3: 2005/12/31(土) 21:32:17.64 ID:qDEZky3L0
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第一話】
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第二話】
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第三話】
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第四話】
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第五話】
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第六話】
( ^ω^)ブーンがギャングスターになったようです。【第七話】
VIPの市街地の一角、深夜のコンビニの前で立ち尽くす二人の兄弟が居 た。
( ´_ゝ`)「時に弟者よ・・・、ここはどこだ。」
(´<_ ` )「兄者、さんざん地図を見ながら町を歩こうとした俺を無視して勝手に歩き回っておいてそれか。」
(;´_ゝ`)「待て、弟者。道ならそこら辺に居るヤツに適当に聴けばいいだろう。」
そこで、兄者と呼ばれた男がコンビニへと近づいていく。
二十分後、コンビニ前の駐車スペースが朱に染まった。
つい先ほどまで人だった物がいくつも転がる中で、二人の兄弟が立ち尽くしている。
先ほど兄者と呼ばれた男は右手に血まみれの長ドスを握っている。
男はニ、三度長ドスを振り、刀身についた血を払ってから鞘に戻すと、一息つく。
そこにもう一人の男が話しかけた。
(´<_ ` )「で、何故こうなる?」
(;´_ゝ`)「いや、道を聞いただけなんだが。」
(´<_ `♯)「俺が言っているのは、何故コンビニの店員ではなく、コンビニの外でたむろしてるDQNどもに声をかけたのか?、とい う事だ。」
(;´_ゝ`)「だって連中、どうも珍走みたいだし、道にも詳しいかなぁ・・・、と。」
10: 2006/01/02(月) 21:55:22.13 ID:YWwp1d2Z0
バリケードから飛び出るなり、僕は一足飛びにタカラへと飛び掛る。
タカラが慌ててライフル銃を僕に照準し、撃ってくるが僕は冷静にそれをかわす。
こんな至近距離だ。当然相手の指の動きは見えるので、相手の射撃のタイミングも分かる。
僕はそのタイミングに合わせて屈んで、銃撃を避けた。
運の悪い誰かがその弾丸に当たったらしく、悲鳴が聞こえる。
構わずに、体勢を低くしたままタカラへとタックルを食らわせる。
僕の肩がタカラの腹にぶつかり、タカラの肺から空気が吐き出される。
タカラは衝撃に顔をゆがめながらも、なんとか踏ん張って持ちこたえる。
そのまま上体を上げて、タカラの顔を殴りつけてやろうとしたところで、背中に衝撃が来る。
タカラが逆手に持ったライフル銃の銃把で僕の背中を殴りつけたらしい。
だが、僕はひるまない。
背中など、あのタコ部屋で殴られなれている。
労働中、しゃがんでいる時、背を丸めている時、疲れて果てて地面に倒れた時、最も殴られたのが背中だった。
もはや、生半可な力で背中を殴られたところで痛みなど感じない。
むしろあの頃を思い出して懐かしさのようなものを感じる。
閑話休題。
僕は、さらにライフル銃を振り上げようとしたタカラの顎に、頭突きを食らわせる。
タカラが仰け反る。
タカラが慌ててライフル銃を僕に照準し、撃ってくるが僕は冷静にそれをかわす。
こんな至近距離だ。当然相手の指の動きは見えるので、相手の射撃のタイミングも分かる。
僕はそのタイミングに合わせて屈んで、銃撃を避けた。
運の悪い誰かがその弾丸に当たったらしく、悲鳴が聞こえる。
構わずに、体勢を低くしたままタカラへとタックルを食らわせる。
僕の肩がタカラの腹にぶつかり、タカラの肺から空気が吐き出される。
タカラは衝撃に顔をゆがめながらも、なんとか踏ん張って持ちこたえる。
そのまま上体を上げて、タカラの顔を殴りつけてやろうとしたところで、背中に衝撃が来る。
タカラが逆手に持ったライフル銃の銃把で僕の背中を殴りつけたらしい。
だが、僕はひるまない。
背中など、あのタコ部屋で殴られなれている。
労働中、しゃがんでいる時、背を丸めている時、疲れて果てて地面に倒れた時、最も殴られたのが背中だった。
もはや、生半可な力で背中を殴られたところで痛みなど感じない。
むしろあの頃を思い出して懐かしさのようなものを感じる。
閑話休題。
僕は、さらにライフル銃を振り上げようとしたタカラの顎に、頭突きを食らわせる。
タカラが仰け反る。
4 名前: 2005/12/31(土) 21:33:03.83 ID:qDEZky3L0
(´<_ ` )「珍走=地理に詳しい、という頭の弱さ丸出しの偏 見は置いておいて、だ。」
遠くからサイレンの音が近づいてい来る。
入り口のガラスからコンビニの中を除き見れば、目玉が飛び出さんばかりに目を向いて驚いているコンビニ店員が
電話を握って震えている
いくら深夜とは言え、こんな目立つ場所で堂々と殺人を犯せば、通報されぬはずがない。
(´<_ ` )「運営に通報されたか。これで俺達も強制送還か。」
( ´_ゝ`)「落ち着け、弟者。早く車に乗り込むんだ。逃げるぞ。」
(´<_ `#)「ほう、車に?俺の記憶が正しければ、俺達の車は機能、兄者が駐車代をケチったせいでレッカーされたはずなんだが。」
( ´_ゝ`)「・・・・・・・・・車は僕等の心の中にある。」
(´<_ ` )「ねーよ。」
そんな時、二人の立ち尽くすコンビニの前に、一台の車が止まった。
黒いワゴン車だ。
6 名前: 2005/12/31(土) 21:34:13.62 ID:qDEZky3L0
( ´_ゝ`)「見ろ、弟者。おあつらえ向きに新しい車が来たぞ。」
(´<_ ` )「待て、兄者。まさか・・・。」
弟者が制止の声をかけた時には既に、兄者はワゴン車に向かって歩き出している。
ワゴン車の窓ガラスに向けて兄者の鞘に納まったままの長ドスが振り上げられる。
後はそれを振り下ろすだけだ。
だが、ついにそのワゴン車の窓ガラスが割られる事は無かった。
兄者の腕が振り下ろされる前に、ワゴン車の運転席の窓と、後部座席のドアが開いたからだ。
( ^Д^)「兄貴達、探しましたよ!!早く乗ってくださ―――」
ゴン、とかガン、としか表現の仕様の無い音が響いた。
兄者の振り下ろした長ドスは窓を壊す代わりに、窓を開けて兄弟達に話しかけてきた男の頭に直撃した。
ワゴン車の窓ガラスを割るつもりで込めた力がそのまま頭に激突し、窓を開けた男は失神した。
(;´_ゝ`)「あ、ごめんよ、タカラ。本当は止められたんだけど、そのまま振り下ろしたらどんなリアクション取るのか見たくって、つ い。」
(´<_ ` )「兄者、俺は今ここで猛烈に兄者を殴っておかねばならぬような気がするのだが。」
7 名前: 2005/12/31(土) 21:34:56.14 ID:qDEZky3L0
(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ、だらしねーな、タカラ。オラ、運転 代われ。」
助手席に乗っていた女が、運転席に座っていた男、流石組若頭のタカラをぞんざいに後部座席に放り出す。
(*゚∀゚)「おい、兄貴達、早く乗り込んでくれ。そろそろ削除人の連中が来ちまう。」
女の声に従って、兄弟がワゴンの後部座席に乗り込む。
ワゴン車は、兄弟が乗り込むか乗り込まないかという内に発進している。
( ´_ゝ`)「うむ、タカラにつー、助かったぞ。」
(*゚∀゚)「何言ってんだよ兄貴。俺等、ファミリーだろ?水臭ぇ事は言いっこ無しだぜ。おい、タカラ、起きろ!」
( ^Д^)「痛たたたたた、あれ?兄貴達、何時の間にワゴンに乗り込んだんですか?」
( ´_ゝ`)「お前が気絶している間にだ。」
( ^Д^)「気絶?僕は気絶なんてしてたんですか?一体何故?」
( ´_ゝ`)「なんか、俺達がワゴン車に乗り込む前に一人でに気絶してたぞ。」
(´<_ ` )「兄者、その舌引っこ抜いてもいいか?」
(;´_ゝ`)「落ち着け、弟者。その手に握っているペンチはどこから出した。」
(*゚∀゚)「気にする事無いぜ、兄貴達。気絶したタカラの奴がヤワだっただけなんだから。」
8 名前: 2005/12/31(土) 21:35:53.70 ID:qDEZky3L0
(;^Д^)「あのさ、つーちゃん。つーちゃんって確か若頭補佐だった よね。」
(*゚∀゚)「おう、それがどうした、若頭。」
(;^Д^)「敬語って知ってる?」
(*゚∀゚)「圭吾?この前殺したニュー速帰りのあいつか?」
(;^Д^)「・・・・・・・・・・・・。」
(*゚∀゚)「それにしても兄貴達、合流するのに二週間もかかっちまったな。」
( ´_ゝ`)「うむ。VIPの中で落ち合おうとしか言ってなかったからな。」
(;^Д^)「ちょっとつーちゃん、運転中は前見て!!!振り向かずに前向いたまま喋って!!!」
中にいる者たちの混乱を他所に、ワゴン車は数十分をかけて市外にある三階建ての建物にたどり着いた。
ワゴン車から四人の男女が降りてくる。
( ´_ゝ`)「へー、結構いい事務所じゃないか。しかしなんだありゃ、有限会社リュウセキ?」
( ^Д^)「ええ、さすがに”流石組”の名前は使えませんからね。」
( ´_ゝ`)「そうなると俺はもう組長じゃなくて社長で、弟者が副社長か。」
(*゚∀゚)「俺等がVIPに来てんのはゴクヒニンムって奴なんだろ?」
(´<_ ` )「いや、別に任務でもゴクヒでもないが・・・。確かにできるだけ目立たない方がいいな。」
( ^Д^)「一門を破門になった俺達がVIPに来ているとなると、こっちの連中も警戒するでしょうしね。」
(´<_ ` )「どこかの考えの足らない馬鹿がここ二週間でさんざん刃傷沙汰を起こしたがな。」
(;´_ゝ`)「弟者、なんだその責めるような視線と言い草は。」
(´<_ ` )「実際に責めているんだが?」
9 名前: 2005/12/31(土) 21:36:44.01 ID:qDEZky3L0
(*゚∀゚)「まあ、兄貴達が暴れて騒ぎを起こしてくれたおかげで兄貴 達を見つけることができたんだけどな。」
( ^Д^)「騒ぎの起きてるあたりを適当に走り回ってるだけで見つかりましたからね。」
四人は話を続けながらも、事務所のビルの中に入っていく。
ドアを開けると、中には50人程の男たちが詰めていた。
ドアから兄弟が顔を出すと、一瞬驚いたように静まり返ったが、次の瞬間には歓声がとんでいる。
( ´⊇`)「タカラ兄貴につーの姉御、組長達をついに見つけたんですね?」
( -_-)「死にたい。」
( ´_ゝ`)「おお、モヒャにヒッキーか。久しぶりだな。」
(´<_ ` )「兄者がしっかりしていればもっと早く合流できたんだがな。」
( ´⊇`)「兄貴達、もうチャカも弾薬も全部揃ってます。俺達は何時でも突撃できますよ。」
( -_-)「辛い。本当に死にたい。」
( ´_ゝ`)「そうか。準備は万端、というわけか。」
兄者が事務所の中を見回す。
元流石組員達、現リュウセキ職員達は皆武器弾薬の整備をしている。
10 名前: 2005/12/31(土) 21:37:26.23 ID:qDEZky3L0
( ´_ゝ`)「燃料は積んだ。タイヤも新しいのに取り替えた。手入れ だって欠かしていない。」
(´<_ ` )「後はエンジンをかけるだけだ。それだけで俺達は走り出せる。」
( ´_ゝ`)「敵は三千人。こっちは五十四人。これほど燃える舞台は無い。おもしろいじゃあないか。」
兄者がニヤリと口の端を歪めた。
それに呼応するかのように、周囲の男達もニヤニヤと笑い始める。
兄弟というキーが差し込まれ、彼らにエンジンがかかった。
もう止まる事は無い、エンジンが。
(´<_ ` )「しかし兄者ほどアルカイックスマイルの似合わん男は居ないな。馬鹿笑いの方が似合ってるぞ。」
(#´_ゝ`)「・・・・・・・・・。」
12: 2006/01/02(月) 21:55:51.10 ID:YWwp1d2Z0
僕はさらに頭突きを叩き込もうとして、タカラの眼光がまだ氏んでいないことに気づく。
僕が頭突きを繰り出すのにあわせて、タカラは踏ん張って体勢を立て直し、さらに体勢を立て直した勢いで頭突きを繰り出してきた。
僕とタカラの額がぶつかり、お互いの額が割れる。
―――笑ってばかり居る陽気そうな見た目からは想像できないくらいに、いい頭突きしてくれるじゃないか。
心の中でタカラに賛辞を送る。
お互いの視線が、額をぶつけ合ったままの近距離で交錯する。
僕はその姿勢のまま話しかけた。
( ^ω^)「聞きたい事があるお。」
( ^Д^)「何ですか?」
( ^ω^)「須藤さんを頃したのはおまえかお?」
( ^Д^)「須藤?」
( ^ω^)「武運組の若頭だお。」
( ^Д^)「さあ。この数日で随分頃したので覚えてません。武運組なら僕が指揮をとって突撃しましたがね。」
( ^ω^)「そうかお。」
これで確信がもてた。
このタカラが須藤さんを頃したのはまず間違いない。
( ^Д^)「ええ。そうです。そして―――」
僕が頭突きを繰り出すのにあわせて、タカラは踏ん張って体勢を立て直し、さらに体勢を立て直した勢いで頭突きを繰り出してきた。
僕とタカラの額がぶつかり、お互いの額が割れる。
―――笑ってばかり居る陽気そうな見た目からは想像できないくらいに、いい頭突きしてくれるじゃないか。
心の中でタカラに賛辞を送る。
お互いの視線が、額をぶつけ合ったままの近距離で交錯する。
僕はその姿勢のまま話しかけた。
( ^ω^)「聞きたい事があるお。」
( ^Д^)「何ですか?」
( ^ω^)「須藤さんを頃したのはおまえかお?」
( ^Д^)「須藤?」
( ^ω^)「武運組の若頭だお。」
( ^Д^)「さあ。この数日で随分頃したので覚えてません。武運組なら僕が指揮をとって突撃しましたがね。」
( ^ω^)「そうかお。」
これで確信がもてた。
このタカラが須藤さんを頃したのはまず間違いない。
( ^Д^)「ええ。そうです。そして―――」
13: 2006/01/02(月) 21:56:19.75 ID:YWwp1d2Z0
そう言った瞬間、タカラが頭を後ろに下げる。
もう一度頭突きをするつもりだろう。
タカラの声を聞くのに集中していて反応できなかった。
ヤバイ、すぐにでも頭突きが来る。
なんとかしてガード―――
――――する気など毛頭ない。
僕はそのままタカラの顔面を殴りつける。
殴られた勢いに頭を後ろに下げようとしていたタカラ自身の首の力も加わり、このままタカラが後ろに倒れるかと思えた。
が、タカラは倒れなかった。
僕に殴られ、口の中を切ったのか、唇の端から血を流しつつも足をしっかりと踏みしめて倒れるのを防いだ。
僕の目が驚愕に見開かれる。
―――コイツは、強い。
何故かは分からないが、僕は瞬間的にタカラのことが分かった。
こいつは倒れない男だ。倒れるべきでない時には、絶対に倒れない男だ。
もう一度頭突きをするつもりだろう。
タカラの声を聞くのに集中していて反応できなかった。
ヤバイ、すぐにでも頭突きが来る。
なんとかしてガード―――
――――する気など毛頭ない。
僕はそのままタカラの顔面を殴りつける。
殴られた勢いに頭を後ろに下げようとしていたタカラ自身の首の力も加わり、このままタカラが後ろに倒れるかと思えた。
が、タカラは倒れなかった。
僕に殴られ、口の中を切ったのか、唇の端から血を流しつつも足をしっかりと踏みしめて倒れるのを防いだ。
僕の目が驚愕に見開かれる。
―――コイツは、強い。
何故かは分からないが、僕は瞬間的にタカラのことが分かった。
こいつは倒れない男だ。倒れるべきでない時には、絶対に倒れない男だ。
14: 2006/01/02(月) 21:57:34.91 ID:YWwp1d2Z0
( ^Д^)「―――そして、貴方も僕に忘れられる氏人の中の一人になるんです。」
タカラのライフル銃を握っていない左手が、僕の右手を掴む。
僕の右手はタカラを殴った時のまま、伸ばされていた。
タカラは僕の右手を引っ張り、僕の体制を前のめりに崩すと、そこへ頭突きを放った。
(;^ω^)「ぐ・・・・ッ!!!」
僕の目の奥で火花が散った。
無茶苦茶痛い。
頭突きが僕の顔へと入ると、タカラは僕の手を離した。
僕は自然に頭突きを受けた勢いで後ろへと下がる。
ヤバい。
とにかく後ろに下がるのはヤバい。
タカラの右手にはまだライフル銃が握られている。
僕は必氏に足に力を篭め、その場で踏ん張る。
急いで視線をタカラへと向けた時、奴はライフル銃をしっかりと構えて、僕に狙いを定めていた。
十一月になった。
武運組とスレスト建設の半年間の抗争は終わりを告げた。
スレスト建設は倒産。社長の岸木は僕等が突撃した次の日に変死体となってVIP郊外で発見された。
その日の新聞の一面トップはひろゆきと切り込み隊長の対談の様子を紹介したものだった。
岸木の死は新聞の隅っこに小さく取り上げられていただけだった。
そこに載せられていた写真で、僕が突撃したときに最初に蹴った男が岸木だった事をはじめて知った。
後にスレスト建設の幹部構成員から明らかになった事の顛末はこうだ。
抗争が始まって半年近く経った頃、突然スレスト建設の若頭で突撃隊長のジョルジュが組を抜けたらしい。
ジョルジュは抗争が始まった一ヵ月後に、突然ふらりと現れてスレスト建設に協力するようになったそうだ。
ジョルジュとしては、面白そうだったから適当に手を貸してやっていただけ
という感覚だったのだが、スレスト建設の方としてはジョルジュを戦力としてかなり当てにしていたらしい。
スレストのジョルジュの戦いぶりに心酔していた若衆もついていってしまい、スレスト建設の構成員は半分以下に。
形勢が完全に不利と見た岸木は荷物をまとめてラウンジの知り合いを頼って逃げようとしたらしい。
しかし、ただ逃げるだけでは癪なので、武運組組長の孫娘の経営する喫茶店で発砲騒ぎを起こして嫌がらせをしてやろうと考え付いたらしい。
その喫茶店に向けて、懲役覚悟で鉄砲玉が送られた。
直接武運組に何かするわけではないというところがいかにも小物くさい。
結果、偶然居合わせた武運組長が撃たれ、岸木はたいそう焦ったらしい。
最後にちょっと嫌がらせをしてやるつもりが、相手の親分を撃ってしまった。
すぐに武運組からの報復が来ると思い、幹部数名にのみ自分がラウンジに逃亡する事を告げ、
若衆連中だけを建物内に残しておとりにしようとしたらしい。
そして、裏口から逃げ出そうとしたところへ丁度僕達が突撃をしてきたというわけだ。
なんだ、僕はしっかり岸木に落とし前をつけさせたというわけか。
15 名前: 2005/12/31(土) 22:03:33.55 ID:qDEZky3L0
岸木が刃物による裂傷だらけの異様な死体となって発見されたのには多少 の同情はすれど、因果応報だと思うしかない。
風のうわさによると、岸木の死体は背骨の間に無理やり刃物を差し込まれて、背骨を寸断された状態だったという。
因果応報。
僕にもやがてそんな報いが来るのだろうか。
そんな、なんともいえない嫌な後味を残しつつも、抗争は終わった。
町にも平和が戻ったと言っていい。
あれっきり、町のふいんき(←何故か変換できない)は穏やかなものに変わっていたし
輪呂巣会の中でも安心感のようなものが漂っている。
先日、輪呂巣会の幹部集会で、格組の組長達と会長がスレスト建設との抗争が終わった事を話し合っていた。
相変わらず会長は信用のならなさそうな、老獪な光を目に宿していた。
銃撃を受けた組長は、二週間ほど入院してすぐに退院した。
今ではもうVIPの郊外にあるジムに通うほどにまで回復している。
本人いわく「入院生活の精で体がなまっている」との事だ。
まったく驚くべき回復力。
組長は案外、首を切られてもまた新しい首が生えてきそうだ。
まあ、妄想でしか無いのだが。
16 名前: 2005/12/31(土) 22:04:22.47 ID:qDEZky3L0
組長の居ない間、若頭の須藤さんは組長の代わりを務めていて色々忙しそ うだったが、
組長が退院した今では何時もどおりの仕事に戻っている。
組の中を漂っていた緊張感も消えた。
組の皆は、この抗争が終わった後の平和な日常を満喫しているようだった。
そして僕等は―――、僕等も例に漏れずにこの平和を満喫してた。
ほぼ毎日ツンの喫茶店に入り浸り、だらだらと過ごしていた。
スレスト建設への突撃以降、僕達の名前は輪呂巣会中に知られる事となったが
他人の口を通して流れてくる噂は、どれも自分のものだという実感がわかなかった。
だが、僕達は気づかない。
この平和に見える日常の水面下で、確実に歯車が狂い始めている事に。
確実に、この町がバラバラになっていっている事に。
17 名前: 2005/12/31(土) 22:05:26.00 ID:qDEZky3L0
( ^ω^)「ツン、このカレードリア美味しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、分かったから口のまわり拭きなさい。」
(´・ω・`)「ツンちゃんの言うとおりだ。餌をむさぼる豚のようで見苦しいからもう少し皿から顔を離して食べたらどうだい?」
(;^ω^)「ちょwww豚てwwwなんだか最近、ショボが毒舌だおwwww」
('A`)「しかしショボさん、いいんですか?こんな昼間からのんびりしてて。」
(´・ω・`)「ああ、長岡組も無事に輪呂巣会に溶け込めたようだし、抗争も無いし、鉄砲玉の俺は暇なのさ。」
/ ,' 3「zzzZZZzzZZzZZzZZZZZ」
( ^ω^)「荒巻もこんな時間から喫茶店なんかでくつろいでていいのかお?」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと内藤!!!喫茶店”なんか”って何よ!!!」
(;^ω^)「アウアウ・・・、ゴメンだお、ツン。」
(´・ω・`)「荒巻のやつは帳簿の計算やら納税額の計算やらでいろいろ忙しいはずなんだが、何故ここでのんびりしていられるのかはわから ん。」
(;^ω^)「荒巻って寝てばかりなのに何時仕事してるんだお?」
(´・ω・`)「さあね。君のように、簡単な仕事に金魚の糞のような長い時間をかける奴も居れば、膨大な量の仕事をちゃっちゃと終わらせて しまう奴も居るという事さ。」
(;^ω^)「改めて聞くけどショボ、おまえ本当は僕の事嫌ってるお?」
18 名前: 2005/12/31(土) 22:15:50.53 ID:qDEZky3L0
僕等はここの常連になっていた。
僕は組長からツンの警護役を未だに任せられているだけなのだが、彼らは暇を見つけてはこの店に顔をだしていた。
僕が大抵この店に居る事は周知の事実だからだろう。
ただ、荒巻だけは開店時間になるといつの間にか入ってきて、喫茶店の椅子を三つほど繋げて寝転がっている。
それ以降、たまに珈琲やランチなんかを頼んで、寝ながら食べるのだが、一向に起き上がる気配は無い。ずっと椅子の上に寝転がりっぱなしだ。
その癖、閉店時間が近くなると代金だけ置いて何時の間にか店内から消えている。
未だにツンも僕も、荒巻が歩いているところを見たことが無い。
( ゚∀゚)「おいすー^^ って、俺が最後かよ。」
たわいもない雑談を続けていると、この店に入り浸っている”僕ら”の中の最後の一人がやってきた。
ショボに連れられてこの喫茶店に来て以来、、何故かジョルジュもこの喫茶店に入り浸るようになった。
19 名前: 2005/12/31(土) 22:16:30.99 ID:qDEZky3L0
ξ゚⊿゚)ξ「あんたら、こんな真昼間から人の店に居座るんじゃないわ よ。あんた等みたいなヤクザが徒党組んで席占拠してたら他のお客さんが入りづらいでしょ。」
( ゚∀゚)「なんだと!こんなおっぱい紳士に向かって!誰がヤクザだ!!」
('A`).。oO(ヤクザじゃん。)
(;^ω^)「ゴメンだお、ツン。でも・・・・、」
僕は自分達の姿を眺める。
小柄でひょろりとした体型のドクオ。
下がり眉毛で、小学生に悪戯に眉毛をマジックで書かれた犬のような顔のショボ。
寝転んでばかりで一回も立ったところを見た事が無い荒巻。
やけに陽気で細身のジョルジュ。
そして、何時も笑ってるような顔をしている僕。
(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・・・・。」
客観的に自分達を見てみて気づいたのだが、誰が見ても僕達がヤクザだとは思うまい。
20 名前: 2005/12/31(土) 22:17:11.86 ID:qDEZky3L0
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、内藤。言いたい事があるんならハッキリ言いなさい よ。」
(;^ω^)「なんでも無いお。ツンの言うとおりだお。」
僕はその自己判断を口には出さなかった。
わざわざそれを口にして、ツンの自分に対する評価を自分から下げない程度には、僕は賢い。
ξ゚⊿゚)ξ「まったく、ニートじゃあるまいに、昼間っからダラダラしてるんじゃ無いわよ!」
その時、ショボの携帯が鳴った。
着歌はMe first and gimme gimmesの「I believe I can fly」。
僕とショボ、荒巻が高校時代から大好きだった歌だ。
聞いていると、空だって飛べる気になってくる。
(´・ω・`)「すまない。電話だ。」
そう言って電話に出たショボの表情がだんだんと、驚きのそれへと変わっていく。
電話が終わると、ショボはそのまま立ち上がって、帰り支度を始める。
21 名前: 2005/12/31(土) 22:18:01.07 ID:qDEZky3L0
( ^ω^)「ショボ?」
(´・ω・`)「悪いな内藤、組の方で事件だ。急いで帰らなければならなくなった。」
( ^ω^)「事件?」
(´・ω・`)「ああ、なんでも、銃持った連中が事務所を襲撃したらしい。うちの組長が死んで、若頭も重態だそうだ。」
(;^ω^)「・・・・・・ッ!!」
(´・ω・`)「急ぐんで、じゃあな。」
ショボは早足に出口へと向かった。
喫茶店の出入り口に取り付けられた鈴が、チリン、と音を立てた。
崩壊の音だった。
そう、僕達は気づいていなかった。
この町の平和な日常の水面下で、確実に歯車が狂い始めている事を。
確実にこの町が、VIPが、輪呂巣会全体が歪んで軋みだしていた事を。
僕たちがそれに気づいたときにはもう、輪呂巣会の歪みは取り返しのつかないところまで来ていた。
もう、止まらない。
第七話 Broken days・完
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります