163: 2012/08/21(火) 22:44:03.01 ID:FYVOFdny0




~男の部屋~


男「……」

男「……」

男「…………」


男(魔女……)


~~

魔女『……私はいいんだけど』

魔女『お前、絶対イヤがるだろうから』

~~


男「……」

男「……」


男(俺はアイツを……)

男(困らせているだろうか……)
AHS Synthesizer V 2 AI 宮舞モカ
164: 2012/08/21(火) 22:45:28.33 ID:FYVOFdny0
男(……アイツの言葉の真意は、分からないけど)

男(アイツは、俺の頼みを聞き入れてくれた……)

男「……」

男「…………でも」

男(俺が……、俺の不能を治したいのは……)


~~

兄『もう少し早く相談してくれても、よかったんだぞ』

兄『すごく心配してたぞ、男のこと。……父さんも』

~~


男(……兄さんや、母さんに)

男(心配をかけたくないから……)


男「……」

男「……」

165: 2012/08/21(火) 22:47:08.23 ID:FYVOFdny0
男(……自分勝手な理由で)

男(アイツを……)

男(魔女を……)


男「……はぁ」



男(俺はアイツを……)

男(困らせてしまっただろうか……)


男「……治ったところで、使うアテもねーのにな……」

兄「……何のアテだって?」

男「ぎゃ」

兄「ご飯できたよ」

男「の……、ノックぐらいしてください……」

兄「ははは、ごめんごめん」

166: 2012/08/21(火) 22:48:19.65 ID:FYVOFdny0
兄「早く降りてきてな。今日はゴーヤチャンプルーだって」

男「はい。……あ、兄さん……」

兄「ん?」

男「あの、えっと……ちょっと、お願いが……」

兄「珍しいね、どうしたんだ?」

男「あの……あ、明日なんですけど……」

兄「明日?」

男「明日ちょっと……、出かけてきても、いいですか……その、ええと……泊まりがけで」

兄「泊まり……」

男「あ、友人の……ところに。……翌朝には、すぐ帰りますから」

兄「泊まり……、友人……ふふ、そうかそうか」

男「……」

167: 2012/08/21(火) 22:50:32.86 ID:FYVOFdny0
兄「でも、駄目だぞ、男」

男「……あ、分かり……ま……」

兄「……『翌朝すぐ帰る』なんて、冷たいこと言ってちゃ駄目だ」

男「へ」

兄「いいかい? 一緒に夜明けを迎えるだろ? その余韻をだね……こう、日が高く昇るまでね、味あわないと」

男「へ?」

兄「夜の情熱とはまた違う、日差しの中で女の子をこう……、その……、ほら! っていうのも、男の甲斐性ってもので……」

男「いや、あの、兄さん……?」

兄「……うん、何にせよ、だ」

男「兄さん?」

兄「ゆっくり楽しんできなさい」ポンポン

男「……えっと、あの」

兄「母さんには、俺からちゃんと、全部説明しておくから」

男「やめて!」

168: 2012/08/21(火) 22:51:15.96 ID:FYVOFdny0
~翌日・日中:町外れの寂れた洋館~


キンコーン


男「……」


キンコーン


男「……」

男「……」


キンコーン


ガチャリ


魔女「……ぅー」

男「……お」

魔女「……あ?」

169: 2012/08/21(火) 22:52:46.65 ID:FYVOFdny0
男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……何しにきたの」

男「……えぇー……」

魔女「冗談だ」

男「……」

魔女「……にしても、来るの早すぎだろ……。ふぁ……」ノビー

男「何時来いとも、言ってなかっただろ」

魔女「儀式っていったら夜だろ、お前……」

男「知らんけど……」

176: 2012/08/23(木) 01:03:31.39 ID:GLGFYm8W0
魔女「……ま、あがれー」ヨタヨタ

男「パジャマはだけてんぞ」

魔女「寝てた……」ヨタヨタ

男「夜更かししたんだろ」

魔女「夜型なんだよ……」

男「……」

魔女「……」

男「……眠そうだ」

魔女「寝すぎてねみぃ。……っと、男」

男「おう」

魔女「折角だから、お前も手伝え」

男「ん?」

魔女「儀式の準備」

177: 2012/08/23(木) 01:03:57.26 ID:GLGFYm8W0
~洋館:庭の物置~


魔女「……あったかー?」

男「ねぇよ……、どこだよ蝋燭って……」ガサゴソ

魔女「その辺だって。その木の籠どかして――」

男「……、っと……これか?」ゴソゴソ

魔女「ん、それそれ。それから、杯と、釜と……、あとは短剣(アサミィ)」

男「短剣……? って、これ……?」

魔女「おう、それだそれ! バッチリじゃん!」

男「……でも、これ……」ボロボロ

魔女「……ぁー、錆びて……」

男「……使えるか?」

魔女「……あー」

男「……」

魔女「……台所の、包丁使うか」

男「おい」

178: 2012/08/23(木) 01:05:30.18 ID:GLGFYm8W0




~洋館:台所~


魔女「包丁あったー」

男「いいのかよ、そんな適当で」

魔女「うるせ、いいんだよ。この包丁で、指切ったこともあるし」

男「……」

魔女「術者の血を吸った道具は、術者と霊的に深い絆を帯びる」

男「……へぇ」

魔女「……はず」

男「……」

魔女「あっ、塩もいる! いっぱいいる!」

男「……いきいきしてきたなー」

179: 2012/08/23(木) 01:07:45.74 ID:GLGFYm8W0




~洋館:居間~


魔女「……」

男「……」

魔女「……そうそう」

男「……こうか?」モソモソ

魔女「……もっと、ちゃんと……奥まで入れろ」

男「……これ以上、入らねぇだろ」

魔女「……」

男「壊れるぞ」

魔女「……大丈夫だから」

男「……」

魔女「……さっさとしろよ」

男「おう……」モソモソ


ビリリッ


魔女「あぁーっ! また小袋破きやがった! このクソ不器用ゴリラ!」

男「な……!? 俺はこーわーれーる、って言ったぞクソ魔女! これ以上ハーブ詰め込めるワケねぇだろ、こんな袋!」

魔女「加減しろ加減! 呪符作りくらい、サルでももっと上手くやるわ!」

180: 2012/08/23(木) 01:08:20.39 ID:GLGFYm8W0
男「……」モソモソ

魔女「……」モソモソ

男「……こうか?」

魔女「オッケー」

男「……」モソモソ

魔女「……法の呪符は、あと5つくらいかな」

男「おーう」モソモソ

魔女「……」

男「……」モソモソ

魔女「……男ー」モソモソ

男「おーう」

魔女「夕飯、何がいいー」

男「……あー」

魔女「……」モソモソ

男「肉」

181: 2012/08/23(木) 01:09:02.54 ID:GLGFYm8W0
~夕方:ダイニング~


男「……ふぅん」モグモグ

魔女「……で、このペンタグラムの星。それぞれの頂点が……」

男「……」モグモグ

魔女「愛、知性、知識、法、力。こう……時計回りに対応する。これが『真珠のペンタグラム』」

男「……美味いな、肉野菜炒め」

魔女「炒めるだけだろこんなの。誰が作っても一緒だろ」

男「……いや、でも、なんか」

魔女「……」

男「美味い」

魔女「そうかよ」

男「……」モグモグ

182: 2012/08/23(木) 01:09:56.45 ID:GLGFYm8W0
魔女「……」モグ

男「……肉、よけてる?」

魔女「肉食えない」

男「ありゃ」

魔女「お前はちゃんと食っとけ」

男「……」

魔女「食事が終わったら、はじめるぞ」

男「……おう」

魔女「人生最後の食事、よく味わえよ」

男「縁起でもねーこと言うな……」

魔女「ヒッヒ」

男「ちなみに……、その儀式って、名前とかあるのか?」

魔女「『寝室の儀式』」

183: 2012/08/23(木) 01:10:58.02 ID:GLGFYm8W0
~夜:寝室~


男「うわ……」


男(……寝室というには)

男(あまりに広すぎる部屋……)

男(だだっ広く、いっそ殺風景で……)

男(薄暗く……、壁際に並んだ蝋燭だけが……)

男(部屋を照らしている……)

男(……鍋、ホウキ、お守り――呪符、包丁、釜、鳥の羽……)

男(よく分からないものたちが、一見、不規則に、無秩序に……投げられている)


魔女「んーっ、久しぶりだなぁ、こういうのー」

男「……」

魔女「よーし、がんばるぞー」ヌギヌギ

男「待て待て待て待って」

184: 2012/08/23(木) 01:11:43.87 ID:GLGFYm8W0
魔女「あ?」

男「何脱いでんだお前!」

魔女「……あぁ、空衣」

男「……すかいくらっど?」

魔女「スカイクラッド。……魔法の正装だ」

男「全裸だが」

魔女「まぁ、脱がなくてもできるけど……、この『寝室の儀式』は、脱いだほうがいいな」

男「……マジか」

魔女「お前もはよ脱げー」ヌギヌギ

男「マジかー……」

魔女「俺たちゃ裸がユニフォーム~」

185: 2012/08/23(木) 01:12:12.96 ID:GLGFYm8W0




男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……よし」

男「……」

魔女「まずは塩水で、全身を清め……」

男「……」

魔女「……」バシャッ

男「ぶ……っ! つめて……っしょっぺぇ! 馬鹿かお前、いきなり顔にかけるやつが――……」

魔女「……ったく、もーっとリラックスしろよデカブツー……」

男「……」

魔女「恥ずかしいとか、不安だとか、緊張するとか……、内向きの感情は、全部忘れろ」

男「……」

186: 2012/08/23(木) 01:13:12.99 ID:GLGFYm8W0
魔女「魔法はな、本当は楽しいものなんだよ」

男「……おう」

魔女「……私さぁ」

男「おう」

魔女「お前が笑ってるとこ、見たことねーんだけど」

男「……そんなことねぇだろ」

魔女「……ほらー」グニー

男「……いって、ツネんな」

魔女「笑ってみろってー」ムニー

男「……ヒッヒッヒ」

魔女「キモい笑い方やめろー」

男「お前の真似だよ」

魔女「んなことねぇだろボケ」グニニ

男「いって……、痛い痛い! ……ははっ」

194: 2012/08/27(月) 23:26:19.17 ID:9FODIaX/0
魔女「そうそう、そうやって笑っとけ」

男「……」ニコッ

魔女「…………ぶふっ」

男「……」ニコニコ

魔女「……っく、ククク……っははは! あははは!」

男「笑いすぎだろお前この野郎!」

魔女「ひぃ……だって、はは……男、笑うと全然顔ちげー」

男「……ていうか、普通にも笑えるんじゃねーか、お前」

魔女「ヒッヒ」

男「ヒッヒヒ」

魔女「ヒッヒッヒ」

195: 2012/08/27(月) 23:27:17.11 ID:9FODIaX/0
魔女「さーて、次は四隅に香を焚いて――……」

男「……」

魔女「ちょっと待ってろなー」

男「おう」


男(……魔女は)

魔女「……祝福あれ、東の霊。芳しき薫風よ、清冽の気流よ。不浄なるものを去らしめ、我等が肺を清いもので満たせ」

男(……いつもより)

魔女「かくあるべし」


男(……楽しそうで)

魔女「……祝福あれ、南の霊。暖かな炉の火よ、情熱の燠火よ。不正と悪を焼き払い、我等が心臓を熱いもので満たせ」

男(……それはまるで)

魔女「かくあるべし」

196: 2012/08/27(月) 23:28:26.83 ID:9FODIaX/0
男(……遊び、はしゃぐ少女のようで)

魔女「……祝福あれ、西の霊。子宮を満たす羊水よ、恵みの雨よ。魂と肉の渇きを癒し、我等が血を優しいもので満たせ」

男(……儀式という言葉の持つ)

魔女「かくあるべし」


男(……怪しい、いかがわしいイメージとは)

魔女「……祝福あれ、北の霊。生命を育む土壌よ、女神の肉たる大地よ。全ての敵、仇なすものを放逐し、我等が骨を力強いもので満たせ」

男(……随分違って)

魔女「……かくあるべし」


魔女「寝室は閉ざされた。儀式は開かれた」

男(……俺は、正直……)

魔女「……男、来い」

男(……魔女に)

魔女「……おとこー?」

男(……目を、奪われて――……)

198: 2012/08/27(月) 23:31:08.44 ID:9FODIaX/0
魔女「いいか、私の後に続いて――……」

男「……なぁ」

魔女「おう」

男「……匂いが」

魔女「あんまり吸うなよ」

男「……」

魔女「香の匂いだ。一気に吸うと、具合悪くなるぞ」

男「……分かった」

魔女「……私の後ろについて歩くんだ」

男「おう」

魔女「歩きながら、塩を零すから、お前も同じように塩を撒く」

男「おう」

199: 2012/08/27(月) 23:32:16.37 ID:9FODIaX/0
魔女「私が呪文を言うから、お前も続けて、同じ言葉を言う」

男「分かった」

魔女「それから……、一番大切なこと」

男「……?」

魔女「完全な愛と完全な信頼」

男「……」

魔女「パーフェクト、ラーブ」

男「……」

魔女「パーフェクト、トラースト」

男「……」

魔女「それが魔法の真髄だ」

男「……」

200: 2012/08/27(月) 23:32:16.37 ID:9FODIaX/0
魔女「私が呪文を言うから、お前も続けて、同じ言葉を言う」

男「分かった」

魔女「それから……、一番大切なこと」

男「……?」

魔女「完全な愛と完全な信頼」

男「……」

魔女「パーフェクト、ラーブ」

男「……」

魔女「パーフェクト、トラースト」

男「……」

魔女「それが魔法の真髄だ」

男「……」

201: 2012/08/27(月) 23:36:09.56 ID:9FODIaX/0
魔女「お前は、私を愛せるか?」

男「……」

魔女「どうなんだ」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……愛せるって言っとけ。先に進まねぇ」

男「……愛せる」

魔女「私を信じるか?」

男「信じる」

魔女「ん、それでいい」

男「……」

魔女「笑って」

男「……あはは」

202: 2012/08/27(月) 23:37:03.10 ID:9FODIaX/0
魔女「……こっちへ」

男「……、なぁ、魔女ー」

魔女「ん」

男「……別に、無理に言ったんじゃないぞー」

魔女「そうだな」

男「……なぁ」

魔女「愛してる」

男「……」

魔女「私も。お前を信じてるよ」

男「……」

魔女「さぁ。部屋の中心から」

男「……あぁ」

203: 2012/08/27(月) 23:38:10.92 ID:9FODIaX/0
魔女「原初の夜よ、始まりの夜よ」

男「原初の……夜?」

魔女「……考えなくていい。間違っててもいい、聞こえたままに」

男「……原始の夜、はじめの夜よ」

魔女「太陽孕まぬ処Oの女神よ」

男「太陽払わぬ処Oの女神よ」

魔女「その力は未だ見ぬ愛、この寝室に降り立て」

男「その力は……愛、この寝室に降り立て」

魔女「夜明けの――……いてっ」

男「あ、ごめ……カカト蹴った」

魔女「ひひ、バーカ」

男「……あはは」

204: 2012/08/27(月) 23:38:46.21 ID:9FODIaX/0




男(魔女のうなじを見下ろしながら……)

男(その後ろに続いて、ゆっくりと歩く……)


サラ… サラ…


男(大きな杯に入れた塩を、線を描くように撒きながら……)


ゴツッ


男(……時折、小さな魔女と、歩幅がずれて)

男(二人の身体がぶつかる……)


クス クス…


男(それが何故か、おかしくて……)

男(二人して含み笑いを漏らす……)

205: 2012/08/27(月) 23:39:51.45 ID:9FODIaX/0
魔女「血を流し、収穫される神聖な穀物」

男「雄鹿の角の狩猟の神」


男(呪文のリズムが狂って……)

男(俺と、魔女の声が重なると……)

男(無意味で、だけど不思議と心地良い重奏になる……)


男(そして、触れてもいないのに……)

男(……魔女の心臓の鼓動を感じる)


男(……魔女の息遣いを感じる)


男(……魔女の匂いを感じる)


男(……魔女の体温を感じる)


男(……塩の跡は)

男(……いつしか複雑な魔方陣になって……)

男(……俺は……)

206: 2012/08/27(月) 23:40:58.10 ID:9FODIaX/0
産まれ来る星、氏の暗黒

東風の支配者、ダンスの王

あなたは母なる海にして航海者

くべられた薪にして燃盛る炎

豊穣は約束された枯渇

花と刺は光り輝く

車輪は回る

夢は満ちる

グラスを満たす辛口の飲み物のように

女神の愛と力はベッドに満ちる

アaaaラディア、ヌuuuuイト、ウラaaaaニアaaaaaaa

アaaaaaaaフロディiiiiiiiiテeeeeee、イiiiiシスuuuuuu、マaaaaaaaリアaaaaaンネeeeeeee

そして(女神の秘されたる名)aaaaaaaaa――――

207: 2012/08/27(月) 23:41:43.89 ID:9FODIaX/0




男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……眠いか」

男「……」コクン

魔女「……さぁ、ベッドへ」

男「……」ヨロ

魔女「……ゆっくり」

男「……」コク

208: 2012/08/27(月) 23:42:44.37 ID:9FODIaX/0
魔女「……聞こえるか?」

男「……」コク

魔女「話せる?」

男「……ぁ」

魔女「……これ、何本だ?」

男「……二、本」

魔女「……何本?」

男「……三本」

魔女「……これは」

男「……沈む」

魔女「……」

男「……ベッドの、下に」

209: 2012/08/27(月) 23:44:00.85 ID:9FODIaX/0
魔女「……」

男「……」

魔女「……」

男「……落ち……」

魔女「……大丈夫」

男「……」

魔女「……怖くない」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……」

男「……あぁ」

210: 2012/08/27(月) 23:44:59.15 ID:9FODIaX/0
男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……」

219: 2012/08/29(水) 00:25:53.34 ID:gCL4MKYF0


~夢~


男「……」



220: 2012/08/29(水) 00:26:24.67 ID:gCL4MKYF0


~夢より深い夢~


男「……」



221: 2012/08/29(水) 00:27:10.95 ID:gCL4MKYF0


~意識の限界~


男「……」



222: 2012/08/29(水) 00:27:52.87 ID:gCL4MKYF0

~?????~


男「……」

男「……」

男「……」

男「……」

男「……」ハッ

男「……」

男「……は?」

牛頭「――起きたか」

男「牛?」

馬頭「おはようさん」

男「……馬?」

223: 2012/08/29(水) 00:28:23.77 ID:gCL4MKYF0
男「……」

牛頭「……」

馬頭「……」

男「……」

牛頭「……」

馬頭「……」

男「……はっ?」

馬頭「置いてけぼりでごめんなー」

牛頭「――今は時間がない。此方へ」

男「……はぁ。え、は? ちょっと――……」

224: 2012/08/29(水) 00:29:23.77 ID:gCL4MKYF0




男「……なぁ、おい……! ちょっと、あんたら……!」

牛頭「――ここだ」

馬頭「ついたねー」

男「何が――……」


グツ グツ


男(なんだ、これ……)

男(……池? いや、プール……、違う……)


グツ グツグツ


男(鍋……、いや、釜だ……)

男(湖のような、巨大な……大釜)


グツ グツ


男「煮えてる……」

225: 2012/08/29(水) 00:30:11.56 ID:gCL4MKYF0
グツグツ

グツグツ


男「……何だこれ」

牛頭「――これなるは、真実の大釜」

馬頭「世界の真の姿」

牛頭「宇宙のエネルギーの坩堝」

馬頭「女神の胎内」

牛頭「森羅万象の溶け合ったスープ」

馬頭「分かる?」

男「……分からん」

馬頭「……いいよ、それで」

牛頭「――世界は」

226: 2012/08/29(水) 00:30:47.41 ID:gCL4MKYF0
男「……」

牛頭「――この宇宙のあらゆるものは」

男「……」

馬頭「一皮剥けば、エネルギーの塊だ」

男「……」

牛頭「星も太陽も、人も草木も、虫も石ころも」

男「……」

馬頭「みな同じエネルギーから成り立ってるんよ」

男「……」

牛頭「――そしてこの大釜こそ」

男「……」

馬頭「宇宙をエネルギーとして捉える視覚(ヴィジョン)の世界」

227: 2012/08/29(水) 00:31:23.10 ID:gCL4MKYF0
男「……ここは」

牛頭「――ここは、どこでもない世界」

馬頭「アカシックレコードの外側の宇宙」

牛頭「お前の意識と」

馬頭「真実を結ぶ抜け道」

男「あんたらは……」

牛頭「――質問に付き合っている時間はない」

馬頭「魔女ちゃん待ってるよー」

男「魔女……!?」

馬頭「この中でー」

男「え……」


グツ グツグツ


男(……すっげぇ煮えてるんだけど……)

228: 2012/08/29(水) 00:31:52.10 ID:gCL4MKYF0
男「……」


グツグツ


男「……」


グツグツ グツ


男「……」

馬頭「……じゃ、いってらっしゃ――」

男「待て待て待って、押すな馬鹿! 熱い! 馬鹿!」

馬頭「あはは、馬に馬鹿って」

牛頭「――急くがよい」

男「あぁ!?」

牛頭「――アレが来る……」

男「……アレ?」

馬頭「空、見てみ」

229: 2012/08/29(水) 00:32:28.78 ID:gCL4MKYF0
男「……な」

牛頭「……」

馬頭「……」

男「な……」

馬頭「……何に見える?」

男「…………ブラックホール」

馬頭「こっちに来るね」

男「……アレは」

牛頭「――あれなるは、お前自身の暗黒」

男「は?」

馬頭「お前が無意識の中に抱える闇」

牛頭「お前自身から漏れ出し、こちら側を侵そうとしている」

男(……俺の)

男(……闇……)

230: 2012/08/29(水) 00:33:33.14 ID:gCL4MKYF0
牛頭「――いずれお前も、自らの闇と向き合い」

馬頭「戦う日がくるはず」

男「……アレと?」

牛頭「――だが、今は」

馬頭「ここでマゴマゴしてると、飲み込まれちゃうからねー」

男「……何それ、やばい?」

牛頭「めっちゃやばい」

馬頭「めっちゃやばい」

男「……えぇー」

牛頭「――だから、さっさと」ドンッ

馬頭「いってらっしゃいー!」ドンッ

男「……――え」


ヨロッ


男「あ――……」


ドボン


男「……ゴボ……ッ」

231: 2012/08/29(水) 00:34:47.61 ID:gCL4MKYF0
~真実の大釜~


ゴボ

ゴボゴボ…


男(熱……! 苦……し……っ!)

男(全身が……!)

男(煮える……!)


男「……」ゴポッ


男(……身体の中から)

男(……焼け、爛れ……)


白髪の少女「……ふぇ?」


男(……あれは……)


白髪の少女「……誰?」


男(……女の子……?)

232: 2012/08/29(水) 00:35:30.80 ID:gCL4MKYF0
白髪の少女「……ねえねえ、こんなところで何してるの?」

男(……知らない、子だ)

少女「うわぁ……お兄さん、おっきいねぇー」

男(……でも、どこかで……見たことが……)

少女「ひひひ!」

男(……あ)

少女「ねえ、一緒に遊ぼ?」

男(……魔女だ)

少女「おんぶして!」


男(……この少女は、魔女に、そっくりだ……)

233: 2012/08/29(水) 00:37:36.18 ID:gCL4MKYF0
男(……この少女は)

男(魔女……?)


少女「ねえねえ」

男「……っ!」ガボッ

男(やばい……もう……!)

男(苦しい、苦しい……っ!)

少女「大丈夫だよ」

男(熱い……! 茹で氏ぬ……っ!)

少女「もっと、自然に……感じるままに」

男(無理……っ! もう――……)

少女「待って! 行かないで!」

男(気が……遠く――……)

少女「やーだー! いっちゃやだ! 置いてかないでよぉ! ねえってばー!」

男(これが――……)


男(氏――……)

234: 2012/08/29(水) 00:38:11.23 ID:gCL4MKYF0




235: 2012/08/29(水) 00:38:45.74 ID:gCL4MKYF0
~朝:洋館・寝室~


男「……」ムクリ

男「……」

男「……」

魔女「……」

男「……おま」

魔女「……」ムクリ

男「……お、ま……なんで、とな……となり……、ねて……」

魔女「……」

男「……ぅ」

魔女「……」

男「うげぇぇぇぇ」バシャバシャバシャ

236: 2012/08/29(水) 00:39:19.21 ID:gCL4MKYF0
男「うぇ……ぇぇ」

魔女「……おい、ば……か、床汚――……よご、す、な……、うぅ」

男「……」

魔女「うえぇぇぇぇ」バシャバシャバシャ

男「はぁ……、はぁ……ぁ……」

魔女「えぇ……ぇぐっ」

男「……」

魔女「……」

男「ごぇぇ」バシャバシャ

魔女「うえぇぇ」バシャバシャ

237: 2012/08/29(水) 00:39:59.00 ID:gCL4MKYF0
男「ゼェ……ゼェ……」

魔女「……ぐぇ」

男「……おい、魔女……な、なんだ……これ……」

魔女「……し」

男「……し?」

魔女「失敗」

男「……氏ねぇー」

魔女「黙れー……、頭に響くぅー……」

239: 2012/08/29(水) 00:41:15.52 ID:gCL4MKYF0
男「……もしかして、これ……」

魔女「おう」

男「?」

魔女「馬鹿かお前は」

男「……」

魔女「男女が裸で、ベッドでやる儀式なんて、しかねぇだろーが」

男「……え」

魔女「……」

男「……えぇ」

魔女「……未遂だけどな」

男「……えぇー」

247: 2012/08/30(木) 01:11:59.01 ID:vrpR90FT0
魔女「……」

男「……」

魔女「……何だよ」

男「……」

魔女「……」

男「……お前」

魔女「……」

男「……言えよー……」

魔女「……言ったらどうなんだよ」

男「……」

魔女「コンドームでも用意したか? え?」

248: 2012/08/30(木) 01:12:53.19 ID:vrpR90FT0
男「……」

魔女「……前もって意識されると」

男「……」

魔女「儀式がやりにくい」

男「……」

魔女「……」

男「……いや」

魔女「……」

男「……でも、さぁ」

魔女「……」

男「……」

魔女「…………チッ」

249: 2012/08/30(木) 01:14:12.35 ID:vrpR90FT0
男「……」

魔女「だーから……、イヤだって言ったんだよ……、私は……」

男「……あ」

魔女「……はぁ」

男「……」

魔女「……」

男「いや……」

魔女「……ぅ」

男「……」

魔女「……、……んぐ」

男「……魔女?」

魔女「……おえぇ」バチャッ

男「魔女……っ」

250: 2012/08/30(木) 01:15:00.73 ID:vrpR90FT0
魔女「……ゲホッ、……はぁ」ヘタッ

男「おい……! 大丈夫かよ!」

魔女「……疲れた」

男「顔真っ青じゃねーか! おい――」ガシッ

魔女「……」グッタリ

男「冷た……」

魔女「……寒い」モソモソ

男「裸でベッドもぐるな馬鹿! 服! 風邪引く!」

魔女「……ぅー」

男「うーじゃねぇ!」

251: 2012/08/30(木) 01:15:44.80 ID:vrpR90FT0




魔女「……」

男「……」

魔女「……ぅー」モゾモゾ

男「……辛いか?」

魔女「……大丈夫」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……男」

男「ん」

252: 2012/08/30(木) 01:16:31.58 ID:vrpR90FT0
魔女「……ごめんなー」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……治せなくて」

男「……」


男(……――魔女は)

男(……イヤだって、言っていたのに)

男(……こんな、衰弱してるのに……)

男(……どうして)

男(……)

男(……)

男(……俺のため?)

253: 2012/08/30(木) 01:17:35.76 ID:vrpR90FT0
男(……そうかもしれない)

男(……違うかも、しれない)

男(……でも)


男「……魔女」

魔女「……」

男「……お前がさ、こんなになるまで」

魔女「……」

男「……俺の頼み、聞いてくれたのに」

魔女「……」

男「……俺は」

魔女「……」

男「自分のことばっかりで」

魔女「……」

254: 2012/08/30(木) 01:18:17.00 ID:vrpR90FT0
男「……ごめんな」

魔女「……」

男「……ありがとな」

魔女「男ぉ」

男「おう」

魔女「寒い」

男「……何か、かけるもの」

魔女「……ボケナス」

男「あぁ?」

魔女「来いよ」

男「……」

魔女「カイロの代わりくらいは、できるだろ」

男「……」

255: 2012/08/30(木) 01:19:02.06 ID:vrpR90FT0
男「……」モソモソ

魔女「……」

男「……」

魔女「……」ギュッ

男「……おい」

魔女「……」ギュウ

男「……」

魔女「はぁ……」

男「……ったく」

魔女「……」

256: 2012/08/30(木) 01:19:27.64 ID:vrpR90FT0
魔女「……」

男「……」

魔女「……何が見えた?」

男「……そうだな」

魔女「……」

男「……牛頭馬頭の、鬼」

魔女「……」

男「それから、ブラックホール」

魔女「……」

男「大釜」

魔女「……」

男「……あと……、白い、女の子」

魔女「……」

257: 2012/08/30(木) 01:20:00.13 ID:vrpR90FT0
男「……」

魔女「意味わかんねー……」

男「そうだな……」

魔女「……」ギュ

男「……」


男(牛頭と馬頭は……)

男(あの煮えた釜を、『世界の真の姿』と言っていた)

男(……あの少女は)

男(魔女だったのだろうか……)



魔女「……ゲロ臭」

男「……あとで、掃除しねーとな」


男(……もし、そうだとしたら)

男(……あの少女が)

258: 2012/08/30(木) 01:20:35.47 ID:vrpR90FT0
男(魔女自身の)

男(……真の姿?)


魔女「……お前」

男「ん?」

魔女「あっつい」

男「……」

魔女「ちょっと離れろクソ馬鹿。暑苦しい」

男「……このやろ」


男(……意地悪で、気まぐれで、口の悪い魔女の)

男(本当の姿は……)

男(人懐っこくて、遊び好きで……、少し、寂しがりに見える……)

男(……小さな、女の子なのかも、しれない)


魔女「……何ニヤけてんだよ」

男「……いや、別に?」

259: 2012/08/30(木) 01:21:18.48 ID:vrpR90FT0
魔女「……男」

男「ん」

魔女「今回の失敗は、おそらく……」

男「おう」

魔女「……お互い、足りなかったんだ」

男「何が」

魔女「愛と、信頼が」

男「……」

魔女「……」

男「……そうかぁ」

魔女「……」

男「……確かにな」

魔女「……」

男「……全然知らないもんな、俺たち……、お互いのこと」

魔女「おう」

267: 2012/08/30(木) 22:49:13.68 ID:vrpR90FT0
男「……だったら」

魔女「……」

男「これから……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……愛と信頼」

男「愛と信頼」

魔女「……」

男「……はは」

魔女「……」

268: 2012/08/30(木) 22:49:59.34 ID:vrpR90FT0
魔女「……」ギュッ

男「……」

魔女「……なぁ」

男「ん」

魔女「ちゅーしたい」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……」

男「……そのうちな」

魔女「氏ねークソヘタレー」ギリリ

男「いって……っ! つねるな馬鹿!」

269: 2012/08/30(木) 22:50:47.28 ID:vrpR90FT0
魔女「ほら」

男「……」

魔女「こっち向け」

男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……んぅ」

男「……ぁ――」

魔女「ん……っ――……」





270: 2012/08/30(木) 22:51:27.50 ID:vrpR90FT0




~某大学病院~


女医「……」

兄「……」

女医「信じられません……」

兄「そうかな?」

女医「下垂体の明らかな異常、内分泌系の狂い……、脳波も。こんな数値、見たこともない……」

兄「……」

女医「『計画』どころではありません! 男君の身体に……いえ、命に関わる――」

兄「男は問題ない」

女医「な……」

兄「そして、『計画』も順調だ」

女医「……そん、な」

兄「……いずれの検査結果も、想定通り。我々の『計画』に則ったものだ」

271: 2012/08/30(木) 22:52:18.46 ID:vrpR90FT0
女医「……兄さん、彼は――……、男君は、一体……」

兄「……ふぅ」

女医「……っ」ビクッ

兄「……好奇心かな?」

女医「いえ……っ! 忘れて下さい……!」

兄「はは、何をおびえているんだい」

女医「い、いえ……」ガタガタ

兄「いいさ、君が興味を持つのも無理はない」

女医「……」

兄「……女医君、彼は……男は、種なんだ」

272: 2012/08/30(木) 22:53:20.55 ID:vrpR90FT0
女医「種……」

兄「そう、新たな人類、大いなる進化……その大樹の礎となる、最初の……一粒の種だ」

女医「……」

兄「我々の『計画』――……、そのためにも、男には」

女医「……」

兄「立派に、芽吹いてもらわないとね」

女医「……兄さん」

兄「ふふ……」

女医「……っ」ゾクッ


兄(……――それにしても、『彼女』ね……)

兄(……少し、気になるファクタではある……)

273: 2012/08/30(木) 22:54:48.20 ID:vrpR90FT0




~市街・廃ビル~


友「……」

委員長「……迂闊だった」

友「……あの転校生が、まさか『春魔法の魔女』だなんてな」

委員長「……」

友「『結社』の連中も、気付きはじめている頃だろう」

委員長「……」

友「……これからは、騒がしくなる」

委員長「……ごめん、私が監視していながら――……」

友「いいさ。過ぎたことを悔やんでも仕方ない。それに……」

委員長「友君?」

友「……彼女を、俺たちの魔女団(カヴン)に引き入れられれば……」

委員長「ちょっと、本気!?」

274: 2012/08/30(木) 22:55:29.26 ID:vrpR90FT0
友「本気さ。あの力があれば……、魔術の究極……」

委員長「『いちばんおわりの魔術』」

友「……その成就に、大きく近付く」

委員長「確かに、ね」

友「我々『獅子魔女の会』が、世界を変える……」

委員長「……」

友「……その一助と、なってもらおうじゃないか」

委員長「……」

友「……だけど」

委員長「分かってる」

275: 2012/08/30(木) 22:56:38.30 ID:vrpR90FT0
友「……」

委員長「……もし、協力が得られないなら」

友「……」

委員長「……そのときは、私が」

友「……あぁ」

委員長「どんな手段を、使ってでも……!」

友「期待してるよ」

委員長「……」

友「……『いちばんおわりの魔術』」

委員長「魔術は世界に出会い」

友「世界は魔術を知る……」


委員長(……けれど、気になるのは……)

委員長(男……、彼は――……)

276: 2012/08/30(木) 22:57:39.86 ID:vrpR90FT0




~洋館・寝室~


男「……」

魔女「……」

男「……」

魔女「……ん」

男「……」ナデ

魔女「……治ったら」

男「……」

魔女「……一発ヤラせろな」

男「……えげつない言い方やめろ」

魔女「……ヒッヒッヒ」

277: 2012/08/30(木) 22:59:08.27 ID:vrpR90FT0
男「……次は」

魔女「……」

男「うまく、いく気がするよ」

魔女「……」

男「何となくさ」

魔女「……そうだな」

男「……」

魔女「……でも」

男「……」

魔女「いいじゃん、今は」

男「……おう」

魔女「……このままで、こうして」

男「……おう」

278: 2012/08/30(木) 22:59:38.92 ID:vrpR90FT0


――魔法とは、意識を変える技術――


――俺は魔法にかけられて――


――今も魔法は――


――とけないまま――

279: 2012/08/30(木) 23:00:07.23 ID:vrpR90FT0


~おわりです~


282: 2012/08/30(木) 23:20:53.52 ID:vrpR90FT0
これでこのSSは終わりです
お付き合いいただき、ありがとうございました

引用: 男「魔女?」魔女「おう」