750: 2016/05/09(月) 22:30:08.56 ID:SipO2JOT0

第三章の初め:加賀「……さて、と」




数日後


加賀『て、提督……』

赤城『……』

将校『では、赤城と加賀を預かる』

提督『はっ』

赤城と加賀は、本部への異動となった。
それも、提督では無い男の下に。

「艦これ」ピクトリアルモデリングガイド 大和編: 『艦これ』提督のための艦船模型ガイドブック

751: 2016/05/09(月) 22:30:33.34 ID:SipO2JOT0




数日前、提督の自室


ドン!と言う轟音と共にドアが勢いよく開いて、険しい表情をした赤城が入ってきた。

あっけに取られる提督。

提督『おいおい、ノックをだなーー』

赤城『どういうことですか』

その言葉を無視して、バンと机を叩く赤城。

提督『……』

赤城『……何故、私達が異動に?』

752: 2016/05/09(月) 22:30:59.55 ID:SipO2JOT0
提督『……仕方あるまい。あれだけの騒ぎになったんだ。
本部もそれを知る所にーー』

艦載機が飛んだ日。
基地は大騒ぎになった。

他の艦娘が、基地上空を飛ぶ艦載機を発見したのだ。

まさか敵襲かと、基地はバケツをひっくり返したような騒ぎになった事は記憶に新しい。

赤城『……嘘は。仰らないで下さい?』

が。
見抜かれて。

753: 2016/05/09(月) 22:31:52.13 ID:SipO2JOT0
赤城『騒ぎからまだ一週間ですよ。
予め異動が決まっていたとしか思えません』

提督『……そんなことはないさ』

赤城『いえ、あります。
……まさか私が何も知らないと?』

提督『……参ったな』

はぁ、とため息をつく。

赤城『噂の段階なら、まだ理解は出来ます。しかしーー』

赤城はトントンと机を指で叩いた。
提督のクセが移ったのか。

赤城『辞令が下るのがいくらなんでも早すぎます。
申請から承認や、事実確認を考えれば答えは明らかです』

754: 2016/05/09(月) 22:32:19.99 ID:SipO2JOT0
提督『……来た時は何も知らない艦娘だったと言うに……』

嘆息して、瞑目。

提督『……余計な知識をつけたな……』

赤城『……お陰様で』

提督は椅子から立ち上がった。
そして窓から外を覗きつつ、言う。

提督『……仕方なかった』

赤城『……やはり、予め決まっていたのですね』

はぁぁ、と呆れ顔の赤城。

755: 2016/05/09(月) 22:36:17.52 ID:SipO2JOT0
提督『それが、物資を都合する為の条件だったからな』

赤城『……手柄を明け渡せ、と』

提督『そうなる』

赤城『……馬鹿な……』

提督『お前、上官になんてクチを……』

赤城『……いえ、賢い選択なのでしょうか?
これだけ行動が早いとなると、かなり上の立場の方でしょうか。
となると、良い売名になる……』

提督『……おいおい……よせ、人聞きの悪い。
お前がアレを飛ばせなければ、飛んでいたのは俺の首だぞ』

一連托生だ……、と嘯く。

756: 2016/05/09(月) 22:36:47.22 ID:SipO2JOT0
赤城『私の為に全てを投げ捨てたとでも言うおつもりですか?』

提督『信じない奴だな、お前も』

そう言って肩をすくめてみせる提督に。

赤城『……まぁ、その方が嬉しいですけどねーー』

赤城は付け足した。

赤城『ーー私は』

提督『……。
……ともかく。もう決まった話だ。
今更どうこう出来る物ではない』

赤城『……そうですね。
意図が確認出来ただけでも、良しとしましょうーー』

横目で提督を見つつ。

赤城『ーー私は』

757: 2016/05/09(月) 22:40:29.56 ID:SipO2JOT0
提督『……言いたい事はハッキリと言え』

赤城『何故、加賀さんまでも?』

提督『……』

赤城『とても正気の沙汰とは思えません。
加賀さんは……私とは違うんですよ?』

わかってますよね?と聞く赤城。
それに対して提督はしばし沈黙する。

提督『……加賀は……俺にも予想外だった……』

赤城『予想出来た事だったのでは』

提督『……何度も説明したんだがな……』

赤城『答えになってませんね……』

赤城はやれやれ、と首を振った。

758: 2016/05/09(月) 22:40:55.75 ID:SipO2JOT0
提督『……なぁ、赤城』

赤城『無理です』

提督『……何も言ってないだろう』

赤城『力になってほしい、と言いたかったのでは?』

提督『……』

赤城『……加賀さんが、私に対して良い感情を抱いているとは思えませんから』

提督『……そこをなんとか、ね』

赤城『……』

はぁ、と溜息。

赤城『……努力しましょう』

提督『ああ……助かる』

赤城『……それでは、私はこれで』

提督『……ああ』

パタン、と出て行った赤城の居た場所を見つめて。

提督『……ああ……』

提督は脱力したように呟いた。

759: 2016/05/09(月) 22:41:22.27 ID:SipO2JOT0



引き渡し当日

将校『お前には、新たな艦娘が引き渡される事になっている。
実はもう連れてきているんだ』

提督『それは……。ありがとうございます』

将校『アタゴ……と言ったかな?
後ほど部屋に向かわせよう』

提督『はっ』

その後、提督だけに聞こえるように。

将校『……お前の能力は高く買ってる。
輸送任務の監督としても結果を出してるそうじゃないか』

提督『……優秀な同僚達の力にです』

将校『まぁまぁ、謙遜するなよ』

提督『……』

760: 2016/05/09(月) 22:46:29.39 ID:SipO2JOT0
将校『お前はすぐに本土に呼ばれるさ。
こっちが上手くいった暁にはーー』

ちらりと空母を見る。

将校『僕が便宜を図ってやるしな』

提督『……ありがとう、ございます』

将校『じゃあ僕は出立の準備をしてくるよ。
空母の最終調整を頼む』

ポンポン、と提督の肩を叩くと、将校は去っていった。

761: 2016/05/09(月) 22:46:55.79 ID:SipO2JOT0
残された3人。
加賀は涙ぐんでいる。

提督『……まぁ、なんだ』

赤城『……』

加賀『……』

提督『元気でな』

加賀『……っ。提督っ……どうしてっ……』

提督『……お前にとって、この方が良い道になる』

加賀『……そんな……ことっ……』

ついにポロポロと泣き出してしまう加賀。

提督はその涙をそっと拭いてやりながら、赤城を見た。

762: 2016/05/09(月) 22:47:22.62 ID:SipO2JOT0
提督『……お前は泣かんのか』

赤城『はい』

提督『……つまらん奴だな……』

赤城『泣くなとおっしゃったのは、あなたでしょう』

提督『……』

赤城『それにーー』

赤城は提督に歩み寄る。

赤城『ーー今は惜別の時ではありません』

提督『……?』

赤城『あなたは……自分が何をしたかを……
もう少し自覚すべきです』

提督『……』

黙る提督の胸を、赤城は拳でドン、と強めに押して言った。

赤城『このままでは、終わりませんよ』

763: 2016/05/09(月) 22:47:50.26 ID:SipO2JOT0

そして、それだけ言うと。

赤城『加賀さん。行きますよ』

加賀『あっ……』

加賀の手を掴んで、半ば無理やり引っ張った。

少し恨めしそうな目で提督を見ながら、加賀は赤城に手を引かれてゆく。

その様子を無言で見つめていた提督だったが。

やがて二人の姿が見えなくなると。

提督もそこから姿を消した。

786: 2016/06/08(水) 12:21:26.62 ID:dHAKT3W3O
◇一節◇
No.1~153
要らない艦娘が集められた南方のとある島。
その名も、サセン島。
そこで燻っていた足柄、榛名、隼鷹達に、新たな司令官が着任した。
「お前達は磨けば光る」
なんてクサい事を言うその提督の下には、更に3人が加わって新たな生活を送り始める計6人の艦娘達。
だけど榛名が暴走したり、足柄が粗相をしたり、隼鷹が酒を飲んだりして……?!

787: 2016/06/08(水) 12:22:27.34 ID:dHAKT3W3O
No.154~234
榛名が秘書艦となってから数週間。
彼女はポロポロと主張派の黒提督との過去を語り始めた。
そして雷とも段々と打ち解けていく提督。
全てが順調に見えた提督はしかし、鳳翔に上着をパクられ、更に飲み会で大変な事になってしまった。
「これが酒のパワーだ」
鳳翔と足柄に酒を振舞っている場合か?!
頑張れ提督!

788: 2016/06/08(水) 12:22:54.69 ID:dHAKT3W3O
No.235~351
ケツに矢の刺さった男、北提。
どんな状況でも加賀を離そうとしない姿勢に、加賀は苛立ちを隠せない。
そんな加賀を諌める日向と瑞鶴が恋の火花を散らす中、戦いは間近に迫っていた。
「那珂ちゃんのCD買ってね?」
臨時で加わった吹雪達3人組も加えての攻略戦。
ブチギレ加賀さん達一行が戦う相手とは……?

789: 2016/06/08(水) 12:24:10.04 ID:dHAKT3W3O
No.358~443
サセン島の、榛名の悩み。
それは己が役に立っていない事。
思いつめた榛名は、自主訓練を決意した。
勝手な行動とは知りつつも、射撃を開始する榛名。
その破壊衝動を止める者は……。
「ちょっとは修理費について考えて欲しい」
そんなバーサーカーをよそに、雷が、足柄が、鳳翔が、提督とイチャコラしている。
大丈夫なのかサセン島?!

790: 2016/06/08(水) 12:24:39.21 ID:dHAKT3W3O
No.444~490
夜中に突如掛かってきた電話。
その内容は決して芳しい物では無かった。
そしてそのまま、提督の本土行きが決定する。
榛名と不知火もそれに同行する事となり、様々な思いが各々の中で渦巻く中、出発の日が来た。
「何故だ!何故酒が飲めないんだー!」
突如勃発した弁当バトル。
その勝者は……。
あれれ?足柄のお顔が真っ赤だぞ?

791: 2016/06/08(水) 12:26:58.01 ID:dHAKT3W3O
No.496~542
金剛。川内。そして……加賀。
本土行きの船内で物思いに耽る提督。
そんな彼を見て、何やら思いつめた様子の不知火。
ついに、泣き出してしまう彼女に、提督は……
「登場前から苦手って言われてマース?!」
提督が、太郎や南方長官らと再開する傍ら、金剛と榛名も対面していた。
金剛と意気投合する榛名に迫る、影の正体は……?

792: 2016/06/08(水) 12:28:04.69 ID:dHAKT3W3O
No.560~616
本土に到着した北提一行。
北方長官に挨拶に向かったその帰り、出会ったのは川内。
怒る日向を、しかし、加賀は止め、一行は昼食へと向かう。
その場で加賀と不知火は、再会を果たす事になった。
「謝罪よりも……わかるわね?」
金剛は川内を牽制するが、それで止まる川内では無い。
言葉を失う榛名が目にした物は。
提督とは。

793: 2016/06/08(水) 12:28:38.52 ID:dHAKT3W3O
No.617~720
中央鎮守府に各方面軍長官と英雄提督が揃い踏み、これからの方針について激しく議論していた。
主戦派と堅実派の二派に分かれ、紛糾する会議の中で、提督は情報開示を要求していく。
そんな折、翔鶴と太郎の関係が明らかになって……?
「世の中の大体の事は愛と勇気でなんとかなる」
暗躍する川内。
その昏い意思は、災いを呼び込み。
榛名の暗黒が明らかになる。

794: 2016/06/08(水) 12:29:24.83 ID:dHAKT3W3O
No.729~805
北提一行が油断している所を目撃し、嘆息する提督。
北方長官の襲来に気付かぬ彼らを守った提督はしかし、加賀には目もくれなかった。
最近いい所が無い提督。
トボトボ歩くそんな提督に後ろから飛びかかった影は。
「川内、お前と金剛とでは声が違い過ぎるだろ……」
夜戦隊の話を聞いた提督は、それをあっさりと断った。
そんな、飲みすぎてひっくり返る提督の元を訪れる影があって……?
寝ている場合か!?起きろ、提督!

795: 2016/06/08(水) 12:29:51.17 ID:dHAKT3W3O
No.812~894
飲み過ぎで寝坊しただらしない提督。
しかし、彼の提案は会議を通過する。
ほっと一息つき、飛龍と蒼龍の視察を行った彼は、帰りに土砂降りに見舞われた。
この雨が呼び水となったかのように、提案は加賀との再会を果たす。
「まさか……ホ〇なの……?」
如何わしいシーンにも関わらず動じない提督。
その後、川内の乱入や飛龍と一悶着あるが、そんな事はどうでも良い。
艦娘ばかりの中で、ホ〇が許されるのか?!提督!

796: 2016/06/08(水) 12:30:38.95 ID:dHAKT3W3O
No.923~
提督達が宿舎に戻ると、不知火が病んでいた。
そのまま加賀と口論になる不知火。
すれ違う二人の側には川内が居て……
そんな中、瑞鶴はとある覚悟を決めていた。
「ここまで長かったな」
本土を去る、提督。
一体ここから先、どうなるのか。

797: 2016/06/08(水) 12:31:23.96 ID:dHAKT3W3O
◇二節◇
No.1~159
突如爆誕したベルゼブブに蹂躙されるサセン島。
そして流行るクレンザー。
鳳翔と提督がイチャつく傍ら、ダークマター大会の末に全員が息絶える。
「これは食べ物と呼んで良いのか」
暗黒物質を制覇した提督は一人、夜風に当たっていた。
その呟きの真意とは。

798: 2016/06/08(水) 12:31:49.41 ID:dHAKT3W3O
No.164~281
情報開示。
流れる不穏な空気。
魘される鳳翔に、焦る榛名。
そして雷もショックを受けていてーー
「極秘資料だ!特上のな……!」
飲まされて転がる提督の傍ら、工口本探しに夢中になる艦娘達。
しかし提督は起きていた。
彼の我儘とは一体。

799: 2016/06/08(水) 12:32:16.42 ID:dHAKT3W3O
No.282~858

サセン島vs18戦隊、開幕。

800: 2016/06/08(水) 12:32:43.35 ID:dHAKT3W3O
No.859~直近
勝利の余韻に浸るサセン島。
何故か脅迫される足柄。
おねむの榛名、そして甘える鳳翔。
平和に見えるこの島に、だが確かに闇は迫っていた。
「……さて、と」
本土もついに重い腰を上げ、物語は佳境へと向かう。
提督の回想の先に、何があるのか。

838: 2016/08/06(土) 09:59:13.66 ID:RMUHDeXZ0



サセン島


鳳翔「……あら」

雷「あら」

食堂へ向かう途中、二人は廊下でばったりと出会った。

鳳翔「おはようございます」

雷「おはよっ、鳳翔さん。食堂に?」

鳳翔「ええ。朝の支度を」

雷「手伝うわ!」

鳳翔「あら、ありがとうございます」

にっこりと微笑む。

839: 2016/08/06(土) 10:00:17.53 ID:RMUHDeXZ0
近くの窓からは朝日が差し込み、二人を包む光は1日の始まりを告げていた。

雷「……今日も暑くなりそうね」

鳳翔「そうでねぇ……。最近は特に暑いですから」

はぁ、と嫌そうな溜息を吐く雷に、苦笑する鳳翔。

雷「……艤装にクーラーって付かないの?」

鳳翔「それは……どうなんでしょう」

顎に手を当てて思案する。

鳳翔「……効果、ありますか?」

840: 2016/08/06(土) 10:00:45.32 ID:RMUHDeXZ0
雷「あるある。多分ちょっと涼しいわ!」

鳳翔「扇風機で良い気がしますが……」

雷「!……ダメよ!羽根に髪の毛が絡まるわ!」

鳳翔「う……ん?雷さんショートーー」

雷「ロングよ」

鳳翔「……そうですか」

雷「そうよ」

鳳翔「……」

雷「……」

微妙な空気を纏いつつ歩む二人は、もう少しで食堂に到達する。

841: 2016/08/06(土) 10:01:34.21 ID:RMUHDeXZ0



食堂


雷「ーーつまりね?私はロングなのよ」

鳳翔「はあ……」

力説する雷に適当な相槌を打つ鳳翔は、相手が何を言っているのかわからない風だ。

鳳翔「雷さんがロングなら、私は一体……」

雷「ロングよ」

鳳翔「……そうですか」

どうやら全てがロングらしい。
鳳翔は理解を諦めて、曖昧な微笑みを浮かべた。

鳳翔「……あら?」

胸を張る雷から目を離し、食堂の中を見ると。

雷「提督?」

842: 2016/08/06(土) 10:02:18.12 ID:RMUHDeXZ0
提督が机にうつ伏せになっていた。
その前には冷えた食べさしの料理。

鳳翔「朝ご飯……という感じではなさそうですね」

雷「ええ……」

近寄る。

鳳翔「最近お疲れのようですからーー」

そっとしておきましょう。と言いかけて。

提督「ん……」

体をビクリと震わせて、提督がうつ伏せのまま、顔だけ起こした。

提督「……」

鳳翔「あら。おはようございますーー」

843: 2016/08/06(土) 10:03:24.60 ID:RMUHDeXZ0
提督「……?!」

しばらくそのままボーッとしていたが、途端にガバッと立ち上がって。
その突然の起立に、座っていた椅子がひっくり返った。

ガタァン!という音が、静かな空間に響きわたる。

鳳翔「……提督?」

音に驚きつつ、怪訝な顔をして尋ねる鳳翔。

提督「ああ……鳳翔か。いや……すまんすまん」

提督は鳳翔に向き直ると、軽く謝罪した。

提督「妙な夢を見ていたようだ。
……俺とした事が、ここで寝るとは……」

自分に苦笑して、肩をすくめてみせる。
が。
鳳翔と雷は神妙な面持ちのままだ。

844: 2016/08/06(土) 10:03:58.98 ID:RMUHDeXZ0
提督「……?どうした?」

流石に違和感を覚えて、尋ねる。

鳳翔「……いえ……その……」

雷「……提督、泣いてるの?」

提督「……は?」

慌てて己の頬に触れると。
濡れる、指先。
提督は動転した。

提督(なんだ……これは……)

激しい目眩が提督を襲った。

提督(……そうか)

強烈に歪む足元に、フラつく。

提督(……俺はあの夢を……)

厳しい表情で、クソッ……と自分に毒付いた。

845: 2016/08/06(土) 10:04:32.70 ID:RMUHDeXZ0
提督「……すまん」

雷「……大丈夫?」

提督「……問題無い」

鳳翔「な、何か……」

提督「問題無いと言っている」

提督は不快感を覚えた。
それは己に対する物だ。
八つ当たりに自己嫌悪し、居た堪れなくなった提督はその場を去ろうとする。

鳳翔「て、提督」

その行く手を鳳翔が阻んで。
心配そうな表情で此方を覗き込む。

846: 2016/08/06(土) 10:05:03.19 ID:RMUHDeXZ0
提督「……どいてくれ」

鳳翔「し、しかしーー」

尚も不安そうな鳳翔。
誰かに、重なる。

提督「ーー鳳翔」

鳳翔「……っ」

いつもより数段冷たい声音。
確かな苛立ちが感じられる。
鳳翔はそれに少し身を震わせて、それから項垂れた。

鳳翔「……は、い……」

提督「……」

その姿に言葉をかける事も無く。
提督はその場を足早に去った。

己に嫌悪しながら。

847: 2016/08/06(土) 10:07:21.84 ID:RMUHDeXZ0



提督の去った後。


鳳翔「……」

雷「……急に不機嫌になったわねー……」

地雷踏んじゃったかしら、と独りごちる。
答えるものは無い。

鳳翔「……」

雷「……鳳翔さん、元気出して。
あの人も今、きっと大変なのよ」

鳳翔「……そう、ですね」

俯いたまま答える。

848: 2016/08/06(土) 10:07:48.12 ID:RMUHDeXZ0
雷「……弱みを見せたく無いのよ。
そういう手合いは……いるわ。……沢山ね」

鳳翔「……それは、わかります。けど……」

いじけたように鳳翔は雷を見て。

鳳翔「提督も……少しは頼って下さらないかしら……って……」

雷「……そりゃ、ねぇ」

あたしもそう思ってるわ。
フン、と鼻を鳴らしながら雷は答える。

鳳翔「……」

俯いたまま。
溜息を吐いて視線を横にずらすと。
床を照らす朝日が、少し淀んで見えた。

849: 2016/08/06(土) 10:08:38.31 ID:RMUHDeXZ0






足柄「……提督が?」

鳳翔「ええ……」

足柄「ふーん……」

哨戒から戻り、昼ご飯にありつく足柄。
その傍らに、頭を軽く抱える鳳翔が居た。

鳳翔「怒らせましたかね……」

事の顛末を報告していたのだ。

足柄「大丈夫よ、大丈夫。そんな事でどうこうする人じゃねーわよ」

足柄は努めて明るく返す。

鳳翔「だと良いのですが……」

だが、溜息。

鳳翔「……難しい物ですね」

850: 2016/08/06(土) 10:09:11.60 ID:RMUHDeXZ0
足柄(……夜はそんな風に見えなかったんだけど……ふむ)

繰り返し嘆息する鳳翔を尻目に、足柄は飯を掻き込む。

足柄「……気にし過ぎないで、大丈夫よ」

あたしもそーだったし。と付け足して、ぽんぽんと鳳翔の肩を叩いた。

鳳翔「うう……提督、お元気が無さそうでしたから……と思って……」

足柄「……」

鳳翔は相当沈んでいる。
どうしたものか、と足柄が思案していると。

851: 2016/08/06(土) 10:09:58.99 ID:RMUHDeXZ0
それまで黙っていた雷が突然声を上げた。

雷「それよ!!」

鳳翔「……?」

足柄「……お?」

突然の大声に驚く二人。

雷「提督は元気が無いの……!だったら……」

足柄「……だったら……?」

雷「する事は一つじゃない……!」

握り拳を頭上に掲げる雷。

足柄「……全然意味わかんないわ……」

雷「なんでよ!!」

身を乗り出し、パン!と控えめに机を叩きながら続ける。

雷「料理でしょ?!」

852: 2016/08/06(土) 10:10:48.02 ID:RMUHDeXZ0
目を輝かせる雷の発言からややあって。

足柄「……ああ」

鳳翔「……成る程」

二人もコクリと頷いた。

雷「……な、何よそのやる気の無さそうな返事は」

足柄「……だってウチは……ねぇ」

鳳翔「特別に作った料理に、あまり良い記憶が……」

足柄「……主に誰か二人の所為でね……」

思い出すだけで胃が痛くなるわ……と少し青い顔の足柄。

鳳翔「……ま、まぁでも、あの二人に知られなければ……良いアイデアーー」

鳳翔が人差し指を唇に当てながらボソッと告げる。
その時。

何処か近くで。

ガサッと物音がした。

853: 2016/08/06(土) 10:11:25.78 ID:RMUHDeXZ0
足柄「……?!何奴!!」

しかし。
あたりは既に静かで。

雷「……聞か……れた?……誰に……?」

足柄「隼鷹……は哨戒……?
だとしたら……マズイわよ……」

3人の頬を嫌な汗が伝う。

鳳翔「……いけませんね」

雷「……そうね」

ふー、と一旦息を落ち着けて。

雷「……良い?」

雷は足柄と鳳翔、二人の顔を覗き込むようにして告げる。

雷「これは最重要任務よ」

コクリ、と頷く二人。

雷「……不知火と、榛名をーー確保せよ」

854: 2016/08/06(土) 10:12:07.37 ID:RMUHDeXZ0



厨房


鳳翔「何か動いたような」

辺りを見回していた鳳翔が、厨房に影を見出した。

鳳翔「あれは……?!……!!不知火さぁぁぁぁん!」

不知火「……チッ!バレましたか……!」

厨房の中で何やら怪しい料理をしていた不知火。

鳳翔「足柄さん!こっちです……!」

少し離れた場所から、了解よー!との応答が聞こえる。

不知火「クッ……囲まれる前に脱出しなければ……」

焦る不知火。

855: 2016/08/06(土) 10:12:40.87 ID:RMUHDeXZ0
鳳翔「不知火さん!あなたという人は……!出禁だと何度言えば……!」

不知火「ちゅ、厨房は共有財産です!料理する権利を!」

鳳翔「あなたの作ってるものは料理じゃないでしょう……!」

足柄「そう!産業廃棄物はお腹いっぱいなのよ……!」

足柄も到着し、ジリジリと追い詰められる不知火。

不知火「な、なんて失礼な人達ですか……!人の料理を産業廃棄物だなんて……!」

足柄「毒物だと言わないだけ優しさを感じて欲しいわね……!」

不知火「今言いましたけどねっ……!」

856: 2016/08/06(土) 10:13:19.95 ID:RMUHDeXZ0
不毛な言い合いをしている間にも、ぐんぐん追い込まれていく不知火。

不知火「くううう……」

鳳翔「観念なさい……」

足柄「もうあなたは終わりよー!終わりなのよー!」

ぐわーっと不知火に迫る足柄。

鳳翔「ちょっと足柄さん……追い詰め過ぎたら何をされるかーー」

鳳翔が足柄の方を向いた、その一瞬の隙に。

857: 2016/08/06(土) 10:14:23.93 ID:RMUHDeXZ0
不知火「……今だっ!」

不知火の目が怪しく煌めく。

足柄「……?!」

仕掛けてくる。
直感が告げた。

足柄は反射的に重心を下げる。
膝のスプリングは準備万端だ。
全周へいつでも飛べるだろう。

だが。
不知火の動きは足柄の予想の外を行った。

不知火「ふっ……喰らえ……!
栄養満点スープ!」

859: 2016/08/06(土) 10:29:37.06 ID:RMUHDeXZ0
オタマで抱えた鍋の中身を鳳翔と足柄にぶち撒ける不知火。

鳳翔「えい……よう……?……ひゃぁぁぁあ?!」

慌てて避ける鳳翔。
そして床に落ち、ジュッと音を立てる緑色の液体。

足柄「……栄養満点スープじゃないわよこれ?!床溶けてるんだけど?!」

予想外の飛び道具に焦りつつも、ツッコミはしっかりこなす足柄。

不知火「ふっ。
こいつは何でもスープになる魔法の液体なんですよ……!」

足柄「……またの名を?」

不知火「硫酸」

足柄「頭おかしいわこの子……!」

860: 2016/08/06(土) 10:33:52.91 ID:RMUHDeXZ0
鳳翔「その理解は絶対に何かが間違ってます……!」

不知火「ええい、うるさい!
とりあえず栄養のありそうなものを溶かしまくるのです……!」

足柄「や、やっぱりこの子本物の馬鹿だわ……!」

ガルル、と威嚇する不知火に恐れを抱く足柄。

足柄「この私をビビらせるなんて……やるじゃない……」

鳳翔「やってほしくなかったですけどね……?!」

ジリジリと間合いを保つ三人。

861: 2016/08/06(土) 10:34:37.47 ID:RMUHDeXZ0
足柄「……ちなみになにを溶かしたの?」

不知火「リン酸とか鉄とか……ですね」

鳳翔「ひっ……?!と、とかって何ですか……?」

不知火「……チタンとか……多分溶けてますね……あとプラスチッ……なんでもないです」

鳳翔「……」

足柄「……」

不知火「……」

鳳翔「……チタンとプラスチックって鍋ーー」

862: 2016/08/06(土) 10:35:15.20 ID:RMUHDeXZ0
不知火「……隙あり……!
とあぁぁあ……!」

再びオタマを振るう不知火。

鳳翔・足柄「「いやぁぁぁあ?!」」

慌てて飛び退く二人。

その間隙を、不知火はネズミのように駆け抜け、見事包囲を破った。

足柄「あっ?!」

鳳翔「しまった……!」

不知火「よしっ……失礼します!」

脱兎の如く走る不知火。

足柄「待てえええ!……いいえ、待ってえええ!お願いだから待って……!」

全速力で追い上げながら、最早懇願する足柄と。

鳳翔「お仕置きが必要ですね……」

目が据わり、怖い顔をしたまま走る鳳翔。

そんな3人の姿を見守る影があった。

863: 2016/08/06(土) 10:36:55.42 ID:RMUHDeXZ0



榛名「……ふぅ、三人は居なくなりましたね……」

鳳翔と足柄が不知火と争っていた時、密かに影に潜んでいた榛名。

誰も居なくなり、厨房には今彼女しかいない。

榛名「……これは、チャンスでは……」

むむ、と思案する。
そしてニヤリと。

榛名「私も、料理を!」

864: 2016/08/06(土) 10:37:28.22 ID:RMUHDeXZ0



雷(気が付いたら……)

そっと影から厨房を覗く雷。

雷(榛名さんが料理をしてる……)

緊張からゴクリ、と唾を飲む。
頬に一筋の汗を流す雷はしかし、榛名を止めなかった。

何故ならば。

雷(……まともに料理をしているように、見える……!)

ご機嫌な鼻唄交じりに、視線の先の榛名は行程を進めていた。

雷(材料は……)

白い粉2種類と卵と牛乳、バター。

雷(……ケーキっぽいわね!)

問題は。

雷(……あの白い粉……何あれ……)

小麦粉と砂糖ならば問題無いのだが。
果たして。

865: 2016/08/06(土) 11:17:27.59 ID:RMUHDeXZ0
雷(……)

ぐぐーっと首を伸ばして、白い粉の包装に記された文字を読み取ろうと試みる。

雷(……もうちょい……)

これでもか、というほど伸ばした時。

雷(……あーー)

パッケージの一部だけが見えーー

雷(ーーおかしいわね)

セメ、と言う二文字が見えた。
残りは影になって見えない。

雷(セメ……何?)

セメ○○なんて名前の小麦粉を雷は知らない。

866: 2016/08/06(土) 11:44:34.77 ID:RMUHDeXZ0
雷(……)

嫌な予感がする。

否。

嫌な予感しかしない。

雷「……は、榛名さーん……」

声をかけた。

榛名「……?!」

雷「い、一体何を作ってるのかしらー……?」

榛名「……」

榛名はダラダラと汗をかいている。
それもそのはず。

雷(この子も厨房出禁なんだから……!)

867: 2016/08/06(土) 11:45:10.15 ID:RMUHDeXZ0
榛名「……け、ケーキですよ……?」

雷「ほ、本当にそうなのかしら……?」

榛名「ほ、本当ですから……!」

絶対に違うと思う雷。

雷「……ええい!見せなさい!
そもそもあなたは厨房出禁なんだから……」

榛名「くっ……折角良い感じに出来上がってるんですから……!
ここは譲れません……!」

雷「なんで?!」

榛名「止められる訳には行かないのです……!」

雷「やっぱり止められるような物なのね?!」

榛名「……さらばっ」

雷「あー!」

ボウルやら何やらを持って、雷を飛び越え逃げる榛名。

雷「ちょ、ちょっと待ちなさーい!」

雷も慌ててその後を追う。

868: 2016/08/06(土) 11:45:45.31 ID:RMUHDeXZ0



雷「足はっやいのよ……あの子……!」

ぜーぜーと息を切らしながら辺りを見回す雷は、完全に榛名を見失っていた。

雷(マズイわね……)

このままでは得体の知れない物がまた出来上がってしまう。

どうしたものか、と歩きながら思案していたところ。

足柄「……!雷ちゃん」

雷「……あら!」

鳳翔と足柄に出会った。

鳳翔「……どうしてここに……」

疲れ切った顔で訊く鳳翔。

869: 2016/08/06(土) 11:46:11.01 ID:RMUHDeXZ0
雷「……いやー……その、ね……。
キッチンにね……榛名さんが居て……」

足柄「……」

鳳翔「……」

雷「……」

……。

全てを察したが故の、深い沈黙。

足柄「……作戦を練りましょう……」

鳳翔「……手遅れになる前に……」

雷「……ええ……」

870: 2016/08/06(土) 11:46:52.45 ID:RMUHDeXZ0



鳳翔は考えながら走っていた。

鳳翔(不知火さんも榛名さんも……料理に必要な道具は所持している……)

ならば、彼奴らの考える事は何か。
行く所はどこか。

簡単に答えは出た。

鳳翔「……あそこですね」

鳳翔の目が細められる。

足柄の提案は簡単だった。

待ち伏せだ。
誰かが榛名と不知火を追い込み、待ち伏せていた仲間が二人を狩る。

獲物を追い込むのは、鳳翔と雷。
待ち伏せ役は足柄に決めて。

問題は、獲物の居場所だけだった。

鳳翔はそこへと急ぐ。

今度はお仕置きの内容を考えながら。

871: 2016/08/06(土) 11:47:19.02 ID:RMUHDeXZ0


不知火「ククク……もうすぐ究極のスープの完成です……」

不気味な笑みを浮かべているのは、右手にバーナーを持った不知火。
その口から吹き出す炎は、目の前の鍋を焼いている。

榛名「フフフ……こちらも出来上がりそうですよ……」

対する榛名は焼き入れ用の炉の前で邪悪な微笑みを浮かべていた。

そう。
ここは工廠。

榛名と不知火は炎を求めてここへ来たのだ。

875: 2016/08/06(土) 13:03:46.27 ID:RMUHDeXZ0
不知火「クク……クフフ……
スープ完成の暁には是非提督に……」

非常に頭の悪そうな笑い声と共に呟く不知火に、答える声があった。

鳳翔「……その前に、ご自分で試飲なさってみては?」

不知火「?!」

驚いて振り返ると、そこには非常に嫌そうな顔をした鳳翔。

鳳翔「ここまでです。堪忍しなさい」

榛名「くっ……」

不知火「……」

狼狽える榛名に無言で鍋を構える不知火。

そして。

不知火「……煙幕」

中身を足元にばら撒いた。

876: 2016/08/06(土) 13:06:50.66 ID:RMUHDeXZ0
鳳翔「……ちょーー」

煙幕になる食材とは一体何なのかーー。

そんなツッコミを入れる余裕すらなく。
ジュワーっと嫌な音がして、地面が溶ける。

と同時に体に悪そうな煙が大量に上がった。
不知火と榛名を鳳翔の視界から覆い隠す程の。

鳳翔「……」

その光景を。
ハァ、と溜息を吐いて、鳳翔は見ていた。

鳳翔(ここまでは予想済みです)

腰に手を当てて考える。

鳳翔(次、何処に行くかーー)

恐らく、寮。
ないし、船渠。

雷は寮を張ると言っていた。

ならば。
自分は取り敢えず船渠だ。

思考が終わる頃、ちょうど霧も晴れ始めた。
やはり、影は無い。
そして、空いている背後の扉。

鳳翔「……さて、行きますか」

もう一度溜息を吐いて、鳳翔は歩みだした。

877: 2016/08/06(土) 13:07:48.66 ID:RMUHDeXZ0



艦娘寮


不知火「ここまで逃げれば大丈夫でしょう……」

榛名「は、はいぃ……」

肩で息をする二人は、寮の自室の前まで来ていた。

不知火「料理もほぼ完了していますし……あとの仕上げは自分の部屋で……できます!」

榛名「ですね!」

ふふっ、と不敵に微笑み合う二人。

不知火「しかし……鳳翔さんもしつこかったですね……」

なんとか撒けましたが、と溜息。

榛名「ま、まぁ……私達出禁食らってますし……」

不知火「その話はやめましょう」

榛名「えぇー……」

878: 2016/08/06(土) 13:08:23.80 ID:RMUHDeXZ0
気の抜けた会話をしつつ、自分の部屋のドアノブに手を掛けた不知火。

不知火「ま、この料理を提督にお届けしたら……」

榛名「したら……?」

不知火「私は素早く消えます」

榛名「鳳翔さんに消されるの間違いなのでは……」

不知火「……」

榛名「……」

879: 2016/08/06(土) 13:08:52.53 ID:RMUHDeXZ0
不知火「……と、とにかく!今は部屋の中に隠れましょう!」

榛名「で、ですね!」

中から鍵を閉めておけば大丈夫ですし、と呟きつつ、不知火は自分の部屋のドアを開けた。

雷「あ」

不知火「あ」

中に雷が居た。

不知火「……」

バタン!と扉を閉める。

ふぅ、と深呼吸。

榛名「……どうしたんですか?」

怪訝な表情で榛名が聞く。

不知火「……いえ。少し幻覚を見ただけです」

榛名「えぇー……」

880: 2016/08/06(土) 13:09:42.22 ID:RMUHDeXZ0
ふぅ、と息を整えて。

不知火はそっとドアを開いた。

不知火「……」

チラリと中を伺う。

不知火「……誰もいませんね」

榛名「こ、怖い事を言わないで下さいよ……」

不知火「アハハ、すみません。どうやら本当に幻覚を見ていたみたいです」

榛名「一体何の幻覚ですか……」

881: 2016/08/06(土) 13:10:15.46 ID:RMUHDeXZ0
不知火「ちょっと雷さんが中に居たような……」

榛名「……まさか」

雷「……あなた、疲れてるんじゃない?」

不知火「……確かに、ここまで色々苦難の連続でしたからね……」

榛名「……そうですけど……」

雷「……幻覚を見るのはどうかと思うわ……」

榛名「……そうですよねー……」

不知火「……ま、兎に角!ここまで来たんですから」

雷「そうね」

不知火「ら長い旅も終わりを迎えようとーーえ?」

榛名「……ん?」

雷「ここでーー」

雷の両手がガッチリ不知火と榛名を掴む。

雷「ーー終わりだわ」

ニヤリ、と笑って。

882: 2016/08/06(土) 13:39:30.78 ID:RMUHDeXZ0
不知火「チィィィィ!いつの間に……」

榛名「くっ……」

雷「さ、観念しなさい……!」

榛名「と、と言うか!今自然な感じで不知火さんの部屋から出て来ませんでした?!」

雷「可哀想に……幻覚を見ているのね……」

不知火「いや、間違い無く中にいましたよね。
最初ドア開けた時見えましたよ」

雷「可哀想に……幻覚を見ているのね……」

榛名「ひええ……この人これで押し通すつもりですよ……」

883: 2016/08/06(土) 13:40:19.07 ID:RMUHDeXZ0
雷「なんなのよ、もう!
二回目ドア開けた時私いなかったでしょう!」

不知火「中に居なかったのなら、何故ドアを二回開けた事をご存知で……?」

雷「……」

榛名「と言うか……部屋内に居なかったと言うのなら、そもそもどこに居たんですか……」

雷「……」

沈黙。

884: 2016/08/06(土) 13:40:45.22 ID:RMUHDeXZ0
雷「……出現したのよ……」

不知火「……はい?」

榛名「……雷さんが……?」

雷「そう……」

不知火「どこから……」

雷「……ほら、床とかそこらへんから……出現……」

不知火「……」

雷「……」

榛名「……」

雷「……ごめん。やっぱ今の無しで……」

不知火「……はい……」

再び沈黙。

885: 2016/08/06(土) 13:41:20.84 ID:RMUHDeXZ0
雷「にゃー!煩いわねぇ!あなた達は黙ってお仕置きされたらいいのよ!」

榛名「えぇー……」

雷「問答無用!あなた達は幻覚を見てたの!いいわね?!」

不知火「……どうせドア開いた瞬間、天井にでも張り付いてたくせに……」

雷「ぎくぅ」

雷の動きが止まる。

榛名「まさかそんなーー」

雷「き、気づかれてたとは……」

榛名「ーーはい?本当ですか?」

不知火「普通にドン引きなんですけど」

雷「……」

プルプルと震え始める雷。

886: 2016/08/06(土) 13:41:57.76 ID:RMUHDeXZ0
榛名「手足に吸盤でも付いてるんですかね」

不知火「いえ、そんな事より何故私の部屋に……」

榛名「確かにそっちの方が大きな問題ですね」

不知火「全くです」

ジト目で雷を見つつ、二人は喋る。

不知火「これからはスパイダー雷とでも呼びますか」

榛名「フロッグ雷とかどうですかね」

不知火「それもアリですね。ーー」

雷「う……」

不知火「ーーう?」

雷「うるさいうるさいうるさーい!」

うがー!と。
威嚇するように両手を上に挙げる雷。

そう。
両手を挙げた。

掴んでいた不知火と榛名を離して。

その一瞬を逃す不知火達では無く。

不知火「ぬかりましたねっ」

雷「……?!しまっーー」

榛名「離脱!」

雷「ま、待ちなさーい!」

不知火「お断りです!」

不知火と榛名は駆け出した。

887: 2016/08/06(土) 13:42:29.34 ID:RMUHDeXZ0
雷「逃がさな……きゃぁぁあ?!」

後を追う雷の前にばら撒かれたのは、例のスープ。
圧倒的異臭と煙により、雷の嗅覚と視覚が封じられた。

不知火「さらばです!」

どこか遠くから不知火が雷に呼びかけた。

雷「……も……もおおおおー!」

標的を逃した。
ように見える雷は。
わざと悔しそうな声を出した。
それも、聞こえるように。

雷「……行ったかしら」

暫くして、呟く。

雷「……さて。鳳翔さんは船渠へ向かった……のよね」

思案する。

雷「あの二人は足柄さんが捉えてくれるだろうし、鳳翔さんも居ない」

と言うことは。

雷「……もう少し、調べる事ができそうね」

888: 2016/08/06(土) 13:42:56.13 ID:RMUHDeXZ0
一体。
何を調べるのか。

さっきは危なかったわ~、と呟きつつ、不知火の部屋に戻る雷。

その顔に、周囲を安堵させるような笑みは無く。

細められた双眸から覗く視線は、あまりに鋭い。

889: 2016/08/06(土) 13:44:04.56 ID:RMUHDeXZ0
ここまで

何処かの国がEU離脱して下さったお陰で大変な目にあってました。
また書きます。
次スレで終わるかな……

引用: 【艦これ】加賀「……さて、と」