1: 2007/05/01(火) 01:25:50.12 ID:vzVLqmHL0

薄闇の下りた浜辺で黄昏ていたら、後ろから蹴飛ばされた。
顔から海水に突っ込み、慌てて鼻腔を刺激する海水を吐き出す。

ξ゚⊿゚)ξ「一人で何してるの?」

波の押し寄せる、閑散と砂浜の空気を切り裂くように、透き通った声が響いた。
振り返ると、闇を纏う小さな影が佇んでいる。

雲の切れ間から覗く月明かりが、細い影を浮かび上がらせた。
風が冷たい。日の出ているうちは、あんなに暖かかったのに。

( ^ω^)「海を、見てたんだお」
空も飛べるはず

2: 2007/05/01(火) 01:27:18.68 ID:vzVLqmHL0

「ふーん」とつまらなそうな声を返されて、何とも言えない気持ちになる。

海が穏やかだ。波が露出した岩肌に当たり、飛沫を上げながら空を舞う姿が美しい。
鼓膜を優しく愛撫する波が、形を変えて沖へと戻っていく。

ξ゚⊿゚)ξ「馬鹿じゃないの?」

雰囲気を壊す冷淡な声を聞き、肩を落とした。

ξ゚⊿゚)ξ「気持ち悪い男ね。太っているし、喋り方も変だし」

3: 2007/05/01(火) 01:29:27.84 ID:vzVLqmHL0

思わず、苦笑が漏れた。
気持ち悪い、か。今まで何度聞いた単語だろう。

背後で、砂の擦れる音がした。帰るのだろう。
好き勝手言って、雰囲気を壊していくのか。
何がしたかったんだろう。

取り留めのないことを考えていたら、背中に鈍痛が走った。

今度は海水ではなく、砂が口に入り込んだ。
気管を撫でる砂を、必氏に吐き出す。

あれ。意外に、砂って美味しいかもしれない。

飲み込もうとして、咽た。お腹が痛い。

何でこの子は、躊躇せずに人を蹴飛ばすんだ。
というか、この子は誰だろう。地元の子だろうか。

4: 2007/05/01(火) 01:32:08.51 ID:vzVLqmHL0

修学旅行にきても相変わらずいじめられて、
仕方なく旅館を抜け出してきたのだが、失敗だったらしい。
僕は、海を見ているだけで嫌われる男なのか。

何もしていないのに、こんな小さな女の子にまで、いじめられている。

( ^ω^)「地元の子かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「なんで、あんたに教えなくちゃなんないのよ?」

そんな言い方をしなくてもいいのに。
いや、していてもいいのか。いいよな。どうでもいいや。

僕は、両手を広げて砂浜に寝転んだ。

上空でも、強い風が吹いているのだろう。
分厚い雲が少しずつ流され、月が顔を覗かせたり、隠れたりしている。

( ^ω^)「ぺっぺっ」

6: 2007/05/01(火) 01:33:51.55 ID:vzVLqmHL0

一瞬、何をされたのかわからなかった。
空が黒く染まり、目や鼻や口に、砂が入り込んだ。
すぐに涙腺が開いて、砂が涙で押し流されると、視界が戻る。

ξ゚⊿゚)ξ「ぷぷぷっ」

戻った視界に映っているのは月ではなくて、意地悪そうに唇を吊り上げた、少女の顔だった。
失笑というには、あまりに堂々とした笑い声だ。

( ^ω^)「僕だって、怒るんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん。怒るの?」

顔が揺れた。

7: 2007/05/01(火) 01:35:28.31 ID:vzVLqmHL0

ξ゚⊿゚)ξ「怒るんじゃないの?」

今度は反対側に揺れる。

ξ゚⊿゚)ξ「まだ怒らないの? ねえ。まだ?」

ぺちんという音が鳴ると同時に、僕の顔が左右に振られる。
視界が移り変わるごとに、頬が熱を持っていった。

いつの間にか、少女の顔が眼前に迫っている。
月の光しか光源がないのでよく見えないが、くりくりとした瞳や、通った鼻筋の形が素晴らしかった。
女性に造詣のない僕から見ても、少女は美しい。

8: 2007/05/01(火) 01:37:10.87 ID:vzVLqmHL0

ここは、人気のない海岸。
ここには、美しい少女と二人きり。
この周囲に、人影はない。
この近くには、建物もない。
ちなみにいまは、牛も眠る丑三つ時。

僕の股間が、熱を帯び始めた。
全身の血液が集まり、海綿体が膨張していく。

繰り返し打たれたせいで、頬が熱を持ち、頭が朦朧としてきた。

( ^ω^)(なんか、気持ちがいいお)

10: 2007/05/01(火) 01:39:37.46 ID:vzVLqmHL0

自然に、手が持ち上がり、少女の細い手首を掴む。
足が動いて、体重が前に集まった。
僕は、自然な動作で、少女を砂浜に押し付けていた。

ξ゚⊿゚)ξ「なっ!?」

視界が反転し、お腹に柔らかい感触が広がる。
熱い。頬が熱い。体が熱い。胸が、背中が、首が、腹が、全身が熱い。
勃起した陰茎が、下着に擦れた。

ただ、それだけのことなのに、背筋を駆け上がる快感が、脳みそを蕩けさせた。

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと! どいて! 離してよ!」

少女の爪が頬の肉を抉る。
蕩けた脳みそに、激痛を伝える信号が届いた。

12: 2007/05/01(火) 01:42:08.38 ID:vzVLqmHL0

気持ちいいのか、痛いのか。よくわからない。
どうやら、脳みそが混乱しているらしい。
頬の痛みはじきに消え、快感が取って代わる。

やはり、気持ちがいいのだ。
痛みは快感と紙一重だと聞いたことがある。
事実、僕は満足感を得ていた。
少女に引っ掻かれるたびに。

痛みを感じることによって、僕は満たされていく。

頬を伝って垂れる血が、少女の唇を犯す。
厚手の唇が赤く染まった。まるで、化粧をしているみたいだ。

暴れる手を押さえつけ、顔を、円を描くように回した。

ξ゚⊿゚)ξ「んん~!」

13: 2007/05/01(火) 01:44:04.37 ID:vzVLqmHL0

暴れるからだよ? 君が、暴れるから。
僕はアイシャドーをつけてあげようと思っただけなのに、君が暴れるから、目に入ったんだ。

ほら、目を閉じて?
そうそう。唇とお揃いの赤が、綺麗だ。
何もしていなくたって綺麗だったけど、今はもっと美しいよ。

頬が白いね。駄目だよ。まるで人間に見えない。お人形さんみたいだ。
僕が色をつけてあげるからね。じっとしているんだよ?

( ^ω^)「つっ……」

鼻を噛まれ、背を反らした。頬にある傷口に、激痛が走る。

( ^ω^)「くそが。逃げんじゃねえお」

14: 2007/05/01(火) 01:45:48.56 ID:vzVLqmHL0

少女が、僕に拳の雨を降らせながら、身を捩る。
だけど、逃がさない。君は言ったよね?
僕が太っていて、気持ちが悪いって。
でもね、僕が太っているのには、わけがあるんだ。

鮫の歯が何列も並んでいるのにだって意味があるし、キリンの首が長いのにだって、意味がある。
世の中には、意味のないことなんて、ないんだ。

僕が太っているのは、君が逃げられないようにって、神様が与えてくれたんだろうね。

僕は、全身の力を抜いた。
体重が尻に集まり、少女の薄っぺらな腹を押し潰す。
奇妙な声をあげて動きを止めた少女の足を持ち上げ、ズボンを脱がせた。

15: 2007/05/01(火) 01:48:21.77 ID:vzVLqmHL0

( ^ω^)「お?」

あれ。おかしいな。暗い。月が隠れてしまったのかな。
見えないよ。何も見えない。
初めて見るんだよ? 女性の体。
白くて、滑々していて、綺麗なんだろうな。
それなのに……お月様って、案外人が悪いんだね。

少女の動きが止まった。

いい子だ。大人しくしていてね。

すぐに終わるから。この目が、見えたらね。
もう少しだ。もう少しで、目が見える。
君が見えるよ。もう少し。もう少しだから。

( ^ω^)「おかしいお。目が、目が見えないお」

16: 2007/05/01(火) 01:50:15.69 ID:vzVLqmHL0

薄闇の下りた海岸に日が昇るころ、散歩をしていた男性が、背中に木の刺さった氏体を発見したらしい。
僕がそれを聞いたのは、針の山を歩いているときだ。
僕はもう、僕じゃなくなっていたから、氏体が僕だなんて、わからなかった。

僕はただ、歩き続けるだけ。
痛みに耐えて、歩き続けて、この山を越えるんだ。
あと少しだよ。あと少しで、頂上が見えてくるはずなんだ。

近いうちに、家に帰れるんだ。
くりくりとした目が特徴の、可愛らしい妻の元へ。


おしまい

19: 2007/05/01(火) 02:15:39.21 ID:vzVLqmHL0
>>1
乙……

引用: ( ^ω^)ブーンが帰るようです