302: 2011/04/03(日) 01:40:43.51 ID:It5+frAC0
薄暗い部屋の中に、ドライヤーの音が響いている。
時刻は、深夜二時。ベッドサイドのテーブルランプの明かりだけが唯一の光源だった。
『彼女』が髪を乾かす間、番外個体はただベッドに寝転がっていることしか出来ない。
暇を持て余した番外個体は、手持無沙汰に自分の指先を見つめていた。
形の良い桜色の爪は、よく磨かれてはいるものの、ひどく短く切り揃えられている。
そこに性的な意味合いを見出してしまうのは、実際にそういう生活を送っているためだろう。
本来、短い爪に感じるものといえば、『清潔さ』であると相場は決まっているのだから。

ふと視線をずらした先で、番外個体は一筋の髪の毛を見つけた。
長さ十センチほどのそれは、『彼女』は勿論のこと、自分の髪よりも明らかに短い。
きっと、根本から抜け落ちたのではなく、途中で千切れたのだろう。
そう番外個体は判断した。
とある魔術の禁書目録 32巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
303: 2011/04/03(日) 01:41:31.75 ID:It5+frAC0
「ねえ、麦野」

「何?」

ドライヤーのスイッチを切って、麦野は番外個体に向き直った。
そのままドライヤーを置いてしまったということは、ほぼ髪は乾いているのだろう。

「この髪の毛、どっちのだか分かる?」

例の髪の毛を摘みあげて、番外個体は尋ねた。

「知らないわよ」

麦野の反応は、随分と素っ気なかった。
ついさっきまで、体を重ねていた相手とは思えないくらいに。


「麦野はつれないにゃーん」

番外個体は、わざとらしくしなを作って身を捩る。

「もっと、よく見てくれたっていいのに」

番外個体が恨みがましく(とはいえ、これも演技である)麦野の顔を見つめると、
麦野は心底呆れたという表情で溜息を吐いた。

「よく見たって分かりゃしないわよ。
 どうせ、二人とも同じような色をしてるんだから」

麦野の言うことは、間違ってはいないと番外個体は思う。
実際、麦野の髪と番外個体の髪の色は酷く似ていた。
下手をしたら、『お姉様』や『妹達』よりも似ているくらいに。
というのは、少々言い過ぎだろうか。
だって、『ミサカ』たちは皆同じ遺伝子を持っている筈なのだから。

「ま、そりゃそっか」

気のない様子で呟いて、番外個体は摘んでいた髪を床に落とした。

304: 2011/04/03(日) 01:42:43.03 ID:It5+frAC0
「さーて、寝るとしますか」

「シャワーは?」

「んー、いいや。何か、もう面倒くさいし」

「あっそう」

淡々とした会話。
だけれど、これくらいが丁度いいと番外個体は思う。
この関係は、似た者同士の傷の舐め合い。
それ以上でも、それ以下でもないのだから。

「おやすみなさい」

「おやすみ」

簡潔な挨拶の後、明かりが消される。
その暗闇の中でも、家具の配置を思い出せる程度には、番外個体はこの部屋に馴染んでいた。
ここは、麦野の部屋だ。

そして二人は、互いに背中を向けて眠る。

307: 2011/04/03(日) 02:01:41.37 ID:21hx2XJj0
>>301
乙!
なんとなくだがブルブラの人か?

309: 2011/04/03(日) 02:16:05.71 ID:It5+frAC0


>>307
ブルブラの方とは完全に別人のクソムシです
あの方の文章が好き過ぎて、影響は受けているかも知れませんが…
すみませんorz

引用: ▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-26冊目-【超電磁砲】