157: 2015/04/13(月) 20:36:33 ID:Id0W0ObE
【fate×禁書】学園都市の聖杯【前編】
―数分前 学園都市 某所―
時はライダーとバーサーカーの戦闘が始まる数分前、場所はいくつもの倉庫が並ぶ学園都市の一画。セイバーとランサーが対峙していた。
ランサー「ここならば、邪魔は入らない。さぁ、始めるとしようか」
セイバー「えぇ、望むところです」
マスターであるインデックスを背に、そう言いながらセイバーは不可視の聖剣を構える。その瞳は迷いなど無く。ただ、真っ直ぐにランサーを見る。
ランサー「あぁ、望むところだ」
声を張り上げランサーは応える。しかし、そのはっきりとした声とは裏腹に、その心は冷め切っていた。そして、表情には出さないように細心の注意をしながら、心でセイバーに語りかける。前に戦った時と変わりない騎士王の姿に語りかける。
偉大なる騎士王よ。誇り高い騎士の中の騎士よ。あなたを、あなたとの戦いを穢そう。
そして、そうすることで自分は全てを捨てる。そして、どんなに穢れようと、汚れようと、彼らの手に聖杯を捧げよう。
ランサーは地面を蹴った。目的は勝つことではない。頃すことだ。マスターを、頃すことだ。
158: 2015/04/13(月) 21:03:10 ID:Id0W0ObE
戦いは始まった。しかし、アイテムのメンバーは戦闘が始まった瞬間、移動を開始した。まもなく、ランサーはセイバーを予定のポイントまで誘い込むはずだ。そこで、一気に奇襲をかける。
無防備であるセイバーのマスターに総攻撃をかける手筈になっていた。麦野と滝壺は攻撃の射程を計算し、予定の位置に付き、息を潜める。
浜面と絹旗は車で待機。離脱しやすくも、いざとなればセイバーのマスターを攻撃できる位置でランサーの戦闘を設置したカメラで見守る。ふと、浜面の口から息が漏れる。
浜面「はぁ・・・」
絹旗「どうしたんですか?超辛気臭い顔して」
浜面「いや・・・これでいいのかと、思ってさ。本当はこんなやり方、あいつしたくないんじゃないかと思ってさ」
絹旗「・・・・・・誰だって、やりたいように出来るわけじゃありません。浜面だって、好きでスキルアウトになった訳じゃないし、私達だって・・・」
浜面「・・・ごめん」
絹旗「それに、この作戦はランサーの希望ですよ。手を抜いたりしたらそれこそ超失礼ですよ」
浜面「・・・そうだったな」
浜面は、自分に必氏に頭を下げるランサーの姿を思い浮かべていた。
159: 2015/04/13(月) 21:27:07 ID:Id0W0ObE
アサシンとの戦闘を終えた一同はアジトに引き返していた。しかし、戦闘によるダメージは思ったほどでもなかった。滝壺と麦野は消耗したものの、少し休めば回復するだろう。
けが人は無く、アサシン陣営には傷を与えた。アーチャーの存在は危険だが初陣としては上々の成果と言えただろう。しかし、ランサーの心は晴れない、特にアサシンの最後の言葉は胸に刺さっていた。
ランサー「捨てろ・・・か」
ランサーは目を瞑ると頭の中を整理する。自分はなぜ戦うのか。生前の戦い。以前の聖杯戦争。先の戦い。そして、令呪を使ったものの、自分を仲間と言ってくれた彼らの仲の良い姿。
目を開く、そして、アサシンの言葉に応える。
ランサー「考えるまでも無い事だ。捨てるさ、今度こそ」
ランサーは安全を確認すると、浜面達の方向に向かって歩いていく。
160: 2015/04/13(月) 22:09:13 ID:Id0W0ObE
浜面「ま、まぁ。夜にもう一度戦うってのはいいけど、大丈夫なのかよ」
浜面は丁寧に頭を下げつつ、嘆願するランサーに戸惑いつつ声をかける。その姿と声には有無を言わさぬ強い意志を感じる。
ランサー「浜面様の魔力量などを考えても不意を打つことで勝てるのであれば、早いうちに行動するのが得策かと」
麦野「それで、どいつを狙うの?例のアサシン?」
ランサー「いえ、狙うサーヴァントは騎士。セイバーのサーヴァントです」
絹旗「あれ?セイバーって超強いって言ってませんでした?」
ランサー「はい、しかし不意を付けばこちらは犠牲を出さずに勝利を手にできます」
麦野「自信がありそうね。その根拠は?」
ランサー「おそらく、今回召喚されたセイバーは私がかつて戦った相手。彼女の性格は、気高さはよく知っています。マスターの方針もあるでしょうが、誘えば乗ってくるはず。マスターと一緒に行動してくれているのでしたら、マスターの方を狙えばいい」
浜面「勝算があるのはいいけど、何もわざわざこっちから喧嘩売る必要ないんじゃないのか?自滅してくれるかもしれないし」
ランサー「主よ。どうしても、彼女は私が、この手で倒さなければならないのです。彼女の清涼な闘気は私の決心を鈍らせる。迷いを捨てたいのです。・・・・・・聖杯を手にするには、必要なことなのです」
161: 2015/04/13(月) 22:24:24 ID:Id0W0ObE
浜面の迷いとは裏腹に、作戦は計画通りに進んでいる。セイバーは敵を探すために夕方から街をマスターと散策していた。一緒に行動していた白い修道服の少女の手には令呪が確認できた。
そして、セイバーは闘気を飛ばしたランサーの誘いに乗ってこの地まで来た。一切警戒もせずにである。
浜面は考える。もしかしたら、その行動は以前のランサーのことを信頼してのことだったのではないか?
両者の戦闘は続いている。予定通り、ランサーは防御に徹して、セイバーをある倉庫まで誘い込もうとしていた。マスターとの距離も予定通り開いてきた。
しかし、まだ浜面の心には引っ掛かりがある。しかし、自分に何ができるのか?車内でモニターを見つつも必氏に心に折り合いをつけようとする。
その時、セイバーとランサーが倉庫内に入る。まだ、ポイントには届かないが、あと少しで襲撃のタイミングとなる。浜面をはじめとしたアイテムのメンバーに緊張が走る。
そして、もうひと組。この光景を見下ろす影があった。キャスターとその使い魔を通して監視しているステイルである。
キャスター「ふふっ。愚かな人間たち・・・」
キャスターは笑う。襲撃のポイントまで残り数メートル。
164: 2015/04/17(金) 23:51:40 ID:FtHrVKX.
セイバー「りゃあ!」
ランサー「くっ」
セイバーの一太刀をランサーは紙一重で躱す。しかし、それによってセイバーとランサーの距離が開く。セイバーをポイントに誘い込むのに絶好の機会。しかし―。
ランサー「ッ!」
その距離を埋めるようにランサーはセイバーに接近し槍を刺し出す。
ランサー(何をやっている。なぜ、踏み込んだ。なぜ……)
ランサーは唇を噛み締めると必氏に思いを打ち消す。
ランサー(決めたはずだ。捨てる。決別すると。俺の誇りなど……)
ランサーの戦う、その光景を、緊張の面持ちで見つめるのはアイテムのメンバーであった。浜面と車の中で見守る絹旗が口を開く。
絹旗「くっ。今の超惜しかったですね。やっぱり、予定通りとはいきませんね。浜面?」
浜面「……あいつ、やっぱり」
絹旗「どうしたんですか?」
浜面「…なんでもねぇよ」
絹旗「?」
浜面の横顔を不審に思った絹旗が話しかけようとした瞬間。戦況は動いた。
165: 2015/04/17(金) 23:52:38 ID:FtHrVKX.
ランサー「ふん!」
セイバー「っ!」
ランサーはセイバーを牽制しつつ、絶妙な距離を持った。セイバーは体制を立て直し、ランサーに切りかかろうと姿勢を下げる。セイバーが通る先はまさにポイントの位置。アイテムのメンバーに一気に緊張が走る。そんな中、ランサーは手を握りしめていた。その手は、自身の感情を押し頃すために強く握りしめられ、血が滴り落ちた。
セイバー「ッ!!」
距離を狭めるためにセイバーが踏み込む。その瞬間-。
「かちゃり」
絹旗はおかしな音を聞いた。ふと横を向く。そこにはあるはずの浜面の姿がなく、開かれた扉が見えた。とっさに絹旗は叫んだ。
絹旗「麦野!!」
それと、同時に、セイバーの足元から爆音と共に火柱があがる。
166: 2015/04/17(金) 23:53:45 ID:FtHrVKX.
計画はシンプルだった。まずは罠を張る、誘い込む倉庫の一画に爆薬を仕込み敵が足を踏み入れた瞬間に爆発させる。その混乱に乗じて敵のマスターを攻撃する。たしかにシンプルではあるが、だからこそ準備に手間がかからず。ハマればあっけなく勝利を手にすることができるように思えた。
そして、予定通りセイバーの踏み込みの瞬間を見極め、滝壺が爆破のスイッチを押した。それを合図に麦野は能力での攻撃を開始。絹旗と浜面は援護。途中までは予定通りだった。
そう、浜面の行動を除いて。
「ドゴォゥォォン!!」
爆音と同時に絹旗の叫びが通信機を通して、滝壺と麦野に伝わる。同時に視界にその浜面の姿が見える。そう、麦野とインデックスの間に飛び出したのだ。
滝壺「むぎの!だめっ!!」
麦野「あん!!馬鹿がぁ!!」
標準を付けていた麦野は、浜面を避けるために攻撃を上方に修正する。
結果、インデックスを狙った光線は虚しくそのはるか頭上を通った。
空気が硬直した。アイテムのメンバーはもちろん。セイバー、ランサー、インデックスも状況を理解できずに棒立ちになる。多少なりとも理解できているのは飛び出した浜面、そして傍観に徹しているキャスターぐらいのものだ。
167: 2015/04/17(金) 23:54:20 ID:FtHrVKX.
キャスター「うふふ。思ったより面白いことになったわね」
キャスターにステイルの声が聞こえる。
ステイル「キャスター、分かっているな」
怒気を孕んだステイルの声にキャスターは朗らかに答える。
キャスター「えぇ、セイバーは守りますわ。当然です」
わずかな沈黙の後、キャスターはくすくすと笑いだした。
ステイル「何が面白い?」
キャスター「だって、マスター。分かっているか?なんて、令呪を使用したのに何を聞いているのかと。その身を持ってでもセイバーのマスターを守れ。でしょう?」
ステイル「……」
キャスター「でも、この戦い、セイバーが勝ってしまっては令呪は無駄になってしまいますわ。違いまして?」
ステイル「これ以上話すことは無い」
キャスター「そうですか……。あら?動くようですよ」
168: 2015/04/17(金) 23:54:57 ID:FtHrVKX.
止まった時を動かしたのは、槍兵の悲痛な叫びだった。
ランサー「…なぜ…なぜですか!?わが主よ!なぜ邪魔を!あなたも、あなたも私を信じてはくれなかったのですか!?どうして……」
ランサーの声に押されつつも浜面はしっかりと顔を上げる。
浜面「うっ、うっせぇ!あんな苦しそうな顔で戦いやがって!見てるこっちが苦しいんだよ!」
ランサー「……」
浜面「そ、それにあれだ!お前、捨てるとか決めたとか言っといて、結局捨てれてないじゃねぇか!麦野の攻撃が失敗したらお前が槍投げてマスターを頃すって言ってただろうがぁ!」
ランサー「そ、それは…」
浜面「それに、作戦が男らしくないんだよ!正面からでは勝ち目がないとか情けないこと言ってんじゃねぇよ!でもそれは俺のせいか…。いや!でもそれだけじゃねぇだろ!だから!えーと!えーと!あぁぁぁ!もう!」
ランサー「浜面様……」
浜面「クッ!つまり!最初っから逃げてちゃこれから勝ち抜けるわけねぇんだよ!だから!頼む!こいつに!」
浜面の手の令呪が強い輝きを放った。
浜面「後悔の無いように!男として恥ずかしくないように!胸張って戦わしてやってくれぇぇぇ!」
169: 2015/04/17(金) 23:55:27 ID:FtHrVKX.
次の瞬間。令呪は弾け、一画が失われた。同時にランサーの体に今までに無い力が宿る。
セイバー「なっ!」
状況がわからないセイバーが見たのは槍の先端。セイバーの持つ直感さえ置き去りにして、ランサーの一閃はセイバーの顔の数センチの所で止まっていた。
セイバー「…どういうつもりですか?情けをかけたのですか?」
ランサー「……セイバー、すまない。俺は今、あなたに声をかける資格もその言葉も持たない。……しかし、もし許してもらえるのであれば、今一度騎士として勝負を申し込みたい」
槍を下げながら、語るランサーの言葉にセイバーは答える。
セイバー「分かりました。やっと、かつてのあなたに再会できたような気がします。……では、騎士の誇りをかけて、名乗らせて頂こう。ブリテンの王、アーサー・ペンドラゴン。騎士王の名に懸けて勝利を誓おう」
ランサー「フィオナ騎士団……。いや、暗部組織アイテムの戦闘員、ディルムット・オディナ。騎士の誇り。そして、主達の望みのためにいざ!勝負!」
ランサーが踏み出し。戦闘が開始された。
全く想定外の事態であったが、アイテムの四人はどこか穏やかな表情でランサーの姿を見守っていた。
171: 2015/04/19(日) 00:50:17 ID:T33G61HY
予定外のランサーとセイバーとの真剣勝負であったが、結果的に命拾いをしたのはランサー陣営である。
セイバーを見守るキャスターに加え、セイバー自身も戦闘力を持たない主に対して手をうっていた。現在、セイバーの持つ聖剣の鞘、傷ついた体を回復させる聖鞘は、インデックスが所有している。
さらにセイバーはランサーの行動を予測していた。正確には聖杯戦争が正々堂々の戦いの場ではないことをその身を持って知っていたのだ。
アイテムの襲撃も、現代兵器の爆発など問題にせず、その神がかりな直感でインデックスを助けて見せたことだろう。浜面の行動で結果的に動けなかった訳だが。
172: 2015/04/19(日) 00:58:58 ID:T33G61HY
そして、その二人の騎士による戦闘が始まる直前、無慈悲にもステイルはキャスターに命令を出していた。
ステイル「キャスター、セイバーが不利になればランサーを攻撃しろ。最大の攻撃で、仕留めるんだ。いいな」
キャスター「あらあら、騎士の誇りを傷つけると後が怖いのですよ」
ステイル「それがどうした?できないとでも?」
キャスター「いえいえ。私はサーヴァント。マスターの命令は絶対ですわ」
ステイル「・・・・・・分かっていればいい」
ステイル「キャスター、セイバーが不利になればランサーを攻撃しろ。最大の攻撃で、仕留めるんだ。いいな」
キャスター「あらあら、騎士の誇りを傷つけると後が怖いのですよ」
ステイル「それがどうした?できないとでも?」
キャスター「いえいえ。私はサーヴァント。マスターの命令は絶対ですわ」
ステイル「・・・・・・分かっていればいい」
173: 2015/04/19(日) 01:17:33 ID:T33G61HY
しかし、キャスターは攻撃の準備さえすることができなかった。ステイルもそのキャスターに声もかけない。そして、戦いを見守るインデックスとアイテムのメンバーは声はおろか息をするのさえ遠慮しているかのようだ。
それほどに、セイバーとランサーの戦いは美しいものであった。全霊をかけて振り下ろされる一撃、それをお互いに紙一重で避け続ける。攻撃は一つ一つが命を奪う一閃でありながら、同時に相手を欺く罠にもなった。
その光景は、美しい絵画を見ているようでもあり。荒々しい、野生の光景のようでもある。しかし、その戦いも永遠に続くものではなかった。
セイバー「ハッ!!」
セイバーの一閃をランサーは後ろに下がり回避する。しかし、距離を取り着地した瞬間。ランサーの頬に血が流れる。
僅かな傷。しかし、これはセイバーとランサーの戦力の差を如実に表していた。時間をかけた戦いになればランサーは明らかに不利。
174: 2015/04/19(日) 01:19:44 ID:T33G61HY
ランサー「やはり、お前との戦いは俺の心に心地よい風を吹かしてくれる。・・・しかし」
セイバー「えぇ、決着をつける時が来たようです」
ランサーはアイテムの方を見ると。優しく微笑む。その笑顔は心配するなと言っているようだった。
ランサー「ハッ!」
ランサーは後ろに大きく跳んだ。そして、着地すると体を大きく沈める。その姿はまさに獲物を狙う獣。
同じように王の威厳と誇り高さを感じさせる動きでセイバーも聖剣を構えた。
そして、一時的に静寂が訪れる。次の瞬間!
セイバーとランサーは,ほぼ同時に動いた。
175: 2015/04/19(日) 01:46:04 ID:T33G61HY
ランサーは全身のバネを使い、まさしく獣のような俊敏さでセイバーに向かう。
対するセイバー。ランサーを獣、と表現するなら。セイバーはロケットやミサイルのようであった。聖剣から一気に魔力を放出して推進力に変えている。二人の騎士が接触するのは一瞬のことであった。
しかし、その一瞬の間。ランサーは勝利の布石を打つ。
シュ!
それは、槍の音だった。両手に握られたランサーの宝具。「破魔の紅薔薇」はランサーの手によってセイバーに向かって投げられた。
しかし、それはセイバーも想定の範囲内。ランサーの宝具は二つ。ならば、そういった使い方も当然。
だが、セイバーは槍を避けることも、叩き落とすこともしなかった。正確にはする必要がなかった。紅薔薇の軌道はわずかにセイバーには当たらずその横を通り過ぎるものだった。
セイバーは瞬時に判断し、紅薔薇を無視。ランサーに狙いをつける。
セイバー「なっ!?」
176: 2015/04/19(日) 01:46:39 ID:T33G61HY
しかし、セイバーは次の瞬間。ランサーの攻撃の意味を知る。破魔の紅薔薇はセイバーを傷つけることはしなかった。しかし、セイバーの魔力。推進力となっている魔力の流れをわずかに削る。
セイバーの体がわずかに、揺れる。放出している魔力を制御すればすぐに体制は立て直せる。しかし、その一瞬はランサーには十分すぎる隙。
ランサー「セイバーぁぁぁ」
ランサーの手にはもうひとつの宝具「必滅の黄薔薇」が握られている。ランサーは咆吼と共にセイバーの心臓めがけて槍を突き出す。槍は、騎士王の体を破りランサーに勝利の感触を与える。
177: 2015/04/19(日) 01:54:51 ID:T33G61HY
――はずだった。しかし、ランサーの手に残ったのは空気を切ったことによる虚しさ。そして、体を斬られたという感触だった。
178: 2015/04/19(日) 01:58:00 ID:T33G61HY
魔力の推進力を崩されセイバーは体制を立て直すはず。ランサーの予想は当然であり。むしろ、それだけの技術を持つセイバーだからこその予想だった。しかし-
セイバー「りゃあぁぁぁ!」
体制を崩したセイバーは魔力を抑えるどころかさらに魔力の放出を強めた。体を守る鎧さえ解き放ち。全霊の魔力を放出する。
結果、セイバーの体は回転することとなり、それによってランサーの一突きは空を斬ることとなった。そして、その回転力を利用し。セイバーは剣を下ろした。
セイバー「うりゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
セイバーの聖剣は攻撃を外したランサーの体を容赦なく両断した。ついに決着がついたのだった。
179: 2015/04/19(日) 02:24:21 ID:T33G61HY
そして、その決着をアイテムのメンバーは地面に倒れるランサーの姿で理解し、浜面は手から消える令呪の痛みで理解した。
ランサーが敗北を理解したのも視覚だった。敵と戦っていたのに、現在仰向けに倒れている。星が綺麗だ。
敗北したが思い残すことは無い。純粋な戦いで負けたのだ、誇りであっても恥ではない。セイバーに対しても賞賛の気持ちしかない。うまくやられたものだ、騎士王の名は伊達ではなかった。体が消えていく感じがする。痛みはない。そう、本当に思い残すことは・・・・・・。
ランサー「グハッ!!!ググッ!!ウッ!」
ランサーは意識を必氏に引き戻した。思い残すことがない?騎士としての誇りを守った?ふざけるな!ふざけるな!自分はなんのために戦ったのだ?誰のおかげで戦えた?彼らのおかげだ。信じてくれたのに。彼らには、望みが。仲間を取り戻したいという美しい望みがあったのに。それを台無しにした。
180: 2015/04/19(日) 02:25:04 ID:T33G61HY
ランサー「グガッ!!」
ランサーの全身に痛みが襲った。強引に現世に残ろうとするランサーを今まで感じたことのない痛みが走る。しかし、それが何だ。自分が何をしたのか?どうして、爽快な気持ちで消えることができるのだ。彼らは、きっと怒って。いや、呆れているに違いない。当然だ。
ランサーは必氏に口を開く。奇跡的に通信機は動いていた。せめて、謝罪を。謝罪したところで罵倒されることだろう。しかし、それこそ自分の最後にお似合いだ。一言、意味がなくても・・・・・・。ランサーは必氏に謝罪の言葉を探す。
と、ランサーの耳に声が聞こえた。震えた、少女の声。
滝壺「らんさー・・・」
絹旗「ごめんなさい、私たち。あなたに何もできなくて」
麦野「・・・ちっ勘弁して欲しいのよね。本当にさ・・・・・・」
浜面「後輩が出来ると思ったらさ・・・・・・これかよ。・・・・・・ごめん。俺が、余計なことしなけりゃ・・・・・・。お前が・・・消えることも!ごめん!」
思い思いにランサーに感情をぶつける。短い間だった。しかし、その短い時間ランサー、ディルムッドはアイテムの一員だった。
ランサー「・・・・・・ありがとう・・・ございました」
必氏に謝罪の言葉を探していた槍兵の口から出たのは感謝の言葉。
ランサー「・・・・・・あなたたちと出会えて。あなたたちの仲間になれて、良かった。・・・・・・お元気で」
ランサーは消えた。そこには、アイテムが使用していた通信機だけが残されていた。
181: 2015/04/25(土) 22:46:55 ID:xYMGrTWk
―学園都市 土御門 隠れ家―
ランサーとセイバーの戦闘が終わったその時、学園都市の某所で土御門は海原から報告を受けていた。
土御門「なるほど・・・・・・。状況は分かった」
海原「判断ミスでサーヴァントを失いました。あなたにはどうお詫びすればいいのやら・・・」
土御門「なに、まだ仕事は残っている。まだまだ働いてもらうにゃー」
海原「そうですか、では仕事に向かう前に報告を一つ」
土御門「何だ?」
海原「彼女を、ライダーを倒したサーヴァントについてです」
土御門「バーサーカー。だったな」
海原「えぇ、そのマスターに関して」
土御門「あれだけの武器を準備した奴だ。ずいぶん前から学園都市に潜伏していたか、強力な協力者がいるようだな。まだしっぽは掴めていないが・・・・・・」
海原「これに関しては自分の勘なのですが・・・・・・」
土御門「何か覚えが?」
182: 2015/04/25(土) 22:47:27 ID:xYMGrTWk
海原「大覇星祭の時を覚えていますよね。単独で学園都市中を引っ掻き回した。『追跡封じ』と『告知の火曜』」
土御門「リドヴィア=ロレンツェッティとオリアナ=トムソンか!」
海原「自分たちの監視をかい潜った隠密性。彼女たちなら可能かと」
土御門「同感だ。早速その線で調べてみよう。指示をするまで休んでいてくれ」
海原「えぇ、少し休んだら自分も働きますよ。腑抜けているといなくなった彼女に向ける顔がありませんから」
土御門「そうか、だが他の陣営も、明日の夜までは動かないだろう」
海原「だと、良いのですが・・・・・・」
挨拶をすると海原は部屋を出て行った。
土御門の想像は当たっていた。戦闘を終えたセイバーとバーサーカー、そして偵察をしていたキャスターは魔力の温存をしようとしていた。アーチャーに先頭の意思はなく。アサシンは活動拠点を移動しているため動けないでいた。
しかし、事件は早朝に起きた。それも異変は学園都市ではなく、海の先。イギリスの地で起きたものだった。
183: 2015/04/25(土) 23:26:28 ID:xYMGrTWk
―イギリス 某所―
学園都市でマスター達が戦闘を終えて休んでいる早朝の時間、イギリスは昼時だった。
五和「上条さん、ここは有名なアーサー王伝説で出てきた湖のモデルじゃないか、って言われている場所なんですよ。お弁当を作ってきたので、ここでお昼にしましょう」
上条「・・・うん」
神裂「どうしましたか?」
上条「いやさ、上条さん、イギリスが謎の魔術結社に襲われてて。ピンチだから。イギリスが無くなるかもしれない。って言うから。来たんだけどさ」
五和「それが何か?」
上条「観光しか、してない気が・・・・・・」
神裂「・・・・・・」
五和「・・・・・・」
上条「それに、来るって言ってたインデックスとステイルもいないし。何かあったんじゃ・・・・・・」
神裂「な、何を言っているんですか!?」
五和「そうですよ!今はあれですけど、本当にピンチなんですよ」
神裂「あなたはいつからそんなに冷たい人になったんですか!?」
五和「そうですよ」
184: 2015/04/25(土) 23:27:00 ID:xYMGrTWk
上条「そ、そんなつもりじゃ・・・・・・。わかったよ、じゃあ、ちょっとトイレ行ってくるから・・・・・・」
―スタスタ―
上条(なんなんだよ・・・・・・。あれ?迷った?)
―キョロキョロ―
上条(どうしよう・・・ん?)
上条の目に付いたのは魔方陣だった。
上条(なんだこれ・・・・・・。魔術っぽい何かだよな。大事な結界とかかな。でも、それだったら五和が伝えただろうし、・・・壊しとくか)
上条「そげぶ。っと」
―キュイーン―
上条「良しっ」
五和「上条さーん。どうしたんですかー」
上条「あぁ、今行くー!」
そして、その瞬間。学園都市で、仮眠をとっていたオリアナは跳ね起きた。確実かつ有利に召喚を行うために、伝説の残る湖で召喚をしたことが裏目に出た。
上条当麻の右手によって、オリアナ=トムソンと『湖の騎士』ランスロットの魔力の循環は破壊されたのだった。
185: 2015/04/27(月) 22:50:00 ID:ooWHvOb.
―学園都市 バーサーカー陣営 アジト―
リドビィア「もう一度!説明なさい!」
オリアナ「ふぅ・・・・・・」
学園都市、アジトでオリアナとリドビィアは通信機で熱い言い合いをしていた。最も、熱くなっているのはリドビィアで、オリアナはむしろ冷静になっている。
オリアナ「原因は不明だけど、バーサーカーとの魔力のパスが途切れてしまったわ。今は簡易の魔方陣を使って現界を保っているけど、それも長くは持たない。戦闘の有無に関わらず、もって二日といったところね」
リドビィア「そんな、馬鹿な・・・・・・」
オリアナ「逆にどんなに戦闘させてもこちらが魔力を吸い取られて氏ぬ心配はなくなったんだけどね」
リドビィア「残るサーヴァントは残り、4騎です。二日ではどうやっても・・・・・・」
オリアナ「無理でしょうね」
リドビィア「・・・・・・ふ」
オリアナ「どうしたの?」
186: 2015/04/27(月) 22:50:35 ID:ooWHvOb.
リドビィア「ふふふっ。あはははは」
オリアナ「・・・・・・冷静さを欠いたのなら私は降りるけど?」
リドビィア「ふふっ。いえ、心配はいりません。オリアナ=トムソン。これは神の啓示です。私たちに聖杯を与えようとする神の御意志です」
オリアナ「何か考えが?」
リドビィア「えぇ、最後の手段。イチかバチかの保険のつもりでしたが状況が変わりました。あなたはこちらが連絡するまで待機していてください」
オリアナ「いいけど・・・・・・」
リドビィア「心配は無用です。一日で残りのサーヴァントを倒し、聖杯を手にするとしましょう」
リドビィアは笑いながら通信機を切った。そして、真剣な表情になると手元にあった魔道書を手に取り部屋を出た。
187: 2015/04/27(月) 22:52:58 ID:ooWHvOb.
―学園都市 キャスター陣営 アジト―
ステイル「・・・・・・んっ」
アジトで睡眠を取っていたステイルは目を覚ました。ゆっくりと目を開き、息をついた。
彼は再び夢を見ていた。しかし、そこにはインデックスも、自分さえも出てこない。故郷を捨てた王女。ある女の物語だった。
ステイルはキャスターを召喚したのち、改めて彼女の逸話を調べた。王女にして、良妻、賢母。それでありながら夫と息子を殺害した魔女、メディア。
メディアはコルキスの王女であった。しかしその故郷を捨てた。理由は一人の男。それは、現代でもよくある話なのかもしれない。
しかし、彼女を待っていた苦痛は計り知れない。唯一と信じた者から裏切られ、全てを奪われた彼女に残ったのは、自分を包んでくれた故郷のみだった。
ステイルはキャスターの心象風景であろう夢を見たことでそれまでキャスターに抱いていた欺瞞や残虐というイメージを考え直した。もしかしたら、彼女は時代や人の汚さに翻弄されただけの、ただの犠牲者で、純粋な女性なのかもしれない。
ステイル「どうかしてるな・・・・・・」
まだ、キャスターは帰ってきていない。ステイルは頭を整理するためにも再びまぶたを閉じる。しかし、心に残ったわだかまりは消えることはなかった。
188: 2015/05/06(水) 23:26:44 ID:UQ6cdwDE
=学園都市 廃ビル アサシン陣営=
日が昇って間もない時間、御坂美琴、白井黒子、初春飾利、佐天涙子の4人とサーヴァントの佐々木小次郎はパソコンの画面に見入っていた。
視線の先には、新たに設置した防犯カメラの映像が映っている。その一つに彼女は居た。カメラの存在を知っているかのように振る舞い、数分前からその場に座る白い修道服の女性。
佐天「どう…思います?」
御坂「どうって……」
初春「罠…ですかね……」
白井「それにしたって、とても戦闘員には見えませんが……」
佐天「小次郎さんはどう思います?」
沈黙を守っていたアサシンが口を開く。その手には呪いの傷は無い。ランサーの敗北によってアサシンは全快していた。
アサシン「サーヴァントの気配は無い。それどころか、こちらへの敵意も感じない。しかし、このまま放っておくことは出来ないのではないか?……流石に目障りだ」
189: 2015/05/06(水) 23:27:17 ID:UQ6cdwDE
御坂「そうよね……。私、行ってくるわ。場合によってはご退席いただかないとね」
佐天「ま、待ってください。……私に行かせて貰えませんか?」
御坂「でも……」
佐天「私、見ているだけは嫌なんです。それに、本当に相手に敵意が無いんだったら。一時休戦とか共闘の申し入れかも知れないし……。マスターの私が、行くべきだと思います」
御坂「……分かったわ。あんたも着いていくんでしょうねぇ?」
アサシン「ふっ、マスターの出陣であるなら、お供が必要だろうからな」
佐天「御坂さんたちはここで待機をお願いします」
初春「気を付けてください」
佐天「うん、じゃあ行きましょう」
アサシン「了解だ」
190: 2015/05/06(水) 23:27:56 ID:UQ6cdwDE
目を閉じ、彼女たちの到着を待っていた。リドビィアは気配を感じて顔を上げた。
佐天「聖杯戦争の、関係者ですよね?どういったご用件でしょう?」
佐天は真っ直ぐにリドビィアを睨みつけた。
リドビィア「はじめまして。リドヴィア=ロレンツェッティと申します。今回はあなたたちにある提案がございまして」
佐天「残念ですが、私たちはどんな人であれ。協力関係は結びません。もし、これ以上ここに居座るなら・・・」
佐天の前にアサシンが現界する。その瞳は、冷たくリドビィアを見据えていた。
佐天「怪我をすることになります」
リドビィア「・・・ふっ」
佐天「?」
191: 2015/05/06(水) 23:28:34 ID:UQ6cdwDE
リドビィア「ふふっ」
佐天「何がおかしいんですか!?」
佐天の声を皮切りに、我慢できないといったようにリドビィアは大きな声で笑い出した。
佐天「いったい・・・」
リドビィア「ふふっ。だって、あなたたちがあまりに滑稽なものですから・・・。ふふっ」
アサシン「下がれ・・・・・・。痛い思いをしたいようだ」
佐天「こ、小次郎さん・・・・・・」
リドビィア「だって、そうでしょう?魔術師とはとても呼べない。小娘」
佐天「・・・」
リドビィア「そして、それにお似合いの不完全なサーヴァント。あなた、自分が聖杯に呼ばれるべきサーヴァントではないと気がついているのですか?」
192: 2015/05/06(水) 23:29:06 ID:UQ6cdwDE
リドビィアは言い終えるとその右手を前に出す。
リドビィア「異常は正さねばなりません。さぁ、真の姿を」
佐天「えっ!」
アサシン「なっ!」
次の瞬間、三人に異変が起きた。佐天の右手は激しい痛みと共に光りだす。
佐天「きゃあぁぁ!」
そして、リドビィアの手にも光。それを、リドビィアは恍惚の表情で見つめる。
アサシン「グッ・・・。グァァァァァァ」
アサシンの足元には気がつけば魔方陣が描かれていた。そして、アサシンの全身を強烈な痛みが襲う。
アサシン「グワァァァ!」
アサシンは声を上げながら。佐天の体を片手で突き飛ばす。
佐天「きゃあ!」
佐天は壁に叩きつけられる。意識を失いそうな痛みの中で佐天は気絶などできなかった。なぜなら、彼女の目の前で。無残な光景が広がっていたからだ。
193: 2015/05/06(水) 23:30:34 ID:UQ6cdwDE
アサシン「ググアアアアアアァァァァ!!」
美麗であった侍は、血にまみれその体内に動く何かに必氏に抵抗している。しかし-
グッシャアァァ。その音とともにアサシンの姿は消え。そこには血だまりと黒ずくめに白い仮面の異形が立っていた。
佐天「こ、小次郎・・・さん・・・・・・」
佐天は自身の令呪が無くなっていることにも気づかずに、彼の名を呼ぶ。しかし、リドビィアは佐天を無視してその異形に話しかけた。
リドビィア「私がマスターです。名を」
?「恐れ多いことです。しかし、私を呼ばれるのでしたら。ハサンと」
リドビィア「真の暗殺者。ハサン・サッバーハ。ふふっ、素晴らしい」
真アサ「時に我が主」
リドビィア「なんですか?」
真アサ「先程から耳障りなあの小娘はいかがしましょう?」
194: 2015/05/06(水) 23:31:28 ID:UQ6cdwDE
アサシンはその仮面を通して佐天を見る。突然の恐怖。佐天はその場を動くことができなかった。
リドビィア「気にすることはありません。今の彼女は我々の障害にはなりえません。それより、向かうところがあります。気配を消して付いてきてください」
真アサ「御意」
アサシンの姿が消えて。リドビィアはスタスタと歩き出した。
佐天「こ、次郎さん・・・・・・」
シュタ!瞬間移動で、白井、御坂、初春がその場に現れた。映像を通して、状況は見ていたものの彼女たちも動くことができなかったのだ。
195: 2015/05/06(水) 23:32:20 ID:UQ6cdwDE
御坂「佐天さん!」
白井「お気を確かに!」
初春「分かりますか!?」
佐天の目の焦点が次第に合っていく。
佐天「み、みんな・・・私・・・私・・・・・・」
御坂「佐天さん!」
佐天「私は-」
次の瞬間。佐天は大きな声を上げて泣き出した。そして、その場にいた全員が聖杯戦争の敗北を理解したのだった。
196: 2015/05/09(土) 23:50:01 ID:XIoBD.nI
―学園都市 通り―
学園都市が夕日に染まろうという時刻。佐天から令呪とサーヴァントを奪ったリドビィアはオリアナに連絡を取っていた。
リドビィア「予定通りです。はい-。はい-。はい-」
リドビィアはオリアナの最後の言葉に頷く。
リドビィア「では、行動を開始しましょう」
197: 2015/05/09(土) 23:50:37 ID:XIoBD.nI
―学園都市 キャスター陣営 アジト―
その気配に気がついたのは、キャスターであった。
キャスター「マスター」
ステイル「どうした?」
キャスター「何者かがこちらを監視しているようです」
ステイル「!?・・・結界に反応はないようだが」
キャスター「えぇ、結界に入るか入らないかの位置にいます。中々優秀な魔術師のようですわね」
ステイル「敵は?まさか・・・」
キャスター「セイバーでは無いようです。ただ、相手が何者であれ、取る手段は限られているのでは?」
ステイル「その通りだ。この工房は破棄する。撤退の準備を」
キャスター「はい-」
しかし、キャスターが動くより前にステイルとキャスターに魔力の刺激が走った。結界がサーヴァントの侵入によって反応している。
198: 2015/05/09(土) 23:51:12 ID:XIoBD.nI
キャスター「先手を、打たれたようです。敵は-」
ステイル「ッ!バーサーカー」
キャスター「逃げるにしても、足止めが必要のようですわ。それに、バーサーカーはアーチャーと並んでセイバーとは戦わせたくない相手」
ステイル「そんなのわかっている!・・・・・・計画を変更する。時間を稼げ、少しでいい」
キャスター「では、その様に。この建物は多少の防御能力を持っていますがサーヴァント相手では紙も同然。押しかけられる前に迎え撃ちましょう」
消えようとする、キャスターの背にステイルは自然に口を開く。
ステイル「・・・氏ぬなよ」
驚くキャスターの顔を見ないようにしてステイルは続ける。
ステイル「仕事はまだ残っているんだ」
キャスター「・・・・・・えぇ。それでは、予定の第二のアジトで」
ステイル「あぁ」
199: 2015/05/09(土) 23:51:47 ID:XIoBD.nI
キャスターが消えたその箇所をステイルはしばらく見つめていた。その間、ステイルはキャスターが自分にかけた言葉を反芻していた。自分は何を聖杯に求める?そして、サーヴァントである彼女は自分をどうしたいのか?
ステイル「・・・・・・」
無事に撤退したら、戯れに聞いてもいいかもしれない。わずか数秒の思考を打ち切り、ステイルは撤退しようと出口に向かう。
ステイル「馬鹿・・・な」
ステイルが歩いた先、出口に男の姿。
真アサ「どこかに、お出かけですかな?」
真アサシンは抑揚のない声でステイルの前に立った。
ステイル「どう・・・して・・・・・・」
どうして、ここにいる?
どうして、キャスターの結界が作動していない?
どうして、7騎以外のサーヴァントが存在している?
どうして、僕の足は動かない?
ステイルは混乱した頭で自分の命の終わりを悟った。
200: 2015/05/16(土) 23:19:13 ID:h5QPwxu.
真アサ「流石、キャスターの工房。忍び込むのには手が折れました」
アサシンの言う通り。キャスターの結界は完璧なものだった。ただ、一つの誤算があった。気配遮断スキルを持つサーヴァント、アサシンの存在。真アサシンの気配遮断スキルは佐々木小次郎をはるかに超えるものだった。
キャスターの結界は最初に召喚されたアサシンの気配を読み取ることは出来ても。この真アサシンの気配を感知できなかったのだ。
ステイル「グッ……」
一度は絶望したステイルであったが、余裕のためか攻撃を仕掛けてこないアサシンを前にして脳内は必氏に生き残る手段を探していた。
ステイル「……」
とる手段はただ、一つ。サーヴァントと戦うことが出来るのはサーヴァントのみ。
201: 2015/05/16(土) 23:20:00 ID:h5QPwxu.
ステイル「ッ!来い!―」
ステイルの令呪が光輝く。
令呪の使用によってキャスターを呼び戻そうとするステイルの動きを確認しつつ。暗殺者は仮面の下で静かに笑う。
そして、彼の右腕を包んでいた。布が解かれる。
ステイル「-キャスター!!」
ステイルがキャスターの声を呼び終わると同時にその声を聞いた。
真アサ「妄想心音」
対象に触れることで結果的に心臓を握りつぶす。必殺の呪術がステイルに向かって放たれた。
202: 2015/05/16(土) 23:20:34 ID:h5QPwxu.
真アサシンの目的は確実にキャスター陣営を潰すことであった。そのためにはサーヴァントとマスターを同時に葬ることが必要があった。
普通のサーヴァントであるならば、マスターを頃してしまえば魔力の供給が途切れ、依代を失ったことによって体を保つことが出来ない。
しかし、例外は存在する。キャスターは単独行動のスキルは持っていないものの。魔力を様々なものから吸い取ることに長けていた。マスターを頃したものの、キャスターに逃げられては意味がないのだ。
そのために、ステイルが令呪の使用を待ったのだった。ステイルはまんまとその罠にはまった形になった。
ステイル「グッ!!」
光が集まり。キャスターが姿をあらわした。
しかし、すでに遅い。直感を持っていないキャスターは状況判断が遅れる。理解したときにはステイルは氏に、わずかに動揺しているところを一撃で決めればアサシンは完全な勝利をおさめることが出来る。
203: 2015/05/16(土) 23:21:04 ID:h5QPwxu.
キャスター「――――――」
しかし、キャスターに動揺は見られず。一言、神代の言語で呪文を唱えた。ここは、ほかならぬ彼女の結界の中、そこで行使される魔術は手に取るようにわかる。そして、彼女は主の危険を一瞬で理解し、対応を取った。
アサシンの宝具、妄想心音は発動した相手の心臓の虚像を作り、それを潰すことで対象を氏に至らしめる。そのため、人間以外の相手、心臓が無くても動けるような相手には即殺性が無い。
もっとも、キャスターにも、ステイルにもそのような能力は無い。しかし、全く対応ができない訳ではない。強力な魔力は、呪いをわずかに捻じ曲げる。
キャスター「グハッ!!」
ステイルが見たのは目の前に現れたキャスターと彼女が口から流した鮮血だった。
ステイル「キャスター!!」
204: 2015/05/16(土) 23:21:44 ID:h5QPwxu.
真アサ「馬鹿な…。自らの心臓を身代わりに……。そんなことが…しかし!」
追撃のアサシンには目もくれず。キャスターはステイルを自らのローブで包む。
そこに向かって。アサシンのダークと呼ばれる短刀が放たれる。しかし、ローブはただの布となりそこには何も残っていなかった。
真アサ「……逃げたのか」
アサシンの耳にマスターである。リドビィアの声が聞こえた。
リドビィア「情けないことです。逃がしたのですか?」
真アサ「申し訳ございません。しかし、結果は何も変わりません。キャスターは確実に仕留めております。マスターを殺せというのでしたら出向きますが……」
リドビィア「いいえ、時間が有りません。予定通りに行きます」
真アサ「御意」
アサシンが消え、かつて要塞であった彼女の工房はすでにただの廃墟となっていた。
205: 2015/05/16(土) 23:22:31 ID:h5QPwxu.
―学園都市 某所―
ステイルはこの場所に見覚えがあった。
ステイル「ここは……」
キャスター「-ここが、一番…結びつきが。強かったから……」
ここは、ステイルがキャスターを召喚した場所。キャスターは突然の状況にも自らの魔力とステイルの令呪を使用することで空間の移動という魔法を実現させた。もっとも、その体も消えようとしている。
ステイル「……」
ステイルは、キャスターに声をかけることができなかった。本来ならば、感謝の言葉、謝罪の言葉を述べるべきだ。しかし、ステイルは質問せずにはいられなかった。
ステイル「どうして」
キャスター「…ふふっ」
キャスターはそれに答えず、ステイルに手を伸ばす。
ステイル「……」
ステイルには令呪が無い。しかし、危険であったとしても、ステイルはひざまずきキャスターの手を取る。キャスターは手をステイルの顔に当てる。――そして。
206: 2015/05/16(土) 23:23:08 ID:h5QPwxu.
ステイル「なっ、何を!ぐわぁぁぁぁ!!」
ステイルの頭に脳が焼き切れるほどの激痛が走った。
キャスター「ふふっ。我慢なさい……。私からの置き土産なのだから……」
キャスターは笑うと、手を離した。
ステイル「はぁ、はぁ……。キャスター……。これは…」
ステイルの脳裏に何やら魔術の格子のようなものが浮かぶ。現代のものではない、到底理解できないが神代の魔術のようだった。そして、おそらく中身は―。
キャスター「最後に…質問をしましょう。…マスター、ステイル=マグナス」
ステイル「……」
キャスター「あなたに夢は、望みはありますか?心の底から、割り切れない。純粋な思いはありますか?」
ステイル「キャスター……。お前は……」
キャスター「ふふっ。あなたは私に似ているわ。大切なものを捨てて、それでもいいと思っている。でも、あなたは届かないわけではないでしょう?……だったら、足掻きなさい。どんなに侮蔑されたとしても、大切なものはあきらめてはダメ」
207: 2015/05/16(土) 23:23:47 ID:h5QPwxu.
ステイル「……そうだな」
キャスター「私の魔術の記憶の一部はあなたには不要?」
ステイル「いいや、記憶の修復の魔術の一端、確かに受け取った。無駄にはしない」
キャスター「そう……良かった…」
その言葉を最後にキャスターは消えた。ステイルは静かに頭を下げるとゆっくりと歩き出した。
209: 2015/05/27(水) 23:11:10 ID:K79DQmMw
=夕刻 バーサーカー陣営=
夕刻、キャスターを葬ったアサシンとリドビィアはすでに次のターゲットを定め、移動を開始していた。そして、リドビィアと手を組むオリアナはすでに行動を始めていた。キャスター討伐の際は時間稼ぎと敵を引き付ける囮になったバーサーカーだが、今回は令呪を使用しての奇襲。下手すればマスターの自分も氏ぬことになるだろう。
オリアナ「ふぅ」
自然にため息が出た。しかし、それも相手の強大さを考えれば無理は無い。確実に気づかれない位置を維持しつつ、魔術を使用して相手の姿を確認する。
その視線の先に白髪の少年と金髪の青年。そう目標は英雄王、ギルガメッシュ。
その緊張の糸をリドビィアからの連絡が切った。
オリアナ「・・・はい」
リドビィア「敵の動きはどうですか?」
オリアナ「今のところは無いわね。楽しくお買い物中よ。あの男、本当にサーヴァントなのかしら」
リドビィア「油断はなりません。彼と正面から戦えば、バーサーカーとアサシンでは敵にもなれません」
オリアナ「わかっているわよ。そっちの準備はできたのかしら」
リドビィア「えぇ。襲撃をかけます。成功し次第そちらも攻撃を」
210: 2015/05/27(水) 23:11:58 ID:K79DQmMw
オリアナ「わかっているわ。そして、失敗したときは-」
リドビィア「どちらかが、あれを発動します。目的は何としても叶えましょう」
オリアナ「えぇ。監視に戻るわ」
リドビィア「えぇ。神のご加護を」
通信が切れる。オリアナは深く息をつき。彼らに意識を集中させた。
リドビィア「・・・アサシン。準備は良いですね?」
真アサ「はい。修道女殿」
211: 2015/05/27(水) 23:12:42 ID:K79DQmMw
リドビィアの作戦はキャスターを襲った時と同様のバーサーカーとアサシンの同時攻撃だった。しかし、その内訳は大きく異なる。キャスターを相手にしたときは圧倒的な戦力的な有利にたっていた。実際にバーサーカーはあくまでキャスターをおびき出す囮であり、もしそれがなかったとしてもアサシン一騎で十分にキャスターは倒せただろう。
しかし、今回はその逆。アサシンとバーサーカーが束になっても。いや、最古の英雄王が本気で自身の宝具を全開で使えば。聖杯戦争で彼を除く全てのサーヴァントが手を組んでも英雄王に傷をつけることさえ難しいのかもしれない。
そのためにも、彼の隙、慢心をつくことが唯一の勝機だった。
作戦ではアサシンがマスターを殺害、アーチャーの単独行動スキルであってもマスターを失ったことによる魔力の乱れは強大な隙になる。そこをバーサーカーと令呪を使用して移動させたアサシンが襲撃するというものだ。
タイミングさえ合えば、作戦は成功する。オリアナの監視がバレないうちに何としてもマスターを・・・・・・。リドビィアは祈る。
その祈りが、全くの的外れとも知らずに。
212: 2015/05/27(水) 23:13:20 ID:K79DQmMw
真アサ「・・・・・・」
アサシンはすでに土御門を捉えていた。建物には結界は張ってあったが、キャスターのものに比べると当然ではあるが数段落ちる。無論何者にも気づかれずにマスターである土御門の背後をとっている。
魔力の動きなどで気がつかれては意味がないので宝具は使わないほうがいい。距離としてはダークでの攻撃が十分に届く範囲であったが、令呪を絶対に使わせてはいけない。投擲と共に自分自身が止めを指すのがいいだろう。
―ザッ!―
アサシンは背を向け座る土御門に向かってダークを投げると同時に土御門の無防備な背に飛びかかった。
213: 2015/05/27(水) 23:14:06 ID:K79DQmMw
―ザシュ!!―
アサシンの耳が音を聞く。肉の切られる音。しかし、それは自分の攻撃がマスターの命を奪ったものではなかった。
真アサ「ア、アガ、ガガガ」
土御門はゆっくりと立ち上がると壁に張り付けにされた。アサシンを見つめる。
土御門「やっと掛かったか。待ちくたびれたにゃー」
そして、その土御門の背後から。アサシンの攻撃を弾き飛ばし、宝具である右腕を張り付けにしている三本聖剣の持ち主が姿を現す。
ギル「元春、我の時間を借用しておいてかかったのがこの程度の虫。我の宝物の格を落とすつもりか?」
214: 2015/05/27(水) 23:14:39 ID:K79DQmMw
土御門「そうは言ってもこっちのサーヴァントは英雄王ただひとりなんだ。この程度は臣下のために動いてくれてもいいだろう」
ギル「ふん、臣下であるならもう少し礼節を持つことだな。そうでなければ道化として我を興じさせることだ」
土御門「はいはい。わかりましたにゃー」
真アサ「な、なぜ・・・。お前がここに!」
―ザシュ!―
アサシンの左足に槍が刺さる。
真アサ「グアァァァ!」
ギル「我は発言を許可していない。さて、場合によっては交渉と言っていたがどうするのだ?」
土御門「・・・すでにアレイスターの目的はわかっている。こいつから引き出すものは何もない」
215: 2015/05/27(水) 23:15:19 ID:K79DQmMw
ギル「そうか・・・。ん?」
ギルガメッシュが顔を向けるとアサシンの姿は無かった。正確にはそこにあったのは消えていく右腕と左足。暗殺者のサーヴァントは姿を消していた。
土御門「令呪を使ったようだな。しかし、もういい。この聖杯戦争を始めた奴に会いにいく」
ギル「ほう、茶番も終幕か。少々惜しい気にもなる」
好きなことを言うギルガメッシュを横目で見つつ土御門はため息をついた。
土御門「とりあえず、一方通行と海原に連絡を入れておこう。特に海原には面倒な役目を押し付けてしまったからな」
その言葉にギルガメッシュは笑い出す。
ギル「何を言う?王の影武者など最高の誉れではないか」
217: 2015/06/01(月) 23:45:42 ID:RGb1aYMY
=学園都市 大通り=
―ピッ―
一方通行は土御門からのメールを確認すると、となりの男に話しかけた。
一方通行「任務完了。罠は成功だってよ」
その言葉を聞くと、隣の金髪の青年は息をついて一方通行に笑いかけた。
?「やっとですか・・・・・・。良かったです」
次の瞬間、高慢な顔つきをしていた金髪の青年は、真の姿である魔術師エツァリとなる。
一方通行「それにしたってェ。よくあいつが許したなァ。身代わりなンて」
海原「許してませんよ。土御門は令呪を使用したのです。自分の魔術には変装の対象者の協力が必要ですので」
一方通行「ハァ・・・。ご苦労なこったァ」
海原「合流の指示が出ているのでしょう?行きましょう。・・・先程から感じていた殺気も消えていますし」
218: 2015/06/01(月) 23:46:23 ID:RGb1aYMY
土御門とギルガメッシュはすでに学園都市の夜に消えていた。この度の聖杯戦争、それを終わらせるために。
そして、その時敗北した、リドビィアも移動を開始していた。間一髪を令呪で撤退させたアサシンを連れている。片手片足とは言え、護衛としてはまだ役に立つ。
すでに聖杯は諦めたリドビィアはオリアナと合流するために学園都市の路地を急ぐ。口を噛み締めながら今回の失態を悔やんでいた。しかし、それさえ神の啓示と彼女は捉える。
まぁいい。聖杯が手に入らなくとも目的は達成できる。かつて学園都市で行おうとした儀式。使徒十字ではやはり力が足りなかったのだ。今度こそあれを発動させる。
彼女の目的を知り、阻止しようとするものは居なかった。阻止しようとするものは。
219: 2015/06/01(月) 23:47:15 ID:RGb1aYMY
=学園都市 マンション=
マンションの一室、佐天涙子はベッドからゆっくりと起き上がった。そして、シャワールームに向かう。冷たい水が頭から降り注ぐ。サーヴァントを失ってからのことはほとんど覚えていない。
初春たちに連れられて。家に戻った。
温かい飲み物を渡された。
たくさん慰めてもらった。
でも、一人になりたかった。
そして、寝て。
今、起きた。
佐天「ふぅ・・・・・・」
―パンッ!!!―
自分で自分の両頬を強く強く叩いた。目が冴える。彼が目の前でやられてから、周りは放心しているように見えたのだろう。実際、ショックは大きすぎた。でも、ずっと考えていた。ここまでのどうやって帰ってきたのかわかんなくなるほど考えて、考えて。寝ている間も考えていたように思う。
それで答えが出たかと言うと、出ていない。きっと出ないんだろう。でも、出ないのならやりたいようにやろう。それが、佐天の選択だった。
佐天「よし!」
制服に着替えて、バットと一緒に、彼と出会うきっかけになった鉄の棒も持つ。靴はスニーカー。決して振り返らないよう。思いっきり。扉を開いた。
マンションの一室、佐天涙子はベッドからゆっくりと起き上がった。そして、シャワールームに向かう。冷たい水が頭から降り注ぐ。サーヴァントを失ってからのことはほとんど覚えていない。
初春たちに連れられて。家に戻った。
温かい飲み物を渡された。
たくさん慰めてもらった。
でも、一人になりたかった。
そして、寝て。
今、起きた。
佐天「ふぅ・・・・・・」
―パンッ!!!―
自分で自分の両頬を強く強く叩いた。目が冴える。彼が目の前でやられてから、周りは放心しているように見えたのだろう。実際、ショックは大きすぎた。でも、ずっと考えていた。ここまでのどうやって帰ってきたのかわかんなくなるほど考えて、考えて。寝ている間も考えていたように思う。
それで答えが出たかと言うと、出ていない。きっと出ないんだろう。でも、出ないのならやりたいようにやろう。それが、佐天の選択だった。
佐天「よし!」
制服に着替えて、バットと一緒に、彼と出会うきっかけになった鉄の棒も持つ。靴はスニーカー。決して振り返らないよう。思いっきり。扉を開いた。
220: 2015/06/01(月) 23:47:45 ID:RGb1aYMY
御坂「・・・・・・こんな夜遅くにお出かけ?」
扉の先には見慣れた廊下ではなく。見慣れた友人の姿があった。
佐天「御坂・・・さん」
御坂だけではない、白井と初春の姿も見える。御坂は怒っているし、白井と初春は心配そうな表情だ。
佐天「・・・ちょっとそこまで。忘れ物を取りに」
御坂「自殺に。じゃないの?」
初春「佐天さん、やめてください。私たち、空き部屋で待機してたんです。佐天さんが・・・。その・・・・・・」
白井「無謀なことをしないように・・・・・・。学園都市の理事会から、学園都市中に連絡が回ってますの。今夜は大規模な実験が行われる。外出などは危険なので控えるようにと」
佐天「あはは。私って幸せですね。こんなに心配してくれる友人がいて。無能力がどうのこうの言うと、バチが当たるかも」
御坂・白井・初春「・・・・・・」
221: 2015/06/01(月) 23:48:26 ID:RGb1aYMY
佐天「でも、退いてください。私はいきます。あの女の人と黒い奴に-」
御坂「いい加減にしてよっ!!私達がモニターで見ててどんなに心配したか分かってる!?」
佐天「それは・・・、分かりません。御坂さん達が、目の前で何もできなかった私の気持ちが分からないのと同じで」
佐天は歩き出す。普段の明るい彼女からは想像もできない気迫の満ちた足取りで。ふと、音が聞こえた。
―バチバチ―
その音を佐天は聞いたことがあった。自分が危ない時に御坂が助けてくれる。その時に聞こえる電撃の音。今は自分に向けられている。
御坂「最後は力ずくでいくわよ」
222: 2015/06/01(月) 23:48:56 ID:RGb1aYMY
佐天「いいです。御坂さんの気がそれで済むのなら・・・・・・」
佐天の目から涙がこぼれた。
佐天「ごめんなさい、こんなことになって。巻き込んで・・・。いっぱい心配かけて、もし私が逆の立場だったら。・・・きっとすごく怒って。すごく悲しい気持ちになるのに・・・・・・」
御坂「・・・・・・」
佐天「でも、このまま。何もしなかったら。私は一生後悔するんです。だから・・・・・・」
佐天は歩き出す。ゆっくりと、御坂の隣を通り過ぎる。
御坂「待ちなさい!」
御坂は佐天の腕を強引に掴む。
御坂「・・・・・・行かせない」
223: 2015/06/01(月) 23:49:43 ID:RGb1aYMY
佐天「・・・・・・」
御坂「・・・一人でなんて」
佐天「御坂さん・・・。でも・・・・・・」
御坂「巻き込んだと思うなら。最後まで連れて行きなさいよ・・・」
佐天「御坂さん・・・」
初春「私も・・・」
佐天「初春・・・」
白井「責任は最後まで果たします。どうやっても引けないようですし」
佐天「白井さん・・・」
佐天は大きく頭を下げた。
佐天「私、悔しいんです。何もできなかったことが。小次郎さんが、奪われたことが。これは、ただのわがままです。でも・・・大切なことなんです。お願いします!力を貸してください!!」
―――――
――――
-――
マンションから四人の少女が出てくる。彼女たちは目が赤くなっているがその目は意思に燃えていた。そして、しっかりとした足取りで最後の戦いに向かったのだった。
224: 2015/06/14(日) 14:15:00 ID:6bytrUBk
―学園都市 路地―
リドビィア「・・・・・・」
リドビィアは焦った心を落ち着けつつ、学園都市の路地を進んだ。儀式を行う場所には、オリアナの方が早く着くだろう。しかし、サポートはあった方が確実。そして、素早い。目立たぬように、路地を早歩きで移動する。
ギルガメッシュと対峙し、敗北したことによるショックは大きい。しかし、目的のためには落ち着かなければ。儀式の発動には冷静さが必要だ。
しかし、そんなリドビィアの眼前に人影が現れる。そして、その人影が自分の知る人物、であることを理解したリドビィアの中に確かな怒りが芽生える。
リドビィア「こんばんは。そろそろ良い子は寝る時間ですので。お帰りになられた方が良いのではないですか?」
怒りを隠しつつ、笑顔で話しかけるリドビィアに対して、佐天は無言で刀を構える。
リドビィア「・・・・・・」
リドビィアは焦った心を落ち着けつつ、学園都市の路地を進んだ。儀式を行う場所には、オリアナの方が早く着くだろう。しかし、サポートはあった方が確実。そして、素早い。目立たぬように、路地を早歩きで移動する。
ギルガメッシュと対峙し、敗北したことによるショックは大きい。しかし、目的のためには落ち着かなければ。儀式の発動には冷静さが必要だ。
しかし、そんなリドビィアの眼前に人影が現れる。そして、その人影が自分の知る人物、であることを理解したリドビィアの中に確かな怒りが芽生える。
リドビィア「こんばんは。そろそろ良い子は寝る時間ですので。お帰りになられた方が良いのではないですか?」
怒りを隠しつつ、笑顔で話しかけるリドビィアに対して、佐天は無言で刀を構える。
225: 2015/06/14(日) 15:08:58 ID:6bytrUBk
リドビィア「・・・・・・アサシン。排除を」
真アサ「御意」
リドビィアの前に現界したアサシンはダークを構え、佐天に向かって投げつける。体を欠損していても、威力は変わらず、弾丸の速度。
――キンッ!!しかし、その攻撃は何者かの攻撃で弾かれる。そして、わずかに動揺したアサシンに向かって佐天は駆け出した。
佐天達に明確な目的はなかった。リドビィアの作戦ももちろん知らない。ただ、あのような形で聖杯戦争を終わらせたくない、というわがままだった。
そのために、初春は学園都市中にハッキングをかけ、リドビィアを見つけ。御坂は路地に隣接するビルから電撃で佐天への攻撃を弾き。白井は危険であればすぐに撤退できるように待機していた。
そして、佐天は「せめて、一矢報いたい」その思いで駆け出した。
佐天「りゃあぁぁ!」
必氏の特攻。佐天は刀を現界した真アサシンに振り下ろす。
226: 2015/06/14(日) 15:09:32 ID:6bytrUBk
――バシッ。真アサシンは特に避けることもなく。その刀を片手で掴む。確かに攻撃を弾かれたのは予想外であった。隙は確かにできていた。しかし、だからといって仮にも英霊であるハサンを倒せることにはならない。
白井「ッ!?」
白井の判断は早かった。佐天の攻撃が防がれた瞬間に瞬間移動の体制に移る。しかし、リドビィアの怒りによる行動はそれさえも凌駕していた。
リドビィア「令呪を使用します。宝具の開放を。愚か者には確実な氏を!」
リドビィアの令呪が輝く。そして、真アサシンの欠損している右腕に光が集まり形を形成した。
227: 2015/06/14(日) 15:22:02 ID:6bytrUBk
真アサ「うおぉぉぉ!」
真アサシンの咆哮。その時、リドビィアは異常に気がついた。令呪が消えないのだ。発動したはずの令呪は未だにその輝きを維持したままである。そして、真アサシンの様子もおかしい。
未だに宝具を発動していない。そして、真アサシンの異常はそれだけではなかった。光は足にも集まり右手と同じよう形を作っていく。
リドビィアは今回の魔力の流れを知っていた。思い出していた。しかし、反応はできない。ただ、ひたすら頭の中が混乱していた。
228: 2015/06/14(日) 15:58:07 ID:6bytrUBk
――刀が止められた瞬間、佐天は覚悟し、目を閉じた。
いざという時は白井が救助に来てくれる予定だったが、間に合わない気がした。全身の感覚が研ぎ澄まされている。
佐天「・・・・・・」
目をつぶったのは、氏の恐怖からではない。氏ぬ寸前の光景が、汚い路地と気持ちの悪い髑髏の仮面ではあまりに切ないからだ。
その瞼の裏では過去が走馬灯のように流れる。両親の顔、弟の顔、友人たちの顔、そしてほんの数日前に知り合った彼の姿も。その姿に後悔と申し訳なさを感じる。そして、最期の時を待つ。
しかし、次の瞬間佐天は右手の熱さと共に、声を聞いた。
?「秘剣・燕返し!」
229: 2015/06/14(日) 15:59:28 ID:6bytrUBk
今回の聖杯戦争は、冬木の聖杯戦争を踏襲している。そのため、呼び出せる英霊は限られていた。本来なら召喚されないサーヴァント、佐々木小次郎の真名で呼び出された彼が今回参戦できたのはその特異性があったからだ。
しかし、その根本が異質な彼はリドビィアの手によって、その肉体を糧に、真アサシン召喚の道具となった。
だが今回、佐々木小次郎はただ召喚されたわけではない。
――聖遺物。佐天が偶然持っていた。あの出来損ないの刀は以前佐々木小次郎が持っていたものではもちろんない。それどころか、侍の手に渡ったことがあったのかもわからない。しかし、佐天の親戚の研究者は、それを剣豪、佐々木小次郎の刀、物干し竿と思っていたという。
まがい者の佐々木小次郎にまがい物の物干し竿。
つまり、今回アサシンのサーヴァントは聖遺物をもって。強い意志によってこの世に召喚されたのだった。
だが、そのような背景も、理由付けも無用のものだった。彼女たちには一つの言葉があれば良い。
――奇跡が起きたのだ。
230: 2015/06/14(日) 16:39:26 ID:6bytrUBk
佐天がゆっくり目を開くとそこには長身の剣士が立っていた。初めて会った時と同じような笑顔で佐天を見下ろす。
アサシン「どうやら、今回は異常の連続のようだ。久しぶりだ。済まなかったな」
佐天「そ、そんな・・・。小次郎さん・・・。なんで?」
アサシン「説明は後にしようか。さて、無駄な殺生は嫌いだが、どうしてもと言うのなら相手をするが?」
アサシンは口を開けて驚愕しているリドビィアを睨みつけた。
リドビィアは必氏に状況を整理しようとするが頭が追いつかない。真アサシンの体が光に包まれたと思った瞬間に3本の剣筋が見えたと思ったら真アサシンは消え去り、あの男が立っていた。そして、令呪は消えている。わかったのは自身の敗北だけだった。
ビリッ-。何やら分からぬ音を聞いてリドビィアは失神した。
その背後から御坂が現れた。
佐天「御坂さん」
アサシン「相変わらず血の気が多いな。もう少し話をしておきたかったのだが」
御坂「訳わかんないけど・・・。また、この前みたいなことなったら大変だからね。一晩寝てもらうだけよ。必要だったら起こす?」
佐天「いや、寝かしておきましょう。それより、小次郎さん!?」
アサシン「何だ?」
佐天「えっ?そんな風に返されるとなんて言えばいいのか困るんですけど」
231: 2015/06/14(日) 16:41:18 ID:6bytrUBk
―ヒュン!瞬間移動とともに初春と白井が現れる。
白井「大丈夫ですか!?佐天さん!お姉さま!・・・そして、あなた本当にあの小次郎さんなんですの?」
初春「また、あの変なのに変身したりしませんよね?」
アサシン「多分大丈夫だろう。心配をかけた。しかし、少し騒ぎすぎではないか?」
御坂「全く、こっちの気も知らないで・・・」
佐天「でも、変わってなくって良かったですよ。再会できるなんて思わなかったし」
白井「そうですの」
初春「そうですよね。あっ、そういえば残り何組残ってるのか知りませんけど、私たちもしかしたら、最後まで残れるんじゃないですか?」
白井「大丈夫ですか!?佐天さん!お姉さま!・・・そして、あなた本当にあの小次郎さんなんですの?」
初春「また、あの変なのに変身したりしませんよね?」
アサシン「多分大丈夫だろう。心配をかけた。しかし、少し騒ぎすぎではないか?」
御坂「全く、こっちの気も知らないで・・・」
佐天「でも、変わってなくって良かったですよ。再会できるなんて思わなかったし」
白井「そうですの」
初春「そうですよね。あっ、そういえば残り何組残ってるのか知りませんけど、私たちもしかしたら、最後まで残れるんじゃないですか?」
232: 2015/06/14(日) 16:45:40 ID:6bytrUBk
アサシン「ふむ、そのことだがな」
佐天「どうかしたんですか?」
御坂「何?弱気になってんの?」
アサシン「少々、この女たちが面白い計画を建てていてな。お前たちには聖杯云々より重要なことだ」
白井「なんですの!?」
佐天「計画って・・・・・・?」
アサシン「まぁ、聞け。――」
アサシンはリドビィアとオリアナの計画を話し始めた。
233: 2015/06/14(日) 17:18:24 ID:6bytrUBk
―学園都市 ビル―
学園都市、アレイスターに会うために土御門とギルガメッシュはビルのエレベーターに乗っていた。
土御門が口を開いた。
土御門「そちらの状況は?あぁ・・・」
エレベーターに乗っているのは土御門とギルガメッシュのみであったが、土御門が話しかけているのはギルガメッシュではない。
会話の相手は外で待機している一方通行だった。現在、このビルには特殊な魔術がかけられており。一般の通信機、魔術による外部との連絡ができない状況にあった。
土御門が連絡できているのは宝具の力である。土御門とギルガメッシュ、そして外にいる一方通行の耳には変わったイヤリングがついている。
遠くの人と連絡を取りたいと思うのは古代も現代も同じだ。それを可能にする宝具がギルガメッシュの宝物庫に無い訳がない。
234: 2015/06/14(日) 17:20:27 ID:6bytrUBk
土御門「・・・・・・とりあえず。外に動きはない。間に合ったようだな」
ギル「ふん、つまらんな。元春、この我が動いてやろうというのだ。この建物ごと破壊すればいい。派手に壊せば、我の鬱憤も少しは晴れる」
土御門「好き放題やっておいてよく言うよ。約束は守ってもらうぞ」
ギル「壊すのは聖杯だけ。その道化回しも頃すな、か・・・。元春、残った令呪を確認しておくことだな。多少、礼を尽くしていたとしても、我が気に入らなければ意味などは無い」
土御門「分かっているさ英雄王。あと少しの辛抱だ。アレイスターがやろうとしていることが予想通りだったら。あなたにだって影響が出るだろう」
ギル「ふん、まぁ。元々、興の乗らない茶番だった。楽しめたほうか」
土御門とギルガメッシュを乗せたエレベーターはゆっくりと降りていく。そんな二人をアレイスターは不敵な笑顔で待っていた。
235: 2015/06/17(水) 21:53:59 ID:OQlJw.G2
―学園都市 広場-
学園都市のとある広場。オリアナ=トムソンはある十字架の前に立つ。その十字架こそが、リドビィアの奥の手にして最後の宗教兵器だった。
オリアナはおもむろに自身の魔術「速記原典」を発動させる。火球が現れ、十字架を襲う。十字架の一部が焼け焦げ、崩れる。しかし、次の瞬間崩れた破片が十字架に戻り、元の形となった。
オリアナは十字架の特性である自己修復能力を確認すると静かに笑う。上条当麻がいない今、これを破壊できる人間などアレイスターくらいではないだろうか。
オリアナ「……」
しかし、オリアナはその考えを打ち消した。破壊できる魔術師はアレイスターくらいかもしれないが、現在学園都市には英霊であるサーヴァントが召喚されている。残っているのは自身が使役しているバーサーカー、セイバー、アーチャー、そして―。
オリアナ「リドビィアのアサシン……。だったはず、なんだけど。…お姉さん、困っちゃうわ」
オリアナの視線の先には悠然と歩いてくる。アサシン、佐々木小次郎と佐天涙子の姿があった。
236: 2015/06/17(水) 22:45:59 ID:OQlJw.G2
アサシン「さて、祭りも終盤だ。初戦の雪辱を晴らしたいのだが、異存はあるまいな」
アサシンはゆっくり物干し竿を構える。その表情は晴れやかな笑顔だった。
佐天「それのことは聞きました。……破壊させてもらいます」
佐天はアサシンの背後に立つ。その顔には強い意志が現れていた。
オリアナ「……ふぅ。いいわ、起きなさい!バーサーカー!」
オリアナの前方にバーサーカーが現れる。オリアナとの魔力の連結は弱まっているものの、明け方までなら全力で戦っても消えることは無いだろう。宝具の使用には令呪を使う必要があるが……。
バーサーカー「!!!!!!!!!」
アサシン「礼を言うぞ、狂戦士。今回は部外者はいない、互いに全開を出そうではないか」
237: 2015/06/17(水) 22:46:33 ID:OQlJw.G2
佐天「小次郎さん……」
佐天は言葉に詰まる。御坂たちはここには来ていない。それは、彼女たちが体力的に限界をむかえていたからであり、サーヴァント同士の戦闘では無力だからである。つまり、自分たちが負ければオリアナを止めることが出来る者はいない。
それなのに、アサシンは随分楽しそうだ。文句の一つも言うべきなのかもしれない。そう思いつつも、佐天の口から出たのは文句とは正反対の言葉だった。
佐天「小次郎さん……」
アサシン「何かな?」
佐天「存分に、後悔無いよう戦って下さい。手は出しませんから」
アサシン「無論。中々の好敵手だ。ここで、楽しまなければな」
佐天「あ、当然ですけど勝って下さいね」
アサシン「もちろん、そのつもりだが。絶対は無いな。その時はどうする?」
佐天「ご心配なく」
アサシン「おや、何やら策があるのかな?」
佐天「小次郎さんが負けても、私が戦います。あの十字架を壊せばいいんだから、きっとできますよ」
アサシン「……ふふふ。そうか、ならば安心だ」
アサシンは穏やかに笑う。佐天もそれに答えた。二人の間には他に例えることのできない不思議な信頼関係が築かれていた。
238: 2015/06/17(水) 22:47:38 ID:OQlJw.G2
オリアナ「……」
オリアナは二人の様子を見ながら、状況を解析していた。なぜ、このアサシンが存在できているのかは分からないが、リドビィアは無事ではないようだ。生氏は分からないが今は戦闘に集中する。こちらの手札は自分の魔術と二つの令呪。
相手のマスターは魔術師としては最低のレベル、彼女を狙うこともできるがこちらが不要に動いて十字架がサーヴァントに壊されては意味がない。
ならば、サーヴァントの戦闘に集中し、サポートをする方が良いだろう。アサシンは技量はあるものの、それ以外の面ではバーサーカーが圧倒している。ならば―。
オリアナ「令呪を持って命ずる。バーサーカー!魔剣を!」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーの咆哮と共にその手に彼の真の宝具、「無毀なる湖光(アロンダイト)」が握られる。
最初から全力で圧倒的な力でねじ伏せる。オリアナは合理的かつ、シンプルな方法を取った。
アサシン「さぁ、始めよう!」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
アサシンとバーサーカーは共に駆け出した。そして、強烈な衝撃を生み出し、広場の中央で衝突した。
239: 2015/06/18(木) 00:15:35 ID:CYgytB1w
戦闘が始まり、オリアナは混乱した。二騎のサーヴァントの実力が拮抗していたからだ。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーの一閃がアサシンの頭めがけて振り下ろされる。
しかし、アサシンはそれを最小の力で受け流す。そして、わずかな隙を確実に攻め立てるのだ。
オリアナ「…ッ!」
オリアナは歯を食いしばる。完全に予想外の展開だった。初戦の時と比較して、確実にアサシンは強くなっている。
バーサーカーと前回一度戦ったことで手の内がある程度読まれていること。リドビィアの魔力が残っていること。この戦いに全身全霊をかけていること。
オリアナの推測した、いくつもの要因の中。オリアナは一番大きな要因をこう考えた。
―――変化はマスターにある。
実際、アサシンの戦闘を見守る少女はまるで歴戦の魔術師のような落ち着きを持ちつつ、周囲への警戒さえしているように見える。手に持った武器はただのバットのようでそれは、滑稽であるものの殺気さえ感じるほどだ。
240: 2015/06/18(木) 00:16:12 ID:CYgytB1w
オリアナ「馬鹿な……」
どのような分野でも天才はいる。強烈な経験が人を急激に成長させることもあるだろう。しかし、いくらなんでも……。
オリアナ「……」
オリアナはゆっくりと「速記原典」を発動させた。バーサーカーの戦闘に注意を払いつつ、マスターの佐天のみを狙う。
オリアナの目の前に現れた空気の塊は回転を始める。そして、バーサーカーとアサシンの戦闘を避けるような軌道を描きながら佐天に向かっていく。
空気の球の破壊力は大きくは無い。しかし、気づかれにくく避けにくい。空気の球は音もなく佐天の頭部を襲う。
佐天「!?」
―――ボシュ!!それは空気がぬけた音だった。佐天は自身を襲う不可視の攻撃を見事に破壊して見せたのだった。
241: 2015/06/18(木) 00:16:48 ID:CYgytB1w
―――シュタ!
アサシンは一旦バーサーカーと距離を取った。佐天の方を向きもせず。視線はバーサーカーに注がれている。
アサシン「何かあったか?」
佐天「いいえ、何も……」
佐天はバットを構えながら言う。
その光景見ていたオリアナは一つの決定を下した。あのマスターを狙うことはやめる。という決定だ。
やはり、魔術師としてあの少女は最低ランクである。あの攻撃の対応がそれを物語っている。しかし、サーヴァントとの契約によって魔術回路に異常が起こり、感覚や身体能力に変化が起きている可能性がある。
そのような、未知の存在を相手にしての戦闘は自分の本分ではない。さらに、アサシンも彼女も完全な捨て身の形だ保身に走っては勝てない。
オリアナは令呪を通してバーサーカーに意識を集中する。完全に切れてしまったと思った魔力のパスは、令呪を使用した時に多少つながった。一時的なものだろうが今はそれで十分。
オリアナ「……バーサーカー。全力で行きましょう」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!」
今まで以上に大きいバーサーカーの咆哮。それを、アサシンと佐天は強い視線で受け止めた。
242: 2015/06/21(日) 02:02:12 ID:HqDQbzRI
オリアナ「やりなさい!バーサーカー!!」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
咆吼と共にバーサーカーはアサシンに向かって突進する。「無毀なる湖光」を大きく振りかぶりアサシンめがけて振り下ろす。
しかし、アサシンはバーサーカーの一撃を紙一重で避けると瞬時に攻撃に移る。しかし-。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
アサシン「クッ!」
バーサーカーは体制を立て直そうとはせずに、崩れた体制のまま再び攻撃を開始する。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーの連撃はその一つ一つが必殺の一撃。アサシンもうまく攻撃をいなしていくものの、徐々に押され始めた。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
243: 2015/06/21(日) 02:02:44 ID:HqDQbzRI
アサシン「クッ!」
佐天「小次郎さん!」
オリアナ「止まらないで!!バーサーカー!」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
アサシン「なっ!?」
バーサーカーの一撃を受け切れず、アサシンの体制が大きく崩れる。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
剣を両手で持ち振り下ろす、バーサーカーの渾身の一撃。
アサシン「グッ!?」
ドゴン!!その衝撃は地面に小さなクレーターを作り、アサシンの体を佐天の足元まで吹っ飛ばした。
244: 2015/06/21(日) 02:03:27 ID:HqDQbzRI
佐天「小次郎さん!!」
アサシン「全く・・・。狂戦士の力、あれ程とはな」
佐天「傷が・・・・・・」
バーサーカーの攻撃を避けきれずについた傷がアサシンの胸についていた。
アサシン「何、服と皮が一枚切られただけだ。まだこれからよ。しかし、つくづくバーサーカーにするには惜しい英霊だ。技量には自身があったのだが、その看板も下ろさねばならないかな」
佐天「小次郎さん・・・・・・」
アサシン「わかっているさ。そろそろ、だろうな」
アサシンはゆっくりと立ち上がると、なぜか追撃をしてこないバーサーカーに向き合った。
アサシン「実に、楽しい戦いだったが、幕を下ろすこととしようか。狂戦士」
アサシンはバーサーカーに向かって駆け出す。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーはアサシンが刀を使い、力を逃せないように強力な一閃を放った。再び両手に剣を掴むと横に大きく振り切った。
245: 2015/06/21(日) 02:04:04 ID:HqDQbzRI
オリアナ「なっ!?」
しかし、バーサーカーの選択は意味のないものとなった。アサシンは攻撃を刀で受けようとはしなかったからだ。--アサシンは跳躍したのだ。
バーサーカーの攻撃が空を切った瞬間、地面に着地したアサシンは必殺の構え。バーサーカーに向かって秘剣を放つ。
アサシン「秘剣・燕返し」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーは体制を立て直しながら、自らの魔剣を盾に防御の体制を取る。
しかし、燕返しは空間を捻じ曲げ三撃を同時に召喚する技。平坦では回避はまず不可能、バーサーカーは背後に避けることもできなかった。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
燕返しによって、魔剣が大きく弾かれた。
アサシン「馬鹿な!!」
しかし、バーサーカーは健在。武器を失ったものの傷はついていない。燕返しは狂戦士に当たらなかったのだ。
アサシン「だが!」
アサシンは状況を理解できないまま、再びバーサーカーに斬りかかる。武器を持たない騎士ではこの一撃は避けられまい。
246: 2015/06/21(日) 02:04:52 ID:HqDQbzRI
オリアナ「バーサーカー!!」
しかし、武器は彼女が用意していた。十字架を離れバーサーカーの近くまで移動していたオリアナの口には小さな紙片。
オリアナの声と同時に魔術「速記原典」が発動した。バーサーカーの足元の地面がわずかに隆起し、剣の柄のような形となる。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーは咆吼と共にその柄を掴むと引き抜く。引き抜いた物は土でできた剣。それは、偶然にも彼の国に伝わっていた。王を選定する聖剣のような形をしていた。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
宝具となった土の剣はアサシンの腕を切りつけ侍の腕を切り落とした。彼の愛刀である物干し竿は大きな弧を描いて飛んで地面に落ちた。
アサシン「・・・なるほど」
そして、自分が斬られる感覚と共に、アサシンは自身の敗北の理由を知った。
アサシン「地の利を得ていたか」
バーサーカーが燕返しを避けることができた理由。それは、地形が大きく関わっていた。燕返しが回避不能となるのは平坦の状態のみ、バーサーカーは燕返しを避けるのに、自らの攻撃で作った地面のクレーターを利用したのだ。
247: 2015/06/21(日) 02:05:45 ID:HqDQbzRI
アサシン「卑怯・・・。などとは言わんよ。実に巧い。完敗だ」
オリアナ「残念だったわね」
オリアナは息をつき、消えかけているアサシンに語りかける。
アサシン「ふっ、確かに私は負けはした。しかし――」
オリアナ「しかし?」
アサシン「最期に教えてやる。我が主はな。可愛らしい小鳥に見えて、中身は鋭い爪を隠した猛禽のたぐいぞ。目を離すと、首を切られる」
不敵に笑うアサシンの言葉を聞きつつオリアナは必氏にマスターである佐天を探していた。
しかし、視線の先、たっていたはずの場所にはその姿は無い。オリアナは嫌な予感を感じつつ自らの背後、十字架の方向を見る。
オリアナ「!?」
――いた。佐天涙子は物干し竿を構え、十字架の前に立っていた。
248: 2015/06/21(日) 02:48:08 ID:HqDQbzRI
佐天が走り出したとき、彼女は何も考えていなかった。アサシンとバーサーカーの激突の前に、オリアナは移動をしていた。佐天の目には守る者のいない、十字架が見えた。
だから、駆け出した。気がついたら走り出していたのだ。戦闘はアサシンに任せる約束だった。自分ができるのはそれを見守ること。アサシンにはああ言ったが十字架の壊し方などわからなかった。
でも、足が駆け出してしまったのだから、止まることは許されない。
走っている途中、目の前に見慣れた刀が落ちてきた。なぜそれが、ここにあるのか。考えることもはできなかった。自然な動きで走りながら、地面に刺さったそれを引き抜き、駆け出す。
佐天「はぁはぁ」
学校ではしたことのないような全力疾走で、佐天は十字架の前に立った。
佐天「・・・・・・」
だから、駆け出した。気がついたら走り出していたのだ。戦闘はアサシンに任せる約束だった。自分ができるのはそれを見守ること。アサシンにはああ言ったが十字架の壊し方などわからなかった。
でも、足が駆け出してしまったのだから、止まることは許されない。
走っている途中、目の前に見慣れた刀が落ちてきた。なぜそれが、ここにあるのか。考えることもはできなかった。自然な動きで走りながら、地面に刺さったそれを引き抜き、駆け出す。
佐天「はぁはぁ」
学校ではしたことのないような全力疾走で、佐天は十字架の前に立った。
佐天「・・・・・・」
249: 2015/06/21(日) 02:48:47 ID:HqDQbzRI
彼女は自然に構えた。物干し竿を両手に掴み、対象に背中を見せるように。
佐天「・・・・・・秘剣」
その口は自然にその名を呼ぶ。
その技を見たのは何回だろう。目に焼き付くほど、見たわけでは無い。
でも、心には焼き付いている。
手の甲の令呪は熱く、消えかけていた。でも、それ以上に全身が熱い。目の前には十字架、切る場所はわかっていた。
佐天「燕返し」
その瞬間、佐天の放った剣筋は空間を捻じ曲げ、三本の軌道で十字架を切り刻む。そして、十字架が再生することは無かった。
佐天「・・・はぁ」
佐天はその場に座り込んだ。全身から力が抜けて、どうやっても力が入らない。立てるかどうかさえ。
250: 2015/06/21(日) 02:50:15 ID:HqDQbzRI
佐天「グッ」
しかし、佐天は立とうとした。令呪が無いのはわかっていた。それでも、振り向いたら彼が笑っていてくれるようなそんな気がしたから。
佐天「あっ・・・」
佐天の目の前にサーヴァントが立っていた。狂戦士、バーサーカーは佐天を、感情の読めない兜越しに見下ろしていた。
佐天「グッ」
佐天は力の入らない体を動かし、刀を構えようとした。しかし、その手は無残に刀を落とした。同時に佐天は前向きに倒れ込む。
ガシッ。それを支えたのはオリアナだった。
オリアナ「随分無茶したのねぇ。魔術回路もボロボロ。もう使えなくなってるかも」
佐天「あ、あの・・・・・・。なんで・・・」
オリアナは佐天を座らせと、ペットボトルに入った水を差し出した。
251: 2015/06/21(日) 02:51:05 ID:HqDQbzRI
オリアナ「流石に、こんなことやられちゃねぇ。お姉さんの完敗。これも壊されちゃったし、バーサーカーも消耗しすぎて残り数時間も持たない。こんな状況でお嬢ちゃんを頃す様な女じゃないわよ。お姉さん」
佐天「あ、あり・・・が・・・・・・」
オリアナ「休みなさい。大丈夫だから。あなたのサーヴァントも、あなたのことは褒めてたわよ」
佐天「そう・・・で、すか・・・・・・」
佐天は倒れるように眠った。
オリアナ「さてと・・・・・・。何!?この魔力?」
ドゴゴゴ。その瞬間!学園都市の都心部から巨大な光の柱が立ち上がったのをオリアナは見た。
252: 2015/06/29(月) 00:22:44 ID:imVB2FE2
―学園都市 某ビル―
広場でアサシンとバーサーカーの戦いが始まっていた時。土御門とギルガメッシュはアレイスターと向き合っていた。部屋の中には不気味に蠢く肉塊が置かれている。
真剣な表情の土御門に対して、楽しそうな声でアレイスターは話しかける。
アレイスター「何の用だ?まだサーヴァントは残っているぞ」
土御門「聖杯か・・・・・・。残念だが、アレイスターこの聖杯戦争は終わりだ」
アレイスター「なぜ?参加者の望みを無下にする資格が、お前にあるようには思えないが?」
土御門「確かに無いな。だが、召喚されるのがまともな聖杯でないのなら話は別だ。それどころか、お前は聖杯をこの地に召喚するつもりもないんだろう」
アレイスター「おかしなことを言う。では、何のために私がこのような場を用意したと?」
土御門「英霊の座」
土御門の言葉にアレイスターの表情がわずかに変化した。
土御門「聖杯戦争の際に、呼び出される前の英霊たちが存在する場所。人の手に届かない世界の記録装置」
アレイスター「それをどうしようと?」
土御門「最終的な目的はわからないが。アレイスター、お前は英霊の座をこの学園都市に堕ろすつもりだな」
アレイスターは笑い出した。部屋の中に声が響く。
253: 2015/06/29(月) 00:24:58 ID:imVB2FE2
アレイスター「思っていたより早かったな。いつかは気づかれるとは思ったが」
土御門「この世界の、過去、現在の英霊たちが存在する。神域との接触だ、何を考えているが知らないが、下手すると世界そのものが崩壊する」
アレイスター「ほう、ではどうする?」
土御門「ギルガメシュ」
土御門の声を聞き、つまらなそうな表情で立っていたギルガメッシュは宝具を一瞬展開する。
ザシュ――。目にも止まらぬ速さで宝剣が放出され、肉塊を跡形もなく消し去った。
土御門「悪いがこれで・・・・・・。何が可笑しい?」
アレイスターの笑いの理由をギルガメッシュは不愉快な声で説明した。
ギル「元春、やはり役者としての腕は奴の方が数段上の用だ。我の潰した肉塊、あれは聖杯の器では無い」
土御門「なんだと!?」
ギル「人造人間に近いものではある。聖杯の核はあれに入っていたのかもしれぬ。しかし今は僅かな魔術回路を持つ、みすぼらしい肉に過ぎなかったようだ」
土御門「では、聖杯は・・・・・・」
アレイスター「既にここにはない。しかし、すぐに姿を現す」
254: 2015/06/29(月) 00:25:35 ID:imVB2FE2
土御門「何を言って・・・・・・」
アレイスター「先程、4騎目のサーヴァントが聖杯の器に入った。機は熟した」
土御門「!?」
同時に、大きな音が土御門の耳に入る。この部屋にまで響く轟音。そして、土御門の耳にギルガメッシュの宝具を通して一方通行の声が聞こえる。
一方通行「おい土御門ォ!何が起きてんだァ!!」
土御門「クッ。先手を打たれた。外では何が起きてる!」
一方通行「突然、巨大な光の柱が・・・・・・。まるであの時みてェだ」
土御門「あの時!?」
一方通行「九月の事件で――」
土御門「0930事件の!?ヒューズ=カザキリか!?」
土御門はアレイスターを睨みつける。
土御門「ヒューズ=カザキリに聖杯を連結させたのか!?」
アレイスター「いかにも、予想以上に馴染んでいるようだ」
255: 2015/06/29(月) 00:26:12 ID:imVB2FE2
土御門「ギルガメッシュ!!外に出るぞ!」
ギルガメッシュ「ああだこうだと五月蝿い男だ」
踵を返し歩きだそうとするギルガメッシュと土御門の背中にアレイスターは声をかける。
アレイスター「それを、私が許すとでも?」
ギルガメッシュ「許さないとどうなる?せっかく拾った命、むざむざ捨てることも無いと思うが?」
ギルガメッシュは軽蔑の眼差しでアレイスターを睨みつける。
土御門「やめろ!アレイスター。こいつの力をお前だって知っているだろう」
アレイスター「無論、最古の英雄王に勝とうとは思わない。それに――」
アレイスターの眼前の床に円形の光が集結しだした。土御門はそれが英霊召喚の魔方陣だと瞬時に気がつく。
アレイスター「サーヴァントの相手はサーヴァントに任せるとしよう」
256: 2015/06/29(月) 00:26:59 ID:imVB2FE2
土御門「ギルガメッシュ!攻撃を!」
あせる土御門の声をあざ笑う声で、ギルガメッシュはその命令に答える。
ギルガメッシュ「そう急ぐな。このような状況下で召喚されるサーヴァントだ。我の敵ではなかろう。その無様さを笑うのもまた一興よ」
土御門「ッ!?また油断を・・・・・・」
アレイスター「流石は英雄王。では、胸を貸していただこう」
アレイスターの眼前にサーヴァントが召喚される。
土御門「!?」
しかし、その姿を見て土御門は安堵した。召喚されたのは英霊には違いないが、明らかに魔力が不足している。
姿は細身に金髪の美青年であるが、意識は無いようだ。宝具も使用できる状態とは思えない。
?「!!!!!!!!!!!!!」
バーサーカーのような咆哮を上げて、サーヴァントはギルガメッシュに突進する。しかし、それも単調な動きだ。ギルガメッシュは宝具の一撃をもって終わらせるだろう。
―――しかし、土御門の予想は裏切られることとなる。ギルガメッシュは一つの宝具を展開することもなく、敵の攻撃をその体で受け止めたのだ。
257: 2015/06/29(月) 21:36:58 ID:imVB2FE2
ドガッ!大きな音と共にギルガメッシュは背後の壁に強く叩きつけられる。
土御門「ギルガメッシュ!!」
ギル「・・・・・・」
ゆっくりと顔を上げたギルガメッシュの顔には先ほどの余裕は無かった。代わりにそこにあったのは土御門の見たことのない憤怒。そして、視線は敵のサーヴァントではなくアレイスターに注がれていた。
ギル「おのれぇ!!!魔術師風情がぁ!!!」
次の瞬間、宝具「王の財宝」が一気に展開される。しかし――。
?「・・・・・・」
ギル「クッ」
しかし、敵のサーヴァントがその前に立った瞬間、ギルガメッシュは宝具の使用を止める。
?「!!!!!!!!!!!!!!」
再び、敵は咆吼と共にギルガメッシュに襲いかかった。
土御門「ギルガメッシュ!!」
ギル「・・・・・・」
ゆっくりと顔を上げたギルガメッシュの顔には先ほどの余裕は無かった。代わりにそこにあったのは土御門の見たことのない憤怒。そして、視線は敵のサーヴァントではなくアレイスターに注がれていた。
ギル「おのれぇ!!!魔術師風情がぁ!!!」
次の瞬間、宝具「王の財宝」が一気に展開される。しかし――。
?「・・・・・・」
ギル「クッ」
しかし、敵のサーヴァントがその前に立った瞬間、ギルガメッシュは宝具の使用を止める。
?「!!!!!!!!!!!!!!」
再び、敵は咆吼と共にギルガメッシュに襲いかかった。
258: 2015/06/29(月) 21:37:33 ID:imVB2FE2
ギル「グッ!!」
ギルガメッシュも応戦するものの敵に攻撃を加える様子はない。徒手で戦う英雄王を見ることとなろうとは。混乱のまま土御門はギルガメッシュに声をかける。
土御門「何をやっている!?早く宝具を!!」
しかし、土御門の声など気にもせず。それどころか、戦っている敵の姿さえ見ようとせずにギルガメッシュはアレイスターに視線を注ぐ。敵のサーヴァントから、目を逸らすように。
ギル「魔術師ごときが・・・。このような・・・。この男に、我にこれほどの不敬をぉぉぉぉ!!!」
そのギルガメッシュの咆哮も敵の攻撃にかき消される。
しかし、土御門は敵のサーヴァントに思い当たった。
土御門「まさか、あの男は――」
259: 2015/06/29(月) 22:17:48 ID:imVB2FE2
最古の英雄、ギルガメッシュは当時、栄華を極めたウルクの王であった。半神であったギルガメッシュにとって自国の国民、いや自分以外の全ての人間は自分に仕えるべき存在であり、自身と並ぶ存在では無かった。
そんな暴君に神々は泥から一人の人間を創りだした。それがエルキドゥ。英雄王、ギルガメッシュの唯一無二の親友。
ギルガメッシュとエルキドゥは戦いを通してお互いを認め合い。数々の冒険を通して友情を育んだのだ。
しかし、エルキドゥは神々の怒りに触れたことで命を落とすこととなる。ギルガメッシュは親友の氏に涙しながらその体が朽ちるまで、抱きしめ続けたという。そして、ウルクを襲った怪物を倒すときに使用した、神をも捕らえると言われる「天の鎖」にその親友の名をつけた。
もし、アレイスターの召喚した英霊がそのエルキドゥならば、ギルガメッシュの行動は理解ができる。ギルガメッシュにとってエンキドゥは特別な存在だ。そもそも、「王の財宝」の中にある数々の宝具は親友と共におこなった冒険、そして親友を失ったショックから不氏を求める事となった旅の途中で手に入れたものだった。
仮に、エルキドゥが正式なサーヴァントとしてまともに召喚されていれば、英雄王は喜び勇んで戦っただろう。自身の財宝全てを使用して戦うに値する相手だと狂喜したかもしれない。
しかし、アレイスターの策略か、自然にこの状況になったのかはわからないが、エルキドゥはまともな状態ではない。英霊の魂はあるかもしれないが意思はなく、それこそ只の人形のような状態だ。
そのような、親友に英雄王が全力で戦うことはできなかった。彼以外の英霊であれば、涼しい顔で宝具を使用した。彼以外の英霊であればその相手に礼を尽くそうとは思わなかった。しかし、現在彼の前には親友が変わり果てた姿で立ちふさがる。
アレイスターは本来ならば最強クラスの英霊を弱体化させることで、最古の英雄王を無力化したのだ。
260: 2015/06/29(月) 22:44:24 ID:imVB2FE2
土御門「くそっ!」
土御門の視線が自然に手のひらの令呪に移る。残された令呪は残り一つ。使用すればギルガメッシュに強制的に宝具を使用させることもできるだろう。
土御門「!?」
しかし、その考えを強烈な殺気が打ち消す。ギルガメッシュは戦いながらも土御門に視線を向ける。
土御門「くそっ!」
令呪を使用してエルキドゥを倒せたとしても、ギルガメッシュはすぐに消えるわけではない。単独行動のスキルを持つアーチャーのクラスは、マスターからの魔力供給が無くてもしばらく行動できる。
怒りに狂った英雄王はその怒りのままに宝具を使用し、学園都市を廃墟とするだろう。土御門は身動きが取れないでいた。
261: 2015/07/05(日) 00:33:49 ID:nTHmHt5A
―学園都市 大通り―
擬似聖杯の発動、その巨大な光の柱が出現した瞬間、インデックスは瞬時に聖杯戦争と930事件と結びつけ、状況を理解した。――つまり、あの光はあまりに危険なものであり、その下には親友である風斬氷華が、またしてもこの学園都市の道具にされた状態で存在している。というものだ。
本来ならば、すぐにでも彼女を助けるために聖杯の元に急がねばならない。そんなことはわかっていた。サーヴァントのセイバーにも状況は伝えてある。彼女の足であれば数分であの聖杯に到達できる。
しかし、それはできない状況だった。
インデックス「せいばー!!」
セイバー「クッ・・・」
?「””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””!」
セイバーはサーヴァントと戦っていた。
聖杯の元に駆けつけようとする二人の前に現れたのは見たことも無い鎧を付けた騎士のサーヴァントだった。そのサーヴァントには意思がない様であったが、実力は確かでセイバーとの打ち合いを演じている。
擬似聖杯の発動、その巨大な光の柱が出現した瞬間、インデックスは瞬時に聖杯戦争と930事件と結びつけ、状況を理解した。――つまり、あの光はあまりに危険なものであり、その下には親友である風斬氷華が、またしてもこの学園都市の道具にされた状態で存在している。というものだ。
本来ならば、すぐにでも彼女を助けるために聖杯の元に急がねばならない。そんなことはわかっていた。サーヴァントのセイバーにも状況は伝えてある。彼女の足であれば数分であの聖杯に到達できる。
しかし、それはできない状況だった。
インデックス「せいばー!!」
セイバー「クッ・・・」
?「””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””!」
セイバーはサーヴァントと戦っていた。
聖杯の元に駆けつけようとする二人の前に現れたのは見たことも無い鎧を付けた騎士のサーヴァントだった。そのサーヴァントには意思がない様であったが、実力は確かでセイバーとの打ち合いを演じている。
262: 2015/07/05(日) 00:34:28 ID:nTHmHt5A
セイバー「なぜ・・・・・・」
?「””””””””””””””””””””””””””””””!」
セイバーの僅かな隙を謎のサーヴァントが攻撃する。しかし――。
セイバー「ッ!りゃぁああ!!!」
セイバーは目にも止まらぬスピードでサーヴァントの攻撃を回避すると、敵の体を横薙ぎに斬りつけた。
?「””””””””””””””””””””””””””””””””」
ゴンッ!!セイバーの攻撃を自身の剣で防御したものの、衝撃を抑えきれずにそのサーヴァントは大通りに並ぶ店の中に飛ばされた。
インデックス「せいばー。やったんだよ!」
喜ぶマスターの発言をセイバーは否定した。
セイバー「まだです。あの子はあの程度では・・・。それよりインデックス、お願いがあります」
263: 2015/07/05(日) 00:35:16 ID:nTHmHt5A
あのサーヴァントを知っているかのようなセイバーの発言に驚きながらインデックスは答える。
インデックス「何?」
セイバー「聖杯を使用して、私の脚力に強化を。ここで時間をかけるのは得策ではありません。それに――」
インデックス「それに?」
辛そうな表情でセイバーは答える。
セイバー「私は、あの子ともう、戦いたくないのです」
インデックス「それって・・・・・・」
?「””””””””””””””””””””””””””””!」
インデックスの声をかき消す敵の咆哮、インデックスは考える間もなく令呪を発動させた。
インデックスの命令通り、セイバーの肉体には魔力があふれる。
セイバー「・・・インデックス、捕まってください。あの子は多分追ってきます。直接聖杯に向かってはあの子も連れて行くことになる。少し回り道をします」
インデックス「うん」
セイバーは土煙から出てくるその英霊に悲しい視線を投げつけ、大きく跳躍した。
264: 2015/07/05(日) 00:36:34 ID:nTHmHt5A
――シュタ。先程からかなり離れた、とあるビルの上にセイバーは着地した。
セイバー「ここまでくれば、大丈夫でしょう。すぐに聖杯に向かいましょう。インデックス」
インデックス「うん・・・。その前に質問なんだよ。あのサーヴァントはいったい・・・・・・」
セイバーは静かに口を開いた。
セイバー「一目見て分かりました。あの子は私の罪なのです。円卓の騎士の一人、真明は―――」
しかし、そのセイバーの告白をインデックスの悲鳴が止める。
インデックス「きゃあ!せいばー!!」
セイバー「なっ!?」
令呪を使い、振り切ったはずの先ほどのサーヴァントがいつしかその場に立っていた。
?「”””””””””””””””””””””””!」
困惑するセイバーとインデックスに襲いかかる凶刃。
セイバー「ッ!?」
かろうじてセイバーの防御が間に合う。そして、セイバーの口からは悲痛な叫びが。
セイバー「あなたは、そんなにも私を・・・・・・。答えてください!モードレット!」
モードレット。アーサー王の息子でありながら、祖国とアーサー王の命を奪う原因となった反逆の騎士がインデックスとセイバーの前に立ちふさがった。
265: 2015/07/06(月) 22:22:37 ID:.vR7Jyx6
キンッ!!―その、剣と剣の打ち合いがどこか寂しく響く。
セイバー「クッ!」
モードレット「”””””””””””””””””””””””!」
声にならない、モードレットの叫び。それは父に対する憎しみか、あるいは本人の意思で戦っていないこの状況に対する救済を求める声なのかはセイバーには理解できない。
しかし、今自分がやるべきことはただ一つだった。
セイバー「・・・・・・」
セイバーはモードレットの攻撃を弾くと距離を置いた。そのセイバーの背中にインデックスが声をかける。
インデックス「せいばー!令呪を」
セイバー「いえ、必要ありません。今は宝具を使用する場面ではありません。大丈夫です。・・・・・・今の私はあなたの剣です。この子のためにもこの勝負、すぐに終わらせます」
そう言うとセイバーは聖剣を構えモードレットに斬りかかる。――と、轟音と共にセイバーとモードレットの間に光の球体がどこからか飛び込んだ。
光が徐々に消えていき、それが何か理解した瞬間、セイバーは絶望した。
セイバー「そんな・・・・・・。ランスロット・・・。あなたまで・・・」
光が消えたその場所には、裏切りの騎士。バーサーカー、サー・ランスロットの姿があった。
266: 2015/07/06(月) 23:50:46 ID:.vR7Jyx6
―数分前 学園都市 某広場―
光の柱が出現した光景を見たオリアナは素早く行動した。佐天を安全な場所に移すと、空間がわずかに歪んでいるという状況を把握、装備を整えると移動を開始した。
オリアナ「と、その前に・・・・・・」
オリアナは自分の手に薄く光る令呪に目を落とす。そして、目線の先に立つ自身のサーヴァントに話しかけた。
オリアナ「残念だけど、この先あなたの仕事はないわ。この空間だと、あなたが敵の操り人形になる可能性もあるの」
オリアナは令呪をバーサーカーに向かって差し出した。
オリアナ「まぁ、わざわざ自害を命じなくても、今の状態ならこの令呪が無くなれば消滅するでしょう・・・・・・。何?」
バーサーカー「・・・・・・」
沈黙するバーサーカー。意識のないはずの使い魔、しかしその兜の下の眼は何かを訴えているようだ。
オリアナ「まぁ、ここまで忠実に動いてくれた貴方を、最後まで道具のように捨てるのもひどい話ね・・・・・・」
オリアナの令呪が最期の光を放つ。
オリアナ「令呪をもって命じます。バーサーカー!あなたの向かうべき場所へ!最期の時を自由に!」
バーサーカー「・・・・・・」
バーサーカーが光に包まれた瞬間、頭を下げ、オリアナに礼をしたような気がした。しかし、きっと気のせいだろう。オリアナは意識を切り替え走り出した。
267: 2015/07/13(月) 22:43:01 ID:ocghlspw
―ビル屋上―
セイバー「クッ・・・・・・」
ランスロットの姿を確認したセイバーは瞬間的に、インデックスの前に移動し、剣を構えた。この場で戦うにしろ、逃げるにしても状況は悪くなった。いかに自分といえど、二騎の英霊を相手に無事では済まない。
セイバーは唇を噛み締め、モードレットとランスロットを睨みつける。
僅かな沈黙のあと動いたのはバーサーカー、サー・ランスロット。
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
咆吼と共に、その手に握られた剣を振り下ろす。
セイバー「えっ!?」
セイバーは目の前に広がる光景を理解できなかった。ランスロットが攻撃を仕掛けたのは自分ではなくモードレットだったからだ。
セイバー「ランスロット・・・・・・。あなたは・・・・・・」
268: 2015/07/13(月) 23:22:27 ID:ocghlspw
―――世界で最も有名な騎士譚、アーサー王物語。その中で、アーサー王率いる円卓の騎士団は、時に国に攻め入る蛮族に立ち向かい、時に聖杯を求める冒険を行い、時には伝説の竜種との戦い、華々しい伝説を残した。
しかし、その物語の最後はその華々しさとはかけ離れたものだった。円卓の騎士団を裏切ったランスロットは海を渡り、そこで土地を治める王となった。そんなランスロットを他の円卓の騎士たちが許すはずもない。アーサー王は興奮する円卓の騎士たちを抑えることができなかった。
アーサー王は息子のモードレットに国を任せると、ランスロットの治める土地に攻め入った。しかしその直後、モードレットは父であるアーサー王に反逆したのだ。
混乱の中、アーサー王は軍を引き上げ、自分の国を取り戻すためにモードレットの率いる軍との戦闘に入った。そして、ランスロットの元には亡霊となった円卓の騎士、ガウェインが現れ、救援を求めたという。
ランスロットはそれに応えた。しかし、その救援は円卓の騎士たちが求めたものではなかった。ランスロットは、自国の兵士をブリテンに送ったものの、自身は自国に留まったのだった。
その行動をアーサー王を除く円卓の騎士たちは罵った。アーサー王はそれは致し方ないことと、ただランスロットの派兵に感謝した。だが、円卓の騎士をはじめとしたブリテンの人々、そしてアーサー王でさえもランスロットの心はわからなかった。
ランスロットが自国に留まったのは、それが彼が唯一知る王道だったからだ。彼の尊敬する王は、常に正しく有り続けた。それが、人々に恨まれることでも、常に自分の守るべき民と仲間のことを考えていた。それが、騎士道に反することであっても、王は選択し、それを悔やむことなど無かった。
その背中を守ってきたランスロットだったからこそ、王となった今、自国を離れることはできなかった。アーサー王のようにはなれなくとも、その背中を追い続けなければならなかった。
だが、もしもモードレットの反逆が起きた時。ランスロットが王でなかったら、一人の騎士として戦うことを許されたのなら。彼は何を捨ててでも、自分の敬愛する王のために、どこにいようと馳せ参じただろう。
269: 2015/07/13(月) 23:35:19 ID:ocghlspw
バーサーカー「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
モードレット「””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””””」
ランスロットとモードレットの打ち合いが続く。しかし、必氏に剣を振るバーサーカーの体は所々が透け始めている。残された時間が少ないことは明白だった。セイバーは意を決し、インデックスに話しかける。
セイバー「インデックス、令呪の使用を、先程と同じように。時間がもうありません。聖杯の元に向かいましょう」
インデックス「で、でも・・・。また追ってきたら・・・・・・」
不安な表情を浮かべるインデックスにセイバーは優しく微笑んだ。
セイバー「大丈夫です。私の親友が・・・。最も信頼する騎士が手を貸してくれています。安心してください」
インデックス「わ、わかったんだよ」
令呪が使用され、セイバーの体に魔力がみなぎる。セイバーは戦うランスロットに深く頭を下げるとインデックスを抱え聖杯の元に向かった。
270: 2015/07/17(金) 00:13:51 ID:SQHqGfXY
―学園都市 聖杯―
セイバーとインデックスが光の柱(聖杯)のもとに到着したとき、その場には3人の能力者の姿があった。その光景を彼らの正体を知る者が見たのならさぞや驚いたことだろう。
学園都市、第1位、3位、4位が共闘するなどと誰が想像できるだろう。
彼らが到着したのは数分前、多少のいざこざはあったものの、聖杯の危険性に気づいた三人は各々が聖杯の破壊に乗り出した。しかし、巨大な魔力の塊である光の柱の前に、麦野の光線、御坂の超電磁砲、一方通行の自転砲でさえも意味がなかった。僅かに削ったように見えるものの、瞬時に修復されてしまうのだ。
御坂「!?ちびっ子!あんたどこにいたのよ!」
御坂がインデックスに気がつき歩み寄る。
御坂「!?」
御坂は足を止めた。インデックスを守るように騎士王が御坂の前に立ちふさがる。
セイバー「魔術師・・・ではないようですね。だが、何者か分からぬ人間を私の主に近づけるわけにはいきません」
御坂「・・・・・・サーヴァント。・・・まさか、この騒ぎがあんたの望みとか言わないわよね」
インデックス「違うんだよ!せいばーも大丈夫だから落ち着いて!説明するんだよ」
271: 2015/07/17(金) 00:15:11 ID:SQHqGfXY
セイバー「インデックス。説明などしている場合ではありません。令呪を、聖杯を破壊しましょう」
インデックス「・・・・・・ダメなんだよ。近くで見るまで確信できなかったんだけど。ひょうかが聖杯と同化しててこの都市の地脈と英霊の座を強く結びつけてるんだよ。この状態で宝具を使ったら結局学園都市は・・・・・・。大体、ひょうかまで氏んじゃうんだよ」
麦野「わけわかんないんだけど。じゃあ、どうすればいいのよ」
インデックス「やることはこの前の時と一緒なんだよ。今回は、直接・・・・・・。ひょうかの所に行ければ、接続は切れるから。そのあとで宝具を使えば被害は少ないんだよ」
御坂「直接って・・・・・・。どうやって、あの光の中に入んのよ・・・。触っただけで蒸発するわよ」
セイバー「インデックス。私が-」
インデックス「せいばーはここにいないと宝具が使えないんだよ」
セイバー「しかし、あなたの言うようにあの魔力を突破しなければいけないのなら、英霊の力が必要です」
セイバー「まってよ!きっと・・・。きっと何か方法があるんだよ・・・・・・」
272: 2015/07/17(金) 00:16:14 ID:SQHqGfXY
沈黙を破ったのは一方通行だった。
一方通行「よォはァ・・・。こいつに強力なの当てればいいンだな」
インデックス「うん・・・。でも、ただの攻撃じゃダメなんだよ。宝具クラスの・・・。対城宝具か持続性のある対軍宝具じゃないと・・・・・・」
一方通行「問題ねェ・・・・・・」
麦野「問題ねぇ。って、さっきあんたの攻撃は-」
一方通行「当てがあンだよ。タイミングはそっちが合わせてくれェ」
そう言うと、一方通行は歩き出した。
273: 2015/07/27(月) 21:45:56 ID:QmFKYAn6
―学園都市 ビル―
土御門元春は聖杯に願うものなど何もなかった。実際、アレイスターの反応からも、自分と海原は聖杯戦争の監視のためにマスターとなったと理解した。
しかし、その土御門もサーヴァントを召喚する時、正確には召喚されるサーヴァントを確認するまでは、その神秘の儀式に多少の興奮を覚えていた。それは仕方のないことだろう。過去、現代の英霊を召喚し自身の使い魔とする奇跡の行為。あくまで目的は聖杯とは言え、その過程も超常であり、一人の魔術師としてそれに参加できるのは誇るべきことだった。
もっとも、召喚されたサーヴァントは使い魔とはとても呼べない暴君だったわけだが・・・・・・。その厄介さに閉口した土御門だったが、同時に彼の人間性に魅力を感じたものだ。
様々な修羅場を経験した土御門としても、全く見たことのないタイプの人間。半神の王、最古の英雄、英雄王ギルガメッシュ。
誰よりも、傲慢で、誰より強く、誰よりもある意味純粋な男、それが彼だった。
―ドゴン!!―
しかし、現在彼に王としての威厳はなかった。人形と化した親友の攻撃を受け切れず再び壁に打ちつけられる。体はボロボロ、髪も乱れている。しかし、そのような姿になっても彼は宝具を使用しない。親友を穢すのなら自身が犠牲になろうというのか。
そして、マスターである土御門にも令呪を使用して宝具を強制的に使わせるという選択肢は無くなっていた。しかし――。
275: 2015/07/27(月) 23:15:02 ID:QmFKYAn6
―ドゴン!!―
ギル「グハッ!!」
ギルガメッシュは朦朧とした意識の中で立ち上がる。そして、あれに立ち向かう。あれを親友とは、エルキドゥとは呼べない。しかし、ただの有象無象と切り捨てることもできない。魂は間違いなくあの男のものなのだ。
そうなれば、この肉体が朽ちるまで前進する以外の選択は無い。
ギル「は、ははは」
乾いた笑いでギルガメッシュは変わり果てた姿の親友を見据える。
エルキドゥ「!!!!!!」
エルキドゥはギルガメッシュに再び殴りかかる。
ギル「構わん、お前の相手をするのはこの我以外には無い!ならば、その拳この身で受け止めよう!」
276: 2015/07/27(月) 23:15:41 ID:QmFKYAn6
―ボシュゥゥ!!!―
しかし、その瞬間。エルキドゥの体は先ほどのギルガメッシュのように反対の壁に叩きつけられる。強力な魔力な放出。それが、令呪によるものと直感したギルガメッシュは冷静を失い、最低の選択を取った裏切りの臣下を睨みつける。
ギル「元春ぅぅぅ!!貴様ぁぁぁぁぁ」
しかし、どういうわけか土御門は落ち着いた表情。そして、落ち着いた声で自身のサーヴァントに話しかける。
土御門「こっちとしても流石に待ちくたびれたんだにゃー。大体、令呪の命令をしっかり聞いていなかったな。相変わらずのサーヴァントだ」
ギル「元春ぅぅぅぅ!!!」
展開しようとする「王の財宝」を必氏に押さえつつギルガメッシュは咆哮する。
土御門「しょうがない、もう一度命令しよう。英雄王ギルガメッシュ。令呪をもって命じる」
土御門は既に令呪のなくなった手を前に出し命令を下す。
土御門「宝具『王の財宝』を放出せよ」
ギル「貴様ぁぁぁ!!」
土御門「一方通行を対象にな」
277: 2015/07/27(月) 23:16:28 ID:QmFKYAn6
ギル「なん、だと・・・・・・」
その土御門の言葉にギルガメッシュだけでなく静観していたアレイスターまで驚きの表情を浮かべる。
土御門「一方通行のやつ、今は聖杯の近くにいるそうだ。宝具の借用を求めているんだが」
土御門は自身の耳についた耳飾りを指差す。ギルガメッシュのものは戦いで取れていた。
土御門「ここから、探知できない聖杯に攻撃をすることはできない。だが、令呪の力を使えば、行動を共にしたあの男になら宝具は届く。どうだ?文句を言いながらも、従者を務めたんだ。一度の願いを聞いてやっては?」
ギル「・・・・・・」
しばしの沈黙の後、大きな笑い声が響く。
ギル「ふふふ!!あはははは!!どうした?!最後になって道化となるのか!それも、この趣向は最高と言ってやってもいい!」
土御門「王様が喜んでくれて何よりだ」
ギル「しかし、いいのか!?あの男、串刺しになるだけやもしれぬぞ!」
土御門「本人の希望だ。出し惜しみせずやってやれ」
ギル「いいだろう!待つがいい、魔術師!そして友よ!!臣下に荷物を預けるとしよう」
一気にギルガメッシュの「王の財宝」が展開される。
ギル「受け取るがいい!!一方通行!この時に限り、我が宝具触れることを許す!!」
ギルガメッシュの号令と共に他を圧倒する勢いで、宝具が放出された。
278: 2015/08/03(月) 01:21:07 ID:a81ek7/Q
―学園都市 聖杯―
一方通行は土御門に一方的に連絡を入れると周囲に建つビルの一つの屋上に登った。どこから、宝具が来ようと確実に光の柱を狙える位置、あの光柱の上部を宝具の攻撃で光を削れば後は彼女たちが上手くやってくれる。
土御門に連絡してから予想以上に時間が経った。しかし、一方通行に焦りはない。彼は信頼している。飄々とした土御門元春。そして、かつて自分が相手にさえ、ならなかった英雄王ギルガメッシュを。
―ドゴッ!!!シュ!シュシュ!シュシュシュ!―
最初に聞こえたのは音だった。ビルの強固な結界を紙同然に打ち破り、無限とも思える数多の宝剣宝槍が空気を切り裂き一方通行を襲う。
一方通行「遅ェぞォ!」
聖杯を狙うには「王の財宝」を約90度曲げなければならない。
一方通行「ウォォォォォ!!!」
一方通行は咆吼と共に宝具に立ち向かう。
279: 2015/08/03(月) 01:23:34 ID:a81ek7/Q
先頭の宝剣の一つが一方通行の頬を切り裂く。皮膚の切れる音が一方通行の耳に響き血が吹き出す。
一方通行「チィィ!!」
能力を全開に発揮するものの、宝具はその軌道を変えようとしない。
―ザシュ!―
肩に槍がわずかに掠る。それだけのことで深い傷が一方通行の体に刻まれる。
一方通行「ッ!?」
そして、一方通行の顔に向かって宝具が飛んでくる。避けることは、いやそのような選択肢は無い。
一方通行「あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!!!!!!」
一方通行の叫びと共に、彼の眼前で宝具は一斉に止まる。そして、一方通行の背中からは黒い翼が生成される。
一方通行「手こずらせェェ!!」
そして、その翼の色が徐々に光り輝く白に変わっていく。
一方通行「やがってェェェェ!!!!」
次の瞬間、一方通行の叫びとともに「王の財宝」聖杯に向かってその軌道を変える。
数多の必殺が聖杯を襲い、その光をかき消す。
280: 2015/08/04(火) 22:50:36 ID:f3T2WO3.
―聖杯 根元―
地上では、インデックス、御坂、麦野、そしてセイバーの4名が一方通行の操る「王の財宝」による攻撃が始まったと同時に行動を開始した。
聖杯の上部に攻撃が集中したことによって下部の魔力の壁が薄くなる。薄くなった光の先には横たわる風斬が見えた。
インデックス「見えたんだよ!」
御坂「原子崩し!」
麦野「命令すんなぁ!!」
御坂の怒号と共に麦野は光に向かって制御した光線を照射する。光線は風斬まで届く道を作り出した。
麦野「超電磁砲!!」
御坂「分かってるって!!捕まって!!!」
281: 2015/08/04(火) 22:51:27 ID:f3T2WO3.
インデックス「うん!せいばーは待ってて」
セイバー「はい、ご武運を!」
御坂は脇にインデックスを抱えると電磁波でバリアを張る。
御坂「おりゃあぁぁ!!」
そして、風斬に向かって全速力で駆け出す。一方通行と麦野の攻撃で僅かに空いた空間に滑り込むと御坂は即座に電圧、電流、電磁波を複雑に操作すると魔力から身を守る小さなドームを作る。
御坂「あまりもたない!急いで!」
インデックス「わかってるんだよ」
インデックスは風斬の前に座る。930事件の時とやることは一緒、自らの声で風斬と聖杯との接続を切ればいい。その時と違うのは時間が全く無いことだけだ。
282: 2015/08/04(火) 23:27:54 ID:f3T2WO3.
一方、上空では一方通行が自身を襲う最期の宝具を光の柱に向かって放った。
一方通行「ちィ・・・、打ち終わりかよ」
そう呟くと、一方通行はビルの屋上に倒れ込んだ。
御坂「あいつの攻撃が・・・。ちょっと!まだなの!?」
インデックス「――――・・・終わったんだよ!ひょうか!ひょうか!!」
風斬「・・・・・・うぅ」
インデックス「成功なんだよ!短髪!早く!」
御坂「わかっ・・・・・・。うそ・・・」
ドームを張るために頭上に注意を払っていた御坂は顔を下げてあるはずの退路を見て絶望する。道があったはずの場所には魔力が渦巻き、完全に退路を塞いでいた。
セイバー「インデックス!!」
主を救い出そうとするセイバーを麦野が止める。いや、彼女はどけただけだった。攻撃の線上にいる者は王であろうとただの障害なのだ。
麦野「邪魔!!」
麦野は全力で暴走して魔力が不規則に流れる光の柱を攻撃した。僅かに、道が開ける。その先には驚いた表情の御坂。
283: 2015/08/04(火) 23:28:31 ID:f3T2WO3.
麦野「急げぇ!!超電磁砲!!!」
御坂「ッ!!掴まって!!!この子は私が運ぶから!!!」
インデックス「う、うん!」
御坂は叫ぶと両手で意識のない風斬を抱きかかえるように掴む。インデックスは御坂の背中に抱きついた。
御坂「離れんじゃないわよ!!」
御坂は力を自身の足と足元に集中させる。筋肉を動かすのは体内電気、御坂はそれを操作し筋肉を強制的に動かす。さらに磁場を操り考えられる最良の方法で脱出を計る。
御坂「!?」
しかし、作戦は失敗する。飛ぶように光の柱から脱出した御坂の背中は軽い。
倒れ込んだ御坂が顔を上げると、ほとんど形をなしていない道にインデックスが倒れていた。脱出の際に落ちたのだ。
御坂「馬鹿っ!!ちびっ子!!」
動こうにも御坂は既に力を使い果たしている。麦野も同様だった。セイバーは聖剣を放つために距離のある場所に。彼女たちはどうやっても間に合わない。
しかし、彼女たちは視認した。危険な光の渦に飛び込む黒い影を。
284: 2015/08/05(水) 00:41:18 ID:u.8pypUQ
インデックス「あっ・・・・・・」
御坂の背中から落ちたインデックスは仰向けに倒れた。いつの間にか手が離れてしまったらしい。そして、仰向けになったインデックスの目には核を失ったことで暴走する魔力の凶悪な流れ。それが、ゆっくりと自分に降りかかる。
―――走馬灯。氏ぬ間際に時間がゆっくり感じ、過去が思い出される。それは、氏の直前に脳がフル稼働して生き残る手段を探すために起きるという。しかし、インデックスの脳内にある魔道書を以てしてもこの状況から逃げる方法などありはしなかった。
しかし、そんな状況だからこそ。自分に伸びる彼の腕と、彼の必氏の形相はしっかり見えた。
インデックス「・・・すて・・・いる?」
ステイル「魔女狩りの王(イノケンティウス)!!!!!!!!!」
遅れて聖杯に到着したステイルは、それでいて誰よりも早くインデックスの救出に向かっていた。インデックスを抱えると、まともなルーンも呪文も使わず自身の切り札である「魔女狩りの王」を発動させた。
285: 2015/08/05(水) 00:42:03 ID:u.8pypUQ
ステイルと、インデックスを守るように展開された炎の巨人、しかし正式な術式でないため、その体は不安定、さらにその炎は術者であるステイルにまで及ぼうとしている。
ステイル「ッ!!」
しかし、ステイルは自身が燃えることも恐れずにインデックスを掴む。
インデックス「まって!」
インデックスの声は届かず、ステイルは炎で僅かに道を作ると出口めがけインデックスを放り投げた。
投げ出されたインデックスをセイバーがキャッチする。
セイバー「インデックス!もう持ちません!令呪を!」
インデックス「だめだよ、せいばー!まだ中に!!」
セイバー「これ以上待てばこの街が崩壊します!ご決断を!!」
セイバーとインデックスの声がステイルにも届く。彼女は無事のようだ。それがステイルによって大事なことだった。彼女が助かれば自分の命など・・・・・・。
ステイル「うおぉぉぉ!!」
しかし、ステイルは諦めなかった。まだ、出口は空いているのだ。この行為は自分の命をいたずらに伸ばすだけの行為かもしれない。しかし、彼はあきらめない、自分に知識を授けた神代の魔術師に足掻けと言われた。―――その言葉は裏切れない。
286: 2015/08/05(水) 00:42:41 ID:u.8pypUQ
ステイル「くっ・・・・・・」
しかし、限界はすぐそこまで来ていた。炎は徐々に消えていく。
そして、炎が魔力の渦に飲み込まれたと同時に、ステイルは氏を覚悟した。
ステイル「グハッ!!」
痛みはあるだろうと予想していたものの、その痛みの質は予想とは違っていた。まるで殴られたような、そして痛いのは背中だった。
ステイルはどうして、自分が聖杯を見ているのか理解できないまま気絶した。その視線の先には土が隆起していた。
インデックス達は、状況が理解できなかった。しかし、ステイルが何かにぶつけられたような動きで吹っ飛んで脱出したことはわかった。
―――そんな、驚きの表情を少し離れた位置でオリアナは見つめている。
オリアナ「お姉さん、手を出しすぎかしら・・・。まぁ、たまにはこんなことがあってもいいわよね」
287: 2015/08/05(水) 00:48:18 ID:u.8pypUQ
インデックスが叫ぶ。声が響く。
インデックス「せいばー!!聖杯を!破壊して!」
セイバーは宝具を構え、終幕の光を放つ。
セイバー「約束された勝利の剣!!!」
強大な光の衝突。その先には、聖杯も魔力の欠片もなく。ただ巨大なクレーターができているだけだった。
聖杯戦争は終結した。
288: 2015/08/08(土) 20:21:24 ID:F6z/O7Kc
元々、冬木の聖杯戦争とは異なるものでありそれにアレイスターが手を加えたことで聖杯の消滅はサーヴァントの消滅に直結する。
消えかけた体でセイバーはインデックスに笑いかける。このような別れは予想できなかった。しかし、この主との最期は悲しいものではないだろう。
インデックス「せいばー・・・・・・」
セイバー「このような最後は予想できませんでした。でもあなたが無事でよかった。インデックス、あなたとの食事はいつも楽しいものでした。あなたの望みが叶うことを祈っています」
インデックス「うん、ありがとうなんだよ。せいばー」
セイバーは穏やかに消える。
それと同時に、最後まで王を守った狂戦士はその宿敵と共にゆっくり消えた。
289: 2015/08/08(土) 20:55:56 ID:F6z/O7Kc
部屋に笑い声が反響していた。耳に響く声は英雄王ギルガメッシュのものだった。
ギル「面白いではないか元春!あの男、我が財宝に認められたらしいぞ!実に不愉快だな!我の宝具の格が落ちる」
そう言いながらも、口調は何とも楽しそうだった。
土御門「そのようだ。結局なにも変わらずこの戦いは集結したようだな」
ギル「しかし、遊戯としては及第点だ。最期の不敬も目をつぶろう」
エルキドゥはすでにあるべき場所に帰っている。その瞬間だけギルガメッシュは悲しそうな表情を見せた。
土御門「まぁ・・・・・・。あれだ、万が一どこかに現界することがあったら顔を出してくれてもいい。歓迎しよう」
ギル「ふふっ。何を勘違いしている。この世界は余すことなく我の庭だ。庭を歩くのに歓迎などいらん。供の用意をしていればいい」
土御門「そうか・・・・・・」
ギル「そして、元春。忠節、大儀であった。一方通行にも伝えておけ」
土御門「あぁ・・・・・・。ギルガメッシュ―――」
土御門の最期の言葉を聞かずに英雄王はその姿を消した。
土御門「最後まで・・・。勝手な男だ」
290: 2015/08/08(土) 22:49:13 ID:F6z/O7Kc
―数日後―
聖杯戦争による。被害は迅速に修復され、参加した者たちもそれぞれ日常に戻っていた。
白井「初春!逃げられましたの!」
それは白井と初春も同様だった。二人の日常とは当然、風紀委員の仕事だった。
初春「二手に分かれたみたいです。一人、ビルに逃げ込んでます!」
白井「了解ですの!」
白井は瞬間移動する。先には追いかけていた犯人がいた。―――黒焦げで。
白井「お、お姉様ぁぁぁ!?」
御坂「あれ?黒子?近くにいて初春さんの無線が耳に入ったから片付けといたわよ」
白井「お姉さま!それは盗聴と・・・。と、とりあえず後でこの件については話を聞きますから!」
白井はテレポートで御坂の前から消える。
291: 2015/08/08(土) 22:50:06 ID:F6z/O7Kc
白井「初春!」
初春「もう一人が路地裏に逃げ込んでます。右にビルの裏側です」
白井「わかりました!」
初春の指示で、白井が瞬間移動する。その先には犯人が、いた。―――気絶して、いた。
白井「な、佐天さん・・・」
そこには、なぜか木刀を構えた佐天が立っていた。
佐天「あ、どうも。白井さん」
白井「どうも。じゃありませんの!!またですか!!」
佐天「いや、あれですよ。正当防衛ですよ。健康のためにマラソンしてたんですよ」
実は、聖杯戦争が終わってから佐天は何か吹っ切れたように元気になった。ただ、元気になりすぎているのが白井の頭を悩ませていた。
白井「・・・・・・わかりました」
佐天「わかってくれましたか」
白井「佐天さんとお姉さまにはしっかりと自分の立場をわかってもらう必要があるようですの。・・・今から支部でお説教です」
佐天「えぇー」
頬を膨らませながらも、佐天は笑っていた。結局自分は無能力者のままだけど、なぜかなんでもできる。そんな気持ちになっていた。
292: 2015/08/08(土) 23:40:05 ID:F6z/O7Kc
―イギリス―
イギリスに戻ったステイルは教会の書庫にいた。そこに、扉の開く音。神裂が入ってくる。
神裂「どうしたんですか?帰ってくるなり、閉じこもって」
ステイル「何でもないよ。ちょっと、調べ物をね」
神裂「はぁ。でも、ここは火気厳禁ですよ」
ステイル「分かってる。ちゃんと、外で吸うさ。・・・・・・どうした?」
神裂「・・・・・・全部、記憶に関する書物ですね」
ステイル「あぁ・・・。何か問題が?」
神裂「いいえ」
神裂は穏やかに笑うと、ステイルに手紙を渡した。あなた宛です。請求書のようですよ。
そこに書かれた金額はとてつもないものだった。無論、彼女たちの食事代だった。
ステイル「・・・・・・上条当麻に請求しておいてくれ」
293: 2015/08/08(土) 23:52:46 ID:F6z/O7Kc
―学園都市―
上条当麻は、家の前に立っていた。結局イギリスでは観光しただけの気がするが、タダで色々回れたので正直楽しかったのだった。それだけに、インデックスは怒っているに違いない。出会い頭に、噛み付かれるかもしれない。
上条「ただいまー・・・・・・」
ガチャ。扉を開けるとそこには穏やかな顔のインデックスがいた。
インデックス「あ、お帰りなんだよ!!」
上条「お、おう・・・・・・。なんか機嫌いいな。なんかあったのか?」
インデックス「・・・うん。新しい友達ができたんだよ」
上条「ふぅん。よかったじゃん。そういう上条さんも今回は怪我もしてないし、タダでヨーロッパ色々見れてさ。幸せでしたよ」
インデックス「それは、いいけどお腹がすいたんだよ」
294: 2015/08/08(土) 23:53:42 ID:F6z/O7Kc
上条「あぁ、ちょっと待ってろ。お土産もあるしすぐに準備を・・・・・・。あれ?これってイギリスからの」
インデックス「今日届いたんだよ」
上条「えーと、なになに・・・。ゼロが一つ、二つ・・・・・・。なにこれ!?えっ!?上条さんが払うの!?」
インデックス「とうまー。早くご飯なんだよ」
上条「ま、待って!ちょっと!!」
インデックス「とうまー!!」
上条「あー!もー!不幸だぁー!!」
(完)
295: 2015/08/08(土) 23:55:07 ID:F6z/O7Kc
これで、終わりです。読み返すと、誤字脱字話の流れなどひどいですが、最後まで見てくださった方々ありがとうございました。
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