938: 2019/04/30(火) 23:34:29.34 ID:aDGpkj0q0
前回:北上「我々は猫である」85匹目
最初から:北上「我輩は猫である」
86匹目:猫目
提督「本屋?またか?」
北上「すぐそこだよ。歩いて20分くらい」
提督「いやな、例え一歩でも外出は外出になるわけでな」
吹雪「あーあそこですか」
提督「あれ、知ってんの?」
吹雪「ええまあ。いいんじゃないですか?近いし」
提督「いやだから近くても許可とか色々とな」
吹雪「いーじゃないですか近いし」
提督「そうは言ってもよ」
吹雪「別にそんなとこでいい子ちゃんぶる必要もないじゃないですか」
提督「…それもそうか」
吹雪「だしょ?」
提督「だな」
北上「…」
いいのか?ありがたいけどさ。
939: 2019/04/30(火) 23:34:58.82 ID:aDGpkj0q0
だいぶ寒くなってくる季節なので以前皆で買った洋服を着て鎮守府を出る。
北上「このオシャレさはド田舎には不釣り合いだよね」
そんな独り言をバス停近くの草むらに投げかけてみる。
ふと、もしかしたら彼も私のように艦娘になるなんて事があるのかもなんて思った。
そうしたら一体何を考えるのだろうか。
そんな益体もない事を想像しながらバイクで通った道を辿る。
北上「このオシャレさはド田舎には不釣り合いだよね」
そんな独り言をバス停近くの草むらに投げかけてみる。
ふと、もしかしたら彼も私のように艦娘になるなんて事があるのかもなんて思った。
そうしたら一体何を考えるのだろうか。
そんな益体もない事を想像しながらバイクで通った道を辿る。
940: 2019/04/30(火) 23:35:47.66 ID:aDGpkj0q0
北上「ここか」
古本屋というものがどういうものかは知っていた。と言っても本で読んだだけだが。
木造の古ぼけた店の中には人が歩けるギリギリまで本棚が並べられていて、そこには長い歴史を纏い変色した本達が所狭しと並んでいる。
うん、イメージ通りの店だここ。
開け放されている入口からそおっと店内に入る。
鎮守府の書庫と同じ匂いが一瞬にして私を包み込んだ。
いやあ、落ち着くなあこの感じ。
古本屋というものがどういうものかは知っていた。と言っても本で読んだだけだが。
木造の古ぼけた店の中には人が歩けるギリギリまで本棚が並べられていて、そこには長い歴史を纏い変色した本達が所狭しと並んでいる。
うん、イメージ通りの店だここ。
開け放されている入口からそおっと店内に入る。
鎮守府の書庫と同じ匂いが一瞬にして私を包み込んだ。
いやあ、落ち着くなあこの感じ。
941: 2019/04/30(火) 23:37:36.16 ID:aDGpkj0q0
「いらっしゃい」
北上「!」ビクッ
奥から声がした。
思わずビクッとなったがよく考えればお店なのだから人がいるに決まってる。
少し入り組んだ棚を超えて店の奥を覗く。
奥の部屋は私の立っている所から床が一段高くなっていた。縁側みたいな作りなのかな?
その縁側に置かれたレジの奥にいかにもな老人が奥に座っていた。私の身長だとレジ台から老人の顔がギリギリ見える程度だ。
あ、いやレジじゃない。ただの机だ。レジがないぞここ。
老人「ほう。客人とは珍しい」
おっとここで艦娘と名乗るわけにゃいかない。聞かれたらお爺ちゃんのウチに遊びに来た孫という事にしよう。
北上「ちょっと聞きたい事があってさ」
老人「何かね」
北上「この栞ってここのモノであってる?」
例の栞を差し出す。
老人「んー?ちょっと待ってなさい」
奥に引っ込んでく老人。どうしたんだろ?
北上「!」ビクッ
奥から声がした。
思わずビクッとなったがよく考えればお店なのだから人がいるに決まってる。
少し入り組んだ棚を超えて店の奥を覗く。
奥の部屋は私の立っている所から床が一段高くなっていた。縁側みたいな作りなのかな?
その縁側に置かれたレジの奥にいかにもな老人が奥に座っていた。私の身長だとレジ台から老人の顔がギリギリ見える程度だ。
あ、いやレジじゃない。ただの机だ。レジがないぞここ。
老人「ほう。客人とは珍しい」
おっとここで艦娘と名乗るわけにゃいかない。聞かれたらお爺ちゃんのウチに遊びに来た孫という事にしよう。
北上「ちょっと聞きたい事があってさ」
老人「何かね」
北上「この栞ってここのモノであってる?」
例の栞を差し出す。
老人「んー?ちょっと待ってなさい」
奥に引っ込んでく老人。どうしたんだろ?
942: 2019/04/30(火) 23:39:04.09 ID:aDGpkj0q0
老人「待たせたな」メガネ
あーそういえば人間は歳をとると目が悪くなるんだっけ。
老人「どれどれ、ほほおまた懐かしい物を…」
北上「じゃあやっぱりこの栞って」
老人「ウチのだね。間違いないよ」
やはり、ならかつて提督はここに来ている。この人ならきっとその事を
老人「…お前さん、艦娘だね」
北上「…へ?え、え?いや、いやいやまさかそんな、私は、えーっとおじいちゃんの家にですね」
老人「隠さんでもいい。同じ匂いがするんだ。遠い海の匂いだ」
北上「遠い、海」
ゆっくりとメガネを取る。見えないはずのその目は、どこか遠く、遥か昔の事を思い出しているようだった。
老人「もう随分昔だよ。それを渡したのもね」
北上「その話、詳しく聞かせてもらっていい?」
老人「かまわんよ。お前さんの目には、見覚えがあるからな」
私の目?
あーそういえば人間は歳をとると目が悪くなるんだっけ。
老人「どれどれ、ほほおまた懐かしい物を…」
北上「じゃあやっぱりこの栞って」
老人「ウチのだね。間違いないよ」
やはり、ならかつて提督はここに来ている。この人ならきっとその事を
老人「…お前さん、艦娘だね」
北上「…へ?え、え?いや、いやいやまさかそんな、私は、えーっとおじいちゃんの家にですね」
老人「隠さんでもいい。同じ匂いがするんだ。遠い海の匂いだ」
北上「遠い、海」
ゆっくりとメガネを取る。見えないはずのその目は、どこか遠く、遥か昔の事を思い出しているようだった。
老人「もう随分昔だよ。それを渡したのもね」
北上「その話、詳しく聞かせてもらっていい?」
老人「かまわんよ。お前さんの目には、見覚えがあるからな」
私の目?
943: 2019/04/30(火) 23:39:46.84 ID:aDGpkj0q0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
随分と、本当に随分と昔だ。30年、いや40年か?詳しくは覚えてないがね。
最初はただの客だった。
「これを」
たった一言ぶっきらぼうに男はそう言って英語の本を買っていった。
ボサボサの黒髪、雑に剃られた髭、やたらとデカくてガタイのいいやつだった。
それから男は何度か訪れた。その度英語の本を買っていってな。
そしてある日、とうとうまともな会話を男がふってきた。
「なあじいさん」
「もっとこう、読みやすい英語の本ってのはないか?」
読みやすいとはどういう意味か、イマイチ意図が読めんかったからそのまま聞き返した。すると
「だからこう、あれだ、英語があまり得意じゃなくても読めるような、そんなな」
・・・・・・
・・・・・・・・・
随分と、本当に随分と昔だ。30年、いや40年か?詳しくは覚えてないがね。
最初はただの客だった。
「これを」
たった一言ぶっきらぼうに男はそう言って英語の本を買っていった。
ボサボサの黒髪、雑に剃られた髭、やたらとデカくてガタイのいいやつだった。
それから男は何度か訪れた。その度英語の本を買っていってな。
そしてある日、とうとうまともな会話を男がふってきた。
「なあじいさん」
「もっとこう、読みやすい英語の本ってのはないか?」
読みやすいとはどういう意味か、イマイチ意図が読めんかったからそのまま聞き返した。すると
「だからこう、あれだ、英語があまり得意じゃなくても読めるような、そんなな」
944: 2019/04/30(火) 23:40:30.78 ID:aDGpkj0q0
男はどうやらあまり英語が堪能と言うわけじゃないらしかった。
以前買っていったのはそんなに難しかったのか、ワシも一々覚えてはいない。
確かに古めかしい英語だったりすれば読みにくかったりはするかと思い、最近のモノを探してやろうと思った。だが
「いや待ってくれ、やっぱりダメだ。あれだ、その、英語が読めなくても読めるような本ってないか?」
はあ?と思わず言ったのは覚えている。
聞けばその男英語を勉強しようと思い何を思ったかいきなり本物の英語に触れようと考えたらしい。
「いいのか?貰っても」
随分な阿呆だったが熱意は本物だと思いワシは辞書をくれてやった。
「…ならじいさん、俺の教師になるつもりはないか?」
そこまで面倒を見る気はなかった。
以前買っていったのはそんなに難しかったのか、ワシも一々覚えてはいない。
確かに古めかしい英語だったりすれば読みにくかったりはするかと思い、最近のモノを探してやろうと思った。だが
「いや待ってくれ、やっぱりダメだ。あれだ、その、英語が読めなくても読めるような本ってないか?」
はあ?と思わず言ったのは覚えている。
聞けばその男英語を勉強しようと思い何を思ったかいきなり本物の英語に触れようと考えたらしい。
「いいのか?貰っても」
随分な阿呆だったが熱意は本物だと思いワシは辞書をくれてやった。
「…ならじいさん、俺の教師になるつもりはないか?」
そこまで面倒を見る気はなかった。
945: 2019/04/30(火) 23:42:54.68 ID:aDGpkj0q0
男はいつも突然ふらりと来た。次の日にも来たり一ヶ月来なかったりと規則性はなかった。
決まって午後、お昼をいくらかすぎた頃に来た。
良く喋るやつで、ワシもそれは嫌いじゃなかった。
辞書を渡してから一月経った頃だ。あの娘が現れたのは。
「だからな、俺は英語をマスターしてやりたい事はただ一つ。異国の美少女とお近づきになる!それだけだ」
「くだらなくはないだろう。モテるためになにかするのは男のサガってやつだ」
「海?ああそうだ、今は海を自由に行き来できない。英語以前の問題だ。だからこそ俺は提k「あーー!!!」うわっ!?」
心臓が止まるかと思った。
しっとりとした空気の漂うこの古びた家を吹っ飛ばさんばかりの高い声が突き抜けて行った。
「吹雪!?お前なんでここに!」
「こっちのセリフですよもお!司令官こそ勝手に出かけたと思ったらなんでこんなところに」
大男とは対象的な華奢な少女だった。見たことない学生服を着ていたな。
「よく分かったな」
「外に行ったようだという目撃情報があったので周りを探索してたら声が聞こえたんですよ。たまぁに突然いなくなるから心配してたんですよ?」
甲高いとは違う響きの良い活発な声と太く低くしかし通りの良い声とが部屋を行き交う。
「いやぁちょいと野暮用でな」
決まって午後、お昼をいくらかすぎた頃に来た。
良く喋るやつで、ワシもそれは嫌いじゃなかった。
辞書を渡してから一月経った頃だ。あの娘が現れたのは。
「だからな、俺は英語をマスターしてやりたい事はただ一つ。異国の美少女とお近づきになる!それだけだ」
「くだらなくはないだろう。モテるためになにかするのは男のサガってやつだ」
「海?ああそうだ、今は海を自由に行き来できない。英語以前の問題だ。だからこそ俺は提k「あーー!!!」うわっ!?」
心臓が止まるかと思った。
しっとりとした空気の漂うこの古びた家を吹っ飛ばさんばかりの高い声が突き抜けて行った。
「吹雪!?お前なんでここに!」
「こっちのセリフですよもお!司令官こそ勝手に出かけたと思ったらなんでこんなところに」
大男とは対象的な華奢な少女だった。見たことない学生服を着ていたな。
「よく分かったな」
「外に行ったようだという目撃情報があったので周りを探索してたら声が聞こえたんですよ。たまぁに突然いなくなるから心配してたんですよ?」
甲高いとは違う響きの良い活発な声と太く低くしかし通りの良い声とが部屋を行き交う。
「いやぁちょいと野暮用でな」
946: 2019/04/30(火) 23:43:54.71 ID:aDGpkj0q0
「外出時は外出許可とか必要なんですよ?」
「この位の距離なら別にいいだろ」
「良くないです。ルールなんですから」
「ほほぉルールねぇ」ニヤリ
「な、なんですかその嫌な笑は」
「そうだなその通りだとも。一般人に知られたりしないよう外出時は気を使わなきゃだしな」
「そうですよ。特に司令官は私達艦娘より大切な存在なんですから」
「ありがたい心遣いだなあ。なあじいさん?」
意地の悪い笑みを浮かべてワシに話しかけてきた。
「?」
どういう意味がわからなかったのか一瞬の沈黙の後、背伸びをした少女の顔が台の上から覗いた。
今ちょうどお前さんが立っとる位置だな。
「この位の距離なら別にいいだろ」
「良くないです。ルールなんですから」
「ほほぉルールねぇ」ニヤリ
「な、なんですかその嫌な笑は」
「そうだなその通りだとも。一般人に知られたりしないよう外出時は気を使わなきゃだしな」
「そうですよ。特に司令官は私達艦娘より大切な存在なんですから」
「ありがたい心遣いだなあ。なあじいさん?」
意地の悪い笑みを浮かべてワシに話しかけてきた。
「?」
どういう意味がわからなかったのか一瞬の沈黙の後、背伸びをした少女の顔が台の上から覗いた。
今ちょうどお前さんが立っとる位置だな。
947: 2019/04/30(火) 23:44:40.18 ID:aDGpkj0q0
ワシからも見えなかったように少女からもワシの姿は見えなかったらしい。
「あわわわわわ」
海より青ざめた顔で口をパクパクさせておった。
「いやぁお前司令官とか艦娘とか色々口走ってたよなあ」
今思えばあやつ吹雪が来る前に提督と言いかけておったな。
「どどどどうしましょう司令官!!」
「えー俺が知るかよ」
「け、消しますか…それしか…」
「…お前ホントに優等生なのか?なあ?」
それがあの鎮守府の提督と吹雪との初めての出会いだった。
「そんなわけでな、俺はあそこで提督をやってる者だ。ほれお前も挨拶しろ」
「え、えぇ!?挨拶なんてそんな呑気な!!」
「いーじゃねえか。変に隠すより仲良くしておいた方がいいだろこういうのは」
「うぅ…はじめまして、吹雪です…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「あわわわわわ」
海より青ざめた顔で口をパクパクさせておった。
「いやぁお前司令官とか艦娘とか色々口走ってたよなあ」
今思えばあやつ吹雪が来る前に提督と言いかけておったな。
「どどどどうしましょう司令官!!」
「えー俺が知るかよ」
「け、消しますか…それしか…」
「…お前ホントに優等生なのか?なあ?」
それがあの鎮守府の提督と吹雪との初めての出会いだった。
「そんなわけでな、俺はあそこで提督をやってる者だ。ほれお前も挨拶しろ」
「え、えぇ!?挨拶なんてそんな呑気な!!」
「いーじゃねえか。変に隠すより仲良くしておいた方がいいだろこういうのは」
「うぅ…はじめまして、吹雪です…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
948: 2019/04/30(火) 23:45:34.18 ID:aDGpkj0q0
老人「あれから二人とは長い付き合いだ。もっとも吹雪は提督を連れ戻す以外で来る事はなかったがね」
北上「へぇ。吹雪がねえ」
今の吹雪は提督の姉のような振る舞いだが、提督の父親に対しては妹のような感じだ。
振り回されている吹雪というのはなんとも新鮮味がある。
老人「それから何年後だったかな、本当に異国の美少女を妻として連れてきたのは」
北上「え、ホントに連れてきたの?英語役にたったんだね」
老人「いや、英語はとうとうまともに喋れなかったよ」
北上「勉強してたのに?」
老人「本ばかり読むだけで喋れるわけないだろう。ワシだって真面目に教えちゃいなかったしな。殆ど駄弁っていただけだ」
北上「えぇ…」
北上「へぇ。吹雪がねえ」
今の吹雪は提督の姉のような振る舞いだが、提督の父親に対しては妹のような感じだ。
振り回されている吹雪というのはなんとも新鮮味がある。
老人「それから何年後だったかな、本当に異国の美少女を妻として連れてきたのは」
北上「え、ホントに連れてきたの?英語役にたったんだね」
老人「いや、英語はとうとうまともに喋れなかったよ」
北上「勉強してたのに?」
老人「本ばかり読むだけで喋れるわけないだろう。ワシだって真面目に教えちゃいなかったしな。殆ど駄弁っていただけだ」
北上「えぇ…」
949: 2019/04/30(火) 23:46:24.66 ID:aDGpkj0q0
老人「なんでも海外での大規模作戦中助けた女に戦場のど真ん中で告白したらしい」
北上「英語話せなかったのに?」
老人「本で読んだキザな告白セリフをそのまま使ったらしい」
北上「うわぁ」
老人「しかも女の方は日本語が話せてな。そんな男が面白くて恩返しにと付き合ってそのまま、だそうだ」
北上「ドラマチック、なのかなあ」
老人「幸せそうだったからな。当人達は満足だっんだろう」
北上「…ねえ、その女の人って金髪だったりする?」
老人「おう。スラリと背の高い金髪の女だ」
じゃきっとあの神社で見た二人組がそうなんだ。きっと、かつての夫婦なんだ。
北上「英語話せなかったのに?」
老人「本で読んだキザな告白セリフをそのまま使ったらしい」
北上「うわぁ」
老人「しかも女の方は日本語が話せてな。そんな男が面白くて恩返しにと付き合ってそのまま、だそうだ」
北上「ドラマチック、なのかなあ」
老人「幸せそうだったからな。当人達は満足だっんだろう」
北上「…ねえ、その女の人って金髪だったりする?」
老人「おう。スラリと背の高い金髪の女だ」
じゃきっとあの神社で見た二人組がそうなんだ。きっと、かつての夫婦なんだ。
950: 2019/04/30(火) 23:47:20.97 ID:aDGpkj0q0
老人「結婚してから何度か二人でここに来た。提督のやつはここで英語を習ったから出会えたんだと誇らしげにしていたよ」
北上「実際そう言っても間違いではないでしょ」
老人「どうだかな。どうあれ二人は出会っていたようにも思えるがね。英語の方は女と出会ってから随分と上達したよ。やはり生きた言葉に触れるのは大切な事だ。昔はイニシャルすら書けなかったというのに」
北上「イニシャルが書けないってどういうことさ」
老人「逆にしちまうんだよ。日本式で苗字、名前の順にな」
北上「ブフッ」
老人「ん?」
北上「い、いや、なんでもない…」
そ、そんなオチか…以前に書庫で見たイニシャルが提督とは違ったからと思っていたが…確かに逆にすると提督と同じ苗字だ。
老人「吹雪も二人の護衛だと毎回着いてきてな。その度に親子みたいだとからかったもんだ」
からかわれる吹雪…うーん気になる。
北上「実際そう言っても間違いではないでしょ」
老人「どうだかな。どうあれ二人は出会っていたようにも思えるがね。英語の方は女と出会ってから随分と上達したよ。やはり生きた言葉に触れるのは大切な事だ。昔はイニシャルすら書けなかったというのに」
北上「イニシャルが書けないってどういうことさ」
老人「逆にしちまうんだよ。日本式で苗字、名前の順にな」
北上「ブフッ」
老人「ん?」
北上「い、いや、なんでもない…」
そ、そんなオチか…以前に書庫で見たイニシャルが提督とは違ったからと思っていたが…確かに逆にすると提督と同じ苗字だ。
老人「吹雪も二人の護衛だと毎回着いてきてな。その度に親子みたいだとからかったもんだ」
からかわれる吹雪…うーん気になる。
951: 2019/04/30(火) 23:47:53.75 ID:aDGpkj0q0
老人「とはいえそういつまでもここに来るわけはない。女の方は鎮守府とは違うところに住むと言っていた。ここいらは不便だし当然だな。二人とは、それっきりだ」
北上「寂しくはなかったの?」
老人「寂しくはないさ。ただ少しその時は騒がしかっただけだ」
それっきり、という事はこの人知らないのか。
二人がもう氏んでいる事を。
老人「その栞は二人に餞別代わりに渡したモノだ。実はその場で適当に作ったモノなんだがな」
北上「あのさ、ちょっと言い難いんだけど」
老人「なんだ」
北上「その二人、なんだけどさ」
老人「あぁ、氏んだらしいな」
北上「え?なんで知ってるの!?」
老人「言ったろ、二人とはそれっきりだと。吹雪はその後一度だけ、ここに来た」
北上「寂しくはなかったの?」
老人「寂しくはないさ。ただ少しその時は騒がしかっただけだ」
それっきり、という事はこの人知らないのか。
二人がもう氏んでいる事を。
老人「その栞は二人に餞別代わりに渡したモノだ。実はその場で適当に作ったモノなんだがな」
北上「あのさ、ちょっと言い難いんだけど」
老人「なんだ」
北上「その二人、なんだけどさ」
老人「あぁ、氏んだらしいな」
北上「え?なんで知ってるの!?」
老人「言ったろ、二人とはそれっきりだと。吹雪はその後一度だけ、ここに来た」
952: 2019/04/30(火) 23:48:24.26 ID:aDGpkj0q0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
数年前だ。
ある日突然店にやって来た。
いつの間にか背伸びをしなくてもギリギリ顔が見えるようになっていたよ。
ポツリと、二人が氏んだとだけ伝えて来た。
提督はついこの間、女の方は数年前に、と。
驚いたさ。だがそれより目の前のあの娘の方が気になった。
吹けば飛んでいってしまうような、触れれば消えてしまいそうな、なんというか凄く危うく見えた。
だから聞いたんだ。泣いてないのか、と。
驚いた顔をされた。そしてこの台の影にしゃがみ込んで嗚咽を上げ始めた。
しばらくずっとそうしていた。
・・・・・・
・・・・・・・・・
数年前だ。
ある日突然店にやって来た。
いつの間にか背伸びをしなくてもギリギリ顔が見えるようになっていたよ。
ポツリと、二人が氏んだとだけ伝えて来た。
提督はついこの間、女の方は数年前に、と。
驚いたさ。だがそれより目の前のあの娘の方が気になった。
吹けば飛んでいってしまうような、触れれば消えてしまいそうな、なんというか凄く危うく見えた。
だから聞いたんだ。泣いてないのか、と。
驚いた顔をされた。そしてこの台の影にしゃがみ込んで嗚咽を上げ始めた。
しばらくずっとそうしていた。
953: 2019/04/30(火) 23:49:02.14 ID:aDGpkj0q0
「もう行きます。多分、もうここには来ないと思います」
「何故だ」
「ここにいると、いや。あなたに会うとまた泣いてしまいそうなので」
「泣いちゃダメなのか」
「泣いてる余裕なんてないですから」
「そうか」
「はい」
「なら泣きたくなったらまた来い。どうせ客なんて滅多に来ない」
「…はい」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「何故だ」
「ここにいると、いや。あなたに会うとまた泣いてしまいそうなので」
「泣いちゃダメなのか」
「泣いてる余裕なんてないですから」
「そうか」
「はい」
「なら泣きたくなったらまた来い。どうせ客なんて滅多に来ない」
「…はい」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
954: 2019/04/30(火) 23:51:54.86 ID:aDGpkj0q0
老人「よくわからんやつだったよ、それも、それっきりだがな」
北上「そっか」
なんとなくわかる気がする。
鎮守府もあの書庫も、吹雪にとっての提督との思い出の場所は色々あるはずだ。
でもそれらで感傷に浸るようには思えない。
吹雪にとってこの人は数少ない一人だったんだ。
提督以外の自分を知る人間。
そして今は唯一の。
日向さんの話はやはり正しいのかもしれない。
私達にとって親しい人間とは自身を作る核のようなものなのかもしれない。
提督を失った。核を失った。それでも任された鎮守府を守るために必氏になっていた吹雪。
以前とは全然違う自分で新しい提督と新しい鎮守府を支えて。
そんな吹雪の昔が唯一残るっている核が、この人なんだろう。
北上「そっか」
なんとなくわかる気がする。
鎮守府もあの書庫も、吹雪にとっての提督との思い出の場所は色々あるはずだ。
でもそれらで感傷に浸るようには思えない。
吹雪にとってこの人は数少ない一人だったんだ。
提督以外の自分を知る人間。
そして今は唯一の。
日向さんの話はやはり正しいのかもしれない。
私達にとって親しい人間とは自身を作る核のようなものなのかもしれない。
提督を失った。核を失った。それでも任された鎮守府を守るために必氏になっていた吹雪。
以前とは全然違う自分で新しい提督と新しい鎮守府を支えて。
そんな吹雪の昔が唯一残るっている核が、この人なんだろう。
955: 2019/04/30(火) 23:52:36.41 ID:aDGpkj0q0
北上「ありがと、話してくれて」
老人「気をつけろよ」
北上「?」
老人「吹雪と同じ目をしている。またぞろ碌でもない事を考えてる目だ」
碌でもない事、は確かにそうだ。復讐、だもんね。
でも吹雪と一緒とはどういうことだ。
老人「わからんのならいいさ。お前さんが提督とどういう関係なのかは知らないが、気をつけろよ」
北上「うん、ありがとね」
老人「気をつけろよ」
北上「?」
老人「吹雪と同じ目をしている。またぞろ碌でもない事を考えてる目だ」
碌でもない事、は確かにそうだ。復讐、だもんね。
でも吹雪と一緒とはどういうことだ。
老人「わからんのならいいさ。お前さんが提督とどういう関係なのかは知らないが、気をつけろよ」
北上「うん、ありがとね」
956: 2019/04/30(火) 23:56:12.23 ID:aDGpkj0q0
北上「吹雪の今の立ち振る舞いって前の提督そのまんまなんだなあ」
本人は意図してやっているのだろうか?
まあそれはいい。
もう頃合だろう。
ここに行くと言ったのにまた吹雪は止めなかった。
何を考えているんだアイツ。
ここらで一度、しっかりと向き合わなきゃ。
私ももう先延ばしてばかりはいられないんだ。
本人は意図してやっているのだろうか?
まあそれはいい。
もう頃合だろう。
ここに行くと言ったのにまた吹雪は止めなかった。
何を考えているんだアイツ。
ここらで一度、しっかりと向き合わなきゃ。
私ももう先延ばしてばかりはいられないんだ。
965: 2019/05/28(火) 04:23:22.82 ID:82eRS9qA0
小話:猫と手袋
猫に限らず主に四足歩行の生き物で足のところだけ体と色が違ったりするとまるで靴下のようだともてはやされる。
私には残念ながらなかった。
これ以外にもハートマークやら国や地域の形やらと人は模様を様々な何かに似ていると騒ぐ。
つまりは親バカ、飼い主バカということなのだろう。
猫に限らず主に四足歩行の生き物で足のところだけ体と色が違ったりするとまるで靴下のようだともてはやされる。
私には残念ながらなかった。
これ以外にもハートマークやら国や地域の形やらと人は模様を様々な何かに似ていると騒ぐ。
つまりは親バカ、飼い主バカということなのだろう。
966: 2019/05/28(火) 04:23:52.93 ID:82eRS9qA0
北上「谷風、というか駆逐艦って手袋してる子が多いよね」
谷風「そーだねぇ。でも他の艦種でもつけている人は多いじゃないか。単純に駆逐艦は数が多いだけさ」
北上「それもそうか」
谷風「どうして急に手袋を?」
北上「谷風の見てたら気になってさ」
谷風「何を今更。会う度に見ているじゃないさ」
北上「だからこそだよ。だって手袋って出撃とかでもないのに付けるもんじゃないでしょ」
谷風「言われてみればその通りだけど、そうさねえ。意識した事はなかったけどもうすっかり付けてない方が違和感になってるのは否めないねえ」
北上「邪魔じゃない?」
谷風「こうして屋上に登ったり屋根を伝ったりする時には便利なのさっ」ドヤァ
盗み見盗み聞きはこの手袋に支えられていたのか。
ドヤ顔する事じゃない。
谷風「そーだねぇ。でも他の艦種でもつけている人は多いじゃないか。単純に駆逐艦は数が多いだけさ」
北上「それもそうか」
谷風「どうして急に手袋を?」
北上「谷風の見てたら気になってさ」
谷風「何を今更。会う度に見ているじゃないさ」
北上「だからこそだよ。だって手袋って出撃とかでもないのに付けるもんじゃないでしょ」
谷風「言われてみればその通りだけど、そうさねえ。意識した事はなかったけどもうすっかり付けてない方が違和感になってるのは否めないねえ」
北上「邪魔じゃない?」
谷風「こうして屋上に登ったり屋根を伝ったりする時には便利なのさっ」ドヤァ
盗み見盗み聞きはこの手袋に支えられていたのか。
ドヤ顔する事じゃない。
967: 2019/05/28(火) 04:26:09.41 ID:82eRS9qA0
谷風「そもそも船には手がない。私だってそうさ。羽だったからね。だからか君とは手に対する考え方に差異があるのかもしれないね」
北上「確かに、私は元々素っ裸が普通だったからね。何かを身に付ける事が違和感なのかも」
谷風「元々手がない私達は自分の手が覆われていたり、極端な話手がなくても違和感を覚えないかもしれないわけだ。
うむこうして考えると何やら薄ら寒い話じゃあないか」
北上「手かあ。最も私だって正確には前足なわけだけど」
谷風「艦娘は沢山の人間とその思いの集合体だとか言うけれど、もしそうならこうして一つの意思で何かを掴み取れるというのは極々自然なようで極まりきった奇跡なのかもしれないね」
そう言って掌を太陽に翳す。
白い手袋から伸びる腕はまるで猫のように細い。
谷風「まーっかぁにぃ流~れる~僕のちぃしぃお~ってなっ」
北上「…みんなみんな生きている、か」
谷風「一度や二度氏んでいても、今こうして生きている事に変わりはないってこった」
北上「生きてる。そうだね。生きてるから、寒いね」
季節は冬である。
谷風「かぁーなっさけないねえ!よし早く中入ろう!」
北上「寒いんじゃん」
北上「確かに、私は元々素っ裸が普通だったからね。何かを身に付ける事が違和感なのかも」
谷風「元々手がない私達は自分の手が覆われていたり、極端な話手がなくても違和感を覚えないかもしれないわけだ。
うむこうして考えると何やら薄ら寒い話じゃあないか」
北上「手かあ。最も私だって正確には前足なわけだけど」
谷風「艦娘は沢山の人間とその思いの集合体だとか言うけれど、もしそうならこうして一つの意思で何かを掴み取れるというのは極々自然なようで極まりきった奇跡なのかもしれないね」
そう言って掌を太陽に翳す。
白い手袋から伸びる腕はまるで猫のように細い。
谷風「まーっかぁにぃ流~れる~僕のちぃしぃお~ってなっ」
北上「…みんなみんな生きている、か」
谷風「一度や二度氏んでいても、今こうして生きている事に変わりはないってこった」
北上「生きてる。そうだね。生きてるから、寒いね」
季節は冬である。
谷風「かぁーなっさけないねえ!よし早く中入ろう!」
北上「寒いんじゃん」
970: 2019/06/04(火) 04:33:49.22 ID:1U7uDXwJ0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
多摩「手?」
球磨「なんだクマ?急に」
北上「なんとなぁくね」
多摩「まあ便利なもんにゃ。こうしてみかんを剥いて食べれるからにゃ」
球磨「多摩は一々白いの外すのが好きだクマ」
多摩「だってこれサバサバするにゃ。いらないにゃ」
北上「コタツでミカンはこの体のおかげだねえ」
球磨「掴むってのは確かに便利クマ」
木曾「セミも捕まえられしな」
球磨「ぅ…あれは忘れろクマ」
5人も集まるとコタツはすぐ暖まる。
・・・・・・
・・・・・・・・・
多摩「手?」
球磨「なんだクマ?急に」
北上「なんとなぁくね」
多摩「まあ便利なもんにゃ。こうしてみかんを剥いて食べれるからにゃ」
球磨「多摩は一々白いの外すのが好きだクマ」
多摩「だってこれサバサバするにゃ。いらないにゃ」
北上「コタツでミカンはこの体のおかげだねえ」
球磨「掴むってのは確かに便利クマ」
木曾「セミも捕まえられしな」
球磨「ぅ…あれは忘れろクマ」
5人も集まるとコタツはすぐ暖まる。
971: 2019/06/04(火) 04:34:22.81 ID:1U7uDXwJ0
北上「木曾はやっぱ剣振れるから?」
木曾「そうだな。艦ってのは言っちまえば足だ。究極的には移動手段でしかない。だからこの手は俺達が艦でなく人である確かな理由だ。大事な事だよ」
北上「カッコイイもんね」
木曾「う、うん…」
そこで恥ずかしがるなよ。
北上「大井っちはどう?」
大井「私ですか?そうですねえ」
ギュッと、コタツの中で大井っちが私の手を握る。
指と指が絡み合う感覚は肉球のある体では感じ取れない暖かさがあった。
大井「こうしてまた離れないように出来るのはこの身体だからこそですね」
北上「ふふ、そだね」
多摩「おうおうお熱いにゃあ」
木曾「実際暑くないかこれ?」
球磨「温度下げるクマ?」
北上「え~丁度良くない?」
木曾「そうだな。艦ってのは言っちまえば足だ。究極的には移動手段でしかない。だからこの手は俺達が艦でなく人である確かな理由だ。大事な事だよ」
北上「カッコイイもんね」
木曾「う、うん…」
そこで恥ずかしがるなよ。
北上「大井っちはどう?」
大井「私ですか?そうですねえ」
ギュッと、コタツの中で大井っちが私の手を握る。
指と指が絡み合う感覚は肉球のある体では感じ取れない暖かさがあった。
大井「こうしてまた離れないように出来るのはこの身体だからこそですね」
北上「ふふ、そだね」
多摩「おうおうお熱いにゃあ」
木曾「実際暑くないかこれ?」
球磨「温度下げるクマ?」
北上「え~丁度良くない?」
972: 2019/06/04(火) 04:35:10.82 ID:1U7uDXwJ0
球磨「球磨はどっちでもいいクマ」
多摩「下げるにゃ」
木曾「下げよう」
球磨「下げる派二」
北上「反た~い」
大井「なら私も」
多摩「ならとか言うなら無投票にしろにゃあ」
球磨「二対二だクマ」
木曾「仕方ない。せっかく手があるんだ」
多摩「手っ取り早くいくにゃ」
北上「勝者がルールね」
大井「いいでしょう」
「「「「じゃ~んけ~ん」」」」
多摩「下げるにゃ」
木曾「下げよう」
球磨「下げる派二」
北上「反た~い」
大井「なら私も」
多摩「ならとか言うなら無投票にしろにゃあ」
球磨「二対二だクマ」
木曾「仕方ない。せっかく手があるんだ」
多摩「手っ取り早くいくにゃ」
北上「勝者がルールね」
大井「いいでしょう」
「「「「じゃ~んけ~ん」」」」
973: 2019/06/04(火) 04:39:39.77 ID:1U7uDXwJ0
書かねえ作者に発言権はねえというスタイル
局戦はそこまで要らないかなと現在甲乙甲と来てE3ラストで足止めです。
ウチにはネルソンタッチも胸熱砲も火遊びファイヤーもないので…
期間は長いし友軍を待ちでじっくり行けそうです。
局戦はそこまで要らないかなと現在甲乙甲と来てE3ラストで足止めです。
ウチにはネルソンタッチも胸熱砲も火遊びファイヤーもないので…
期間は長いし友軍を待ちでじっくり行けそうです。
975: 2019/06/19(水) 03:27:50.71 ID:EliH773c0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
提督「で、勝ったはいいけど結局暑くて抜けてきたと」
北上「コタツは温度調整が難しい」
提督「おいおい」
いつも通り部屋のソファに寝転がる。
机に向かいなにかしている提督と仰向けで寝転がる私。
声だけが行き交う会話だけれど、不思議と落ち着く。
北上「この部屋暖房完璧過ぎない?一応節電なんでしょ?」
提督「そこは、ほら。お前ら温度変化には強いじゃん?」
北上「うわ職権乱用かまさか」
提督「待て待て、俺が風邪とか引いたら大変じゃん?ヤバいじゃん?予防大事じゃん?」
北上「吹雪でいいじゃん?」
提督「刺さるわー冬の海風より刺さるわー」
・・・・・・
・・・・・・・・・
提督「で、勝ったはいいけど結局暑くて抜けてきたと」
北上「コタツは温度調整が難しい」
提督「おいおい」
いつも通り部屋のソファに寝転がる。
机に向かいなにかしている提督と仰向けで寝転がる私。
声だけが行き交う会話だけれど、不思議と落ち着く。
北上「この部屋暖房完璧過ぎない?一応節電なんでしょ?」
提督「そこは、ほら。お前ら温度変化には強いじゃん?」
北上「うわ職権乱用かまさか」
提督「待て待て、俺が風邪とか引いたら大変じゃん?ヤバいじゃん?予防大事じゃん?」
北上「吹雪でいいじゃん?」
提督「刺さるわー冬の海風より刺さるわー」
976: 2019/06/19(水) 03:28:19.01 ID:EliH773c0
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「手ってどう思う?」
提督「て、手?ハンド?」
北上「そそ」
提督「急に言われてもなぁ。あ、インクうつっちった」
北上「船って手がないじゃん。でも私達はあるから、なんかこう面白いなあって」
提督「ほぉ…」
沈黙。
考えているのだろうか。
不意に提督が席を立つ音がする。
椅子をしまいこちらに向かってくる。
私が猫なら耳がぴくぴくと動いていたことだろう。
・・・・・・
・・・・・・・・・
北上「手ってどう思う?」
提督「て、手?ハンド?」
北上「そそ」
提督「急に言われてもなぁ。あ、インクうつっちった」
北上「船って手がないじゃん。でも私達はあるから、なんかこう面白いなあって」
提督「ほぉ…」
沈黙。
考えているのだろうか。
不意に提督が席を立つ音がする。
椅子をしまいこちらに向かってくる。
私が猫なら耳がぴくぴくと動いていたことだろう。
977: 2019/06/19(水) 03:28:47.91 ID:EliH773c0
仰向けで天井をボケっと見上げていた私の視界に突然提督の手が入る。
顔の方に伸ばされたその手に反射的に目を瞑る。
するとその手はゆっくりと私の前髪をサラサラと撫で、そのまま頭の上にゆきやさしく、それこそ猫を撫でるかのようにゆっくりと動かされた。
北上「…なに?」
提督「知ってるか?世の中にゃ色んな生き物がいて様々なスキンシップを取ってるけど、こうしてただ撫でるって行為をするのは人間だけらしいぜ」
北上「へぇ。それは知らなかった」
ゆっくりとではあるがしかし提督のガサツな撫で方は大井っちに編み込まれた髪型を崩してしまいそうなものだったけれど、
なんだか昔からずっとこの手に触れられていたような気持ちになって、とても、とても心地よかった。
北上「夕飯までそれお願い」
提督「バカ言うな」
なんて言いつつ私が寝るまでずっとそうしていてくれたようだった。
顔の方に伸ばされたその手に反射的に目を瞑る。
するとその手はゆっくりと私の前髪をサラサラと撫で、そのまま頭の上にゆきやさしく、それこそ猫を撫でるかのようにゆっくりと動かされた。
北上「…なに?」
提督「知ってるか?世の中にゃ色んな生き物がいて様々なスキンシップを取ってるけど、こうしてただ撫でるって行為をするのは人間だけらしいぜ」
北上「へぇ。それは知らなかった」
ゆっくりとではあるがしかし提督のガサツな撫で方は大井っちに編み込まれた髪型を崩してしまいそうなものだったけれど、
なんだか昔からずっとこの手に触れられていたような気持ちになって、とても、とても心地よかった。
北上「夕飯までそれお願い」
提督「バカ言うな」
なんて言いつつ私が寝るまでずっとそうしていてくれたようだった。
978: 2019/06/19(水) 03:36:02.26 ID:EliH773c0
ミサイルはいっぱいあるし士魂隊や内火艇もあるし同士三人もいてテンプレ装備編成は出来てるのに燃料が十万飛ぶまで割れませんでしたが私は元気です。何かもう色々と決定的に運が悪かったんじゃないかと…
この先は御札の都合で丙になるので安心、安心?
この先は御札の都合で丙になるので安心、安心?
961: 2019/05/16(木) 04:34:24.81 ID:co/3lF0I0
引用: 北上「我々は猫である」



コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります