319: 2015/05/13(水) 21:57:59.13 ID:HfuHxqSA0


前回:赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」【3】
この章の初め:赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」
最初から:提督「…さて、と」

基地の外


提督「北上さんとの時間云々は良かったのか?」

大井「残念ながら、私もシャワーを浴びなければ汗が……」

提督「自業自得だけどな……」

大井「そう言えば……本土でまた何かやらかしたの?」

提督「……質問の意図が見えないな」

大井「中央の艦娘たちの間で話題になってたらしいけど」

提督「ほう」

大井「魚雷を抱えた氏神の黄泉返りかって」

提督「はっはっは!神とは大きく出たな」

大井「笑い事じゃないわ。
それだけあなたの噂が広まってるってことなんだけど」

提督「噂が広がる、か。……大変結構」

大井「何が良いのよ……」

提督「昔は噂話なんて艦娘はしなかった。……良い傾向じゃないか」

大井「……いったい何年前の話よ……ジジイねぇ」

はぁ、と溜息。
「艦これ」ピクトリアルモデリングガイド 大和編: 『艦これ』提督のための艦船模型ガイドブック

320: 2015/05/13(水) 21:59:02.46 ID:HfuHxqSA0
大井「……あなたは本当に沢山の艦娘から嫌われたわ。……いえ、嫌いと言うか、怖がられてると言うか……」

提督「そうだな。……ま、それでいい」

そんな提督を見て、大井は更に深いため息をつく。

大井「……ほんと、わかんない人」

カラカラと笑う提督。

大井「あなた、艦娘が好きなんじゃ無いの?」

提督「勿論。皆大事だ」

大井「……だったらなんで……」

提督「向こうが俺を好む必要は無い。俺は恋愛がしたい訳じゃあない」

大井「……」

提督「俺は悪者で良いのさ」

大井「……呆れた人ね。そうやって一生自分に酔ってなさい」

提督「ははは、こいつは手厳しい」

暫しの沈黙。

提督「……まぁ、なんだ。俺に続く奴らは必ず出てくる。
太郎くんなんか、その筆頭だろ」

321: 2015/05/13(水) 22:09:19.73 ID:HfuHxqSA0
大井「……あなたは、もう台頭しないの?」

提督「まさか。老兵はただ消えゆくのみ」

大井「老兵って歳でもないでしょうに……」

提督「お前の4,5倍は生きてる」

大井「成る程やっぱりジジイね」

また、沈黙。

提督「……やったことの皺寄せは、自分に来る。だが、それをうまい具合になんとか出来れば……後には残らないさ。それは俺の仕事だ」

大井「……そんな、色んな事にがんじがらめで、うまい具合に出来る訳が無いじゃないの」

提督「……」

大井「ほんと夢みがちなんだから……現実見なさいよ。
……着いたわよ、入浴所。男用はそっちね。さっさとシャワー浴びて着替えて来て頂戴。」

大井は手をヒラヒラさせて言う。

大井「私は北上さんの側に早く戻りたいの。
もうあなたに割く時間は無いわ。……馬鹿につける薬もね」

322: 2015/05/13(水) 22:10:32.97 ID:HfuHxqSA0
提督「それはどうも」

大井「……あーあ。面倒くさ。あなたになんか出会うんじゃなかった」

提督「はっはっは!そいつは最高の誉め言葉だよ」

大井「ウッザ……変O……もう氏んじゃえ……」

クックックと笑う提督に、侮蔑の視線を送りながら大井は女子更衣室に入っていった。

提督もさぁ着替えようかという時、大井が更衣室の壁からひょっこり頭だけを出す。

大井「……氏ねってのは嘘」

それだけ言うと、戻ってしまった。

331: 2015/05/15(金) 23:42:36.15 ID:FkDt47yA0
応接室


扉が開き、入浴を済ませた提督と大井が応接室へと入って来た。

大井「ただいま帰りましたぁ!北上さぁん!」

北上「うおおお大井っちー!大丈夫?セクハラされなかった?」

大井「されました……」

提督「風評被害はやめろ……」

北上「うはは」

金剛「テートクー!大丈夫でしたカー?」

提督「問題ない。サッパリしたよ」

榛名「それは良かったです!」

提督「ところで……」

チラリと提督は部屋の中、見知らぬ二人に目をやる。

提督「この二人は?」

金剛「Oh!麻耶と陽炎デース!提督とは初対面なのネ!」

提督「そうだな」

陽炎「お初にお目にかかります!駆逐艦陽炎です!」

麻耶「……重巡、麻耶だ……です」

ビシッと決める陽炎とは対照的に、麻耶は提督に目もくれない。

332: 2015/05/15(金) 23:43:47.02 ID:FkDt47yA0
金剛「麻耶はちょっとshyナノー。ごめんネー」

提督「そうか。それは結構」

提督「(麻耶か。……愛宕の姉妹艦。……恥ずかしがり屋、ねぇ……
俺が居てはやり辛かろう。退散するか)」

提督「さて、俺は一度宿舎に戻る。荷物を運ばないとな」

金剛「もう行ってしまうのデスかー?折角陽炎らが来たノニー」

北上「もうちょいゆっくりしてったら〜?」

提督「そうは言うがな……」

陽炎「そうです提督!」

完全に宿舎へ行くつもりだった提督に、陽炎は身を乗り出すようにして言う。

陽炎「お噂はかねがね!
それで、幾つかご相談したいことが!」

提督「(……ぐいぐい来るなぁ)……わかった。聞こう」

333: 2015/05/15(金) 23:44:24.15 ID:FkDt47yA0
………
……



陽炎「ですから魚雷を投下する際の角度はーー」

提督「(うーむ……)」

陽炎「遠距離から狙うのも仰角が要らなくてーー」

提督「(初対面の人間に対して出す話題が魚雷か……)」

陽炎「ーーつまり少ない魚雷による遠距離からの狙撃は有効だと思うの!」

提督「(この子はバトルジャンキーっぽいな……)」

陽炎「如何でしょうか?!」

提督「……言わんとしていることはわかるが……標的が小さい。
特に速度が遅いから遠距離の敵には当てづらい上に、直進するから位置もバレる。」

陽炎「む」

提督「……例え敵がこちらに気づいて無くとも、遠距離から一発必中を狙うのはリスキーだ。
中々難しいんじゃないか?」

陽炎「……ならば、ある程度の数を角度つけて撒くとか?」

提督「趣旨からズレてるな。魚雷をそれなりの数撃てば発見される可能性も上がる。
そもそも一発必中の話だろう」

陽炎「……むぅ」

334: 2015/05/15(金) 23:45:03.97 ID:FkDt47yA0
北上「まーた陽炎が魚雷トーク繰り広げてるよー。ホント魚雷好きだねー」

榛名「……」ビクッ

金剛「榛名?どーかしたネー?」

榛名「い、いえ!榛名は大丈夫です!」

大井「全く……私達が居る以上、甲標的が有ると言うのに」

北上「まぁでもロマンがあるんじゃなーいの?なんかカッコイイじゃん、視界外攻撃」

大井「……狙い撃つって感じは……まぁ、嫌いじゃありませんね」

北上「アウトレンジで決めたいわね!うっひょう!」

大井「北上さん……」

335: 2015/05/15(金) 23:45:40.81 ID:FkDt47yA0
提督「夜間、若しくは極限まで訓練をこなせば或いは可能かも知れんが……
電探による早期発見能力は、我々が深海棲艦に対して持っている優位点だ。
視界外の艦載機攻撃と、魚雷攻撃、どちらがそれを失う可能性が高いかはわかるな」

陽炎「……ここは極限まで訓練を!そうすれば!」

提督「よしんばそれで出来る様になったとして、100人中1人にしか出来ない事が果たして有効な戦術だと言えるのかどうか、だな」

陽炎「ぐぬう」

提督「だがまぁ、個人技を磨くのは生き残る上で重要だ。その一環として、訓練を重ねるのも良い……励めよ、陽炎」

陽炎「……はいっ!」

提督「……所で、お前は配属されてから、どれくらい経つ?」

陽炎「麻耶と共に、つい半年程前に初等教育を終え、着任しました!」

提督「……半年程前に初等教育を終えた?」

陽炎「?……はい」

336: 2015/05/15(金) 23:46:21.38 ID:FkDt47yA0
提督「実戦経験は?」

陽炎「緊急出撃を含む12回の出撃と、な、7回の戦闘を経験しています!」

北上「こらこら、その7回のうち5回くらいは翔ぴーと私達で、敵を見る前に〆たじゃんかぁ」

陽炎「……う……!」

陽炎が言葉に詰まる。
その時、応接間の扉が開き、新たな艦娘が部屋に入ってきた。

翔鶴「でも、2回の戦闘では、きちんと戦果を上げているんですよ?
ねえ、陽炎」

北上「……」

陽炎「そ、そうよ!」

提督「ほう。素晴らしい」

翔鶴「陽炎も、麻耶もとても優秀なんですよ。うふふ」

提督「流石、18戦隊に配属されるだけはあるな」

翔鶴「はい……提督、ご無沙汰しております」

提督「ああ」

翔鶴「サセン隊の皆様も、こんにちは。18戦隊指揮・太郎の秘書艦を務めます翔鶴です。
改めまして、よろしくお願い致しますね」

足柄達にニコッと笑顔を向ける。

337: 2015/05/15(金) 23:47:12.71 ID:FkDt47yA0
北上「あーもー硬いよ翔ぴー!折角アタシ達が仲良くしてたのにぃ。ねぇ足柄さん」

北上がアヒル口をしながら言った。

足柄「まぁまぁ!艦娘たる者、剛柔併せ持つ事も大事よ!」

翔鶴「そうですよ、北上。全く、あなたはフニャフニャなんですから……」

北上「大井っち、アタシゃまーた誉められちまったぜ」

大井「流石よ北上さん……!」

翔鶴「全く誉めてませんよ?」

北上「うはは。……そー言えば、サセン隊ってアタシみたいなウハウハ系居ないよねぇ」

榛名「ウハウハ系……」チラ

提督「……」チラ

足柄「そうねぇ……」おすまし

提督「……だそうだが、足柄」

提督は足柄の肩にぽん、と手をおく。
それに対し、足柄は笑顔のまま提督の足を思い切り踏みつけた。
ミシッと嫌な音がする。

提督「……!……!」

338: 2015/05/15(金) 23:47:43.61 ID:FkDt47yA0
榛名「あわわわ……」

雷「うわぁ……」

鳳翔「だ、大丈夫ですか?」

北上「うはは。ファンキーだねぇ」

大井「ざまぁないわね」

翔鶴「ふふ。仲がよろしいのですね」

足柄「そうかしらー?」

翔鶴「はい、そう見えますよ。……皆さん全員と仲がよろしいように。うふふ」

翔鶴はサセン隊の面々と苦痛の表情を浮かべる提督を見比べて、ニコニコとしている。

347: 2015/05/17(日) 00:51:07.33 ID:/v3vGR1L0
翔鶴「……所で、軽空母の方がお二人いらっしゃる様ですね」

提督「ああ、隼鷹はペーペーなんだ。今回は観戦に連れてきた」

翔鶴「成る程……」

提督「少し翔鶴に話を聞いてみたらどうだ、隼鷹。為になることもあるかもしれん」

隼鷹「お、おう」

鳳翔「私も、よろしいですか?」

翔鶴「お二人とも、是非是非」


足柄「そういえば、北上さんと大井さんは演習には出ないの?
そちらのメンバーは摩耶さん、陽炎さん、翔鶴さん、金剛さんって聞いたけど」

北上「うん。太郎さんが艦種揃えるって聞かなくてねぇ」

足柄「へぇ……フェア?って言って良いのかしら?」

北上「いいと思うよぉ〜。演習だしね、誰も氏なないしねぇ」

大井「そうね。実戦なら抗議するけど。演習なら文句は言えないわ。
それに……最も経験が必要なのは私達では無いから」

348: 2015/05/17(日) 00:51:53.61 ID:/v3vGR1L0
隼鷹「翔鶴さんは、何系統くらい同時に動かせるんだ?」

翔鶴「そうねぇ……」

空母の能力。
それは単純に、同時に幾つの艦載機を操作できるか、という事に集約される。
それは単純に機数の問題ではなく、何種類の機動を同時に取れるかと言う事だ。

通常、空母たちは飛行機を編隊で移動させる。
このように編隊で移動させる事で操縦する意識を連結させる事が出来るのだ。
全く同じ動きを取るならば、一機分の脳内負荷で編隊全機を動かす事が出来る。

別々の機動を取る編隊、若しくは単機の艦載機。
それを、空母たちは『系統』と呼んだ。

翔鶴「私は……訓練では20系統くらいかしら。実戦では16系統以上は試した事が有りませんが……」

隼鷹「すげー。アタシはまだ3で一杯一杯だよー……」

翔鶴「ふふ。最初は誰だってそうですよ」

隼鷹「むー」

349: 2015/05/17(日) 00:52:50.07 ID:/v3vGR1L0
翔鶴「それに、私はまだまだですから……第一機動部隊の飛龍さんは40、50系統の操作が出来るそうですよ」

隼鷹「ご、50?同時に50種類の操作をするって事?」

翔鶴「はい」

隼鷹「冗談だろ……」

鳳翔「……系統数が、全てではありませんよ、隼鷹。いつも言っているでしょう。
……全く、あなたはそればかりなんだから」

隼鷹「そうは言うけど、操作系統多い方が良いじゃん!」

翔鶴「多いに越した事は有りませんが……訓練と実戦は違いますからね。
操作系統を増やすと、それだけ意識が分割される訳ですから、やはり動きに精彩を欠くことになります」

鳳翔「そうですよ。だから、まずは10系統を目指しなさい。最終的に15、20まで、極めて綺麗に操作出来れば一人前です」

隼鷹「……むー」

350: 2015/05/17(日) 00:53:38.08 ID:/v3vGR1L0
翔鶴「今の所、空母型の深海棲艦らは4、5系統が限界の様ですから。
単純計算なら、15系統有れば3体まで同時に相手取れます」

鳳翔「そもそも、最近は敵空母が密集している事は少ないですし」

隼鷹「……じゃあなんで飛龍さんなんかは50系統まで伸ばしたんだ?30とかで良かったんじゃないか?
決して楽じゃなかった筈だけど……他の訓練もできた筈だし……」

翔鶴「飛龍さんは……大反抗戦以前の艦娘ですから……」

隼鷹「……?」

翔鶴「……大反抗戦以前は領海の奪還がまだまだで、敵が密集する傾向にあったと聞きます。しかも、此方の空母は少なかった」

隼鷹「……つまり、空母一人でめちゃめちゃ多くの敵と渡り合う必要があったって事か……」

翔鶴「更に、常に偵察機で奇襲に警戒したり、味方に情報を伝えたり……
制空権が敵に有るのに、爆雷撃を仕掛けなければならなかったりと、色々有ったみたいです」

351: 2015/05/17(日) 00:54:19.63 ID:/v3vGR1L0
隼鷹「うへぇ……考えたくもないなぁ」

翔鶴「当時は大変だとか、そういう事を考える余裕は無かった、って笑いながら仰ってましたよ」

隼鷹「……でも、今でも維持してるんだよなぁ、50の操作系統。凄く大変そうだ」

翔鶴「……それは……」

翔鶴はチラリと提督を見る。

鳳翔「……?」

訝しむ鳳翔に気付かず、翔鶴は続けた。

翔鶴「これは、あくまで噂ですが……敵に、単艦で80系以上統操る空母が存在する、らしいです」

隼鷹「……ええ……」

翔鶴「それを圧倒する為に、第一機動部隊の飛龍さんと蒼龍さんで併せて90系統以上を確保しているのだとか」

隼鷹「マジ……か……」

鳳翔「……聞いたことがありませんね」

翔鶴「わ、私も最近本土で聞いたばかりですから!あくまで噂ですしね」

352: 2015/05/17(日) 00:55:05.14 ID:/v3vGR1L0
首を傾げる鳳翔に、翔鶴が慌てて言う。
三者のその様子を、いつからか。
提督は静かに見つめていた。

金剛「テートク?どーしたの?」

提督「ん、ああ、すまん」

北上「提督?翔ぴーは止めといた方が良いぜ」

北上がニヤニヤしながら言う。

提督「……生憎だが、俺は余所の艦娘に手は出さん」

提督はため息。

北上「余所の?自分のトコのには手を出すんだ」

足柄「まぁね?」

提督「出さねぇよ……」

353: 2015/05/17(日) 00:55:43.06 ID:/v3vGR1L0
榛名「は、榛名は大丈夫です!」

金剛「榛名?!セクハラされてるノー?!」

金剛が提督から榛名を背に隠す。

大井「……この変O、少しお手つきし過ぎじゃないかしら。バイ菌が移るから離れましょう北上さん……」

北上「うはは」

提督「待て!誤解だ!」

榛名「そ、そうです!提督は艦娘の嫌がる事をなさる方ではありません!」

大井「つまりセクハラされて嬉しかったと」

榛名「はい!……え?いや、違いますよ?!」

金剛「……榛名……」

提督「待て待て待て……なんだこの流れは……俺は一度としてセクハラした事は無いぞ……」

354: 2015/05/17(日) 00:57:12.82 ID:/v3vGR1L0
北上「つまり榛名っちは提督にセクハラされたいと」

榛名「はい!……いやぁ!何言わせるんですかぁ!」

金剛「……榛名……」

雷「何言ってんのかしらこの子……」

北上「うはは。愛されてるなぁ提督」

提督「お前はこれを愛と呼ぶのか……」

金剛「……おや?もうそろそろイイ時間ですネ」

提督「時間?」

金剛「Yup!晩御飯……の前に、施設の案内を!艤装の確認とか、しときたいデショ?」

367: 2015/05/17(日) 23:00:56.86 ID:/v3vGR1L0
北上「ふぁーあ。ゴッさんが全員連れてっちゃったね」

大井「しかし……濃いメンツだったわね……」

北上「アタシ、隼鷹ちゃんと、いかずっち以外全員知ってたぞ。うはは」

大井「北の狼に魚雷に鬼教師に……」

北上「スタンドプレーの目立ちそうなチームだよねぇ」

翔鶴「物知りね……」

大井「噂が自然と耳に入るのよ?」

北上「ゴシップガールと呼んでくれ!うはは」

陽炎「ところで皆、つ、強いの?」

北上「榛名っちと足柄さんは強いんじゃねー?いかずっちは未知数だけど、鳳翔さんはまぁ……」

翔鶴「戦闘が不得手なの?」

北上「んー?聞いたこと無い?
訓練所の鬼教師は口先だけって」

翔鶴「……?」

北上「んー……鳳翔さんを悪く言う訳じゃ無いけどさ……
強くないくせに言う事は厳しいって、教え子からの評価は散々だったみたいだね」

翔鶴「へぇ……」

北上「……ま、実際どうかなんてわかんないけどねぇ」

ヘラヘラと笑う北上。

北上「そんな事よりも!……まーやん、明日榛名っちに格闘戦挑むなよー?」

摩耶「……んでだよ」

不服そうな摩耶。

368: 2015/05/17(日) 23:01:45.06 ID:/v3vGR1L0
北上「ね!ほら!こいつやっぱりやる気だったっしょ大井っち!うはは」

大井「……怖いもの知らずねぇ……」

摩耶「……やってみなきゃあ、わかんねぇからな」

北上「漢気溢れるねぃ!
いよっ!18戦隊の切り込み隊長!」

摩耶はフン、と鼻を鳴らす。

翔鶴「ちょっと北上!煽らないで!……摩耶?榛名さんは……かなり危険だから。本当に、格闘戦はダメよ?」

摩耶「……ハッ!あぶねー方が燃えるだろ!」

北上「うはは」

翔鶴「ちょっと……」

北上「ま、大丈夫なんじゃね?提督が連れて来てるんだし」

翔鶴「……」

大井「後は北の狼だけど」

北上「足柄さんは……まぁ……強そうって事しかわかんないよね……」

陽炎「何よそれ……」

北上「あの人、元々北方面軍らしいよ?んで、北と言えば保守派だけど……
保守派の人間と折り合いが悪かったとか」

陽炎「へぇ……保守派って、本土に居た厳しい人達よね」

北上「ま、その認識で良んじゃね」

陽炎「それで?」

北上「出撃任務の殆どが単艦だったらしくてさー。それでついたアダ名が『北の一匹狼』」

陽炎「……つまり、実力不明と」

北上「んまぁ、相当な手練れではあるんだろうけど。単艦で生き抜いてきた訳だし」

翔鶴「ふむ……」

大井「こちらの戦術としては、航空優勢を利用して敵を近づけさせないのが第一じゃない?
海域もわからない以上、今は何とも言えないわ」

369: 2015/05/17(日) 23:02:16.02 ID:/v3vGR1L0
北上「高価値目標は榛名っちで決まりだね!次いで足柄さんかな?いかずっちは何とも言えないけど……
ま、なんとかなるんじゃない?」

摩耶「へっ……やるからには、勝たねぇとな」

陽炎「榛名さんと足柄さん……そんなに強かったのね……うう、ドキドキしてきたわ……」

北上「榛名っちはダントツでヤバいよねぇ。
近寄らせたらダメよ〜ダメダメ〜」

翔鶴「一体いつのネタを……」

北上「うはは。……ま、頑張ってね。アタシと大井っちは出れないけど、影から応援してるしさ!」

大井「いつもの戦術が通用しないってことでもあるのよ、陽炎、摩耶。用心なさい」

陽炎「はいっ!」

摩耶「まぁ、任せとけよ」

北上「あとは太郎さん次第だね」

そんなこんなで時間が過ぎ、応接室のドアが開く。

金剛「ご飯の時間ネ。皆待ってるヨ!」

翔鶴「はぁい。皆さん、行きましょうか」

北上「うっひょう!腹ペコだぜ」

370: 2015/05/17(日) 23:03:01.17 ID:/v3vGR1L0
………
……



南方基地、執務室


提督「いやぁ、満腹満腹」

食事会は恙無く終わった。
今、艦娘達は食事を終え、軽い酒と共に談笑している筈だ。
提督と太郎はその様子を知る由も無い。

太郎「お口に合って何よりです」

と言うのも、二人は執務室に移動していたからだ。

太郎「提督さんも軽く一杯、如何ですか?」

提督「是非。いただこう」

太郎は立ち上がり、酒を探す。

提督「……君は、君の部隊に例の件を伝えたのか?」

太郎「……いえ。深海棲艦化する艦娘の話を知るのは翔鶴のみです。
方面軍として足並みを揃えるべきと判断しました」

提督「そうか」

371: 2015/05/17(日) 23:03:41.15 ID:/v3vGR1L0
太郎「……サセン隊の方は、もう……?」

提督「二ヶ月程前に。ウチの島は外との交流が無いから、な」

太郎「そうですか」

提督「……そういえば、防衛線構築計画書にはもう目を通したか」

太郎「一応、骨子は理解したつもりです」

提督「そうか。……君のことだから心配はしていないが」

太郎「ありがとうございます……どうぞ」

コト、と提督の目の前に琥珀色の液体。

提督「どうも」

太郎がスッと自分のグラスを持ち上げる。
提督もそれに倣った。

「「乾杯」」

チン、と軽快な音。

372: 2015/05/17(日) 23:04:37.77 ID:/v3vGR1L0
太郎「……思えば、こうして二人でお会いするのは初めての様な気がします」

提督「そうだったか?」

太郎「提督さんは当時、ご多忙でしたから……私も父の巾着袋の様な存在でしたし」

苦笑する。

提督「今では君が多忙だな。いや、素晴らしい事だが」

太郎「またまた。そんな事を仰っていられるのも今のうちですよ」

提督「どうだかな」

沈黙。

太郎「……これは……極秘情報なのですが……」

提督「なんだ?今度は翔鶴のスリーサイズか?」

太郎「ち、違いますよ!茶化さないで下さい」

提督「ははは。悪い悪い。貰ったアレ、中々良かった」

クックックと笑う提督に、太郎はコホン、と咳払いを一つ。

373: 2015/05/17(日) 23:09:53.11 ID:/v3vGR1L0
太郎「……特海が既に南方海域に展開していると聞きました」

提督「……特海が?」

太郎「ええ。……中央は相当に危機感を募らせているようですね」

提督「……」

特海。特殊海上技術開発局。
表向きは技術開発局となっているが、実際は艦娘による特殊部隊である。
しかしその任務の性格上、部隊の実像を知る者は極めて少ない。

太郎「……ただ、今、敵は北に集中しているようです。
北では毎日のようにドンパチやってますが、南で偵察を行っても何も引っかかりません。
居るとしてもかなり遠くという事になります」

提督「私が北に居ると勘違いでもしているのかね」

太郎「あながち間違いでもないかもしれません……提督さん。あなたが、キーパーソンなんですから」

374: 2015/05/17(日) 23:10:54.66 ID:/v3vGR1L0
提督「……」

太郎「今は居なくとも、敵は……必ずあなたの元へ、南方へ来るでしょう。
サセン島は領海内にありますが……敵は構築されるであろう防衛線も、容易に越えてくるやも知れません」

提督「……そうだな。覚悟はしている」

太郎「……」

提督「安心しろ。もしそうなった時、奴らに引導を渡すのは……私だ」

太郎「……」

提督「まぁ、そうならないようしっかり頼むよ、太郎くん」

太郎「……はい」

提督「……ああ、そうだ。それに託けて一つ頼みがある」

太郎「私に出来る事でしたら、何なりと仰ってください」

提督「ああ、ーー」

375: 2015/05/17(日) 23:11:36.56 ID:/v3vGR1L0
………
……



食堂


軽く酒が入り、会話の弾む空間。
はじめは緊張もあり、少しぎこちなかった艦娘同士が打ち解けてきた頃。
ガチャ、とドアが開き、提督が入って来た。

提督「仲良くしている所すまないが、お前達、そろそろ宿舎に戻るぞ」

足柄「……あら、もうそんな時間?」

提督「明日は早いからな」

榛名「そうですね。名残惜しいですが……」

北上「ええー!もう行っちゃうのかい?」

提督「まぁな」

376: 2015/05/17(日) 23:12:10.63 ID:/v3vGR1L0
北上「もう泊まってきなよー!」

提督「馬鹿。演習に来たんだぞ、こっちは」

北上「えええー!」

大井「北上さん!ダメですよ!セクハラがうつります!」ガシッ

北上「うはは」

金剛「Eww……drunk……ゴメンネー提督。この人達、明日演習無いからって飲み過ぎネー」

提督「……しっかり寝かしつけてやってくれ」

金剛「ハイ!」

提督「では、失礼するよ。金剛、翔鶴、また明日。……陽炎と……摩耶も。よろしく頼む」

陽炎「はい!」

摩耶「……ん」

377: 2015/05/17(日) 23:12:52.18 ID:/v3vGR1L0
………
……



宿舎


提督「ほら、各々の部屋に入れ。0600に私の部屋に集合だ。良いな」

足柄「はーい」

榛名「はい!おやすみなさい」

隼鷹「うい」

鳳翔「はい。わかりました」

雷「任せて!」

提督「……あー、雷、少し良いか」

雷「?……良いわよ?」

そう言って、提督は雷だけを伴って部屋に向かう。
そうして雷を先に部屋に入れ、すべての艦娘が寝室のドアを閉めたのを確認してから、自室のドアを閉めた。

雷「……どしたの?」

怪訝な表情の雷。

提督「……少し、話がある。明日の事だ」

いつになく、神妙な面持ちの提督。
そして、何かを言った。

雷「……!」

提督「頼めるか?」

雷「……わかったわ」

提督「……すまんな」

その後、暫く二人で話し込む。

384: 2015/05/18(月) 21:00:10.19 ID:f3y0y+ex0
翌朝、提督の自室


提督「揃ったか」

一同「はい!」

提督「もうじき海域が公開される。
恐らく、諸君には海図を持ったら直ぐに出てもらわなくてはならん」

一同「はい」

提督「戦術は此方で検討する……が、あまりアテにするな。
訓練海域はかなり狭い。戦術よりも日々の訓練、経験がモノを言うだろう」

一同「……」

提督「編成は以前も伝えた通り、
旗艦足柄以下鳳翔、榛名、雷と続く」

一同「はっ」

提督「相手は最前線の部隊とは言え、勝てぬ相手ではない。……勝つぞ」

一同「はっ!」

提督「よし、では装備の確認急げーー」

385: 2015/05/18(月) 21:01:06.91 ID:f3y0y+ex0
………
……



南方基地、執務室


太郎「おはよう、諸君」

一同「おはようございます!」

太郎「えー……本日の編成は、旗艦金剛、翔鶴、陽炎、摩耶。
基本戦略はファーストルック・ファーストキル。いつも通りだ」

北上「今回はアタシ達がいないけどねぇ」

太郎「そうだな。だから今回翔鶴には艦攻48機で挑んで貰う事は伝えたな」

翔鶴「はい」

太郎「この航空機数での優勢を利用して一気に畳み掛ける。
理想的には、目視圏内に入る前になんとかカタをつけたい」

摩耶「アタシの出番はねーってか?」

太郎「それが理想だが……戦局がどう転ぶかはわからん。
……まだ実戦経験の少ないお前や陽炎にはいい経験になるとは思う」

摩耶「へっ」

陽炎「はい!」

太郎「よし、各員、装備の確認急げ」

一同「らじゃー!」

386: 2015/05/18(月) 21:02:03.34 ID:f3y0y+ex0
………
……



0800、海域公開


提督「これは……また島の多い……」

海図を眺めて呟く。
だが、今はゆっくりそれを眺める時間は無い。

提督「総員、海図は行き渡ったか!」

一同「はっ!」

提督「よし、出撃だ。無線のバンドは指定されている。注意しろ」

一同「はっ!行って参ります!」

提督「隼鷹、お前は北上達と観戦だな。所定の部屋で、艤装付属のカメラから映像を見ることが出来る」

隼鷹「う、うん」

提督「翔鶴と鳳翔の様子をよく見ておけ」

387: 2015/05/18(月) 21:02:46.88 ID:f3y0y+ex0
隼鷹「おっけい……ちなみに、作戦はあんのー?」

提督「そうだな……翔鶴には悪癖があるからな。そこをなんとか……と言う感じか」

隼鷹「悪癖?」

提督「じきにわかる。……誰だって一度は通る道だ。ま、だからと言って勝てるとは限らんが」

隼鷹「へぇ……てか、海図見ると島?岩?が多いねぇ。
これ、待ち伏せ出来るアタシ達が有利なんじゃない?!」

提督「そうだな……一見、待ち伏せ出来る防御側が有利だが……」

隼鷹「うん?」

提督「……お前は艦載機でシースキミングが出来るか?」

隼鷹「うん?」

提督「海面に対する超低空飛行だ」

隼鷹「うん、無理」

388: 2015/05/18(月) 21:04:16.38 ID:f3y0y+ex0
提督「……まぁ、シースキミングで侵入した場合、目視なら4000メートルくらいで視界に入る」

隼鷹「うん?」

提督「地球は丸いだろ?お前たちの身長ならだいたい4000メートル以内の、海面スレスレのモノが見える。
艦娘は目が良いからな。本来なら10キロくらいなら見えるらしいが……」

隼鷹「ほーん」

提督「……で、だ。海面をだいたい300キロ毎時で飛ぶ艦攻なら、接近まで大体50秒くらいだな。
結構長いぞ、50秒。対空砲の餌食だ」

隼鷹「ウーム、確かに」

提督「まぁ、そこでだな。対空砲がもっとも苦手とするのは地形だろ」

隼鷹「あー。山とかの裏側は狙えないしねぇ」

提督「そう。山の斜面に沿って侵入するのが攻撃機の常だ。
そうなると、山のある島影で待ち伏せしてる艦娘がどうなるかはわかるな」

隼鷹「いきなり至近距離に敵機が出現するって事か」

提督「それが小高い丘程度でもな。彼我の距離1、2キロの至近距離に40、50機の敵編隊が出ると」

隼鷹「うへぇ」

提督「嫌だろ?」

389: 2015/05/18(月) 21:06:48.42 ID:f3y0y+ex0
隼鷹「まぁね。待ち伏せも楽じゃないなぁ」

提督「翔鶴の艦載は84。鳳翔の42の倍だ。腕も……翔鶴の方が上だろうな。空を獲るのは難しい」

隼鷹「……」

提督「そう膨れるな。鳳翔は経験とメンタルで勝っている。
必ずしも技術で勝っている方が勝つとは限らん」

隼鷹「……ったり前じゃん!鳳翔さんが負ける訳ないだろ!」

提督「……そうだな。……と言うか、こういった話は鳳翔から聞かないのか?」

隼鷹「んー……攻撃の事はあんまり。今は主に回避とかディフェンシブかなぁ」

提督「……成る程な。それで良い」

隼鷹「で?で?どう艦隊を動かすの?」

提督「ふむ。この海図を見ればわかるが……まず、西端に我々の陣地、東端に敵の陣地が有る。ここが開始地点だ。
敵の作戦目標は我々の殲滅或いは拠点の占拠。我々は時間一杯まで防衛、もしくは敵の殲滅」

隼鷹「うむ」

390: 2015/05/18(月) 21:13:00.00 ID:f3y0y+ex0
提督「まぁ、拠点の占拠といっても、単純にこの陣地を防衛線と見なして、突破されたらダメって事だが」

隼鷹「わかるよー」

提督「さて、海域西部中央に平坦だが大きな陸地がある。
東から来る敵の進入経路はこの両サイド、北か南か」

隼鷹「んだね」

提督「そして、南の水道に小島が集中している。お互いに氏角が多い。
ここは空からの目が有るかどうかで、大きく戦い方が変わる……
つまり空を取ってる方が有利だな」

隼鷹「ふむふむ」

提督「逆に、北は待ち伏せが居る事がわかっていても侵入は難しい地形だな……陰も多く、爆撃も難しい。
ただ、一度侵入されると……敵は地形を盾にしながら此方の拠点に到達出来る」

隼鷹「リスクとリターンがデカイ……北は敵からしたら博打、か」

提督「そうだな」

391: 2015/05/18(月) 21:16:03.28 ID:f3y0y+ex0
提督「そうだな」

隼鷹「コッチはやっぱ南の待ち伏せ難しいかな?」

提督「航空優勢を取れれば、或いは。相手から見えている待ち伏せは待ち伏せにならん」

隼鷹「……敵からしたら南から入るのが安定だよね」

提督「そうなる。が、だからと言って南にかまけて北を開ける訳にはいかん。入られたら終わりだ」

隼鷹「航空優勢って大事だな……」

提督「当たり前だ」

隼鷹「てか、よく知ってるねぇ。地形」

提督「昔、ここらに居た事があってな……」

隼鷹「へぇ……んで、どーすんの?」

提督「始めは北に展開する。そして、それを敵に発見させ、それから南下だ」

隼鷹「うーん……?なんか二度手間?間に合うの?
てか、南に展開してから偵察機飛ばして、北にいない事を確かめたほうが……」

提督「物事には全て理由がある……まぁ、見てろ」

隼鷹「……ほほう。見せてもらおうか、貴様の力を……!」

提督「……」ぽこんっ

隼鷹「あいてっ!」

提督「さて、こっちも準備を始めないとな……無線で移動しながら会議だ……」


赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」【5】

392: 2015/05/18(月) 21:20:23.14 ID:f3y0y+ex0
とりあえずここまで


演習ですが、ゲームとは全く異なる設定です


描写力については精進中です……
海域については、

真ん中にデカイ島があって
北は地形がアレで
南は障害物が多い

程度の認識でお願いします

引用: 【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」