729: 2011/04/27(水) 07:13:01.54 ID:Be9zwr2q0

「なんか知らんけど朝起きたら幽体離脱しとった」

 視線を足元へ向ければ、そこに存在するのは己の安らかな寝顔だった。
 青く染めた短髪に寝る為に目を閉じたとしても余り普段と変わらない糸目。
 実にイケメンである。実に自分である。
 さて、ここで何故自分が"幽体離脱"等という特異な体験をしているのか、原因は何か、昨日寝るまでの経緯を思い返してみよう。
 昨日干したばかりの布団は太陽の輝きを存分に身に受けて暖かく、速やかに意識を刈り取ったので、寝る寸前は記憶があいまいだ。
 その前は、

……パン屋には出せない秘密にしておきたかった秘密生物兵器――ではなく、新商品をおっちゃんに貰ったくらいやなぁ。

 昨日は愛しの合法口リこと熱血教師――月読小萌と朝から日が沈むまですけすけ見る見る という卑猥な――、
 もとい、甘美な響きを持つ作業に勤しみ帰りが遅くなったせいで、軽く夕飯代わりにそのパンを食べ、

……あかん、そのまま寝たからこれ以上思い返す事があらへんよ!?

 あり得るとしたら、氏因:すけすけ見る見る、なのだろうか。
 どうせなら小萌先生に対してすけすけ見る見るしてから氏にたかった……!
 どうせチンケな能力者だし、そっちの系統じゃないから無理だろうけど。

……こんなところで氏ぬなんて無念ってレベルじゃないで!どうせ氏ぬなら女の子の服をうっかり透視しちゃって罵られながらの嬉し恥ずか氏……!

 くねくねしてても幽体なので、誰も見てない。
 虚しい。
 ところで起きた時から腰に引っ掻かっとるこの刀はなんなんだろうか。

「本物の刀かいな、これ」

 柄を掴み、そのまま引き抜く。
 特に引っかかる事もなく、自然に抜けた事に違和感を覚えるが気にせず抜き放った刀身へ眉根を寄せた視線を向ける。

「短い刀やなぁ。刀やったらもっとビョーン!とかズビョーン!とか。なんちゅーの?物干し竿とか、伸びろ如意棒的な?」

 瞬間、

「――!」

 切っ先が天井ぶち抜いてどっかに飛んでった。

 刀<ドヤッ。
とある魔術の禁書目録 32巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
730: 2011/04/27(水) 07:14:08.32 ID:Be9zwr2q0

「――13kmや」

 何がだ。
 いやいやいや、流石に天井に穴開けるのはマズいって。
 思わず標準語が脳内を飛び交う程、青髪ピアスは焦っていた。
 つーか、刀が伸びるのはまーいいとして、幽体なのに天井に穴開けるとかどういう事なの……。
 
「気づかれて……へんよね?」

 聞き耳を立てて、同居人の方々に気づかれていないかを探るが、どうやら物音に気付いた様子は無い。
 安堵の溜息を一つ。
 落ち着いて天上を見れば、切っ先の形に綺麗に穴が開いているだけで被害は少ない。
 あれなら大丈夫だ。うん、多分きっと。
 振ったら余計に天井が傷つきそうなので微動だにしない。
 今の自分は不動明王である。
 でもそんなの長くは持たない。だって青髪ピアスだもん。

「短くなーれ!短くなーれ!」

 お願いしたら短くなった。
 なんて賢い刀なのだろうか。

 刀<ドヤッ。

 あ、やっぱちょっとうぜぇ。
 心なしかドヤ顔している刀を鞘に納めて、改めて自分の寝顔を見る。イケメンである。
 続いて視線を横へ動かし、己の胸へ。良い肉体美である。布団ごしだけど。

……息、しとるな。問題無いみたいやな。

 とりあえず生きてはいるらしい。
 じゃあ、後は元に戻るだけなのだが、

……どうせ体を重ねたら魂と体が一つになるとかそんなんやろ。やだ卑猥――!!!

 くねくねしてても幽体なので、誰も見てくれない。
 淋しい。
 だけどそれならそれで、今を楽しまないと損である。

「僕ぁ、鳥になるんや――!」

 窓をすり抜け、空に向かって飛び立つ。
 ゆっくりとだが、地面に向かって降り立った。
 どうやら問答無用で天に召されるとかはない様だ。
 一瞬、勢いで飛び出た後に――あ、ヤベ、もしかして体から離れたら成仏するとかそんなん無いよね?
 とか超ビビり入ってたから冷や汗ものだったのである。

731: 2011/04/27(水) 07:14:56.17 ID:Be9zwr2q0

「よぉし、そうとなればこの幽霊の体を使って、普段は出来ないあんな事やこんなこ――」

 快音。

「ん?」

 音のした方向――足元を見るとなんか足に刺さってた。
 具体的に言うと釘である。ネイルである。

「Oh...」

 血が出たりとか痛みとかは無いが、なんとも嫌な光景である。
 ちなみに抜けない。というか足が動かない。
 なんという事でしょう。匠の技によって一瞬で足一本が役立たずとなってしまいました。これには青ピも思わず苦笑い。

「って、ちょ!?なんで家から飛び出た瞬間に僕ぁ足に釘撃ち込まれてるん!?これは新手の拷問かいな!?あ、でも下手人美少女やん!?いいぞもっとやってぇ!」
「第一の質問ですが――変Oですか、貴様」
「変Oやない。仮に変Oだとしても、それは君に愛を伝える天使へ移行する途中の姿や」
「氏んでください」
「めんどくさくなって口調が一瞬で捨て去られた!?まだ早い!まだ早いよ!諦めんなよ!僕だってこの片足が動かない状態で頑張って――」

 快音三連弾。

「はい!両手両足束縛追加ぁ―――!その歳で緊縛趣味とはやりおるね君……!というか姿もアレやし僕と君とでバインド愛好会――ッ!」
「第二の質問ですが――頭と股間、どちらをぶち抜かれたいですか」
「あ、すんません。調子乗ってました。いや、だから釘打ち機をゴリゴリ股間に押し付けるのは止めて、あ、いや!なんか目覚めそう!やめないで!やめ」

 快音一発。
 変Oはアオォ―――!という絶叫の後、沈黙した。


  ○


 目が覚めると自室の天井が視界に入るのだった。
「――という夢だったんやな」
「第三の質問ですが、貴方は誰に向かって話しているのですか」
「えっ」
 横を見れば、己を縛り付ける様な黒い服――というかモロに拘束服を着込み、
 その上から赤い頭巾と外套で身を包んだ少女が正座していた。超美少女――!
 ウェーブのかかった金髪が西洋人形っぽくあるが、服のせいで大人向けの――。
 頭の横に釘が撃ち込まれた。

732: 2011/04/27(水) 07:17:33.42 ID:Be9zwr2q0

「畳がァ――!?」
「静かに氏なさい」
「hai。というか"しなさい"のイントネーション、若干違かった様な気がしたんやけど?」
「第一の回答ですが、そんな事はありません」
「そ、そう?」
「そうです。なので安心氏なさい」
「なんやろ。僕、君に嫌われる様な事したんやろかなぁ……?」
「第二の回答ですが、存在自体がもう……」
「存在全否定!?」

 悲しげに溜息を吐く少女に思わず悶える青髪ピアス。

「それより聞いて欲しい事があるのですが」
「え?なんや?僕、好感度アップの為ならなんでもやるで!?」
「静かに――」
「hai」

 青髪ピアスも布団から這い出て彼女と向かい合う様に正座する。
 寝間着を着込んだままなのだが、おかしなトコロはないだろうか。

「第三の回答ですが、頭以外は大丈夫だと思います」
「思考読まんといて!?というかなんで解るん!?」
「第四の回答ですが、貴方顔に出やす過ぎです」
「えーっと、それは置いといて……で、君は誰なん?さっきまで僕、幽霊やったよね、多分?」
「第五の回答ですが、貴方達の国でいう幽霊――私はそれらに対処する為の専門家の様なものです」

 あ、第一の捕捉ですが、名前はサーシャ・クロイツェフです、と彼女は付け足す。

「ほへぇ……で、その専門家さんは、僕に何か用なん?」
「第六の回答ですが、成仏させてあげようかと?」
「えっ」
「冗談です」
「こやつめハハハ!」
「ハハハ!」
「すんません。見逃してくれませんか」
「Oh...第一の感想ですが、これがジャパニーズ土下座というものですか……」
「あ、ごめん。話逸らしてもうたね。で、話したい事っていうのはなんなんや?」
「あぁ、そうでしたね。安心してください。日本で、こういう時に言う言葉もしっかりワシリーサから教えて貰っています」

 コホンと彼女は口元に握り拳を持っていき、咳払い。

「……」

 ゴクリと青髪ピアスの喉が鳴る。

733: 2011/04/27(水) 07:18:31.70 ID:Be9zwr2q0

「すぅ」

 深く息を吸う。
 
 瞬間――彼女は、今までのイメージを捨て去るかのようにとびっきりの笑顔を浮かべた。



「私と契約して、死神になってよ!」



734: 2011/04/27(水) 07:22:26.48 ID:Be9zwr2q0
以上です。
なんか勢いで書いたせいで正確が崩壊してたり、最後がまどマギになってしまったり。
サーシャさんは幽霊騒ぎが最近頻発する学園都市に調査の為、赴いていたという設定で一つ。
お目汚し失礼いたしました。
というか、美鈴通行の流れを切ってしまい申し訳ない……!

美鈴さんと一方さん、2人とも可愛いなぁ。良い親子過ぎる。

引用: ▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-27冊目-【超電磁砲】