1: 2012/08/04(土) 20:52:06.20 ID:ep3WwVfnP
・ゆるゆりのSSでflickrす
・ごらく部です。勝手に設定した能力者は出ません。
原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
・アニメのゆるゆりまでは見ました。ゆるゆり♪♪は視聴中です。
・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を
原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
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・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を
5: 2012/08/04(土) 20:55:33.95 ID:ep3WwVfnP
「そろそろ行こうかな…」
あかりが腕時計を見て立ち上がる。
あの時からずいぶんと背が伸びた。
「二人とも、きっと来てくれるよね!」
そう自分に言い聞かせて、家を出る。
目的地はあの場所。
あなたとの日々を、始まりから終わりまでを振り返りながら、あかりは歩く。
悲しみと不安を抱え、それでもほんの少しの希望にすがりながら、ひとり、街を歩く。
あなたが一番輝いていた場所へ。
あかりが腕時計を見て立ち上がる。
あの時からずいぶんと背が伸びた。
「二人とも、きっと来てくれるよね!」
そう自分に言い聞かせて、家を出る。
目的地はあの場所。
あなたとの日々を、始まりから終わりまでを振り返りながら、あかりは歩く。
悲しみと不安を抱え、それでもほんの少しの希望にすがりながら、ひとり、街を歩く。
あなたが一番輝いていた場所へ。
8: 2012/08/04(土) 20:59:46.66 ID:ep3WwVfnP
「何年ぶり…だろ…。」
ここは変わらない。何も変わってはいない。
そこを開ければ、あの時のあなたが出迎えてくれそうな気がする。
「懐かしいな…。」
しかし彼女は足を止め、顔を曇らせる。
あかりはギュッと強く目を瞑り、唇を噛みしめた。
少し溢れた涙を両手で拭い、右ポケットから鍵を取り出す。
ふうっと息をつき、鍵を差し込み、回す。
「あ…。」
ここは変わらない。何も変わってはいない。
そこを開ければ、あの時のあなたが出迎えてくれそうな気がする。
「懐かしいな…。」
しかし彼女は足を止め、顔を曇らせる。
あかりはギュッと強く目を瞑り、唇を噛みしめた。
少し溢れた涙を両手で拭い、右ポケットから鍵を取り出す。
ふうっと息をつき、鍵を差し込み、回す。
「あ…。」
10: 2012/08/04(土) 21:04:47.02 ID:ep3WwVfnP
空回りの音だ。
「開いてる…。」
開けると玄関に靴は一足、少なくとも一人は来てくれている。
あかりにとってそれは喜ばしいことではあった。
もちろんあれから一度も会わなかったわけではない。
しかし…。
どんな言葉をかければいいのだろう。
また昔のように…。
答えが出せないまま、あかりは部屋の前に立つ。
それと、同時に煙草の匂いが鼻をかすめた。
「開いてる…。」
開けると玄関に靴は一足、少なくとも一人は来てくれている。
あかりにとってそれは喜ばしいことではあった。
もちろんあれから一度も会わなかったわけではない。
しかし…。
どんな言葉をかければいいのだろう。
また昔のように…。
答えが出せないまま、あかりは部屋の前に立つ。
それと、同時に煙草の匂いが鼻をかすめた。
13: 2012/08/04(土) 21:10:09.85 ID:ep3WwVfnP
「久しぶり…。」
ふすまの向こうから聞こえる声。
一番乗りはこの人か、とあかりは思う。
「うん。」
精一杯の笑顔でふすまを開け、言葉を返す。
「久しぶりだね、結衣ちゃん。」
あなたは当然知らない。
結衣は煙草を吸い始めた。
そんな結衣を見てあなたは怒るだろうか。
ふすまの向こうから聞こえる声。
一番乗りはこの人か、とあかりは思う。
「うん。」
精一杯の笑顔でふすまを開け、言葉を返す。
「久しぶりだね、結衣ちゃん。」
あなたは当然知らない。
結衣は煙草を吸い始めた。
そんな結衣を見てあなたは怒るだろうか。
14: 2012/08/04(土) 21:15:23.07 ID:ep3WwVfnP
「結衣ちゃん、ここ学校だよ。煙草なんか吸っちゃダメだよ。」
「別にいいだろ、こんなとこ誰も来ないよ。」
「そういう問題じゃないよ。それにあかり煙草好きじゃないもん。」
「まだ自分のこと『あかり』って言ってんのか?来年社会人だろ?」
結衣があきれ顔で新しい煙草を取り出し火をつける。
「社会に出たらちゃんとするからいいの!」
「どーだか。」
「それに今は煙草の話だよ!」
「別にいいだろ、こんなとこ誰も来ないよ。」
「そういう問題じゃないよ。それにあかり煙草好きじゃないもん。」
「まだ自分のこと『あかり』って言ってんのか?来年社会人だろ?」
結衣があきれ顔で新しい煙草を取り出し火をつける。
「社会に出たらちゃんとするからいいの!」
「どーだか。」
「それに今は煙草の話だよ!」
17: 2012/08/04(土) 21:20:06.94 ID:ep3WwVfnP
遠くを見ながらふふっと軽く笑う結衣を見て、なんだ普通に話せるんだ、とあかりは思う。
結衣もきっとそう思っている、そう思い込むことにした。
「前もこれだったよね。」
「ん?ああ。」
「これっておじさん臭くない?結衣ちゃん、始めからずっとこれ吸ってるの?」
「そうだよ。」
少しだけ結衣のトーンが下がる。
ほんの少しだけ。
結衣もきっとそう思っている、そう思い込むことにした。
「前もこれだったよね。」
「ん?ああ。」
「これっておじさん臭くない?結衣ちゃん、始めからずっとこれ吸ってるの?」
「そうだよ。」
少しだけ結衣のトーンが下がる。
ほんの少しだけ。
18: 2012/08/04(土) 21:25:24.70 ID:ep3WwVfnP
「好きなの?」
結衣は火をつけたばかりの煙草を押し付け、何も言わず縁側に出る。
「結衣ちゃん?」
「…嫌いだよ。」
「え…?」
あかりはなぜ結衣がそう答えたか知らない。
この言葉の真偽も知らない。
顔は見えない。
ただ結衣が悲しい顔をしている気がした。
結衣は火をつけたばかりの煙草を押し付け、何も言わず縁側に出る。
「結衣ちゃん?」
「…嫌いだよ。」
「え…?」
あかりはなぜ結衣がそう答えたか知らない。
この言葉の真偽も知らない。
顔は見えない。
ただ結衣が悲しい顔をしている気がした。
21: 2012/08/04(土) 21:31:37.62 ID:ep3WwVfnP
しばらくして玄関の開く音。
残りの一人だ、誰かは見なくともわかる。
あかりは来客を迎えようと立ち上がる。
結衣は遠くを見たまま、動かない。
あかりがそれを見て少し悲しい顔をする。
それを掻き消しふすまを開けると、靴を脱ぐ後姿が見えた。
「待ってたよー。」
「ごめん、ごめん。ちょっと道が混んでて。」
「あ、車で来たんだ。」
「車の方が早いもん。」
靴を脱ぎ終え、振り返る。
「あかりちゃん、元気だった?」
残りの一人だ、誰かは見なくともわかる。
あかりは来客を迎えようと立ち上がる。
結衣は遠くを見たまま、動かない。
あかりがそれを見て少し悲しい顔をする。
それを掻き消しふすまを開けると、靴を脱ぐ後姿が見えた。
「待ってたよー。」
「ごめん、ごめん。ちょっと道が混んでて。」
「あ、車で来たんだ。」
「車の方が早いもん。」
靴を脱ぎ終え、振り返る。
「あかりちゃん、元気だった?」
24: 2012/08/04(土) 21:37:53.04 ID:ep3WwVfnP
「私はいつでも元気だよ!」
「それもそうだね。」
あかりはにこりと軽く笑い、少し躊躇してから部屋に戻る。
「結衣ちゃん、ちなつちゃん…来たよ。」
結衣はほとんど聞こえないような声で、うん、と言う。
「お久しぶりです、結衣先輩。」
「久しぶりだね。」
ちなつは少しだけ振り向いた結衣を、視野の片隅で捉えながら卓につく。
「あれ、あかりちゃん煙草吸ってるの?」
「ううん、これ結衣ちゃんのだよ。」
「ふーん…。」
彼女はそれ以上何も言わず、乱暴に灰皿がわりの缶コーヒーを押しのけた。
「それもそうだね。」
あかりはにこりと軽く笑い、少し躊躇してから部屋に戻る。
「結衣ちゃん、ちなつちゃん…来たよ。」
結衣はほとんど聞こえないような声で、うん、と言う。
「お久しぶりです、結衣先輩。」
「久しぶりだね。」
ちなつは少しだけ振り向いた結衣を、視野の片隅で捉えながら卓につく。
「あれ、あかりちゃん煙草吸ってるの?」
「ううん、これ結衣ちゃんのだよ。」
「ふーん…。」
彼女はそれ以上何も言わず、乱暴に灰皿がわりの缶コーヒーを押しのけた。
25: 2012/08/04(土) 21:43:45.81 ID:ep3WwVfnP
四人が揃わなくなってから、三人が揃う。
あなたはいない。
三人は「ひとり」だった。
「結衣ちゃんもこっちに座ったら?」
「いいよ、私煙草吸うから。」
「そっか…。」
久しぶりの三人。
「ひとり」のほうが寂しいはずなのに、なぜか「三人」のほうが寂しい気がした。
あなたはいない。
三人は「ひとり」だった。
「結衣ちゃんもこっちに座ったら?」
「いいよ、私煙草吸うから。」
「そっか…。」
久しぶりの三人。
「ひとり」のほうが寂しいはずなのに、なぜか「三人」のほうが寂しい気がした。
26: 2012/08/04(土) 21:47:02.18 ID:ep3WwVfnP
だからあかりは必氏に言葉を探す。
せめて「三人」がこれ以上離れないように。
「結衣ちゃん最近どう?」
「まあ特に…。」
「そ、そっか!ちなつちゃんは?」
「んー…、私も特に変わらないかな。」
「えと、あかりも相変わらず元気だよ!」
「ふふ…、さっき聞いたよ、あかりちゃん。」
「そ、そうだったっけ…。」
「あかりちゃんは中学のころから変わらないね。」
「そんなことないよぉ!」
二人は顔を見合わせ、あの頃より大人びた笑顔でくすりと笑った。
せめて「三人」がこれ以上離れないように。
「結衣ちゃん最近どう?」
「まあ特に…。」
「そ、そっか!ちなつちゃんは?」
「んー…、私も特に変わらないかな。」
「えと、あかりも相変わらず元気だよ!」
「ふふ…、さっき聞いたよ、あかりちゃん。」
「そ、そうだったっけ…。」
「あかりちゃんは中学のころから変わらないね。」
「そんなことないよぉ!」
二人は顔を見合わせ、あの頃より大人びた笑顔でくすりと笑った。
27: 2012/08/04(土) 21:50:28.84 ID:ep3WwVfnP
あかりがじっくりと部屋を見回し口を開く。
「懐かしいよね、ここ。」
「ずっと来てないもんね。」
「あの頃はほとんど毎日来てたのに。」
「そうだね。」
「いっつもみんなここにいて…。」
「うん…。」
「みんな…。」
声が震える。
「京子ちゃんも…。」
「懐かしいよね、ここ。」
「ずっと来てないもんね。」
「あの頃はほとんど毎日来てたのに。」
「そうだね。」
「いっつもみんなここにいて…。」
「うん…。」
「みんな…。」
声が震える。
「京子ちゃんも…。」
29: 2012/08/04(土) 21:54:08.67 ID:ep3WwVfnP
「京子ちゃんもいつも一緒で…。」
あかりの頬を涙が伝う。
ちなつは何も言わずあかりの手を握り、そっと身体をよせる。
「ごめんね、あかりすぐ泣いちゃって…。」
「いいよ、大丈夫だから。」
「もう何年も前のことなのにね。」
「忘れられることじゃないもん。はい、これ。」
あかりは差し出されたハンカチで涙を拭き、ありがとうと言ってちなつに返す。
あなたと一緒に音まで消えてしまったかのような静かな部室。
笑い声はもう聞こえない。
あかりの頬を涙が伝う。
ちなつは何も言わずあかりの手を握り、そっと身体をよせる。
「ごめんね、あかりすぐ泣いちゃって…。」
「いいよ、大丈夫だから。」
「もう何年も前のことなのにね。」
「忘れられることじゃないもん。はい、これ。」
あかりは差し出されたハンカチで涙を拭き、ありがとうと言ってちなつに返す。
あなたと一緒に音まで消えてしまったかのような静かな部室。
笑い声はもう聞こえない。
31: 2012/08/04(土) 21:59:38.54 ID:ep3WwVfnP
ちなつが沈黙を破る。
「それで…、あかりちゃん。今日はどうして?」
「え?」
「みんなで集まろうって…。」
「あっ、うん…。」
俯いた顔には戸惑いの色。
「あかりちゃん?」
あかりは大きく息を吸い込み、顔をあげる。
「京子ちゃんの家、いかない?」
「え?……三人で?」
「もちろん!」
「私はいいけど…。」
「それで…、あかりちゃん。今日はどうして?」
「え?」
「みんなで集まろうって…。」
「あっ、うん…。」
俯いた顔には戸惑いの色。
「あかりちゃん?」
あかりは大きく息を吸い込み、顔をあげる。
「京子ちゃんの家、いかない?」
「え?……三人で?」
「もちろん!」
「私はいいけど…。」
32: 2012/08/04(土) 22:03:39.71 ID:ep3WwVfnP
「いいよね?結衣ちゃん。」
あかりは祈るような顔で結衣を見る。
「そうだね…。」
少しの沈黙の後、結衣がそう答えた。
「じゃあ行こっか!」
「うん、私の車でいいよね?」
「わー、ありがとう。」
「じゃあ先に車つけてくる。」
「はーい。結衣ちゃん行こ?」
「…うん。」
「一本吸ってから、行くよ。」
結衣の煙草はハイライト。
彼女が煙草を吸う理由をあなたは知らない。
あかりは祈るような顔で結衣を見る。
「そうだね…。」
少しの沈黙の後、結衣がそう答えた。
「じゃあ行こっか!」
「うん、私の車でいいよね?」
「わー、ありがとう。」
「じゃあ先に車つけてくる。」
「はーい。結衣ちゃん行こ?」
「…うん。」
「一本吸ってから、行くよ。」
結衣の煙草はハイライト。
彼女が煙草を吸う理由をあなたは知らない。
33: 2012/08/04(土) 22:07:54.64 ID:ep3WwVfnP
「うおっ!?」
あなたは眩暈に襲われ、まともに受け身も取れず幼児の様に転ぶ。
似たようなことは何度かあった。
「何やってんだよ、京子。」
「ごめん、ごめん。ちょっとクラクラっと来ちゃって。」
「大丈夫か?ほら。」
あなたは結衣の手を握り、立ち上がる。
ひどい頭痛がする。
「最近よくあるんだよねー。」
「そうなのか?ひどい様なら病院行った方がいいんじゃ…。」
あなたは眩暈に襲われ、まともに受け身も取れず幼児の様に転ぶ。
似たようなことは何度かあった。
「何やってんだよ、京子。」
「ごめん、ごめん。ちょっとクラクラっと来ちゃって。」
「大丈夫か?ほら。」
あなたは結衣の手を握り、立ち上がる。
ひどい頭痛がする。
「最近よくあるんだよねー。」
「そうなのか?ひどい様なら病院行った方がいいんじゃ…。」
34: 2012/08/04(土) 22:12:16.86 ID:ep3WwVfnP
結衣は心配そうな目であなたを見る。
あなたは自分の不安が伝わらないよう、視線をそらす。
「大丈夫だって!寝不足だからだよ、寝不足!」
「寝不足って言ったって…。」
「いいから、早く部室行くぞー!」
「お、おい…京子。」
あなたは不安をかき消す様に走る。
頭痛はまだ消えない、不安も消えない、それらを置き去りにしたいのに。
あなたは自分の不安が伝わらないよう、視線をそらす。
「大丈夫だって!寝不足だからだよ、寝不足!」
「寝不足って言ったって…。」
「いいから、早く部室行くぞー!」
「お、おい…京子。」
あなたは不安をかき消す様に走る。
頭痛はまだ消えない、不安も消えない、それらを置き去りにしたいのに。
35: 2012/08/04(土) 22:17:07.50 ID:ep3WwVfnP
「よーっす!」
あなたはいつも通り部室に入る。
いつも通り。
「あ、結衣先輩!」
ちなつがあなたに目もくれず結衣に駆け寄る。
いつも通りだ。
「ちなつちゃーん!あいさつしたのは私だ!」
「知ってますよ。それが何か?」
「ちなつちゃんのいけずぅー!」
「ちょ、ちょっとそんなにくっつかないでくださいよ!」
「よいではないか、よいではないかー!」
「やめろよ、ちなつちゃん困ってるだろ。」
「みんなー、お茶淹れたよー。」
「いたんだ」
「えぇー!ひどいよぉ~!」
あなたはいつも通り部室に入る。
いつも通り。
「あ、結衣先輩!」
ちなつがあなたに目もくれず結衣に駆け寄る。
いつも通りだ。
「ちなつちゃーん!あいさつしたのは私だ!」
「知ってますよ。それが何か?」
「ちなつちゃんのいけずぅー!」
「ちょ、ちょっとそんなにくっつかないでくださいよ!」
「よいではないか、よいではないかー!」
「やめろよ、ちなつちゃん困ってるだろ。」
「みんなー、お茶淹れたよー。」
「いたんだ」
「えぇー!ひどいよぉ~!」
36: 2012/08/04(土) 22:22:22.15 ID:ep3WwVfnP
大丈夫、いつもと何も変わらないとあなたは思う。
あかりも、結衣も、ちなつも。
あなたは?
そんな事は考えないようにして、いつもの席につく。
まだ頭痛がする。
ちなつが結衣にくっつきながら話している。
あかりが笑ってそれを聞いている。
大丈夫、いつも通り。
変わらない。
ゴトンと鈍い音がして三人の視線があなたに集まる。
あなたは持ち上げた右手を見る。
そこにあるはずの湯のみはその先に転がっていた。
「ぁ……れ?」
あかりも、結衣も、ちなつも。
あなたは?
そんな事は考えないようにして、いつもの席につく。
まだ頭痛がする。
ちなつが結衣にくっつきながら話している。
あかりが笑ってそれを聞いている。
大丈夫、いつも通り。
変わらない。
ゴトンと鈍い音がして三人の視線があなたに集まる。
あなたは持ち上げた右手を見る。
そこにあるはずの湯のみはその先に転がっていた。
「ぁ……れ?」
39: 2012/08/04(土) 22:28:09.67 ID:ep3WwVfnP
頭痛は消えていた。
結衣が何かを言いながら立ち上がる。
彼女の顔は次第に、おぼろげになり、そして、見えなくなった。
「おい、京子!」
「え…?」
「京子ちゃん!?」
三人が駆け寄りあなたの名を呼ぶが、その声は届かない。
「京子先輩!どうしたんですか!?」
「あかり!救急車!」
「う、うん!」
結衣が何かを言いながら立ち上がる。
彼女の顔は次第に、おぼろげになり、そして、見えなくなった。
「おい、京子!」
「え…?」
「京子ちゃん!?」
三人が駆け寄りあなたの名を呼ぶが、その声は届かない。
「京子先輩!どうしたんですか!?」
「あかり!救急車!」
「う、うん!」
44: 2012/08/04(土) 22:34:27.48 ID:ep3WwVfnP
あなたは目を覚ます。
身体は重く、意識はハッキリしない。
ここがどこなのかもわからない。
ただ思う。
いつも通りが終わったのだと。
身体は重く、意識はハッキリしない。
ここがどこなのかもわからない。
ただ思う。
いつも通りが終わったのだと。
46: 2012/08/04(土) 22:38:47.44 ID:ep3WwVfnP
「京子ちゃーん!調子どう?」
「ん~、悪くないかな。」
「ほら、ラムレーズン買って来てやったぞ。」
「おー!さっすが結衣だなー!」
「私も魔女っ子ミラクるんの新刊買って来ましたよ。」
「や、優しい!もうこれはちなつちゃんが私を愛しているとしか…。」
「なんでそうなるんですか…。」
「照れなくていいのにー。」
「照れてません!」
「いいからほら、アイス溶けるぞ。」
あなたがいれば、四人が揃えばそこはごらく部だった。
それは変わっていない。
いつも通りは終わったけれど。
「ん~、悪くないかな。」
「ほら、ラムレーズン買って来てやったぞ。」
「おー!さっすが結衣だなー!」
「私も魔女っ子ミラクるんの新刊買って来ましたよ。」
「や、優しい!もうこれはちなつちゃんが私を愛しているとしか…。」
「なんでそうなるんですか…。」
「照れなくていいのにー。」
「照れてません!」
「いいからほら、アイス溶けるぞ。」
あなたがいれば、四人が揃えばそこはごらく部だった。
それは変わっていない。
いつも通りは終わったけれど。
48: 2012/08/04(土) 22:43:36.93 ID:ep3WwVfnP
「んー、まだ慣れないなー。」
「このアイスクリーム硬いもんね。」
「ちなつちゃーん、食べさせて。」
「なんで私なんですか。」
「ちなつちゃんがあーんしてくれればこのラムレーズンの旨さは100倍!いや1000倍!?」
「わかった、わかった。私が食べさせてやるから。」
「えー、結衣かよー。」
「嫌ならもう買って来てやらないぞ。」
「すみませんでした!」
あはは、とあかりが困ったように笑う。
結衣はあなたの左手からスプーンを受け取りベッドに腰掛けアイスをすくった。
そして口元に運び優しい顔で言う。
「早く右手使えるようになるといいな。」
「このアイスクリーム硬いもんね。」
「ちなつちゃーん、食べさせて。」
「なんで私なんですか。」
「ちなつちゃんがあーんしてくれればこのラムレーズンの旨さは100倍!いや1000倍!?」
「わかった、わかった。私が食べさせてやるから。」
「えー、結衣かよー。」
「嫌ならもう買って来てやらないぞ。」
「すみませんでした!」
あはは、とあかりが困ったように笑う。
結衣はあなたの左手からスプーンを受け取りベッドに腰掛けアイスをすくった。
そして口元に運び優しい顔で言う。
「早く右手使えるようになるといいな。」
49: 2012/08/04(土) 22:46:49.05 ID:ep3WwVfnP
右半身のマヒ。
あなたが目を覚ましたあと、医者から告げられた言葉。
もしかしたらそれを聞かずとも気付いていたかもしれない。
あなたはそれを聞いて泣く後輩に「いつも通り」で接した。
弱味を見せるのは彼女だけで十分だと。
大丈夫だよ、そうあなた自身にも言い聞かせながら。
「んあー…、ちゃんと治るかなー?」
「治るよ!リハビリだってしてるし、すぐ学校いけるようにだってなるよ!」
あかりは素直でいい子だ。
真っ直ぐな目で、迷わず言い切る。
「そうだな…。パパッと治してミラクるんの同人誌仕上げなきゃ!」
「ふふっ、出来たら読ませて下さいね。」
ちなつは優しくなった。
もともと不器用なだけだったかもしれない。
あなたが目を覚ましたあと、医者から告げられた言葉。
もしかしたらそれを聞かずとも気付いていたかもしれない。
あなたはそれを聞いて泣く後輩に「いつも通り」で接した。
弱味を見せるのは彼女だけで十分だと。
大丈夫だよ、そうあなた自身にも言い聞かせながら。
「んあー…、ちゃんと治るかなー?」
「治るよ!リハビリだってしてるし、すぐ学校いけるようにだってなるよ!」
あかりは素直でいい子だ。
真っ直ぐな目で、迷わず言い切る。
「そうだな…。パパッと治してミラクるんの同人誌仕上げなきゃ!」
「ふふっ、出来たら読ませて下さいね。」
ちなつは優しくなった。
もともと不器用なだけだったかもしれない。
51: 2012/08/04(土) 22:50:08.73 ID:ep3WwVfnP
「そんなことより今年受験だろ。このままじゃ高校いけないぞ。」
結衣は変わらない。
それが結衣の優しさだとあなたもわかっていた。
「大丈夫!今年行けなくても来年行けばあかりと同級生だよ!」
「高校浪人かよー。」
あかりは大真面目だ。
「でもちなつちゃんと同級生ってのも悪くないか…。」
「京子先輩、あなたって人は…。」
「いいから!」
結衣があなたの頭にポンと手をおく。
「早く治して退院しろよ。」
「任せとけってー!」
笑顔が溢れる。
今はここが部室だ。
結衣は変わらない。
それが結衣の優しさだとあなたもわかっていた。
「大丈夫!今年行けなくても来年行けばあかりと同級生だよ!」
「高校浪人かよー。」
あかりは大真面目だ。
「でもちなつちゃんと同級生ってのも悪くないか…。」
「京子先輩、あなたって人は…。」
「いいから!」
結衣があなたの頭にポンと手をおく。
「早く治して退院しろよ。」
「任せとけってー!」
笑顔が溢れる。
今はここが部室だ。
52: 2012/08/04(土) 22:52:57.85 ID:ep3WwVfnP
あなたへの見舞いを終えて三人は帰る。
それぞれの思いを心に抱きながら。
「京子ちゃん、よくなるよね?またみんなで一緒に遊べるよね?」
「わかんないよ…。」
「もしこのままだったら、ずっとこのままだったら、京子ちゃんがかわいそうだよ!」
「そんなことわかってるけど…!」
あなたがそうであるように、彼女達も不安だった。
自分が周りの人とってどれほど大きな存在であったか、あなたは知っていただろうか。
「大丈夫だよ、二人とも。」
結衣は言う。
「京子は絶対よくなるよ。」
それぞれの思いを心に抱きながら。
「京子ちゃん、よくなるよね?またみんなで一緒に遊べるよね?」
「わかんないよ…。」
「もしこのままだったら、ずっとこのままだったら、京子ちゃんがかわいそうだよ!」
「そんなことわかってるけど…!」
あなたがそうであるように、彼女達も不安だった。
自分が周りの人とってどれほど大きな存在であったか、あなたは知っていただろうか。
「大丈夫だよ、二人とも。」
結衣は言う。
「京子は絶対よくなるよ。」
54: 2012/08/04(土) 22:57:32.24 ID:ep3WwVfnP
『結衣…、私の右側動かないんだって…。』
『え…?動かないって……?』
『もう歩いたり出来ないかも知れないんだ…。』
『そんな…!』
『あはは…、困っちゃうよね…。こんなことなら結衣の言うとおり病院いっとけばよかった。』
『…………うん。』
『ねえ、結衣。』
『どうして…?どうして私なの?なんで……、なん……で………、結衣…。』
『京子…。』
『うっ…うぅ…うわああああああああ!』
『え…?動かないって……?』
『もう歩いたり出来ないかも知れないんだ…。』
『そんな…!』
『あはは…、困っちゃうよね…。こんなことなら結衣の言うとおり病院いっとけばよかった。』
『…………うん。』
『ねえ、結衣。』
『どうして…?どうして私なの?なんで……、なん……で………、結衣…。』
『京子…。』
『うっ…うぅ…うわああああああああ!』
56: 2012/08/04(土) 23:02:32.61 ID:ep3WwVfnP
「京子ちゃん!」
「おう、いらっしゃい!」
「うー!外すっごい寒いよー」
「雪降ってるもんなー。」
ごらく部の面々はほぼ毎日のように顔を出していた。
あなたがいなければ部活は始まらない。
「明日はホワイトクリスマスかな。」
「クリスマスかー、どうせ私は病院だしなー。」
「ふっふっふっ…。」
「な、なに?」
「実はクリスマスプレゼントがあるんだー。」
「プレゼント?」
あかりは嬉しそうな顔で頷く。
「おう、いらっしゃい!」
「うー!外すっごい寒いよー」
「雪降ってるもんなー。」
ごらく部の面々はほぼ毎日のように顔を出していた。
あなたがいなければ部活は始まらない。
「明日はホワイトクリスマスかな。」
「クリスマスかー、どうせ私は病院だしなー。」
「ふっふっふっ…。」
「な、なに?」
「実はクリスマスプレゼントがあるんだー。」
「プレゼント?」
あかりは嬉しそうな顔で頷く。
57: 2012/08/04(土) 23:07:59.27 ID:ep3WwVfnP
「えー!なにくれるの?」
「それはね…、もうちょっとでサンタさんが持って来てくれるよ!」
あなたは首を傾げる。
なぜあかりはこんなにも嬉しそうなのか。
どんなプレゼントだろうと考えていると、病室の扉が開いた。
「おじゃましまーす。」
「お!ちなつちゃん、いらっしゃい!」
「こんにちは、京子先輩!」
あなたの顔を見て、ちなつまでなぜか嬉しそうだ。
「ちなつちゃん!」
「バッチリだよ!」
後輩二人があなたに背を向け、意味深な目配せをする。
せーのっ、と小さな掛け声が聞こえた。
「メリークリスマース!」
二人が同時に振り向き一枚の紙をあなたに差し出す。
「それはね…、もうちょっとでサンタさんが持って来てくれるよ!」
あなたは首を傾げる。
なぜあかりはこんなにも嬉しそうなのか。
どんなプレゼントだろうと考えていると、病室の扉が開いた。
「おじゃましまーす。」
「お!ちなつちゃん、いらっしゃい!」
「こんにちは、京子先輩!」
あなたの顔を見て、ちなつまでなぜか嬉しそうだ。
「ちなつちゃん!」
「バッチリだよ!」
後輩二人があなたに背を向け、意味深な目配せをする。
せーのっ、と小さな掛け声が聞こえた。
「メリークリスマース!」
二人が同時に振り向き一枚の紙をあなたに差し出す。
60: 2012/08/04(土) 23:13:45.84 ID:ep3WwVfnP
「え?なにこれ?」
「なにこれ?って、これがクリスマスプレゼントですよ!」
「この紙が?」
「もー!京子ちゃんここは喜ぶところだよ!」
変わらず二人は嬉しそうだ。
あなたが訳もわからず、紙に目を通そうと視線を落としたとき、もう一人の声が聞こえた。
「外出と外泊の許可証だよ、京子。」
「あ…、結衣…。」
「良かったですね、京子先輩!」
「あかりたち部室でクリスマスパーティーやるんだよ!」
「え?」
「その後は私の家でお泊りだ。」
「そう…なの?」
いまいち状況を飲み込めない。
結衣がそばに歩み寄り、あなたの肩に手をおく。
「もちろん京子も一緒にな。」
「なにこれ?って、これがクリスマスプレゼントですよ!」
「この紙が?」
「もー!京子ちゃんここは喜ぶところだよ!」
変わらず二人は嬉しそうだ。
あなたが訳もわからず、紙に目を通そうと視線を落としたとき、もう一人の声が聞こえた。
「外出と外泊の許可証だよ、京子。」
「あ…、結衣…。」
「良かったですね、京子先輩!」
「あかりたち部室でクリスマスパーティーやるんだよ!」
「え?」
「その後は私の家でお泊りだ。」
「そう…なの?」
いまいち状況を飲み込めない。
結衣がそばに歩み寄り、あなたの肩に手をおく。
「もちろん京子も一緒にな。」
62: 2012/08/04(土) 23:19:04.64 ID:ep3WwVfnP
視界が徐々にぼやける。
「じゃあ…。」
「それじゃあ…またみんなで、あの部室で遊べるの?」
結衣は優しく微笑み、頷く。
「本当に…?」
「そんなに確認しなくても、本当に本当ですよ!」
「ぁ…。」
あなたは声を詰まらせ、ポタポタと落ちる水滴がシーツを濡らしていく。
「ありがとう。」は言葉にならない。
それでも、伝わる。
「きょ、京子ちゃん泣かないでよ!京子ちゃんが泣いたら…。」
「あかりまで…。」
あかりが京子に抱きつき、声をあげて泣き始める。
ちなつはもう顔をくしゃくしゃにして袖を濡らしていた。
「静かにしなよ、病院なんだから。」
そう言った結衣の涙も、シーツに落ちて、あなたのそれと混じった。
「じゃあ…。」
「それじゃあ…またみんなで、あの部室で遊べるの?」
結衣は優しく微笑み、頷く。
「本当に…?」
「そんなに確認しなくても、本当に本当ですよ!」
「ぁ…。」
あなたは声を詰まらせ、ポタポタと落ちる水滴がシーツを濡らしていく。
「ありがとう。」は言葉にならない。
それでも、伝わる。
「きょ、京子ちゃん泣かないでよ!京子ちゃんが泣いたら…。」
「あかりまで…。」
あかりが京子に抱きつき、声をあげて泣き始める。
ちなつはもう顔をくしゃくしゃにして袖を濡らしていた。
「静かにしなよ、病院なんだから。」
そう言った結衣の涙も、シーツに落ちて、あなたのそれと混じった。
66: 2012/08/04(土) 23:24:29.15 ID:ep3WwVfnP
「うっわー!久しぶりだな!」
「私達もだ。京子が倒れてからここで集まることはなくなったからな。」
「そうなのか?なんか悪いな。」
バカ、と小さく呟いて結衣は車椅子を押す。
結衣とちなつはパーティーの準備だ。
「今日は生徒会の人達も来てくれるんだ。」
「おー、勢ぞろい!」
「やっとここに、みんなと戻ってこれたな。」
「ありがとうね、結衣。」
「京子。」
「ん?」
「お礼を言うのはこっちだよ。」
「私達もだ。京子が倒れてからここで集まることはなくなったからな。」
「そうなのか?なんか悪いな。」
バカ、と小さく呟いて結衣は車椅子を押す。
結衣とちなつはパーティーの準備だ。
「今日は生徒会の人達も来てくれるんだ。」
「おー、勢ぞろい!」
「やっとここに、みんなと戻ってこれたな。」
「ありがとうね、結衣。」
「京子。」
「ん?」
「お礼を言うのはこっちだよ。」
67: 2012/08/04(土) 23:29:39.15 ID:ep3WwVfnP
あなたは結衣に車椅子を押され部室に入る。
昔のように走っていくことは出来ない。
それでもこれほど嬉しいことがあっただろうか。
あなたはここに帰ってきた。
「あ、京子ちゃん達もう来たの?」
「まだ準備終わってないですよ。」
「うん、早く連れてけってうるさくてさ。」
「いいだろー!楽しみだったんだよ!」
中は豪華な飾り付けでいっぱいだ。
だが確かにあなたの待ち望んだ場所。
昔のように走っていくことは出来ない。
それでもこれほど嬉しいことがあっただろうか。
あなたはここに帰ってきた。
「あ、京子ちゃん達もう来たの?」
「まだ準備終わってないですよ。」
「うん、早く連れてけってうるさくてさ。」
「いいだろー!楽しみだったんだよ!」
中は豪華な飾り付けでいっぱいだ。
だが確かにあなたの待ち望んだ場所。
68: 2012/08/04(土) 23:33:18.64 ID:ep3WwVfnP
「なんつーか…。」
「和室にクリスマスって似合わないな!」
なんとなく恥ずかしくてそんなことを言ってしまう。
「ひどーい!あかり一生懸命準備したのにー!」
「まあ私は少し思いましたけど…。」
「ええ!?先にいってよぉ~!」
「ご飯は綾乃達が持って来てくれるんだ。」
「おおー!今日はいっぱい食べるぞー!」
あなたは笑う。
楽しくて、嬉しくて。
69: 2012/08/04(土) 23:38:09.86 ID:ep3WwVfnP
「メリークリスマース!」
全員が揃い、クラッカーの音と共にパーティーが始まる。
昔のように動き回ることはできない。
それでも中心にはあなたがいる。
あなたが笑えばみんなが笑う。
「なあ、結衣。」
「なに?」
「楽しいな!」
「…そうだね。」
結衣が笑う。
「ほんと、楽しいよ。」
楽しい時間はあっという間だ。
全員が揃い、クラッカーの音と共にパーティーが始まる。
昔のように動き回ることはできない。
それでも中心にはあなたがいる。
あなたが笑えばみんなが笑う。
「なあ、結衣。」
「なに?」
「楽しいな!」
「…そうだね。」
結衣が笑う。
「ほんと、楽しいよ。」
楽しい時間はあっという間だ。
72: 2012/08/04(土) 23:43:12.30 ID:ep3WwVfnP
結衣が電気を消し布団にもぐる。
「あかり今日はすっごく楽しかった。」
「私も!また来年もパーティーしようね。」
「来年かぁ…。私、走り回れるようになってるかな?」
「そうなれるようにリハビリ頑張るんだぞ。」
「へいへい。」
少しの沈黙の後、あかりが今にも眠りそうな声でつぶやく。
「サンタさん、京子ちゃんの身体治してくれないかな…。」
「あかりちゃん…。」
冬の夜は静かだ。
「ははっ、そんなこと…、あるわけないだろ。」
天井の向こうを見てそう答える。
結衣は黙ったまま寝返りをうった。
「あかり今日はすっごく楽しかった。」
「私も!また来年もパーティーしようね。」
「来年かぁ…。私、走り回れるようになってるかな?」
「そうなれるようにリハビリ頑張るんだぞ。」
「へいへい。」
少しの沈黙の後、あかりが今にも眠りそうな声でつぶやく。
「サンタさん、京子ちゃんの身体治してくれないかな…。」
「あかりちゃん…。」
冬の夜は静かだ。
「ははっ、そんなこと…、あるわけないだろ。」
天井の向こうを見てそう答える。
結衣は黙ったまま寝返りをうった。
75: 2012/08/04(土) 23:47:43.08 ID:ep3WwVfnP
数時間後、結衣が起きあがり、あなたを抱き起こす。
あかりとちなつは静かに寝息をたてている。
「ごめんな、結衣。」
「いいよ。」
「やっぱり泊まるのは迷惑だったかな。」
「気にするなって。」
「うん…、ありがとう。」
体位変換を終えた結衣は、お休みと言って布団に戻った。
その背中を見ながら、右手に力を込める。
「結衣。」
「どうした?」
「サンタさん、来ないな。」
あなたはそっと目を閉じた。
「…うん。」
あかりとちなつは静かに寝息をたてている。
「ごめんな、結衣。」
「いいよ。」
「やっぱり泊まるのは迷惑だったかな。」
「気にするなって。」
「うん…、ありがとう。」
体位変換を終えた結衣は、お休みと言って布団に戻った。
その背中を見ながら、右手に力を込める。
「結衣。」
「どうした?」
「サンタさん、来ないな。」
あなたはそっと目を閉じた。
「…うん。」
76: 2012/08/04(土) 23:52:55.71 ID:ep3WwVfnP
「今始まったぐらいかな。」
「結衣ちゃん大丈夫かなぁ。」
「結衣先輩だもん!大丈夫にきまってるよ!」
3月、結衣は受験をむかえる。
「これで結衣は高校生かー。私はなにをやってんだか。」
結局その年の受験をあなたは見送った。
まさかあかりの言ったことが本当になるとは、あの時思ってもみなかっただろう。
「相変わらず右っ側は動かないし。」
「京子先輩、そんなこと…。」
「そうだよ!前よりもかなり動くようになってるし…。」
「結衣ちゃん大丈夫かなぁ。」
「結衣先輩だもん!大丈夫にきまってるよ!」
3月、結衣は受験をむかえる。
「これで結衣は高校生かー。私はなにをやってんだか。」
結局その年の受験をあなたは見送った。
まさかあかりの言ったことが本当になるとは、あの時思ってもみなかっただろう。
「相変わらず右っ側は動かないし。」
「京子先輩、そんなこと…。」
「そうだよ!前よりもかなり動くようになってるし…。」
77: 2012/08/04(土) 23:56:44.80 ID:ep3WwVfnP
「そうだけど…、殆ど役に立たないしなぁ。出来ないことだらけだ。」
「今月末には退院じゃないですか。誕生日もあるし…。」
ちなつは少し怒ったような声だ。
「これから出来ることもどんどん増えるはずたよ。」
「そうですよ。今出来ることを頑張ってください。」
「今出来ることか…。」
出来ることってなんだろう、とあなたは考える。
出来なくなったことは多い。
その代わりに、みんながあなたを助けてくれた。
自分の為に出来ること。
人の為に出来ること。
あなたの答えが出るのは、もう少しあと。
「今月末には退院じゃないですか。誕生日もあるし…。」
ちなつは少し怒ったような声だ。
「これから出来ることもどんどん増えるはずたよ。」
「そうですよ。今出来ることを頑張ってください。」
「今出来ることか…。」
出来ることってなんだろう、とあなたは考える。
出来なくなったことは多い。
その代わりに、みんながあなたを助けてくれた。
自分の為に出来ること。
人の為に出来ること。
あなたの答えが出るのは、もう少しあと。
80: 2012/08/05(日) 00:02:15.28 ID:ZUbA9W0lP
「京子ちゃんなんか変だったね。」
「きっと、結衣先輩が先に行っちゃうから…。」
「そっか…。」
「無理もないよ。」
「でも…。」
あかりは立ち止まり、うつむく。
「あかり達、ずっと一緒だよね?」
「あったりまえじゃん!」
精一杯、元気に、ちなつは答えた。
「きっと、結衣先輩が先に行っちゃうから…。」
「そっか…。」
「無理もないよ。」
「でも…。」
あかりは立ち止まり、うつむく。
「あかり達、ずっと一緒だよね?」
「あったりまえじゃん!」
精一杯、元気に、ちなつは答えた。
86: 2012/08/05(日) 00:14:50.54 ID:ZUbA9W0lP
あなたの車椅子を押すのはいつも結衣だった。
心地よい暖かさに包まれ、部室に向かう。
「もうみんな待ってると思うよ。」
「いやー、悪いねー。私ばっか祝って貰って。」
「めでたいんだから祝うのは当たり前だろ。」
「そっか!じゃあ祝え、もっと祝えー!」
「全く…。」
あなたは振り向き笑いかける。
結衣は少し照れながら笑い返した。
心地よい暖かさに包まれ、部室に向かう。
「もうみんな待ってると思うよ。」
「いやー、悪いねー。私ばっか祝って貰って。」
「めでたいんだから祝うのは当たり前だろ。」
「そっか!じゃあ祝え、もっと祝えー!」
「全く…。」
あなたは振り向き笑いかける。
結衣は少し照れながら笑い返した。
89: 2012/08/05(日) 00:19:07.41 ID:ZUbA9W0lP
「ああ!!」
「どうした?」
「忘れ物した…。」
「忘れ物?何忘れたの?」
「いやー、ちょっと。」
「戻ろうか?」
「あー…、いいよ。また今度で。」
「いいの?」
「いいって!それより早く部室に連れてけー!」
「はいはい。」
「どうした?」
「忘れ物した…。」
「忘れ物?何忘れたの?」
「いやー、ちょっと。」
「戻ろうか?」
「あー…、いいよ。また今度で。」
「いいの?」
「いいって!それより早く部室に連れてけー!」
「はいはい。」
91: 2012/08/05(日) 00:25:09.72 ID:ZUbA9W0lP
「退院あーんど誕生日おめでとー!!」
ケーキの上には15本の蝋燭。
周りには多くの友人。
「いやー、私も無事15歳だよー。」
心の底からの言葉だった。
「ほんとだね!それに退院もできたし!」
「長かったですね~。」
「全くだよ!コムケにも行けなかった!」
「そこかよ!」
あなたの顔は晴れやかだった。
かけがえのない友人達がいる。
どんなことがあっても、ずっと一緒だと思える。
「私、幸せだー!」
言葉に思いをのせ、力一杯叫ぶ。
みんなが驚きあなたを見る。
それぞれの顔を見て、とびっきりの笑顔でもう一度いう。
「私、幸せだよ!」
ケーキの上には15本の蝋燭。
周りには多くの友人。
「いやー、私も無事15歳だよー。」
心の底からの言葉だった。
「ほんとだね!それに退院もできたし!」
「長かったですね~。」
「全くだよ!コムケにも行けなかった!」
「そこかよ!」
あなたの顔は晴れやかだった。
かけがえのない友人達がいる。
どんなことがあっても、ずっと一緒だと思える。
「私、幸せだー!」
言葉に思いをのせ、力一杯叫ぶ。
みんなが驚きあなたを見る。
それぞれの顔を見て、とびっきりの笑顔でもう一度いう。
「私、幸せだよ!」
93: 2012/08/05(日) 00:30:20.25 ID:ZUbA9W0lP
退院から一週間、いつものように結衣があなたを散歩に連れ出す。
「あー、明日が入学式なのか。」
「そうなんだよ。学校もちょっと遠いし、毎日は来れなくなるかな。」
「そっか。」
「ごめんな。」
「全然いいよ~。」
それでも結衣は申し訳なさそうな顔で、あなたをみる。
「私はさ、自分に出来ることは全部頑張るって決めたんだ。」
「え?」
「だから結衣も私の心配ばっかしないでいいんだよ?」
「う、うん。」
「私は大丈夫!」
この時の結衣の顔を、あなたは見ていない。
「あー、明日が入学式なのか。」
「そうなんだよ。学校もちょっと遠いし、毎日は来れなくなるかな。」
「そっか。」
「ごめんな。」
「全然いいよ~。」
それでも結衣は申し訳なさそうな顔で、あなたをみる。
「私はさ、自分に出来ることは全部頑張るって決めたんだ。」
「え?」
「だから結衣も私の心配ばっかしないでいいんだよ?」
「う、うん。」
「私は大丈夫!」
この時の結衣の顔を、あなたは見ていない。
94: 2012/08/05(日) 00:35:56.73 ID:ZUbA9W0lP
その夜あなたは夢を見た。
あの部室に、ごらく部の四人がいる。
結衣は中学の制服を着ている。
あなたの手足は自由に動き、また昔のように走り回る。
久しぶりの「いつも通り」がそこにあった。
あなたが見た、最後の夢。
あの部室に、ごらく部の四人がいる。
結衣は中学の制服を着ている。
あなたの手足は自由に動き、また昔のように走り回る。
久しぶりの「いつも通り」がそこにあった。
あなたが見た、最後の夢。
96: 2012/08/05(日) 00:39:55.05 ID:ZUbA9W0lP
「何が、私は大丈夫だよ……、バカ…。」
少女の目から涙がこぼれた。
「出来ることって……これなのか……?」
「私はどうすればいいんだよ……京子…!」
少女の目から涙がこぼれた。
「出来ることって……これなのか……?」
「私はどうすればいいんだよ……京子…!」
100: 2012/08/05(日) 00:43:36.60 ID:ZUbA9W0lP
廊下を走る二つの足音がしだいに近付き、勢いよく扉が開く。
「京子ちゃんは!?」
あかりは肩で息をしながら問う。
目に映るのは椅子に座り俯く結衣と、ベッドに横たわるあなた。
「ねえ、結衣ちゃん…。京子ちゃん、どうなったの…。」
結衣が重い口を開く。
「まだ、氏んではいない。たぶん。」
「たぶんって…、たぶんってどういうことですか!?」
「氏んだわけじゃない…、けど。」
「京子が目を覚ますことは…、もうない。」
「京子ちゃんは!?」
あかりは肩で息をしながら問う。
目に映るのは椅子に座り俯く結衣と、ベッドに横たわるあなた。
「ねえ、結衣ちゃん…。京子ちゃん、どうなったの…。」
結衣が重い口を開く。
「まだ、氏んではいない。たぶん。」
「たぶんって…、たぶんってどういうことですか!?」
「氏んだわけじゃない…、けど。」
「京子が目を覚ますことは…、もうない。」
101: 2012/08/05(日) 00:45:20.47 ID:ZUbA9W0lP
「そんな…。嘘、だよね…?」
「や、やだなぁ…、結衣先輩。エイプリルフールはもう終わってますよ。」
ちなつは無理やり笑顔をつくる。
「ねぇ…、起きてよ、京子ちゃん。あかりだよ?ねえ、京子ちゃん!」
あかりはあなたの手を握り、泣きながら、あなたの名を呼び続ける。
「京子先輩、こんな冗談笑えないですよ…?あかりちゃんも
泣いちゃったじゃないですか。」
「そ、そうだ!特別に京子先輩の大好きなミラクるんのモノマネしますから…、ちゃんと見てくださいよ。」
ちなつの笑顔が消えていく。
声は震え、目には涙をためている。
「ま、魔女っ娘ミラクるんっ、華麗に…さん…じょ….。」
ちなつはその場に泣き崩れ、あかり同様あなたの名前をひたすらに呼ぶ。
結衣はただうなだれる。
誰もが信じたくはなかった。
あなたの声をもう聞けないということを。
あなたの笑顔を二度と見られないということを。
「や、やだなぁ…、結衣先輩。エイプリルフールはもう終わってますよ。」
ちなつは無理やり笑顔をつくる。
「ねぇ…、起きてよ、京子ちゃん。あかりだよ?ねえ、京子ちゃん!」
あかりはあなたの手を握り、泣きながら、あなたの名を呼び続ける。
「京子先輩、こんな冗談笑えないですよ…?あかりちゃんも
泣いちゃったじゃないですか。」
「そ、そうだ!特別に京子先輩の大好きなミラクるんのモノマネしますから…、ちゃんと見てくださいよ。」
ちなつの笑顔が消えていく。
声は震え、目には涙をためている。
「ま、魔女っ娘ミラクるんっ、華麗に…さん…じょ….。」
ちなつはその場に泣き崩れ、あかり同様あなたの名前をひたすらに呼ぶ。
結衣はただうなだれる。
誰もが信じたくはなかった。
あなたの声をもう聞けないということを。
あなたの笑顔を二度と見られないということを。
102: 2012/08/05(日) 00:50:55.72 ID:ZUbA9W0lP
どれだけの時間泣いていただろう。
ちなつがゆっくりと顔を上げ、鼻を啜りながら尋ねる。
「京子先輩は…これからどうなるんですか?」
少しの間を置いて、結衣が答える。
「これがあった…。」
ポケットからあなたの意思を取り出し、二人にみせる。
「これって…。」
「京子先輩のモノ…、なんですか…?」
黄色のカード。
中心には天使。
「ドナーカード…?」
あかりは震える手でそれを受け取り、裏返す。
1にひどく不恰好な丸がついていた。
ちなつがゆっくりと顔を上げ、鼻を啜りながら尋ねる。
「京子先輩は…これからどうなるんですか?」
少しの間を置いて、結衣が答える。
「これがあった…。」
ポケットからあなたの意思を取り出し、二人にみせる。
「これって…。」
「京子先輩のモノ…、なんですか…?」
黄色のカード。
中心には天使。
「ドナーカード…?」
あかりは震える手でそれを受け取り、裏返す。
1にひどく不恰好な丸がついていた。
104: 2012/08/05(日) 00:57:05.50 ID:ZUbA9W0lP
「結衣ちゃん…、どういう…。」
「京子は…氏んだわけじゃない。」
「それじゃあ…!」
「ただ…、京子の脳はもう元には戻らない。」
「それに…、ドナーカードがある。」
「の、脳氏…っていうことですか?」
「ちょっと待って…。」
結衣はサイドテーブルの上の封筒から1枚の紙を取り出す。
紙には赤や黄色のペンでいつくも線が引かれていた。
「結衣ちゃん?」
「正確には『まだ』脳氏じゃない。だけど臓器提供が決まれば脳氏判定が行われて、法的に脳氏になる。」
結衣は文章を読み上げるように抑揚なく話す。
その目はまるでぽっかりとあいた穴のようだった。
「京子は…氏んだわけじゃない。」
「それじゃあ…!」
「ただ…、京子の脳はもう元には戻らない。」
「それに…、ドナーカードがある。」
「の、脳氏…っていうことですか?」
「ちょっと待って…。」
結衣はサイドテーブルの上の封筒から1枚の紙を取り出す。
紙には赤や黄色のペンでいつくも線が引かれていた。
「結衣ちゃん?」
「正確には『まだ』脳氏じゃない。だけど臓器提供が決まれば脳氏判定が行われて、法的に脳氏になる。」
結衣は文章を読み上げるように抑揚なく話す。
その目はまるでぽっかりとあいた穴のようだった。
106: 2012/08/05(日) 01:02:45.47 ID:ZUbA9W0lP
「そしたらそのあとは…。」
「わかんないよ!!」
あかりがベッドに顔をうずめたまま、叫ぶ。
「そんな難しいこと、あかりわからないよ…。」
「あかりちゃん…。」
「でもドナーなんてしたら京子ちゃんがまた元気になった時に困っちゃうよ。」
「あかり、京子はもう…。」
「どうして京子ちゃんなの?なんにも悪いことしてないのに…。」
「少し前まで元気だったのに…。あんなにリハビリも頑張ってて…。」
「わかんないよ!!」
あかりがベッドに顔をうずめたまま、叫ぶ。
「そんな難しいこと、あかりわからないよ…。」
「あかりちゃん…。」
「でもドナーなんてしたら京子ちゃんがまた元気になった時に困っちゃうよ。」
「あかり、京子はもう…。」
「どうして京子ちゃんなの?なんにも悪いことしてないのに…。」
「少し前まで元気だったのに…。あんなにリハビリも頑張ってて…。」
107: 2012/08/05(日) 01:06:09.33 ID:ZUbA9W0lP
「あかり、京子の身体の一部は病気で困ってるひとのところにいって、そこで…。」
「嫌だよ!京子ちゃんまだ生きてるもん!」
あかりは胸の前で手を組む。
「お願い神様…京子ちゃんを元気にして。」
「やめなよ、あかり。そんなことしても…。」
「信じさせてよ…。」
あかりの手に力が入る。
「神様ぐらい信じさせて!」
「嫌だよ!京子ちゃんまだ生きてるもん!」
あかりは胸の前で手を組む。
「お願い神様…京子ちゃんを元気にして。」
「やめなよ、あかり。そんなことしても…。」
「信じさせてよ…。」
あかりの手に力が入る。
「神様ぐらい信じさせて!」
109: 2012/08/05(日) 01:11:24.23 ID:ZUbA9W0lP
少女の悲痛な叫びが病室に響く。
その叫びは堪えたはずの涙を、心の底に押し込めたはずの悲しみを呼び起こす。
「もう京子はこのまま氏ぬのを待つだけなんだ…。」
「結衣先輩…!?」
「機械を外せば心臓は止まる…。奇跡なんて起きない…。」
「やだ…嫌だよ…。」
「神様なんていないんだよ!」
「結衣先輩っ!」
パンッっという音が病室こだまする。
一瞬の静寂。
ちなつはあっと小さく声をもらし、余韻の残る右手を見る。
「わ…わたし…。」
ピリピリとした感覚を握りしめ、ちなつはその場から逃げ出した。
その叫びは堪えたはずの涙を、心の底に押し込めたはずの悲しみを呼び起こす。
「もう京子はこのまま氏ぬのを待つだけなんだ…。」
「結衣先輩…!?」
「機械を外せば心臓は止まる…。奇跡なんて起きない…。」
「やだ…嫌だよ…。」
「神様なんていないんだよ!」
「結衣先輩っ!」
パンッっという音が病室こだまする。
一瞬の静寂。
ちなつはあっと小さく声をもらし、余韻の残る右手を見る。
「わ…わたし…。」
ピリピリとした感覚を握りしめ、ちなつはその場から逃げ出した。
112: 2012/08/05(日) 01:17:45.65 ID:ZUbA9W0lP
結衣は力なく座り込む。
あかりは祈る手を崩そうとはしない。
この運命を背負うには、彼女達は若すぎた。
四人はバラバラになり、ごらく部は終わる。
大切な人を失う悲しみを、あなたは知らないままだった。
二度と開くことのないあなたの瞳から、涙がこぼれる。
それに気付いたものはいない。
大切な人を置いていく悲しみを、あなたは知っていた。
あかりは祈る手を崩そうとはしない。
この運命を背負うには、彼女達は若すぎた。
四人はバラバラになり、ごらく部は終わる。
大切な人を失う悲しみを、あなたは知らないままだった。
二度と開くことのないあなたの瞳から、涙がこぼれる。
それに気付いたものはいない。
大切な人を置いていく悲しみを、あなたは知っていた。
113: 2012/08/05(日) 01:21:27.93 ID:ZUbA9W0lP
三人が車から降りた。
結衣は少しの離れたところでタバコに火をつける。
「お家の人いるかな?」
「え?連絡してないの?」
「う、うん。」
「まあ、いるでしょ。」
ちなつがチャイムを押す。
はーい、という返事のあとドアが開き、あなたの母親が顔をだす。
「あら。今日は…。」
あかりとちなつを確認したあと、チラと道路にいる結衣をみる。
「三人で来てくれたのね。よかった。」
結衣は少しの離れたところでタバコに火をつける。
「お家の人いるかな?」
「え?連絡してないの?」
「う、うん。」
「まあ、いるでしょ。」
ちなつがチャイムを押す。
はーい、という返事のあとドアが開き、あなたの母親が顔をだす。
「あら。今日は…。」
あかりとちなつを確認したあと、チラと道路にいる結衣をみる。
「三人で来てくれたのね。よかった。」
115: 2012/08/05(日) 01:26:56.27 ID:ZUbA9W0lP
「私たち京子ちゃんに…。」
「ありがとうね。どうぞ、あがって。」
二人がお邪魔しますと家に入った後も扉は開いたままだった。
それを見て結衣は小走りで玄関に向かう。
「すみません。」
「いいのよ。久しぶりね、結衣ちゃん。」
「はい…。」
「ありがとうね。どうぞ、あがって。」
二人がお邪魔しますと家に入った後も扉は開いたままだった。
それを見て結衣は小走りで玄関に向かう。
「すみません。」
「いいのよ。久しぶりね、結衣ちゃん。」
「はい…。」
117: 2012/08/05(日) 01:32:36.13 ID:ZUbA9W0lP
二人が線香をあげ、手を合わせる。
暫く目を閉じた後、もう一人の為に二人は横にずれた。
「結衣ちゃん。」
「うん。」
結衣は写真をみつめ、小さく京子とつぶやいた。
手を合わせ、目を閉じる。
潤んだ瞳の奥には、あの頃と変わらないあなたの笑顔。
あなたはいつも笑っている。
「何が…、正しかったのかな。」
目を閉じたまま、自問するように結衣が言った。
「京子のために、私たちはどうすればよかったのかな。」
「そんなこと…、わかりませんよ…。」
「あかりも…。」
あの時から、答えは出ていない。
暫く目を閉じた後、もう一人の為に二人は横にずれた。
「結衣ちゃん。」
「うん。」
結衣は写真をみつめ、小さく京子とつぶやいた。
手を合わせ、目を閉じる。
潤んだ瞳の奥には、あの頃と変わらないあなたの笑顔。
あなたはいつも笑っている。
「何が…、正しかったのかな。」
目を閉じたまま、自問するように結衣が言った。
「京子のために、私たちはどうすればよかったのかな。」
「そんなこと…、わかりませんよ…。」
「あかりも…。」
あの時から、答えは出ていない。
119: 2012/08/05(日) 01:37:35.41 ID:ZUbA9W0lP
「ごめんなさいね。碌なもの出せなくて。」
「い、いえ、おかまいなく。」
「それにしても、三人揃って来てくれて嬉しいわ。」
「やっとこれが渡せるもの。」
そう言って引き出しから4枚の封筒を取り出し、そのうちの三枚を一人ずつにわたす。
もう一枚は三人の中心に。
「これは…?」
ちなつが封筒をじっくりと見つめながら尋ねた。
「あの子があなた達に宛てた手紙よ。」
「15歳の誕生日、ドナーカードと一緒に書いてたわ。」
結衣はハッとする。
「あの時の、忘れ物…?」
「え?結衣ちゃんどうしたの?」
「い、いえ、おかまいなく。」
「それにしても、三人揃って来てくれて嬉しいわ。」
「やっとこれが渡せるもの。」
そう言って引き出しから4枚の封筒を取り出し、そのうちの三枚を一人ずつにわたす。
もう一枚は三人の中心に。
「これは…?」
ちなつが封筒をじっくりと見つめながら尋ねた。
「あの子があなた達に宛てた手紙よ。」
「15歳の誕生日、ドナーカードと一緒に書いてたわ。」
結衣はハッとする。
「あの時の、忘れ物…?」
「え?結衣ちゃんどうしたの?」
121: 2012/08/05(日) 01:41:53.60 ID:ZUbA9W0lP
結衣はその問いには答えず、丁寧に封筒を開き始め、二人もそれに続いた。
中には一枚の便箋。
魔女っ娘ミラクるんが隅にプリントされている。
「これ…。」
「京子ちゃん…。」
それぞれの名前と「だいすき」の文字。
紙いっぱいに、震える不安定な筆跡で。
それに込められた、あなたの思い。
「京子先輩…、京子先輩…!」
「ぅう…。うわあああ!」
堪えきれず泣き出す二人の後輩。
結衣はもう一枚の封筒を震える手で、ゆっくりと開く。
中には一枚の便箋。
魔女っ娘ミラクるんが隅にプリントされている。
「これ…。」
「京子ちゃん…。」
それぞれの名前と「だいすき」の文字。
紙いっぱいに、震える不安定な筆跡で。
それに込められた、あなたの思い。
「京子先輩…、京子先輩…!」
「ぅう…。うわあああ!」
堪えきれず泣き出す二人の後輩。
結衣はもう一枚の封筒を震える手で、ゆっくりと開く。
123: 2012/08/05(日) 01:49:00.23 ID:ZUbA9W0lP
「あの、バカ…。」
手紙の文字が滲んだ。
『みんなずっといっしょだよ』
手紙の文字が滲んだ。
『みんなずっといっしょだよ』
124: 2012/08/05(日) 01:50:44.24 ID:ZUbA9W0lP
三人の女性が墓前に立つ。
「ごめんな、京子。」
「寂しかったですよね。」
「でも、これからはあかり達とずっと一緒だからね!」
四人が揃う。
また部活が始まる。
「そうだ…。」
結衣がポケットから煙草を取り出し火をつける。
「ちょっと結衣先輩、こんな時まで吸わなくても…。」
ふふっ、と結衣は軽く笑い、線香の隣に煙草を立てた。
その横に半分ほど残った箱を置く。
「ごめんな、京子。」
「寂しかったですよね。」
「でも、これからはあかり達とずっと一緒だからね!」
四人が揃う。
また部活が始まる。
「そうだ…。」
結衣がポケットから煙草を取り出し火をつける。
「ちょっと結衣先輩、こんな時まで吸わなくても…。」
ふふっ、と結衣は軽く笑い、線香の隣に煙草を立てた。
その横に半分ほど残った箱を置く。
126: 2012/08/05(日) 01:54:26.58 ID:ZUbA9W0lP
「京子ちゃん煙草吸わないよ?」
「京子ラムレーズン好きだったろ。かわりだよ。」
二人の後輩は顔を見合わせる。
「どういうことですか?結衣先輩。」
んーっと伸びをして結衣は元気に笑う。
「じゃあ行こうか。」
「ねえ、結衣ちゃん~!」
三人は歩き始める。
もう「ひとり」にはならない。
これからはいつもあなたがいて、いつも四人。
あなたは他人の身体の中で生きているわけではなかった。
彼女たちの、残された人達の心の中で生きていたから。
「京子ラムレーズン好きだったろ。かわりだよ。」
二人の後輩は顔を見合わせる。
「どういうことですか?結衣先輩。」
んーっと伸びをして結衣は元気に笑う。
「じゃあ行こうか。」
「ねえ、結衣ちゃん~!」
三人は歩き始める。
もう「ひとり」にはならない。
これからはいつもあなたがいて、いつも四人。
あなたは他人の身体の中で生きているわけではなかった。
彼女たちの、残された人達の心の中で生きていたから。
128: 2012/08/05(日) 01:57:06.29 ID:ZUbA9W0lP
「え!?結衣先輩、そんな理由であの煙草吸ってたんですか!?」
「う、うん…。」
「なんて言うか…、結衣先輩ってやっぱりさみしがりやですね…。」
「い、いいだろ!そんなこと!」
「結衣ちゃん顔真っ赤~!」
あなたに会えて、幸せだった。
そしてあなたを愛した。
ありがとう。
だからこの物語はあなたに。
感謝しなさいよね、歳納京子。
「う、うん…。」
「なんて言うか…、結衣先輩ってやっぱりさみしがりやですね…。」
「い、いいだろ!そんなこと!」
「結衣ちゃん顔真っ赤~!」
あなたに会えて、幸せだった。
そしてあなたを愛した。
ありがとう。
だからこの物語はあなたに。
感謝しなさいよね、歳納京子。
129: 2012/08/05(日) 01:58:04.93 ID:ZUbA9W0lP
おわり
お前ら手厳しいな
お前ら手厳しいな
引用: あかり「神様ぐらい信じさせて!」



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