437: 2019/04/04(木) 05:49:03.68 ID:kMuPU5cK0
438: 2019/04/04(木) 05:49:38.75 ID:kMuPU5cK0
――有咲の蔵――
山吹沙綾「…………」
戸山香澄「…………」
439: 2019/04/04(木) 05:50:21.55 ID:kMuPU5cK0
沙綾「……香澄、いい加減折れたら?」
香澄「やだ。そっちこそ折れてよ」
沙綾「それは無理」
香澄「さーやの分からず屋」
沙綾「香澄だけには言われたくない」
香澄「ふん、知らないもん」
沙綾「なんでこんなに頑固なのかなぁ」
香澄「それこそさーやにだけは言われたくないよ」
沙綾「はいはいそうですか」
香澄「さーやのバカ」
沙綾「言うに事欠いてバカ? バカって言う方がバカなんだよ?」
香澄「知らないっ」
440: 2019/04/04(木) 05:50:58.17 ID:kMuPU5cK0
沙綾「はぁー……」
香澄「……なに、そのわざとらしいため息は?」
沙綾「いいえ、別に?」
香澄「別にじゃないでしょ」
沙綾「はぁー、そう。そんなに気になるんだ。はぁー……」
香澄「なんでそんなイジワルするの?」
沙綾「別に? 私はイジワルしてるつもりなんてないよ?」
香澄「イジワルだよ。どう考えても嫌がらせみたいな感じだもん」
沙綾「香澄がそう思うならそうなんじゃない?」
香澄「ほら! そう言うってことはやっぱりイジワルなんじゃん!!」
沙綾「知らないよ。香澄がそう思うならって私は言っただけだし」
香澄「うぅぅっ……!」
沙綾「……ふんだ」
441: 2019/04/04(木) 05:51:41.76 ID:kMuPU5cK0
香澄「ああもう、分かった!! それじゃあ白黒ハッキリさせようよ!!」
沙綾「いいよ。こっちもいい加減、純みたいに拗ねた香澄の相手なんてしてられないし」
香澄「またそうやって子供扱いする!!」
沙綾「事実だし。私間違ったこと言ってないし」
香澄「さーやの方が子供っぽいじゃん!」
沙綾「そんなことありませーん」
香澄「ちょっと妹と弟がいてお姉ちゃんオーラバリバリだからって調子に乗らないでよ!!」
沙綾「香澄こそ、妹がいるくせに甘えたがりの妹オーラバリバリのくせに変なこと言わないで」
442: 2019/04/04(木) 05:52:36.67 ID:kMuPU5cK0
香澄「あーもう怒った! 私、完全に怒ったからね!」
沙綾「私はもうとっくに怒ってるけどね。香澄よりも断然早く怒ってるからね」
香澄「でも怒りレベルはこっちの方が上だから!」
沙綾「いやこっちの方が怒ってる時間長いから。私の方がレベル上だから。それなのに香澄に付き合ってあげてたからね?」
香澄「さーやいつも何も言わないじゃん! 言ってくれなきゃ分かんないもんそんなの! そんなこと言うならちゃんと怒ってよ! 一緒に怒らせてよ!!」
沙綾「言ってること無茶苦茶だからね。今回は香澄だって何も聞いてこなかったじゃん」
香澄「だって当たり前のことだもん!!」
沙綾「当たり前? はぁ、当たり前。へぇ、香澄は自分が当たり前だって思うことを平気で私に『当たり前』として押し付けるんだ? へぇ?」
香澄「だからどうしてそんなイジワルな言い方するの!?」
沙綾「事実を言っただけだし。イジワルじゃないし」
443: 2019/04/04(木) 05:53:30.54 ID:kMuPU5cK0
香澄「もう本当の本当に怒ったからね!? 知らないよ!?」
沙綾「私も知らない。朝ご飯はパンじゃなくて白米派の香澄なんて知らないよ」
香澄「何言ってるの、さーや!? 白いご飯は日本の特産だよ!? 日本のソウルフードなんだよ!? それなのにさーやが『朝は断然パンだよね』なんて言うからこうなったんじゃん!!」
沙綾「だって当たり前のことだし。時代は移ろうんだよ? 朝ご飯は白米なんていう固定観念に囚われてたら時間の流れに置いてかれるよ?」
香澄「そんなことないもん!!」
沙綾「そんなことありますからねー? 統計でも出てるからね? 今はパン派の方が多いんだよ? ほらほら、ここにそう書いてあるでしょ?」つスマホ
香澄「そのデータ古いじゃん! 2012年のやつって書いてある!! そんなこと言うなら……ほらこれ!! ご飯派は『絶対にご飯がいい』っていう固定ファンが多い統計もあるから!!」つスマホ
444: 2019/04/04(木) 05:53:59.89 ID:kMuPU5cK0
沙綾「やっぱり朝に白いご飯を食べる人は頑固な人が多いんだね。香澄みたいに」
香澄「さーやも十分頑固だからね!!」
沙綾「知らなーい」
香澄「分かった分かりました!! さーやがそう言うならこっちにだって考えがあるもん!!」
沙綾「つーん」
香澄「そんなそっぽを向いてられるのも今のうちだからね!! ちょっと待ってて、絶対に逃げないでよ!?」
沙綾「はいはい、絶対的な勝者のパン派は逃げるなんて臆病なことはしないから、早く行ってきたら?」
香澄「ふんっ、そんなことすぐに言えなくさせるから!!」
445: 2019/04/04(木) 05:54:40.56 ID:kMuPU5cK0
―しばらくして―
香澄「ただいまっ!!!」
沙綾「おかえり。遅かったね、そのまま逃げ帰ったのかと思ったよ」
香澄「さーや置いてひとりで帰るワケないじゃん!!」
沙綾「知ってる」
香澄「じゃあいちいちイジワルな言い方しないで! とにかく、コレ!!」つオニギリ
沙綾「はぁ、そのおにぎりがどうかしたの?」
香澄「食べて!」
沙綾「はー、そういう強硬手段に出るんだ? 言葉じゃ勝てないから実力行使に出るんだ? そんな手にいちいち」
香澄「今っ、有咲のおばあちゃんにご飯炊いてもらって、私が握ったやつだから!! 食べられないなら私が食べさせるよ!!」
沙綾「背中の傷はパン派の恥だからね。正々堂々受けて立つよ」
446: 2019/04/04(木) 05:55:35.26 ID:kMuPU5cK0
香澄「じゃあどうぞ! あーん!!」
沙綾「はぁー、仕方ないなぁホント。はむっ……」
香澄「どう!? 分かったでしょ!?」
沙綾「……いや、こんなおにぎり1個で分かれば苦労はしないからね? きのことたけのこは戦争しないからね? 香澄が直に手で握ってくれたっていう温もりは感じるけど、それとこれとは話が別だからね?」
香澄「そう言うと思ってまだあと3個用意してきてあるから!!」
沙綾「はー、出た出た。まーたそういうことするんだね? はぁー本当にもう、はぁー……」
香澄「さぁ食べて!!」
沙綾「はいはい、言われなくても食べるから。はぁ……食べやすいようにひとつひとつが小さく握られててちゃんと海苔も巻いてあって私の好みの塩加減になってるとか、白米派はやることがいやらしいなぁホント。はむはむ……」
香澄「お茶! ここに置いておくからね!!」
沙綾「それはどーも。はむはむはむ……」
447: 2019/04/04(木) 05:56:12.26 ID:kMuPU5cK0
香澄「どう!? これで分かったでしょう!?」
沙綾「いいや、分からないよ。白米の良さなんてこれから毎日香澄がおにぎり作ってくれなきゃ絶対に理解できないね」
香澄「いーよ、受けて立つよ!!」
沙綾「はぁー、ホント好戦的で困るなぁ。ここまでされたら私も黙ってるワケにはいかないじゃん」
香澄「なに!? まだ何か言いたいことがあるの!?」
沙綾「別に? 目には目をってことだけど? ちょっと待っててもらえる? まぁ、負けるのが怖いなら逃げてもいいけど」
香澄「さーやが待ってって言うなら氏ぬまで待つに決まってるじゃん!!」
沙綾「その言葉、後悔しないといいね。それじゃあちょっと行ってくるから」
448: 2019/04/04(木) 05:57:07.72 ID:kMuPU5cK0
―しばらくして―
沙綾「ハァハァ……ちゃ、ちゃんと逃げないで……ハァ、待ってたね……」
香澄「当たり前だよ! そっちこそ、あんまり遅いから事故にでもあったんじゃないかってちょっと不安になってたからね!!」
沙綾「ハー、敵に塩を送ったつもりかな? 本当に卑怯だよね、香澄って……ハー、ハー」
香澄「そんな息も絶え絶えに言われたって心配しかしないんだから!! お茶飲んでさーや!!」
沙綾「言われなくたって……」ゴクゴク
香澄「それで!? はっ、その手に持ってるのはまさか……!」
沙綾「ぷは……そう、やまぶきベーカリーのパンだよ。それも私の手作りで焼きたての」
449: 2019/04/04(木) 05:57:44.10 ID:kMuPU5cK0
香澄「うっわぁ、さーやって本当にそういうズルい手ばっかりいつも使ってくるよね!? どうせ息を切らせてたのだってパンが冷めないようにって全力疾走してきたんでしょ!?」
沙綾「さぁ? 香澄がそう思うならそうなんじゃない?」
香澄「出た出たお決まりのセリフ!! ホントさーやズルい!!」
沙綾「いやいや、香澄には負けますからねー?」
香澄「どーいう意味!?」
沙綾「別に? それより、これを食べればいかにパンが白米より優れてるかって分かるから、覚悟が出来たらさっさと食べてもらっていいかな?」
香澄「ふん、そんなこと言う人のパンなんて」
沙綾「ああそうだ。私は香澄に強引に食べさせられたのに、香澄はそういう辱めを受けないのは不公平だよね。仕方ないから私が直々に食べさせてあげるよ」つパン
香澄「覚悟とは! 暗闇の荒野に進むべき道を切り開くこと! 受けて立つよさーや!!」
450: 2019/04/04(木) 05:59:09.61 ID:kMuPU5cK0
沙綾「威勢だけはいいね。それじゃあさっさと食べてくれるかな? はい、あーん」
香澄「あーん!! もぐ……!」
沙綾「分かったでしょ?」
香澄「……全然、ぜーんぜん分からないからね! こんなことで分かるならイヌ派とネコ派も戦争しないからね! いつもさーやからフワッて香る甘くていい匂いがギュッと詰まってるけど、それとこれとは全然関係ないからね!!」
沙綾「本当に香澄は分からず屋の頑固者だねー。まぁ、往生際が悪いのも想定内だし、まだまだたくさんパンはあるんだけど」
香澄「出たっ、さーやお得意の私のことはなんでも分かってますよーってやつ!! そういうところがズルいよね! パンだって食べやすいサイズに切り分けられてるし、甘いものから塩っぽいやつまで飽きないようにバリエーションが無駄に豊富で食べる人のことをちゃんと考えてあるし!! 本当にズルい!! もぐもぐ……!」
沙綾「牛乳はここに置いとくから。飲みたければ飲めば?」
香澄「またそうやって! 私がパンと一緒に牛乳飲むのにハマってることまで把握してるし!! もぐもぐもぐ……!」
451: 2019/04/04(木) 05:59:36.42 ID:kMuPU5cK0
沙綾「これで流石に香澄も分かったよね?」
香澄「何にも分かんないよ! これから毎日さーやの手作りパン食べなきゃ何にも分かんないもんね!!」
沙綾「いいよ。仕方ないから頑固で分からず屋の香澄が理解できるまで生涯付き合ってあげる」
香澄「聞いたからね! その言葉絶対忘れないからね!!」
沙綾「どうぞご自由に。私だってさっき香澄が言ったセリフ、何があっても絶対に忘れないから」
452: 2019/04/04(木) 06:00:02.42 ID:kMuPU5cK0
香澄「あーもう!」
沙綾「あーホント」
香澄「さーや大好き!!」
沙綾「香澄大好き」
……………………
453: 2019/04/04(木) 06:00:41.88 ID:kMuPU5cK0
――有咲の蔵 階段前――
市ヶ谷有咲「…………」
有咲「…………」
有咲「……いや、なんだよこれ。あいつら本当にいい加減しろよ」
有咲「はぁー……本当にもう……はぁぁぁぁ~……」
有咲「……りみんとこ行こ……」
おわり
454: 2019/04/04(木) 06:01:09.95 ID:kMuPU5cK0
なんだかんだポピパが一番好きで、その中でも特に沙綾ちゃんが好きです。
エイプリールフールの沙綾ちゃんの「元村娘の聖女」とかいう設定はとても妄想が捗ります。
でも白米派の自分とは相容れないだろうなーと思いました。そんな話でした。
引用: 【バンドリ】短編



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