236: 2016/03/12(土) 22:15:12.63 ID:xv9izA/0o

237: 2016/03/12(土) 22:15:38.90 ID:xv9izA/0o


陸奥 「提督、こっちこっち」

提督 「……そのボートに乗ればいいのか? 」

陸奥 「ええ♪ モーターボートだと音がうるさくて見つかっちゃうからね。わたしがこっそり引っ張るから。……それとも、提督を抱っこして行きましょうか? (くすくす)」

提督 「……是非ボートでお願いしたい」

陸奥 「むー。なーんか不満だわ、その反応」


約束通り、こっそりと猫島に向けて出発!

提督と荷物を載せたボートをわたしが引っ張る……ちょっとシュールね!




238: 2016/03/12(土) 22:16:09.79 ID:xv9izA/0o


提督 「……随分軽々と引っ張るんだな。それに思ったより速い」

陸奥 「こう見えても8万馬力よ。ボートなんて楽勝よ~♪ 」

提督 「しかし……海に出るのは着任以来だ。良い風だ……懐かしいな」

陸奥 「提督は深海棲艦が出てくる前も海軍だったんでしょ? 」

提督 「ああ、軍とはちょっと違ったけどな。軍艦乗りだったよ。ああ、やはり海はいいな……この感覚、忘れていたよ」

陸奥 「うふふ、提督も一緒に出撃できたらいいのにね♪ 」

提督 「そうだなぁ……艦漢とかになれないかな? 」

陸奥 「その響きはやだわぁ……あははは」

提督 「確かに……汗臭そうだ(苦笑) 」




239: 2016/03/12(土) 22:16:49.39 ID:xv9izA/0o


陸奥 「はい到着。この小さな小さな浜からかろうじて上陸できるの」

提督 「ほかの場所は本当に断崖絶壁だな。しかし陸奥はこの島に随分と詳しいな」

陸奥 「覚えてない? この島の灯台が不調になったとき、明石とわたしで修理に来たのよ」

提督 「ああ、そういえばそんなこともあったな」

陸奥 「最初は明石に頼んだら、一人では怖いですぅぅって引き返して来ちゃったのよね」

提督 「ああ、そうだった。なんか出そうでって震えてたな……。ふふ、艦娘なんて不思議な存在が何を言ってるんだかって思ったな」

陸奥 「あー、艦娘だって女の子ですもの、怖いものは怖いのよ。そんなこと言ってたって明石に告げ口しちゃおうかしら」

提督 「怒られるから勘弁してくれ(苦笑) 」

陸奥 「さて、ここから結構歩くわよ。しかも急な登りだからね。運動不足の提督には大変よ。覚悟してね」

提督 「うぐ、確かにひどい道だな……。ま、たまには良いだろう」




240: 2016/03/12(土) 22:17:24.68 ID:xv9izA/0o


――――― 猫島 灯台の近く


提督 「ふう……本当にひどい道だったな……誰も来ないから当然か……はぁはぁ」

陸奥 「お疲れ様、でもほら、もう到着よ」

提督 「おお、灯台の周りはひらけた草原になってるのか」

陸奥 「ええ、素敵な場所でしょ♪ 」

提督 「ああ。断崖絶壁に囲まれた島だからな。こんな場所がある風には見えなかった」

陸奥 「ええ、ここは外からは全く見えない場所だものね。さ、ちょっとまってね」


ばさっ


陸奥 「はい、どうぞ座って」

提督 「ふう、休憩はありがたい。しかし敷物を持ってきているとは準備がいいな」

陸奥 「休憩じゃないわ。ここが目的地よ」




241: 2016/03/12(土) 22:18:22.45 ID:xv9izA/0o


提督 「ここに、陸奥の悩みに繋がるものがあるのか……? 」

陸奥 「はいはい、ちゃんとお話するから、まずは飲み物ね。はい、冷たいお茶」

提督 「あ、ああ、ありがとう(ごくごく)」

陸奥 「それから、はい、お昼にはまだはやいけど……。お弁当よ」

提督 「なにか大きな荷物を持っていると思ったら、弁当だったのか……しかも随分と多いな」

陸奥 「えへへ、ちょっと浮かれて作りすぎちゃったの。好きなだけ食べてね」

提督 「……これが本当に悩みの解決に繋がるのか……? 」

陸奥 「もちろんよ。おにぎり、こっちが昆布でこっちが梅干しよ。どっちが良い? 本当はシャケが欲しかったんだけど、球磨に全部食べられちゃった後だったのよね」

提督 「ああ……じゃあ梅干しで…… 」

陸奥 「はいどーぞ。じゃあわたしは昆布にしよっと。あと、こっちは唐揚げね。爪楊枝で食べてね」

提督 「………… 」




242: 2016/03/12(土) 22:19:06.36 ID:xv9izA/0o


陸奥 「ふー、ごちそうさま」

提督 「ごちそうさま。美味しかったよ。陸奥は料理がうまいな」

陸奥 「うふふ、毎日長門のご飯を作ってるからね。鍛えられてるわ♪ 」

提督 「ふふ……そうか、いかにもって感じだな」

陸奥 「はい、デザートはマンゴーよ。甘いのよ~ 」

提督 「あ、ああ、じゃあもらおうか……」


ヒュ~~~~ ソヨソヨ


陸奥 「う~~ん、いい風ね! 」

提督 「ああ、ここは良い海風が吹くな」


ピーーヨ ピーーヨ


陸奥 「南国っぽい鳥もいるわねー。オウムかしら? 」

提督 「さすがに鎮守府までは入ってこないが、この辺にはいるんだなぁ 」




243: 2016/03/12(土) 22:19:34.23 ID:xv9izA/0o


提督 「さて、なんかのんびりしてしまったが、そろそろ陸奥の悩みについて教えてくれないか? 」

陸奥 「もー、せっかちねぇ。でもそうね、そろそろはじめましょう。手伝ってくれるんでしょ? 」

提督 「ああ、俺にできることならだがな。何をすればいい? 」

陸奥 「じゃあ、悪いんだけど仰向けに横になって、ここに頭を乗せて」


ポンポン


提督 「……………………は? 」

陸奥 「もー、ちゃんと聞いてよ」

提督 「いや、聞こえていたが……え? 」

陸奥 「もー、じれったいわね。それっ! 」

提督 「な! う、うわぁ」

陸奥 「ふふん、パワーでわたしに敵うわけ無いじゃない♪ おとなしく横になりなさーい! 」




244: 2016/03/12(土) 22:20:14.20 ID:xv9izA/0o


提督 「な、なぁ陸奥……これって膝枕な気がするんだが……」

陸奥 「? そうよ」

提督 「そうよって……(すごい眺めだな) 」

陸奥 「いいからいいから。ほら、往生際が悪いわよ。諦めてリラックスして♪ 」

提督 「はぁ……分かった分かった……」

陸奥 「♪~~ ポン ポン」

提督 「……なんだろう、そうやってポンポンってされるのは、何故か懐かしい感じがするな」

陸奥 「子どもを寝かしつけるときに自然とこうするのよ。うふふ、ちょっと大きな子どもだけどね」

提督 「子ども……。はぁ……陸奥がこんなに強引だとは……してやられたよ」

陸奥 「だって、ちょっと強引にでもしないと、提督は息抜きも何もしてくれないじゃない。言っても聞かない子には実力行使よ♪ 」

提督 「わかったわかった、降参だ。……もしかして陸奥の悩みって、俺が休まないことだったのか? 」

陸奥 「あっきれた~! ほんとに分かってなかったのね」




245: 2016/03/12(土) 22:20:51.77 ID:xv9izA/0o


提督 「そうか……ははは、考えすぎだったわけか……でもそれなら良かった」


あら、提督から力が抜けたみたい。よっぽど深刻に考えてたのね。


陸奥 「なあに、どんな悩みだと思ってたの? 」

提督 「いや……長門がな、自分は前世で沈んだ時の記憶でしばらく苦しんだから陸奥もそうなんじゃないか? と言っていてな」

陸奥 「……だから長門もあんなに心配していたのね。悪いことしちゃったわ」

提督 「艦娘のみんなは大なり小なり、前世の記憶で苦しんでいると思う。まして陸奥は辛い記憶を持っているはずだ。だから俺もてっきりそれが原因だと思ったんだ」

陸奥 「あら、わたしは長門みたいにひどい最後って訳じゃなかったし、そんなに辛い記憶じゃないわ」

提督 「本当にそうか……? 」

陸奥 「えっ……? 」




246: 2016/03/12(土) 22:22:12.42 ID:xv9izA/0o


提督 「艦娘の記憶は、艦としてのものだけじゃない。艦長をはじめ乗っていたみんなの想いなんかも受け継いでるだろ」

陸奥 「……そうよ。良く知っているのね」

提督 「君たちを見ていれば分かるさ。そういう部分で言えば、陸奥の前世は随分と辛いものだと思うし……海軍上層部を……俺達を恨んでいてもおかしくはないはずだ。俺はてっきり、そういう記憶が強く出てきたのかと思っていた」

陸奥 「それで最近、なんだか遠慮がちだったのね……。まったく、困った堅物さんね」


ポン ポン


陸奥 「でもそれは考えすぎよ。改めて言うけど、わたしの前世はそんなに辛い記憶じゃないわ」

提督 「…… 」


うん、これは本当。思い出してみると……嬉しいことも悲しいことも色々。でも決して嫌な記憶じゃない……




247: 2016/03/12(土) 22:23:17.96 ID:xv9izA/0o


陸奥 「長門とわたしはビッグセブン、世界最高の戦艦として建造されて……国民にも大々的に宣伝されたのよ。長門と陸奥は日本の誇りなんて言われたりね。わたしの進水式なんて何万人もの人が見に来てくれて……。那珂ちゃんじゃないけど、本当にアイドルみたいな存在だったのよ」

提督 「そうらしいな……男の子たちの憧れのお姉さんだったわけだ」

陸奥 「うふふ、そうよ♪ だからね、乗組員のみんなも、わたしの乗組員になったことをすごく誇りにしてくれていてね。いつも大切にピカピカに磨いてくれていたわ」

提督 「そうだな……自分の船を大切にしない船乗りなどいない。まして最高の戦艦ともなればな」

陸奥 「ええ♪ だからわたしはみんなが大好きだったわ」

提督 「…… 」

陸奥 「でも、時代の変化って凄いわよね。いざ大戦が始まると戦艦の出番なんてまるでなし。でもやっと、いざ出撃!となったらね……」

提督 「いや、辛いことは話さなくて良い」

陸奥 「大丈夫よ。そう、やっと出撃で南方に行ったと思ったら……。速度不足で実戦参加出来ず、補給艦扱いよ。まぁしょうが無いのよ、時代ですもの」

提督 「……」

陸奥 「でもね……わたしはともかく乗組員のみんながね……。帰り道、みんな集まっては男泣きに泣いていてね……。自分のことじゃない、わたしが活躍出来ないことをみんなで泣いてくれていてね」

提督 「ああ……分かるよ……自分の船を愛するってそういうことだ…… 」




248: 2016/03/12(土) 22:23:52.27 ID:xv9izA/0o


陸奥 「結局、戦うこと無く内地に戻って……落胆のなか再び訓練の日々を送っていたら……ある日突然事故で轟沈……がっかりな最後よねぇ」

提督 「……」

陸奥 「しかも、沈んだことを秘匿するために、生き残った乗組員のみんなは生きて帰れない最前線に送り込まれて……」

提督 「やっぱり……そのへんも知っていたか」

陸奥 「記憶には無いけどね。やっぱりわたしの大事な人達ですもの、その後が気になって調べたわ」

提督 「そうか……」

陸奥 「ふふ、これにてビックセブンたる戦艦陸奥のお話はおしまい。竜頭蛇尾という感じのちょっと残念なお話よね」

提督 「……すまない……俺たち軍人が……人間が……身勝手で……お前たちを……」


そうか……この人が感じている責任はこういうことだったのね……




249: 2016/03/12(土) 22:24:33.55 ID:xv9izA/0o


陸奥 「こら」


ギューー


提督 「ふごっ……鼻を……イテテ…… 」

陸奥 「何をしょんぼりしてるの。わたしの素敵な前世の話なのにっ」

提督 「……」

陸奥 「確かに最初から最後まで栄光に包まれて、なんて話じゃないわ。でもそんなの当たり前よ。わたしたちは軍艦なんですもの。戦ったり傷ついたり古くなったり事故をおこしたり……当然じゃない」

提督 「それは…… 」

陸奥 「わたしはね。大勢の人に愛されて、存在するだけで喜ばれて、いつもピカピカにしてもらって……そういう日々がとても楽しかったわ。今思い出してもとても嬉しくなる。うふふ……わたしがお化粧やおしゃれが好きなのは、そのへんの記憶が理由なのかもね」

提督 「……」

陸奥 「そりゃね、事故とかを思い出すとやっぱり嫌だし、今でも第三砲塔とか火遊びとかには敏感だけど……。それに、大切な家族だった乗組員の最後を思うとね……」

提督 「……」

陸奥 「でもね。それはもうずっと昔のこと。もう過ぎたことよ。それにね、それ以上に…… 」

提督 「それ以上に……? 」




250: 2016/03/12(土) 22:25:17.59 ID:xv9izA/0o


陸奥 「今は最前線で、長門と肩を並べて戦っているわ。自慢の41cm砲をぶっ放して敵を沈め、自慢の装甲で味方をかばって…… 」

提督 「ああ、いつも助けられている…… 」

陸奥 「うふふ、前世であれほど夢見た大活躍よ。わたしの中にいる、わたしの家族たちの魂も……戦いの中で喜びに震えてるわ。前世の悲しみなんて吹き飛ぶぐらいにね! 」

提督 「…… 」

陸奥 「だからね……艦娘になって前世では果たせなかった大活躍ができて、本当に嬉しいのよ」

提督 「だが……君を転生させたのは、人間を護るための道具としてだ……俺たち人間のエゴだ……」

陸奥 「理由なんてどうだっていいじゃない。わたしも、わたしの中の家族たちも……転生できて本当に幸せだし……提督、あなたには心から感謝してるわ♪ 」

提督 「感謝……そんな……転生して幸せだって……? 」

陸奥 「ええ♪ わたしを活躍させてくれるだけじゃない。わたしの大切な仲間たちも、沈めたりせずみんな大事にしてくれてるでしょ♪ そういうのも含めて、とっても幸せよ」




251: 2016/03/12(土) 22:26:03.75 ID:xv9izA/0o


提督 「……………… 」

陸奥 「♪~~ 」


ポン ポン


提督 「辛い戦いを終え、ようやく静かに眠っていた君たちの魂を無理やり呼び戻して、また人間のために戦わせる……。俺は自分の……自分たちの行為をそう捉えている」

陸奥 「…… 」

提督 「だが結果的に、それが幸せだと言ってもらえることもある……そういうことがあるとは考えたことも無かった。いや、考えたことはあったが、それは自分の希望的観測だったんだと諦めていた……」


この人も……沢山の悩みを抱えて提督業をしてきたのね……


陸奥 「提督。あなたはもっと執務室を出て、艦娘のみんなとお話すべきね」

提督 「……? 」

陸奥 「わたしもみんなの心が分かるわけじゃないわ。だけどね、今を幸せだと感じてるのはわたしだけじゃない。毎日を幸せに過ごしている子は沢山いるわ」

提督 「そうか…… 」

陸奥 「それはあなたが生み出した幸せなのよ。あなたが転生させて、あなたが作った鎮守府で、あなたが作った方針で日々を生きてるんですもの」

提督 「…… 」




252: 2016/03/12(土) 22:26:44.56 ID:xv9izA/0o


陸奥 「だからね、あなたに幸せをもらってるわたしたちとしては」

提督 「…… 」

陸奥 「提督、あなたが『不幸』の責任を感じて、わざと苦しい日々を送ろうとしていることが不満なの。……だから、ちょっと強引な手を使ってでも幸せにしたいのよ。例えば日曜日にピクニックしたりね♪ 」

提督 「そうか……今日はそういう理由でこれなのか…… 」

陸奥 「ええ♪ 」

提督 「しかしこの膝枕はさすがにオーバーなんじゃ…… 」

陸奥 「この膝枕は、わたしからの『幸せのおすそ分け』よ」

提督 「意味がわからん……」

陸奥 「わたしはいっぱい幸せだから、提督も幸せにしてあげようかなって。膝枕気持ち良いでしょ♪ 」

提督 「ははは……そうだな、気持ちいいよ。ああ、今日は俺の全面敗北だ。まったく、陸奥にはかなわないな」

陸奥 「あたりまえよ、わたしは世界のビッグセブンよ」




253: 2016/03/12(土) 22:27:15.28 ID:xv9izA/0o


陸奥 「さ、今日はずっとここでのんびりしましょ。ここなら絶対に誰も見てないから、気を抜いていいのよ」

提督 「ああ……こんなにリラックスした気分は本当にひさしぶりだ」

陸奥 「うふふ、無理やり連れ出したかいがあったかな♪ 」

提督 「陸奥……ありがとう」

陸奥 「うふふ、どういたしまして♪ 」


ポン ポン


提督 「…… 」

陸奥 「♪~ 」




254: 2016/03/12(土) 22:27:42.11 ID:xv9izA/0o


**********


そよぐ風、鳥の声、遠くに波の音……とても静かな場所。

やっと重荷を置いてわたしに寄りかかってくれているあなた。

もちろんこんなのは今だけ。あなたはきっとまた重荷を背負ってつらい日々に戻っていく。

それでも……ほんのすこしでも、あなたの本音を聞き出して、あなたを休ませることが出来たこと。
それが本当に嬉しくて……今日もまた幸せが増えた。そんな時間だった


**********


陸奥「堅物なこまったさんね~」【14】

255: 2016/03/12(土) 22:29:07.72 ID:xv9izA/0o

本日分は以上となります。次回は14日(月)更新予定です。

予定ではあと2回ぐらいで終わりますが……すぐに第二部のお話をはじめるつもりなので、実はまだまだ続きます。
ほんと、長くなってしまって申し訳ない。よろしければまたお越しください。

引用: 【艦これ】 陸奥「堅物なこまったさんね~」