749: 2012/01/23(月) 22:47:15.04ID:0IDQ09AE
『大変なのは』


「苗木君、ダウトです」
ボクがカードを出し終えるのを、見計らったかのように発せられた柔らかな声。

嘘をつくこと、暴くことが勝利へつながるこのゲームは、まさに舞園さんの独壇場だった。

「どうして、わかったの?」
彼女から2枚手札を受け取り、たずねてみる。
答えはもちろん…

「エスパーですから」
ですよね。
クスクスと笑う彼女の隣に座る霧切さんと目が合い、どちらともなく苦笑が漏れる。

「すごい命中精度ね。本当に心が読めるのかと疑いたくなるわ」
「残念ながら、苗木君限定ですので。…はい、9です」
 霧切さんの番ですよ。舞園さんの言葉に、霧切さんはいつもの無表情に戻って、

「わたしは、10ね」

 ボクが怪しいと感じることもなく次のカードを探していると、不意に舞園さんが、

「…それもダウトです」
「…苗木君にしか通じないとさっき言っていたわよね」

また、正解だ。ボクの目には、怪しいアクションなど何も映らなかったが、舞園さんの第六感は何かを感じ取ったのか。
眉をひそめて、舞園さんからカードを受け取った霧切さんはボクに向かって、

「彼女がエスパーだと、苗木君も大変そうね」

へ?霧切さんだって苦戦中じゃないか。 言葉の意味を理解しかねて、目をぱちくりするボクに、

「本当に大変なのはあなたの方かしらね、舞園さん・・・」
彼、鈍いにも程があるわよ。そう言う霧切さんに、舞園さんは首を横に振って、

「まだ『彼女』じゃないですし、ご心配には及びません。それに、そんなところも彼の魅力ですから…」

だから何が?

ため息をつく彼女たちに、ボクはなぜか申し訳無さを感じるのだった。
ダンガンロンパ1・2 Reload 超高校級の公式設定資料集 ‐再装填‐ (ファミ通の攻略本)

750: 2012/01/23(月) 22:50:06.31ID:0IDQ09AE
『頼りにしてます』


「勉強を?」
「はい。しばらく学校に来ないうちに、数学が全くわからなくなっていたので、苗木君に教えてもらえたらと思って…」
やっぱり、迷惑ですよねと、曇った顔を見せると、苗木君はあわてて、そんなことないよとOKしてくれた。

…そんな風だから、私につけいられちゃうんですよとは、さすがに口に出せない。



「それで、判別式に全部代入して…。 これで全部終わり、かな?」
「なるほど。苗木君、結構教えるのが上手なんですね」

彼の教え方は、要点をつかんだ、非常にわかりやすいものだった。それは、この学校に来てから、身についた能力かもしれないが。
中学生くらいの生徒たちの前で教卓に立つ彼を想像し、一人でふふ、と笑ってしまう。

「…? そういえば、何でボクを選んだの?もっと教えるのが上手そうな人なら、クラスにもたくさんいるのに…」

あなたと一緒に居たかった、というのも大きな理由なんだけど。

「なんていうか…苗木君、平均点は確実に取れるじゃないですか」
「うん」
「なら、苗木君が分からなかったところをやらなくても、最低限のことは理解できるかな、て…」
これだけを言うと、彼を傷つけてしまうだろうか。そんな心配は杞憂に終わり。
 
「ボクなんかで役に立てたなら、嬉しいけどね」
 
またお人好しなことを。…少し困らせちゃいましょうか。
私は、胸の中に湧き上がるいたずら心を抑えきれずに、

「じゃぁ、明日は英語をよろしくお願いします!」
さあ、どうだ。

「…もちろん、いいよ。舞園さんがボクに頼んでくれれば、」
ボクにできることは何でもするよ。そう言ってはにかむ彼の瞳は、いつも通り真っ直ぐで。
 
「嘘じゃないですよね?」
ちょっと驚いたが、彼の言葉は素直に嬉しい。

そんな風だから、私はあなたに甘えちゃうのに。
でも、これからは、あなたのお墨付きだから。

「…頼りにしてますよ、苗木君」

うなずく彼の顔は、私と同じように真っ赤だった。


751: 2012/01/23(月) 22:51:46.56ID:0IDQ09AE
『すねます!』


「なーえぎ君、どこ行くんですか」
「わ、舞園さん?」

ボクが廊下を歩いていると、ふいに両肩に体重がかかる。
普段おとなしい彼女がこういうことをするのは、珍しいかもしれない。

「うん、図書室に行こうかなって」
「何か借りたい本でもあるんですか?」
「というよりも、霧切さんに」

舞園さんが、ボクの言葉に彼女のすっとした眉を寄せる。

「…私が言うのもなんですが、苗木君、霧切さんにいいように働かされてませんか? 苗木君は優しいから、断れないのかもしれませんけど」

顔が真面目だ。…いやいや、パシラれてはいない…つもりだけど。
霧切さんはどう思っているのだろうか。

「それは違うよ。霧切さんがたまに推理小説を薦めてくるから、一緒に読もうかなって」
「そうですか…。まあ、苗木君がそう言うなら。
 じゃあ、いきましょうか」
「え…いくって、どこに?」
「もちろん、図書室です!」

当たり前のように言わないでほしい。

「いいじゃないですか。二人で探せばすぐ見つかるでしょうし、ギブアンドテイクですよ」
「それだと、ギブがないけど」
「…私は、こうしているだけで充分なんです。
 さあ、いきましょう!」

すたすたと足早に歩いていってしまう舞園さん。
あわてて後を追いかける。…あれ?なぜ三階に行っちゃうんだ?

「図書室、二階なんだけど」
「…っ」
戻ってくる彼女の顔は、少し赤くなっていた。
そんな表情も、いつもとは違うかわいさがあって。

「にやにやしないでください。……すねますよ」
ちょっぴり怒ったようにいう舞園さん。

そんな彼女も見てみたいけど。ここはケーキをおごって、外出に付き合って、彼女の機嫌を直してもらおう。

アイドルだけど、どこにでもいる女の子と同じようなところがある、彼女の。
とびきりの笑顔を、見られるように。

752: 2012/01/23(月) 22:53:21.67ID:0IDQ09AE
稚拙な文章でしたが、お付き合いいただきありがとうございます。

753: 2012/01/23(月) 23:41:11.10ID:1m3tstZD
乙。プチSS3本という形は、サザエさんのようなファミリー系アニメを彷彿とさせるな。

引用: 【ダンガンロンパ】舞園さやかは真ヒロイン ステージ2【アイドル】