1: 2020/04/29(水) 08:00:32 ID:zNMt+zBP.net
朝日の少し顔を出す、午前四時三十分。
どうにも頭の中で色々な感情が渦を巻いて寝られない、そんな夜。
思えば私はこの時間を何度も体験していたように思う、その事を陽の光を浴びる事によって徐々に忘れていってしまっただけで。
どうにも頭の中で色々な感情が渦を巻いて寝られない、そんな夜。
思えば私はこの時間を何度も体験していたように思う、その事を陽の光を浴びる事によって徐々に忘れていってしまっただけで。
2: 2020/04/29(水) 08:01:04 ID:zNMt+zBP.net
家族に見つからないようにそう、と外に出ると絵の具を水で溶かずにべったりと塗りたくった様な濃紺の空が広がっている。
つい数時間前まではウザったいほど光っていたビルの窓明かりもこの時間にはなりを潜めている。
辺りを見渡しても昼とは異なる様相を見せ、空を見上げると薄ぼんやりと雲の浮かぶのが分かり、黄色く点滅する信号だけが私を照らしていた。
さっき家族のいる家を出てきたばかりだというのに、この広い世界に1人だけなのでは無いかという錯覚を起こす。
つい数時間前まではウザったいほど光っていたビルの窓明かりもこの時間にはなりを潜めている。
辺りを見渡しても昼とは異なる様相を見せ、空を見上げると薄ぼんやりと雲の浮かぶのが分かり、黄色く点滅する信号だけが私を照らしていた。
さっき家族のいる家を出てきたばかりだというのに、この広い世界に1人だけなのでは無いかという錯覚を起こす。
3: 2020/04/29(水) 08:01:47 ID:zNMt+zBP.net
時間を止めて切り取られたような景色だが季節柄桜が花弁を落とし、そこにだけは時間と生命を感じられた。
美しい。桜が散る様子は毎年見ているはずだけどそれでもなお、美しい。
桜が散るから美しいのか、美しいから桜は散ってしまうのか、私にはよく分からなかった。
でも、もしかしたら桜は私と同じなのかもしれないとも思った。
美しい。桜が散る様子は毎年見ているはずだけどそれでもなお、美しい。
桜が散るから美しいのか、美しいから桜は散ってしまうのか、私にはよく分からなかった。
でも、もしかしたら桜は私と同じなのかもしれないとも思った。
4: 2020/04/29(水) 08:02:11 ID:zNMt+zBP.net
私は高校二年間を蕾のまま過ごした。
努力を沢山したし、それと同じだけ言い訳をした。思えばこの頃からだったか、時たま夢に起こされ、色々なことを考え眠れない夜を過ごすようになったのは。
初めはライブが失敗に終わり、部員が居なくなった時だった。私は必氏に踊ったし歌った、それは間違いない。だけどその日から観客のまばらな拍手、機械のように感情のない顔が、夢に出てくるようになった。
努力を沢山したし、それと同じだけ言い訳をした。思えばこの頃からだったか、時たま夢に起こされ、色々なことを考え眠れない夜を過ごすようになったのは。
初めはライブが失敗に終わり、部員が居なくなった時だった。私は必氏に踊ったし歌った、それは間違いない。だけどその日から観客のまばらな拍手、機械のように感情のない顔が、夢に出てくるようになった。
5: 2020/04/29(水) 08:02:49 ID:zNMt+zBP.net
目を覚ますのは決まって四時。
それから三十分はバクバクと脈打つ心臓を抑え、カラカラに乾いた喉を潤おす為に水を飲み、ボロボロと溢れる涙を拭くなどした。
そして四時三十分に外に出る。
私にはこの独りの時間が必要だったのかもしれない。
それは挫折した過去から、煩わしい人間関係から……大好きな家族から、解放される時間だったから。
それから三十分はバクバクと脈打つ心臓を抑え、カラカラに乾いた喉を潤おす為に水を飲み、ボロボロと溢れる涙を拭くなどした。
そして四時三十分に外に出る。
私にはこの独りの時間が必要だったのかもしれない。
それは挫折した過去から、煩わしい人間関係から……大好きな家族から、解放される時間だったから。
6: 2020/04/29(水) 08:03:14 ID:zNMt+zBP.net
3年に上がって、μ'sに入って……私の努力は報われた、と思う。
憧れだったラブライブで優勝する事が出来て、皆を笑顔にするアイドルになれたから。
なのに何故こんな時間に目が覚めるのか、私は知っていた。
とどのつまり怖いのだ、スクールアイドルでなくなることが。桜の開花のように短い学生生活、その大半を蕾のまま過ごした私は。
スクールアイドルは学生生活という短い時間で輝くから美しいのか、美しいからこそ短い時間で終わってしまうのか、やっぱり私には分からなかった。
憧れだったラブライブで優勝する事が出来て、皆を笑顔にするアイドルになれたから。
なのに何故こんな時間に目が覚めるのか、私は知っていた。
とどのつまり怖いのだ、スクールアイドルでなくなることが。桜の開花のように短い学生生活、その大半を蕾のまま過ごした私は。
スクールアイドルは学生生活という短い時間で輝くから美しいのか、美しいからこそ短い時間で終わってしまうのか、やっぱり私には分からなかった。
7: 2020/04/29(水) 08:03:46 ID:zNMt+zBP.net
部活を辞めた子達はもしかしたら辞めていったその時に花が開いたのかもしれない、私には分からない。
でももしそうなのだとしたら、少し羨ましいと思った。
私が蕾でいる間も彼女達の学生生活は輝いていたのだから。
でももしそうなのだとしたら、少し羨ましいと思った。
私が蕾でいる間も彼女達の学生生活は輝いていたのだから。
8: 2020/04/29(水) 08:04:22 ID:zNMt+zBP.net
この感情は長い間忘れていた。
覚えているのは穂乃果達がアイドルを始めた時。
私が手を限界まで伸ばして欲した物を穂乃果が軽々と取っていった時。
初ライブを見に行った。
正直まだまだな部分も多かったけど、自分達の曲で、自分達の衣装で、自分達の振り付けで、スクールアイドルとして輝いていた。
私はまた夢を見るほどに焦った。
覚えているのは穂乃果達がアイドルを始めた時。
私が手を限界まで伸ばして欲した物を穂乃果が軽々と取っていった時。
初ライブを見に行った。
正直まだまだな部分も多かったけど、自分達の曲で、自分達の衣装で、自分達の振り付けで、スクールアイドルとして輝いていた。
私はまた夢を見るほどに焦った。
9: 2020/04/29(水) 08:04:51 ID:zNMt+zBP.net
そして穂乃果達に誘われμ'sに入ってからは、毎日が楽しかった。
辛い練習も仲間となら乗り越えられた。
喉から手が出る程欲しかった信頼出来る仲間の存在とはこんなにも素晴らしいものだったのだと知った。
そんな時にまた夢を見た。
ことりが留学し、穂乃果がアイドルを辞めると言った時だ。
辛い練習も仲間となら乗り越えられた。
喉から手が出る程欲しかった信頼出来る仲間の存在とはこんなにも素晴らしいものだったのだと知った。
そんな時にまた夢を見た。
ことりが留学し、穂乃果がアイドルを辞めると言った時だ。
10: 2020/04/29(水) 08:05:18 ID:zNMt+zBP.net
私の欲しいものを全て手にしておいてそれをすぐさまぽい、と捨てる穂乃果を見て本当に悔しかった。
結局あの子達と私はアイドルに対する想いが違った。
廃校を阻止する為、皆で歌って踊るのが楽しいから。それは勿論私の中にもある、でも違う。
私は皆に笑顔を与える「アイドル」になりたかった。
穂乃果が戻ってきた時に、私はこれまでと同じ様には信用する事が出来なかった。
結局あの子達と私はアイドルに対する想いが違った。
廃校を阻止する為、皆で歌って踊るのが楽しいから。それは勿論私の中にもある、でも違う。
私は皆に笑顔を与える「アイドル」になりたかった。
穂乃果が戻ってきた時に、私はこれまでと同じ様には信用する事が出来なかった。
11: 2020/04/29(水) 08:05:58 ID:zNMt+zBP.net
そんな時にまた、夢を見た。
こころが皆を家に連れてきてしまった日。
私の醜いプライドで、皆の努力を辱めてしまった。
でも、妹達にとって頼れる姉でいる為に私にはそうする事しか方法が見つからなかった。
そんな中穂乃果が提案してくれて私から妹達へのライブを開いた。
こころが皆を家に連れてきてしまった日。
私の醜いプライドで、皆の努力を辱めてしまった。
でも、妹達にとって頼れる姉でいる為に私にはそうする事しか方法が見つからなかった。
そんな中穂乃果が提案してくれて私から妹達へのライブを開いた。
12: 2020/04/29(水) 08:06:36 ID:zNMt+zBP.net
希と絵里が衣装を提案し、ことりが花陽にも手伝って貰いながら短い期間で仕上げてくれた。
海未が歌詞を書いてくれて、真姫ちゃんが曲を作ってくれた。
ステージを作る時には凛が一番頑張ってくれたと聞いている。
そんな仲間を一時でも信用しきれなかった自分が恥ずかしかった。
海未が歌詞を書いてくれて、真姫ちゃんが曲を作ってくれた。
ステージを作る時には凛が一番頑張ってくれたと聞いている。
そんな仲間を一時でも信用しきれなかった自分が恥ずかしかった。
13: 2020/04/29(水) 08:07:19 ID:zNMt+zBP.net
それからは自分を信じて、皆を信じて全力で頑張ってきた。
その結果がラブライブ優勝。
そして気が付いたらもう卒業が目の前に控えている。
こんなにも素晴らしい仲間と巡り会えたのに、まだまだこれからだって言うのに、私のスクールアイドルとしての時間は終わってしまうのだ。
その結果がラブライブ優勝。
そして気が付いたらもう卒業が目の前に控えている。
こんなにも素晴らしい仲間と巡り会えたのに、まだまだこれからだって言うのに、私のスクールアイドルとしての時間は終わってしまうのだ。
14: 2020/04/29(水) 08:08:06 ID:zNMt+zBP.net
勿論アイドルになってみせる、でも一人で放り出された時に、また同じ失敗をしてしまうんじゃないかって考えてしまう。
もし私が穂乃果なら、と考えてしまう。
もし私が穂乃果なら、と考えてしまう。
15: 2020/04/29(水) 08:08:47 ID:zNMt+zBP.net
「寂しい…わよね……怖いわよね……」
はらはらと落ちる花弁を浴びながら、桜の幹に軽く手を添え呟く。
自然と零れた私の言葉に勿論桜は何も答えない。その間も桜は一片また一片と花弁を落としていた。
はらはらと落ちる花弁を浴びながら、桜の幹に軽く手を添え呟く。
自然と零れた私の言葉に勿論桜は何も答えない。その間も桜は一片また一片と花弁を落としていた。
16: 2020/04/29(水) 08:09:20 ID:zNMt+zBP.net
「…そろそろ、戻らなきゃね」
母親が目を覚ます前に静かに家に帰らなくては、心配させてしまう。
自身と投影して勝手に愛着が湧いてしまったこの桜から背を向け家路へと急ぐ。
私が見ていない間はどうか花弁を散らしませんように、と叶いもしない願いを掛けて。
母親が目を覚ます前に静かに家に帰らなくては、心配させてしまう。
自身と投影して勝手に愛着が湧いてしまったこの桜から背を向け家路へと急ぐ。
私が見ていない間はどうか花弁を散らしませんように、と叶いもしない願いを掛けて。
17: 2020/04/29(水) 08:10:13 ID:zNMt+zBP.net
家に着き、静かに自分の部屋に戻ると窓から微かに明るい光が差していた。
時計を見ると午前五時を回った所だった。
今から寝ても1時間程しか寝られないな、と少し憂鬱になる。
時計を見ると午前五時を回った所だった。
今から寝ても1時間程しか寝られないな、と少し憂鬱になる。
18: 2020/04/29(水) 08:10:52 ID:zNMt+zBP.net
皆はまだ寝てるかな、海未だったらもしかしてもう起きてるかもしれない。
海を見に行ったあの日、駅のホームで涙を見せてしまったけれど、皆にはこれ以上弱い所を見せられないな、と考えるのはまだ強がってる私が私の中に居るからなのかもしれない。
…でも卒業式くらいは、信頼している皆に思い切ってもいいかもね。
海を見に行ったあの日、駅のホームで涙を見せてしまったけれど、皆にはこれ以上弱い所を見せられないな、と考えるのはまだ強がってる私が私の中に居るからなのかもしれない。
…でも卒業式くらいは、信頼している皆に思い切ってもいいかもね。
19: 2020/04/29(水) 08:12:08 ID:zNMt+zBP.net
手紙を書くのはどうだろう、皆への感謝の言葉に加えて、勿論今日の出来事も添えて。
大銀河宇宙No.1アイドルにこにーも、散り始めた桜も、午前四時三十分の静寂だって私なんだから。
大銀河宇宙No.1アイドルにこにーも、散り始めた桜も、午前四時三十分の静寂だって私なんだから。
20: 2020/04/29(水) 08:12:34 ID:zNMt+zBP.net
でも簡単に見つかったら恥ずかしいから、次期アイドル研究部に贈る私の今まで活動を記録してきたノートブックの最後のページに挟んで。
そんな事を考えながら今日も私は午前四時三十分の仄暗い闇を纏って浅い眠りにつく。
そんな事を考えながら今日も私は午前四時三十分の仄暗い闇を纏って浅い眠りにつく。
21: 2020/04/29(水) 08:15:05 ID:zNMt+zBP.net
終わりです。ssの箸休めにss書いてたら短編が出来たので思い切って投稿してみました。
小説形式?は初めての試みだったので厳しい意見や感想、アドバイス頂けると幸いです
小説形式?は初めての試みだったので厳しい意見や感想、アドバイス頂けると幸いです
引用: にこ「午前四時三十分の静寂」


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