239: 2020/05/29(金) 19:36:25.42 ID:TmxB6R7p.net

245: 2020/05/31(日) 19:26:19.63 ID:NSbPis7X.net
・12

千歌「花丸ちゃんはお酒飲む?」

花丸「えと、じゃあ少しだけ」

千歌「おっけ、何飲む?」

花丸「んーと……レモンサワーで」

善子「へぇ、案外可愛いの飲むのね」

花丸「どういう意味ですか」

善子「いやなんか、雰囲気的に日本酒とか好きそうと思って」

246: 2020/05/31(日) 19:26:40.53 ID:NSbPis7X.net
花丸「人を見た目で判断するのは良くないずら」

千歌「そーだよ!善子ちゃんサイテー!」

善子「見た目じゃないわ。雰囲気よ雰囲気」

花丸「屁理屈ずら!」

千歌「そーだそーだ!屁だ!」

善子「誰が屁よ!」

247: 2020/05/31(日) 19:26:57.23 ID:NSbPis7X.net
千歌「かんぱいぱーい!」

花丸「かんぱいぱーい!」

善子「真似しなくていいのよ」

花丸「今どきの社会人のトレンドかなと……」

善子「いやコイツだけだから」

248: 2020/05/31(日) 19:27:16.35 ID:NSbPis7X.net
千歌「違うよ、じょーしきだよ!」

善子「いいからあんたはもう少し声抑えて。恥ずかしい」

千歌「誰が奥ゆかしい和風美人だ!その通りだけど!」

善子「言ってないし静かにしてって。耳腐ってんの?」

花丸「ずら……」

249: 2020/05/31(日) 19:27:38.31 ID:NSbPis7X.net
千歌「花丸ちゃんは今何年生なの?」

花丸「三年です」

千歌「へぇー、じゃああれだね。今が一番楽しいね」

花丸「そう……かな?」

善子「大学生はいつでも楽しいでしょ。何せ人生の夏休みなんだし」

千歌「んー、そうだね。そうだそうだ」

250: 2020/05/31(日) 19:27:54.02 ID:NSbPis7X.net
花丸「お二人は楽しかったんですか?」

善子「そう……ね。まぁ、楽しかったって言ってもいいのかしら」

千歌「だね。結果的には楽しかったよ」

花丸「結果的に?」

善子「ま、そうね。結果的には」

251: 2020/05/31(日) 19:28:13.78 ID:NSbPis7X.net
花丸「どういうことですか?」

善子「まぁ、なんていうか……今の状況が出来上がったのが大学の時だったの」

千歌「そうそう。私たちね、二人で大学中退して逃げ出してきたの」

花丸「え……逃げ出した?」

善子「ちょっと、千歌」

千歌「いーじゃん。お酒の席だし、鞠莉ちゃんにバレちゃったし」

善子「何がいいのよ。ずら丸困っちゃうでしょ」

252: 2020/05/31(日) 19:28:34.00 ID:NSbPis7X.net
花丸「……聞きたい、です」

千歌「でしょ?」

善子「えー……」

千歌「どうせまた喧嘩しなきゃいけないんだし、多分鞠莉ちゃんは花丸ちゃんの所にも来ちゃうと思うし。今のうちに全部話して鞠莉ちゃんに取り入られないようにしよう」

善子「まぁ……一理あるわね」

253: 2020/05/31(日) 19:28:54.75 ID:NSbPis7X.net
花丸「ど、どういうことずら」

千歌「ん、今から話すね。えっとねー、あれは三年になったばっかりの頃だからー……7年前くらい?」

善子「その前に、私たちの関係話した方がいいんじゃない?」

千歌「そっか」

花丸「いつからの友達なんですか?」

善子「高校。三年間ずっと同じクラスだったの」

千歌「まぁ、二クラスしか無かったし……懐かしい」

善子「……ええ」

254: 2020/05/31(日) 19:29:18.20 ID:NSbPis7X.net
 


千歌「出席番号順で私の後ろが善子ちゃんだった。私が7番で善子ちゃんが8番」

 

255: 2020/05/31(日) 19:29:35.68 ID:NSbPis7X.net
☆ー☆ー☆

千歌「……ねぇ」

善子「……」

千歌「ねぇってば」

善子「……ん?私?」

千歌「うん」

善子「何?」

256: 2020/05/31(日) 19:29:52.37 ID:NSbPis7X.net
千歌「なんでいつも休み時間イヤホンしてるの?」

善子「あなたみたいな人に話しかけられないように」

千歌「そんなことしてたら、友達出来なくて三年間無駄になっちゃうよ」

善子「別にいいわよ。どうせ先が決まったクソつまんない人生なんだし」

千歌「……へぇ……」

善子「もういい?前向いてくれる?」

257: 2020/05/31(日) 19:30:05.97 ID:NSbPis7X.net
千歌「……クソつまんないよね」

善子「え?」

千歌「人の人生、なんだと思ってるんだろうね」

善子「……!」

258: 2020/05/31(日) 19:33:58.36 ID:NSbPis7X.net
千歌「ねぇ、友達にならない?」

善子「なっ……どうしてそうなるのよ」

千歌「私、高海千歌。あなたは?」

善子「ちょっ……」

千歌「……」ジーッ

善子「……!」

千歌「……」ジーッ

善子「……小原善子」

千歌「うん!よろしくね、善子ちゃん!」

善子「はぁ……」

善子(なんでこんなことに……)

259: 2020/05/31(日) 19:35:23.36 ID:NSbPis7X.net
>>254

 


千歌「出席番号順で私の前が善子ちゃんだった。私が7番で善子ちゃんが6番」

 

265: 2020/06/01(月) 20:58:07.18 ID:ObO6C3eJ.net
ーー

千歌「ねー小原さん」

善子「……」スタスタスタ

千歌「ねー小原さんってば!」

善子「付いてこないで!」

千歌「どして?移動教室だし同じところ行くんだからいいじゃん。一緒に行こうよ」

善子「一人で行きなさいよ」

千歌「むー……小原さん冷たい」

266: 2020/06/01(月) 20:58:32.30 ID:ObO6C3eJ.net
善子「呼ばないで。苗字嫌いなの」

千歌「え、じゃあ善子……ちゃん?」

善子「あ……」

善子(しまった……口が滑った……)

千歌「善子ちゃん、一緒に行こう!」

善子「……」スタスタスタ

千歌「あー!待ってってばー!」

267: 2020/06/01(月) 20:59:01.74 ID:ObO6C3eJ.net
ーー

千歌「ねー善子ちゃん」

善子「……」

千歌「ねーってば」

善子「……」

千歌「ねーねー」

善子「うるさいわね!付いてこないでってなんか言えば分かるのよ!」

268: 2020/06/01(月) 20:59:17.83 ID:ObO6C3eJ.net
千歌「小原ってさ、もしかして鞠莉ちゃんと関係ある?」

善子「なっ……なに、あんた姉さんのこと知ってんの?」

千歌「うん。果南ちゃん……私の幼馴染の友達」

善子「果南って……ああ、あのダイビングショップの」

千歌「そうそう。そんでもって私の家は十千万」

善子「……マジ?」

千歌「マジマジ」

269: 2020/06/01(月) 20:59:51.17 ID:ObO6C3eJ.net
善子「……はぁー、なによ。全部うちのシマなのね……」

千歌「まーね」

善子「……じゃあ尚更私に関わらない方がいいんじゃ」

千歌「んーん。善子ちゃんは鞠莉ちゃんと違うみたいだし」

千歌「そんで私と同じみたいだし」

善子「あなたと……?」

千歌「家から逃げ出したいんでしょ?」

善子「!」

千歌「私もなんだ。一緒に逃げ出さない?」

270: 2020/06/01(月) 21:00:26.94 ID:ObO6C3eJ.net
ー☆ー☆ー☆ー

花丸「シマって……えっと、善子さんの家は怖い人がたくさん……?」

善子「いやいや、違うわ。言い方悪かったわね」

千歌「小原家はオハラグループを経営する財閥なんだよ」

花丸「オハラグループ……聞いたことあるずら」

271: 2020/06/01(月) 21:00:42.27 ID:ObO6C3eJ.net
善子「私たちの故郷……沼津内浦にオハラグループが進出した時、あの地一体は観光客の激減で深刻な経営難に陥ってる旅館やレジャー施設が多かったの」

千歌「それを多大な出資で丸ごと救ったのが小原家って訳」

善子「私と姉さんは腹違いの姉妹。だから似てないの」

花丸「へぇ……なんか小説みたいな話ずら」

善子「そう、ね。でも現実は小説みたいに綺麗な話じゃないわ」

272: 2020/06/01(月) 21:01:03.49 ID:ObO6C3eJ.net
ー☆ー☆ー☆ー

千歌「ね、ね、だからさ。私と一緒に逃げ出しちゃおうよ」

善子「はぁ?何言ってんのよ。そんなの無理に決まってるでしょ」

千歌「そんなのやってみなくちゃわかんないよ。初めから決めつけるのは良くない」

善子「無理よ無理。寝言は寝て言いなさい」

千歌「じゃあこのまま家を継ぐの?そんなに嫌そうなのに?」

273: 2020/06/01(月) 21:01:39.15 ID:ObO6C3eJ.net
善子「関係ないでしょ。ほっといて」

千歌「関係あるよ。友達だもん」

善子「私はなった覚えない」

千歌「じゃあなってよ。今すぐ」

善子「……なんなのよあんた!なんでそこまで私に……!」

274: 2020/06/01(月) 21:02:07.69 ID:ObO6C3eJ.net
 

千歌「……目」


善子「目?」

 

千歌「おんなじ色の、目してるから」

 

善子「はっ……?なにそれ……」

275: 2020/06/01(月) 21:02:23.39 ID:ObO6C3eJ.net
千歌「それじゃ、ダメかな」

 

善子「いや……わけわかんないわね、あんた……」

千歌「えへへ」

 

善子「……何笑ってんのよ」

千歌「えへへ、いやぁなんか可笑しくて……」

 

善子「……可笑しいのは私の方よ」

276: 2020/06/01(月) 21:02:31.75 ID:ObO6C3eJ.net
また明日更新する

279: 2020/06/02(火) 20:24:05 ID:z1ingcKK.net
ーー

千歌「みかんパフェくださーい」

善子「いちごパフェで」

千歌「善子ちゃんイチゴ好きなんだ」

善子「悪い?」

千歌「可愛いなーって」

280: 2020/06/02(火) 20:24:42 ID:z1ingcKK.net
善子「なんであんたと二人でカフェに来なきゃいけないのよ」

千歌「善子ちゃんが行きたいって行ったから」

善子「無理矢理連れてこられたんだけど、あんたに!」

千歌「それほどでもー」テレテレ

善子「どこまでもふざけたやつね……」

281: 2020/06/02(火) 20:25:01 ID:z1ingcKK.net
千歌「でさ、いつ逃げ出す?」

善子「話題の振り雑すぎでしょ。そもそも私は逃げ出すつもりないし」

千歌「この前誓ったじゃん!千歌だけに!」

善子「何言ってんの?」

千歌「私はさーもうちょっと機を見てからの方がいいと思うんだよねー」

善子「勝手に進めるなし……」

282: 2020/06/02(火) 20:25:21 ID:z1ingcKK.net
千歌「大学は行くの?」

善子「まぁ……そのつもりだけど」

千歌「私も!じゃあおんなじ大学受けようよ!」

善子「えー……いやそれは無理」

千歌「なんでー!!」

善子「なんでって……」

283: 2020/06/02(火) 20:25:48 ID:z1ingcKK.net
千歌「あ、どの大学受けろとか決められてる?」

善子「いや決められてないけど……」

千歌「じゃー受けようよ!ね!」

善子「いやだって、あんた成績悪いでしょ……」

千歌「え!なんで知ってるの!?もしかして私の事好き!?」

善子「なんでそーなるのよ!入学時の学力テストの結果出てたでしょ!」

千歌「見たの!?変O!!」

善子「あんた机の上に置きっぱなしにしてたでしょーが!!見えるわよ前の席なんだから!!」

千歌「津島さんサイテー」

善子「言われなき非難!!もう帰るわよ!!」

284: 2020/06/02(火) 20:26:11 ID:z1ingcKK.net
千歌「待って!!せめてパフェをスプーンで一杯分ひと舐めしたら!!」

善子「どんな止め方よ!!」

千歌「先っぽにクリームつけるだけ!!」

善子「やかましい!!」

千歌「先っちょだけ!!先っちょだけ!!」

善子「こらぁ!!!」

285: 2020/06/02(火) 20:26:32 ID:z1ingcKK.net
鞠莉「な~にしてるの、善子」

千歌「!」

善子「……姉さん」

鞠莉「そろそろ家族会議の時間よ?帰ってきなさい……あら、千歌っちじゃない」

千歌「あはは……こんにちは、鞠莉ちゃん」

287: 2020/06/02(火) 20:26:46 ID:z1ingcKK.net
鞠莉「善子と遊んでくれてるの?」

千歌「う、うん。女子高生らしくパフェでも」

鞠莉「へぇ~いいわね。楽しそう」

千歌「……良かったら鞠莉ちゃんも一緒にどう?」

鞠莉「んー素敵なお誘い!ぜひご一緒したいところだけど……残念ながら予定入っちゃってるの」

善子「……」

千歌「そ、そうなんだ」

288: 2020/06/02(火) 20:28:19 ID:z1ingcKK.net
>>283

千歌「あ、どの大学受けろとか決められてる?」

善子「いや決められてないけど……」

千歌「じゃー受けようよ!ね!」

善子「いやだって、あんた成績悪いでしょ……」

千歌「え!なんで知ってるの!?もしかして私の事好き!?」

善子「なんでそーなるのよ!入学時の学力テストの結果出てたでしょ!」

千歌「見たの!?変O!!」

善子「あんた机の上に置きっぱなしにしてたでしょーが!!見えるわよ前の席なんだから!!」

千歌「小原さんサイテー」

善子「言われなき非難!!もう帰るわよ!!」

289: 2020/06/02(火) 20:29:32 ID:z1ingcKK.net
鞠莉「ってことで善子。帰るわよ~」

善子「……パフェが来るから」

鞠莉「ん?」

善子「食べてから、帰る」

鞠莉「へぇ……」ジッ

千歌「うっ……?」

鞠莉「……残念ながらそんな時間はないわ。行きましょう、車を待たせてあるから」

善子「……ごめん、千歌」

千歌「あ、え、いや、大丈夫だよ」

290: 2020/06/02(火) 20:29:50 ID:z1ingcKK.net
鞠莉「Sorry、千歌っち。また遊んであげてね。お代、ここに置いておくから」

千歌「ありがとうございます……」

鞠莉「じゃーねー♪」フリフリ

善子「また、明日ね」

千歌「うん」


千歌「……」

千歌「……ふたつも食べきれないや」

千歌「……果南ちゃん呼ぼうかな」

千歌「……」


・12 終わり

291: 2020/06/02(火) 20:30:28 ID:z1ingcKK.net
肝心なところミスってすまん、何とか読んでくれ
また明日更新する

309: 2020/06/04(木) 20:59:58.95 ID:6pQHdLBu.net
・13

果南「へー、鞠莉に妹いたんだ」

千歌「知らなかったの?」

果南「うん。鞠莉、家の事話さないし」

千歌「お金は出すのにね」

果南「あはは、違いないや。……あむっ、甘い」

千歌「……」

310: 2020/06/04(木) 21:00:18.73 ID:6pQHdLBu.net
果南「で、家出するってホントなの」

千歌「うん……今すぐじゃないけど」

果南「どこ行くの?」

千歌「それは……まだ決めてない」

果南「ふーん。ま、東京とか無難じゃないの?人たくさんで紛れられるし」

千歌「まぁ……っていうか、止めないの?」

果南「え、止めて欲しいの?」

千歌「いや……なんか、何となく果南ちゃんはお母さんたち寄りだと思ってたから」

311: 2020/06/04(木) 21:00:37.86 ID:6pQHdLBu.net
果南「仲はいいけど、そうでもないよ。千歌がやりたいならやればいいと思うし……あむっ」

千歌「それに……その、鞠莉ちゃんと友達だし」

果南「別に関係ないでしょ、それは」

千歌「う、うん……」

果南「……何か言いたいことあるの?」

千歌「え、いや……」

果南「あむっ……」

312: 2020/06/04(木) 21:00:59.51 ID:6pQHdLBu.net
千歌「……果南ちゃんは、嫌じゃないのかなって」

果南「何が?」

千歌「その……この、小原家に頼ってしか生きられてないこの街が」

果南「あぁ……」

千歌「わたしは、嫌だ。小原家がここに……内浦に来た時から、お母さんたちは変わった」

千歌「小原家のために……小原家のために……ってことある事に。もう、あの旅館は街のために、来てくれた観光客のためには無いんだよ」

千歌「ぜんぶぜーんぶ小原家の為にあるんだ」

果南「……あむっ」

313: 2020/06/04(木) 21:01:14.59 ID:6pQHdLBu.net
千歌「果南ちゃんは嫌じゃないの?ドルフィンハウスもさ……」

果南「別に」

千歌「……そっか」

果南「私もおじぃも鞠莉達が来る前となんにも変わんないからね。援助が助かったのは本当だし」

千歌「……私の事、子供っぽいって思ってる?」

果南「そうだなー童顔なのがねー」

千歌「見た目じゃなくて!今言ったこと!」

314: 2020/06/04(木) 21:01:44.38 ID:6pQHdLBu.net
果南「別に。千歌なりに考えてるんでしょ?」

千歌「……変わるかもしれないよ」

果南「変わるの?」

千歌「分かんないけど……」

果南「ま、それもいいんじゃない?今すぐじゃないんなら、ゆっくり考えてから行動しなよ」

千歌「……うん」

果南「で、その時はその善子ちゃんと駆け落ち?」

千歌「違うよ!」

果南「あっそー、つまんないの……あむっ、ごちそうさま。ありがと」

千歌「お礼なら鞠莉ちゃんに言って」

果南「おっけー。じゃ、またね」

千歌「うん」

315: 2020/06/04(木) 21:01:59.31 ID:6pQHdLBu.net
ーー

鞠莉「千歌っちと何話してたの~?」

善子「別に」

鞠莉「ふ~ん」ジロジロ

善子「……」

鞠莉「……ま、逃げ出しても無駄だけどね」

善子「……!」

鞠莉「善子はその顔にすぐ出るくせ、直した方がいいわよ~」

316: 2020/06/04(木) 21:02:22.36 ID:6pQHdLBu.net
善子「あんたは、このオハラグループを継ぐつもりなの?」

鞠莉「What?どうしたの、そんなこと聞いてきて」

善子「どうなのよ」

鞠莉「愚問よ。ちょっと考えれば分かるでしょ」

善子「私は、この家にこのままいるつもりはない。こんな、掃き溜めみたいな家」

鞠莉「随分言うようになったわねぇ、善子。自分が何言ってるか分かってるの?あなたの家なのに」

善子「……必ず、抜け出してやる」

鞠莉「ふふ、そういうのはこっそりしなさい。せめて私にバレないようにね」

善子「……」

317: 2020/06/04(木) 21:02:44.90 ID:6pQHdLBu.net
☆ー☆ー☆

千歌「それから沢山勉強して、なんかかんやあって同じ大学に入れたんだ」

善子「なんやかんやって……」

千歌「だって特にめぼしいこと無かったし……」

善子「まぁ……」

花丸「どこの大学に行ったずら?」

千歌「沼津市内の大学。いやー結構楽しかったよね」

善子「まぁ、ね。何だかんだ大学生らしくしてたわ」

318: 2020/06/04(木) 21:03:01.16 ID:6pQHdLBu.net
千歌「でね、アルバイトをしてこっそりこっそりお金を貯めてったんだ」

善子「二つくらいかけ持ちしてたわよね」

花丸「軍資金を貯めるために?」

千歌「そうそう。コツコツ~コツコツ~っとね」

善子「何その言い方」

332: 2020/06/06(土) 17:07:52.68 ID:vExeen8n.net
☆ー☆ー☆

千歌「働きすぎて氏にそう」

善子「まぁ、週6バイトしてたらね……はぁ……」

千歌「単位も氏にそう」

善子「そりゃあね」

千歌「このままじゃ卒業できない……」

善子「する気ない癖に」

千歌「まぁ……」

333: 2020/06/06(土) 17:08:14.07 ID:vExeen8n.net
善子「で、いくら貯まった?」

千歌「んーと……60万くらい」

善子「私もそれくらいね」

千歌「……そろそろかなぁ」

善子「まぁ、動くには十分じゃない?」

千歌「……うん」

334: 2020/06/06(土) 17:08:33.82 ID:vExeen8n.net
善子「どうする?」

千歌「……どうしたらいいと思う?」

善子「まぁ……やるなら、早めにやった方がいいと思うけど……」

千歌「……生きていけるかなぁ」

善子「……確約はできないわね」

千歌「……」

335: 2020/06/06(土) 17:09:30.77 ID:vExeen8n.net
善子「……やめる?」

千歌「……いや……」

善子「千歌……」

千歌「……やろう」

善子「……分かった」

千歌「離れよう、この腐った臭いがする街から」

善子「うん」

千歌「人生を、変えよう。自分の手で」

336: 2020/06/06(土) 17:09:51.18 ID:vExeen8n.net
ー淡島・夜ー

善子「……」キョロキョロ

善子(誰も……いないわね)

善子(今のうち……)

善子「……」タタッ

337: 2020/06/06(土) 17:10:09.73 ID:vExeen8n.net
善子「えっと……あれ……」

善子(果南が……いるはず……)

善子「……いない……」


鞠莉「どーこ行くの?」


善子「!!」

鞠莉「お散歩?日が沈んでるのに出歩いたらダメよ~危ないじゃない」

善子「なんで……」

338: 2020/06/06(土) 17:10:26.92 ID:vExeen8n.net
鞠莉「ちゃーんと言ったじゃない。抜け出すなら私にバレないよーにって」

善子「くそ……」

鞠莉「口悪いわよ~?悪い子ねぇ」

善子「……どいて」

鞠莉「んー?聞こえないわ」

善子「どいてって!」

鞠莉「やーだ」

339: 2020/06/06(土) 17:10:50.82 ID:vExeen8n.net
善子「だったら……!」タッ!

鞠莉「ムダよ」ガシッ

善子「は、離して!」

鞠莉「運動からっきしのくせに、無理しないの」

善子「……!!私は!」バタバタ

鞠莉「暴れないの~」

340: 2020/06/06(土) 17:11:33.84 ID:vExeen8n.net
善子「私は!私の人生を自分で選ぶ!あんた達みたいにはならない!」

鞠莉「別に私たちみたいにならなくてもいいのよ。善子なりに家に尽くしてくれれば」

善子「そんなクソみたいな人生ごめんよ!私は――」

果南「よっと」グイッ

鞠莉「え?」

果南「ほいほいっと」グルグル

鞠莉「ちょ、かな、むぐっ!?」

果南「ごめんね、後でちゃんと解くから。そこでちょっと大人しくしてて」

鞠莉「……!!」

341: 2020/06/06(土) 17:12:00.40 ID:vExeen8n.net
善子「果南!」

果南「遅くなってごめんね。向こうにも小原家の奴らが来ててさ」グイッ

善子「わっ」

果南「行くよ!そこにジェットスキー停めてるから!」

善子「ちょ、早い!」

果南「着替えの服はちゃんと持ってきてる?」

善子「う、うん!」

果南「じゃあレッツゴー!」

342: 2020/06/06(土) 17:12:18.64 ID:vExeen8n.net
ーー

千歌「……」

千歌「……あ」

果南「おぉーい」

千歌「来た!かなんちゃーん!よしこちゃーん!」

果南「ごめん、お待たせ」

善子「はぁ……はぁ……怖かった」

343: 2020/06/06(土) 17:12:35.75 ID:vExeen8n.net
千歌「よし、着替えて駅に行こう!早くしないとバレちゃう!」

善子「ちょ、千歌声抑えてっ」

千歌「善子ちゃん早く着替えて」グイグイ

善子「え、ここで?ちょっと待っ」

果南「早く脱ぎなよ」グイーッ

善子「やめ、いやーー!!」

344: 2020/06/06(土) 17:12:54.15 ID:vExeen8n.net
ーー

善子「とんでもない目にあったわ……」

千歌「大丈夫?」

果南「旅立ちの前だからちょっとナイーブ?」

善子「あんたらのせいよ!」

千歌「しんがーい!」

果南「しんがーい!」

善子「うるさい!」

345: 2020/06/06(土) 17:13:18.24 ID:vExeen8n.net
千歌「……じゃあ、行くね」

果南「うん」

善子「ありがとう、果南」

果南「お、善子が素直だ」

善子「まぁ、こんな時くらいね。っていうか……」

果南「ん?」

善子「この後は大丈夫なの?あなた」

果南「鞠莉のことは気にしないで。何とかしとくから」

346: 2020/06/06(土) 17:13:48.23 ID:vExeen8n.net
善子「ほんとに?」

果南「善子は優しいね」

善子「いや……」

果南「大丈夫だよ!気にしないで行ってきな!」

千歌「……果南ちゃん」

果南「千歌、大丈夫」

千歌「……うん……」

果南「身体だけは大事に。また連絡して、いつでもなにか力になるから」

善子「……ありがとう、本当に」

千歌「ありがとう果南ちゃん……!」

果南「うん、行ってらっしゃい二人とも」

347: 2020/06/06(土) 17:14:07.60 ID:vExeen8n.net
千歌「おぉー早い早い」

善子「新幹線だからね。お弁当食べる?」

千歌「食べる」

善子「ん」

千歌「いただきまーす」

善子「……いただきます」

千歌「あむっ……美味しい」

善子「うん……」

348: 2020/06/06(土) 17:14:21.54 ID:vExeen8n.net
千歌「……あー」

善子「なによ」

千歌「……これからどうなるんだろうね……」

善子「さぁ……」

千歌「……どうにかするしかないんだよね」

善子「……そうね」

千歌「頑張ろうね」

善子「……ええ」

千歌「……あむっ」

善子「……」パクッ

・13 終わり

355: 2020/06/07(日) 20:17:15.98 ID:vdCCDCTo.net
☆ー☆ー☆

千歌「そんなこんなで、こっちに来たってわけ」

花丸「なるほど……えっと、その。こっち来てからは直ぐに住むところとか仕事とか見つかったんですか?」

善子「住むところは割とすぐ見つかったのよ。でも仕事がね……最初に入ったところがとんでもないブラック企業で」

千歌「酷かったねーあれは。あの頃ほとんど家に帰ってなかった」

花丸「二人ともですか?」

善子「そう、二人とも。見事なまでに」

356: 2020/06/07(日) 20:17:36.56 ID:vdCCDCTo.net
千歌「まぁ、それでも何とか頑張ってたんだけど。後に下がれないし、他に行くあてもなかった。でもね、そんなんで体が持つわけないんだよ」

花丸「まさか……」

善子「私が倒れたのよ、過労でね。まぁ、それだけなら良かったんだけども」

千歌「バレたんだ、鞠莉ちゃんに」

善子「ある日病室に見舞い客として突然姉さんが来た」

花丸「……連れ戻されたんですか?」

善子「いや、それがそんなことはなかった。様子を見に来て一通り嫌味を言って帰ったわ」

千歌「もう終わったと思ったけど……見逃してくれたというかなんというか」

花丸「へぇ……」

357: 2020/06/07(日) 20:17:52.74 ID:vdCCDCTo.net
善子「何考えてるか本当に分からない……何しに来たのかも」

千歌「うん……」

善子「で、今回……姉さんは連れ戻す気で私たちの前に現れた」

花丸「なるほど……前の会社は辞めたずら?」

善子「えぇ。転職して今に至るってわけ」

千歌「うん、そんな感じ」

花丸「ずら……」

358: 2020/06/07(日) 20:18:09.84 ID:vdCCDCTo.net
善子「悪いわね、こんな話。お酒不味くなっちゃったでしょ」

花丸「いえ、聞けてよかったです。その、それで鞠莉さんって人はおらのところにも来るんですか?」

善子「まぁ、ほぼ確実にね。こればっかりは防げないわ」

千歌「さっき味方に引き入れるって言ったけど、もし来たらありのままのことを言っちゃっていいからね」

善子「自分のことを一番に考えて。ああ、それと安心して。身の危険を感じることは絶対にないから」

花丸「ずら……分かりました」

千歌「ごめんね、巻き込んじゃって」

善子「私たちと関わっちゃったばかりに」

花丸「……いえ……」

360: 2020/06/07(日) 20:18:29.77 ID:vdCCDCTo.net
ーー

ダイヤ「ふぅ……ただいま」

ダイヤ「……?ああ、そういえばルビィはバイトでしたわね」

ダイヤ「んーご飯どうしようかしら……」

ブーブー

ダイヤ「電話……ん?」

361: 2020/06/07(日) 20:18:54.40 ID:vdCCDCTo.net
ダイヤ「……もしもし」

鞠莉『はぁい、ダイヤ。久しぶり~!』

ダイヤ「……鞠莉さん」

鞠莉『元気にしてるぅ?仕事は順調?』

ダイヤ「何の用ですか」

鞠莉『相変わらず世間話にも付き合ってくれないのね~冷たいわぁ。大学の頃からちっとも変わってない』

ダイヤ「いいから用件を言いなさい」

362: 2020/06/07(日) 20:19:22.72 ID:vdCCDCTo.net
鞠莉『じゃあ、言うわね。最近あなたの所に入社した新人……ダイヤの新しい部下、高海千歌に関して知ってることを教えて欲しいの』

ダイヤ「はぁ?なぜ知って……ってそれは愚問ですわね」

鞠莉『そうね、さすがダイヤ』

ダイヤ「何が目的なんです」

鞠莉『それはダイヤは知る必要はないわ。いいから千歌っちのことに関してと、今後の動向を全て私に教えて』

ダイヤ「さらっと頼み事を増やさないでくれる?」

363: 2020/06/07(日) 20:19:40.32 ID:vdCCDCTo.net
ガチャ

ダイヤ「! なっ」

鞠莉「グッドイブニング♪」

ダイヤ「何故……」

鞠莉「これは全然関係ない話なんだけど」

ダイヤ「はぁ?」

鞠莉「ダイヤの妹……ルビィちゃん?だっけ」

ダイヤ「……それが何か?」

鞠莉「ルビィちゃんのバイト先って、駅前のファーストフード店よね?」

ダイヤ「……まさかあなた……!」

鞠莉「まぁ、ただの雑談よ雑談~気にしないで~」

ダイヤ「……!」

370: 2020/06/08(月) 20:45:50.99 ID:/OE6wBdS.net
ーー

ルビィ「お疲れ様でした」

「はーい、お疲れさん。気をつけてね」

ルビィ「はい!」

「ルビィちゃーん!」

ルビィ「ん?」

花丸「やっぱり、ルビィちゃんずら!」

ルビィ「花丸ちゃん。こんな時間にどうしたの?」

371: 2020/06/08(月) 20:46:08.77 ID:/OE6wBdS.net
花丸「えっとね……」

千歌「わー!かわい子ちゃん!」

善子「静かにしなさい」

ルビィ「……?そちらの方たちは……?」

花丸「あのね……」

372: 2020/06/08(月) 20:46:43.56 ID:/OE6wBdS.net
ルビィ「へぇ……べっこう飴で……」

善子「そそ、決して怪しいものじゃないわ」

千歌「犯罪者はみんなそういうんだよ」

善子「静かにしてって」

花丸「えっと、それで、この子は」

ルビィ「く、黒澤ルビィです。花丸ちゃんの大学の同級生です」ペコリ

373: 2020/06/08(月) 20:47:06.01 ID:/OE6wBdS.net
善子「誰かさんと違って礼儀正しい……」

千歌「こっち見ないで!ちゅーするよ!」チュー

善子「わ!やめなさい!」

ルビィ「えっと……」

花丸「あはは、ちょっとお酒飲んでたから……」

374: 2020/06/08(月) 20:47:26.71 ID:/OE6wBdS.net
ルビィ「礼儀はその、お姉ちゃんに叩き込まれたので……」

花丸「ダイヤさん、厳しいもんね」

ルビィ「うん。でも優しいよ」

千歌「ダイヤ?」

善子「どうしたの」

375: 2020/06/08(月) 20:47:59.68 ID:/OE6wBdS.net
千歌「ダイヤ……もしかして、ってさっき黒澤って言ったよね」

ルビィ「は、はい」

千歌「黒澤ダイヤって……もしかして、黒澤主任?」

ルビィ「えっ、お姉ちゃんを知ってるんですか?」

千歌「知ってるって言うか、私の上司だよ!へぇー妹いたんだ!」

ルビィ「もしかして最近お姉ちゃんの会社に入社下っていう……」

千歌「うん!高海千歌でーす!いえい!」

377: 2020/06/08(月) 20:48:21.28 ID:/OE6wBdS.net
善子「へぇー……世間って狭いのねぇ」

花丸「ずら……こんな偶然あるんだ……」

千歌「黒澤主任、こんなに可愛妹いたのかー……」ナデナデ

ルビィ「わっ……」

善子「やめなさいって」

千歌「よろしくね、ルビィちゃん!」

ルビィ「は、はい……えへへ」

378: 2020/06/08(月) 20:48:53.80 ID:/OE6wBdS.net
千歌「黒澤主任、とっても厳しいけどとっても優しくて、いつも頼りになります!って伝えておいて!」

ルビィ「……!」

善子「自分で言いなさいよ」

千歌「もちろん!でも人伝いに聞く方がマジっぽくて嬉しくない?」

善子「……一理あるわね」

ルビィ「……必ず、伝えておきます」

379: 2020/06/08(月) 20:49:15.54 ID:/OE6wBdS.net
花丸「ルビィちゃん、そろそろ……」

ルビィ「あ、もうこんな時間。早く帰らないとお姉ちゃん心配しちゃう」

善子「気をつけて帰り……ん?」

千歌「どしたの、善子ちゃん」

善子(千歌、後ろにいるやつら……)

千歌(ん?……もしかして)

380: 2020/06/08(月) 20:49:48.84 ID:/OE6wBdS.net
善子「……二人とも、家まで送るわ」

花丸「え?そんな、悪いずら」

千歌「いーから。ここはおねーさん達に任せなさい!」

ルビィ「でも……」

善子「ほら、行くわよ」

千歌「れっつごー!」


「……善子お嬢様に気づかれたか……」

「鞠莉お嬢様に報告だ」

381: 2020/06/08(月) 20:50:07.57 ID:/OE6wBdS.net
ーー

ルビィ「えっと、じゃあルビ……じゃなくて私はここで」

千歌「大丈夫?玄関まで行くよ」

ルビィ「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」

善子「気をつけてね。あなたも今度ご飯に行きましょ」

ルビィ「はい!」

花丸「またね、ルビィちゃん」

ルビィ「うん、また明日」

382: 2020/06/08(月) 20:50:30.28 ID:/OE6wBdS.net
善子「よし、じゃあずら丸の家に行きましょう」

花丸「はい、えっと……あの」

千歌「どしたの?」

花丸「いや、なんで急に……」


果南「お、いた」


善子「え゛っ」

千歌「あれー?果南ちゃん!」

花丸「……?」

383: 2020/06/08(月) 20:50:51.73 ID:/OE6wBdS.net
果南「やっほ。美少女侍らせて何してんの?」

善子「あなたこそ何してるのよ。なんでまたここに」

果南「いやーちょっと野暮用でね。そこのスーパーで酒買ってきたから泊めて」

花丸「あ、あの……」

千歌「ああ、ごめんね。このポニテのお姉さんは松浦果南ちゃん。地元の幼なじみ」

花丸「幼なじみ……」

善子「私は違うけど」

384: 2020/06/08(月) 20:51:13.80 ID:/OE6wBdS.net
千歌「泊まるのはいいけど……何か用なの?この前も来たじゃん」

果南「鞠莉が来てるんでしょ?」

千歌「!」

善子「……知ってたの?」

果南「向こうに居ないからさ。ま、手助けに来たって感じ」

千歌「……分かった。家に行こう、花丸ちゃん送ったら」

果南「おっけー。よっと」

花丸「わっ、えっ?」

果南「ドルフィン号しゅっぱーつ!」

花丸「ずらーー!!」

千歌「わっ、果南ちゃん待ってーー!!」

善子「……」

391: 2020/06/09(火) 20:23:40 ID:YvzQvhdu.net
ーー

千歌「すー……すー……」

善子「寝ちゃったけど」

果南「飲ませすぎたかな」

善子「まぁ、元から飲んでたし。ってか何も話してないけど」

果南「別に特段話すことはないからね」

善子「はぁ?何しに来たのよ」

果南「あ、おじぃからの土産渡してなかった。はい、干物」

善子「話を聞きなさい」

392: 2020/06/09(火) 20:23:58 ID:YvzQvhdu.net
果南「あるとしたら、鞠莉が来てからだね」

善子「どういうことよ」

果南「ここで待ってたらそのうち来るでしょ?」

善子「まぁ、多分……」

果南「じゃ、それまで厄介になるから」

善子「はぁー?」

果南「よしもう一本開けるかー!」

善子「ちょ、待ちなさ……もー!」

393: 2020/06/09(火) 20:24:20 ID:YvzQvhdu.net
ーー

曜「じゃ、お先に」

善子「はい、お疲れ様です」

曜「また明日ねー!気をつけて帰ってね」

善子「ありがとうございます。曜さんもお気をつけて」

曜「うん!」

394: 2020/06/09(火) 20:24:38 ID:YvzQvhdu.net
曜「ふぅ……疲れた……」

「こんばんは」

曜「へ?……あ!梨子ちゃん!」

梨子「お疲れ様です。今お帰りですか?」

曜「うん!梨子ちゃんも?」

梨子「ええ。今日は早めに上がれたので」

曜「そっかそっか。早く帰れるっていい事だよね~」

梨子「そうですね。健康的な気分になります」

395: 2020/06/09(火) 20:24:54 ID:YvzQvhdu.net
曜「ね、ね、梨子ちゃん。この後もし時間あるなら――」


鞠莉「はぁい♪」


曜「……ま、鞠莉さん」

鞠莉「元気ぃ?曜」

梨子「善子ちゃんのお姉さん……?」

鞠莉「あらあら、善子と千歌っちのお隣さんの美人ちゃんじゃな~い」

梨子「……桜内梨子です」

鞠莉「これは失礼♪梨子ね、覚えたわ」

396: 2020/06/09(火) 20:25:08 ID:YvzQvhdu.net
梨子「知り合い、なんですか?」

曜「ちょっとね……」

鞠莉「ちょっとじゃないでしょ?私と曜はそれはそれはイケナイ関係でー」

曜「無駄話に付き合ってる時間はありません」

鞠莉「あら、それはごめんなさい。今からデートだもんね」

梨子「デ、デー……!?」

397: 2020/06/09(火) 20:25:37 ID:YvzQvhdu.net
曜「この前の答えを聞きに来たんでしょう?言いましたよね、ノーって」

鞠莉「ふーん、どうしてもダメなの?」

曜「はい」

鞠莉「Why?あなたにとっては願ってもない話だと思うけど」

曜「気に入らないからです。あなたのそのやり方が」

鞠莉「……へぇ」

曜「お姉ちゃんなら、妹に対してもっと面と向かって話すべきだ。こんな回りくどくて悪質なやり方、絶対に間違ってる。それに……」

曜「善子ちゃんは、私の大切な部下です。例え実の姉でも、あなたみたいにな人には絶対に売らない」

398: 2020/06/09(火) 20:26:02 ID:YvzQvhdu.net
鞠莉「ふーん……好き勝手言ってくれるじゃない。部外者のくせに」ギロッ

梨子「……!」ビクッ

鞠莉「だったらやり方を変えるわ。桜内梨子さん」

梨子「……は、はい……?」

鞠莉「もしもう一度、ピアニストへの道が開けるとしたらどうする?」

梨子「なっ……!?」

曜「え……?」

鞠莉「あなたのそのトラウマを、人前で弾けなくなってしまったその大きな原因を、私なら解決出来る」

梨子「……!……!」

鞠莉「もう一度夢に挑戦できるのよ」

梨子「……な……」

399: 2020/06/09(火) 20:27:57 ID:YvzQvhdu.net
鞠莉「だから、私と――むぐっ!?」

ダイヤ「こんな大衆の面前で何をしていますの」

梨子「え?」

曜「誰?」

ダイヤ「申し訳ありません、この人の言うことは何も聞かなくてよろしいので」

曜「は、はぁ……」

400: 2020/06/09(火) 20:28:25 ID:YvzQvhdu.net
鞠莉「むががっ!むむー!」

ダイヤ「では失礼します」ズルズル

鞠莉「むむぅーーー!!」

曜「……行っちゃった……」

梨子「……今のは……?」


・14 終わり

407: 2020/06/11(木) 21:18:28.49 ID:PzT53L4b.net
すまん、明日必ず更新する

408: 2020/06/11(木) 21:31:29.31 ID:PzT53L4b.net
・15

鞠莉「何するのよ!」

ダイヤ「あなたが何をしているのです」

鞠莉「私にこんなことしていいの?妹が……」

ダイヤ「家の者をこちらに呼びました。無駄です」

409: 2020/06/11(木) 21:31:53.08 ID:PzT53L4b.net
鞠莉「縁切ったんじゃないの?」

ダイヤ「そんなこと一言も言ってません。ただ、帰らないと言っただけで」

鞠莉「屁理屈を……」

ダイヤ「鞠莉さん。あなた自分が何をしているか分かってるのですか?」

鞠莉「……何が言いたいの?」

ダイヤ「あなたがやってるのは、子供の駄々こねと一緒です」

410: 2020/06/11(木) 21:32:06.94 ID:PzT53L4b.net
鞠莉「なんですって……?」

ダイヤ「鞠莉さん、あなたは」

鞠莉「黙って!!」

ダイヤ「……まぁ、そんなにムキになるってことは図星なんですね」

鞠莉「Shit!」


スタスタスタスタ……


ダイヤ「……まぁ、わたくしも人のこと言えませんが」

ダイヤ「さぁて……」

411: 2020/06/11(木) 21:32:23.51 ID:PzT53L4b.net
ーーー

曜「へぇ……梨子ちゃんピアニスト目指してたんだ」

梨子「はい。音大に行くくらいは本気でした」

曜「そっかぁ。今はもうやってないの?」

梨子「たまに……ふとした時にたまーに弾きます」

曜「あ、分かるな。私もたまーに泳ぎに行っちゃう」

412: 2020/06/11(木) 21:32:37.25 ID:PzT53L4b.net
梨子「あの、渡辺さんは……」

曜「飛び込みしてたんだ。一応、オリンピックに狙ってたくらいには頑張ってた」

梨子「やっぱり……初めて会った時から何だか見たことあると思ってたんです。飛び込みの渡辺選手だったんですね」

曜「あはは、知ってくれてたんだ。なんだか照れくさいな……」

曜「……まぁ、もう引退して以来ほぼ飛び込みはしてないけどね」

梨子「……引退した理由を、聞いても?」

416: 2020/06/12(金) 21:56:15.24 ID:xXMJfMdz.net
梨子「当時報道されてた実力の限界……っていうのは本当の理由では無いんですよね?」

曜「あはは……分かっちゃうか。うん、本当の理由は別」

梨子「……もしかして、人前に出るのが怖くなった、とか」

曜「おお……ほぼ正解だよ。どうして分かったの?」

梨子「私も、そうだったからです」

曜「……なるほど……」

417: 2020/06/12(金) 21:56:32.18 ID:xXMJfMdz.net
梨子「とある大きなコンクールで……弾けなかったんです。なんかもう、全部頭から消えちゃって」

梨子「あんまり記憶が無いんですけど……とても、とても怖かったのを覚えてます」

梨子「どうしようもないくらい指が、身体が震えて……気がついたら舞台袖で先生に呼ばれてました」

梨子「それ以来、1人でしか弾けなくなっ……もう、ピアニストは無理だって諦めたんです」

曜「……そっか……」

418: 2020/06/12(金) 21:56:49.58 ID:xXMJfMdz.net
梨子「ごめんなさい、こんなこと話して……」

曜「ううん。ありがとう」

梨子「……あ。渡辺さんに聞いたのに私ったら……」

曜「ふふ、そうだね。私も……私はね、たくさんの人に見られることが怖くなっちゃった」

曜「世界大会優勝して……一気に注目されるようになって、たくさんの人が私に話しかけてきた。マスコミとか、話したことない同じ学科のことか、道端ですれ違った人とか……家にまで来られたこともあるんだ」

曜「人に会うのが本当に怖くなって……ちょっとね、外に出ることが出来なくなった時期もあった」

419: 2020/06/12(金) 21:57:04.06 ID:xXMJfMdz.net
曜「何とか今は大丈夫になった。仕事もできるようになった。でもちょっと、まだ怖い時がある」

梨子「……小原さんからは……」

曜「うん。もう一度飛び込み選手をしないかって、お金付きで」

梨子「お金?」

曜「一千万」

梨子「一千万!?なんで……」

曜「さぁ……あの人が考えてる事はよくわかんないや。でも……」

420: 2020/06/12(金) 21:57:20.17 ID:xXMJfMdz.net
曜「それより、もう一度飛び込みが出来るかもしれないって言われた時に動揺した自分にちょっとね……吹っ切れたつもりだけど、こんなに未練が残ってたんだって」

梨子「それは……渡辺さんは辞めたくてやめたわけじゃないから……そうに決まってます」

梨子「でも、私は……」

曜「もう、弾きたくないの?」

梨子「……分かりません。私もものすごく心が揺れたから……不意打ちだったってことを抜きにしても……」

421: 2020/06/12(金) 21:57:41.34 ID:xXMJfMdz.net
曜「……あはは、私たち似てるかもね」

梨子「……ふふ、そうかもしれません……」

曜「……善子ちゃん、大丈夫かな……」

梨子「……」

梨子「……多分、大丈夫です」

曜「どうして?」

梨子「彼女は、一人じゃないから……小原さんは一人だったけど、善子ちゃんは一人じゃない」

曜「一人じゃない……」

梨子「私たちとも違って」

曜「……なるほど……そっか……」

422: 2020/06/12(金) 21:58:08.68 ID:xXMJfMdz.net
ーー

果南「お酒お酒お酒~♪」

果南「お酒~……ん?」

ザリッ

鞠莉「……」

果南「お、来た来た。待ってたよ」

鞠莉「待ってた……?」

423: 2020/06/12(金) 21:58:30.97 ID:xXMJfMdz.net
果南「うん。ってかどうしたの、そんな怖い顔して」

鞠莉「別に。あなたには関係ないわ」

果南「ふーん、だってさ、ダイヤ」

ダイヤ「あら、そうですか。残念、私も聞きたかったのに」

鞠莉「なっ……」

果南「いやー懐かしいね。こうやって三人揃うのは大学卒業して以来じゃない?」

ダイヤ「ですわね。丁度よくお酒もありますし、昔話にでも花を咲かせましょうか」

424: 2020/06/12(金) 21:58:47.22 ID:xXMJfMdz.net
鞠莉「邪魔しないで!!あなた達に構ってる時間はないの!!」

果南「連れないなぁ。私たちとことは嫌いになっちゃった?」

ダイヤ「悲しいですわね……」

鞠莉「っ!ふざけてな」

果南「ふざけてるのはどっち?」

ダイヤ「そうよ。あなたにだけは言われたくないわ」

鞠莉「……!!」

425: 2020/06/12(金) 21:59:39.76 ID:xXMJfMdz.net
果南「善子」

ダイヤ「千歌さん」

鞠莉「!」

善子「……姉さん……」

千歌「……」

鞠莉「……あなた達……」

426: 2020/06/12(金) 22:00:53.90 ID:xXMJfMdz.net
果南「さ、腹割って話す時間だ。家に行こうか」

ダイヤ「お酒もありますし、ね?」

鞠莉「この……!」

果南「さ、れんこーれんこー」ズルズル

鞠莉「離して!!果南!!ダイヤ!!」

ダイヤ「静かになさい。近所迷惑です」

鞠莉「むぐっ!?」

ズルズル

千歌「……善子ちゃん」

善子「……行きましょ」


・14 終わり

433: 2020/06/14(日) 14:16:39.71 ID:c6WCJI1E.net
・15

善子「……」

千歌「……」

鞠莉「……」

果南「ほらほら、皆飲んで」

ダイヤ「おつまみもありますわよ」

善子「いやそんな気分じゃ……」

果南「えー?美味しいのに」

千歌「そういう問題じゃないでしょ」

434: 2020/06/14(日) 14:16:55.75 ID:c6WCJI1E.net
果南「千歌にそんなこと言われるなんて、私も歳とったなぁ」

千歌「どういう意味?……ってか黒澤主任って二人とどういう関係なんですか?なんで……」

ダイヤ「大学の同期です」

千歌「えっ、そうなの……知らなかった……」

果南「まぁそりゃそうでしょ。私だって千歌がダイヤの部下だなんて知らなかったし」

善子「世間ってほんと狭いのね」

435: 2020/06/14(日) 14:17:12.88 ID:c6WCJI1E.net
鞠莉「……ねぇ」

果南「で、本題だけど。小原さんやい」

鞠莉「本題もクソも、私は善子と千歌っちにしか話はないんだけど」

ダイヤ「話し合いというのは当事者だけでは成り立ちません。第三者の目線が必要不可欠です」

鞠莉「あなたたちには関係ないでしょ!」

436: 2020/06/14(日) 14:17:26.96 ID:c6WCJI1E.net
ダイヤ「あなたはもっと自分の行動を顧みて発言しなさい。果南さんはともかく、わたくしは巻き込まれた側です」

果南「関係大ありだよ。千歌と善子は私の可愛い妹分だから」

善子「私も?」

果南「うん。私はそう思ってるけど、ダメ?」

善子「いや……そう……」

437: 2020/06/14(日) 14:17:41.19 ID:c6WCJI1E.net
鞠莉「違う!善子は私の妹よ!」

果南「あ、それそれ」

鞠莉「は?」

ダイヤ「鞠莉さん、善子さんはあなたにとって何ですか?」

鞠莉「だから妹だって……」

果南「どんな?」

鞠莉「……何が言いたいのよ」

438: 2020/06/14(日) 14:18:12.01 ID:c6WCJI1E.net
ダイヤ「あなたにとって『どんな』妹ですか?」

鞠莉「な、なに……なにを……」

善子「ちょ、ちょっと何言ってんのよ」

千歌「……善子ちゃんは実は本当の妹じゃないとか……?」

善子「いやまぁ、戸籍上はそうだけど……」

果南「そういうことじゃなくて。まぁ、なんていうか、気持ちの問題?」

鞠莉「……!」

439: 2020/06/14(日) 14:18:28.30 ID:c6WCJI1E.net
果南「鞠莉、黙ってちゃダメだよ。こういうのは自分で」


ダイヤ「この人ただのシスコンなんです」



鞠莉「!!」

果南「うわぁ、言っちゃった……」



ダイヤ「善子さん、あなたの事が好きで好きでたまらないからこんなにしつこく追い回してたんです」

440: 2020/06/14(日) 14:18:53.20 ID:c6WCJI1E.net
善子「えっ……」

千歌「……マジ?」

果南「マジマジ」

ダイヤ「そうでしょう?鞠莉さん。好きでたまらないんですよわよね?」

鞠莉「な、何、言って……」プルプル

ダイヤ「震えてますわね。図星をつかれた時のあなたのくせです」

鞠莉「……Shut Up!!」

ダイヤ「黙るのはあなたです。近所迷惑」

鞠莉「むぐっ!?」

果南「ダイヤえげつな……」

445: 2020/06/15(月) 20:10:13.15 ID:fL6C0b42.net
ダイヤ「だからいい加減にするのはあなたです、鞠莉さん」

鞠莉「シスコンって自分だって!」

ダイヤ「ええ、自覚していますわ」

果南「『自分だって』って、今認めたね」

鞠莉「ちがっ……これは!」

446: 2020/06/15(月) 20:10:28.18 ID:fL6C0b42.net
善子「……そうなの?」

鞠莉「!いや……違うわよ善子」

善子「私のことが好きなの?」

鞠莉「~~!!」

千歌「わぁ……顔真っ赤……」

果南「今ここに鞠莉一人なのがその証拠だよ。今すぐ本気で連れ戻すつもりならあのおっきい家にいる怖い顔した人達連れてくればいいし」

千歌「確かに……」

447: 2020/06/15(月) 20:10:42.76 ID:fL6C0b42.net
ダイヤ「それをせずにこんな回りくどいことをしているのは、善子さんあなたの口から帰ると言って欲しいからです」

果南「過労で善子倒れた時も来たでしょ?心配で心配でたまらなかったんだよ」

ダイヤ「こうして家にまで来るのも、あなた方の身の回りを調べるのも、全部全部善子さんが可愛くて好きでたまらないからです」

果南「ね、鞠莉」

448: 2020/06/15(月) 20:11:01.25 ID:fL6C0b42.net
鞠莉「……う」

ダイヤ「なんです?」

鞠莉「違う!ちがうちがうちがう!!そんなのデタラメよ!!私は小原家の、家の存続のために……あの土地を私たちのものにするために!」

ダイヤ「鞠莉さん!あなた」


パァン!


鞠莉「……!」

千歌「……いい加減にしなよ……」

果南「千歌……!」

善子「……!」

449: 2020/06/15(月) 20:11:20.82 ID:fL6C0b42.net
鞠莉「……なにするのよ……」

千歌「こっちのセリフだよ。ねぇ、どの面下げて今ここにいるの?」

鞠莉「……なんですって?」

千歌「そうでしょ?善子ちゃんにこんな思いさせて、ヘラヘラ笑ってやってきてさ」

鞠莉「誰がヘラヘラしてるって!?誰に向かってそんな口聞いてんのよ!」

千歌「そうでしょ!!何も間違ってないでしょ!!鞠莉ちゃんがどんな気持ちかなんて分かるわけないじゃん!!なにも言わないで、追い詰めるようなことして、笑って……言ってくれなきゃ分かんないよ!!」

善子「千歌……」

450: 2020/06/15(月) 20:11:40.70 ID:fL6C0b42.net
千歌「言ってくれなきゃわかんない!声に出さなきゃ伝わらない!!そんなことも分かんないの!?」

千歌「私は……私は少なくとも鞠莉ちゃんよりは善子ちゃんの気持ちを分かってる。だって私は鞠莉ちゃんより善子ちゃんとたくさんお話したから」

鞠莉「……!……」

千歌「ねぇ、言ってくれなきゃ伝わらないんだよ。気持ちはお金じゃ、力じゃどうにも出来ないんだよ。今言わなきゃいつ言うの?時間は待ってくれない。過去はもう変えられない。大事なのはいつだって今この瞬間でしかないんだよ」

鞠莉「……っ」

451: 2020/06/15(月) 20:11:59.66 ID:fL6C0b42.net
ダイヤ「……鞠莉さん」

果南「鞠莉」

鞠莉「……わたし、は……」

ポン

鞠莉「!」

善子「……姉さん」

鞠莉「……善子……!」

善子「あなたの話なんて今まで聞こうと思ったこと無いけど……今日は、なんでも聞く」

鞠莉「……っ!」

善子「……話して、くれる?」

鞠莉「……私は……!」

善子「……姉さん……!」

456: 2020/06/16(火) 19:59:17 ID:Vz3jqsbn.net

鞠莉「……!!」ダッ

果南「あ!逃げた!」

ダイヤ「この期に及んでまだ……!」

善子「姉さん!!」ダッ

千歌「善子ちゃん!」ダッ

果南「千歌まで行っちゃった」

ダイヤ「全く……あの強情さには本当呆れますわね」

果南「まぁでも、もう限界でしょ。ほとんど壊れかかってるし」

ダイヤ「そうね」

457: 2020/06/16(火) 19:59:57 ID:Vz3jqsbn.net
ーー

鞠莉「はぁ……はぁ……」タッタッタッ

善子「はぁ……はぁ……待ってってば……」

鞠莉「付いてこないで!!はぁ……」

善子「そういうわけには……いかないでしょ……!」

458: 2020/06/16(火) 20:00:14 ID:Vz3jqsbn.net
鞠莉「はぁ……はぁ……」

善子「そらっ!」ダキッ

鞠莉「っ!は、はなして」

善子「歳とったわねあんた……こんな簡単に捕えられるなんて」

鞠莉「この……はぁ……はぁ……」

善子「観念しなさい。本当のこと全部話すまでこのまま逃がさないから」

459: 2020/06/16(火) 20:00:27 ID:Vz3jqsbn.net
鞠莉「……やだ」

善子「やだってあんた……」

鞠莉「やだ。話さない」

善子「子供か。話してくれないと、私の人生変わってくるんだけど」

鞠莉「勝手に変わればいいじゃない」

善子「どの口が……まぁでもその口ぶりだと、あの二人が言ってたことは本当みたいね」

鞠莉「……」

460: 2020/06/16(火) 20:00:43 ID:Vz3jqsbn.net
善子「いきなりそんな手のひら返しもいいこと言われても……簡単に信じられないけど」

善子「まぁ……でも、あんたは家のことしか考えてないと思ってたからちょっと安心したわ」

善子「あのバカ親みたいにね」

鞠莉「……善子は家が嫌い?」

善子「分かりきってる事ね」

461: 2020/06/16(火) 20:01:05 ID:Vz3jqsbn.net
鞠莉「パパもママも?」

善子「『ママ』って私とあんたじゃ違うけど、私のママでいい?ちなみにあのクソ親父は論外よ」

鞠莉「……じゃあ」

善子「うん?」

鞠莉「……じゃあ、内浦は?」

善子「あの家がなかったら好きね」

462: 2020/06/16(火) 20:01:23 ID:Vz3jqsbn.net
鞠莉「~~!」

善子「なに、何もごもご言ってんの」

鞠莉「……えっと……その……」

善子「……」

鞠莉「……あの、わたし……のこと、は……」

善子「嫌い」

鞠莉「っ!」

善子「当たり前でしょう。っていうか分かってんじゃないの」

463: 2020/06/16(火) 20:01:37 ID:Vz3jqsbn.net
鞠莉「……その、まぁ……」

善子「嫌いよ嫌い。まぁ、今まで何回も言ってきてるけどね」

鞠莉「……そうよね……でも……」



千歌「はぁ……はぁ……追いついた……」

千歌「……善子ちゃん」

464: 2020/06/16(火) 20:01:53 ID:Vz3jqsbn.net
善子「でも?」

鞠莉「……でも……私は……」

善子「……」

鞠莉「……私は……私は、あなたのことがこの世で一番大事だと思ってる……」

善子「……そう……」

鞠莉「ホントよ。信じてもらえないと思うけど思うけど……本当に、私はあなたのことだけを考えて生きてきた」

善子「とてもそうとは思えないけど?」

468: 2020/06/17(水) 20:43:32.26 ID:1PsK8gBW.net
鞠莉「そう……ね。だってそういう風にしてきたから……」

善子「どうして?最初から言ってくれれば、私は家を出なかったし籍を抜くことなんてしなかったかもしれない」

鞠莉「だって、その」

善子「なによ」

鞠莉「恥ずかしいじゃない……妹が大好きなんて」

善子「はっ……なにそれ……呆れた……」

469: 2020/06/17(水) 20:43:48.29 ID:1PsK8gBW.net
鞠莉「しかも好きなのが私だけって言うのがさらに……だから……」

善子「だから縛りつけようと?すごいわ……面倒くささと回りくどさの世界一取れるんじゃないのあんた」

善子「はぁ……まさかこんなオチなんて……」

鞠莉「……ごめんなさい……」

善子「謝らないでよ。調子狂うから」

善子「まぁ、でも……そうね。悪くはない気分よ」

鞠莉「……!」

470: 2020/06/17(水) 20:44:16.56 ID:1PsK8gBW.net
善子「好きって言われて嫌な気分になる人はいないでしょ」

鞠莉「……そう……ありがとう」

善子「お礼を言われることでもないわよ。ただ、まぁ……」チラッ

千歌「!」

善子「私があの家に帰ることは無いわ。絶対に」

鞠莉「……うん……」

千歌「……善子ちゃん……」

善子「残念ながらもう私は私の人生を歩いてるの。私の、私たちの家は今ここよ」

鞠莉「うん……分かったわ」

471: 2020/06/17(水) 20:44:31.98 ID:1PsK8gBW.net
善子「私のことを想ってくれてるなら、そっと見守ってて。時々顔見せてくれるくらいでね。もう来ないでって言わないから」

鞠莉「ええ……じゃあ、一つだけわがまま聞いてくれる?」

善子「なに?」

鞠莉「なにか一つだけ欲しいものを言って」

善子「ええ?別にないけど……というかまたお金で……」

鞠莉「お願い!一つだけなにか買わせて!」

善子「ちょ、頭上げてよ」

472: 2020/06/17(水) 20:45:06.65 ID:1PsK8gBW.net
千歌「あ、じゃあさ」

善子「千歌?」

千歌「ねぇ、鞠莉ちゃん。私欲しいものがあるんだけど――」

鞠莉「……それでいいの?」

千歌「うん!ね、善子ちゃん」

善子「そういえばまだ買い直して無かったわね」

473: 2020/06/17(水) 20:45:27.34 ID:1PsK8gBW.net
千歌「いいかな、鞠莉ちゃん」

鞠莉「おやすい御用よ!とびっきりのを送ってあげる!」

善子「そんなにむちゃくちゃ高いのいらないからね?」

千歌「いーじゃん!この際高いやつ買ってもらおうよ!」

善子「千歌あんたねぇ……」

鞠莉「待ってて、今から手配するから」

善子「もーこれだから金持ちは……」

474: 2020/06/17(水) 20:45:45.48 ID:1PsK8gBW.net
果南「良かった良かった」

ダイヤ「ですわね」

果南「いやーダイヤのえげつない精神攻撃で鞠莉をバキバキにした結果だね」

ダイヤ「人聞きの悪い。事実を言ったまでです」

果南「んー、そうなんだけど……ま、いいか。終わりよければすべてよし」

ダイヤ「さて、飲み直しますか」

果南「だね」

475: 2020/06/17(水) 20:46:06.94 ID:1PsK8gBW.net
ーー

千歌「お先に失礼します!お疲れ様でしたー!」

ダイヤ「お疲れ様。気をつけておかえりなさい」

千歌「はーい!」

476: 2020/06/17(水) 20:46:34.43 ID:1PsK8gBW.net
千歌「~♪」

千歌「……お?」


花丸「ずら、牛乳買い忘れちゃった」

ルビィ「戻る?」

花丸「うーん……」


千歌「ルビィちゃーん!花丸ちゃーん!」

花丸「千歌さんだ」

ルビィ「こんにちは」

477: 2020/06/17(水) 20:46:55.59 ID:1PsK8gBW.net
千歌「こんにちは!お買い物?」

花丸「はい。千歌さんもですか?」

千歌「うん!お米買いに来たの!」

ルビィ「ふふ、なんだか嬉しそうですね」

千歌「そりゃそーだよ!今日はね、おいし~い白飯が食べられるからね!」

花丸「いい炊飯器買ったとか?」

千歌「えっとねー」

善子「なーにしてんの」

千歌「お!善子ちゃん!」

478: 2020/06/17(水) 20:47:48.14 ID:1PsK8gBW.net
善子「うるさい……ごめんね、この蜜柑バカが」

ルビィ「いえ、千歌さん元気で楽しいです」

花丸「ずら!」

千歌「誰がみかん馬鹿だ!今日はお米馬鹿だよ!」

善子「どうでもいいから静かにして。ほら、さっさと買って帰るわよ」

479: 2020/06/17(水) 20:48:15.31 ID:1PsK8gBW.net
千歌「ほいほーい!……あれ?」

梨子「あ」

曜「おー!」

千歌「梨子ちゃん……と?」

善子「曜さん」

千歌「曜さん?」

善子「会社の先輩」

480: 2020/06/17(水) 20:48:33.36 ID:1PsK8gBW.net
千歌「あ!これはこれは、いつも善子ちゃんがお世話になってます」

曜「おーキミが善子ちゃんの同居人!こちらこそ、いつもお世話になってます」

善子「二人で、どうしたんですか?」

曜「えっへへ、今から梨子ちゃんとデートなのだ!」

梨子「そんなんじゃないです。普通に飲みに行くだけ」

曜「もー照れちゃって」

梨子「照れてません!」

481: 2020/06/17(水) 20:48:54.62 ID:1PsK8gBW.net
善子「……いつの間にか仲良くなってる……」

千歌「なになに?デート?」

曜「んじゃ、善子ちゃんまたね!周りのかわい子ちゃんたちも!」

梨子「じゃあ、また」

千歌「……行っちゃった」

善子「へぇー……」

花丸「かわいこ……ちゃん?」

ルビィ「すごいはつらつとした人ですね……」

482: 2020/06/17(水) 20:49:25.13 ID:1PsK8gBW.net
千歌「……はっ!早くお米買わないと!」

善子「そうよ。行きましょう」

千歌「じゃね、二人とも!」

善子「帰り道気をつけてね」

花丸「はい!」

ルビィ「失礼します」

千歌「おっこめーおっこめー♪」

善子「歌うな。恥ずかしい」

花丸「……ふふ、あの二人見てると何だかこっちまで楽しくなっちゃう」

ルビィ「だね。いいなぁ」

花丸「帰ろうか、ルビィちゃん」

ルビィ「うん!」

483: 2020/06/17(水) 20:49:49.98 ID:1PsK8gBW.net
ーー

千歌「開けるよー」

善子「ええ」

千歌「とりゃ!……お?」ガサガサッ

善子「……黒い……」

千歌「黒いね……」

善子「これ本当に炊飯器?」

千歌「炊飯器……って書いてあるよ」

善子「値段ググってみよ」

千歌「うわ、彼氏出来ない奴だ」

善子「うるさい」

484: 2020/06/17(水) 20:50:10.99 ID:1PsK8gBW.net
善子「……え」

千歌「なになに?いくらだった?」

善子「15万……」

千歌「じゅご……!?マジ?」

善子「マジマジ」

千歌「はぇ……さすが金持ち……」

善子「はぁ……全く……」

485: 2020/06/17(水) 20:50:26.96 ID:1PsK8gBW.net
千歌「よっしゃーー!!うまい飯食うぞーーー!!」

善子「いきなり叫ぶな!」

千歌「高い飯食って新生活仕切り直しじゃ!!!」

善子「だから叫ばないでって!!もう!!」

千歌「善子ちゃん米洗って!私お風呂入ってくるから!!」

善子「なんでよ!!手伝いなさい!!」

千歌「善子ちゃんうるさい!!」

善子「あんたが言うな!!」

486: 2020/06/17(水) 20:50:43.90 ID:1PsK8gBW.net
ーー

果南「おじぃー」

「なんだ」

果南「最近小原家のヘリコプター飛んでなくない?」

「ああ、そうだな」

果南「ふむ……」

「なんだ、また善子ちゃん達のところに行くのか?」

果南「いや、鞠莉の所行ってくる」

「そうか、気をつけてな」

487: 2020/06/17(水) 20:50:58.02 ID:1PsK8gBW.net
果南「うん。あ、それと十千万にも」

「ほぉ……珍しいな」

果南「ま、たまにはね。私が顔出さないと」

「そうか。よろしく言っといてくれ」

果南「おっけー。じゃ、行ってくるね」

「気をつけてな」

果南「はいはーい」

タタッ

果南「……うん、今日もいい天気だ。富士山がよく見える」

果南「……よし!」

・15 終わり

488: 2020/06/17(水) 20:51:42.01 ID:1PsK8gBW.net
終わり
1ヶ月ありがとう
久びさに書けて楽しかった
ではでは

489: 2020/06/17(水) 20:55:04.73 ID:wWlkEWjw.net
おつです

引用: 千歌「今日からここが我が城かぁ」善子「私もいるんだけど」