締めたまま、声高らかに宣言する。

「≪魔法少女・技の受身演習その2――トッカ・スピラーレを受けてみよう!≫ 開始!」

702: 2012/04/21(土) 02:12:13.13 ID:HGPI6wjSo

その言葉と同時に、マミさんの握り締めているリボンがその形状を変化させ始めた。
ぐるぐるとうねり、らせん状のドリルのような姿に変わっていくのだ。
それだけじゃない。マミさんの右手から溢れ出る新たなリボンが、そのらせん状のリボンにどんどん束ねられていく。
魔法で作り出されたリボンは、まるで柔らかい飴細工のように一つになって固まった。
リボンを生成する魔力は必要最小限で、束ねる動作も指先一つで自由自在。
いくつもの飴のようなリボンを束ね、結び、繋げるマミさんの姿は、まさしくあたしの理想の魔法少女のそれだった。

と、マミさんが右手をあたしの方へ向けた。
短い槍のようなリボンがあたしのすぐ真正面に位置している。あたしを貫くつもりだ。
もちろん実際に貫くことはないだろう。だけど、何か手を打たなければならない。
そうあたしに思わせるだけの気迫が、マミさんには確かにあった。

「……っ!」

全身に力を入れながら、あたしはもう一度剣を構え直す。そして現状を冷静に分析する。
腕の長さとリボンの長さを足しても、稼げる距離はせいぜい二歩か三歩分。あたしへ攻撃を行うには少し足りていない。
とすると、マミさんが攻撃を行うためには、少し踏み込まなければいけなくなる。
マミさんは身体面の強化はそれほど重視していない。あたしの強化された反射神経なら、頑張れば捉え切れることだろう。
つまり、踏み込んで来たマミさんとそのリボンの射線状――撃つ訳ではないのだが――から逃れれば良いのだ。
リボンをかわして、マミさんへ攻撃を加える。出来るだろうか。
いや、どちらにしてもやらなければならないのだ。決断すると、あたしはマミさんの身体へ意識を向けた。

その時だ。言葉に出来ない悪寒が身体を走ったのは。
何故だか分からない。分からないけれど、このまま相手の出方を窺っていれば負けてしまう。
そう直感が囁いている。だけど、どうして? マミさんの様子に異変はないし、リボンだって何も変わっていない。
先ほどまでと同じで、らせん状に研ぎ澄まされたリボンの先があたしへ向けられているだけだ。――いや、おかしい。
違和感を覚える。具体的に言うと、リボンが先ほどまでよりも少し大きくなっているような気がする。
リボンの肥大化。なぜ? 意味がない、と断じて切り捨てることは出来ない。だが他にも可能性があるのではないだろうか。
そう、例えば――遠近感覚。遠いと小さくなり、近いと大きく――まずい!

「――っああ!」

とっさに剣を目の前のリボンへと向け直し、両手に魔力を注ぎ込む。
同時に全身に衝撃が襲い掛かった。比較的軽い。何かがぶつかったというよりは受け止めたというべきだろう。
あたしは剣の刃先へ目を凝らし、衝撃の正体を探ろうとした。
果たして、それは予想していたよりもあっさりと明らかになった。

703: 2012/04/21(土) 02:12:59.13 ID:HGPI6wjSo

剣先に、らせん状のリボンが衝突していたのだ。

刃によって切り裂かれたリボンが真っ二つに割れながら、あたしの両肩の当たりにまで及んでいる。
だがマミさんの様子に変化は認められない。ということは、考えられるのは二つだ。
研ぎ澄まされたリボンを、身体の力に頼ることなく――つまり魔法でリボンそのものを伸ばしたか、撃ち放った、だ。
恐らくは前者だろう。撃つのならマミさんにはそれ用の魔法がある。つまりこれは、近接格闘用のリボン攻撃だ。
槍のように伸ばして、対象を貫く貫通系の技。あたしの武器が剣じゃなかったら危なかったかもしれない。
剣を上段に構えていたのも幸いした。これが下段に構えていたのであれば、おそらく反応が間に合わなかったはずだ。
いずれにしろ、技は凌いだ。受けきった。これで演習は終わりだ。

そう思い、肩の力を抜こうとする。だが上手く行かず、結局、身じろぎするだけに留まった。
あたしは眉をひそめて肩に目をやった。
そして絶句する。

「いっ、いつの間に!?」

あたしの両肩――正確には肩から胴にかけて、リボンががっちりと巻かれていたのだ。
これはマミさんの得意とするリボンを用いたバインド魔法だ。だけど、どうやって?
考えて、思い至る。
先ほど受け止めたあの攻撃。あれによって二つに分かたれたリボンを使ってあたしを拘束したのだ。
確かにあたしは油断していた。それは事実だ。だけど、気付かぬ間に拘束してしまうなんて……!
悔しがるあたしを目の前に、マミさんは口に手を当てて小さく微笑んだ。

「反射でトッカ・スピラーレを切り裂いたところまでは良かったけど、その後がおざなりだったわね」

「うー、だって予想できませんよこんなのぉー! 最初から予想してたんですか?」

「まさか。これは貫いた相手を拘束したり、攻撃をかわしたり、かすめた相手を拘束するためのものよ?」

つまりこれは、咄嗟の思いつきということなのだろうか。
そう考えると、良いところまで行ったのかもしれない。勝てなかった――というか防ぎきれなかったのは残念だけど。
拘束を解かれたあたしは、ぐるぐると肩を回しながら先ほどから気になっていたことをマミさんに尋ねた。

「あのぉ、結局トッカ・スピラーレってどういう意味なんですか?」

「私達魔法少女を束ねる、美しき円環の如き螺旋。それをリボンで表したのが、トッカ・スピラーレよ」

……それってつまり、ドリル・リボン的な? みたいな? とは口が裂けても言えないあたしなのだった。

704: 2012/04/21(土) 02:17:00.40 ID:HGPI6wjSo
技名叫ばせてはいこれ○○ね!いちいち描写はしないから!って展開を自分がやりかけてむしゃくしゃして作った。
蛇足だが、リボンを作ってから拘束するまでに掛かった時間はおよそ四秒前後。
伸ばす速度とか入れ忘れたけど気にしない。
失礼しましたーっす

引用: 【皆で】魔法少女まどか☆マギカ小ネタ投稿スレ【更新】