1: 2005/11/13(日) 22:32:07 ID:u/S123ws0
禿侍 「VIP流、ブーン!!覚悟ぉ!」

 ドシュっ!

禿侍「ぐばぁっ!」
( ^ω^)「今日もつまらない物を斬ったお・・・」

18: 2005/11/13(日) 22:50:45 ID:u/S123ws0
旅姿のブーンは大きな風呂敷を担ぎ、住み慣れた故郷の町を歩く
目的地は幼い頃から、我が家のように思っている道場。

( ^ω^) 「久しぶりに道場に帰ってこれたお」
子供1 「あ、ブーンだ!」
( ^ω^) 「久しぶりだお」
子供2 「うわ、でっけえ風呂敷!ねぇねぇ!それ、お土産?」
( ^ω^) 「・・・ごめんだお、これはお土産じゃないお。今日は何もないんだお」
子供1・2 「つまんねー!」


( ^ω^) 「先生、今帰りましたお」
先生 「・・・ブーンか。して、成果の方は?」
( ^ω^)「は、これに」

担いでいた風呂敷の中には、大刀が七振り、小太刀が三振り。そのどれもが赤黒い何かで汚れていました   



19: 2005/11/13(日) 23:03:25 ID:u/S123ws0
先生 「・・・ふむ、一月足らずで十人か」
( ^ω^) 「・・・・・・・」
先生 「まぁまぁ・・・だな」
( ^ω^)「先生!これでもまだ足らぬと仰いますかお!?」
先生 「ブーンよ」

いきり立ち、詰め寄らんばかりのブーンを、先生は一睨み。

(;^ω^)「し、失礼・・しましたお・・・」
 
頭を下げたブーンはガタガタと震えていた

先生 「ふん。この程度で気圧されるとは情けない・・・。そんなことだから一人も殺せないのだ」
( ^ω^) 「・・・!!」
先生 「鶏と人の血、匂いだけでわかる・・・」
( ^ω^) 「で、でも!殺せとは言われていないお!」
先生 「刀を奪えとは・・・・そういうことであろう?」

20: 2005/11/13(日) 23:19:08 ID:u/S123ws0
先生 「ソレが解かっていたから、このような小細工をしたのであろう?」

悪戯をする子供のような笑いを浮かべ、先生は小太刀についた鶏の血を指した

(;^ω^)「・・・・・・・・」
先生「しかし、わからぬ・・・・」

ため息にも似た吐息混じりの呟きであった

( ^ω^) 「なにが、わからないんですかお?」
先生 「武士の魂である刀。ソレを生きながらに奪うということは、頃すよりも難しい」
     「正直・・・お前にそれほどの腕があったとは驚きだ」
     「せいぜいが、一太刀で相手を頃す程度だとばかり思っていた」
( ^ω^) 「・・・先生の、御意志が、わからなかったからだお・・・」
先生 「ん?なにがだ?」
(#^ω^) 「全部だお!! 突然の刀狩の言いつけ! ツンお嬢様の縁談!!」
       「一体全体、なんのためなんですかお!?」
先生 「口が過ぎるぞ」

先刻と同じ、刺す様な、否、貫くような視線が、ブーンを襲った
だが、ブーンはひるまなかった

(#^ω^) 「過ぎようと何だろうと言わせてもらうお!! 先生、あなたは・・・!!」

26: 2005/11/13(日) 23:35:02 ID:u/S123ws0
ブーンが立ち上がりかけたその時、母屋に繋がる戸が開いた

ツン 「あら?ブーンじゃない。帰って来てたの?」
(;^ω^) 「お、お嬢様・・・お久しぶりですお・・・」
先生 「お、おお、ツンか」

予期せぬ闖入者に、ブーンは居住まいを正し、深々と頭を下げた
それは先生も同じようで、数瞬前までの裂帛の気勢は雲散霧消していた

ツン 「久しぶりに来たんだから、すぐに道場の方に来なさい」
(;^ω^) 「・・・え?いや、でも、まだ先生と話があるお・・」
ツン 「なぁに!? アタシの言う事が聞けないって言うの!?」
(;^ω^) 「いや、でも・・・というか、なんでそこまでムキになるお?」
ツン 「なっ!!か、かか勘違いしないでよね!?お、お父様もこっちにいるじゃない!?」
    「だだ、だから!そう!だから!!」
( ^ω^) 「何がだからなんだお?」
ツン 「~~~~~~っ!!さ、察しなさいよ!?指導する人が足りないからよ!」
( ^ω^) 「だったら先生に頼んでも同じだお?」
ツン 「ーーーーーーっ!!」

ツンが何かまた叫ぼうとする寸前

先生 「やかましくてかなわん!」
(;^ω^)・ツン 「・・・・・・・・・」

30: 2005/11/13(日) 23:45:49 ID:u/S123ws0
先生のその一声は、道場の物音までかき消し、
そのまましばらくは物音がしなくなるほど、迫力があった

先生 「もうよい」
( ^ω^) 「へ?」
先生 「話はもうよい、と言ったのだ」
(;^ω^) 「いや、話があったのは僕のほうだお・・・・?」
先生 「・・・・#  ブーンよ。今はツンの用事を先に片付けよ」
( ^ω^) 「いや、その前に先生との話の片をつけるお」
先生 「~~~~っ!!」

こんなところではきっちり親子。先生がなにごとか叫ぶ直前、ツンが会話を断ち切る
先のツンとの会話を見事に逆転させる展開であった

ツン 「ほほほほ、ほーら!!お、お父様の許可も出たんだし!!はやく!はやく道場へ!」
( ^ω^) 「?・・・二人とも様子がへんだお?」


廊下にて
ツン 「あんた・・・・つまんないことで氏ぬタイプよね・・・・」
(;^ω^) 「ちょwwwwwww不吉すぎwwwwwwwww」

お前の言動が一番不吉である

31: 2005/11/13(日) 23:59:12 ID:u/S123ws0
客間と道場は母屋を挟んだ位置にある
玄関→客間→母屋→道場。といった配置だと思えばいい
ツンは母屋で立ちどまり、後ろを歩くブーンも止めた

( ^ω^) 「あれ? ツンどうしたお? 道場に行かないのかお?」
ツン 「ん? 道場? ショボンさんもいるんだし、別に行かなくても良くない?」 
(#^ω^) 「会話を中断した意味はどこだお・・・?」
ツン 「・・・あんた気づいてないの?」
(#^ω^) 「一体なにがだお!?大切な話の途中だったんだお・・・!?」

熱を帯び始めたブーンの声に対し、ツンの声は冷ややかであった

ツン 「あんた、あそこで立ち上がっていたら、斬られてたわよ?」

それはブーンの頭を冷やすのには十分な温度だった

あの時、刀は右手側、すぐには抜けない位置に置いてはいなかったか?
あの時、先生の手には小太刀が握られてはいなかったか?
あの時、先生の発していた気は、闘気ではなく、殺気ではなかったか?

(;^ω^) (・・・思い出しただけでも、汗がとまらないお)

33: 2005/11/14(月) 00:09:29 ID:xqb0AGcZ0
ツンの言葉に大きく動揺したブーンであったが、しばらくすれば疑問も浮かぶ
確かに、隙は十分すぎるほどにあったと思う
しかし先生は、既に老齢と言って差し支えがなくなるようなお歳だ
年齢と、それに比例する反射、体力で負けることはない
いや。武器の有無と腕前を、もしかすれば上回れるかもしれない程度に勝っている

つまり、先生にとっては十に一つは負ける可能性がある状況だったのは間違いない

そして、動機もない。ブーンはそう、確信めいたものを感じていた

( ^ω^) 「いや、でも、先生がそこまでする理由がないお?」
         「僕も先生に及ばないまでも、数少ない免許皆伝の身だお?」
         「たかが口論程度で・・・・・」

後継者候補を切り捨てるわけがないお。そう、言おうとした
しかし、言葉は、ツンの言葉で遮られた

ブーンがもっとも聞きたくない言葉で

ツン 「後継者なら代わりがいるじゃない? アタシの婚約者のショボンさんが」

37: 2005/11/14(月) 00:22:20 ID:xqb0AGcZ0
婚約者。恋をする者に、これほどまで絶望を与える言葉があるだろうか?
この時代、親の、または家の決めた婚約を破棄することなど、当人の意志ではどうにもならない
いくら互いに好き合っていても、いくら婚約に異議があろうとも、
覆ることなど、そうそうあるものではない

だが、ブーンは

(#^ω^) 「聞きたくないおっ!!!」
ツン 「ちょっ・・・・?ブーン?」
(#^ω^) 「わかってるお!わかってるんだお!?」
       「ショボンは親友だお!腕もたつお!すごいいいやつだお!?」
ツン 「何よっ!?いきなり、何をいいだしてるのよ!?・・・キャっ!」

掴むツンの腕を乱暴に振り払い、目には涙をためて、吼える

(#^ω^) 「先生が・・・先生が認めるのもわかるお・・・・!?」
       「でも・・・!!それでも・・・・!!!」

あとは言葉にならなかった

ツン 「ちょっと!!?ブーン!?どこに行くのよ!!!!!」

(#^ω^)「⊂二二二(#^ω^)二⊃ ブーーーーーン!!!!」


   きみの口からは聞きたくなかった・・・・・・・あいつを認めることばを・・・・

39: 2005/11/14(月) 00:48:55 ID:xqb0AGcZ0
こんなはずではなかった。後悔の枕詞は常にこうだろう

ツンはそんなつもりで言ったわけでは、もちろんなかった
突き飛ばされ、ブーンがぶち壊していった雨戸を呆然と見つめる
追いかけても、間に合うはずがない。そこらの武士なら追いつく自信はあった
しかし、ブーンの足にはそれも無意味だ

ツン 「あの・・・・ばか・・・!!いい気になってんじゃないわよっ・・・!」

罵る言葉は酷く勇ましく、だが声音は酷く弱々しい

こうなるはずじゃなかった
いつものあいつなら・・・

( ^ω^) 「?・・ショボンがいたら、ぼくはころされるのかお?」
ツン 「#・・そ、そうじゃなくてね? 後継者は二人も要らないでしょ?」
( ^ω^) 「??・・・・後継者になれないと、ぼくはしぬお?」
ツン 「ーーーっ!! だ・か・ら!後継者はアタシの旦那様ってことじゃない!?」
   「武家の妻が、旦那以外の男を好きだったらまずいでしょ!?」
(;^ω^) 「???・・・当たり前だお? 頭は平気かお?」
ツン 「・・・・### もおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」
(;^ω^) 「ななな、何を怒ってるお!?」

そうやって・・・とんちんかんなことを・・・返してくれたのに・・・
なんで・・・こんなときに限って・・・・・

ツン 「期待通りにっ・・!!ヤキモチなんかやくのよぉ・・・!!!」

後悔と、涙がとまらない・・・・

45: 2005/11/14(月) 01:21:08 ID:xqb0AGcZ0
ブーンは走り回った挙句、町ハズレの林についていた

( ^ω^) (いきおいで飛び出してしまったお・・・・)
      (らしくないお・・・ショボンもいいやつだってわかってんるんだお)

立ち止まり、木の幹に拳を叩きつける。何度も何度も。
思えば先生が刀狩を言いつけたのは、その過程で自分が氏ぬことを狙ったのではないか?
刀狩のような無法な行いをさせたのは、ツンと決別させるための口実作りではなかったか?
疑念が疑念を呼ぶ、そのたびに木の幹に拳と鬱屈した思いを叩きつける

木の幹が血で真っ赤に染まり始めた頃
槍を抱えた、小柄な影がブーンの背後に忍び寄った

('A`) 「なんだか、いい感じにメンヘルってるところわりぃな」
( ^ω^) 「だれだお・・・? 用がないなら今のぼくには近寄らないで欲しいお・・・」
('A`) 「おおwwこええ、こええw」
(#^ω^) 「いい加減にするお・・・!!」
('A`) 「刀狩に用がある、って言えば、ま、わかるよな?」

46: 2005/11/14(月) 01:25:16 ID:QLzGZXOtO
( ^ω^)「ママンが再婚して名字が変わったお」

( ^ω^)「今日から村井ホライゾンだお」






ブーンがさ、村井になったようです

48: 2005/11/14(月) 01:39:09 ID:xqb0AGcZ0
('・ω・`) 「お嬢さん、どうしたって言うんですか?」
ツン 「うるさいっ!!こっちくんなっ!!・・全部あんたのせいなんだからね!!」

母屋の音を聞きつけ、駆け込んだショボンが見たものは
散らばる木片の中央で泣きじゃくるツンと『方』の形に穴の空いた壁だった
ツンはいっこうに泣き止む気配も見せず
「うるさい」「こっちくんな」「あんたのせい」これだけしか言わない
先生も見かねた様子で、しかし何ができるでもなく、客間から覗く
ショボンはツンに声が聞こえない位置まで行き、先生に問うた

('・ω・`) 「先生、何があったんですか?」
先生 「・・・なに、ブーンのやつが戻ってきただけのことよ」
('・ω・`) 「!・・・」
先生 「どうした?意外だったか?」
('・ω・`) 「・・・いえ、得心がいきました」
先生 「しかし・・・・ツンにも困った物よのう・・・」
('・ω・`) 「・・と、仰いますと?」
先生 「婚約者がいるというのに・・・未だにアレだ・・・」
('・ω・`) 「先生、そのことでお聞きしたい事が・・・」

ショボンが全て言い切る前に、まるで独り言を言うかのように先生は言葉を紡ぐ

先生 「ブーンはな」
('・ω・`) 「は?」
先生 「ブーンは・・・刀狩だった」
('・ω・`) 「そんな馬鹿な!!」

51: 2005/11/14(月) 01:53:15 ID:xqb0AGcZ0
( ^ω^) 「!!!!」
('A`) 「刀狩、とは、大層な名前だぁな?」

距離は、既に一足一刀(一歩と刀の長さだけ)の間合い
ただし、この場合の一刀は槍のことだ

(;^ω^) 「・・・名を、名乗るお」
('A`) 「おっと、うっかりw 俺の名は毒男・・」

名乗りを上げ終える前に、ブーンは既に動いていた
持ち前の足を活かし、地面をすべるように疾走
刀はとらない。刀の重みの分だけでも槍を降ろすには十分な隙だ。
そんなものは与えない。一撃で頃すの斬撃ではなく、戦闘不能を狙う打撃
それがブーンの必殺技であった・・・・だが、

( ^ω^) 「⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーーーン!!!!・・・・なにっ!?」
('A`) 「・・だ、っと。そんなにあわてなさんな?な?」

はじめに言っておこう。ブーンの突進は並の槍など苦もなくへし折る
ソレが、小柄なこの男、毒男の持つ槍にいともたやすく防がれた
特別な技などどこにもない。ただ純粋に、やり自体の強度だけで防いだのだ

槍は全て鉄で出来ていたのだ

52: 2005/11/14(月) 02:07:29 ID:xqb0AGcZ0
('・ω・`) 「う・・・うそだっ!!ブーンが刀狩のはずがない!!」
先生 「疑うならば、客間の風呂敷を開けて見ればいい」

言われたとおり、風呂敷をあけるショボン
その中には血にまみれた刀が、大小あわせて十七本

('・ω・`) 「・・・これは・・・・!」
先生 「私も・・・信じたくはなかった・・」
('・ω・`) 「しかし!先生!!ブーンの・・・ブーンは私と同い年です!!」
     「刀狩であるはずがありません!!」
先生 「左様・・・やつは二代目を名乗っておったよ・・・!」
('・ω・`) 「そんな・・・?なんの・・いったい、なんのためなんです!?」

混乱の極みと言ったショボンに、苦悩の極みと言った表情で先生は返す

先生「・・・わからぬ。わたしにも・・・・わからぬのよ・・・・」
    「それよりも・・・この小太刀、見覚えはないか?」
('・ω・`) 「!・・・・う・・そ・・・でしょ・・・?」
     「だって・・・は、はは・・w・・・ブーンが・・・・あのブーンが・・・・!!」

抜き身の小太刀を抱きしめ、うわごとのように「ブーン」と繰り返すショボン
ショボンに背を向けた先生は、怪しく笑っていた

61: 2005/11/14(月) 02:31:14 ID:xqb0AGcZ0
槍の長さは説明の必要がないと思う
その全てを木で作ったとして、相当な重さだ
穂先や形状次第ではいくらでも重くなり得る
それが全て鉄であるとしたら・・・それはもはや人の手に余る凶器である

(;^ω^)(ソレを、軽々と扱うこの男はいったい・・・・?)
('A`) 「落ち着けって、な? あ、もしかして日本語通じない人?」
(;^ω^)「・・・・通じてるお・・・」

そっか、と毒男は笑い、器用にも片手でキセルに火を着けた
その姿はあまりにも隙だらけ、油断の固まりであった

('A`) 「・・・ぷっはああw・・ん? ああ、お前も吸うかい?」
(;^ω^) 「いや、いいお(男と間接キスなんてごめんこうむるお!)」
('A`) 「ええっと、とりあえず、だ。俺はお前とやりあう気はねぇ」
    「ここ重要よ? それは解かってもらえる?」
(;^ω^) 「その言葉を、信用しろとでも言うのかお・・・・・・?」
('A`) 「なんだよ?ぶっちゃけ今のあんたなら瞬殺出来たんだぜ?わかるだろ?」
( ^ω^) 「どうでもいいお・・・用件をはやく言うお」
('A`) 「ちっ・・・張り合いのねぇ・・・命がいらないって面が気にくわねぇ」
    「ま、いいとしようや。要件は、ま、あれだ。刀狩についてだわな?」

64: 2005/11/14(月) 03:02:43 ID:xqb0AGcZ0
道場は、騒がしかった
師範代であるショボン、ツン、ブーンの三人と道場主である先生が不在
道場に残っているのは子供たちだけであった
いくら武家の生まれと言えど、子供は子供、
怖い大人のいない今を好機と、力の限り遊んでいる
いつもなら騒ぎを聞きつけたツンが子供たちを叱り飛ばすか
先生が現われるだけで皆を黙らせるかするのだろうが
先生とショボンは敷地内から消え、ツンはそういったコンディションではない
結果、
無法地帯のような様相を呈していた

ツン (うるさいうるさいうるさいうるさい!!)

ツンは変わらず、母屋の隅で膝を抱え、まるで周りの全てを拒否するように泣いていた

ツン (みんな・・・みんなみんな・・・!・・お父様のせいだ!!)
  (そもそも・・・ショボンさえ・・あいつさえ婚約者じゃなかったら・・!!)

周囲への拒絶は、たやすく憎悪へと変貌していった

86: 2005/11/14(月) 12:13:49 ID:xqb0AGcZ0
('A`) 「あんたはなんで刀狩なんかをやってんだ?」

美味そうに煙を吸い込む毒男は、興味本位を隠そうともせずに尋ねる

( ^ω^) 「・・・先生の言いつけだからだお」

そう言うと、毒男からにたにたとしたいやらしい笑いが消えた
キセルの端をギリリ、と噛む姿は何かを食いしばって耐えているようでもあった

('A`) 「・・・・ちょっと待て。その先生とやらはなんだってそんなことを?」
(#^ω^) 「そんなのはこっちが聞きたいお!!」
('A`) 「わかった、落ち着けや?な?・・・・つまり、お前さんは、なんだ?あれか?」
    「刀狩がなんなのか知らないってこったな?」
( ^ω^) 「刀狩は刀狩だお? 刀を奪うことに決まってるお?」

毒男は煙と共に大きくため息を吐いた、何も知らないんだな、とつぶやき

('A`) 「OK、無知なお前に教えてやるよ」
(#^ω^) 「さっきから話が回りくどいお!一体何が言いたいんだかはっきりするお!」
('A`) 「結論から教えてやる。刀狩ってのはな、十年前に起こった連続強盗事件」
    「その下手人である辻斬り魔の通称だ」
(;^ω^)「・・!!」

87: 2005/11/14(月) 12:31:38 ID:xqb0AGcZ0
道場からほど近いショボンの家には、先生とショボンの二人の姿があった
鞘から抜かれ、剥き出しの刀身を抱きしめていたショボンは既に血まみれ
先生はそれを止めることもせず、とつとつとひとり喋り続けた

先生 「ブーンには・・・刀狩と縁があったのかもしれぬ・・・」
   「ソレが血縁なのか、情なのか、そこまではわからぬ・・・」
('・ω・`) 「うそだ・・・うそだ・・・」
先生 「嘘なものか? ・・・ならば、お父上の小太刀、何故ブーンの荷物にあったのだ?」
('・ω・`) 「・・・!!でもっ!!ブーンは、人なんか斬れるやつじゃありません!!」
先生 「わしとてそう思っていた!」

先生の一喝は、掘っ立て小屋のようなショボンの家を大きく揺らすほどであった
しかし、続く先生の言葉には、強さはなく、ただ戸惑いの色だけが浮かんでいた

先生 「・・・しかし、刀についた血のりは・・・どう説明する・・!」
('・ω・`) 「・・・・っ! でも! それでも!!」
先生 「みなまで言うな」
('・ω・`) 「・・・・・」
先生 「過ぎたことを、悔やんでも詮方ない」
   「わしは・・・ブーンを、否、刀狩を止める」
('・ω・`) 「!・・・ならば、私もご一緒いたします!行ってブーンの本心を問い正・・」

立ち上がりかけたショボン。そのみぞおちに、先生の刀の柄がめり込んだ

('・ω・`) 「え・・・?せんせ・・・・い・・・?」
先生 「・・・もしもの時は、ツンを、頼む・・・頼んだぞ・・・・!」

91: 2005/11/14(月) 13:00:06 ID:xqb0AGcZ0
(;^ω^) 「ちょ・・・そんな事件聞いたこともないお!?」
('A`) 「そりゃ、当時お前さんはまだがきんちょもいいとこだわな?」
     「知ってる方がどうかしてると思うがな?」
(;^ω^) 「でも、刀狩なんて特徴のありすぎる事件、噂が残っても・・・」
('A`) 「残らねぇよ」
( ^ω^) 「なんでだお?」
('A`) 「下手人の刀狩だがな・・・・大きな声じゃ言えねぇがココの城の・・」

そこで毒男は言葉を切った。顔は、しまった、と書いてあるようしかめっ面
気を紛らわすためか、キセルをしきりにカリカリとかじり始めていた

( ^ω^) 「城の・・・・? なんでそこで止めるお? 中途半端だお!」
('A`) 「わるい、ちょい喋りすぎた。お前さんに教える義理なんぞないだろ?」

苦い顔の毒男。それはブーンに、これ以上聞いても無駄という確信をあたえた

( ^ω^) 「・・・他のことなら聞いてもいいかお?」
('A`) 「・・・内容によるな?」

94: 2005/11/14(月) 13:10:21 ID:xqb0AGcZ0
( ^ω^) 「じゃあ・・・・・」
('A`) 「待った」
(#^ω^) 「まだ何も言ってないお?」
('A`) 「さっきまで俺がお前に教えてたんだぜ? 今度はこっちが聞く番だろ?」

言外に、答えねばこちらも答えぬ、そうにおわせる言い回しだった

(#^ω^) 「さっさと聞けばいいお!」
('A`) 「お言葉にあまえてwwwまずはジャブからww」
    「刀狩なんてのは、どう転んでも無法な行いだわな?」
    「いくら先生さんのお達しでもよ、普通はことわらねぇかい?」

全然ジャブなんかではなかった。ブーンにとってそれは重過ぎる質問だった

('A`) 「ん? そ、そんなに答えにくい質問だったか?」
(;^ω^) 「・・・いや。ただ・・・・女々しい理由なんだお」

ブーンはポツリポツリと、血を一滴一滴吐くように語り始めた

102: 2005/11/14(月) 14:07:24 ID:xqb0AGcZ0
一月前

( ^ω^) 「先生、お呼びですかお?」
先生 「ふむ・・・・ブーンよ、突然ですまぬが、ツンのことじゃ」
(;^ω^) 「は、なんですかお?」(フラグ?これはフラグかお!?)
先生 「当道場は、城の剣術指南役を仰せつかっているのは、知っているな?」
( ^ω^) 「は、存じておりますお」
先生 「わしももう歳だ・・・そろそろ後継者を決めねばなるまい・・・」
( ^ω^) 「せんせい・・・・まさか」(え!?この展開はきちゃったお!?)
先生 「それはそうと・・・ブーンよ」
( ^ω^) 「なんでしょうかお?」(勿体つけないでほしいお・・)
先生 「そなたは、当流の真髄は知っているな?」
( ^ω^) 「二の太刀いらず・・・でしたかお?」(なんのはなしだお?)
先生 「うむ・・・つまるところ、一撃必殺といったところか・・・・」
( ^ω^) 「それがどうしましたお?」
先生 「・・・・・・ツンのことはショボンに任せようと思っている」

108: 2005/11/14(月) 14:46:59 ID:xqb0AGcZ0
(#^ω^) 「それは・・・・!!どういうことですかお!?」
先生 「わしに意見するとは、偉くなったものだな?」
(;^ω^) 「し、失礼しましたお・・ですが」
先生 「おぬしの言いたいことも分かる。ゆえに、今この話をしたのだ」
( ^ω^) 「仰っている意味が・・・・わかりませんお・・・」
先生 「わからぬのか?・・・そなたにもチャンスを与えると行っているのだ」
( ^ω^) 「ほ、ほんとですかお!?」
先生 「本日より、ショボンとツンを婚約させる」
   「そして三月後の式までの間に、ブーンよ、刀狩で力を示すがよい」
( ^ω^) 「・・・刀狩とは?」
先生 「腕に覚えのある武士と立会い、勝利の暁に刀を証として奪ってくるのだ」
(;^ω^) 「・・・!! 先生・・・それは・・・」
先生 「これ以上の問答は無用だ」
( ^ω^) 「しかし!!」
先生 「ツンは、諦めるのだな?」
(;^ω^) 「・・・っ!!!!」
先生 「ココに三両ある。旅するには十分であろう」
   「さっさと行くが良い」

109: 2005/11/14(月) 14:56:53 ID:xqb0AGcZ0
( ^ω^)(やるしか・・・・やるしか・・・ないのかお・・・?)

ブーンはまるで幽鬼のようにフラフラと町を歩いていた
刀を奪え。ソレは武士の魂を、精神的にも物理的にも奪うことではないのか?
なぜ先生はそのような夜盗まがいのことを命じたのだろうか?
わからない・・・・なにより、一番分からないのは・・

(;^ω^) 「ぼくは・・・ツンのために人を殺せてしまうのかお・・・?」

殺せるわけがない。そう言っている自分と

ツンのためなら。そう叫んでいる自分がいる

心が、痛い。

ツン 「アタシのために・・・なんですって・・?」
(;^ω^) 「つ、ツン・・・・・!」

111: 2005/11/14(月) 15:10:27 ID:xqb0AGcZ0
独り言を聞かれたのか、ショボンとの婚約の話は聞いているのか、
いつからそこに立っていたのか、三つの疑問が同時にブーンの心をかき乱す
もともと乱れていたブーンの頭に、この衝撃は大きかった

(;^ω^) 「本日はお日柄もよろしく、絶好の運動会日和となりましたお!?」
ツン 「はぁっ? ・・・何言ってんのよ?」
(;^ω^) 「せんせーい! われわれVIPPER一同は!!」
ツン 「落ち着きなさいよっ!?」

しばらくおまちください ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ツン 「そ、それで・・・?あの、お、おお、お父様から聞いたんだけどねっ!?」
( #ω^) 「あの、右目がなぜかみえないお?」
ツン 「あ、あああああ、あ、あたしのために、武者修行の旅に出るって・・・本当?」
( #ω^) 「いや、なんかそれどころじゃないぐらい右足がはれんてるんだお?」
ツン 「べ、別に・・・あんたが何しようと、ど、どうでもいいんだけどねっ!」
( #ω^) 「右手が上がらないぐらいに何かするのはやめて欲しいお」
      「というか右側だけ氏んでないかお?」
ツン 「質問に答えなさいよっ!?」
 
べきぃっ!!

( #ω^) 「モルスァ!!」

148: 2005/11/14(月) 23:43:19 ID:xqb0AGcZ0
思い出し、語る内にブーンのツンに対する想い、愛は増していった
しかし親友のショボンへの友情、尊敬する先生への敬愛もが複雑にからむ
ブーンの表情はじょじょに険しくなっていった

( ^ω^) 「・・・そんなやりとりがあってそれから、」
('A`) 「おい? のろけ話はもういいぞ」
(;^ω^) 「の、のろけなんかじゃないお!!」
('A`) 「どっちでもいいんだよ。・・・話してるお前さん、辛そうな顔してるぜ?」
( ^ω^) 「・・・すまんお」

毒男なりの気遣いは、ブーンにはありがたかった
半ば脅されているような相手に対して、ありがたいと感じるのも不思議だったが
それほど、ブーンの心は焦げ付いていた

('A`) 「さ、そっちのターンだ。何が聞きたい?」
( ^ω^) 「それじゃ、聞くお。なんで毒男は刀狩のことを聞きたがったお?」
    「聞けば、刀狩は相当危険なやつみたいだお」
    「その刀狩当人かもしれない人間に、直接聞くなんて危険すぎるお」
('A`) 「・・・・答えにくいな」
( ^ω^) 「これも、聞いてはいけなかったかお?」
('A`) 「いや、大事な部分をぼかしていいんなら、教えてやるよ」

151: 2005/11/14(月) 23:50:43 ID:xqb0AGcZ0
毒男は大きくキセルを吸い込み、深呼吸でもするように煙を吐いた

('A`) 「そうだな、ニュアンス的なことを言うなら、功名心ってやつが動機だ」
( ^ω^) 「光明神かお?」
('A`) 「・・・なんだその素晴らしそうな神様は? 名をあげたいって方だよ!」
(;^ω^) 「あ、ああ。功名心のほうかお?」
('A`) 「そうだよ、そっちだよ!調べてみれば、かなりの使い手ばかりを倒してる」
    「そいつを倒せば、俺の名前もちったぁ売れんだろ?」

ブーンは毒男の言葉に違和感を覚えた。どこか、とは言えないが、何か隠しているように思えた

( ^ω^) 「・・・本当にそれだけかお?」

毒男はその言葉に嬉しそうに笑った

('A`) 「ほう? なんでそう思う?それ以外に何があるとおもうんだ?」
( ^ω^) 「うまくは言えないお・・・ただ、違和感があるんだお」 

155: 2005/11/15(火) 00:00:59 ID:RXIF575q0
('A`) 「くくくw・・・違和感かww」
( ^ω^) 「そうだお! そこだお!!」
('A`) 「おいおいw? 俺は笑っただけだぞ?」
( ^ω^) 「本当に名を売りたいなら、そこで笑わないお?」
      「今すぐにぼくを叩っ斬ればいいんじゃないかお?」
('A`) 「オーケー、いい勘だ、いい勘してるぜぇww?
    「だがその質問に答える前に、こっちのターンを終わらせようか?」
( ^ω^) 「構わないお」

毒男は心底楽しそうにキセルを弄ぶ。まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように

('A`) 「そうだな、それじゃ、本題いっとくか?」

157: 2005/11/15(火) 00:10:59 ID:RXIF575q0
ツンは沈んでいた。さまざまな負の感情が胸には渦巻いていた
婚約者を勝手に決めた父への恨み
何を考えているのか分からない婚約者への不審
自分の気持ちに気づいてくれない愛する人への悲しみ

そして、自分と、道場主の娘という自分の立場への、激しい憎悪

ツン 「どうして・・・・、どうして私・・・普通の村娘じゃなかったの・・・?」
  「なんで・・・こんな道場の娘なんかに産まれちゃったのよ・・・?」
  「どうして・・・なんで・・・?なんでよ・・!なんで・・・!!」

嗚咽混じりの声は途切れ、同時に吸い込んだ息は、産声のような叫びを産んだ

ツン 「なんで素直になれないのよっ!!!!!」

そうだ。そもそも、さっきあんな言い方をしなければ、
そうじゃない。あいつが旅からかえってすぐに、
そうでもない! あいつが旅に出る前に・・・!!

どうして・・・伝えられなかったのだろう・・・・・・・

161: 2005/11/15(火) 00:25:35 ID:RXIF575q0
ショボンが目を覚ましたとき、既に先生の姿はなかった
代わりに、座布団の上には一本の小太刀と紙切れがあった

('・ω・`) 「う・・・・・うう・・・、先生・・・・?」
      「ん・・?これは・・・・」

紙切れには、殴り書きのように乱れた筆致でこう書かれていた

  ショボンよ。娘のことは頼む。
  キミの父の二の舞を踏もうとも、私は決着をつけるつもりだ
  けっして探さず、娘を、ツンを支えてやってくれ・・・・・

('・ω・`) 「そんな・・・・・」

ショボンは意識を失う直前まで、混乱していた
父を頃した刀狩へのたぎるような、焦げ付いた憎悪
師事する先生から告げられた、親友の、仇との内通

親友を信じたい心と、先生の証言と持っていた確固たる証拠
二つの間で揺らめいていたショボンの心は、

ここで大きく傾きかけていた

( ^ω^)ブーンが侍になったようです【其の二】

引用: ( ^ω^)ブーンが侍になったようです