7: 2016/04/27(水) 10:06:44.84 ID:pMCKHt1Q0
【井手川菊代の場合】

「もうやだ……西住流も戦車道も全部大っ嫌い! 黒森峰なんて辞めたい……」

ぐずりながら膝に身体を投げかけた私を、菊代さんは優しく抱きしめてくれた。

昔から続く、戦車道のことで怒られたとき、お姉ちゃんにも、もちろんお母さんにも吐き出せない気持ちを抱えちゃったときの、二人だけの秘密の儀式。
『ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!』第1幕
8: 2016/04/27(水) 10:08:36.20 ID:pMCKHt1Q0
「辞めて、どうされるんですか?」

「……」

 ……どこにも行くあてなんかない私の頭を、優しく撫でる手。小さな頃からよく知っている、柔らかな感触。

「それなら、逃げてしまいましょうか」

 えっ。

「私と一緒に、どこまでも遠くへ」

「そんなことしたら、菊代さんが……」

「ずっと西住家にお仕えしてきた身ですけれど。……みほお嬢様が望むなら、私は構いません」

9: 2016/04/27(水) 10:10:07.00 ID:pMCKHt1Q0
「……」

 駆け落ち、なんて言葉が頭に浮かんで真っ赤になった私に、

「ふふっ、冗談です。戦車道の履修が無い学校への転校手続き、進めさせていただいても?」

 そう微笑んだ菊代さんの顔が、どこか寂しそう……に見えたのは、私の思い込みかな。

「……うん、お願いします」

 私はぎゅぅっと、いい匂いのする柔らかい胸に顔を押し付けた。

 もうこの家にも黒森峰にも何の未練もないけれど、この人と会えなくなるのだけは寂しかった。

10: 2016/04/27(水) 10:11:41.62 ID:pMCKHt1Q0
 もちろん大洗の内情は分かっている。これから訪れるであろう試練も。

 みほお嬢様は、私をお恨みになるだろうか。

 一人フェリーを見送りながら、私は呟く。

 でも、戦車道は決してあなたを裏切りません。

 嘘つきで、臆病者の私と違って。

 どうか。どうかお元気で、私の愛するお嬢様──

おわり

引用: 【ガルパンSS】みぽりんとあれやこれや作戦です!【安価超短編】