129: 2011/09/02(金) 23:54:17.99 ID:s+jwSGpa0



先日行われた小テストでトンデモなく酷い点数を取ってしまった上条当麻は、ホームステイ中の親戚・インデックスと、
学校一の優等生・一方通行(どちらも上条の設定上の名称である。断じて本名ではない)と共に分かりやすい参考書を求めて商店街を尋ねていた。

一方通行(仮称)の勧めで上条は参考書を、理解出来ない日本語があったら直ぐに対処できるようにとインデックス(仮称)は国語辞典を購入した後、
人ごみと暑さに負けて冷房目当てに近くのファストフード店へと駆け込む。


「外はガチで熱ィな……おい『シスター』、俺とコイツで飲みモン買っとくからオマエは席探しとけ」

「了解なんだよ、『第一位』」


念のために注釈を置くが、彼らまで上条に感化されたわけでは決してない。
最近はもう上条の設定に乗ってやった方が楽なのではないかと、彼と関わりを持つ内の数名は遊び半分で厨二ゴッコをする始末なのだ。
まあ、彼らの場合はあくまで悪ノリ程度なのだが。

金は払ってやるが荷物は上条に持たせる気満々の一方通行(仮称、以下略)は自分用のアイスコーヒーに加え
インデックス(同上)用にソフトドリンク全種を注文してから、上条は何を頼むのかと振り返った。

だが予想と反して後ろに並んでいたはずの上条は後ろにいない。
それどころか、食事席のある2階へ繋がる階段辺りでずっとキョロキョロ周囲を窺っているではないか。
うわ、嫌な予感しかしねェ。


「一応聞いておいてやる。――――どうした?」

「2階から異能のチカラの気配がする………インデックスが危ない!一方通行、ここは任せた!!」


いや任せたと言われても。
一体何をしろと………あ?まさか杖つきの人間にドリンク全部持って運んで来いと言っているのか。


「あのスイマセン。さっき注文したドリンク、全部LからSに替えて下さい。あとあの馬鹿にはセンブリ茶を」


少しでも自身の負担を軽くするため、一方通行は最後の悪あがきに訂正をした。




とある魔術の禁書目録 32巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

130: 2011/09/02(金) 23:55:14.46 ID:s+jwSGpa0





上条が2階へと駆け上がると、インデックスは見知らぬ少女と席を共にして談笑していた。
コスプレ用の似非巫女服を身に纏った、日本人形のような少女だ。


「お前が気配の根源か……!」

「よく分からないけど。この巫女服なら向かいの店の『近代日本文化展』のバイトで着てただけ。今は30分の休憩中」

「分からないままで言いんだよ、あいさ。ちょっととうまを黙らせるから待っててね」


席が満席だったため相席させてもらった少女・姫神秋沙に自分まで変人と思われないよう、
インデックスは上条の耳をクイクイと手繰り寄せ、コソコソと厨二的で適当な注意を入れる。
彼は厨二設定に基づいて説明しないといつまで経っても納得してはくれないのだ。面倒臭ぇ。


「あいさはね、今まさに追われてる身なんだよ。だからあんまり騒がないであげてほしいかも」

「………な!吸血頃しの血の所為か!!アイツを使って吸血鬼を誘き出そうって魂胆かよ、卑怯な奴め………ところで一体誰に追われてるんだ?」

「えっとそれはー……………ああ!鋼の……じゃねえや、錬金術師なんだよ!」


近くの席で小学生が読んでいた大人気コミックスを参考に適当な敵と理由をでっち上げたインデックスは、
実はあいさも自分の価値は知らないの。だからそっとしておいてあげてね、と再び念を押す。


「あ……私。そろそろ戻らないと。休憩時間終わっちゃう」


が、上条への説得で時間を喰ったために、折角出来かけた友人候補は無情にもバイトへと戻っていってしまった。
日本での友人が少ないインデックスにとって、これは大きな痛手である。


「もぉおおおお!とうまのせいなんだからね、折角あいさとならお友達になれると思ったのにぃいいい!!」


上条の襟元を背伸びしてつかみガクガクと揺らしながらインデックスは涙を浮かべた。
上条が来るまでは母国イギリスのことや、姫神がバイトしているという近代日本文化についてなど盛り上がっていたというのに。

そんなインデックスを見た上条は、彼女の両手をそっと握った。
何を言ってるんだインデックス。アイツとお前はもう立派な友達じゃねえか、と。
そう、だから…………


「そう、だから!姫神を着け狙う錬金術師を、皆でやっつけに行こうぜ!!」

「     」


この中で誰が一番不幸かって?
やっとの思いでドリンクを2階まで運んで来たのに姫神の尾行に引っ張られていった一方通行に決まっているさ!!




131: 2011/09/02(金) 23:55:53.95 ID:s+jwSGpa0





「………これよォ………下手したら犯罪にならねェか?」


姫神のバイト先、ファストフードの向かいのビルの前で熱い中彼女が出てくるのを待っていた一方通行は呟いた。
完全な独り言であったのだが、同じことを思っていたインデックスがそれを拾う。


「あいさが家に着くまでこっそり尾行して敵を捕まえるんだって。………存在しない筈の敵を」


はァ……と二人の間に重い溜息が流れる。
このシリーズ中、もう何回溜息を吐いたことだろう。


「お、姫神が出て来た!追うぞ!!」


そうこうしている内に、バイトを終え私服に着替えた彼女を見つけだして走り出した上条の後ろを二人もなんとか追いかける。
彼を一人にしてはいけない。それこそ彼は本当に犯罪者になってしまう。

電車に乗って隣町へと向かった姫神は、そのまま『三沢塾』と看板の下がった予備校へと入っていってしまった。
このまま授業があるのだろうか。
しかし、入口に張り付けてある予定表では今日の開校は夜からになっている。今はまだおやつの時間だ。


「姫神のヤツ、入ってから鍵掛けやがったな………一方通行、お前のベクトル操作で開けてくれ」


ハイハイと適当に相槌を打って、一方通行はポケットから細い針金を取り出すと上条からは見えないようにそれを鍵穴へと差し込んだ。
所謂ピッキングというやつだ。
以前鍵を失くした宝箱をベクトル操作で開けて欲しいと頼まれてからこっそり練習したなどとは、恥ずかしくて誰にも言えない。

ものの5秒で解錠させた一方通行は、流石第一位だぜ!と上条に囃し立てられながら三沢塾のドアを開ける。
まだ通常の開校時間じゃない所為か何処もかしこも薄暗い。


「エレベータが動いてやがるな………止まったのは5階、か?」


エレベータで後を追い姫神本人とバッティング、なんて展開にならないよう三人は階段で5階を目指しながら足音を立てないようこっそりと歩く。
ちなみにこの階段昇降、杖をつかねばならない一方通行には地味にキツい。

そして、5階まで何とか登り上がった一行は見た。



―――――――緑髪の外人男に抱きしめられ、逃げ惑う姫神秋沙の姿を!!




132: 2011/09/02(金) 23:56:47.04 ID:s+jwSGpa0



「あいさ!一体どうしたんだよ!!」


それは何処からどう見てもいたいけな少女が屈強な外人男に襲われ、いやぁ!離して!な状況だった。
現に、突然のインデックスの登場に驚いて隙が出来た男の腕から逃げ出した姫神が、こちらに向かって走り寄って来る。
腕の中に収めていた筈の姫神が消えたことで、男が叫んだ。


「―――――何故だ秋沙!断然、私はお前を愛しているというのに!!」
「私もアウレオルスを愛していた。でもいけない。あなたには妻も子もいる」
「当然、私は秋沙を選ぶ!!私は理解したのだ!この日本で!先に秋沙に出会っていれば先にお前と結婚したと!!」
「それは嘘。あなたは予備校の英語教師として単身出稼ぎに来た寂しさを埋めた私を。好きだと勘違いしただけ」


「…………オイ、なンか心成しか昼ドラ風味なンだが。俺達ァどうすりゃいいンだ?」

「…………やっぱりあいさとはお友達になれそうにないかも………」


この明らかな不倫現場でドン引きしている部外者二名を余所に、二人の仲間である筈の約一名だけが良く分からない闘志を燃やしたことに二人は気付かなかった。
そう。二人の後ろで拳を握った上条は、すう、っと息を大きく吸い込む。


「だから。もう別れたいの。私はあなたの寂しさを利用してしまった」
「勘違いなどではない!頑然、私の気持ちは本物だ!!」


そして、


「―――――ふざけんじゃねえ!!!!」

「あ、ヤベェ始まっちまった」
「思わず止めるの忘れたんだよ」


「『黄金錬成』なんて使いやがって……自分の思い通りに現実を歪める魔術まで使って、姫神を利用するつもりかよ!姫神の心を無理矢理奪いやがって!!」

「奪いきれてない奪いきれてない、明らかに拒絶されてンじゃねェか」
「またご都合展開チート級の設定が完成してしまったんだよ………」


「だが残念だったな魔術師。俺が来た以上、もうお前の好き勝手になんかさせやしねえ!!」


そして上条は急な展開に呆然とする姫神の肩をそっと掴むと、先程までとは打って変わった優しい声で囁いた。


「――――――安心しろ。俺が全部解決してやる、この右手の幻想頃しで!!」


姫神秋沙の頬が優しい声音にボッと染まる。
よく分からないけど、抱いて!が現実に成り立つならきっと今この時だ。




133: 2011/09/02(金) 23:58:03.44 ID:s+jwSGpa0



うおおおおおおお!!
大きく振り翳した右手をそのままに上条が不倫外人男、アウレオルスへと殴りかかる。
右手を警戒して大きく避けたアウレオルスを、しかし上条は足払いし、


「出たああああああ!とうまお得意のマウントポジション!!」
「おいコレ本当に傷害罪とかで訴えられねェよな。俺は関係ないからな、俺は!!」


1032回目の上条の右拳が、アウレオルスの鼻っ面を直撃した。
青痣と腫れで彼の顔形が見る見るうちに変形していく。
そこまでしてやっと上条も満足したのか彼の図体から体を退け、お約束の妄想全開説教を留めとばかりお見舞いする。


「もう二度と、黄金錬成なんて使うな。魔術で人の心を操ろうなんて間違ってる………そう思わねえか?」

「あ、ああ。よ、よよよよく分からないが当然その通りだと私も思う」

「――――これだけの騒ぎを起こしたんだ。アウレオルス、きっとお前も直ぐに追われる身になっちまうな……
 ……なあ、友人の姫神を利用されたお前の気持ちも分かる。
 だけど、次期イギリス清教最大主教ローラ=スチュアートとしてなんとかしてやってくれねえか、インデックス?」

「ああー………なんとかしておくんだよ。任せておいて欲しいかも」


良かったな、アウレオルス!
自分が殴り飛ばした相手に向かって笑顔する上条の感情も妄想も、もう一方通行には理解出来ない。


「解説くれシスター、つまりどういうことなンだってばよ」
「私、インデックスこと本名ローラ=スチュアート(実名)は次期最大主教にして現魔道書図書館。
 黄金錬成&吸血頃し騒ぎの犯人として追われる身となった錬金術師をそのコネで救ってあげることになりました、という設定」
「おk把握」



「――――――姫神。これからは何かあったら直ぐに俺を頼るんだぞ」

「か。かっこいい。かも」


相変わらず頬を染め続ける姫神秋沙。


「吸血頃しの能力で生まれる負の連鎖から、絶対に俺が護ってやるからな!」

「残念。厨二病は。お断り」


彼女が真顔になると同時に。
顔面血だらけの同僚を発見した授業準備に来た講師が警察を呼ぶまで、残り1分30秒。




134: 2011/09/02(金) 23:58:51.11 ID:s+jwSGpa0
以上です。
頂いたコメント見てたら色々ネタが出て来たので続いてしまいました。
ダラダラ続けてしまって申し訳ありません。これで最後ということで勘弁下さい。

引用: ▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-33冊目-【超電磁砲】