434: 2016/02/16(火) 01:30:06.92 ID:kWITvwQM0
 
【夢の話】



今日はお正月。そして新年を迎えた最初の夜だ。

もう夜の9時を回って眠りの時間らしい。
見たいテレビがあるけど録画もしてるし僕も寝ようと思う。


「ねぇ、真紅。初夢ってなぁに?」

「初夢は元旦から3日の夜に見る夢のことよ。
 日本では初夢で富士に鷹、ナスを見ると縁起が良いと言われているの」

「富士山に鷹とナス?なんでなの?」

「それはですねぇ。富士山に登ってナスの漬物を食べると清々しいからですよ。
 そのナスを美味しく食べられないと鷹にグわばァっと食べられちまうですぅ」

「えぇ…!…こ、怖いの…」

「嘘を教えるものではないわ。翠星石」


新年早々ローゼンメイデン達は元気だ。まぁ、いい事だけどさ。
でも元気すぎて疲れちゃったよ。

今日だってチビ苺と翠星石に付き合って羽根つきやったし。
はぁ…、早く寝なきゃ。初夢なんてどうでもいいよ。


「あら、ジュン。夢はとっても大切なものなのよ」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
435: 2016/02/16(火) 01:32:17.68 ID:kWITvwQM0
うわっ!久しぶりに読まれた。
契約しているドールとはこうやって心を読まれることがある。

プライバシーなんてあったものじゃない。


「へへーんだ。どうせ、チビ人間は変な夢を見てアワアワするに決まってるですぅ」


こいつはこいつで毒舌だし…。
そういえば、翠星石って夢の庭師だったよな。


「そうですよ。少し可哀想ですから翠星石が如雨露で良い夢を見せてあげても…」ゴニョゴニョ

「ジューン!ジュンはどんな初夢見たいの?」


初夢かぁ。あんまり考えたことないなぁ。
悪夢じゃなければなんでもいいかな。


「たしかに怖い夢は嫌なの!楽しい夢だったらいいね」


雛苺はどんな夢がいいんだ?
どうせ苺大福に囲まれてる夢とかだと思うけど。


「違うの!ヒナはいちご畑でいちごを食べる夢がいいのよー」




……やっぱり苺関係じゃないか。

436: 2016/02/16(火) 01:34:08.24 ID:kWITvwQM0
 
「そうだけど違うの!苺狩りっていうイベントなのよ。新鮮なままでいちごさんが食べられるって聞いたわ」


あー…、なるほど。
たしかにローゼンメイデンには行きづらい感じだよな。


「1回行ってみたいなー」

「あら、もう9時を10分も過ぎてしまった。そろそろ眠りましょう」


そうだな。
明日もお節だから早く起きないと。


「翠星石も少し手伝ったですよ。この翠星石の有能さにひれ伏せですぅ!」


それ今日も聞いたよ。


「明日が待ち遠しいなの!」

「そうね。では、おやすみ」

「み~」

「おやすみですぅ」



あぁ、また明日な。

 

437: 2016/02/16(火) 01:36:31.01 ID:kWITvwQM0
 


……



ここはどこだろう?
そうだ…!父さんと一緒に古美術店に行くんだった。


父さんはたまの休みに 僕をこの店に連れて行ってくれた。
仕事の打ち合わせだろうけど、僕はそれが嬉しくてはしゃいだっけ。




この店は変わってる。外装が小さな塔みたいなんだ。

内装も不思議だけどとても綺麗な……
まるで少女達が遊んでいるような印象を受けたのを覚えている。


父さんが仕事の話をしている間、僕は回りを眺めたあと 塔を登った。
店の外、壁に沿って続いている螺旋状の階段。

この階段が僕は好きだった。
だって登ると景色が良かったから。

438: 2016/02/16(火) 01:39:33.19 ID:kWITvwQM0
 



……


2階の窓……パパたちが見える!まだおじさんと話してる。
もっと上に登ってみよっと。




……


また窓がある。今度はさっきのおじさんだけだ。
女の子が一緒にいる。おじさんの子供なのかな。

パパはどこだろう。トイレかな?




……


4階。窓の中を覗くとおじさん一人だけ。
女の子はどうしたんだろう?なんだか悲しそう…。




……


窓を覗くとおじさんが机に向かって何かしてる。
何をしてるのかな。あの光ってる宝石はなに? あれってたしか……。







「あなたはここで何をしているのですか」




 

439: 2016/02/16(火) 01:41:41.48 ID:kWITvwQM0
 
気がつくと上の階段に白い女の子がいた。真っ白な女の子だ。

白くて白くてふわふわで……まるで雲みたい。



階段を登ってるんだ。上から見た景色はとっても綺麗だよ。
君も一緒に登ろうよ。


「一緒に登ってもいいのですか?」


いいよ。いつもはともえちゃんと一緒に登ってるんだ。
みんなには秘密だから君も秘密にしてね。


「はい。わたくし達だけの秘密ですね」





真っ白なお洋服の女の子。肌も髪も真っ白。

きっと外国の子だ。
 

440: 2016/02/16(火) 01:44:13.26 ID:kWITvwQM0
 

「わたくし…、ずっと寂しかったんです」


どうして?
パパとママは?


「お父様にはお会いした事なくて…。姉妹も6人いますけどこちらも会った事がないんです…」


大変な事を聞いちゃった…。

なら…なら僕がお友達になるよ。
だからそんなに悲しそうな顔しないで。


「お友達…?本当に……?」


うん!


「まぁ!嬉しい。では……では、いつかお迎えに参ります」


お迎えって…?


「だから待っていて。わたくしのマスター」



ますたー?…あっ、頂上だよ。
ここから見る景色は最高なんだ!……あれ?

 

441: 2016/02/16(火) 01:48:22.93 ID:kWITvwQM0
 

「本当…。とっても綺麗。連れてきてくれてありがとう」



おかしいな…?こんな景色だったかな?
たしかに綺麗だけど…、山がすっごく近いし街がない。

テレビで見た事ある。これってアルプスの山の麓みたいだ…!




どうなっちゃったんだろう…?外国に来ちゃったのかな?

きみはどう思う。………あれ?


………いない。
さっきまで手を握ってたのに…。




「坊や。何か探し物かい?」



あっ!おじさん。ここに女の子がいなかった?


「私は見ていないよ。それより人形劇でもいかがかな」


人形劇…?でも、パパを待ってるから………あれ?
ここって…いつもの公園だ。








「生きている人形も混じっているからね。よく見ていてごらん」





 

442: 2016/02/16(火) 01:50:48.70 ID:kWITvwQM0
 

……




山のふもと。すぐ近くに雲が流れている高台。
そんな草原に一件のお店がポツンと建っている。


近くの林を通って小川を跨いで…お店に行かなきゃ。

またあのお店の階段を登るために。




パパはまだ忙しいかな。


また窓から覗いてみよう。………あれ?お店の中にお船があるよ。
……おじさんがお人形を捨てられて泣いてる…。





なんだろう…?
もう少し登ってみようかな……。


 

443: 2016/02/16(火) 01:51:57.07 ID:kWITvwQM0
 

今度はお人形作ってるや。
じゃあ、次はどうなるんだろう…。




……牢屋に捕まってる。おじさんは何も悪いことしてないのに…。
でも、これでよかったんだよね。おじさん。






僕は塔をどんどん登る。
窓から見る物語が気になって……懐かしくて…。




――――――




 

444: 2016/02/16(火) 01:55:39.18 ID:kWITvwQM0
 

この子が1番目の娘。

大切な大切な……私の娘。
あの子の分もどうか幸せに…。




2番目の娘。この子も大切な娘。

この子は大丈夫。
長女と一緒にいてあげてほしい。




3番目と4番目の娘。双子の姉妹。

この子たちはいつか離れ離れになる時がくるけれど、
その時は成長の時。健やかに。




5番目の娘。あの子に一番似ている娘。

一番しっかりしているようで一番心配なこの子。
支えてくれる人が現れますように。




6番目の娘。無垢で清らかな娘。

姉妹で一番幼い君だけど、この子も大丈夫。
姉妹をよろしく頼むよ。







7番目の娘。とても純粋な娘。

姉妹で一番過酷な役目を担う子。
その代わり、私はいつでも傍にいるよ。

 

445: 2016/02/16(火) 01:58:11.63 ID:kWITvwQM0
 

なぜ…ローザミスティカを7つに砕いたの。


……どうしてだと思う。坊や。


………砕いたんじゃない…心が割れたんだね…。


…そう。私は限界が来ていたのだ。


ローザミスティカができたのもギリギリだったよね。


ああ。間に合ってよかった…。


うん、そうだね。


……彼女たちに生を………。


―――この上ない祝福を。



……



 

446: 2016/02/16(火) 01:59:51.18 ID:kWITvwQM0
 
「ジュン!おはようなのー!」


ぐえっ!ち、チビ苺…。重いって…!


「もうっ!ヒナ重くないわ。レディに失礼なのよ」ブー

「やぁっと起きたですか。これだと万年ねぼすけ人間ですね」


好き勝手言ってくれるよな…。


「ジュン!ヒナね、いちごさんの初夢を見たのよ!富士山の近くでいちご食べたのー!」


へー…、すごいじゃん。


「えへへー」

「す、翠星石だってすっごい夢見たですよ!蒼星石とジェットコースターに乗る夢です!真横に富士山があったですよ」

「あぁ、それで悲鳴をあげていたのね」
 

447: 2016/02/16(火) 02:01:36.42 ID:kWITvwQM0
 
なんだよ、真紅。居たのか。


「ずっと居たわよ。おはよう、ジュン」


あぁ、おはよう。


「ほら、下でのりが待ってるです。早く行くですよ!」




―――――――――――
――――――――
―――――


 

448: 2016/02/16(火) 02:03:57.64 ID:kWITvwQM0
 
「夢に出てたいちごおいしかったの!」

「良い初夢見れて良かったねヒナちゃん。今度苺買ってくるわね」

「のり!ありがとなのー」

「翠星石ちゃんはジェットコースターと富士山よね。みんな縁起が良い夢で良かったぁ」

「はいですぅ。でも、真紅はあんまり良い夢じゃなかったみたいですよ」

「そうなのぅ?」

「………水銀燈がちょっかいをかけてきたわ」

「え゛っ?それって本人ですぅ?」

「本人よ。新年早々嫌な思いをしたわ」

449: 2016/02/16(火) 02:05:13.91 ID:kWITvwQM0
 
「水銀燈ちゃんったら夢にまで遊びに来たのねぇ」

「あれはそういう感じではなかったわ。ただの嫌がらせよ」

「ねぇ、のりはどんな夢見たのー?」

「お姉ちゃんは昔の夢を見たの。ジュンくんにいっぱい絵を描いてもらって―――」

「そんな幼くしてマエストロの片鱗があったですか」

「ジュンすごいの!」

「ところでジュン。ジュンはどんな夢を見たの?」

450: 2016/02/16(火) 02:07:23.04 ID:kWITvwQM0
 

………忘れた。


「えー…、忘れちゃったの?ヒナ聞きたかったのにぃ……」

「仕方がないわ。印象に残らない夢だったのでしょう」

「ちび人間は夢の中でも眠ってたに違いねーですぅ」


なんだと…!そんなわけ……。…あれ?


「どうしたです?ホントに眠ってた夢だったですか?」


いや、なんか誰かと約束したような……。


「のりと同じで昔の夢を見たのではなくて?」



そうなのかな…。たしか………。…………白い…。

 

451: 2016/02/16(火) 02:14:11.13 ID:kWITvwQM0
 
「そんな事よりお節を食べるです。このようかんは全部翠星石のものですぅ!」

「あっ!ずるいの!それならたまご焼きはヒナがもらっちゃうの」

「なんですってぇ…!チビチビのくせに生意気ですぅ!」

「うふふ、まだいっぱいあるから大丈夫よぅ」

「新年から騒々しいわね」



僕はそんな人形たちを眺めながら、
あの不思議な女の子の事を思い出していた。


『いつかお迎えに参ります』




お迎えか。なんかデジャヴ。
でも……、また会えたらいいな。

……って、おい!それはそうと僕の分も残しておけよな!


「チビ人間が遅いのが悪いんですぅ」





今日もウチは騒がしい。けれど、なんだろう。
新しい年の始まりだからかな。

僕は不思議と 胸が高鳴っているのを感じていた。


FIN
 

452: 2016/02/16(火) 02:16:40.33 ID:kWITvwQM0
これで終わりです。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
新連載を待ちながらモンハンに勤しみたいと思います。

453: 2016/02/16(火) 08:55:06.64 ID:vbUvmoEXo
おつおつ

引用: 【ローゼンメイデン】薔薇の香りのガーデンパーティ0【ラジオSS】