28: 2012/07/14(土) 19:45:08.09 ID:hJZCtFyW0
ありがとうございます。

昨日仕事に向かったためにスレが落ちてしまいました。

>>24さんがURLを貼って下さったので
昨日の続きに飛んで書かせていただきます。
お時間がございましたら、序盤はURLの方をご覧ください。
あまり長くはありません。

【あらすじ】
迷宮の外でうろつく跳獣の子供を拾ったソードマンとフォートレス。
彼女達は、跳獣を狙ったメディックを仲間に、迷宮に向かいます。
その途中捕獲された血の裂断者を、合流したダンサーと共に、不思議な光で撃退した四人。
冒険は始まったばかり――。

30: 2012/07/14(土) 19:49:46.16 ID:hJZCtFyW0
第二部


―気球の上、夜―

ソードマン (うとうと……)

フォートレス 「…………」

メディック 「ええいくっつくな……離れろ!」

ダンサー 「いいじゃないーこんな時じゃなきゃ二人っきりになれないんだしー」

メディック 「二人っきりじゃないだろ……」

フォートレス 「あ……俺はいいですよ。別に気にしませんので、存分にお楽しみください」

ダンサー 「坊や話が分かるぅ! 後でそっちにも行ってあげる」

メディック 「だからくっつくな! 気球が墜落する!!」
      「小僧! お前もあっさり俺を見捨てるんじゃないよ!!」

31: 2012/07/14(土) 19:53:59.53 ID:hJZCtFyW0
フォートレス 「ぎゃーぎゃーうるせぇな……こいつが起きる。静かにしろよ、大人だろ?」

ソードマン 「Zzz……Zzz……」

ダンサー 「あなた達、見たことあるわ。最近ギルドに入った新米ハンターね」
     「そのレベルで熊に向かって行くなんて無謀よ?」

フォートレス 「向かっていくつもりは……」

ダンサー 「逃げるのも戦いのうち。逃げが上手い冒険者ほど生き残るものよ」

メディック 「その通りだ」
      「研究所には俺の仲間が昔使ってた、お古の防具がある」
      「それを着れば少しはマシになるだろう」

フォートレス 「確かに……今の俺の装備はボロボロだしなぁ……」

32: 2012/07/14(土) 19:57:21.17 ID:hJZCtFyW0
メディック 「まぁ、逃げ足ばかり上手くなってもしょうがないが……」

ダンサー 「何よ、誰のこと言ってるの?」

メディック 「お前のことだよ」

ダンサー 「………………」
     「(ふっ)やめやめ。辛気臭い話はやめにしましょ」
     「携帯食料を幾つか持ってきたから、食べていいわよ」

フォートレス 「マジでか! 助かる!!」

ダンサー 「ふふ……素直な子。私は好きよ」

フォートレス 「(ガツガツ)このパンと肉イケますね……!」

ダンサー 「…………」
     「ね、あの子って、あなたの何?」

34: 2012/07/14(土) 20:02:04.63 ID:hJZCtFyW0
フォートレス 「んぐ……ゲホッ、ゲホッ!」

ダンサー 「ちょっと、大丈夫? はい水」

フォートレス 「す……すんません(ゴクゴク)」
       「……何って……ただの幼馴染スよ」

ダンサー 「ふーん、『ただの』幼馴染ねぇ……」

フォートレス 「な、何ですか?」

ダンサー 「うぅん別に。それにしては一生懸命守るなって」
     「正直その子、冒険者としては、どうして適性試験を通ったのか不思議なくらいだもの」

フォートレス 「…………」
       「俺は……」
       「約束したんだ。俺は、こいつに『世界樹の迷宮』を見せてやるって」

メディック 「………………」

35: 2012/07/14(土) 20:11:10.67 ID:hJZCtFyW0
メディック 「…………迷宮は子供の来る場所じゃない。遊び場じゃない」

フォートレス 「そ……そんなことお前に言われる筋合いはない!」
       「迷宮に入って冒険するのは、こいつの……俺の夢なんだ!」

メディック 「夢で命を落とすほど馬鹿らしいことはないよ」

フォートレス 「…………」

メディック 「まぁ……すぐに命を落とすコースからは幸いそれたみたいだ」
      「その跳獣に少しは感謝しておくんだな」

フォートレス 「…………」

跳獣 「Zzz……」

フォートレス (フン……こんな獣……)
       (俺がいれば充分だ。こいつには、俺ひとりでいいんだ……)

37: 2012/07/14(土) 20:26:52.29 ID:hJZCtFyW0
―メディックの研究所、朝―

メディック 「ほら、起きろ。着陸するぞ」

フォートレス 「んあ? 着陸? ……おい起きろ、気球が降りるってさ」

ソードマン 「んんー……何か頭がグラグラする……」

メディック 「気圧のせいかもしれないな。こいつを飲めばすぐに良くなる」

フォートレス 「…………」

メディック 「どうした?」

フォートレス 「安全な薬なんだろうな?」

メディック 「どういう意味だ?」

38: 2012/07/14(土) 20:30:29.26 ID:hJZCtFyW0
ダンサー 「大丈夫よ。こいつは変人だけど、調合の腕だけは確かだから」

メディック 「だけとはなんだ、だけとは」

フォートレス 「じゃあ……もらいます。おい、これ飲め」

ソードマン 「うん……(ゴクリ)」

ダンサー 「別に、たいして歳が離れてるわけでもないんだから、敬語使わなくてもいいわよ~」

フォートレス 「たいしてって……いや、確かに若くは見えるけど……」

ダンサー 「ふふ。何歳に見える?」

フォートレス 「…………」
       「…………俺達と、タメに見えます」
       
ダンサー 「でしょう?」

40: 2012/07/14(土) 20:34:36.92 ID:hJZCtFyW0
メディック 「アホなこと言ってないで、着陸を手伝ってくれ」

ダンサー 「アホなこととは何よ」

メディック 「降りるぞ。投げ出されないように注意しろ」

 >ズサァァァァ…………

ソードマン 「………………」

フォートレス 「大丈夫か?」

ソードマン 「うん。受け止めてくれたから平気」

ダンサー 「何か萌えるわ~。あたしも受け止めて!(抱きっ)」

フォートレス 「ちょ……ちょっと……」

ソードマン 「…………」

41: 2012/07/14(土) 20:38:02.12 ID:hJZCtFyW0
跳獣 「…………」

 >キラーン

跳獣 「フッ……!」

 >ヒュンッ ヒュンッ
 
 >ドゴォ! ドゴォ!!

フォートレス 「何で!? ぶるぉぉ! ぶらぁあ!!」

ソードマン 「だ、駄目だよ! そこは急所だよ!!」

跳獣 「ふぅ、ふぅ……」

ソードマン 「もう、いきなり殴るのは駄目。そういうの、あんまり感心しないな」

メディック 「気にするな、そのモンスターの特徴なんだろ」
      「動体視力がかなりいいのに加えて、動いていないと落ち着かないのかもしれない」

フォートレス 「それで片付けようとするな……」

42: 2012/07/14(土) 20:41:33.26 ID:hJZCtFyW0
フォートレス 「毎回毎回意味もなく殴られる俺の身にも……」

メディック 「火を消したから、気球の籠を倒すぞ。捕まってろ」

ソードマン 「はい、先生!」

ダンサー 「ふぅん、『先生』ね……」

メディック 「な……何だよ(グッ)」

 >ググググ……
 
 >ズゥン……

ダンサー (そういえばこいつ、『先生』って呼ばれるのが夢って昔……)

フォートレス 「ったく……誰も俺の話を聞きやしねえ……(ブツブツ)」

 >ゴソゴソ

ソードマン 「わぁ、ここが先生の研究所ですか?」

43: 2012/07/14(土) 20:45:57.24 ID:hJZCtFyW0
メディック 「ああ。取り敢えず入ってくれ……っと、ツタが凄いな……」

ダンサー 「しばらく来てなかったからねー」

フォートレス 「まだ使えるんだろうな?」

メディック 「そんなやわには作ってないはずだ。よし、開いた」

 >ギィィ

メディック 「かなり埃っぽいが……窓を開けてくる。少し経ったら入ってきてくれ」

ダンサー 「分かった分かった。行ってらっしゃい」

ソードマン 「……先生って、有名な人だったんですか?」

ダンサー 「まぁどっちかといえば有名なんじゃないかな」
     「薬の特許も何個か持ってるし、冒険なんてしなくても食べていけるんじゃない?」

45: 2012/07/14(土) 20:56:34.43 ID:hJZCtFyW0
ソードマン 「そ、そうなんですか……」

フォートレス 「そんなのが何で今更外の研究所なんかに……」

ダンサー 「まぁ色々あったのよ」
     「あなた達に事情があるようにね。あたし達にも事情があるの」
     
フォートレス 「…………」

ソードマン 「…………」

メディック 「(ゴホッ、ゴホッ)中はあらかた大丈夫だ。もう入ってもいいぞ」
      「コーヒー豆を買ってきてよかった。切れてたよ」

ダンサー 「じゃあ遠慮無く」

メディック 「お前はもう少し遠慮しろ」

ソードマン 「お邪魔しまーす」

46: 2012/07/14(土) 21:01:40.07 ID:hJZCtFyW0
ソードマン 「……きゃ……」

フォートレス 「待て、叫ぶな!」

跳獣 「ふぅ、ふぅ……」

フォートレス (ほっ)

ソードマン 「……びっくりしたぁ。この標本、何ですか?」

メディック 「それはマンドラゴラだ。迷宮のモンスターだよ」

ソードマン 「迷宮……」

メディック 「冒険者はたくさんいるが、何日かかっても探索が出来ないほど広大な……」
      「……そんな、不思議な場所だ」
      「明らかに人工物と思われるものがたくさんあるから、自然の産物じゃないとは思うが……」
      「その謎を解き明かすことができたら、勲章ものなんだろうな」

47: 2012/07/14(土) 21:05:06.15 ID:hJZCtFyW0
ソードマン (何だろう……先生、とても寂しそうな……)

メディック 「今日は午後から、迷宮に少し入ってみよう。その跳獣を見つけたという場所も見ておきたい」

フォートレス 「本当か!?」

ダンサー 「あら、迷宮に入るのは、もしかして初めて?」

ソードマン 「今まで何回か入ったことはあるんですが、奥までは……」

ダンサー 「勿体無いわねぇ。奥に行けばいく程面白いのに」

メディック 「子供に変なことを教えるな」

フォートレス 「ガキ扱いするな……!」

メディック 「ガキにガキと言って何が悪い?(カチャカチャ)」

48: 2012/07/14(土) 21:09:10.41 ID:hJZCtFyW0
メディック 「よし、アリアドネの糸もある」

ソードマン 「道標になる糸ですね」

フォートレス 「地味に高ぇんだよなそれ」

メディック 「お前らどんだけ金がないんだ……まぁいい。こっちに防具がある」
      「合うものをどれでも持っていくといい」

フォートレス 「マジでか! ありがたく頂戴するぞ!(ゴソゴソ)」

ソードマン 「…………」

メディック 「君も、そんな防具じゃ迷宮はダメだ。別のものにした方がいい」

ソードマン 「あの、お金……」

メディック 「…………」

ソードマン 「ちゃんとお支払いします。足りなかったら、しっかり働いて……」

50: 2012/07/14(土) 21:15:38.97 ID:hJZCtFyW0
メディック 「子供にそんな心配をされるほど困ってないよ」

ソードマン 「でも……」

メディック 「誰かに借りを作りたくないっていうのはわかるが、子供にしてはあまり賢くはないな」

ソードマン 「……!!」

メディック 「そうだな……だが、それでは君の気がすまないだろう」
      「俺の研究が終わったら、まとめてもらうよ。その時まで貯めておくといい」
      
ソードマン 「(ほっ)はい……!!」

メディック 「だが君の体の小ささじゃ、この鎧が関の山だな……兜も被って、ちゃんと武装しなきゃダメだ」

ソードマン 「そ、そんなに着込んで動けるかな……」

跳獣 「…………ふぅ、ふぅ」

ダンサー 「ねえ、この鼻息が荒いのはどうするの?」

51: 2012/07/14(土) 21:19:32.17 ID:hJZCtFyW0
メディック 「この子になついてるみたいだし、連れてった方がいいな」
      「それに……」
      (俺の推測が当たっていれば、いざというときの備えになる……)
      (最近は迷宮も物騒だ。熊が入口付近に来てるのもおかしい)
      (備えておくに越したことはない……)

ダンサー 「?」

メディック 「君も、それでいいか?」

ソードマン 「はい! みてみて、余った頭巾で、この子を入れる袋をお腹につけてみました!」

跳獣 「(モゾモゾ)ふもー」

ダンサー 「ウサギって言うより、そう見たらカンガルーね……」

メディック 「いいんじゃないか? 抱いているよりも動きやすいだろう」

52: 2012/07/14(土) 21:29:24.62 ID:hJZCtFyW0
―数時間後、迷宮前、午後―

メディック 「さて……このあたりでその跳獣を拾ったんだな?」

ソードマン 「そうです。確かこのへんだったと思います」

フォートレス 「あの岩には見覚えがある」

メディック 「ふむ……」
      (特に目新しい形跡はないな……)
      (だとしたらやっぱり、迷宮の中からやってきたと考えるのが妥当か……)

メディック 「……迷宮に入ってみようか。準備はいいな?」

ソードマン 「はい!」

フォートレス (この男、さっきから何ひとりで考えこんでんだ?)

53: 2012/07/14(土) 21:35:08.32 ID:hJZCtFyW0
―碧照ノ樹海、午後―

フォートレス 「こんな奥まで来たのは初めてだ……」

メディック 「何言ってるんだ。まだ全然入り口付近だ」

フォートレス 「…………」

ソードマン 「モンスターがあんまりいませんね」

メディック 「そうだな……少し前に、昨日の熊が捕獲されただろう?」
      「あれに驚いて隠れちまった可能性が高いな」

ダンサー 「つまんなーい」

メディック 「だったら研究所で待ってろよ」

ダンサー 「それもっとつまんないじゃないー」
     「それに、この子達のことも気になるし」

ソードマン 「…………」

54: 2012/07/14(土) 21:41:11.04 ID:hJZCtFyW0
跳獣 「ふも……?」

ソードマン 「?」

 >キラキラ

ソードマン 「何あれ……?」

フォートレス 「? 何って……何だあれ?」
       「光るカエル……?」

メディック 「!! 希少個体だ! 生け捕りにしろ!!」

フォートレス 「生け捕りって……あのでかいカエルをか!?」

ソードマン 「………………」

メディック 「何唖然としてるんだ!」

ダンサー 「高く売れるわよー」

フォートレス 「! 行くぞ!!」

55: 2012/07/14(土) 21:52:22.70 ID:hJZCtFyW0
フォートレス 「ふんっ!」

>ブンッ!!

森林カエル希少個体 「ゲコッ!!」

 >ヒュッ

フォートレス 「何だあれ、早いぞ!!」

メディック 「希少個体だからな、逃げ足だけは早いんだよ!」

フォートレス 「こなくそおお!!」

 >ブンッ、ブンッ!!

森林カエル希少個体 「…………ゲコォッ!!」

 >ダダッ!!!

フォートレス 「まずい……抜けられた!!!」

57: 2012/07/14(土) 21:55:39.98 ID:hJZCtFyW0
ソードマン 「……!! こっちに来る!!!」

フォートレス 「何でお前そこにいるんだ! 脇に避けてろ!!」

ダンサー 「あの子モンスターを引き寄せる才能でもあるのかしら……?」

メディック 「悠長なこと言ってる場合か! 危ないぞ!!」

ソードマン 「わ……私だって…………」
      (逃げてばっかりじゃ駄目だ……)
      (剣があるんだ……やれる……!!)

森林カエル希少個体 「シャアア!!!(バッ!)」

ソードマン 「たああ!!(ザシュ!!)」

跳獣 「フッ!!」

 >ヒュン!!

 >ドゴォッ!!!

58: 2012/07/14(土) 21:58:49.61 ID:hJZCtFyW0
森林カエル希少個体 「キュゥ……」

 >ドサリ

フォートレス 「お前……やるじゃねえか! 剣なんて使えたのか!?」
       「(ハッ)」

ダンサー 「へぇ……もしかして、剣を握ったことがなかったの?」

ソードマン 「…………」

メディック (もしかして、この子達は……)

跳獣 (バッ)
   (ズルズル)

ソードマン 「……? もしかして、私にくれるの?」

跳獣 (ドサッ)
   「ふもー」

59: 2012/07/14(土) 22:01:51.72 ID:hJZCtFyW0
ソードマン 「ありがとう。じゃあ、これは先生にお譲りします」

メディック 「本当かい? それは助かる」
      「こいつの絞り汁は、薬の原料になる」

フォートレス 「…………聞かなきゃよかったぜそれ…………」

ダンサー 「そろそろ日も暮れるわ。戻らない?」

メディック 「そうだな。見つけたモンスターも数えるほどだ。得られる情報は……」
      「何だ……これ……?」
      (こんなところに石版なんてあったか……?)

ダンサー 「何? 石版?」

メディック 「ああ……読めないが……」
      (違う……断片的だが読める。しかしダンサーには悟られたくない……)

60: 2012/07/14(土) 22:05:21.62 ID:hJZCtFyW0
メディック (これは……!!)
      「全員戻るぞ……!」

フォートレス 「どうしたんだよ、顔色変えて」

メディック 「いや……これから夜になると危険なモンスターも出てくる」
      「一旦体制を立てなおした方がいい」
      「それに、このカエルの鮮度も落ちちまうしな」

ソードマン 「そうですね。私お腹ぺこぺこです」

フォートレス 「そういえば俺も腹が減ったな……」

ダンサー 「じゃあ、帰って夕食にしましょうか!」

メディック 「………………」


××××A 「………………」
××××B 「………………」

61: 2012/07/14(土) 22:07:52.85 ID:hJZCtFyW0
第三部に続きます。

明日も仕事のため、ここで一旦切らせていただきます。

スレが残っていましたら、続きをここでやらせていただきます。

落ちていましたら、パー速VIPで続きを書かせていただきます。

お付き合いいただけましたら幸いです。

それでは、今回は失礼します。

62: 2012/07/14(土) 22:09:33.40 ID:CC4mxk9g0
おつかれさーん
再開する時はSAVEデータを検索してね

引用: ソードマン 「迷宮前でうろつく跳獣の子供拾ったんだけど……」