144:株式会社SOS団第3話 2006/11/13(月) 10:57:39.60 ID:UVF6rp1k0


株式会社SOS団 第2話



【株式会社SOS団】 
第3話『ファンタジスタ』

【古泉ファンタジー】
「……うっ……」
激しい頭痛が襲う気持ちの悪い目覚めだった。辺りは闇に包まれている。手を伸ばしてみると、そこにはヒンヤリとした土の感触が……
「って、土!?」
そう、僕が手にしたのはまさしく土そのものだった。足を伸ばして立とうと試みる。
しかし足が伸びない、伸ばそうとすると土の壁に阻まれるのだった。
「……一体どういうことですか?」
そもそもここはどこなのだろう?僕は目覚める以前の記憶を辿り始める。
「そう、お腹が減りましたね……。って、そんなことを思い出しても意味が無いですね。それより前、それより前は……そうだ!
 僕は長門さんに嵌められてテ口リストに奪われた施設を取り返すとか何とかいう訳の分からん任務に送られたんでした!」
だんだんと記憶が蘇ってくる。僕は古泉一樹。『世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団本部』に勤める正社員でありポジションは係長だ。
係長とは名ばかりで、実際の扱いは平並だ。まだ給料ももらっていない。
そしてここは中東で僕は施設奪取のため侵入中。突如浴びせかけられたマシンガンの渦を掻い潜り颯爽と潜入した辺りまでは覚えているのですが……。

再び立とうとしてみる。どうやら足は伸ばせないが、立つことくらいは可能の範囲らしい。
相変わらずの深淵。ふと上を見上げてみる。
「……満月ですね」

それを見て僕は初めて自分の置かれている現状を認識した。情けないことに僕は走り回って逃げている間にどこかの穴に落ちたらしい。
腰をさすってみる……痛かった。
「超能力者をなめるなー!!」
一人吼えてみた。音沙汰なしである。ここから地上まで数十メートルはありそうだ。
「……返事が無い。ただのガチホ〇のようだ。どうせ、僕はやられ役ですよ。
 こんな辺鄙な所に飛ばして自分たちはだけはプリン食べたり、カレーを食べてるんですものね。まったく、いいですよ。僕は万年係長~♪」
一人歌う自分にありがとう、そしてさようなら。
「ハ~、最近独り言増えましたね……僕独り身も長いですからね……」
落ち込みだすと止まらない僕の性格。分かっちゃいるけどやめられない、止まらない♪って何か違いますよ!?
涼宮ハルヒの憂鬱/2009年度放送版
145: 2006/11/13(月) 10:59:01.27 ID:UVF6rp1k0
そうこうしているうちに目が慣れてきました。穴の中はひどく狭く、幅1メートル半あるかないかだろう。
「しかしこんな所目立たない所によく落ちたものですね。ひょっとして僕って強運の持ち主ですか?」
自虐的になってみる。誰も突っ込んでくれないあたりがやるせなさを増長させる。
「はあ……ちくしょー!」
拳を思い切り壁に叩きつけた。

ボロッ

「……ボロッ?」

もう一度土壁に拳を叩きつける。
土壁はボロボロと何の抵抗も無く崩れ落ちた。
「……へ?」
なんと崩れ落ちた場所に何かのボタンが!
「おいおい、もしかするとこれは本当に強運なんじゃないですかぁぁああ!?」

この展開。自分がRPGの主役になった気分!古泉一樹!心も若いが見た目も若い!灰色(閉鎖空間)の人生にとうとう終止符を打つときが来たのですかぁぁああ!!!

喜び勇んで
「ポチっとな♪」
ボタンを押してみる。

突如真後ろの土壁が崩れ去り、運命の扉が開かれたり
初回生産本数100万本を記録した伝説のRPG古泉ファンタジーのスタート!

「まずは名前の入力、ですね。こ、い、ず、み、い、つ、き……ちっがぁぁあうぅ!これは元首相でしょう!」
な~んちゃって♪危機迫る状況にも拘らずユーモア精神を忘れないお茶目でダンディーな僕に乾杯。
「いざ行かん!」

僕は冒険の書に記録するのも忘れる程はしゃぎながら足を踏み入れた……。

147: 2006/11/13(月) 11:00:22.44 ID:UVF6rp1k0
中はヒンヤリとした空気の漂う白い壁に覆われた建物。
「ここはどこ?」
誰も答えてくれない。
「……返事が無い。ただの地下室のようだ。」
やめましょう。

察するに敵のアジトに潜入できたってところでしょうね。
100歩も進んだだろうか。特に変わった様子は無い。ずっと変哲も無い通路の中をひたすら歩き続ける。
……と、突然視界が開けた。
「……ここは!!」

そこはテ口リストのアジトとは思えない空間が広がっている。整然と並ぶ白い部屋の数々。
見てはいけない景色がここにある。手を伸ばせば届きそうな、いや、本来届いてはいけない景色が。

「まさか・・・!そんなバカな!」
心臓が暴れだす。
「灰色(閉鎖空間)の人生に終止符が打たれるんじゃなかったんですか!?」
って、そうじゃないでしょう! 僕!

不意に部屋の一つから男が2名。一先ず物陰に隠れましょう。
まず見つからないであろう空間を発見し僕はそこに身を潜めた。

148: 2006/11/13(月) 11:01:39.00 ID:UVF6rp1k0
「中東支部計画は大成功のようだな」
「そうだな」
「表向きはまったくの別物だが……」
「そういうことだ。中身は一切変化なしというわけさ」
「そういえばさっき外で銃声があったが何かあったのか?」
「どうやら侵入者らしい。とは言ってもおそらくどこぞのジプシーが迷い込んできたんだろう」
「迷惑な話だ」
「まあ、銃声がやんでから大分たつ。もう問題解決ということだ」
「そうか、では私は仕事に戻るか」
「ああ、また後でな」

男達は方々に散っていった。
「僕でもわかるってことは日本語ですね」
今さらながら自分の頭の良さを再確認してしまった。
「……しかし、中東支部ってことは、いよいよ怪しくなってきましたね、これは。にしても、暑いですよ!」
やはりダンボールはミスったか?

突然眠気が襲ってきた。
今日一日いろいろとありすぎた。先ほどの様子ではまだ夜だろう。

「太陽よ、また会う日までさようなら」
いや、先ほど見たのは月だった気もしますけど。
「あっ!いけない!冒険の書に記録してませんでした!」
古泉ファンタジーもここまでか……。
いや待てよ!? 別にセーブしなくてもいいですよね!?だって電源切るわけじゃないし、要は宿屋に泊まるだけなんだから。
バカだな~僕♪このことに気づくまでに10分かかってしまいましたよ。
「悩んで損しましたね。明日の冒険のためにも今日は寝ておきましょう。見つかりませんように……」

僕は睡魔に身を任せた……。

149: 2006/11/13(月) 11:02:40.32 ID:UVF6rp1k0


【キョンクエスト】

「お~い、うさぎ獣人や~い~」
応答が無い。
「……返事が無い。ただの宇宙空間のようだ。」

…………

「宇宙に うさぎ獣人 いなかった  時余り 我が辞世の一句ってか♪」
「ってこんなバカバカしいことやってられるかぁああ!!!」
俺はようやくそのことに気が付いた。えらいぞ俺。

24時間後

「ただいま~」
「太陽星人は?」
「あん? 見つかるわけ……いや見つけたよ」
「朝比奈みくる……こっちに」
なんかいやな予感が……
額を冷や汗が滴り落ちる。
汗が口に入ってなんともスパイシーな味がした。
「何ですか長門さん? あっ!キョン部長!お帰りなさい!」
「感動の再開は後」
速攻で長門が朝比奈さんにブレーキをかけた。
「ところで……朝比奈みくる」
長門が口を開いた。
「彼がうさぎ獣人を見つけたらしい」

151: 2006/11/13(月) 11:04:00.69 ID:UVF6rp1k0
ドクン

心臓が高鳴った。

「おい長門……ちょっと待ってく」
朝比奈さんのつぶらな瞳が俺を見つめる。や、やめてくれ! そんな純粋な瞳で汚れた俺を見ないでくれ!

「ほんとですか! すごいですキョン君」
「ぐはぁああ!!!」
ゲームオーバーだった。セーブし忘れたのは致命傷だ。ここまでレベルを上げてきたのもGを集めてきたのもすべてパー。
あぁ、俺はまた1レベルからやり直すのか……。
「ごめんなさい……何も見つかりませんでした」
「えっ……そうなんですか……?」
長門は俺を一瞥したっきりそっぽ向いた。しかし、その瞳に写る底知れぬ怒りを俺は見逃さなかった。

「キョン! うさぎ獣人見つけたんですって!?」
「い、いや、そのな……」
「どうなのよ!?」
「そ、それが……」
「はっきりしなさい!!」
「ごめんなさい!見つけてません!」
「はじめから素直に言えばいいのに」
あれ?予想以上にあっさりと尋問は終了したらしい。さすが、俺のハニーだぜ!

「今月の給料カットよ」
「…………」

第3話 蹴

引用: ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」