424: 佐賀暦2006年,2006/11/08(佐賀県職員) 11:42:19.03 ID:RoKy9pwa0
あたしは、いまだかつて無いくらい悩んでいた。

高校入学式後の初めてのホームルームで担任の岡部が、面白くもないハンドボールの話を
長々と続け、やっと終わったと思ったら突然、

「みんなに自己紹介をしてもらおう」

などと言ったからだ。

夢色の高校性生活の第一歩よ!男女の出会いは全て第一印象で決まると言っても過言では
ないわ!失敗は絶対に許されない!
あたしは、気になる男子の出身校や趣味とかを暗記し女子は適当に聞き流しながら、
休眠中の全ての脳細胞をフル回転させ、自己紹介の内容を考えた。

『東中学出身の涼宮ハルヒです。趣味はお料理とかスポーツ全般かな。カラオケなんかも
大好きなのでカラオケに行くことがあったら、是非あたしも誘って下さい。よろしくね!』

むぅ~。こんな感じかしら。カラオケのくだりは言わない方がいいのかな?
そんなことを考えていると、あたしの前の席の男が立ち上がった。
次はあたしの番よ。神様お願い。うまく噛まずに言えますよぅに。

緊張が極致に達し、鼓動が周りの人に聞こえるんじゃないかと言うくらいドキドキしていると
目の前の男が――ええ、あたしはたぶんこのショックを一生、忘れる事が出来ないわね――
バカみたいに大きな声で自己紹介を始めた。
涼宮ハルヒの憂鬱/2009年度放送版
425: 佐賀暦2006年,2006/11/08(佐賀県職員) 11:42:49.85 ID:RoKy9pwa0
「押忍!俺のことはキョンとでも呼んでくれ。ごく普通のありきたりな名前はとっくに捨てた
からな。ま、そんなことはどうでもいい。それよりもこの中に、宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や
超能力者や悪の組織やもしくはそれらと戦うアニメ的特撮的漫画的ヒーローがいたら俺の所に来い!
いつでも挑戦を受けてやる。以上!」

あたしの前の席の男は喧嘩でも売るような目つきでゆっくりと教室中を見渡し、最後に大口開けて
見上げているあたしをふり返りギ口リと睨むと、にこりともせずに着席した。

特にかっこいいって訳ではない、本当にごく普通のありきたりな顔。身長も格別高いって訳ではない、
本当に普通の一般男子生徒。
だた、クラス全員の視線を傲然と受け止める顔は変に大人びていて、意志の強そうな鋭い視線を
あたりかまわず放射し続ける。

ただの電波DQNがそこにいた。
これってギャグなの?それともただのバカ?

そのバカ男のバカカミングアウトのおかげで、今まで和やかだった教室内の空気が凍り付いて
しまったのだ。空気が氏ぬってこういう事を言うのね。

とにかくそのおかげで、あたしはあらかじめ考えていた自己紹介をすっかり忘れてしまった上に、
いったい何を喋ったのか覚えていないほど混乱してしまい、クラス中にいらぬ恥をさらして
しまったのだった。
こうして、あたしの虹色の高校生ライフの第一歩はおもいっきり躓いてしまったわけ。
もし、目の前にリセットスイッチか核ミサイルの発射ボタンか判らないモノがあったとしても、
迷わず押してしまったでしょうね。ああ、もう氏にたい。

426: 佐賀暦2006年,2006/11/08(佐賀県職員) 11:45:49.54 ID:wf6qm+Zr0
おわり

引用: ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」