245: 2019/09/22(日) 05:42:41.24 ID:G5m/2Yis0
前回:北上「私は黒猫だ」100匹目
最初から:北上「我輩は猫である」
・ 前書き
北上「」ハッ
目が覚めた。
しかし朝起きる時の眠りからだんだん覚醒していく感覚とはちょっと違う。
やけに意識がハッキリしている。
それにしても…
北上「目が覚めたら見知らぬ天井、ってホントにあるんだなあ」
多摩「第一声がそれかにゃ」
北上「うえっ!?」
首を声のした方へ向ける。
どうやら仰向けでベットに寝ているらしい私の右側。椅子に座りこちらを見つめていたのは多摩姉ちゃんだった。
北上「えーと、おはよう?」
多摩「早くないにゃ。とても遅いにゃ、眠り姫め」
北上「私はシンデレラらしいよ」
いつだったか海猫が言っていた戯言を思い出す。
多摩「それは知らなかったにゃ。どうりで王子様のキスじゃ目覚めないはずにゃ」
北上「王子様?」
多摩「気にするにゃ」
246: 2019/09/22(日) 05:43:21.08 ID:G5m/2Yis0
カーテンから柔らかい光が部屋に差し込む。
今は午後のようだ。
北上「…ここ、鎮守府なの?」
多摩「そうにゃ。印刷室横の空いてた部屋にベットとか機材持ち込んで無理やり医務室に仕立ててあるにゃ」
北上「あぁ、そういや鎮守府にゃ医務室ないんだったね」
多摩「普通は入渠で治るからにゃ」
北上「…」
多摩「…」
北上「今どういう状況?」
多摩「シンデレラが眠り込んでから三日経ってるにゃ」
北上「三日!?」
想像以上の事実にベットからはね起きそうになった。
のだが、"しようとしたけどできなかった"。
今は午後のようだ。
北上「…ここ、鎮守府なの?」
多摩「そうにゃ。印刷室横の空いてた部屋にベットとか機材持ち込んで無理やり医務室に仕立ててあるにゃ」
北上「あぁ、そういや鎮守府にゃ医務室ないんだったね」
多摩「普通は入渠で治るからにゃ」
北上「…」
多摩「…」
北上「今どういう状況?」
多摩「シンデレラが眠り込んでから三日経ってるにゃ」
北上「三日!?」
想像以上の事実にベットからはね起きそうになった。
のだが、"しようとしたけどできなかった"。
247: 2019/09/22(日) 05:43:59.22 ID:G5m/2Yis0
北上「あ、あれ?」
多摩「明石曰く、中身が氏んでる状態だそうにゃ」
北上「中身?」
多摩「外傷は入渠で治ったにゃ。でも何故か目を覚まさなかったにゃ。だから中身が無くなってるって、魂的な話にゃ」
北上「成仏してた?」
多摩「かもしれんにゃ。だから今は多分中身と体のリンクが切れてるんだと思うにゃ。身体があんまし動かないのはきっとそれにゃ」
北上「どうなってんだ私達の体。ロボットか何かなのかな」
多摩「ま、考えてみりゃ当たり前の話にゃ。乗り手のいない艦は動きようがないにゃ」
北上「…それもそうだ」
多摩「明石曰く、中身が氏んでる状態だそうにゃ」
北上「中身?」
多摩「外傷は入渠で治ったにゃ。でも何故か目を覚まさなかったにゃ。だから中身が無くなってるって、魂的な話にゃ」
北上「成仏してた?」
多摩「かもしれんにゃ。だから今は多分中身と体のリンクが切れてるんだと思うにゃ。身体があんまし動かないのはきっとそれにゃ」
北上「どうなってんだ私達の体。ロボットか何かなのかな」
多摩「ま、考えてみりゃ当たり前の話にゃ。乗り手のいない艦は動きようがないにゃ」
北上「…それもそうだ」
248: 2019/09/22(日) 05:44:27.70 ID:G5m/2Yis0
北上「…」
多摩「…」
沈黙が走る。
意識はハッキリしてるのにどうにも頭が回らない。
ボーッとしてるわけじゃないのに、まるで中身が抜け落ちてるような気分だ。
あ、右手が動かせた。
そっと手を上げると、多摩姉がその手を掴んでくれた。
北上「ちょっと動かせてき、え、多摩姉ちゃん?」
多摩「どうしたにゃ?」
北上「いや、その」
多摩「?」
北上「泣いてる、よ?」
多摩「…あぁ、まだ残ってたのかにゃ」
多摩「…」
沈黙が走る。
意識はハッキリしてるのにどうにも頭が回らない。
ボーッとしてるわけじゃないのに、まるで中身が抜け落ちてるような気分だ。
あ、右手が動かせた。
そっと手を上げると、多摩姉がその手を掴んでくれた。
北上「ちょっと動かせてき、え、多摩姉ちゃん?」
多摩「どうしたにゃ?」
北上「いや、その」
多摩「?」
北上「泣いてる、よ?」
多摩「…あぁ、まだ残ってたのかにゃ」
249: 2019/09/22(日) 05:45:07.44 ID:G5m/2Yis0
表情を一切変えずに静かに涙を漏らしていた。
北上「…」
多摩「北上」
北上「は、はい」
多摩「ふんっ!」ガッ
北上「グエッ!?」
一切の躊躇のない頭突きが入った。
北上「ぉ、ぉおおぉぉぉ…」
唯一動かせる右手で頭を抑える。
とんでもない威力だ。まさか石頭だったとは。
北上「…ってあれ?いないし」
扉が閉じる音がした。
部屋を出ていったのか?
北上「…」
多摩「北上」
北上「は、はい」
多摩「ふんっ!」ガッ
北上「グエッ!?」
一切の躊躇のない頭突きが入った。
北上「ぉ、ぉおおぉぉぉ…」
唯一動かせる右手で頭を抑える。
とんでもない威力だ。まさか石頭だったとは。
北上「…ってあれ?いないし」
扉が閉じる音がした。
部屋を出ていったのか?
250: 2019/09/22(日) 05:45:43.45 ID:G5m/2Yis0
そこからが大変だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
明石「…生きてるわね」
夕張「足はどう?」
北上「まだ動かせないかな」
明石「まあこの分なら時間の経過で治るでしょ」
夕張「ぶっちゃけ私達がどうこうできる範疇じゃないしね」
北上「中身の問題、なんだっけ」
明石「多分ね」
「コラァァァ!!」
北上「ん!?」
部屋の外から凄い声がした。
夕張「あ、吹雪の声だ」
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明石「…生きてるわね」
夕張「足はどう?」
北上「まだ動かせないかな」
明石「まあこの分なら時間の経過で治るでしょ」
夕張「ぶっちゃけ私達がどうこうできる範疇じゃないしね」
北上「中身の問題、なんだっけ」
明石「多分ね」
「コラァァァ!!」
北上「ん!?」
部屋の外から凄い声がした。
夕張「あ、吹雪の声だ」
251: 2019/09/22(日) 05:46:14.43 ID:G5m/2Yis0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
吹雪「ど~もお久しぶりです北上さん。私の事覚えてます?」
北上「提督のおねーちゃん」
吹雪「もっかい寝ときます?」
北上「遠慮しとく」
夕張「なんかあったの?声がしてたけど」
吹雪「どっから聞きつけたか部屋の外野次馬だらけですよ。皆心配してましたから」
明石「あ~」
吹雪「一応まだ怪我人扱いなんですから騒がしくして欲しくはないんですけれどね」
夕張「なら私達も退散しますかね」
吹雪「大丈夫そうなんですか?」
明石「多分ね。正直私達の管轄外だし」
吹雪「ど~もお久しぶりです北上さん。私の事覚えてます?」
北上「提督のおねーちゃん」
吹雪「もっかい寝ときます?」
北上「遠慮しとく」
夕張「なんかあったの?声がしてたけど」
吹雪「どっから聞きつけたか部屋の外野次馬だらけですよ。皆心配してましたから」
明石「あ~」
吹雪「一応まだ怪我人扱いなんですから騒がしくして欲しくはないんですけれどね」
夕張「なら私達も退散しますかね」
吹雪「大丈夫そうなんですか?」
明石「多分ね。正直私達の管轄外だし」
252: 2019/09/22(日) 05:46:44.04 ID:G5m/2Yis0
夕張「というわけで北上ぃ」
北上「な、なに?」
明石「約束、覚えてるわよね?」
北上「約束?」
夕張「私言ったわよ。生きて帰るための武器だって」
北上「あー…」
明石「命知らずの馬鹿にはおしおきが必要よね」
北上「ず、頭突き以外でお願いします…」
夕張「足はまだ動かないのよね?」
北上「待て何をする気だ」
明石「じゃバリちゃん足持ってて」
夕張「あいあいさー」
北上「ちょ!?」
北上「な、なに?」
明石「約束、覚えてるわよね?」
北上「約束?」
夕張「私言ったわよ。生きて帰るための武器だって」
北上「あー…」
明石「命知らずの馬鹿にはおしおきが必要よね」
北上「ず、頭突き以外でお願いします…」
夕張「足はまだ動かないのよね?」
北上「待て何をする気だ」
明石「じゃバリちゃん足持ってて」
夕張「あいあいさー」
北上「ちょ!?」
253: 2019/09/22(日) 05:47:16.95 ID:G5m/2Yis0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
吹雪「生きてましたね」
北上「生きてたね」
吹雪「実は幽霊だったり?」
北上「それは私には確かめようもないかな」
吹雪「まあ足はありますし大丈夫でしょう」
北上「まだ動かないけどね」
吹雪「ですね」ピラッ
北上「スカートめくらないで」
吹雪「ノーパンってどんな気分ですか?」
北上「寝てる分には気にならないかな。それより友人二人にパンツ剥がれることの方が恥ずかしい」
吹雪「あのパンツどうする気なんでしょうか」
北上「あまり考えたくはないね…」
吹雪「生きてましたね」
北上「生きてたね」
吹雪「実は幽霊だったり?」
北上「それは私には確かめようもないかな」
吹雪「まあ足はありますし大丈夫でしょう」
北上「まだ動かないけどね」
吹雪「ですね」ピラッ
北上「スカートめくらないで」
吹雪「ノーパンってどんな気分ですか?」
北上「寝てる分には気にならないかな。それより友人二人にパンツ剥がれることの方が恥ずかしい」
吹雪「あのパンツどうする気なんでしょうか」
北上「あまり考えたくはないね…」
254: 2019/09/22(日) 05:47:57.19 ID:G5m/2Yis0
吹雪「聞かないんですね、どうなったか」
北上「…」
吹雪「聞かれても答える気ないんですけどね」
北上「おい」
吹雪「私より相応しい人がいますからね。ここで話したら興醒めでしょう」
北上「そんな事は、ないんだけどね」
吹雪「さっき球磨型姉妹に会ってきましたよ」
北上「…」
吹雪「球磨さんと木曾さんもここに来る気満々でしたけど、多摩さんの腫れ上がったおでこを見て止めたみたいです」
北上「…」
最悪三人に頭突きを食らっていた可能性もあったわけか…多摩姉に感謝だな。
吹雪「他の娘達は一応立ち入り禁止です。それでも入口に人集りができてる辺りモテモテですねぇ北上さんは」
北上「…」
北上「…」
吹雪「聞かれても答える気ないんですけどね」
北上「おい」
吹雪「私より相応しい人がいますからね。ここで話したら興醒めでしょう」
北上「そんな事は、ないんだけどね」
吹雪「さっき球磨型姉妹に会ってきましたよ」
北上「…」
吹雪「球磨さんと木曾さんもここに来る気満々でしたけど、多摩さんの腫れ上がったおでこを見て止めたみたいです」
北上「…」
最悪三人に頭突きを食らっていた可能性もあったわけか…多摩姉に感謝だな。
吹雪「他の娘達は一応立ち入り禁止です。それでも入口に人集りができてる辺りモテモテですねぇ北上さんは」
北上「…」
255: 2019/09/22(日) 05:48:27.79 ID:G5m/2Yis0
吹雪「さて、ここは私もカッコつけてデコピンでもして部屋を去っていくのがいいんでしょうけれど、私、こう見えて結構悪い娘なので」
北上「それは、知ってる」
椅子から立ち上がった吹雪はとても悪い顔で、とても、とても楽しそうに笑う。
吹雪「反抗期なんです。素直じゃなくて、正直なんです。だから北上さん」
北上「なに」
吹雪「ありがとございました」ペコリ
お巫山戯でもなんでもない心からのお礼だった。深々と下げられた頭に私はかける言葉が見つからなかった。
北上「…」
吹雪「ご褒美はちゃーんとセッティングしておいたんでそこはご心配なく。それでは」
北上「…」
北上「それは、知ってる」
椅子から立ち上がった吹雪はとても悪い顔で、とても、とても楽しそうに笑う。
吹雪「反抗期なんです。素直じゃなくて、正直なんです。だから北上さん」
北上「なに」
吹雪「ありがとございました」ペコリ
お巫山戯でもなんでもない心からのお礼だった。深々と下げられた頭に私はかける言葉が見つからなかった。
北上「…」
吹雪「ご褒美はちゃーんとセッティングしておいたんでそこはご心配なく。それでは」
北上「…」
256: 2019/09/22(日) 05:48:56.32 ID:G5m/2Yis0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
提督「よっ」
北上「遅い」
提督「第一声がそれかよ。お前自分の立場分かってんのか」
北上「部屋の入口でグダグダしてた人に言われたくはない」
提督「ぐっ…いやだって、後ろめたいと言いますか…つか気づいてんのかよ」
北上「気配とか音でわかるよ」
提督「相変わらず敏感だなそういうのには」
北上「まあ、ね」
カーテンからは月明かりが差し込んでいた。
昼と違い刺すような夜の冷気が窓から入ってくる。
提督「よっ」
北上「遅い」
提督「第一声がそれかよ。お前自分の立場分かってんのか」
北上「部屋の入口でグダグダしてた人に言われたくはない」
提督「ぐっ…いやだって、後ろめたいと言いますか…つか気づいてんのかよ」
北上「気配とか音でわかるよ」
提督「相変わらず敏感だなそういうのには」
北上「まあ、ね」
カーテンからは月明かりが差し込んでいた。
昼と違い刺すような夜の冷気が窓から入ってくる。
257: 2019/09/22(日) 05:49:36.68 ID:G5m/2Yis0
提督「よいしょっと」
ベットの脇の椅子に座る。
そこにはきっとこの三日間、色々な人が座っていたのだろう。
提督「とりあえずこれが躊躇した理由その一な」
北上「ん?」
提督「…ほれ」
気まずそうに差し出されたそれは
北上「」
友人に剥がれたパンツだった。
北上「氏にたい」
全身で布団にくるまる。
提督の顔を見れなかった。
どうにも恥ずかしくって仕方がない。
提督「何故か夕張達に押し付けられてな…すまん」
北上「提督が謝る事じゃないけどさ…とりあえず返して」
布団から手だけ出してパンツを受け取る。
提督「おう。身体は動くようにはなったみたいだな」
北上「まあ半分くらいは、あー」
提督「どした?」
北上「足がまだなあ。どうやって履こうか」
ベットの脇の椅子に座る。
そこにはきっとこの三日間、色々な人が座っていたのだろう。
提督「とりあえずこれが躊躇した理由その一な」
北上「ん?」
提督「…ほれ」
気まずそうに差し出されたそれは
北上「」
友人に剥がれたパンツだった。
北上「氏にたい」
全身で布団にくるまる。
提督の顔を見れなかった。
どうにも恥ずかしくって仕方がない。
提督「何故か夕張達に押し付けられてな…すまん」
北上「提督が謝る事じゃないけどさ…とりあえず返して」
布団から手だけ出してパンツを受け取る。
提督「おう。身体は動くようにはなったみたいだな」
北上「まあ半分くらいは、あー」
提督「どした?」
北上「足がまだなあ。どうやって履こうか」
258: 2019/09/22(日) 05:50:04.69 ID:G5m/2Yis0
提督「あーね」
北上「…」チラッ
提督「…え、俺?」
北上「え?」
提督「あっ」
北上「えぇ!?ヤダヤダ!それだけは絶対にダメ!」
提督「お、おう!わりぃ、ってしねーよそんなこと!いや決してしたくない訳じゃなくてだな」
北上「え」
提督「何も言ってません」
北上「変O」
提督「うるせえ!もぉいいよパンツくらい。裸の付き合いした仲じゃねえか!」
そういやそんな事もあったな。あの頃はまだなんとも思わなかったけれど。
北上「あー、うん…」
提督「…」
なんだろう。変に気まずい。パンツ云々ではなく何か噛み合わない。
北上「あはは」
提督「わはは」
北上「…」チラッ
提督「…え、俺?」
北上「え?」
提督「あっ」
北上「えぇ!?ヤダヤダ!それだけは絶対にダメ!」
提督「お、おう!わりぃ、ってしねーよそんなこと!いや決してしたくない訳じゃなくてだな」
北上「え」
提督「何も言ってません」
北上「変O」
提督「うるせえ!もぉいいよパンツくらい。裸の付き合いした仲じゃねえか!」
そういやそんな事もあったな。あの頃はまだなんとも思わなかったけれど。
北上「あー、うん…」
提督「…」
なんだろう。変に気まずい。パンツ云々ではなく何か噛み合わない。
北上「あはは」
提督「わはは」
259: 2019/09/22(日) 05:50:38.91 ID:G5m/2Yis0
北上「それでさ、あの後どうなったの」
提督「どうなったかは正直分からねえんだ」
北上「どういう事?」
提督「北上も大井も反応が消えた。でも飛龍達も手負いだ。迂闊に動く訳には行かない。まして夜だしな」
北上「それもそうか」
残された皆の事なんて考えてなかった。自分の事しか見えていなかった。
提督「だから吹雪のおかげだよ。相変わらずな。俺は何も出来ちゃいねえよ」
北上「吹雪?」
提督「どうなったかは正直分からねえんだ」
北上「どういう事?」
提督「北上も大井も反応が消えた。でも飛龍達も手負いだ。迂闊に動く訳には行かない。まして夜だしな」
北上「それもそうか」
残された皆の事なんて考えてなかった。自分の事しか見えていなかった。
提督「だから吹雪のおかげだよ。相変わらずな。俺は何も出来ちゃいねえよ」
北上「吹雪?」
260: 2019/09/22(日) 05:51:18.48 ID:G5m/2Yis0
提督「あいつ作戦時何処にもいねえと思ったら叢雲連れて元帥のおっさんのとこ行ってたらしくてな」
北上「ええ!?そんないつの間に、いや、あーそっか」
"叢雲とデートしなきゃなんで"とはそういう意味か。勘繰られるくらいなら自分から巻き込んでしまおうという魂胆だろう。
提督「全部話した上で救援を寄越せと言ったらしい。無茶やってくれる。でも正解だった。アイツやっぱすげぇや」
あの人にとってもレ級は討つべき仇だった。でもそれはそれとして提督の勝手な復讐も止めようとしていた。
後者が既に止めようもない所に行っているのならきっと手を貸してくれる。それに賭けた、という事か。
提督「そんで飛龍達は無事確保。だが問題はお前らだった」
北上「反応は消えてたんだよね」
提督「ぶっちゃけ轟沈判定だよ。そうでなくともこの広い海で何の目印もなしに漂う人一人見つけるなんて無理ゲーだ」
北上「ならどうやって。偶然?」
北上「ええ!?そんないつの間に、いや、あーそっか」
"叢雲とデートしなきゃなんで"とはそういう意味か。勘繰られるくらいなら自分から巻き込んでしまおうという魂胆だろう。
提督「全部話した上で救援を寄越せと言ったらしい。無茶やってくれる。でも正解だった。アイツやっぱすげぇや」
あの人にとってもレ級は討つべき仇だった。でもそれはそれとして提督の勝手な復讐も止めようとしていた。
後者が既に止めようもない所に行っているのならきっと手を貸してくれる。それに賭けた、という事か。
提督「そんで飛龍達は無事確保。だが問題はお前らだった」
北上「反応は消えてたんだよね」
提督「ぶっちゃけ轟沈判定だよ。そうでなくともこの広い海で何の目印もなしに漂う人一人見つけるなんて無理ゲーだ」
北上「ならどうやって。偶然?」
261: 2019/09/22(日) 05:51:45.19 ID:G5m/2Yis0
提督「これ、お前は見覚えあるだろ」
提督の懐から出てきたのは
北上「え」
少し緑っぽいコンドームだった。
提督「お前、これスマホに入れてたろ」
北上「いや入れてたけど、アレだよ?金運上がるって聞いたからだからね!変な意味じゃなくて!」
提督「そうじゃなくてな。これ、夕張の作ったやつだろ」
北上「へ?うん、そう、だけど…あー!!」
提督「そういうこった」
北上「え、えぇ…」
"使えばGPSで居場所が特定できるやつ"
提督の浮気現場特定出来るとかなんとかあのメロンは言ってたな。
提督の懐から出てきたのは
北上「え」
少し緑っぽいコンドームだった。
提督「お前、これスマホに入れてたろ」
北上「いや入れてたけど、アレだよ?金運上がるって聞いたからだからね!変な意味じゃなくて!」
提督「そうじゃなくてな。これ、夕張の作ったやつだろ」
北上「へ?うん、そう、だけど…あー!!」
提督「そういうこった」
北上「え、えぇ…」
"使えばGPSで居場所が特定できるやつ"
提督の浮気現場特定出来るとかなんとかあのメロンは言ってたな。
262: 2019/09/22(日) 05:52:16.80 ID:G5m/2Yis0
提督「急に夕張が、ここ!ここに北上がいる!って位置情報出してきてな。何言ってんだどうして分かると聞いても何にも答えねえし、他に宛もないから藁にもすがる気持ちで行って見りゃホントにいるんだもんな」
北上「うそぉ…私コンドームに命救われたの?マジ?嘘でしょ?」
提督「良かったな。しっかり命を包んでくれたぜ」
北上「最悪だぁぁ…後その言い方もサイテー…」
提督「ははは、助かったんだしいいじゃねえか」
北上「良くないよぉ…」
再び布団にうずくまる。
恥ずかしいなんてもんじゃないぞこれ。
提督「人生何があるかわからんな」
北上「ホントにね…」
北上「うそぉ…私コンドームに命救われたの?マジ?嘘でしょ?」
提督「良かったな。しっかり命を包んでくれたぜ」
北上「最悪だぁぁ…後その言い方もサイテー…」
提督「ははは、助かったんだしいいじゃねえか」
北上「良くないよぉ…」
再び布団にうずくまる。
恥ずかしいなんてもんじゃないぞこれ。
提督「人生何があるかわからんな」
北上「ホントにね…」
263: 2019/09/22(日) 05:52:56.79 ID:G5m/2Yis0
提督「後は、いや、それはいいや。北上」
北上「は、はい」
急に改まって私の名前を呼ぶ。
そう、私の名前を。
提督「おかえり」
あぁ、そうか。
そうだった。
私は帰りたいと思ったんだ。
向こうではなく、ここに、この場所に。
北上「は、はい」
急に改まって私の名前を呼ぶ。
そう、私の名前を。
提督「おかえり」
あぁ、そうか。
そうだった。
私は帰りたいと思ったんだ。
向こうではなく、ここに、この場所に。
264: 2019/09/22(日) 05:53:35.89 ID:G5m/2Yis0
私も彼女も同じだった。
要するに二匹とも帰りたかったんだ。
でも私にとってはここがその場所になっていた。
その事に私が気づいていないと、彼女は気づいていた。
だからあんな事をしたんだろう。
見事に噛み合わず、綺麗にすれ違って、結局お互い帰るべき場所に帰れたわけだ。
愛する人の元へ。
全部彼女の思惑通りになっちゃったかな。
だと言うのに私は、そんな事露ほども知らずに、あんなこと考えていた。
自分の事しか考えていなかった。
要するに二匹とも帰りたかったんだ。
でも私にとってはここがその場所になっていた。
その事に私が気づいていないと、彼女は気づいていた。
だからあんな事をしたんだろう。
見事に噛み合わず、綺麗にすれ違って、結局お互い帰るべき場所に帰れたわけだ。
愛する人の元へ。
全部彼女の思惑通りになっちゃったかな。
だと言うのに私は、そんな事露ほども知らずに、あんなこと考えていた。
自分の事しか考えていなかった。
265: 2019/09/22(日) 05:54:08.76 ID:G5m/2Yis0
北上「ただいま…」
提督「それ、皆にも言ってやれよ?」
北上「分かってるよ。また頭突きはゴメンだからね」
提督「それと、こっちは大井との約束でな」
北上「大井っちの?」
大井っちが残した、大井っちの遺した約束。
そういや以前提督と約束がどうこう言ってたっけ。
提督「はい」パカッ
北上「え」
懐から出した小さな箱を開ける。
黒くて丸みを帯びた四角く、少し柔らかな見た目のその箱の中には首輪よりも小さい輪が入っていた。
提督「散々なんか洒落たセリフ言えとか言われたんだが、どうにも思いつかなくてな」
北上「いやそうでなくて」
提督「え?」
北上「い、え、提督、私の事気になってんの?」
提督「気にというか、しゅ…好きです」
噛むなよ。
提督「それ、皆にも言ってやれよ?」
北上「分かってるよ。また頭突きはゴメンだからね」
提督「それと、こっちは大井との約束でな」
北上「大井っちの?」
大井っちが残した、大井っちの遺した約束。
そういや以前提督と約束がどうこう言ってたっけ。
提督「はい」パカッ
北上「え」
懐から出した小さな箱を開ける。
黒くて丸みを帯びた四角く、少し柔らかな見た目のその箱の中には首輪よりも小さい輪が入っていた。
提督「散々なんか洒落たセリフ言えとか言われたんだが、どうにも思いつかなくてな」
北上「いやそうでなくて」
提督「え?」
北上「い、え、提督、私の事気になってんの?」
提督「気にというか、しゅ…好きです」
噛むなよ。
266: 2019/09/22(日) 05:54:46.51 ID:G5m/2Yis0
北上「だって、あれ、大井っちじゃないの?」
提督「一目惚れです」
北上「しかも一目惚れ!?」
何言ってんだこいつ。
提督「大丈夫か?さ、流石にこのタイミングは変だったか?」
北上「悪いのはタイミングじゃない…待って、提督大井っちが好きなんじゃないの?」
提督「いやそれはない。てかそんなふうに思われてたのか!?」
北上「思われてるでしょぉそりゃあ」
提督「うぉぉぉぉ…」
地獄のように深いため息。
提督「いやぁ、でもうん、そういう事かぁ。大井も吹雪もちょくちょくなんか言ってたのはそういう事かぁぁ…」
北上「思い当たる節はあるんだ…」
提督「一目惚れです」
北上「しかも一目惚れ!?」
何言ってんだこいつ。
提督「大丈夫か?さ、流石にこのタイミングは変だったか?」
北上「悪いのはタイミングじゃない…待って、提督大井っちが好きなんじゃないの?」
提督「いやそれはない。てかそんなふうに思われてたのか!?」
北上「思われてるでしょぉそりゃあ」
提督「うぉぉぉぉ…」
地獄のように深いため息。
提督「いやぁ、でもうん、そういう事かぁ。大井も吹雪もちょくちょくなんか言ってたのはそういう事かぁぁ…」
北上「思い当たる節はあるんだ…」
267: 2019/09/22(日) 05:55:20.58 ID:G5m/2Yis0
提督「北上が来る一年前に大井が来たろ?それからずっと北上サン北上サンうるさくてな」
北上「あーね。ま大井っちはそだね」
提督「一体どんなやつなんだ北上ってのはと思いつつ一年後、ようやく本人に会えたわけだ」
北上「あの時か。なんかもう随分と昔に思えるね」
提督「一目惚れです」
北上「嘘ん」
提督「マジ」
北上「具体的にどこら辺が?」
提督「え、いやそれは…」テレッ
北上「えっ、キモっ」
提督「」
怪我人のベットの横でモジモジされても困る。
北上「あーね。ま大井っちはそだね」
提督「一体どんなやつなんだ北上ってのはと思いつつ一年後、ようやく本人に会えたわけだ」
北上「あの時か。なんかもう随分と昔に思えるね」
提督「一目惚れです」
北上「嘘ん」
提督「マジ」
北上「具体的にどこら辺が?」
提督「え、いやそれは…」テレッ
北上「えっ、キモっ」
提督「」
怪我人のベットの横でモジモジされても困る。
268: 2019/09/22(日) 05:55:54.77 ID:G5m/2Yis0
提督「大井にも言ったんだよ。惚れましたって」
北上「言っちゃうんだ」
提督「流石提督ですいい趣味してますって言われた」
北上「言っちゃうんだ…」
提督「それはそれとして北上に指一本でも触れたら酸素魚雷ぶち込みますって言われた」
北上「それは言うね間違いない」
提督「そっからはガードが固くてホント…」
北上「流石大井っちだ」
提督「北上のここが良いみたいな話ではよく盛り上がるんだけどな、近づくのだけはNGなんだと」
北上「するなそんな話ぃ…」
何度目か、布団で顔を覆う。
よく2人でなんか話してたのはそれか!アホか!
アホか…
北上「言っちゃうんだ」
提督「流石提督ですいい趣味してますって言われた」
北上「言っちゃうんだ…」
提督「それはそれとして北上に指一本でも触れたら酸素魚雷ぶち込みますって言われた」
北上「それは言うね間違いない」
提督「そっからはガードが固くてホント…」
北上「流石大井っちだ」
提督「北上のここが良いみたいな話ではよく盛り上がるんだけどな、近づくのだけはNGなんだと」
北上「するなそんな話ぃ…」
何度目か、布団で顔を覆う。
よく2人でなんか話してたのはそれか!アホか!
アホか…
269: 2019/09/22(日) 05:56:38.25 ID:G5m/2Yis0
提督「でもなんか急にガードするの辞めてさ、むしろ応援された」
北上「!」
提督「色々セッティングされたりとかさ。前行ったデパートも、適当な口実つけて行ってこいヘタレがってさ。ご丁寧にプランまで」
北上「…それってさ、変わったのだいたい半年くらい前だよね。私が改装した後くらい」
提督「あー確かにそんくらいだったな」
そっか。私が改装した後。
つまり大井っちが改装した後。
"大井っちが大井っちでなくなってから"
きっとどこかで気付いたんだ。
私が誰なのか。私が何を思っているのか。誰を想っているのかを。
全部彼女の手の内か。コロコロと、まるで猫のように転がしていたわけだ。
北上「!」
提督「色々セッティングされたりとかさ。前行ったデパートも、適当な口実つけて行ってこいヘタレがってさ。ご丁寧にプランまで」
北上「…それってさ、変わったのだいたい半年くらい前だよね。私が改装した後くらい」
提督「あー確かにそんくらいだったな」
そっか。私が改装した後。
つまり大井っちが改装した後。
"大井っちが大井っちでなくなってから"
きっとどこかで気付いたんだ。
私が誰なのか。私が何を思っているのか。誰を想っているのかを。
全部彼女の手の内か。コロコロと、まるで猫のように転がしていたわけだ。
270: 2019/09/22(日) 05:57:13.01 ID:G5m/2Yis0
提督「この約束もそうだ。アイツが急に部屋に殴り込んで来てさ、今企んでること全部話せって言われて、その後協力するから一つ約束しろって」
北上「約束って」
提督「終わったら告れと。俺にフラグ立ててどうすんだよって話だろ。今にして思えば、なんか悟るってゆーか、思うところでもあったのかもな…」
北上「そうだね…」
思うところなんてもんじゃない。思い通りもいいところだ。
提督「大井はもう約束なんて分かりゃしないだろうが、約束は約束だ。だから」
北上「だから私に?」
提督「おうよ」
北上「はぁ。てーとく、いい趣味してるよ。実にいい趣味だ」
提督「そりゃどうも」
北上「約束って」
提督「終わったら告れと。俺にフラグ立ててどうすんだよって話だろ。今にして思えば、なんか悟るってゆーか、思うところでもあったのかもな…」
北上「そうだね…」
思うところなんてもんじゃない。思い通りもいいところだ。
提督「大井はもう約束なんて分かりゃしないだろうが、約束は約束だ。だから」
北上「だから私に?」
提督「おうよ」
北上「はぁ。てーとく、いい趣味してるよ。実にいい趣味だ」
提督「そりゃどうも」
271: 2019/09/22(日) 05:57:56.61 ID:G5m/2Yis0
北上「でもさ、私、ちょっと変なやつだよ」
提督「お前はそーとー変なやつだよ」
北上「あー提督もそういう認識はあるのね」
提督「大井も言ってた」
北上「大井っちにまで言われてるのか私」
提督「でも安心しろ」
北上「何がさ」
提督「俺がそうだったように、お前にも俺の知らない色々があるんだろうさ。皆そうだろ」
北上「とても北上とは思えないような色々だとしても?」
提督「北上は北上だよ。それは重雷装巡洋艦の北上って事じゃあなくて、お前はお前って事だよ。それにそれがどんなものでも、俺の知ってる北上を嫌いになる理由にはならねえよ」
北上「…」
提督「んだよそのなんとも言えない顔は」
北上「なんとも言えない顔だよ。提督」
提督「ん?」
北上「へへ、やっぱ提督趣味いいね。実にいいよ」
提督「それに関しちゃ大井のお墨付きだからな」
提督「お前はそーとー変なやつだよ」
北上「あー提督もそういう認識はあるのね」
提督「大井も言ってた」
北上「大井っちにまで言われてるのか私」
提督「でも安心しろ」
北上「何がさ」
提督「俺がそうだったように、お前にも俺の知らない色々があるんだろうさ。皆そうだろ」
北上「とても北上とは思えないような色々だとしても?」
提督「北上は北上だよ。それは重雷装巡洋艦の北上って事じゃあなくて、お前はお前って事だよ。それにそれがどんなものでも、俺の知ってる北上を嫌いになる理由にはならねえよ」
北上「…」
提督「んだよそのなんとも言えない顔は」
北上「なんとも言えない顔だよ。提督」
提督「ん?」
北上「へへ、やっぱ提督趣味いいね。実にいいよ」
提督「それに関しちゃ大井のお墨付きだからな」
272: 2019/09/22(日) 05:58:36.47 ID:G5m/2Yis0
北上「だからさ提督、お願いがあるんだけどさ」
提督「お願い?」
私が口を開きかけたその時だった。
部屋の扉が勢いよく開かれたのは。
大井「北上さ「ストォォォップ!!」グェッ!?」
扉を開け何かを叫びかけた人物はまた別の誰かによる横からのタックルで吹っ飛ばされ視界から消えた。
というか
北上「お、大井っ、ち?」
提督「なぁにやってんだあいつ」
北上「え、あれ?大井っち?大井っちだよね?」
提督「大井っちだろそりゃ。まあ大井っちかと言われたら違うのかもしれないがな」
何言ってんだこいつ。
提督「お願い?」
私が口を開きかけたその時だった。
部屋の扉が勢いよく開かれたのは。
大井「北上さ「ストォォォップ!!」グェッ!?」
扉を開け何かを叫びかけた人物はまた別の誰かによる横からのタックルで吹っ飛ばされ視界から消えた。
というか
北上「お、大井っ、ち?」
提督「なぁにやってんだあいつ」
北上「え、あれ?大井っち?大井っちだよね?」
提督「大井っちだろそりゃ。まあ大井っちかと言われたら違うのかもしれないがな」
何言ってんだこいつ。
273: 2019/09/22(日) 05:59:26.43 ID:G5m/2Yis0
開いた扉からは廊下のドタバタ騒ぎの音が聞こえてきた。
「邪魔しないでください!!北上さんを!北上さんを守らなきゃ!!」
「いいから今は黙ってろにゃ。後で痛っ!肘!肘はなしにゃ!」
「木曾はそっちの手を抑えろクマ!こういう時は単純な力技が一番クマ」
「すっげえ近づきたくないんだが」
「さっさとするにゃ!このままだとグホォッ!?」ドゴッ
「木曾ぉ!!早くするクマァ!」
「すっげぇ嫌なんだが」
「邪魔しないでください!!北上さんを!北上さんを守らなきゃ!!」
「いいから今は黙ってろにゃ。後で痛っ!肘!肘はなしにゃ!」
「木曾はそっちの手を抑えろクマ!こういう時は単純な力技が一番クマ」
「すっげえ近づきたくないんだが」
「さっさとするにゃ!このままだとグホォッ!?」ドゴッ
「木曾ぉ!!早くするクマァ!」
「すっげぇ嫌なんだが」
274: 2019/09/22(日) 06:00:05.04 ID:G5m/2Yis0
提督「…ま元気でよかったな」
北上「そうじゃなくて!大井っちが、大井っち、生きてたの?」
提督「ん?あれ、他のやつから聞いてないのか?」
北上「皆肝心な事は何も」
提督「それくらいは話せよな…つかお前も覚えていないのか?」
北上「何が」
提督「北上を見つけた時、大井のやつを掴んで離さなかったのはお前だぜ」
北上「私が?」
提督「腕をこうがっちり掴んでたって聞いたぜ」
北上「私が…」
ならそれは、私の知らない私なのかも知れないな。
北上「そうじゃなくて!大井っちが、大井っち、生きてたの?」
提督「ん?あれ、他のやつから聞いてないのか?」
北上「皆肝心な事は何も」
提督「それくらいは話せよな…つかお前も覚えていないのか?」
北上「何が」
提督「北上を見つけた時、大井のやつを掴んで離さなかったのはお前だぜ」
北上「私が?」
提督「腕をこうがっちり掴んでたって聞いたぜ」
北上「私が…」
ならそれは、私の知らない私なのかも知れないな。
275: 2019/09/22(日) 06:00:40.98 ID:G5m/2Yis0
提督「ただな、大井のやつ、"ここ半年間の記憶が無くなってる"んだ」
北上「半年間!?」
提督「ショックで記憶がってのは人間なら起こりうる事だし、艦娘がなっても不思議じゃない、のかはわからんがとりあえずはそういう見解らしい」
北上「じゃあさっき言ってた約束を覚えてないってのはそのまんまの意味か」
提督「前みたいに北上北上と、なんだか懐かしくもあるけどな」
北上「そっか」
提督「また何かの拍子に思い出すかも分からんしな。焦ることはないだろ」
北上「そうはならないと思うよ」
提督「なんでだ?」
北上「忘れたわけじゃないからだよきっと。ただ帰っただけなんだ。色々と、元に戻ったんだよ」
提督「…ほー。お前が言うならそうなんだろうな多分」
こんなにも近くにいた幸せの青い鳥は、どうやら飛び去ってしまったあとのようだ。
北上「半年間!?」
提督「ショックで記憶がってのは人間なら起こりうる事だし、艦娘がなっても不思議じゃない、のかはわからんがとりあえずはそういう見解らしい」
北上「じゃあさっき言ってた約束を覚えてないってのはそのまんまの意味か」
提督「前みたいに北上北上と、なんだか懐かしくもあるけどな」
北上「そっか」
提督「また何かの拍子に思い出すかも分からんしな。焦ることはないだろ」
北上「そうはならないと思うよ」
提督「なんでだ?」
北上「忘れたわけじゃないからだよきっと。ただ帰っただけなんだ。色々と、元に戻ったんだよ」
提督「…ほー。お前が言うならそうなんだろうな多分」
こんなにも近くにいた幸せの青い鳥は、どうやら飛び去ってしまったあとのようだ。
276: 2019/09/22(日) 06:02:16.24 ID:G5m/2Yis0
北上「ねえ提督」
提督「なんだ北上」
北上「今すぐにでも抱きつきたいけど少し我慢するね」
提督「お、おう?」
北上「話をしてもいいかな」
提督「そりゃ別に構わないけどよ。なんでまた急に」
北上「長いからだよ。千夜一夜とまではいかないけど、今夜はたっぷり付き合ってもらうよ」
提督「そんなに沢山なんの話しを」
北上「私の話」
提督「北上の?」
北上「うん。だから首輪の事はその後で」
提督「指輪と言え指輪と」
北上「同じようなものでしょ」
提督「イメージだいぶ違くねえか?」
北上「同じだよ。私にはね」
提督「それで、話ってのは」
北上「そうだねえ。長い話だし、タイトルからいこうか」
提督「随分本格的だな」
北上「えーっとねえ」
しばらくの逡巡の後、ひとつ思い浮かんだものがあった。
北上「吾輩は猫である」
提督「なんだ北上」
北上「今すぐにでも抱きつきたいけど少し我慢するね」
提督「お、おう?」
北上「話をしてもいいかな」
提督「そりゃ別に構わないけどよ。なんでまた急に」
北上「長いからだよ。千夜一夜とまではいかないけど、今夜はたっぷり付き合ってもらうよ」
提督「そんなに沢山なんの話しを」
北上「私の話」
提督「北上の?」
北上「うん。だから首輪の事はその後で」
提督「指輪と言え指輪と」
北上「同じようなものでしょ」
提督「イメージだいぶ違くねえか?」
北上「同じだよ。私にはね」
提督「それで、話ってのは」
北上「そうだねえ。長い話だし、タイトルからいこうか」
提督「随分本格的だな」
北上「えーっとねえ」
しばらくの逡巡の後、ひとつ思い浮かんだものがあった。
北上「吾輩は猫である」
277: 2019/09/22(日) 06:04:17.59 ID:G5m/2Yis0
・ 後書き
老人は大きく欠伸をした。
老後に趣味で始めた古本屋。周りを全て老いた物で囲んだ安らぎの空間だ。
レジ替わりの台の脇で安楽椅子に揺れながらいつもと変わらない時間を過ごしていた。
老人「ん?」
ふいに僅かに戸が揺れる音がした。
店の中からでは所狭しと並んだ本棚のせいで入口が見えない。
風のイタズラだとは思いながらも客の来た可能性を考え春の陽気で眠りかけていた体を起こす。
手元を漁り老眼鏡を掛け店を見渡す。
やはり人影は無い。
いや、"何かが視界の下で動いた"。
吹雪「お久しぶりです吹雪です!」ヒョコ
老人「うお!?吹雪か!」
吹雪「お元気そうでなによりです」
老人「お前さんもな」
驚きとともに妙な懐かしさが込み上げてくる。
数年ぶりではあるが、それ以上に久しぶりに彼女を見た気がした。
老人は大きく欠伸をした。
老後に趣味で始めた古本屋。周りを全て老いた物で囲んだ安らぎの空間だ。
レジ替わりの台の脇で安楽椅子に揺れながらいつもと変わらない時間を過ごしていた。
老人「ん?」
ふいに僅かに戸が揺れる音がした。
店の中からでは所狭しと並んだ本棚のせいで入口が見えない。
風のイタズラだとは思いながらも客の来た可能性を考え春の陽気で眠りかけていた体を起こす。
手元を漁り老眼鏡を掛け店を見渡す。
やはり人影は無い。
いや、"何かが視界の下で動いた"。
吹雪「お久しぶりです吹雪です!」ヒョコ
老人「うお!?吹雪か!」
吹雪「お元気そうでなによりです」
老人「お前さんもな」
驚きとともに妙な懐かしさが込み上げてくる。
数年ぶりではあるが、それ以上に久しぶりに彼女を見た気がした。
278: 2019/09/22(日) 06:05:16.37 ID:G5m/2Yis0
地面より高い位置に置かれた台からは背伸びした吹雪の顔だけが見える。
数年前と変わらない吹雪が。
老人「艦娘は成長しないんだったな」
吹雪「分かりませんよ?私改四とかしちゃうかも」
老人「なんだそりゃ」
吹雪「成長の話ですよ。成長と言うより変化かな?」
老人「それで、今日はどうしたんだ?数年ぶりに顔見せにて」
吹雪「色々と話しておきたい事がありまして」
老人「話か。ワシみたいなのが1番好むやつだな」
老人が椅子にゆっくりと、深々と座り直す
数年前と変わらない吹雪が。
老人「艦娘は成長しないんだったな」
吹雪「分かりませんよ?私改四とかしちゃうかも」
老人「なんだそりゃ」
吹雪「成長の話ですよ。成長と言うより変化かな?」
老人「それで、今日はどうしたんだ?数年ぶりに顔見せにて」
吹雪「色々と話しておきたい事がありまして」
老人「話か。ワシみたいなのが1番好むやつだな」
老人が椅子にゆっくりと、深々と座り直す
279: 2019/09/22(日) 06:06:10.45 ID:G5m/2Yis0
老人「どんな話だ」
吹雪「いい話ですよ」
老人「誰の話だ」
吹雪「そうですねぇ。ウチの話です」
老人「いつの話だ」
吹雪「今までの話です。ちょっと遅くなりましたけど、ようやく落ち着いたので」
老人「良い話か?」
吹雪「はい!」
そのまま飛び上がるんじゃないかという程に勢いよく返事をする。
吹雪「とっても、とても…」
しかしその満面の笑顔が段々としわくちゃになっていく。
吹雪「凄く、良い話です…」
溢れ出る涙を押し止めようとするが次第に喉から嗚咽だけが漏れ始める。
だがそれは散り行く花のような悲しいものではない。
老人(ああ、久しぶりに見た)
思うがままに感情を振り撒く、かつて彼女の慕う提督と共にいた時に見たなんの偽りもないそのままの彼女だ。
吹雪「いい話ですよ」
老人「誰の話だ」
吹雪「そうですねぇ。ウチの話です」
老人「いつの話だ」
吹雪「今までの話です。ちょっと遅くなりましたけど、ようやく落ち着いたので」
老人「良い話か?」
吹雪「はい!」
そのまま飛び上がるんじゃないかという程に勢いよく返事をする。
吹雪「とっても、とても…」
しかしその満面の笑顔が段々としわくちゃになっていく。
吹雪「凄く、良い話です…」
溢れ出る涙を押し止めようとするが次第に喉から嗚咽だけが漏れ始める。
だがそれは散り行く花のような悲しいものではない。
老人(ああ、久しぶりに見た)
思うがままに感情を振り撒く、かつて彼女の慕う提督と共にいた時に見たなんの偽りもないそのままの彼女だ。
280: 2019/09/22(日) 06:08:11.20 ID:G5m/2Yis0
老人「泣きたくなったらまた来いとは言ったが、そんなに泣かれるとは思わなんだな」
吹雪「は゛い゛」グスン
老人「何がそんなに嬉しかったんだ?」
吹雪「終わったんです…やっと…全部…」
老人「そうかい」
吹雪「だから始まるんです。やっと」
老人「なら、その終わった話は話さなくていい」
吹雪「そうもいきません!もう貴方くらいしかいませんから。この話が出来るのは」
老人「いいのか?楽しいだけの話じゃないんだろう?」
吹雪「はい!」
力強く頷く。
吹雪「最後がハッピーエンドだから大丈夫です。それに」
今度は泣かなかった。
吹雪「忘れたい話じゃないですから!」
吹雪「は゛い゛」グスン
老人「何がそんなに嬉しかったんだ?」
吹雪「終わったんです…やっと…全部…」
老人「そうかい」
吹雪「だから始まるんです。やっと」
老人「なら、その終わった話は話さなくていい」
吹雪「そうもいきません!もう貴方くらいしかいませんから。この話が出来るのは」
老人「いいのか?楽しいだけの話じゃないんだろう?」
吹雪「はい!」
力強く頷く。
吹雪「最後がハッピーエンドだから大丈夫です。それに」
今度は泣かなかった。
吹雪「忘れたい話じゃないですから!」
281: 2019/09/22(日) 06:17:24.66 ID:G5m/2Yis0
馬鹿野郎一ヶ月も空けやがった!
こんなに長くなるなんて私聞いてない。
後先考えず書くものじゃないです。
でも楽しかったからいいんです。
何思ったか急に物書き始めた素人ですが皆様のおかげでこんなにも調子に乗って長い話になりました。
最後まで付き合った方にはボスにカットイン決めてくれた娘くらい感謝です。
でも次は短い話にしようと思いましたまる
こんなに長くなるなんて私聞いてない。
後先考えず書くものじゃないです。
でも楽しかったからいいんです。
何思ったか急に物書き始めた素人ですが皆様のおかげでこんなにも調子に乗って長い話になりました。
最後まで付き合った方にはボスにカットイン決めてくれた娘くらい感謝です。
でも次は短い話にしようと思いましたまる
283: 2019/09/22(日) 11:10:31.82 ID:G+G71TgN0
乙です
また最初から見直してくるかなあ
また最初から見直してくるかなあ
284: 2019/09/22(日) 15:16:05.66 ID:okljzoHto
乙
引用: 北上「私は黒猫だ」



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