147: 2014/12/29(月) 18:03:13.20 ID:EMfVvU6t0


前回:明石「…え?前職ですか?」
最初から:木曾「艦娘の前職を知りたい?」

赤城「…前職?」

赤城「それは艦隊の指揮に関係することなのですか?」

赤城「…ふむ、なるほど。わかりました」

赤城「特別に提督だけにお話ししましょう」

赤城「ですので、ほかの人には話さないでくださいね」

赤城「加賀さんにも話してないことですから」

赤城「…さて、ではどこからお話ししましょうか」
艦隊これくしょん -艦これ- おねがい!鎮守府目安箱 1 (電撃コミックスNEXT)
149: 2014/12/29(月) 18:06:08.21 ID:EMfVvU6t0
赤城「私は8歳の時に両親を亡くしました」

赤城「本当に不幸な…ただ不幸な事故でした」

赤城「交通事故だったんです」

赤城「暗い山の中で、道を見誤って崖下にまっさかさま」

赤城「車の後部座席にいた私は幸運にも助かりましたけど」

赤城「…両親は、即氏だったそうです」

150: 2014/12/29(月) 18:08:52.79 ID:EMfVvU6t0
赤城「私は15歳まで孤児院で過ごしました」

赤城「そこである程度は楽しい生活を送っていたんですけど」

赤城「やっぱりどうしても心が空虚な感じになりがちで」

赤城「結局高校にはいかずに軍に入ったんです」

赤城「…まあそれ以上に大きな原因として」

赤城「孤児院の食費を圧迫しすぎたというのがありましたけど」

151: 2014/12/29(月) 18:13:25.67 ID:EMfVvU6t0
赤城「私は最初陸軍に入ったんです」

赤城「そこで2年ほど歩兵として訓練を受けていたんですが」

赤城「初めての狙撃訓練で異常にいい成績を残してしまいまして」

赤城「結局そのあと警察のほうに引き抜かれて」

赤城「17歳で警察の機動部隊の狙撃犯に所属することになりました」

赤城「…んー、才能というか…目が良かったことは一つの要因かもしれませんね」

赤城「私、スコープなしでも500mくらいの距離であれば狙撃できるんですよ」

赤城「…本当ですよ!!なんなら今度お見せしましょうか!?」

152: 2014/12/29(月) 18:22:47.69 ID:EMfVvU6t0
赤城「その1年後のことです」

赤城「私は政府直属の特殊部隊に召集されました」

赤城「政府の特殊部隊って、常に存在してるわけではなくて」

赤城「必要性が生じたときに、その必要に応じて隊員が選ばれるんですよ」

赤城「ですから当然、名前もありません」

赤城「…私は狙撃手の一人として、部隊に参加しました」


赤城「目的は、とある人物の身柄の拘束」


赤城「大陸で武器商を営んでいた、指名手配犯の確保でした」

153: 2014/12/29(月) 18:24:57.53 ID:EMfVvU6t0
赤城「提督は『トワイライト・レイン』という組織をご存知ですか?」

赤城「…ええ。そのテロ組織です」

赤城「そのテロ組織に対して武器の供給を行っていたのが」

赤城「国内で指名手配を受けたとある日本人だったようで」

赤城「私たちは彼を傷つけることなく回収せよ、という命令を受けました」

赤城「…ああ、ご存知でしたか」

赤城「まあ、提督も軍の士官ですから」

赤城「そのぐらいの情報なら、知っていておかしくはないですね」

154: 2014/12/29(月) 18:28:29.80 ID:EMfVvU6t0
赤城「任務は熾烈を極めました」

赤城「標的の協力者と思われる組織からの攻撃、威嚇」

赤城「必要以上の爪痕を残すことは許されません」

赤城「あくまで『存在しない』部隊ですから、それなりの戦い方をする必要があったんです」

赤城「なんとか標的を人気のないところに誘導して」

赤城「さああとは無力化するだけという段になって」

赤城「標的が一人で移動しているわけではないことがわかりました」

155: 2014/12/29(月) 18:33:44.58 ID:EMfVvU6t0
赤城「用心棒だろう、と思ったんです」

赤城「標的に家族がいるという情報は、ありませんでしたから」

赤城「…隊長は我々狙撃班に、その用心棒の殺害を命じました」

赤城「標的をおびき寄せて、まず用心棒を狙撃し」

赤城「無防備になった標的を強襲班が取り押さえる」

赤城「それが事前に立てられた計画でした」

赤城「そしてその用心棒の殺害が、私に任されました」

156: 2014/12/29(月) 18:37:55.72 ID:EMfVvU6t0
赤城「作戦が開始されたのは、もうすぐ日が暮れるというときでした」

赤城「うまく強襲班が標的を街角に追い込んで」

赤城「その角を出てきたところを撃つ」

赤城「難易度的にはそう高くはありませんでした」

赤城「当時の私の技量からすれば、十二分に成功させられるはずの任務」

赤城「…だった、はずなんですけど」

158: 2014/12/29(月) 18:40:39.97 ID:EMfVvU6t0

赤城「…女の子だったんです」


赤城「10歳ぐらいの…小さな、女の子だったんです」


赤城「決して用心棒には見えませんでした」

赤城「仮に用心棒だったとしても、少なくとも見た目は普通の女の子でした」


赤城「標的の娘だったのかも…しれません」

159: 2014/12/29(月) 18:43:37.90 ID:EMfVvU6t0
赤城「私は撃つのを一瞬だけ、躊躇しました」

赤城「ほんの、一瞬だけ」

赤城「それが、失敗でした」

赤城「任務なんだ、やらないといけないんだ」

赤城「そう自分に言い聞かせて引き金を引いたときには」

赤城「もう標的は女の子をかばうように射線上に動いていて」

赤城「私の放った弾丸は…」


赤城「…二人の頭を、撃ち抜いていました」

160: 2014/12/29(月) 18:46:53.77 ID:EMfVvU6t0
赤城「当然任務は失敗」

赤城「私は作戦失敗の責任をとることになって」

赤城「機動部隊を辞任して、警察の一般職務に就きました」

赤城「それが、20年ほど前のことです」

161: 2014/12/29(月) 18:51:01.12 ID:EMfVvU6t0
赤城「その後8年間、私は後悔し続けました」

赤城「当時の私の練度が高ければ、女の子を殺さずに無力化することができた」

赤城「奪われるべきでなかった命を、2つも奪わずに済んだ」

赤城「心のどこかに、慢心があったのかもしれません」

赤城「私はすごいんだ、うまいんだ」

赤城「そんな心で、集中力を必要とする狙撃がうまくいくはずがありません」

162: 2014/12/29(月) 18:54:35.27 ID:EMfVvU6t0
赤城「そういえば、弓道を始めたのもその時期でした」

赤城「そのとき同僚だった人に勧められて、始めたんです」

赤城「…不思議と、弓を引いているときだけは」

赤城「全てを忘れることができたんです」

赤城「無我の境地ってやつ…ですかね?」

赤城「…あら、提督漫画とかお読みにならないんですか?」

赤城「今のネタが伝わらないとは…残念です」

163: 2014/12/29(月) 18:57:23.82 ID:EMfVvU6t0
赤城「…17年前?…ああ、首都襲撃事件のことですね」

赤城「あの時は私は一応警察職員でしたから」

赤城「避難誘導やら交通規制やらのほうに駆り出されていて」

赤城「実質的な戦闘には参加していません」

赤城「なので、幸いにも無傷でした」

赤城「…変なところで悪運強いんですよ、私」

164: 2014/12/29(月) 19:02:42.91 ID:EMfVvU6t0
赤城「12年前、艦娘化手術が発明されて」

赤城「私は呼びかけ用のポスターを町中に張ることになりました」

赤城「それで割り当てられたポスターを眺めていて」

赤城「…ふと、あの女の子のことを思い出して」

赤城「なんというか…いてもたってもいられなくなって」

赤城「ある意味、罪滅ぼしのつもりで」

赤城「私は艦娘に志願しました」

赤城「たぶん心のどこかで、あのミスを引きずっていたんだと思います」

165: 2014/12/29(月) 19:07:44.26 ID:EMfVvU6t0
赤城「…いえ、もしかしたら」

赤城「私は氏にたかったのかもしれません」

赤城「両親に先立たれ、人の命を誤って奪い、防衛戦にも参加せずにすんだ」

赤城「申し訳なさで、いっぱいでした」

赤城「私だけ生き残って、ごめんなさい」

赤城「そんな気持ちが強かったのでしょう」

166: 2014/12/29(月) 19:08:35.87 ID:EMfVvU6t0
赤城「幸か不幸か、正規空母『赤城』の適応が出て」

赤城「私は空母として艦隊に着任しました」

赤城「その後、2人の提督の指揮下に入りましたが」

赤城「これまた幸か不幸かお二人とも非常に有能なお方でして」

赤城「戦闘のさなか氏ぬこともできず、現在に至るというわけです」

167: 2014/12/29(月) 19:10:33.08 ID:EMfVvU6t0
赤城「…もう、そんな顔なさらないでください。冗談ですよ、冗談」

赤城「では私はこれで失礼しますね。指揮のお役には立ったでしょうか?」

赤城「…?なんですか言いたいことって」


赤城「…生き、てる?」


赤城「あの、女の子が?」

168: 2014/12/29(月) 19:14:17.90 ID:EMfVvU6t0
赤城「そんな…で、でも、確かにあの子の頭を、私はっ!!」

赤城「…目、だけ…そうだったんですか」

赤城「…今、その子は何処に?」

赤城「…まあ、そうですよね…個人情報ですから」

赤城「でも…そっか…生きてたのね…」

赤城「…」

赤城「…よかった、です」ウルッ

赤城「本当に…よかった」グスッ

171: 2014/12/29(月) 19:20:46.23 ID:EMfVvU6t0
赤城「…すいません、お恥ずかしいところをお見せしました」グシグシ

赤城「一航戦・赤城、これからも提督のために尽力いたしますので」

赤城「どうかよろしくお願いいたします」ニコ

赤城「では、わた…質問?なんでしょう」

赤城「前の提督…あれ、お会いしたことないんですか?」

赤城「…ああ、ちゃんと挨拶したことないってことですか」

赤城「でも挨拶って言っても…もう退役されてますよ?」

赤城「家族もいないようでしたし…今は山奥で暮らしてるとか」

赤城「あ、でも恋人の写真なら見せてもらったことありますよ?」

赤城「今から35年ぐらい前の写真でしたけど」

赤城「日本軍の軍服を着ていらしたんで、彼女さんのほうも軍人さんだったと思いますけど」

赤城「写真を見た限りでは、かなりスタイルのいい」

172: 2014/12/29(月) 19:21:29.10 ID:EMfVvU6t0



赤城「―――――クセのある、金髪の女性でしたけど」




173: 2014/12/29(月) 19:23:40.80 ID:EMfVvU6t0
はい赤城編終了です
いかがでしたでしょうか

川内編を始める前に少し休憩します
さっきから変な体勢でタイプしてたんで肩が痛い
次の投稿は1時間後ぐらいを目安にしてるです

ではいったん投下休止
川内「…前職?そんなこと聞いてどうすんのさ」

引用: 木曾「艦娘の前職を知りたい?」