297: 2015/08/18(火) 00:01:27.99 ID:G9wk/MNV0

第三章の初め:加賀「……さて、と」




提督『……だからっ!そのルートはダメだと!』

同期1『何故だ?
このルートの方が早く、燃料効率もいいじゃないか!』

提督『接敵する可能性が高過ぎる!』

同期2『なんだ、貴様……
臆病風にでも吹かれたのか!』

提督『何を馬鹿な事を……
俺たちは輸送隊だぞ!』

夜から朝まで。
提督ら輸送隊の会議は紛糾していた。

同期1『だから貴様は変人と呼ばれるんだ!
接敵を恐れて輸送が遅れては元も子もないじゃないか!』

提督『お前はただ深海棲艦を排除したいだけだろうが!
輸送が届かなければ、それが一番大きな損失になる!』

同期2『なんのために貴重な資材を叩いて艦娘を訓練しているんだ?!
戦うためじゃないのか!』

提督『では聞くが、輸送船なんてハンディを背負って深海棲艦に勝てる保証はあるのか?』

深海棲艦を沈めたい同期達と。
資材がカツカツであるから、戦闘をなるべく避けたい提督。

平行線である。
「艦これ」ピクトリアルモデリングガイド 大和編: 『艦これ』提督のための艦船模型ガイドブック

298: 2015/08/18(火) 00:02:05.72 ID:G9wk/MNV0
同期1『くそっ……なんで合同輸送任務ばかり……』

同期2『仕方あるまい……上司殿の命令だ……』

同期1『大体、提督サンは艦娘が二隻有るなら一人でやればいいじゃねーか……』

提督『……』

同期3『仲間内で揉めてどうする!
輸送はせねばならんのだ!』

同期1『……わーっとるわ!』

同期3『議論を再開するぞ。
ルート選定はーー』

提督『それならこのルートでーー』

同期2『何度も言うがそれは時間がーー』

そして、繰り返される怒声の応酬。

299: 2015/08/18(火) 00:02:56.45 ID:G9wk/MNV0



会議でなんとか落とし所を見つけ。
提督が自室に戻った時、時刻は既に1500を回っていた。

赤城『提督。
お疲れ様です』

部屋には待機していた赤城。

提督『……ああ。遅くなった。
すまんな』

赤城『加賀さんは既に出立しました』

提督『そうだろうな。
ギリギリまでルートで揉めたからな……』

馬鹿な奴らめ、と悪態をついて提督は椅子に深く腰掛けた。

赤城『昨晩からずっと会議ですか』

提督『そうなる』

嘆息しつつ答えた提督の声には、寝ていない故の濃い疲労が感じられた。

300: 2015/08/18(火) 00:03:38.98 ID:G9wk/MNV0
赤城『単純に興味があるのですが。
一体何をそんなに話す内容があるのですか?
ルート選定は提督が行っているのでは?』

提督『最近、戦闘が激化していて……前線を抜けてくる深海棲艦が多い。
俺のルートにケチをつけて、なんとか深海棲艦を沈めたいらしいな、奴らは。
輸送隊と言っても聞きやしねぇ。
実に感情的、非合理的だ』

赤城『……感情的、非合理的。
それをあなたが言いますか』

赤城が半ば呆れたように言う。

提督『……お前、結構言うようになったな』

赤城『そうでしょうか』

提督『……ま、正直でよろしい』

ぽい、と帽子を机の上に放り投げて提督は大きな欠伸を一つ。

そんな姿を見つめつつ、赤城は呟くように言った。

赤城『私は……同期の方々の仰ってる事も理解できます』

301: 2015/08/18(火) 00:04:21.57 ID:G9wk/MNV0
提督『……』

赤城『私が見てきた司令達は皆、深海棲艦が憎くて憎くて堪らぬ、と言った調子でしたから。
やはり敵を沈めたいのでしょう』

提督『……だが俺たちは輸送隊だ』

赤城『護衛しているのは艦載機の無い空母ですがね』

じっと提督を見つめる赤城。

提督はその目線から逃れるように目を逸らし、言葉を発した。

提督『……そう言えば本はどうだ、本は』

赤城『……いえ、実はまだ……』

提督『……そうか』

少し妙だとは思う。
前に貸した本が未だに帰ってこない。
時間は十分与えた筈だ。

赤城の読むスピードから言って、確実に読み終えているはず。
とすると。
読まずに他の事をしているか……或いは、繰り返し同じ本を読んでいるか。

302: 2015/08/18(火) 00:05:32.67 ID:G9wk/MNV0
提督『……ま、それは構わん。
……そろそろいい時間だ。
埠頭に出ようか。
……今日は艦載機、飛ぶかねぇ』

赤城『……はい』

その時、赤城がちょっと嫌そうな顔をしたのを提督は見逃さない。

提督『そう嫌がるなよ』

赤城『……苦痛ですよ。
出来ない事を期待されるのは』

提督『期待されないより良いさ』

赤城『おめでたいですね』

提督『無礼な奴だな……』

赤城『大体、何をなさるおつもりですか?』

提督『取り敢えず、今日は風が出ているから……揚力を得てどうにかなるかだな』

303: 2015/08/18(火) 00:06:10.74 ID:G9wk/MNV0
赤城『何回も試したじゃないですか……』

提督『ちょこっと条件変えてやる』

赤城『少しでそんな変わるんですか?』

提督『原理がわからないなら実験しかないだろ?』

提督は棚から実験の記録を記したノートを取り出しながら言う。

赤城『……そうですけど……』

提督『内部構造を見ようにも、艦載機は顕微鏡には乗らんしな。
付き合ってくれよ』

赤城『……わかりました。行きましょう』

304: 2015/08/18(火) 00:07:21.27 ID:G9wk/MNV0



埠頭にて。


提督『もうちょい甲板上げてみてくれ。
アタックアングルを取ってだな……』

赤城は甲板に艦載機を乗っけたまま、海面を走っていた。

赤城『揺れてるので厳密なのは難しいですよ』

提督『ある程度適当で構わん。
今日はそこそこ風が強い。
東南東……風上を向いて速度上げてみよう』

赤城『はい』

方向を変え、甲板に艦載機を乗せたまま加速していく赤城。

しかし。

甲板上の艦載機はうんともすんとも言わず。

提督『うーむ……浮きすらせんな。
……質量か……
レイノルズで考えると……』

赤城『……』

305: 2015/08/18(火) 00:07:52.62 ID:G9wk/MNV0
提督『……嵐の日にでも試すか?』

赤城『嵐の日に艦載機を飛ばすのですか?』

提督『案外上手くいくかもしらん』

赤城『よしんば飛んだとして、嵐の日にしか活用できない空母など……』

提督『……まぁ、そもそもエンジンスタートすら出来て居ないから、飛ぶ筈も無い、か』

チラリと赤城の足元を見て。

提督『艤装もフルードに従わないし……
……流体からはアプローチするだけ無駄だよな……』

ふぅ、と溜息。

これまでの力学では説明出来ない事象が艦娘・深海棲艦には多過ぎる。
が。
艦娘の存在は表向きになっていないので、研究も進まないままだ。

306: 2015/08/18(火) 00:08:30.08 ID:G9wk/MNV0
赤城『どーせ、飛びませんよ。
おっしゃる通り、エンジンスタートすらしないんですから。
逆に浮いたら困りますよね』

悩む提督をよそに、赤城は自分の艦載機を見つめながら呟く。

提督『そう言うなよ……
お前は飛ばしたくないのか?』

赤城『……』

提督『……。
イナーシャスターターかなんかあると思うんだが……
……次は電極でも突っ込んでみるか?
オシロが要るな……』

提督がブツブツと別の案を検討していると。
赤城が疲れの滲んだ声で彼に問うた。

赤城『……まだ続けますか?』

307: 2015/08/18(火) 00:09:03.36 ID:G9wk/MNV0
提督『んー……』

赤城が埠頭周辺を航行し続けること数時間。
既に日は沈みかけている。

提督『……今日のところは引き上げるか』

赤城『わかりました』

赤城は、ほう、と息を大きく吐いた。

提督『……。
お疲れの様子だな』

赤城『……それは……そうです。
艦娘だって疲労しますよ。
金属が疲労するように』

提督『疲労破壊と肉体疲労を同列に語るなよ……お前達は加熱しなくても回復するだろ』

赤城『エネルギィは必要です』

提督『人間だってそうだ』

赤城『……我々は人間とは違いますよ。
なぜ基準が人間なのですか』

提督『ーー』

308: 2015/08/18(火) 00:09:32.95 ID:G9wk/MNV0
言葉に詰まる。
そんな提督を、赤城は暫く見つめていたが、くるっと背を向け。

赤城『……では、ハンガーに戻ります』

少し疲れた声で言って、装備を収納しに向かった。

提督『……ああ』

小さくなっていく赤城の背中を見つめ。

提督『……何故、基準が人間か、ね……』

提督は小さく呟く。

提督『……いつから奴らを……
人間扱いしていた……?』

自分に疑問し。
やがて赤城の姿がハンガーの中に消えた頃。

提督『さて、俺も部屋に戻らないとな……』

提督も海に背を向けた。

309: 2015/08/18(火) 00:10:11.04 ID:G9wk/MNV0



部屋に戻って早々、提督は上司から呼び出しを受けた。
赤城に入渠を命じると、提督は急ぎ足で上司の部屋に向かう。

提督『一体なんの用だ……?』

長引いた会議の件か?
同期がなにか具申したのだろうか。

提督『……無いな』

上司は嫌な人間ではあるが、基地を一つ任されているだけあって仕事は出来る。

提督『俺の案は奴の承認を受けた……
今更ケチをつけることはあるまい』

そこまで上司はバカでは無い。

提督『となると……』

赤城、ひいては艦載機の事だろうか。

提督『面倒な事になった。
結果が出てないのは事実だしな……』

ため息をつく。

310: 2015/08/18(火) 00:10:40.56 ID:G9wk/MNV0



部屋に戻って早々、提督は上司から呼び出しを受けた。
赤城に入渠を命じると、提督は急ぎ足で上司の部屋に向かう。

提督『一体なんの用だ……?』

長引いた会議の件か?
同期がなにか具申したのだろうか。

提督『……無いな』

上司は嫌な人間ではあるが、基地を一つ任されているだけあって仕事は出来る。

提督『俺の案は奴の承認を受けた……
今更ケチをつけることはあるまい』

そこまで上司はバカでは無い。

提督『となると……』

赤城、ひいては艦載機の事だろうか。

提督『面倒な事になった。
結果が出てないのは事実だしな……』

ため息をつく。

311: 2015/08/18(火) 00:11:09.08 ID:G9wk/MNV0
艦娘を増やせば作戦能力も上がると考えるのは普通の事だ。
しかし提督の場合、実質的に加賀しか動かしていないため、以前とほとんど能力は変わらず、ただ燃料消費だけが増えている。

提督『飛びゃあ、勝ちなんだけどなぁ……』

だが、飛ばないものは仕方が無い。

いつの間にか到着していた上司の部屋を前にして、すぅっと深呼吸すると、提督はその戸を叩いた。

提督『失礼致します。提督です』

ややあって返答。

上司『……ああ。入れ』

どこか覇気が無い。

提督『如何致しましたか』

中に入ると、立ったまま腕を組み、窓から外を眺める上司の姿が。

上司『……少し、話がある。
お前には、あまり関係の無い話なんだが』

312: 2015/08/18(火) 00:11:40.27 ID:G9wk/MNV0
一応、耳に入れておいた方が良いかと思ってな。

そう続けて、上司は己の席に戻った。

提督『……』

上司『と言うのも、東雲長官にお叱りを受けてな……』

提督『……?』

上司『……昨日の事だーー』

その後。
上司の口から告げられた内容に、提督の目が大きく見開かれる。

それは、全く予想だにしなかった内容で。

確かに、提督には全く関係の無いこと。
しかし、それは提督に、とても大きな衝撃を与えた。

325: 2015/08/26(水) 00:12:27.34 ID:qoSIfhgtO



数日後、執務室にて。


コンコン、とノック。

提督「入れ」

赤城「失礼致します……。
おはようございます、提督」

提督「おはよう。本日もよろしく頼む。
加賀は長期遠征で不在、お前は今日も訓練だ」

提督は日報を読みながら、つらつらと話す。

赤城「……はい」

赤城も返事はするものの、日報の内容が気になる様子で、少し覗き込むように立っていた。

それに気付いた提督は摘要を伝えながら、赤城に日報を手渡した。

提督「北方方面軍がまた領土を拡大したそうだ」

赤城「北方方面軍、ですか。
流石、他からスッパ抜いた戦艦で固めているだけはありますね」

326: 2015/08/26(水) 00:13:14.19 ID:qoSIfhgtO
提督「……お前、どんどん言葉遣いがアレになっていくな……」

赤城「アレ、とは?」

提督「……なんでもない」

提督は、くぁー、と大きな欠伸と共に伸びをした。

そんな間抜けな姿を横目に、赤城は日報を読み進める。

赤城「他は大したことは……おや。
提督、東部方面軍はもっと気合を入れる必要がある、なんて投書がありますよ」

提督「……」

赤城「前線でまた甚大な被害……
軍人としての責任……なんだか滅茶苦茶書いてありますね」

提督「……耳が痛い話だ」

327: 2015/08/26(水) 00:13:44.90 ID:qoSIfhgtO
赤城「あら、そうなんですか」

提督「俺だって東の所属だぞ。一応な」

赤城「……の割りには、研究者のようですが」

提督「そうでもないさ。
中央の研究設備利用もお断りされたしな。
艦載機に時間を割く余裕はない、だそうだ」

赤城「……そろそろ諦める気になりましたか?」

提督「いいや。今日もやるぞ。
……嵐になりそうだしな、良い機会だ」

赤城「……」

提督「そんなゲンナリした顔を見せるなよ。
余計やりたくなるだろう」

赤城「そうですか……」

提督「では、夕刻から頼む。
……そろそろ定格訓練の時間じゃないのか?」

赤城「……そうですね。
では、行って参ります」

ぺこりと一礼して、赤城はトコトコと去っていった。

提督「……あ。しまった」

本の事を聞くのを忘れていたな、と呟く。
赤城がずっと返さない本の事を。


328: 2015/08/26(水) 00:14:12.42 ID:qoSIfhgtO



数時間後。


提督「いやー……疲れた……」

提督は椅子に座ったまま息をついた。

時刻は昼をとっくに過ぎ、夕刻に差し掛かろうとしている。

提督「作戦管理も楽じゃ無いな……」

提督の眼前には広げられた海図。

鉛筆などで複数の印が打たれている。

深海棲艦の統計的な傾向の分析から、なんとか良さげな輸送ルートを導き出そうとした痕跡だろうか。

提督「……ああ、そろそろ赤城の訓練が終わる時間か」

広げていた海図を畳みつつチラリと時計を見る。

提督「訓練所で拾って、そのまま埠頭に出るかな……」

そう呟くと、提督は上着を手に持って部屋を後にした。

329: 2015/08/26(水) 00:14:40.45 ID:qoSIfhgtO



訓練所付近


提督「おー。やってるやってる」

提督は、遠くから訓練の様子を見ている。

提督「赤城は……っと。
……居た居た」

視線の先には赤城の姿。

提督「そこそこ当ててるな……」

砲撃訓練中であるのだが、中々的に当てられない加賀とは対照的に、ポコスコと的を射ている。
中々器用なのかも知れない。

330: 2015/08/26(水) 00:15:11.63 ID:qoSIfhgtO
提督「……しかし、集中力が無いな……」

赤城はキチンとしているようで実は力を抜いていた。
遠目から見ていてもそれがわかる位には、提督は赤城を知っている。

提督「全く……まーた怒られるぞ」

はぁ、と溜息。
訓練の終わり際だからか、気が抜けているのかもしれない。

提督「お……終わったみたいだな」

しばらく見ていると、艦娘達が引き上げ始めた。
しかし。

提督「……?何やってんだ、あいつ?」

赤城は遠くで首を上げて、空を見たまま動かない。

提督「まーた上の空ってか……」

提督も赤城の視線の先を見つめて。

提督「……お?」

その先には。

331: 2015/08/26(水) 00:15:42.33 ID:qoSIfhgtO



赤城「お待たせしました」

暫くして、訓練所を出た赤城が埠頭にやってくる。

提督「ああ、お疲れ様」

赤城「……なんですか、ニヤニヤして……」

提督「……これは微笑んでるんだよ……」

赤城「……では何故、私の顔を見て微笑んでるんですか」

提督「ま、色々あるんだよ」

赤城「……」

提督「そんな顔をするなよ……」

赤城の目が怖い。

提督「……よし、じゃあ始めるとしよう」

それから逃げるようにして、提督は話題を逸らす。

332: 2015/08/26(水) 00:16:12.45 ID:qoSIfhgtO
赤城「中々、諦めませんね」

提督「まぁ、な」

赤城「……」

提督「今日もあと少し、頑張ってくれ」

赤城「……はい」

ふぅ、とため息を吐きつつも、赤城は沖の方へと行く。

その後ろ姿を、苦笑しながらも見送る提督。

いたっていつも通りの日常。
いつも通りの訓練の後、いつも通り艦載機は飛ばぬ。

少し。
平和だな、と、二人とも心のどこかで思っていた。

それが、直ぐに壊れるとも知らずに。

370: 2015/10/10(土) 17:36:09.20 ID:jD+5JNo60



2ヶ月後


ガチャ、と提督の部屋の扉が開く。

提督『随分と待たせたな……
会議が長引いた。すまない』

疲れきった顔をした提督が部屋に戻ってきたのだ。

加賀『いえ、私は大丈夫です。お疲れ様です』

室内には加賀。

提督『前線では苦戦が続いているようでな……
補給を増やせと言うのだが、こちらの艦娘の数にも限りがある。
道中での接敵も増えているし……やってられん』

珍しく加賀に愚痴る提督。
それだけ大変だという事だろうか。

371: 2015/10/10(土) 17:36:59.77 ID:jD+5JNo60
提督『……まぁ、それで、だ』

加賀『?』

首をかしげる。

提督『会議の結果、お前は当面、三○七輸送隊に編入される事になった』

加賀『三○七輸送隊、ですか?初めて聞く部隊ですが……』

提督『ああ。リスクヘッジのために輸送隊を分散させる計画が持ち上がり……
大幅に輸送隊が新規編成されてな』

加賀『なるほど』

提督『で、だ。お前はその輸送隊に入ってもらうんだが……
俺の方は、一時的に作戦管理室に入ることになった』

加賀『作戦管理室、ですか?』

提督『ああ……』

372: 2015/10/10(土) 17:38:56.57 ID:jD+5JNo60
加賀『……と、いうことは』

提督『俺はお前達の直接の上官では無くなる』

加賀『そんな……』

加賀の表情が曇る。

提督『とはいえ、お前達の監督責任者は俺のままだ。
……何、朝に挨拶する顔が変わるだけさ』

加賀『……』

提督『夜はいつもどおりだ。……食べに来い』

少し顔を赤らめる加賀に苦笑しつつ、提督は続けた。

373: 2015/10/10(土) 17:39:53.63 ID:jD+5JNo60
提督『すまんが、頼む』

加賀『承知しました。お任せください』

提督『ありがたい。では……』

チラリと腕時計に目を落とし。

提督『今からハンガーの出撃待機所に向かい、そこで待機しておいてくれるか。
もうすぐ顔合わせがある筈だ』

加賀『はい。……ところで、あの……』

提督『……?どうかしたか?』

加賀は難しい顔をして、言葉を口にすべきか悩んでいる様子だった。

374: 2015/10/10(土) 17:40:22.06 ID:jD+5JNo60
が、しばらく後。

加賀『……いえ、何も。では、行って参ります』

困ったように微笑んで、その疑問を飲み込んだ。

提督『……ああ』

提督は敢えて追求せず。

加賀『失礼いたします』

加賀はぺこりとお辞儀をしてから、部屋のドアに手をかけて、開けた。

375: 2015/10/10(土) 17:40:51.47 ID:jD+5JNo60



と。

赤城が開いたドアの外に立っていた。
丁度、ノックをしようとしていたような格好で。

加賀『……こんにちは』

赤城『……こんにちは』

バツの悪そうな顔をして、加賀からそれとなく目を反らす赤城。

そんな赤城を、加賀はすれ違いざまに一瞥した。
眉をひそめて、少し、恨めしそうに。

加賀の遠ざかる足音がやがて聞こえなくなった頃。
赤城はようやく提督の部屋に入った。

376: 2015/10/10(土) 17:41:19.31 ID:jD+5JNo60
赤城『……何かあったんですか?
加賀さんの機嫌が悪そうでしたが』

提督『配置換えだ』

赤城『……配置換えですか。という事は、私も……』

提督『いや、お前は変わらない』

赤城『加賀さんだけ、ですか』

提督『そうだ。お前を呼んだのはただ単に会議が終わったからだよ』

赤城『……』

提督『……よし、じゃあ今日も訓練だ。砲撃の方はもう終わってるんだろ』

赤城『……ええ、まあ』

提督『ならとっととやるぞ。日没まで、そんなに時間が無い』

377: 2015/10/10(土) 17:41:53.07 ID:jD+5JNo60
そう言って立ち上がる提督を見つつ。

さっきの加賀の視線は、この事に対するモノなんだろう、なんて考える。
誰だって、実戦が絡む輸送と訓練となら訓練が良い。
それくらい、実戦は精神がすり減るのだ。

提督『……今日からは更に気合を入れてかからないとな』

そんなのんきな事を言う提督に。
赤城はハァ、と溜息をついて。
小さく頷いた。

加賀「……さて、と」【5】

引用: 【艦これ】加賀「……さて、と」