281: 2012/01/02(月) 19:29:11.89 ID:ZELWgi+R0
七月二〇日、午前三時。
第七学区の路地裏はひっそりと静まっている。
住民の大半を占める学生のうち、まっとうと言える者は概ね自室で眠りに就いているし、多少道を踏み外した者――スキルアウトなどと呼ばれる不良達も、今はねぐらで各々の夜を過ごしているのだろう。
ここに、あと数歩健全から離れた人種、その一人である少女がいる。
街灯も無いうらぶれた道。
雲を透かした月明かりの中、絹旗最愛は足取り軽く歩いていた。
(ふっふっ、今日は中々の収穫でしたね)
その頬は緩み、どころかニヤニヤと弛緩しきっている。
(7本中、今年のマイベストに入りそうなのが1本、アクの強い良作が2本っ! 今日のC級センサーは超冴えてました!)
「お仕事」が現地解散になった後直行したショートフィルム鑑賞会(お一人様)で、マニア心を痺れさせる個人的名作を引き当てた。
今も全編が脳内リピートされていて帰っても中々寝付けそうにない。
興奮と眠気が起こす化学反応を感じながら、絹旗は隠れ家の1つに向かう。
(あの助手役をやっていた俳優は要チェックですね。可能な限り過去の出演作を――――っ!?)
た 、た 、た 、と。
密やかな音だった。
遠く、また高い所を駆ける足音。
それを耳にした瞬間、絹旗のあどけない顔から浮ついた感情が抜け落ちた。
小柄な見た目に反し、窒素を自在に制御する大能力者である絹旗は、学園都市暗部の実力者でもある。
第七学区の路地裏はひっそりと静まっている。
住民の大半を占める学生のうち、まっとうと言える者は概ね自室で眠りに就いているし、多少道を踏み外した者――スキルアウトなどと呼ばれる不良達も、今はねぐらで各々の夜を過ごしているのだろう。
ここに、あと数歩健全から離れた人種、その一人である少女がいる。
街灯も無いうらぶれた道。
雲を透かした月明かりの中、絹旗最愛は足取り軽く歩いていた。
(ふっふっ、今日は中々の収穫でしたね)
その頬は緩み、どころかニヤニヤと弛緩しきっている。
(7本中、今年のマイベストに入りそうなのが1本、アクの強い良作が2本っ! 今日のC級センサーは超冴えてました!)
「お仕事」が現地解散になった後直行したショートフィルム鑑賞会(お一人様)で、マニア心を痺れさせる個人的名作を引き当てた。
今も全編が脳内リピートされていて帰っても中々寝付けそうにない。
興奮と眠気が起こす化学反応を感じながら、絹旗は隠れ家の1つに向かう。
(あの助手役をやっていた俳優は要チェックですね。可能な限り過去の出演作を――――っ!?)
た 、た 、た 、と。
密やかな音だった。
遠く、また高い所を駆ける足音。
それを耳にした瞬間、絹旗のあどけない顔から浮ついた感情が抜け落ちた。
小柄な見た目に反し、窒素を自在に制御する大能力者である絹旗は、学園都市暗部の実力者でもある。
282: 2012/01/02(月) 19:30:01.37 ID:ZELWgi+R0
「は、は、っ……、はぁっ……」
白い修道服の少女が建物の屋上を転がるように走る。
1階分の段差を勢いのまま跳び降り、また走り出す。
「――――ス! い――、――――捕――!」
足音も気配も無い追跡者が、わざわざ声を上げて存在を誇示する。
耳の血管がばくばくと鳴り叫ばれた内容は知れない。
意識を裂く余裕も無い。
「はぁ、っ……ぁ……」
足場が途切れた。
向かいの建物へは約3m、高さはあちらの方が低い。
「――止――――!」
声は間近に迫っている。
考えている暇は無い。
少女は目を閉じ、宙に身を躍らせる。
――その小さな身体に無数の炎が降り注ぐ。
白い修道服の少女が建物の屋上を転がるように走る。
1階分の段差を勢いのまま跳び降り、また走り出す。
「――――ス! い――、――――捕――!」
足音も気配も無い追跡者が、わざわざ声を上げて存在を誇示する。
耳の血管がばくばくと鳴り叫ばれた内容は知れない。
意識を裂く余裕も無い。
「はぁ、っ……ぁ……」
足場が途切れた。
向かいの建物へは約3m、高さはあちらの方が低い。
「――止――――!」
声は間近に迫っている。
考えている暇は無い。
少女は目を閉じ、宙に身を躍らせる。
――その小さな身体に無数の炎が降り注ぐ。
283: 2012/01/02(月) 19:30:52.57 ID:ZELWgi+R0
たっ、たっ、た、たたっ、たっ。
足音は若干乱れながらこちらに向かって来る。
絹旗は音も無くビルの隙間に身を滑り込ませた。
耳に全神経を集中する。
たん、たん、たん、どさり。
(落ちた……?)
……た、たん、たん、たん、たん。
人体が投げ出されるような音がした気がしたが、立ち直って再び走り出したか。
いかにもな面倒事の気配が濃厚に伝わってくる。
覗いた上方には雲の晴れた夜空と、ビルの屋上に据えられた室外機くらいしか見当たらないが……。
(超関わってしまわないように隠れているのが安全ですね)
と、月を覆うように白い何かが躍り出た。
それは向かいのビルの方に放物線を描き、――頂点で赤光に撃たれ軌道を変える。
「!!」
足音は若干乱れながらこちらに向かって来る。
絹旗は音も無くビルの隙間に身を滑り込ませた。
耳に全神経を集中する。
たん、たん、たん、どさり。
(落ちた……?)
……た、たん、たん、たん、たん。
人体が投げ出されるような音がした気がしたが、立ち直って再び走り出したか。
いかにもな面倒事の気配が濃厚に伝わってくる。
覗いた上方には雲の晴れた夜空と、ビルの屋上に据えられた室外機くらいしか見当たらないが……。
(超関わってしまわないように隠れているのが安全ですね)
と、月を覆うように白い何かが躍り出た。
それは向かいのビルの方に放物線を描き、――頂点で赤光に撃たれ軌道を変える。
「!!」
284: 2012/01/02(月) 19:31:19.89 ID:ZELWgi+R0
――これより未来、絹旗は暗部の人間として「らしくない」行動を幾度となく取ることになる。
――それでも感情なり計算なり、これ以降の選択には何がしかの理由付けができるのだが。
爪先が地面を蹴る。
気付いた時には路地裏の、狭い空間のまんなかに躍り出ている。
白い何かは自分と同じ位の無垢な少女だ。
何らかの攻撃を受け落下している。
――気まぐれだったのかもしれない。
――直前に観た映画が無闇にヒロイックな筋書きだったからか。
関わったら不都合しかない。
か弱そうな容姿と実際が食い違う可能性は我が身が証明している。
それなのに。
どうしてだろう。
銃弾さえ押し潰す自動防壁を無理矢理に解除して、絹旗は少女に手を伸ばした。
――あるいは絹旗自身は切って捨てるだろうが、碌な理由も無く、それでいて全てを変えてしまうモノを人はこう呼ぶ。
――「運命」と。
――それでも感情なり計算なり、これ以降の選択には何がしかの理由付けができるのだが。
爪先が地面を蹴る。
気付いた時には路地裏の、狭い空間のまんなかに躍り出ている。
白い何かは自分と同じ位の無垢な少女だ。
何らかの攻撃を受け落下している。
――気まぐれだったのかもしれない。
――直前に観た映画が無闇にヒロイックな筋書きだったからか。
関わったら不都合しかない。
か弱そうな容姿と実際が食い違う可能性は我が身が証明している。
それなのに。
どうしてだろう。
銃弾さえ押し潰す自動防壁を無理矢理に解除して、絹旗は少女に手を伸ばした。
――あるいは絹旗自身は切って捨てるだろうが、碌な理由も無く、それでいて全てを変えてしまうモノを人はこう呼ぶ。
――「運命」と。
285: 2012/01/02(月) 19:31:57.36 ID:ZELWgi+R0
がっきぃぃぃぃん! と、絹旗の身体に衝撃が突き抜ける。
ギリギリまで引き付けた上で圧縮された窒素を解放し衝撃の緩和を試みたが、とても全ては頃しきれなかった。
人間の質量との衝突は能力を解いた絹旗にはかなり辛く――、
(って、超何やってんですか私はーーっ!)
咄嗟に跳び出したものの明らかにマズかった。
この少女の追手がどんな奴かも、そもそも本人の正体も分からないのだ。
しかし。
(……こうなった以上は最速で離脱ですね)
意識の無いらしい身体を小脇に抱え直す。
ビルの上の方からは何やら戸惑った気配が伝わってくる。
困惑の視線を背中に受けながら、絹旗は全力で路地裏を走り抜けた。
ギリギリまで引き付けた上で圧縮された窒素を解放し衝撃の緩和を試みたが、とても全ては頃しきれなかった。
人間の質量との衝突は能力を解いた絹旗にはかなり辛く――、
(って、超何やってんですか私はーーっ!)
咄嗟に跳び出したものの明らかにマズかった。
この少女の追手がどんな奴かも、そもそも本人の正体も分からないのだ。
しかし。
(……こうなった以上は最速で離脱ですね)
意識の無いらしい身体を小脇に抱え直す。
ビルの上の方からは何やら戸惑った気配が伝わってくる。
困惑の視線を背中に受けながら、絹旗は全力で路地裏を走り抜けた。
286: 2012/01/02(月) 19:32:42.43 ID:ZELWgi+R0
「おなかへった」
「へ?」
「おなかへった、って言ってるんだよ?」
謎の修道服少女をホールドしたまま路地の表を裏を駆け回り、いい加減追手も撹乱できただろう、と辿り着いた一室で。
目を醒ました少女の第一声がそれだった。
銀の睫毛が煙る瞳はまだどことなくぽんやりしている。
「所在やら超向かい合った相手やらを確認する前にそれって神経太過ぎです」
返しつつも絹旗は設置された冷蔵庫に向かう。
ベッド、ソファーとテーブルのセットに冷蔵庫、ユニットバスへの扉だけの部屋。
ここは彼女の所属する組織――「アイテム」が持つ隠れ家の1つ、ではない。
金さえ払っておけば素性を問われない類の、ちょっと宜しくない宿泊施設である。
余計なことに首を突っ込んでしまった以上、これは絹旗の責任で対処すべきで、というか「アイテム」に持ち込んだ日にはどんな制裁が待っているか。
「おなかいっぱいご飯を――、ってこれ、何?」
ことり。
目の前に置かれたバー状の物を指して、少女はきょとんとしている。
「何ってご飯です。これ1本で1日動ける超高機能栄養食品」
そう言う絹旗はソファーにもたれ、同じバーをぽくぽく齧っている。
「んぐ、味もそこまで悪くないですよ、企業努力ってやつですね」
「むむぅ、どう見ても1日分の量じゃないかも。はっ、この表面に刻まれた『宝瓶宮』の……もぐ……模様によって無理矢理空腹感を……あれ、別に満腹にはならない……?」
何やらぶつぶつ言っている。
ちなみにバー自体は観察終了、とばかりに一瞬で口の中に消えていた。
「ごちそうさま! ……んー、『満ちる水』の意味付けじゃなかったのかな……?」
「? まぁ良いです、じゃあそろそろあなたの置かれた状況でも超聞かせてくれませんかね?」
警戒心の欠片も無い少女は不良でも非健全でもなさそうだったが、この街の基準からは大幅に外れている。
流れる銀髪、透き通る肌、澄んだ翠の瞳。
しかし白色人種かつ日本語に堪能なことについては(同僚に似たようなのが居るので)気にならない。
問題は身に纏った骨董品のような修道服だ。
悪意なんて触れたこともなさそうな邪気の無さと、風変わりな姿で追われていた事実。
絹旗は少女の素性を測りかねていた。
「えっとね、私の名前はインデックス、魔法名ならDedicatus545。所属は教会でバチカンじゃなくてイギリス清教の方ね。あなたは?」
「……絹旗最愛、です」
どうしよう、予想していたより頭が痛い。
「へ?」
「おなかへった、って言ってるんだよ?」
謎の修道服少女をホールドしたまま路地の表を裏を駆け回り、いい加減追手も撹乱できただろう、と辿り着いた一室で。
目を醒ました少女の第一声がそれだった。
銀の睫毛が煙る瞳はまだどことなくぽんやりしている。
「所在やら超向かい合った相手やらを確認する前にそれって神経太過ぎです」
返しつつも絹旗は設置された冷蔵庫に向かう。
ベッド、ソファーとテーブルのセットに冷蔵庫、ユニットバスへの扉だけの部屋。
ここは彼女の所属する組織――「アイテム」が持つ隠れ家の1つ、ではない。
金さえ払っておけば素性を問われない類の、ちょっと宜しくない宿泊施設である。
余計なことに首を突っ込んでしまった以上、これは絹旗の責任で対処すべきで、というか「アイテム」に持ち込んだ日にはどんな制裁が待っているか。
「おなかいっぱいご飯を――、ってこれ、何?」
ことり。
目の前に置かれたバー状の物を指して、少女はきょとんとしている。
「何ってご飯です。これ1本で1日動ける超高機能栄養食品」
そう言う絹旗はソファーにもたれ、同じバーをぽくぽく齧っている。
「んぐ、味もそこまで悪くないですよ、企業努力ってやつですね」
「むむぅ、どう見ても1日分の量じゃないかも。はっ、この表面に刻まれた『宝瓶宮』の……もぐ……模様によって無理矢理空腹感を……あれ、別に満腹にはならない……?」
何やらぶつぶつ言っている。
ちなみにバー自体は観察終了、とばかりに一瞬で口の中に消えていた。
「ごちそうさま! ……んー、『満ちる水』の意味付けじゃなかったのかな……?」
「? まぁ良いです、じゃあそろそろあなたの置かれた状況でも超聞かせてくれませんかね?」
警戒心の欠片も無い少女は不良でも非健全でもなさそうだったが、この街の基準からは大幅に外れている。
流れる銀髪、透き通る肌、澄んだ翠の瞳。
しかし白色人種かつ日本語に堪能なことについては(同僚に似たようなのが居るので)気にならない。
問題は身に纏った骨董品のような修道服だ。
悪意なんて触れたこともなさそうな邪気の無さと、風変わりな姿で追われていた事実。
絹旗は少女の素性を測りかねていた。
「えっとね、私の名前はインデックス、魔法名ならDedicatus545。所属は教会でバチカンじゃなくてイギリス清教の方ね。あなたは?」
「……絹旗最愛、です」
どうしよう、予想していたより頭が痛い。
287: 2012/01/02(月) 19:33:36.42 ID:ZELWgi+R0
名前が「目次」とは何事だ、とか何で教会の方がこの街で鬼ごっこをしていらしたのか、とかに端を発した質疑応答の末。
絹旗は生温い目でソファーに横倒しになっていた。
細腕に締め付けられたクッションのくたびれ具合が痛々しい。
「つまりー。Index-Librorum-Prohibitorumことインデックスはイギリス清教の魔道図書館でー。超一〇万三〇〇〇冊もの魔道書を持っていてー。悪い魔術結社の魔術師に超追われているとー……」
「超一〇万三〇〇〇冊《over 103,000》じゃなくて一〇万三〇〇〇冊きっかり《just 103,000》なんだよ」
「……分かりました、解りませんけど。超言いたいことはありますが取り敢えず証拠が見たいです」
そう言われた途端、インデックスはう、と喉を鳴らした。
「私には使えないんだよ、魔翌力が無いから」
「つまり?」
やる気の無い絹旗に対しインデックスはばたばたと腕を振り回す。
「あっ待って、証拠はあるもん! 私が着てるこの服、『歩く教会』っていう防御結界なんだから!」
「超つまり?」
「どんな攻撃でも防ぐんだよ! さぁ適当な刃物で私を刺してみれば良いかも、さぁさぁ!」
「できるかーーーーっ!」
絹旗は頭を抱えた。
ネジの緩んだ少女をうっかりヤってしまったところで隠蔽はできるだろうが、そういう問題ではない。
「む、証明の方法は提示したんだから。きぬはたは改心して魔術を認めるか、さっくり試して魔術を認めればいいんだよ!」
大体、とインデックスは続ける。
「この街の能力? だって怪しいものじゃない。魔術は信じない癖に、証拠も無く能力は信じるの?」
途端、瞳に光を取り戻し絹旗は起き上がった。
「ふっふっふ、証拠なら見せてあげましょう。詳細は省きますが私も能力者、超硬い大能力者なのです!」
「つ、つまり……?」
勢いにたじろぐインデックス。
「大抵の攻撃は防げます! さぁ適当な刃物で私を超刺してみれば良いですよ、さぁさぁ!」
「そんな、あ、危ないことできないんだよ!」
「自分でできないことを人に超やらそうとするなーーーーっ!!」
広くもない室内に少女達の声が響き渡った。
絹旗は生温い目でソファーに横倒しになっていた。
細腕に締め付けられたクッションのくたびれ具合が痛々しい。
「つまりー。Index-Librorum-Prohibitorumことインデックスはイギリス清教の魔道図書館でー。超一〇万三〇〇〇冊もの魔道書を持っていてー。悪い魔術結社の魔術師に超追われているとー……」
「超一〇万三〇〇〇冊《over 103,000》じゃなくて一〇万三〇〇〇冊きっかり《just 103,000》なんだよ」
「……分かりました、解りませんけど。超言いたいことはありますが取り敢えず証拠が見たいです」
そう言われた途端、インデックスはう、と喉を鳴らした。
「私には使えないんだよ、魔翌力が無いから」
「つまり?」
やる気の無い絹旗に対しインデックスはばたばたと腕を振り回す。
「あっ待って、証拠はあるもん! 私が着てるこの服、『歩く教会』っていう防御結界なんだから!」
「超つまり?」
「どんな攻撃でも防ぐんだよ! さぁ適当な刃物で私を刺してみれば良いかも、さぁさぁ!」
「できるかーーーーっ!」
絹旗は頭を抱えた。
ネジの緩んだ少女をうっかりヤってしまったところで隠蔽はできるだろうが、そういう問題ではない。
「む、証明の方法は提示したんだから。きぬはたは改心して魔術を認めるか、さっくり試して魔術を認めればいいんだよ!」
大体、とインデックスは続ける。
「この街の能力? だって怪しいものじゃない。魔術は信じない癖に、証拠も無く能力は信じるの?」
途端、瞳に光を取り戻し絹旗は起き上がった。
「ふっふっふ、証拠なら見せてあげましょう。詳細は省きますが私も能力者、超硬い大能力者なのです!」
「つ、つまり……?」
勢いにたじろぐインデックス。
「大抵の攻撃は防げます! さぁ適当な刃物で私を超刺してみれば良いですよ、さぁさぁ!」
「そんな、あ、危ないことできないんだよ!」
「自分でできないことを人に超やらそうとするなーーーーっ!!」
広くもない室内に少女達の声が響き渡った。
288: 2012/01/02(月) 19:34:46.25 ID:ZELWgi+R0
「はぁ、はぁ、解りましたよ、その服に何らかの力が働いていることは認めます」
「はぁ、じゃあ……っ、はぁ、一時、停戦、かもっ」
ひとしきり騒ぎ回った後、状況はようやく和解を見た。
なんのことはない、互いに軽めのパンチを入れ合っただけである。
結果、『歩く教会』の効力とインデックスの置かれた状況について、絹旗はある程度認めることとなった。
合意の上渋々とはいえクロスカウンターを決める修道女がいるのかという新たな疑問は湧いたが。
(あれ? ということは受け止めた時に装甲を解除したのは、超単なる痛み損ですか?)
「夜、明けてるね」
「え、あ、そういえば超さっきまで深夜だったんですよね……急に眠くなってきました」
気付けばカーテンの隙間から白々しい光が射し込んでいる。
「うーん、ここが一般的なホテルと一緒なら、チェックアウトまではまだ時間があるんじゃないかな?」
「それはそうなんですが」
今までの遣り取りでインデックス自身に害意が無いだろうことを、絹旗は感じ取っている。
ただ、魔術師と呼ばれる正体不明の追手がこの少女に掛かっている以上ここで眠りこけるわけにはいかなかった。
自身が自動防御の能力を持っているにしても、だ。
「うん、そうだね」
ふとインデックスが立ち上がった。
「ご飯をありがとう、きぬはた。ちょっと緊張もほぐれたしね」
「行くんですか」
「うん、『歩く教会』はね、魔翌力を発しているから。ここが敵に探知されちゃう」
攻撃を防ぐために着ていざるを得ないんだけどねー、と口を尖らせてみせる。
その軽い口調に、ずん、と肺が重たくなるのを絹旗は感じた。
「……待ってくださいよ」
絹旗の「お仕事」は酷く薄汚れたものだ。
学園都市にとっての不穏分子と称し、無実の、運の無かっただけの人間を始末したこともある。
他人を惜しむ心なんてとうに凍っている。
(人権なんて超考慮されずに追い回されて、なのに折れずにいられるなんて――)
それでも、無理矢理に自分自身を折られ、蹂躙された記憶があるゆえに。
絹旗はインデックスをただの「他人」と思えなかった。
「ごめんね、行かないと」
届かない過去を掬い上げるように、この少女の助けになりたいと思った。
「これでも多少のことはできます」
「……、じゃあ」
「はぁ、じゃあ……っ、はぁ、一時、停戦、かもっ」
ひとしきり騒ぎ回った後、状況はようやく和解を見た。
なんのことはない、互いに軽めのパンチを入れ合っただけである。
結果、『歩く教会』の効力とインデックスの置かれた状況について、絹旗はある程度認めることとなった。
合意の上渋々とはいえクロスカウンターを決める修道女がいるのかという新たな疑問は湧いたが。
(あれ? ということは受け止めた時に装甲を解除したのは、超単なる痛み損ですか?)
「夜、明けてるね」
「え、あ、そういえば超さっきまで深夜だったんですよね……急に眠くなってきました」
気付けばカーテンの隙間から白々しい光が射し込んでいる。
「うーん、ここが一般的なホテルと一緒なら、チェックアウトまではまだ時間があるんじゃないかな?」
「それはそうなんですが」
今までの遣り取りでインデックス自身に害意が無いだろうことを、絹旗は感じ取っている。
ただ、魔術師と呼ばれる正体不明の追手がこの少女に掛かっている以上ここで眠りこけるわけにはいかなかった。
自身が自動防御の能力を持っているにしても、だ。
「うん、そうだね」
ふとインデックスが立ち上がった。
「ご飯をありがとう、きぬはた。ちょっと緊張もほぐれたしね」
「行くんですか」
「うん、『歩く教会』はね、魔翌力を発しているから。ここが敵に探知されちゃう」
攻撃を防ぐために着ていざるを得ないんだけどねー、と口を尖らせてみせる。
その軽い口調に、ずん、と肺が重たくなるのを絹旗は感じた。
「……待ってくださいよ」
絹旗の「お仕事」は酷く薄汚れたものだ。
学園都市にとっての不穏分子と称し、無実の、運の無かっただけの人間を始末したこともある。
他人を惜しむ心なんてとうに凍っている。
(人権なんて超考慮されずに追い回されて、なのに折れずにいられるなんて――)
それでも、無理矢理に自分自身を折られ、蹂躙された記憶があるゆえに。
絹旗はインデックスをただの「他人」と思えなかった。
「ごめんね、行かないと」
届かない過去を掬い上げるように、この少女の助けになりたいと思った。
「これでも多少のことはできます」
「……、じゃあ」
289: 2012/01/02(月) 19:35:28.74 ID:ZELWgi+R0
一度息を吸い、インデックスの表情筋が笑顔をかたどる。
「私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
「……超残念ですがそれはできません」
その整い過ぎた顔を見て、絹旗は疑念も迷いも捨てた。
「着いて行くまでもなく、もう私も似たような場所に居ますから」
ただ、と続ける。
「日本式の地獄には不慣れであろうあなたに、今後の宿くらいなら超提供できますよ?」
否定から自身の境遇の吐露、申し出と続いた言葉に、インデックスは作るべき表情を見失ったようだった。
ただぽかんとしながら言葉を漏らす。
「でも、迷惑が」
「身内で持ってる部屋の内、普段使わない所に匿うだけです。超迷惑には数えません。基本的に常駐している人は居ないので」
誰かが襲撃に巻き込まれることも多分無いでしょう、と、他人ばかり気遣うインデックスに先回りした。
「魔術師は危ないんだよ」
「私は超硬いです」
「きぬはたも大変って言ってた」
「立場上問題無い範囲でやります」
隠れ家の1つを知られるだけで相当問題があるのだが、顔には出さない。
「でも」
「……じゃあ、本当に超マズくなったら私は逃げ出します」
だからそれまでは頼ればいい。
最終的には非情を装った言葉で反論を押し込めた。
「……うん、分かったんだよ。ありがとう、きぬはた」
細い陽光がインデックスの横顔を照らす。
僅かに涙の滲んだ目で、少女はふにゃりと笑っていた。
「私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
「……超残念ですがそれはできません」
その整い過ぎた顔を見て、絹旗は疑念も迷いも捨てた。
「着いて行くまでもなく、もう私も似たような場所に居ますから」
ただ、と続ける。
「日本式の地獄には不慣れであろうあなたに、今後の宿くらいなら超提供できますよ?」
否定から自身の境遇の吐露、申し出と続いた言葉に、インデックスは作るべき表情を見失ったようだった。
ただぽかんとしながら言葉を漏らす。
「でも、迷惑が」
「身内で持ってる部屋の内、普段使わない所に匿うだけです。超迷惑には数えません。基本的に常駐している人は居ないので」
誰かが襲撃に巻き込まれることも多分無いでしょう、と、他人ばかり気遣うインデックスに先回りした。
「魔術師は危ないんだよ」
「私は超硬いです」
「きぬはたも大変って言ってた」
「立場上問題無い範囲でやります」
隠れ家の1つを知られるだけで相当問題があるのだが、顔には出さない。
「でも」
「……じゃあ、本当に超マズくなったら私は逃げ出します」
だからそれまでは頼ればいい。
最終的には非情を装った言葉で反論を押し込めた。
「……うん、分かったんだよ。ありがとう、きぬはた」
細い陽光がインデックスの横顔を照らす。
僅かに涙の滲んだ目で、少女はふにゃりと笑っていた。
290: 2012/01/02(月) 19:36:19.47 ID:ZELWgi+R0
(あー、麦野にバレたら超バラされますかねー……。それにしても)
協力を申し出ておきながら、絹旗は1つ重要なことを言えずにいた。
自分の立場の詳細、暗部での役割。
命令が下るだけで絹旗はインデックスの敵に回る可能性があること。
つい伏せたのは、もしもの時に楽に事を運ぶためなのだろうか、あるいは。
その疑問から、絹旗は敢えて目を逸らす。
(もしもの時、私は――――)
協力を申し出ておきながら、絹旗は1つ重要なことを言えずにいた。
自分の立場の詳細、暗部での役割。
命令が下るだけで絹旗はインデックスの敵に回る可能性があること。
つい伏せたのは、もしもの時に楽に事を運ぶためなのだろうか、あるいは。
その疑問から、絹旗は敢えて目を逸らす。
(もしもの時、私は――――)
291: 2012/01/02(月) 19:39:06.38 ID:ZELWgi+R0
以上です
ふ、不手際やらかしてないよな……?
ペンデックスがどうしても倒せません
肉弾接近戦のみじゃきついんだぜ
あと超絹旗禁書じゃなくて超窒素禁書だった
読んでくれた人ありがとう!
ふ、不手際やらかしてないよな……?
ペンデックスがどうしても倒せません
肉弾接近戦のみじゃきついんだぜ
あと超絹旗禁書じゃなくて超窒素禁書だった
読んでくれた人ありがとう!



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