607: 2011/04/25(月) 00:20:37.90 ID:nb39eQvi0
土御門兄妹の妄想過去話
「は、義妹!?」
土御門元春は、唐突なその知らせに思わず大声を出した。
『土御門』――陰陽の世界において最も有名な、名家中の名家。
元春も当然陰陽道を修めており、その名は天才として知られている。
そんな彼が親に呼び出され、そういえば魔法名がどうとか言われていたなとか思っていたら、これだ。
母曰く、あくまで義妹という建前の小間使いらしい。
他所から『買ったもの』なので、どのように扱っても構わないとのこと。
道徳心の欠片も無いその言い方に内心イラつきながらも、大人しく了解しておいた。
部屋に戻ろうとしたときに、魔法名のことも言われた。
魔術師としてその魂に刻み付ける名を考えておけ、とのこと。
“名誉”を意味するHonosがお勧めだそうだが。
正直、今の彼にはそこまで強く願うことなど無かった。
(とりあえずHonosは無いな……名誉とか知ったことじゃないし)
608: 2011/04/25(月) 00:22:13.55 ID:nb39eQvi0
自室に戻ると、入り口に誰かが正座していた。
一瞬ぎょっとして、それから先ほど母が言っていたことを思い出す。
自分よりも幼い(妹なのだから当たり前だが)少女だった。
目には生気が無く、表情には覇気が無い。
少女は虚ろな目で元春を捉えると、慣れた動作で座礼した。
「お初にお目にかかります、元春様。舞夏、と申します」
どうやら騙されて連れて来られたわけではなく、自分の立場は分かっているらしい。
そうすることが当然かのように、少女は低頭する。
「本日より、身の回りのお世話をさせていただきます。どうぞなんなりとお申し付けください」
こうあることが当然のように、少女は。
誰かに『買われ』『使われる』ことが当たり前で、そこから逃れることなど考えてもいない。
否、そこから逃れられるとは夢にも思っていない表情。
希望を知らず、故に絶望すらしない。
「……いい」
「はい?」
それが無性に苛立たしかった。
理由など分からないし考えようとも思えなかったけれど、ただ腹立たしかった。
「そんな世話など必要ない。自分のことは自分で出来る」
「……しかし」
「いらんといったらいらん!」
突っぱねて部屋に入る。そのままベッドに倒れこんだ。
急激に熱が冷めていくのを自覚しながら、寝返りをうって仰向けになった。
嫌いだった。この家も、両親も。恥と外聞ばかりを気にするそれらを、心の底から軽蔑していた。
だというのに、それに牙を剥くこともしない自分が、一番嫌いだった。
だからだろうか。くそったれの運命に抗おうとも思わないあの少女に、腹が立ったのは。
609: 2011/04/25(月) 00:25:48.36 ID:nb39eQvi0
おわり
微妙に無表情気味なのが名残りだったり一線越えたっぽいのもそこら絡みだったりするといいんじゃないかとか色々
微妙に無表情気味なのが名残りだったり一線越えたっぽいのもそこら絡みだったりするといいんじゃないかとか色々



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