54: 2016/07/26(火) 16:39:27.38 ID:QU1d/TJ3O
◆◎◆~
前回:ガール・フー・イズント・ボーイ・アウェイクン#2
最初から:ウェルカムトゥ・ネオサイタマ・チンジフ
55: 2016/07/26(火) 16:41:15.30 ID:QU1d/TJ3O
【ガール・フー・イズント・ボーイ・アウェイクン】
56: 2016/07/26(火) 16:45:20.30 ID:QU1d/TJ3O
ネオサイタマ・チンジフとキョート・チンジフの大規模交戦勃発の数時間前、キョート・チンジフ、グランドマスター・トネの居室にて。
57: 2016/07/26(火) 16:50:36.41 ID:QU1d/TJ3O
チクマが盆を下げながらうやうやしくオジギした。「それではムサシ=サンにウンリュウ=サン、ごゆっくり」チクマはチンジフ内で最も礼儀作法に精通している艦娘である。ニュービー艦娘たちに礼儀指導をしているのもチクマだ。彼女はトネの妹であった。
58: 2016/07/26(火) 16:55:30.32 ID:QU1d/TJ3O
「おう、遠慮なくくつろがせてもらうぞ!ここは相変わらず居心地がよい」「チクマ=サンの淹れたお茶、おいしい」そう言ったのはトネと同じくグランドマスター位階であるムサシとウンリュウである。チンジフ最高位階が3人が集まっている事は定例会議や定例集会以外には極めて稀、そしてこの部屋のヌシであるトネはしかめつらでオチョコにいれたラムネを煽っている。
59: 2016/07/26(火) 17:02:21.15 ID:QU1d/TJ3O
「ふん、こ奴らをもてなすなぞ勿体無い……別に茶なんか出さなくてもよいのじゃ!」不機嫌そうなトネを見ると、チクマがすかさずたしなめた。「もう……そんなこと言って。私がいない時に二人に慰めてもらったんでしょ?少しくらいお返ししなくちゃ」「な、慰め…!ないない!断じてないのじゃ!ワs…吾輩は泣いてるところをこ奴らに地下のバーで慰められたなど決して!」
60: 2016/07/26(火) 17:07:15.40 ID:QU1d/TJ3O
「はいはい、お二人とも、私がいない間に姉さんがお世話になりました」チクマが再び二人に向かってオジギした。彼女はトネのことを日頃から人一倍心配している。「まー気にするな。昔はヘマこいて落ち込んだこいつをよく二人で慰めたもんじゃ、懐かしいのぉ」「トネ=サン、なきむしだもんね」「もぉ~!!チクマ!早く出て行って欲しいのじゃ!もー!」これ以上昔の恥ずかしい事を喋られてはたまらない、トネはぐいぐいとチクマを押して追い出そうとする。
61: 2016/07/26(火) 17:30:02.84 ID:s4qX+gt+0
「仕方ないんだから~…あと姉さん?ラムネ飲みすぎちゃダメよ?このあと集まりがあるんでしょ。お腹壊しちゃうからね」「分かってるのじゃ!」「それではお二人ともシツレイします。改めてゆっくりしていってくださいね」チクマは丁寧な動作でフスマを閉め、居室を出ていった。その様子を仏頂面で見送るトネ。まるで思春期の学生めいたアトモスフィアである。
62: 2016/07/26(火) 17:33:31.96 ID:s4qX+gt+0
「お前なぁ…あんまりチクマ=サンに迷惑をかけるんじゃないぞ?」「チクマ=サンもたいへんだね」呆れ顔のムサシにウンリュウが追従する。それを聞いたトネは顔を真っ赤にしながらラムネをがぶ飲みする。「余計なお世話じゃ!ムサシ=サン……いや!ムサシにウンリュウ!お前らに恩ができたなぞと思っておらんからな!ふん!」
63: 2016/07/26(火) 17:40:23.07 ID:s4qX+gt+0
「おう?呼び捨てされるのは久方ぶりだの、ますます昔を思い出すわい」懐かしむようなムサシに対し、ウンリュウは怪訝な顔だ。「サン付けやめちゃうの?グランドマスターになった時に『これからは上に立つ者として礼儀もしっかりとするのじゃ。サン付けしないと怒るからな!』って言ってなかった?」「お前らに礼儀良くするのが馬鹿らしくなっただけぞ!その茶が飲み終わったらとっとと出ていくのじゃ、ふん!」トネ、ムサシ、ウンリュウはチンジフ発足からの古参であり、共に研鑽を積んだ仲だ。昔はお互いを呼び捨てする程親密であった。
64: 2016/07/26(火) 17:47:20.21 ID:s4qX+gt+0
「まあそう硬い事を言うな!ところで、今回の作戦はネオサイタマの彼奴等から奪った各地の前線基地の防衛…これであっとるかの?」「うん」「何を今更…我らの所有しているものを下郎共から守る!それだけぞ」「違う!そこじゃない!ワシは不満なんじゃ!」ムサシは不満そうにタタミに身体を投げ出した。サラシを巻いた豊満な褐色の胸が、重力に逆らいつつ大きく揺れる。その様子を見たトネは青筋を立てながら、さらにラムネをがぶ飲みした。
65: 2016/07/26(火) 17:53:42.03 ID:s4qX+gt+0
「このところ全くイクサに出ていない!身体がなまって仕方がないのう……トネ、お前は出撃したよな?ズルいぞ!」そんな不満顔のムサシを見たトネは呆れたようにため息をついた。「なにがズルいじゃ、グランドマスターたる者は常に部下たちの動きを上から見下ろし使役するのが当然。自らイクサに出るなどそうそう無いわ」「そこじゃ!そこが不満なんじゃワシは!エラくなったから何だ?心躍るイクサができんならエラくなった意味がない!出世するんじゃなかったわ!」
66: 2016/07/26(火) 17:59:44.07 ID:s4qX+gt+0
「はん!そんな事を言いながらガンガン手柄を立ててしまうから出世するのじゃ。うっとうしいイクサ馬鹿め」「イクサ馬鹿……確かにそうだなワシは」「納得しとるんでないわ!」トネとムサシのコントめいたやり取りを見つめるウンリュウ、彼女たちは昔からこういう関係であった。そして、見つめていたウンリュウも口を開いた。「でもトネ=サン?じゃあなんで出撃したの?それこそ部下のみんなだけでよかったのに」
67: 2016/07/26(火) 18:04:27.80 ID:s4qX+gt+0
その言葉を聞いたトネはすかさず苦虫を噛み潰したような顔になる。タイホウに怒られた記憶が蘇ったからだ。「あれは……吾輩自らで手柄を立てる事でロードの信頼を勝ち取るつもりだったのじゃ!それがなんであんなことに……くそう!カガ=サンの奴め!次に会ったらただじゃおかんぞ!」トネは何杯めか分からぬラムネを煽った。あのイクサは実際勝ちはしたが損失が大きすぎた。しかもロードを泣かせてしまい、信頼どころか嫌われてしまったかもしれない。
68: 2016/07/26(火) 18:10:42.85 ID:s4qX+gt+0
「ロードの信頼ねえ、そーいうのはイセ=サンに聞いたらどうだ?あやつなら色々と知ってそうじゃし」「イセ=サンはロードのお世話係だもんね」戦艦イセ、ロードの側近はタイホウであるが身の回りの世話を担当しているのが彼女、イセである。優しく面倒見のよいイセが、ロードはたいそうお気に入りらしい。「イセ=サンじゃと…?」「ウン、だってさっきもここに来る前に見たもん。えっと…」
69: 2016/07/26(火) 18:20:22.07 ID:s4qX+gt+0
『ワーイ!イセ!アソボ!』『それではイセ=サン、後はお願いします』タイホウの横から駆け寄ってきた小さなロードを抱え上げたイセはニッコリと笑う。屈託のない笑顔だ。『任せておいて!さーて、何して遊ぼうか?』『ナンデモイイヨ!タイホウハアソンデクレナイシ、オモチャカッテクレナイカラキライ!アソンデクレルイセハダイスキ!』『……では、私はシツレイします』『だ、ダメだよ!タイホウ=サンだって一生懸命やってくれてるんだから!ね?』口調は落ち着いているが、顔面を真っ赤にして去っていくタイホウを、イセは困ったような笑顔で見送った。
70: 2016/07/26(火) 18:27:13.67 ID:s4qX+gt+0
「……っていう風に」「ふん!単なる女中のような立場で信頼を得てどうするのじゃ!吾輩は組織という構造の中での信頼を得たいのじゃ、出世組からはずれたイセ=サンと一緒にするでないわ」しかし、その言葉に反応したのかムサシが身を起こしてトネに目を向けた。「トネ、お前イセ=サンとやりあった事はないのか?」「……吾輩はむやみやたらな模擬戦はせん。お前といっしょにするな」それを聞いたムサシはニッと笑った。「ないのか、知らないだろう?強いぞ、イセ=サンは」
71: 2016/07/26(火) 18:34:10.93 ID:s4qX+gt+0
「何じゃと…?」トネはラムネを飲む手を止め、少し驚いたような顔した。ウンリュウも同じだ。イクサオニと呼ばれるほどの壮絶な実力者のムサシが、他人を手放しで『強い』などと評する事はそうそうないことだからだ。「詳しいことは言わんがな、あのワザマエでなぜ世話役に甘んじているのか分からん。いざという時のロードの護衛、というなら納得できなくもないが」「へー」「……強いから何じゃ、地位も強さも気品も備わった吾輩には勝てんのじゃ!」
72: 2016/07/26(火) 18:40:39.22 ID:s4qX+gt+0
「気品ねえ……確かにその胸は平坦で奥ゆかしいが」胸を反らして威張るトネにムサシの小声は届いていない。「そうだ、それともう一つ聞きたいこともあったんだ」ウンリュウは思い出したように顔を上げ、言った。「もう一つ?何だ?」「もうそろそろ集合する時間じゃ、要件があるならとっとと済ませい」「ウン、二人は覚えてる?いつ私たちがグランドマスターっていう役職に出世したのを」
73: 2016/07/26(火) 18:47:19.99 ID:s4qX+gt+0
その問いを投げかけられた瞬間、今までとどまることなく喋り続けていた二人が沈黙する。そして、やや不自然な間を置いて、口を開いたのはトネだった。「……あまり覚えておらん。だがしかし、一番最初にグランドマスターの盃を受けたのはこのトネだったぞ!」「順番なんかどーでもいいじゃろうが、そういえば覚えていないモンじゃの。地位に興味などなかったが……はて」「2人とも覚えてないんだね?私もそうなの」
74: 2016/07/26(火) 18:54:12.46 ID:s4qX+gt+0
ウンリュウは淡々と言葉を続ける。「何か他の事を忘れてるって訳じゃない。『いつ』だったか思い出せないの、それだけなんだけど、不思議だと思わない?」ウンリュウの意味深な言葉に、2人は首を傾げた。「確かにそうだが別にどうでもよいことじゃろ。日付くらい誰でも忘れるもんじゃ」「ふん、何をまた取り留めもないことを…………ハッ!?」だが次の瞬間!トネが何かを思い立ったかのように立ち上がった。思わず目を向けるムサシとウンリュウ!「ムッ?どうした、何か思い出したのか?」「そうなの?」
75: 2016/07/27(水) 00:15:29.68 ID:FVMLCg300
2人の問いに答えないトネは、突如として中腰になり、腹部に手を当てた奇妙な姿勢を取った。まさか、この構えはカラテミサイル発射の構えか!?「何だ!敵襲か!?」突如として殺気立ったムサシが、壁に掛けていたヘビ・タイケンの柄を握り、ウンリュウは無言でコウクウキを構えた!「………その、違う!吾輩はっ…!ちょっと用事ができたのじゃ……うぐっ!その、腹の……ぐはっ!?なのでちょっと……いかなければならぬから!」「は?」「え」ぽかんとした顔の2人を取り残し、トネは奇妙な姿勢のまま、手遅れになる前に居室を出て行った。
76: 2016/07/27(水) 00:18:27.06 ID:FVMLCg300



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