1: 2012/07/13(金) 16:53:54.30 ID:qTdtekf20
ソードマン 「どうしたものでしょう……」

フォートレス 「ゲェ、何拾ってきてんだお前ェ!」

ソードマン 「だって、一人で震えてたんだもの」

フォートレス 「だからってお前な……」
       「俺達、そのクソウサギにどんだけ殺されかけたか忘れた訳じゃないだろうな」

ソードマン 「でも……この子は悪くないじゃない」
      「それに、大半はあなたの気球の操縦が下手だったからで……」

フォートレス 「乗ってるだけのお前はいいよ!?」
       「いきなり気球渡されて操縦しろって言われた俺の身にもなってみろよ!!」

2: 2012/07/13(金) 16:56:33.66 ID:qTdtekf20
ソードマン 「そんなに怒らなくてもいいじゃない……(シュン)」

フォートレス 「い、いや……別に怒ってるわけじゃ……」

ソードマン 「……とにかく、この子をどうしたものでしょう?」

フォートレス 「元いた場所に戻してこいよ。今は寝てるからいいけど、起きたら何するか分からん」

ソードマン 「だって今は夜よ? 放っておいたら迷宮に入っちゃうかもしれない」

フォートレス 「心配要らねぇよ……猛獣だぜそのウサギは」

7: 2012/07/13(金) 17:00:26.90 ID:qTdtekf20
ソードマン 「タルシスに連れてっちゃ駄目かな……?」

フォートレス 「いやいや、冷静になれよ。そいつはモンスターだろ。捕まるぞお前……」

ソードマン 「やっぱりそうだよね……」

フォートレス 「ったく……ただでさえ水源探しとかパンヤ林探しとかで間違えまくって、統治院のおっちゃんに睨まれてんだ」
       「これ以上お偉いさんに睨まれんのはごめんだぜ」

ソードマン 「でも……」

フォートレス 「でももクソもねぇの。駄目。置いてきなさい」

10: 2012/07/13(金) 17:05:15.32 ID:qTdtekf20
ソードマン 「……人でなし……」

フォートレス 「えぇ!? びっくりしたよ今!」
       「何で猛獣を戻してこいって言った俺が人じゃないの!?」

ソードマン 「いいもん。一人で帰って、宿屋の女将さんに頼むもん」

フォートレス 「お……お前……それは最終手段だ……」
       「やめろ……女将さんに睨まれたら、氏にかけてももう誰も治してくれない……」
       
ソードマン 「知らないもん(スタスタ)」

フォートレス 「って……ここから自力で歩いて帰るつもりか?」
       「それこそそいつのでかいのに見つかってジェットアッパーだぜ?」

11: 2012/07/13(金) 17:09:03.60 ID:qTdtekf20
ソードマン 「大丈夫……私が守ってあげるから……」

跳獣 (すやすや……)

フォートレス 「……はぁ。仕方ねぇな……夜ならタルシスも比較的静かだろ(ボウッ)」
       「気球飛ばすぜ。乗りな」

ソードマン 「いいの……?」


フォートレス 「いいもクソもねぇだろ。お前は言い出したら聞かねぇからな」
       「でもそいつは、女将さんに元の場所に戻せって言われたらおとなしく戻すんだぞ」

ソードマン 「うん……!」

17: 2012/07/13(金) 17:16:01.64 ID:qTdtekf20
―タルシス街門、夜―

フォートレス 「ん? よく見たらそいつ、怪我してんのか」

ソードマン 「そうみたい。メディカ塗ってるけど良くならないの」

フォートレス 「うーん……メディカでも良くならないって、毒蟲にでも刺されたか?」
       「悪そうなのか?」

ソードマン 「分かんない。ずっと眠ってる……」

フォートレス 「メディカじゃ効かねぇんじゃねぇか?」
       「ネクタルあっただろ。あれ出せよ」

ソードマン 「あれはあなたが気絶した時に使っちゃったよ」

フォートレス 「マジかよ!? うちのギルドの家計に直撃だよ! どーしてそれを早く言わねぇの!?」

21: 2012/07/13(金) 17:21:26.05 ID:qTdtekf20
ソードマン 「でも、痛くないでしょ?」

フォートレス 「あぁもうそういう問題じゃ……はぁ」

ソードマン 「どうしたの?」

フォートレス 「女将さんに診せると診察料とられるからなぁ……」

ソードマン 「そ、そんな事言ってる場合じゃないよ! 私、お金溜めて……」

フォートレス 「マジでか!? でかしたぞ。たまには役に……」

ソードマン 「あれ……れ……?(ゴソゴソ)」

フォートレス 「……もういい。もうオチは読めた」

24: 2012/07/13(金) 17:25:42.10 ID:qTdtekf20
フォートレス 「………………財布を迷宮に落としたくらいで泣くなよ………………」
       「ほら、俺のへそくりやるから……」

ソードマン 「ぐ…………っ、うう………………!!」

フォートレス (俺の財布はひったくっていきやがった……!!!)

ソードマン 「うう……私の財布……」

フォートレス 「親切な人が届けてくれるよ多分……」

ソードマン 「……そうだね。お金もあるし、女将さんのところに行こう」

フォートレス 「元々は俺の金なんだが……」
       「ああ……せめて防具だけはへそくりで新調する予定だったのに……」

27: 2012/07/13(金) 17:30:15.24 ID:qTdtekf20
―タルシス、ギルド前、夜―

フォートレス 「(ヒソヒソ)いいか? 音を立てるなよ。ギルドの連中に見つかると厄介だ」

ソードマン 「(ヒソヒソ)う、うん……」

フォートレス 「(ヒソヒソ)一気に駆け抜けて宿屋にインだ。ほら、行け!」

ソードマン 「(ヒソヒソ)わ、分かった! …………(ダダダッ)」

 >ドンッ
 
××××× 「うわっ!」

ソードマン 「きゃっ!!」

フォートレス 「あの馬鹿……!! 前見ないで走るから……!!」

28: 2012/07/13(金) 17:33:08.84 ID:qTdtekf20
メディック 「んん? 何だ、ガキめら。何してんだ?」

フォートレス 「ああぁ……」

ソードマン 「ご……ごめんなさい! 私、走る時に目をつぶる癖があって……」

メディック 「いや別に俺は大丈夫だが……ん? なんだこの包み……」

フォートレス (終わりだ……)

メディック 「! これは…………」
      「(ニヤリ)面白い…………」

ソードマン 「?」

メディック 「まぁここでは何だ。俺の宿舎まで来いよ」

29: 2012/07/13(金) 17:36:31.10 ID:qTdtekf20
―タルシス、メディックの宿舎、夜―

メディック 「と……コーヒーでどうだ? 子供にこの時間にはきついか?」

フォートレス 「(カチン)馬鹿にすんな。こいつはともかく、俺はちゃんと冒険者登録もしてる」
       「あんたと同じ、ギルド所属だ」

メディック 「へェ。最近入った新人って、お前らのことだったのか(シュボッ)」

ソードマン (煙草……煙い……)

フォートレス 「お前には関係ないだろ」

メディック 「確かにな。でもこいつにはちょっと興味がある」

フォートレス 「……!」

30: 2012/07/13(金) 17:40:38.22 ID:qTdtekf20
メディック 「見たところ……跳獣の子供みたいだが、変種だな(ブツブツ)」
      「こんなの見たことがないぞ。何だ、この肉の付き方……(ブツブツ)」
      「面白いな……これはぜひともかいぼ……」

ソードマン 「あ……あんまり弄り回さないであげてください!(バッ)」

メディック 「あ……」
      「…………(ポリポリ)」
      「まぁ……怒らせるつもりはなかった。座ってコーヒーでも飲めばいい」
      「砂糖とミルクはテーブルの上だ」

跳獣 「すぅ……すぅ……」

ソードマン 「それで……話って何ですか? 私達、この子を急いで女将さんのところに……」

31: 2012/07/13(金) 17:47:27.02 ID:qTdtekf20
フォートレス 「おい! こいつには関係ないことだろ!」

ソードマン 「……でも……」

メディック 「いや、関係あるね。タルシスにモンスターを持ち込むのは、統治院が定めた法律で禁止されている」
      「一応ギルドの関係者として、見過ごしてはおけないな」

フォートレス 「通報するつもりか?」

ソードマン (ビクビク)

メディック 「まさか。俺は、お前らに協力したい」

フォートレス 「……は?」

メディック 「モンスターの子供を近くで拝めるなんて、滅多にそんな機会はないもんな。この機を逃すつもりはない」

32: 2012/07/13(金) 17:52:06.50 ID:qTdtekf20
フォートレス 「この機会にって……ついでに何かやりたそうな言い方だな」

メディック 「…………」
      「どれ、診せてごらん(ひょい)」

ソードマン 「あ……」

メディック 「俺はこう見えても医者をやっていてな。何だお前ら、モンスターにメディカつけてたのか」

ソードマン 「そ、それしかなくて……」

メディック 「メディカは人間用に調整されてるから、モンスターには効かないこともあるんだよ」

ソードマン 「そうだったんですか……それじゃ、どうやって……」

メディック 「まぁ、俺が作った薬はある。作り方は企業秘密だがな(ニヤリ)」

40: 2012/07/13(金) 18:43:13.57 ID:qTdtekf20
ソードマン 「………………良かった。血が止まったみたいだよ!!」

メディック 「そうだろうそうだろう。何せ俺が作った薬だ」
      「止血効果を含めて、滋養強壮不眠解消、これ一本で腸の具合までスッキリ解決!」
      「特許を申請してるが、何故か下りない逸品だ」

ソードマン 「腸の具合まで……」

フォートレス 「(ゲシ)やめろ、何か怪しい臭いがする」
       「で、だ。あんたはこの跳獣の子供をどうしたいんだ?」

メディック 「ん? 別にどうとも。ただ……敢えて言うとすれば『観察したい』かな……」

フォートレス 「はぁ? 」
       「こんなケダモノ観察してどうすんだよ。変わってるな」

41: 2012/07/13(金) 18:47:07.84 ID:qTdtekf20
メディック 「それをお前らに言われたくないな」
      「よりにもよってタルシスにモンスターの子供を持ち込むなんて、前代未聞の珍事だ」

ソードマン 「だって……」
      「一人は寂しいですもの……」

メディック 「…………」
      「まぁ、詳しい事情は知らんが、お前らも迷宮から帰ってきたばっかで疲れてるだろう」
      「この隣が空き家になってる。これも何かの縁だ。使えばいい」

ソードマン 「まあ、お風呂はありますか?」

メディック 「あるよ」

フォートレス 「…………俺はギルドに戻る。何かこいつは信用できねぇ」

43: 2012/07/13(金) 18:50:48.44 ID:qTdtekf20
ソードマン 「そんな……この人は信用できるよ。大丈夫」

フォートレス 「お前何を根拠に……」

メディック 「…………(スッ)いいのか、この子とあの跳獣を一人にして(ボソッ)」

フォートレス 「……!」

ソードマン 「ギルドはハンモックだし、私、久しぶりにベッドで寝たい」

フォートレス 「…………チィ。仕方ねぇな…………」

メディック 「(ぐい)何やってる。お前はこっちだ」

フォートレス 「あだだだだ! 髪の毛を掴むな!!!」

メディック 「隣を使うのはこっちのお嬢さんだけだ。レディファースト。分かるな?」

44: 2012/07/13(金) 18:53:58.29 ID:qTdtekf20
フォートレス 「あいつはレディなんかじゃ……」

メディック 「いいから言うことを聞け(ボソッ)」

フォートレス 「……チッ」

ソードマン 「それじゃ、遠慮せず使わせてもらいます!」

メディック 「ああ、俺はガキは嫌いだが、可愛い子と礼儀正しい子は大好きだ」

ソードマン 「可愛いだなんてそんな……」

フォートレス 「真に受けんな。行け、ほら。シッシッ」

ソードマン 「……覗いたら女将さんに言うからね」

フォートレス 「やめろ……それは最終手段だ」

45: 2012/07/13(金) 18:56:42.18 ID:qTdtekf20
フォートレス 「…………いいのか? 跳獣はあいつが持ってっちまったけど……」

メディック 「睡眠薬を投与しておいた。あのモンスターはしばらくは目を覚まさない」
      「それに……事情があるんだろ?」
      
フォートレス 「…………」

メディック 「まぁ話したくないならいいさ。タルシスには何やかんやで事情がある奴らが集まるからな」
      「冒険者ったぁそういうもんだ」
      「とりあえずコーヒーでも飲めよ」

フォートレス 「何なんだあんた、会ったばっかの俺達に部屋まで貸して……」

メディック 「…………あの跳獣は普通の跳獣じゃない」

フォートレス 「あ? どういうことだ?」

46: 2012/07/13(金) 19:01:31.80 ID:qTdtekf20
メディック 「もしそれが俺の研究している対象だとしたら……」
      「あれを更に詳しく調べて学会に発表すれば、俺はまた……(ブツブツ)」

フォートレス 「おい? 何一人でブツブツ喋ってんだ?」

メディック 「! いや……まぁ、とにかく、あれはお前らの手には負えない代物だ」
      「保護者が必要だ。それに……俺は、小さい女の子を泣かせるのが一番嫌いだからな」

フォートレス 「……ケッ。まあ確かに、あれがジェットアッパーでも使った日にゃあ手に負えねえや」

メディック 「あの子とは古い付き合いか? 随分と庇っているようだが」

フォートレス 「うるせえ! てめえには関係ねえよ。寝る(ズカズカ)」

メディック 「…………(クスッ)」
      (こいつら……使える……!!)

48: 2012/07/13(金) 19:04:35.95 ID:qTdtekf20
―翌日、メディックの宿舎、朝―

ソードマン 「わあああ!!!」

フォートレス 「!!(ガバッ)」

メディック 「…………?」

フォートレス 「何だ、どうした!?(バタバタバタ)」

 >ガチャッ

ソードマン 「!! きゃああああ!!!!」

フォートレス 「何だ!? 何があった!!」

ソードマン 「ちょ、今着替えちゅ…………」

フォートレス 「何かされたのか? やっぱりあの野郎……」

 >キラーン

49: 2012/07/13(金) 19:06:59.17 ID:qTdtekf20
跳獣 「フッ!!!」

 >ヒュンッ

 >ドッゴォォォッ!!!

フォートレス 「うぐるぉぁああぁあ!!」

ソードマン 「!! ジェットアッパー!!」

跳獣 「フッ! フッ!!」

 >ヒュンッ ヒュンッ
 
 >ドゴォ! フドゴォ!!

フォートレス 「どぼぉ! がほぉっ!!」

ソードマン 「……!!(ハッ) だ、駄目だよ! それ以上やったら氏んじゃう!!」

50: 2012/07/13(金) 19:10:46.48 ID:qTdtekf20
―数分後―

フォートレス 「お前が……大きな声を出すから……」

ソードマン 「ご、ごめんね……この子が葉っぱを食べたから嬉しくなって……」

メディック 「ほら動くな。湿布を貼るから」

フォートレス 「痛たた……ほれ見ろ! 俺の言った通り、やっぱり猛獣だったじゃねぇか!!」

ソードマン 「そんなことないよ! 私が持ってると静かじゃない!」

跳獣 「ふぅ……ふぅ……」

フォートレス 「何か鼻息荒いぞこれ!!」

 >キラーン

跳獣 「フッ!」

 >ヒュンッ
 
 >ドゴォッ!
 
フォートレス 「何で!? ぶるぅぉぁあ!!」

52: 2012/07/13(金) 19:14:35.68 ID:qTdtekf20
メディック 「ふむ……どうやらお前のことは敵として認識しているらしいな」

フォートレス 「な、何でだ!?」

メディック 「おそらくあの子の部屋のドアを開けた時に、びっくりさせてしまったんだろうな」

フォートレス 「勘弁してくれよ……この小ささでこのパンチの重さだぜ……」
       「氏ぬぞ……」

跳獣 「ふぅ……」

フォートレス (ビクッ)

ソードマン 「あ、落ち着いた」

フォートレス 「しっかり持ってろ! おいお前、前に行け!」

メディック 「一応俺の方が年上の筈なんだがな……」

53: 2012/07/13(金) 19:18:31.77 ID:qTdtekf20
メディック 「うん、健康状態も問題ない。傷も治ってる」

ソードマン 「ありがとうございます!」

メディック 「ちゃんとお礼が言える子は俺は大好きだ」

跳獣 「…………」

ソードマン 「それで、先生。この子どうしましょう?」

メディック 「先生? 嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
      「……ギルド関係者と統治院に見つかるのはあまり良くないな」
      「人に対する警戒心はあまりないようだが……」

フォートレス 「嘘だ……俺は信じないぞ!」

メディック 「取り敢えず、迷宮の近くに俺の研究施設……というか小屋がある」
      「そこに移動した方がいいな」

54: 2012/07/13(金) 19:22:54.48 ID:qTdtekf20
メディック 「街門に移動して、俺の気球に乗ろう。その方が早い」

ソードマン 「はい!」

フォートレス 「はぁ……で、その小屋に行ってどうすんだよ?」

メディック 「本当ならもう少しデータをとりたいところだが……」
      「警備兵に見つかったらことだ。そこに連れて行って、野生に戻せるようならその訓練をする」

ソードマン 「…………」

跳獣 (すりすり)

メディック 「随分と君になついているな。だがそれは野生動物にとってはあまりいいことではないんだ」

ソードマン 「どうして?」

メディック 「人間の臭いが染み付いてしまう。迷宮のモンスターは人間の臭いを異様に嫌うからな」

55: 2012/07/13(金) 19:27:06.44 ID:qTdtekf20
ソードマン 「そんな……連れてきてはいけなかったんでしょうか?」

メディック 「本当はな。だが過ぎたことをいくら言っても仕方ない」
      「とにかく出るぞ。そいつをマントで隠して、俺についてこい……今度は走らなくてもいいからな」

ソードマン 「わかりました……」

フォートレス 「ほら、行くぞ」

メディック (かなりの事情持ちのようだな……)
      (適当なところで撒いて放り出してやりたいが、さてどうするか……)

ソードマン 「あの、先生」

メディック 「ん? 何だ?」

ソードマン 「少ないですけど、これ、お金……」

フォートレス 「あ、俺の金……」

メディック 「………………」
      「まぁ後で受け取るよ。とにかく今は、外に出よう」

56: 2012/07/13(金) 19:41:21.21 ID:qTdtekf20
―タルシス街門、朝―

 >ガヤガヤガヤ……

メディック 「ン……? 随分と騒がしいな……」

フォートレス 「人が集まってるぜ」

ソードマン 「こら……あんまり動かないで……」

跳獣 「…………ふもー…………」

メディック 「……! あれは……」

 血の裂断者 「…………」

メディック 「迷宮の奥の方のモンスターだ……誰か倒したのか……」

フォートレス 「へぇ、でけぇ熊だな」

メディック 「触るな! まだ生きてる」

フォートレス (ビクッ……)

58: 2012/07/13(金) 19:47:38.59 ID:qTdtekf20
メディック 「統治院の警備兵達が生け捕りにしたのか……でも麻酔が甘いぞ……」

×××× 「あれー、何してんのこんなとこで」

メディック 「!」

ダンサー 「あ、今すごく嫌な顔したでしょー。あたしそういうの敏感だからすぐ分かるなー」

メディック 「何の用だ……?」

フォートレス 「あ……! あの人……!」

ソードマン 「知ってるの?」

フォートレス 「ギルドの冒険者の中でもトップクラスの腕のダンサーだ」

ダンサー 「何か獣臭いと思ったら……こんなのが転がってるとはね……」
     「見苦しいの……よ!!(ドゴッ)」

メディック 「あ、馬鹿……!!」

59: 2012/07/13(金) 19:51:05.03 ID:qTdtekf20
血の裂断者 「ゴォォォォ……オオオオオオ!!!!」

 >ガチャガチャ……ッ
 
 >バツンッ! バツンッ!!

メディック 「何してるんだ! こいつの麻酔はまだ完璧じゃなかったのに!!」

ダンサー 「あら……ちょっとやばいことしちゃった……?」

ソードマン 「ど……どどどどうしよう……起きてきたよ!!!」

フォートレス 「と、とにかくお前は俺の後ろに回れ!!」

メディック 「……はぁ」
      「仕方ない。おい小僧、俺の隣に来い! お嬢ちゃんは後ろだ、ダンサー、前に出ろ!」

ダンサー 「えぇ……あたしもやるの?」

メディック 「当然だろ! お前が起こしたんだぞ!!」

61: 2012/07/13(金) 19:54:22.02 ID:qTdtekf20
フォートレス 「俺に指図するな!」

メディック 「氏にたくなければ言うとおりにしろ! お前らみたいなガキが相手にできるレベルじゃない!」

ソードマン 「ああ……あ……(ブルブル)」

フォートレス 「……チィ!」

メディック 「ダンサー、警備兵が来るまでに仕留めるぞ、出来れば生け捕りがいい」

ダンサー 「まぁ氏人が出る前に何とかしましょ」

メディック 「うおおお!!!(ドガッ!!)」

ダンサー 「はぁ!(ザシュ!)」

血の裂断者 「グオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 >ブンッ! ブンッ!!!

62: 2012/07/13(金) 19:57:35.46 ID:qTdtekf20
 >ザシュッ!!!!

メディック 「ぐぅ……!!」

ダンサー 「ちょっとメディック! なまってるんじゃない!?」

メディック 「ずっと援護だったからな……やはりこの構成では決定力に欠ける……」

血の裂断者 「ゴォォォォォォォ!!!!!(ズンズンズン)」

フォートレス 「俺が受け止める! お前は下がれ!」

 >ドガァァ!!!

フォートレス 「く……っ!!」

メディック 「少しはやるじゃないか、小僧!(ドガッ!!!)」

血の裂断者 「グゥォォォオオオ!!!!!」

63: 2012/07/13(金) 20:00:21.29 ID:qTdtekf20
フォートレス 「くそっ……オンボロ防具だからもうガタガタだ……!!」

メディック 「何してる! 前を見ろ!!」

フォートレス 「!!!」

 >ザシュ!!

フォートレス 「があああ!!!!」

 >ドサリ

ソードマン 「嫌あああああああ!!!!」

メディック 「取り乱すな! まだ何とかなる!! ……ぐっ……」

ダンサー 「大きな声を出さないで! 熊がそっちに……」

 >ズンッ! ズンッ! ズンッ!!

64: 2012/07/13(金) 20:04:08.92 ID:qTdtekf20
フォートレス (お前、こんなところで何してんだ?)
       (俺と一緒に『世界樹の迷宮』に行かないか?)
       (ここに閉じ込められてるより、外に出た方が絶対楽しいぜ)
       (手を伸ばせ、一緒に行くんだ!)

ソードマン 「嫌! 氏なないで! 氏んじゃやだよ……! お願い氏なないで!!」

フォートレス 「…………」

血の裂断者 「ゴオオオオオオオ!!!!!!」

 >ピカァッ!!!

メディック 「……!!」

ダンサー 「あの光は……」

 >ヒュッ
 
 >ドッゴォォォォォォォッ!!!!!

ダンサー 「光で前が……人……!?」

65: 2012/07/13(金) 20:07:04.32 ID:qTdtekf20
 >ヒュンッ ヒュンッ
 
 >ドゴォッ!! ドッゴォォォォッ!!!

血の裂断者 「グガアアア!! ゴオオオオ!!!!?」

 >ドッゴォォォォォッ!!!
 
 >ズゥゥゥンッ!!!

メディック 「クソ……さっきの光で前がよく見えない……!!」
      「でもあの……人に見えるもの……」
      「あれが、俺の研究の対象だとしたら……現存する唯一のサンプルになる……!!」
      
×××× 「………………」

 >フッ

ソードマン 「………………」
      「え……今、人が…………」

66: 2012/07/13(金) 20:10:04.82 ID:qTdtekf20
跳獣 「クーン…………」

ソードマン 「あなた……もしかして、あなたがやったの……?」

跳獣 「………………ふぅ」

 >バタバタバタバタ

警備兵 「大丈夫ですか!? すぐ避難してください!!」

ダンサー 「やば……ギルドに知られたらコトだわー……あんた達、行くわよ!!」

メディック 「待て、置いていくな……(グイッ)」

フォートレス 「…………」

ソードマン 「(バサッ)……待ってください!!」

跳獣 (もぞもぞ)

67: 2012/07/13(金) 20:12:39.58 ID:qTdtekf20
―メディックの気球、昼―

フォートレス 「氏ぬかと思ったわ……」

ソードマン 「心配させて……馬鹿っ!」

フォートレス 「そ、そんなに怒らなくてもいいだろ……あれは悪いのは俺じゃなくて……」

ダンサー 「俺じゃなくて……何かしら?」

フォートレス 「いや……何でもないです!」

ダンサー (にこにこ)

ソードマン 「………………」

メディック 「まぁ、俺も小僧の傷も深くなくて良かった。無事に抜け出せたし、小屋までひとっ飛びだ」

ダンサー 「何故かあたしも付き合うことになっちゃったけどね」

68: 2012/07/13(金) 20:15:18.02 ID:qTdtekf20
メディック 「騒ぎの張本人なんだから仕方ないだろう……」

ダンサー 「何も覚えてませんー」

メディック 「…………」

ダンサー 「それにしても……その獣、ちょっと興味深いわね……」

メディック 「残念だったな。あれは俺のサンプルだ」

ダンサー 「何よケチ。少しくらい触らせてくれたって構わないじゃない」

ソードマン 「何だか……人が立ってた気がします。でもいつの間にか消えちゃって……」

跳獣 「…………」

メディック 「………………」

ソードマン 「でも……無事で良かった。本当に……」

フォートレス 「悪かったよ……」

71: 2012/07/13(金) 20:18:22.76 ID:qTdtekf20
メディック 「迷宮にはもっと危険なモンスターもいる。挑むんなら、相応の覚悟が必要だ」

ソードマン 「…………」

フォートレス 「おい、お前は……」

ソードマン 「私、強くなりたい……」
      「さっき熊に襲われた時、私何も出来なかった。だから……」
      「もっと強くなって、みんなの役に立ちたい!」

ダンサー 「いいわねぇ。そういう素直なの、あたし好きよ」

メディック 「ねじ曲がったお前が言うなよ」

ダンサー 「何よ」

メディック 「まぁ……不思議な縁だが、しばらく一緒にいることになりそうだ」
      「よろしく頼むよ」

フォートレス 「……フン」

ソードマン 「…………はい!」

跳獣 「……ふぅ」

72: 2012/07/13(金) 20:21:11.04 ID:qTdtekf20
第一部、完。


明日も仕事なのでそろそろ寝ます。

お付き合いくださってありがとうございました。

引用: ソードマン 「迷宮前でうろつく跳獣の子供拾ったんだけど……」