112: 2015/04/29(水) 21:49:05.07 ID:TNFMKbDso
E3まで突破したので投下。貧O正規空母仲間が増えて瑞鶴も嬉しそうです。

前回:瑞鶴「加賀さん……好きです」 加賀「私も好きよ」【その3】
最初から:瑞鶴「加賀さん……好きです」 加賀「私も好きよ」

「艦これ」ピクトリアルモデリングガイド 大和編: 『艦これ』提督のための艦船模型ガイドブック
113: 2015/04/29(水) 21:49:41.16 ID:TNFMKbDso

「煌き」

瑞鶴「んっ……うぅ~ん……?」

ここ、どこだろう? ぼんやりとした意識のまま周囲を見回す。白い壁、白い天井。

鈴谷「瑞鶴っ! 良かった~……心配したんだからね!」

仲間の声で、薄っすらとしていた意識は一気に覚醒し、現実へと引き戻される。そっか、ここ、島の病院だ。

瑞鶴「鈴谷。私、あの後……」

鮮明に蘇ってくる、あの時の光景。私は戦艦ル級の砲撃をまともにくらって、意識を保てない程のダメージを受けた。

鈴谷「うん。瑞鶴のお陰で制空権が取れたから、うちらが優位に進められたよ」

鈴谷「旗艦の戦艦以外は全員撃沈。戦艦は形勢不利と見て撤退していったよ」

鈴谷「こっちも瑞鶴の退避が最優先だったから追撃はしなかったけど」

瑞鶴「そう……」

114: 2015/04/29(水) 21:50:18.39 ID:TNFMKbDso

鈴谷「体、痛む? 一応高速修復材は使ったけど……」

瑞鶴「大丈夫。ちょっと怠いくらいかな」

鈴谷「そっか。もうすぐ加賀さん来るけどどうする? まだ寝とく?」

本当にこの子は、今時のギャルっぽい見た目とは裏腹にこういう気遣いができていい子だよね。
あんなことしちゃった後だし、加賀さんと顔を合わせ辛いのは事実なんだけど……

瑞鶴「私から会いにいくよ。怖いけど、逃げたくないから」

鈴谷「わかった。一人で歩ける?」

瑞鶴「大丈夫」

115: 2015/04/29(水) 21:51:11.90 ID:TNFMKbDso

私は体を起こすと、ベッドから降りる。やっぱり、痛みはほとんどない。
そのまま部屋を出ようとしたところで振り返る。一番大事なこと、まだ言ってなかったな。

瑞鶴「ごめんね。迷惑掛けちゃって」

鈴谷「沈まれることが一番の迷惑だよ」

鈴谷「仲間が……大切な仲間が沈むところは、もう見たくないんだ……」

力無く、消え入りそうな程小さな声で呟いた鈴谷。私は聞こえなかったふりをして部屋を出ていった。

116: 2015/04/29(水) 21:54:47.65 ID:TNFMKbDso

_____執務室前

加賀さんと提督さんの話し声が聞こえる。正直、後ろめたさはすごくある……
でも、ここで逃げたって何も始まらない。迷惑を掛けたんだから、その責任は取らないと。

瑞鶴「失礼します!」

幌筵提督「瑞鶴ちゃん……!」

笑顔で迎えてくれる提督さんとは対照的に、加賀さんは一切の表情を崩さない。
頭の中に色々な思いが交錯するけど、とりあえず一番に言いたいこと、言わなきゃいけないことを言おう。

瑞鶴「加賀さん、提督さん……ごめんなさ……」

謝罪の言葉を口にしてる最中に、加賀さんに抱き寄せられる。それは、あまりにも唐突で、予想だにしなかった行動。

瑞鶴「えっ……?」

加賀さんは相変わらずあったかくて、柔らかくて……至福の安堵感に包まれてるのがわかる。

117: 2015/04/29(水) 21:55:35.41 ID:TNFMKbDso

加賀「無事で、良かったわ」

幌筵提督「キマシ!」

提督さんの奇声についビックリしてしまう。加賀さんも同じみたいで、私を抱き締める力がちょっと強くなる。

幌筵提督「こほん、失礼。私は榛名達に瑞鶴ちゃんが目を覚ましたことを伝えてくるから」

幌筵提督「加賀さんは瑞鶴ちゃんに現状の説明をお願いね」

幌筵提督「それじゃお二人さん、ごゆっくりと」

そう言って提督さんは部屋を出ていってしまった。加賀さんは……多分離すタイミングを逃したのか、そのままの体勢。

118: 2015/04/29(水) 21:57:34.86 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「私、あの時……」

仕方ないのでその状態のまま、さっきの話の続き。私があの時、何を思って行動したのかを話す。
戦艦を倒すには榛名の弾着観測射撃が不可欠だった。その為には水偵を安全に使用できるよう、制空権の確保が必要。
それにはまず敵空母を撃沈すること。どちらか片方さえ倒してしまえば後は多勢に無勢。制空権確保は容易になる。
実際、ヲ級を大破させたところまでは上手くいった。でも、その後……

瑞鶴「あ、あれ……?」

ル級の嘲笑。砲撃。大破。作戦失敗。あの時の光景が鮮明にフラッシュバックしてきて……

瑞鶴「へ、変だよ、私……なんで泣いて……?」

これは恐怖? 罪悪感? いや、それもあるだろうけど……多分それ以上に……

119: 2015/04/29(水) 21:58:28.06 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「私、わた……し、駄目だ……もう、こんなんじゃ……翔鶴姉みたいに、なんて……」

憧れだった翔鶴姉に近付きたい……同じ場所に立っていたい……! そう思ってこの泊地に来たのに、この有様。
私はきっと、一生翔鶴姉みたいにはなれない。そんな現実を突きつけられる。酷い喪失感……

瑞鶴「加賀さんっ! 加賀さ……」

加賀「あなたは、翔鶴さんにはなれない……」

加賀さんの抱き締める力が強まる。何でだろう……一番聞きたくなかった言葉……だった筈なのに。
その言葉は優しさに満ちていて、この温かさが加賀さんの体温に寄るものだけじゃないと実感する。

加賀「だってそうでしょう? あなたは瑞鶴。それ以外の何者でもない。他の何かになる必要なんて、無い」

瑞鶴「でもっ! 加賀さん、私は……!」

加賀「あなたにしか出来ないことだってきっとある。だから、無理に自分を変えようとしなくてもいいの」

ああ、またこの人は……私が本当に言って欲しかったことを……だから私、あなたのことが……

120: 2015/04/29(水) 21:59:13.45 ID:TNFMKbDso

加賀「落ち着いた……?」

一通り泣いて、ようやく泣き止んだ私に加賀さんが優しい口調で声を掛ける。

瑞鶴「あの、加賀さん……」

加賀「何かしら?」

瑞鶴「大変言い難いんですけど」

そう前置きをして、顔を上げながら加賀さんからスッと離れる。

121: 2015/04/29(水) 22:00:21.05 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「加賀さんの服、鼻水まみれになっちゃいました」

加賀「あなたって子は……頭にきました」

引きつった顔の加賀さんが、今度は私の頬を掴んで容赦無く引っ張ってくる。

瑞鶴「い、いひゃいっ! わ、わざとじゃ……わざとじゃなひんですって~」

加賀「問答無用」

本当は、あなたのその優しさにもっと甘えたい。素直に感謝の言葉を口にしたい。
そう思ってるのに、いつもこうなっちゃう。私、変わらないなぁ。学生の頃から。
でも、それでもいいんだよね、加賀さんっ!

122: 2015/04/29(水) 22:01:36.69 ID:TNFMKbDso

加賀「さて。それじゃあ現状の説明をするわ」

瑞鶴「はい」

加賀さんがようやくほっぺを解放してくれて、現状の説明に入る。

加賀「まず、敵艦隊の動きから。私達と交戦した戦艦ル級はアッツ島まで撤退したのが確認されてるわ」

加賀「その後、水上打撃隊を再編成してコマンドルスキー諸島まで侵攻。ベーリング島を占拠して留まっているわ」

加賀「敵主力艦隊の方は水上打撃隊から1日遅れて同島へ進行中。今日中には水上打撃隊と合流する見込みよ」

加賀「この後、水上打撃隊が先遣隊としてカムチャッカ半島方面から進軍してくる……と言うのが提督の予想ね」

瑞鶴「そうですか……」

123: 2015/04/29(水) 22:02:52.47 ID:TNFMKbDso

加賀「そんな顔しないで。事態は悪いけど、まだ最悪じゃない」

加賀「もう一度……恐らくこれが最後のチャンスだけど、まだこちらから攻め入ることはできるわ」

加賀「明朝、こちらも部隊を再編成してベーリング島へ出発。途中で水上打撃隊との交戦になるはずよ」

加賀「これを撃破して、そのままベーリング島へ進軍。敵主力艦隊を叩く。これが今回の作戦よ」

瑞鶴「もし……また失敗しちゃったら……?」

加賀「あまり考えたくはないけど、この島での迎撃戦になるわね」

加賀「当然住人は全員避難させるけど、施設等に大きな被害が出るのは避けられないわ」

加賀「そして、最悪の場合はここを放棄して単冠湾泊地まで撤退することになる……」

瑞鶴「そっか……」

瑞鶴「じゃあ、負けられないですね」

加賀「当然よ」

ここを……翔鶴姉の居場所を、あいつらの好きになんかさせない! 絶対に!

124: 2015/04/29(水) 22:04:53.28 ID:TNFMKbDso

_____食堂

瑞鶴「みんな……おはよ」

加賀さんから作戦を聞いた後、補給の為に食堂へ。ここでようやくみんなとも顔を合わせることになる。

榛名「瑞鶴さん……!」

浜風「もう起きて大丈夫なのですか?」

雷「本当に無茶するんだから! 今度はちゃんと私に守らせなさいよね!」

正直、何を言われても仕方ないと思ってたけど……やばい、みんなが優しすぎて泣きそう。

125: 2015/04/29(水) 22:05:43.45 ID:TNFMKbDso

鈴谷「あんまり心配させないでよね。みんな、瑞鶴のこと大好きなんだからさ」

瑞鶴「鈴谷、みんな……ありがと」

鈴谷「まあでも、加賀さんにはかなわないけどね~」

加賀「……? 鈴谷、何を言っているの?」

鈴谷「だってさー、傷心の瑞鶴を抱き締めて、そのままでいいなんて台詞、私達には言えないもん」

えっ? 何でそれを!? あの場には私と加賀さんしかいなかったのに。

126: 2015/04/29(水) 22:06:21.85 ID:TNFMKbDso

加賀「もしかして、提督……?」

幌筵提督「ふふん、実は退室する際にビデオカメラを仕掛けておいたのよ!」

瑞鶴「うえぇ!?」

幌筵提督「あんなオイシイ場面を私が独り占めするなんて勿体無いじゃない」

幌筵提督「二人のラブコメ生中継はみんなバッチリ目に焼き付けたわ」

加賀さんは顔を手で覆って伏せる。私も恥ずかしすぎてここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

127: 2015/04/29(水) 22:07:24.53 ID:TNFMKbDso

榛名「その……榛名はまだ恋愛のこととかよくわからないですけど、お二人みたいな関係は素敵だと思います!」

浜風「ですが、作戦に支障が出ない程度に留めておいて下さいね?」

雷「そうよそうよ! そ、その、キス……とかまでならいいけど、その先は駄目よ! 二人にはまだ早すぎるんだから!」

ちょっと、みんななんか誤解してない!?

鈴谷「つーかwww瑞鶴の照れ隠しがさwww鼻水まみれwwwとかwマジ受けるんですけどwwwww」

幌筵提督「ちなみに私としてはどんどん仲が進展するのは歓迎! 特に初夜のシーンは是非ともビデオに納めたいね!」

前から思ってたけど、本当にこの人は……

瑞鶴「加賀さん……」

加賀「ええ。ちょっと、腹が立ちました」

瑞鶴「全機爆装、準備出来次第発艦! 目標提督さん! やっちゃって!」

幌筵提督「えっ!? ちょ、彗星は危ないって……ぎゃーーー!」

128: 2015/04/29(水) 22:10:37.18 ID:TNFMKbDso

_____翌朝、カムチャッカ半島付近

瑞鶴「うぅ……眠っ……」

鈴谷「またぁ? 昨日加賀さんと激しくしすぎたんじゃないの?」

瑞鶴「爆撃されたいの?」

鈴谷「ごめんごめん」

まあでも、加賀さんが原因ってのもあながち間違いじゃない。提督さんが変なこと言うから……
つい意識しちゃって中々寝付けなかった。加賀さんの方はそんな素振り一切見せずに熟睡してたのに……
別に、強く意識して欲しいとまでは言わないけど……ちょっとくらいは気にしてくれても……ねえ?

129: 2015/04/29(水) 22:11:25.74 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「そう言う鈴谷はさ……」

気になる相手はいないの? そう言いかけて口を噤む。昨日、病室を出る時に鈴谷が呟いた言葉。
アレはきっと、そう言う相手がいたんだってこと。何となくだけどわかってしまう。
誰かから聞いたわけでもない。でも、何故かそれだけは確信に近い感じで察した。

瑞鶴「また徹夜? せっかく綺麗なんだからさ、もっと肌とか大事にすればいいのに」

咄嗟に出た誤魔化しの言葉。思えば、艦娘として戦場に出てる時点で的外れな言葉だなぁ。

鈴谷「えっ、や、やだ……鈴谷が綺麗とか……マジ、恥ずかしいって。もう……何言ってんの」

えっ? 何この可愛くて初々しい反応。普段のチャラい感じからは想像もつかないんだけど。

130: 2015/04/29(水) 22:12:36.51 ID:TNFMKbDso

加賀「お喋りはそこまでよ。敵艦隊を発見したわ」

雷「敵編成は?」

加賀「戦艦ル級、空母ヲ級、重巡リ級それぞれエリートが1杯、駆逐2杯ね」

浜風「5隻ですか。前の戦闘から然程時間が経っていませんから、完全な再編成は出来なかったと言うことでしょうか?」

加賀「そうかも知れないわね。数の利を活かして一気に叩きましょう」

間も無く目視距離。私と加賀さんは発艦体勢に入る。

加賀「瑞鶴。他の相手には目を向けなくていいわ。空母だけを狙って」

瑞鶴「はい!」

この前と違って敵空母は1隻だけ。とにかく行動不能に追い込んで、制空権を確保する。やれるはずだ……!

131: 2015/04/29(水) 22:14:03.57 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「第一次攻撃隊、発艦始め!」

ヲ級「ヲヲヲ……!」

ヲ級も発艦するが、制空力ではこちらの方が遥かに上。敵攻撃機の大半を撃墜する。

雷「今度は一機も通さないわよ!」

浜風「落ちなさい!」

包囲を抜けた攻撃機も、駆逐艦二人の長10cm砲で撃墜。防空は成功。後は叩くだけ!

瑞鶴「いっ……けえぇぇぇ!」

加賀「みんな、優秀な子達ですから」

ル級「おのれ……忌々しい! 落ちよ!」

戦艦の対空砲火は強力だが、この数を全て落とせるわけがない。まだヲ級を沈めるには十分!

ヲ級「ヲヲォォォォ!?」

132: 2015/04/29(水) 22:15:00.43 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「よっし、制空権確保! 榛名、鈴谷! 水偵飛ばしちゃって!」

鈴谷「やるじゃん!」

榛名「これなら、いけます!」

榛名が主砲を構え、戦艦に狙いを定める。その動きを察知した敵駆逐艦が盾になる為に動き出すが……

雷「させないわよ!」

浜風「沈みなさい!」

ロ級「たわば!」

ハ級「あじゃぱー!」

すかさずこちらの駆逐艦二人が砲撃。一撃で撃沈させ、露払いに成功する。

133: 2015/04/29(水) 22:17:40.68 ID:TNFMKbDso

榛名「勝手は! 榛名が! 許しません!」

鈴谷「うりゃー!」

リ級「ごふっ……これで、勝ったと、思うなよォォォ!」

ル級「艦娘ごときが……調子に乗るなよ……!」

水偵を利用した連続砲撃で重巡は轟沈。旗艦の戦艦も大破状態。よし、これなら……!

瑞鶴「全機爆装! 第二次攻撃隊発艦!」

ル級「クッ……七面鳥がァ!」

戦艦が最後の力を振りしぼって連撃を放つが、大破状態で照準が定まらないのか、狙いは大きくズレて砲弾は私達の後方に着弾。
後方で幾重もの巨大な水柱が立ち、大破して尚強大な火力を有していることが窺える。しかし、それももう……!

134: 2015/04/29(水) 22:18:33.32 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「これで……おしまい!」

艦載機による一斉爆撃を受け、戦艦は膝をつきゆっくりと沈んでいく。

ル級「クッ……クク……それで、勝ったつもりか……?」

瑞鶴「!?」

あの時と同じ嘲笑。自らが今まさに沈もうとしているのに、まるで勝利を確信したかのような不敵な笑み。
嫌な予感がする……刹那、私の元に戻ろうとする艦載機からの警告。

135: 2015/04/29(水) 22:19:48.53 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「加賀さんッ! 避けて!」

加賀「っ!?」

轟音。先程戦艦が起こした水柱の中から別の戦艦が姿を現し、その凶弾で加賀さんを撃ち抜いた。

加賀「戦艦ル級が……もう1杯……? そんな……馬鹿な……!」

崩れ落ちる加賀さんに追撃を仕掛ける戦艦。私は全力でダッシュし、加賀さんを抱きかかえる。すぐさま回避し、既のところで難を逃れた。

榛名「瑞鶴さんッ! 加賀さんを頼みます!」

鈴谷「こいつは鈴谷達が!」

二人が前衛に出て応戦態勢。私は更に距離を取り、戦艦の砲撃に対応出来る位置まで退避する。

136: 2015/04/29(水) 22:21:37.17 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「加賀さん、大丈夫ですか!?」

加賀「…………!」

距離が近かったせいか、損傷はかなり大きい。あの時の私と同じくらいの大破状態。

加賀「あ、あいつは……どこから……?」

吐血が酷く、消え入りそうなほど小さい声で喋る加賀さん。

瑞鶴「そう言えば……索敵で確認された敵は5隻……」

いや、違う! 水上打撃隊は最初から6隻。あのル級だけが本隊から離れた位置で行動していたんだ。
他の5隻は囮。旗艦である加賀さんただ一人を仕留める為に、この罠を仕掛けた。
それもそのはず。ここで私達が撤退すれば、もう部隊を再編成しての出撃なんてことは出来なくなる。
後は敵主力艦隊を泊地付近で迎え撃つしかないけど……島に何の被害も出さずに迎撃するなんて不可能だ。
迎撃戦となるとこちらが圧倒的に不利。ならば敵としては、例え水上打撃隊を失うことになっても私達を撤退させる意味はある。

137: 2015/04/29(水) 22:22:20.13 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「加賀さん……」

加賀さんにこの考えを話そうとした時、残りの四人がこちらに向かって来る。敵戦艦は撃破。こちらの損傷は軽微。

雷「加賀さんは!?」

加賀「……大丈夫よ。心配いらないわ」

フラつきながら水面に立つ加賀さん。誰の目から見ても明らかだ。とても戦闘なんて出来る状態じゃない。

浜風「とにかく、提督に入電を。状況を説明して指示を仰ぎましょう」

瑞鶴「わかった」

138: 2015/04/29(水) 22:24:10.21 ID:TNFMKbDso

私は提督さんに、現状と先程考えていたことを伝える。顔は見えなくても、苦悶の表情を浮かべているのがよくわかる。

幌筵提督『撤退ね。帰投次第各艦入渠。加賀さんには高速修復材を使うわ』

幌筵提督『その後、補給を済ませたら迎撃戦に備えましょう』

幌筵提督『私はみんなが戻るまでに住民の避難準備、及び単冠湾への支援要請を進めておくわ』

加賀「待って下さい、提督……」

加賀「進軍命令を。あの場所を……幌筵島を戦場にしたくはありません」

139: 2015/04/29(水) 22:24:54.93 ID:TNFMKbDso

鈴谷「なっ、加賀さん何言ってんの!? こんな状態で一発でも貰ったら沈むかも知れないんだよ!?」

加賀「ならば一発も貰わなければいい話でしょう?」

幌筵提督『加賀さん、気持ちはわかるけど鈴谷の言う通りよ。あなたを失うわけにはいかないの』

加賀「私は沈みません。心配無用です」

鈴谷「あ~もう! こんな問答は時間の無駄だよ! 今の加賀さんなら力ずくで連れて帰れるから!」

加賀「そうね。確かに今の私では、無理矢理されたら抵抗する術はないわ」

加賀「でも……そんなことをしたら後でどうなるか、わかるでしょう?」

鈴谷「どうなってもいい! 一生恨まれても、謗られてもいい! 沈まれるよりは……ずっといいよ!」

140: 2015/04/29(水) 22:26:39.23 ID:TNFMKbDso

加賀さんはきっとわかってるんだ。迎撃戦になったら、勝ち目は殆ど無いってことに。

まず、資源が無い。大本営から徹底的に軽視されてるこの泊地では、資源の備蓄なんてしている余裕はない。
遠征や任務で稼いでも、その多くは本土主要鎮守府への補給物資として送られてしまう。
特にここ数日は……私の大破に、今回の加賀さんの大破。他の子も無傷じゃないから、その修繕費で数少ない資源は大きく吹っ飛ぶ。
かろうじて補給は出来そうだが、それで凌げるのは恐らく第一波まで。そこで仕留められず、波状攻撃を受ければ終わり。

提督さんは最寄りの単冠湾へ支援要請を出すって言ってたけど、向こうの艦隊が遠征に出ていたら間に合うかは微妙な所。
また、仮に敵艦隊を全滅させたとしても、施設とかに大きな被害が出たらその復旧には膨大な資金や時間が必要になる。
そんなことになったら大本営は間違いなく幌筵泊地を放棄するだろう。それはもう、こちらの戦略的敗北に他ならないわけで……

ほら、素人の私がたった今思いつく限りでもこんなにも不安要素がある。それは多分鈴谷も、提督さん自身もわかってるはず。

鈴谷「とにかく、今は一刻を争う事態だから。ほら、瑞鶴も加賀さん引っ張るの手伝って!」

鈴谷が加賀さんの腕を掴もうとする。私はその鈴谷の腕を掴んで止めた。

鈴谷「えっ? 瑞鶴……?」

キョトンとした表情の鈴谷。そんな彼女を見つめ、私は意を決して口を開く。

瑞鶴「進もう」

141: 2015/04/29(水) 22:27:48.97 ID:TNFMKbDso

言っちゃった。ああ……私は本当に、翔鶴姉にはなれないなって思った、決定的な瞬間。

鈴谷「なっ!? 瑞鶴、自分が何言ってるかわかってんの!?」

鈴谷が大声で怒鳴る。加賀さんを……仲間を本気で大切に思ってるからこその、真剣な表情。

瑞鶴「迎撃戦になったら私達は圧倒的に不利になるよ。でも今なら、敵を全力で叩ける……」

鈴谷「それで加賀さんが沈んでもいいって言うの!?」

瑞鶴「加賀さんは、沈まないよ……私が守るから。加賀さんは、何があっても沈ませない!」

私は鈴谷の肩に手を置いて、その目をしっかりと見据える。

瑞鶴「信じて、鈴谷。瑞鶴には、幸運の女神がついてるんだから……!」

鈴谷「~~~~~っ!!?」

顔を真っ赤にしながら外方を向いてしまう鈴谷。怒らせちゃった……かな?

142: 2015/04/29(水) 22:29:40.12 ID:TNFMKbDso

幌筵提督『ちょっと瑞鶴ちゃん! 勝手なことは許さないわよ? ほら、鈴谷も!』

少しの間項垂れていた鈴谷だったが、顔を上げて答える。

鈴谷「あ~提督、ごめんね。鈴谷、機関故障しちゃったみたい」

幌筵提督『なっ……鈴谷!?』

鈴谷「反転出来なくなっちゃったからさ、もうこのまま進むしかないよね~。ね、みんな?」

浜風「そうですね。今度は守り抜きます! 絶対に!」

雷「大丈夫よ加賀さん。また私が助けるわ!」

榛名「行きますよ! 暁の水平線に、勝利を刻みましょう!」

瑞鶴「みんな……よし、行こう!」

幌筵提督『あ~もう! 瑞鶴ちゃん、加賀さん! 後でしっかりと懲罰受けてもらうわよ!』

幌筵提督『だから……絶対に、生きて帰ってきなさい……!』

瑞鶴「はいっ! 瑞鶴、進撃します!」

143: 2015/04/29(水) 22:30:58.28 ID:TNFMKbDso

_____ベーリング島近海

瑞鶴「加賀さん、大丈夫ですか?」

加賀「大袈裟なのよあなたは。これくらい何ともないわ」

明らかに無理をしている。本来なら航行不能になっていてもおかしくない程のダメージだったはず。

瑞鶴「加賀さん……」

加賀「戦闘が始まったら私に構わないで。それを気にして勝てるような相手じゃないわ」

そう言うわけにはいかない。何があっても加賀さんを守るって誓ったんだから。

144: 2015/04/29(水) 22:32:07.86 ID:TNFMKbDso

鈴谷「敵主力艦隊、発見だよ! うぇ!? アレは……!?」

雷「どうしたの? 鈴谷?」

鈴谷「空母ヲ級2隻、戦艦ル級1隻、軽巡1隻、駆逐2隻! 戦艦とヲ級1隻以外はエリートクラス!」

鈴谷「でも、そのもう片方のヲ級は……黄色い光……!」

加賀「金色の燐光……!? フラグシップクラスね……!」

瑞鶴「知ってるの、加賀さん!?」

加賀「ええ。エリートクラスより更に高い能力を誇る、恐らく深海棲艦の最上位種よ」

加賀「私も沖ノ島海域で何度か戦ったことがあるけど……一筋縄では行かないわ」

145: 2015/04/29(水) 22:32:46.19 ID:TNFMKbDso

何でだろう……加賀さんが警戒している程の相手なのに、怯えは微塵もなく穏やかな気持ち。
弓を握った瞬間、心がすーっと落ち着いた。

瑞鶴「行きます! 第一次攻撃隊、発艦始め!」

ふと横に目をやると、加賀さんも弓を構えている。

瑞鶴「加賀さん!? そんな状態で発艦なんて……」

加賀「大丈夫。飛行甲板をやられているから着艦は出来ないけど、航空戦のサポートくらいならまだやれるわ」

加賀さんの放った艦載機は、普段と何ら変わりない、淀みない動きを見せた。
この大破状態で、ここまで艦載機を操れるなんて……とんでもない精神力と集中力。

146: 2015/04/29(水) 22:34:09.85 ID:TNFMKbDso

ヲ級e「ヲッヲッヲッ!」

ヲ級f「罪深き艦娘共よ。今日が汝等にとって、審判の日となろう……!」

ヲ級f「主、北方棲姫様の名の下に、私が至高の評決を下してやる!」

わけのわからない台詞を吐きながら、ヲ級達も発艦。流石にその数はかなりの物だけど……
まだこちらの方が上回ってる。ギリギリだけど、航空優勢と言ったところ。

加賀「瑞鶴、わかってるわね?」

瑞鶴「はいっ!」

狙いはヲ級エリート。本当なら旗艦のフラグシップ級を沈めたいけど、敵の装甲を考えたら難しい。
でもエリート級なら……全力で叩けば中破程度には持っていけるはず!

ハ級「やらせはせん! やらせはせんぞォォォォ!」

しかし、またも駆逐艦が盾となり、ヲ級にダメージを与えることが出来ない。ここは数を減らせただけで良しとするしかないか。

147: 2015/04/29(水) 22:35:15.68 ID:TNFMKbDso

ヲ級f「……すまぬ、同志ハ級よ。我の力及ばぬばかりに。艦娘共の断末魔を、お前に捧げる鎮魂の歌とすることを約束しよう」

ヲ級f「行け、同志ル級よ! 北方棲姫様の裁きの下、16inch三連装砲で、奴らの顎を食いちぎれ!」

ル級「フッ……いるじゃないか。氏に損ないが……!」

敵戦艦が轟音を響かせて主砲を斉射。こちらのウィークポイントの加賀さんを狙ってくる。

瑞鶴「させないっ!」

私は咄嗟に加賀さんを庇う。幸いにも掠っただけ。損傷はほとんどない。

148: 2015/04/29(水) 22:36:02.59 ID:TNFMKbDso

加賀「瑞鶴、話を聞いてなかったの? 私のことはいいから。あなたは発着艦に集中して」

瑞鶴「加賀さん、でも……!」

加賀「私は今の状態では艦載機の着艦が出来ない。逆に言えばする必要もないと言うことよ」

加賀「回避行動だけに専念すれば、敵の攻撃なんて喰らわないわ」

瑞鶴「加賀さん……」

加賀「さあ、行きなさい瑞鶴。あなたにはまだ、戦う為の矢がある!」

私は無言で前に出る。納得したわけじゃない。危ないって判断したら絶対助けに行くから。

149: 2015/04/29(水) 22:37:05.07 ID:TNFMKbDso

鈴谷「瑞鶴、敵空母いるけど水偵飛ばしちゃうよ!」

瑞鶴「わかった! 加賀さんの航空隊と私の直掩機で、敵機なんか近づけさせないから!」

敵航空戦力が残ってる状態で水偵を使うのは不安だけど、今は一刻も早く敵を倒すのが先決。
当然敵も弾着観測射撃を利用されたくないので、水偵を真っ先に落としに来るが、それを直掩機で撃墜する。

瑞鶴「邪魔はさせない! 鈴谷、榛名! やっちゃって!」

榛名「全力です! てー!」

ル級「うおあぁぁぁぁ!?」

鈴谷「さてさて、一気に決めちゃうよ!」

ヲ級e「ヲヲヲッ~~~~~!?」

戦艦、エリート空母共に撃沈。戦況は一気に有利になる。

150: 2015/04/29(水) 22:38:07.47 ID:TNFMKbDso

ト級「おのれ艦娘共め! 叩き潰してくれるわァ!」

浜風「うっ……!? ま、まだです! まだ、戦えます!」

軽巡の砲撃を受けて多少よろめく浜風。小破と言ったところか。すぐに主砲で反撃するが、無理な体勢で撃った為躱される。

雷「命中させちゃうわよ!」

すかさず回避位置を先読みした雷の雷撃が炸裂。軽巡は轟音と共に爆発四散する。

ト級「北方棲姫様ーーーーッ! ごめんちゃい!」

残りはフラグシップ空母と駆逐艦だけ! ヲ級の表情からは動揺の色が読み取れる。

151: 2015/04/29(水) 22:38:44.69 ID:TNFMKbDso

ヲ級f「馬鹿な……何故、このようなことが……! 奴らは、大破艦を抱えている圧倒的に不利な状況だったはず……!」

ヲ級f「だが……今デッドラインに立っているのは我々……!」

ニ級「ぐわあああああ!?」

敵空母が茫然と立ち尽くしている隙に駆逐艦を撃沈。大勢は決した。

ヲ級f「くっ……どうやら、我々の負けのようだな」

空母は持っていた杖を捨て、両手を挙げて降伏のポーズ。それを見て私達は、ほんの一瞬、気を抜いてしまった。

152: 2015/04/29(水) 22:41:28.47 ID:TNFMKbDso

ヲ級f「だが、我にも矜恃がある! 貴様のその命だけは、貰い受ける!」

刹那。空母は帽子から艦爆を取り出し、それを懐に抱えて加賀さんに向かって猛ダッシュ。自爆する気だ!
完全に先手を取られた。今、砲撃で仕留めようとすれば、加賀さんにも当たる可能性がある。
加賀さんの方は、ただでさえ足が遅い上に大破状態。まず避けることは不可能。それなら……!

瑞鶴「翔鶴型航空母艦は、伊達じゃないのよッ!」

153: 2015/04/29(水) 22:41:58.31 ID:TNFMKbDso

私も全速力で加賀さんに向かって駆ける。40ノットを超える速度でヲ級を追い抜き、そのまま加賀さんを抱えて退避した。

ヲ級f「なっ……なん……だと……!?」

瑞鶴「これで、終わりよ!」

加賀さんをお姫様抱っこしたまま艦載機を放つ。完全に無防備になっていたヲ級は対応できず、大量の爆撃を受けた。

ヲ級f「……ああ。空が……綺麗だ」

そう言いながら、ゆっくり、ゆっくりと沈んでいくヲ級。終わったんだ……

154: 2015/04/29(水) 22:42:53.51 ID:TNFMKbDso

鈴谷「よしっ! 敵主力部隊撃沈! 提督、これより帰還します!」

幌筵提督『本当、心臓に悪かったわ。こんなのはもうこれっきりにしてよね』

鈴谷「はーい。さ、みんな。行こう。凱旋だよ!」

瑞鶴「うん……帰ろう……」

あっ……加賀さん、お姫様抱っこしたままだ。怒られるかな……?

加賀「瑞鶴……」

瑞鶴「は、はいっ!?」

加賀「悪いけど、このままでいさせてもらってもいいかしら? 少し……いえ、とっても、疲れたわ」

瑞鶴「ふぇっ!? わ、わかりましたっ! 瑞鶴、責任を持って泊地まで曳航します!」

突然の言葉に戸惑ったけど、嬉しかった。加賀さんが、やっと私を頼ってくれた。

鈴谷「熱いね~お二人さん。どうするぅ? 今夜は夜戦しちゃう?」

瑞鶴「もう! 鈴谷の馬鹿! 私と加賀さんは、そんなんじゃないってば!」

155: 2015/04/29(水) 22:44:25.56 ID:TNFMKbDso

_____泊地食堂

幌筵提督「いやー、今日はみんな本当によく頑張ったわ! 沢山作ったから、ガンガン食べちゃって!」

鈴谷「あざーす! 提督やるじゃん!」

幌筵提督「ってコラ鈴谷ぁ! お酒は駄目! 未成年でしょうが!」

鈴谷「ちぇっ。こんな時くらいいいじゃん」

幌筵提督「駄目駄目。規律ってモンがあるんだから。守るべきルールはちゃんと守る!」

鈴谷「はいはい、わかりましたよ」

加賀「その通りです、提督」

加賀「喜びの宴に水を指すのも難だとは思いますが、提督が酔い潰れる前に決めていただかないと」

加賀「命令違反をした、私への処罰を……」

156: 2015/04/29(水) 22:45:39.78 ID:TNFMKbDso

真剣な面持ちで切り出す加賀さん。そうだ。結果はどうあれ、私達は背いたんだ。その責は負わなければいけない。

加賀「ただ……他の子達は旗艦である私の命令に従っただけです。処罰は私一人で……」

瑞鶴「な、何言ってんの! 加賀さんを連れて帰ろうとした鈴谷を止めて、進もうって言ったのは私だよ!」

瑞鶴「私も一緒に罰を受けます! 一人でカッコつけないで下さい! 一人で……背追い込まないでっ!」

幌筵提督「そうだねー。ここは二人に……かな」

加賀「瑞鶴……」

瑞鶴「いいんです、加賀さん。最初からそのつもりでしたし」

157: 2015/04/29(水) 22:47:04.29 ID:TNFMKbDso

幌筵提督「よし決まりッ! じゃあみんな、二人に何して欲しい?」

瑞鶴「えっ?」

加賀「は?」

鈴谷「やっぱキスでしょーキス! お互い大好き同士なんだし!」

何この、宴会とかの罰ゲームみたいなノリは?

雷「何言ってるの!? そんなの駄目よ、二人には早すぎるわ! まだ手を繋ぐくらいまでしか認めないんだからね!」

瑞鶴「あのー、みんなちょっと? 話が変な方向に進んでない?」

榛名「榛名、壁ドンを実際に見てみたいです!」

浜風「私は……昼間のお姫様抱っこの逆バージョンを。加賀がしているのを見たい……気がします」

比較的真面目なはずの二人までこんなこと言い出す始末。私は加賀さんにアイコンタクトを送る。
今のうちにここから逃げ出しましょう……加賀さんもそれを察して頷き、立ち上がる。しかし……

158: 2015/04/29(水) 22:48:15.77 ID:TNFMKbDso

幌筵提督「おっと、逃がさないわよぉ! 何か一つはやってからじゃないと……ね?」

鈴谷「キース! キース! キース!」

瑞鶴「鈴谷、うるさい!」

いつの間にか周囲はキスコールに包まれてて……どうにも逃げ出せそうにない状況。

加賀「仕方ないわね。すればいいのでしょう……?」

瑞鶴「ちょ、ちょっと加賀さん! そんな安易に決めるなんて! 私、初めてだし……」

加賀「私だって初めてよ? 瑞鶴は、私じゃ嫌なの……?」

瑞鶴「そ、そんなこと……私は、いいですけど。加賀さんは? 初めてが、私で……しかもこんな形でなんて……」

加賀「そうね。前までのあなただったら絶対お断りだけど……今日のあなたはそれなりに見られるようになったから……いいわ」

瑞鶴「わ、わかりました……」

ここまで来ちゃったらもう覚悟を決めるしかない。でもやっぱり恥ずかしいので目は閉じる。

159: 2015/04/29(水) 22:50:13.06 ID:TNFMKbDso

鈴谷「あー、二人で世界作ってるところ悪いんだけどさ、瑞鶴からしてくれない?」

瑞鶴「えっ? は、はぁ!? な、何言ってんの!? 別にいいじゃない、加賀さんからでも!」

鈴谷「だって加賀さんさー、やっぱ大人の余裕ってヤツ持ってるし。瑞鶴からの方が面白そうだもん」

幌筵提督「そうね、鈴谷の言う通りだわ。ここは瑞鶴ちゃんからで」

駄目だ。こうなっちゃったらこの人達は絶対に退かない。断ったら更に過激な要求をされる。もう私に、退路はなかった。

瑞鶴「わかりました。でも、加賀さん、恥ずかしいから……目、瞑ってて下さい」

加賀「わかったわ」

加賀さんが目を閉じる。私はゆっくりと近づいていく。うわっ、加賀さんやっぱ超綺麗だな~。

160: 2015/04/29(水) 22:50:43.32 ID:TNFMKbDso

加賀「どうしたの? 早くして」

瑞鶴「は、はい! 行きます!」

お互いの吐息さえもかかりそうな程の距離。

私は意を決して、加賀さんと……







唇を……重ねた。

161: 2015/04/29(水) 22:51:45.82 ID:TNFMKbDso

加賀「!?」

瞬間、ドンっと突き飛ばされた。そこには余韻も何もあったもんじゃなくて……

加賀「なっ、ななな!? 瑞鶴、あなた!」

瑞鶴「えっ? え? あ、あの……私、なにか粗相を!?」

加賀「いきなり口にするなんて、何を考えているの!?」

瑞鶴「え~!? だ、だって……」

加賀「ふ、普通は頬とか、額とかでしょう!?」

瑞鶴「…………」

あ、加賀さんって思った以上に初心だったみたい。皆は笑いを堪えるのに必氏だ。

加賀「まったく……これだから五航戦は。破廉恥だわ」

そう言って加賀さんは出ていってしまい、私はアウェーの中で一人取り残された。

162: 2015/04/29(水) 22:52:44.45 ID:TNFMKbDso

あの後みんなにからかわれて散々な目に遭った。まあ、それだけならまだいいんだけど……
明日、加賀さんにどんな顔で会えばいいんだろう? 今から気分が重くなる。

瑞鶴「はあ……加賀さん、やっぱり嫌だったんだろうなぁ……」

加賀「そんなことないわ」

私が黄昏ていると、後ろからあの人の声。振り向くと加賀さんが立っていた。

加賀「さっきはごめんなさい。突然のことで驚いて……その、混乱してしまって……」

そう言いながら隣に座ってきて、そっと手を重ねてくる加賀さん。やっぱりこの人は、温かい。

163: 2015/04/29(水) 22:53:42.52 ID:TNFMKbDso

加賀「私……感情表現が……その……みんなが見ていた手前、ただ恥ずかしかっただけで……」

加賀「瑞鶴。あなたを傷つけるつもりはなかったんだけど……」

顔を逸らしながら、色々と言い繕う加賀さん。滅多に見られない光景だ。
でも良かった。正直、嫌われちゃったんじゃないかと思ってちょっと凹んでたけど……その心配もなさそう。

164: 2015/04/29(水) 22:54:52.43 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「加賀さん……」

昨日今日で本当に色んなことがあったな……加賀さんの胸で泣いたり、加賀さんと一緒にこの島を守ったり、加賀さんとキスしたり。
加賀さんを失わなくて良かった。守れて良かった。そう思っていると、もう、言葉にせずにはいられなかった。

瑞鶴「好きです」

言っちゃった。今までどうしても素直になれずに言えなかった言葉。本当は最初から自分の気持ちなんてわかってた。
例えどれだけ冷たくされても、厳しいことを言われても……時折見せる加賀さんの優しさが嬉しくて、嬉しすぎて……
私はもう、どうしようもないくらいこの人のことを好きになっちゃってるんだって……ずっと思ってた。

加賀「私も好きよ」

165: 2015/04/29(水) 22:56:12.49 ID:TNFMKbDso

瑞鶴「えっ!? 本当ですか!?」

加賀「同じ艦隊の仲間なんだから、当然でしょう? 急にどうしたの?」

一瞬、心臓が飛び出しそうなくらいドキッとしたのに……やっぱり加賀さんは加賀さんだったよ。

瑞鶴「ふっ……ふふ。加賀さんってばもう!」

思わず笑いがこみ上げてくる。もう、今はそれでもいいやって思えてきちゃった。
鈍足な上に鈍感。本当に甲斐性無しな人。でも、私は諦めない! いつか絶対に加賀さんを振り向かせてやるんだからっ!

瑞鶴「覚悟しててね、加賀さん!」

つづく!

次回「青空」

166: 2015/04/29(水) 22:59:37.47 ID:TNFMKbDso
今回はここまでです。明日、明後日は忙しいのでイベも投下もペースが落ちるかも知れません。
それでは読んでくださった方、レスしてくれた方、ありがとうございました。

瑞鶴「加賀さん……好きです」 加賀「私も好きよ」【その5】

引用: 瑞鶴「加賀さん……好きです」 加賀「私も好きよ」