490: 2014/05/22(木) 15:22:42 ID:tWxiTH4Q0


前回:エレン「この長い髪を切る頃には」【その6】


劇場版 進撃の巨人 前編

そんな訳で、11時くらいかな。皆が集まってうちに来た。

コニー、ライナー、ベルトルト、ユミル、サシャ、クリスタ、アニは今回初めての来訪だ。

で、この時についでにうちの家庭の事情も皆に話す事になった。

既に知っているアニは通常運転だったが、ライナーやベルトルトはさすがに驚いていた。

ユミルは「へーなるほど」と納得した顔してクリスタは「それは大変だね」と何故か心配されて、サシャには「家族が増えていいですね!」とあっさり言われた。

コニーも「家族が増えていいじゃん?」とあんまり深刻には捉えてないようだ。

料理をテーブルからリビングの方に移動させて皆で食べる事にする。

ミカサが降りてきた。一度、ちゃんと着替えて身支度した様だ。

オレがリビングに料理を運んでいるのを見て「手伝う」と言ってくれたけど、

エレン「いいって。もうほとんど終わったし」

アルミン「うん、もう準備は終わったよ」

ミカサ「ごめんなさい…」

エレン「いいから、とにかく席につけ」

と、言ってミカサを無理やりオレの隣に座らせて、皆で飯を食う事になった。

アルミン、オレとミカサ、ジャン、マルコ、コニー、サシャ、クリスタ、ユミル、ライナー、ベルトルト、アニ、でぐるっと料理を囲んで少し早い昼飯になった。

エレン「悪いな、皆。急に呼びつけて」

サシャ「全然いいですよーこういうのだったらいつでも駆けつけますからね!」

コニー「タダ飯食えるならどこでもいくぜ!」

と、早速ガツガツ食べ始める二人だ。この二人がいれば飯が残る事はまずないだろ。

ジャン「なあ、エレン。ビデオ繋いでもいいか?」

エレン「ああ、昨日の試合か。いいぜ。ちょっと待て」

ビデオカメラをテレビに繋いで直接映像を流す。

コニーの前で観てもいいんかな? とも思ったけど、コニーはむしろ「見ようぜ!」と明るい反応だった。

491: 2014/05/22(木) 15:24:06 ID:tWxiTH4Q0
コニー「試合は早いうちに反省しねえとな!」

と、頭の切り替えが早いようだ。羨ましい性格をしている。

そんな訳でビデオを見ながら食事会だ。

皆でミカサの手料理を食べながらコニーの試合を観戦する。

ライナー「最初はリードしていたんだがな……」

ミカサ「え? 先制点は講談が取ったの?」

ミカサがそういうとコニーが説明した。

コニー「オレのヒットで2点取ったんだ。その後にキュクロのソロホームランもあった」

エレン「へーすげえなお前。甲子園で打ったのか」

試合結果しか見てなかったから、その内容までは知らなかった。

コニー「おう! 甲子園で打つのが夢だったしな!」

と、自慢げだ。夢がひとつ叶って良かったな。

でも後半、じわじわと追い上げられた。8回の満塁の後の、グランドスラム。

所謂満塁ホームランをカプコン高校に決められて、心が折れたのか、9回で追いつけずに負けた。

コニー「1点差だったんだ。でも、その1点が取れなかったんだよなあ」

と、コニーは悔しそうにしている。

ジャン「なあ、なんでキュクロを8回まで使わず、7回で降ろしたんだ?」

と、ジャンが問い詰める。

ジャン「前の試合の疲れが残っていたのか? それとも途中で怪我とか…」

コニー「ビンゴ。7回で爪が剥げちまって、続投出来なくなったんだ」

ジャン「げ! まじかよ、それ……爪のケアしてなかったのか?」

コニー「んにゃ。厳密にしていたけど、それでも耐え切れない程、爪に負荷がかかってさ。あのストレートだろ? 指先に結構力入れていたみたいだし、うっかりやっちまったんだって」

アルミン「うひい……それはきつかったね」

アルミンがまるで自分の事のように青ざめる。

ミカサ「爪が割れる事もあるのね」

ミカサがちょっと驚いていたようだ。するとジャンが親切に解説する。

ジャン「あるぜ。女子がよくやってるだろ? あんな感じで投手は爪もちゃんと手入れするけど、それでも割れる時は割れる。特に速球派は気をつけないとやりやすいからな」

コニー「でも負けたのはキュクロのせいじゃねえよ」

と、コニーが白玉を食いながらきっぱり言い切った。

492: 2014/05/22(木) 15:25:37 ID:tWxiTH4Q0
コニー「オレの……いや、オレ達の力が足りなかったから負けたんだ。特に打力がなかったせいだ」

ジャン「そうか? 結構、ヒットは打ってるだろ?」

コニー「ヒットは打っても、ホームラン性の当たりが少ないんだよ。見ろよ。カプコン高校の打線。ファールも多いけど、飛距離が全然違うだろ」

そう言われて改めて見ればその通りかもな、と思った。

コニー「うちには所謂、ホームランバッターが少ないんだ。悔しいけど、一打で流れが変わる時もある。オレにはそれが出来ねえけど」

コニーは体が小さいからか、ホームランバッター向きじゃねえのかな?

オレは野球についてはパワプロで得た知識程度にしか知らないから推測だけど。

コニー「なあ、ジャン。何度もしつけえって思うかもしれんけどさ、野球部に入らねえか?」

ジャン「はあ?」

と、コニーが再び勧誘を仕掛けてきた。

コニー「オレが見た限り、お前、ホームランバッター向きの、いいセンス持ってる。オレには出来ない事をジャンなら出来ると思うんだよ!」

ジャン「……………」

ジャンの視線がミカサに動いて、そしてコニーに移動した。

コニー「途中加入でも全然いい! 次は秋の大会があるし、新チームが始まるし、そのタイミングなら、ジャンも………」

マルコ「コニー、ダメだよ。本人に無理強いしちゃ」

コニー「でもよお! ジャン、野球好きなんだろ?!」

ジャンの顔が、一瞬強張ったのを、コニーは見逃さなかった。

コニー「オレ、嬉しかったんだぜ? 甲子園、来られないのにビデオ持たせて、ライナーに撮らせたって話を聞いてさ。マルコに頼まれたって聞いて、マルコはジャンに見せたいからって、今日だって、すげえビデオの試合真剣に見てるし、ジャン、絶対、野球大好きだろ?」

そう言い切られてジャンも少しコニーに気押されていたけど、

ジャン「そ、そりゃ好きだけど、実際やるかは別だろ。オレ、頭を剃りたくねえし」

と、用意していた言い訳を使って逃げるようだ。

コニー「そこを何とか! 頼むよジャン!」

ジャンが苦いお茶を飲んだような顔になってんな。コニーに拝み倒されて困り果てているようだ。

ジャン「無理だ。大体、演劇部だって九州大会に行くんだ。そっちの方が大事なんだよ。今更辞めて、野球部に合流出来るかよ」

コニー「そ、そうなんか……」

コニーがようやく諦めたのか、がっくり肩を落とした。

もっと早い段階で誘っていれば結果は違ったかもしれないが。

493: 2014/05/22(木) 15:27:10 ID:tWxiTH4Q0
クリスタ「あのね、コニー。そのことで、私も相談したいと思ってたんだけど」

コニー「え?」

クリスタが唐突に話に割って入った。何だ?

何か照れくさそうにしているな。告白でもするのか? ってくらいに。

クリスタ「その…………………」

クリスタが言い淀んでいる。何だろな。気になるな。

その時ユミルが「言っていい」と合図をした。その後、

クリスタ「あのね。私、弓道部と野球部のマネージャー、掛け持ちしたいんだけど、出来るかな?」

コニー「へ?」

クリスタ「掛け持ち禁止なら、弓道部を辞める。急で悪いんだけど、野球部のマネージャーをやらせて欲しいの」

と急に言い出したものだからライナーがお茶をぶーっと吹き出してしまった。

コニー「え? 何で? 何で急に?」

ユミル「生で野球を観ちまった、からかな」

と、ユミルが一緒になって言った。

ユミル「あの熱気を味わってしまったせいで、野球観戦の虜になっちまったってところかな」

クリスタ「う、うん……まあ、ストレートに言ってしまえばそうね」

と、二人が苦笑して言い合う。

ユミル「私はクリスタと一緒に行動するから、私もついでにマネージャーやるぜ」

コニー「えー……」

と、ユミルの方に対しては嫌そうな顔をするコニーだった。

ユミル「あ? 何か文句あるか?」

コニー「クリスタだけで十分だけどなー」

ユミル「他校の彼女にその言葉、ちくるぞ」

コニー「ちょ! 何でユミルがオレの彼女の事、知ってんだよ!」

サシャ「え? 言ったらダメでしたか?」

コニー「サシャのアホ!」

と、アホにアホと言われてムッとするサシャだ。

サシャ、お前は別に悪くねえぞ。多分。

コニー「そりゃマネージャー増えるのは大歓迎だけど、掛け持ちすんの?」

クリスタ「ダメなら辞めるよ。その辺は確認して貰えるかな?」

コニー「分かった。ピクシス監督に聞いてみる。まあ、監督は女子には甘いから大丈夫だとは思うけどな」

と、そっちの件は一件落着した様だ。

494: 2014/05/22(木) 15:28:55 ID:tWxiTH4Q0
ライナー「……………」

しかしライナーの額には滝のような汗が浮かんでいる。

ライナーの想像している事は分かっている。

男の巣のような野球部に可憐なクリスタを投入すれば、どんな事が起きるか。

………と、妄想して胃がキリキリしているんだろうな。

ライナー「あの……」

おっと、漏れなくライナーがついてくるか?

ライナー「コニー、男子の方は掛け持ち出来るのか?」

コニー「ええ? 野球部員はさすがに掛け持ちは無理じゃねえ? え? もしかして、ライナー、野球部くんの?!」

ライナー「か、掛け持ち出来るのであれば……」

コニー「ええー……多分、無理じゃねえかな。マネージャーならともかく、部員はちょっとなあ」

ライナー「ではオレもマネージャーで……」

コニー「何、馬鹿な事言ってんだよ! さすがのオレでもキレるぞライナー!」

と、コニーがさすがにプンスカ怒り出してしまった。無理ねえ。

ライナーがマネージャーとか。適材不適所過ぎる。

コニー「野球部に来いよ! ライナーならすぐレギュラー取れるし!」

ライナー「ううう、しかし、いいのだろうか」

ベルトルト「しょうがないよ。ライナー」

ユミル「ライナー、野球好きなのか?」

クリスタ「野球やってるライナーも見てみたいかも」

ライナー「コニー、明日早速、入部届けを用意してくれ(キリッ)」

変わり身が早すぎて笑ってしまった。

ライナーが加入するなら、恐らくベルトルトも移籍する事になるだろう。

そうなればもう、コニーの勧誘も落ち着くだろうな。

その様子をちょっとだけ、複雑そうにジャンは眺めていたが、

マルコ「あ、あのさ……」

と、今度はマルコがさっきのクリスタのように照れくさそうにしていた。

もしや、この流れだと、まさか。

いや、でも、マルコまで野球部に入ったら、ジャンは……。

495: 2014/05/22(木) 15:30:15 ID:tWxiTH4Q0
マルコ「僕も実は、部活に入ろうかなって、アルミンとも話してて」

エレン「え? アルミンと?」

アルミン「う、うん……実は、アニとマルコと僕は、演劇部の方に途中加入したいなあって、話していて」

と、こっちもびっくり発言されてオレとジャンとミカサは一緒に驚いた。

エレン「でもいいのか? アルミン。アルミンは特待生だし、マルコだって…」

アルミン「うん。成績の方は多分、問題ないよ。落とさずにやっていけると思う。ただ僕の場合はおじいちゃんの件もあるから、その件でイェーガー先生に相談したいんだ。近いうちに時間取れるようにお願いしてもいいかな?」

と、アルミンは成績よりも家庭の事情の方を懸念しているようだ。

そっか。アルミンの家はおじいちゃんが一人でいるから、そっちの方が不安だったんだな。

もしかしたら、施設の利用とか考えているのかもしれない。そういう話なら親父に聞いた方が早い。

エレン「ああ、それはもちろん、大丈夫だけど……」

横を見たら、ジャンがすげえ顔していた。なんていうか、宝くじが当たったみたいな顔かな。

いや、それよりもっと喜んでいるかもしれない。

だって、あいつ、本当は、マルコと一緒に活動したかったんだから。

ジャン「マルコ、お前、本当にいいのか?」

マルコ「野球部はさすがに無理だけど、文化系なら、成績落とさずに何とかなるかなって思って」

ジャン「もしかして、裏方か?」

マルコ「ああ、バレた? うん。あの舞台のセットとか、道具とか。凄く格好良かったから、僕もああいうの、作れたらなって思ったんだ」

照れくさそうに答えるマルコにジャンは「そっか…」と微笑み返していた。

良かったな。ジャン。

場所は違うけど、またコンビを組めるぜ。

ミカサ「アニは、何をしたいの? 役者?」

アニ「いや、私は衣装の方がやりたいかなって。あのドレス、凄く綺麗だったから……」

と、乙女な表情をしてアニが言った。

おおお、強力な戦力が加入してきた感じだな、これ!

エレン「やった! アルミンは手先が器用だし、大道具のセット、作るのとか得意そうだしな!」

アルミン「図面作るのとか大好きだよ。今度、大道具さん達と話させてね」

エレン「ああ、勿論だぜ!」

と、わいわい盛り上がっていたら………

サシャ「いいですねー皆青春してますねー」

と、一人だけサシャが麺類を食いながらぼそっと言った。

クリスタ「サシャは部活やらないの?」

サシャ「私ですか? 私はアルバイトをしているので、難しいですね」

と、一人だけ眉をひそめるサシャだった。

サシャ「コンビニ(早朝)とカフェ(土日)と本屋(深夜)とスーパー(深夜)4つ掛け持ちしているんで、さすがに部活をする余裕はないです」

エレン「ええええ? 何でそこまで働いているんだ?」

と、言ってはっとした。馬鹿かオレ。空気読めよ!

貧乏だったら仕方ない。そう思っていたら、

サシャ「えっと、食費代が足りないから、ですかね。タダで飯が食える部があれば、そこに入りますけど」

と、サシャの胃袋が訴えているようだった。

498: 2014/05/23(金) 00:55:18 ID:bbViPeZI0
サシャ「あ、勘違いしないで下さいね。うちは特別、貧乏って訳じゃないんで。ただ、お小遣いの範囲では食費が足りないだけなんです」

と言いながらも炒飯をかきこむサシャだった。

サシャ「もっと短時間でてっとり早く稼げる方法があればいいんですが……」

と、食べ終えてから「げほーっ」とゲップをするサシャにユミルが「そうだなー」と頭を悩ませる。

ユミル「確かにサシャの食いっぷりだと毎月、金かかるだろうな」

ジャン「そんだけ食ってよく太らないな」

サシャ「私、食べても太らない体質なんで」

クリスタ(じとー)

ユミル「クリスタ、無い物ねだりするな」

クリスタ「な、なんのこと?」

惚けるクリスタがちょっとだけ汗を掻いていた。

アルミン「あれ? でも待って、サシャ」

サシャ「何ですか?」

アルミン「サシャってまだ、18歳未満だよね? それだけのバイトやってるってことは、深夜もやってる?」

サシャ「やってますよ」

アルミン「確か深夜は18歳未満だとバイトは出来ない筈じゃ……」

サシャ「ぎ、ぎくー! ええっと、オフレコでお願いします」

ジャン「は? 年齢を誤魔化してやってるのか?! 悪い奴だな」

サシャ「し、仕方ないじゃないですか! 18歳未満だと、雇ってくれるところ少ないんですから!」

綱渡りもいいところだな。学校にバレたらまずいんじゃないか?

アニ「ねえ、もっと堅実で金の稼げる仕事をした方がいいんじゃないの?」

と、アニもさすがに言い出した。オレも同感だ。

アニ「コンビニとかって、賃金が安いよね。そういうところより、もっといいところ探した方がいいと思うけど」

サシャ「いい職場があればすぐにでも鞍替えしますよー」

ジャン「んー…」

そもそも、女の子が深夜に働くのって危なくないかな?

サシャは見た目は悪くないんだし、あまり長くそういうバイトをしない方がいい気がするが。

アニ「誰か、いい職場知らない?」

エレン「うーん、求人情報か……」

ジャン「生憎、分からんな」

ライナー「すまん。オレも分からない」

ミカサ「私も分からない」

アルミン「パソコンで調べる事は出来るけど、やってみようか?」

サシャ「いえ、それは既にやってます。その上で選んだのがその四つなんです。他は賃金が多くても、融通がきかないところも多いので」

うーん。煮詰まっちまったな。

499: 2014/05/23(金) 01:14:08 ID:bbViPeZI0
マルコ「家庭教師とかは賃金がいいってよく聞くけどね」

ジャン「ははは! サシャに家庭教師は絶対無理だろ!」

サシャ「ぐさああ! 失礼ですね! 確かにその通りですけど!」

ジャン、サシャをあんまり苛めるなよ。可哀想に。

クリスタ「読者モデルとかは? 採用されれば、結構いい金額貰えるけど」

サシャ「え? いくらくらいですか?」

クリスタ「私は昔、トータルで×××××円くらい貰ったかな。小学生の頃、一回だけ、雑誌の編集者にスカウトされて、やったことあるけど」

ライナー「なにいいい! そ、その雑誌は、今も残っているのか?!」

クリスタ「家にあるけど……やだ、ライナー。見せないよ?」

ライナー「そ、そこを何とか……」

ライナーを無理してユミルが話を進める。

ユミル「確かにサシャは顔は悪くないし、モデルとして採用されれば、案外いけるんじゃないか?」

サシャ「どどどど、どうすれば採用されるんですかね?!」

と、サシャが早速食い気味にクリスタに詰め寄っていた。

クリスタ「自分で応募する場合と、スカウトされる場合の2通りあるらしいよ。サシャ、応募してみる?」

サシャ「はい! どこの雑誌に送ればいいですかね?!」

アニ「だったら少しメイクもした方がいいね。ちょっとおいで」

と、アニがサシャを捕獲して何やらごにょごにょ言っている。

アニ「ミカサ、洗面所借りてもいいかい?」

ミカサ「エレン……」

エレン「別にいいぞ」

アニ「じゃあちょっと借りるね」

という訳で、アニがサシャを試しにメイクアップしてみる事にしたようだ。

500: 2014/05/23(金) 01:25:04 ID:bbViPeZI0
そして数十分後…………

サシャがイメチェンして皆の前に顔を見せた瞬間………

ジャン(ガタッ)

コニー(ガタガタ)

ライナー「おおおお!」

ベルトルト「すごい、イメージ変わったね」

マルコ「可愛い……」

アルミン「可愛いよ! サシャ、すごく可愛い!」

エレン「ああ、可愛いな」

と、オレ達男チームは全員「○」の札を上げたんだ。

サシャ「そ、そうですかね……自分では良く分かりませんが」

アニ「鏡見る?」

サシャ「お願いします」

サシャ「おおおお! 何だか違う人みたいですね!」

と、サシャは喜んでいた。

それも其の筈だ。いつもはポニーにしている髪を下して、ばっちりメイクをしているんだ。

元々、顔立ちははっきりしている方だから厚化粧じゃないけど、それでも十分、可愛い。

これ、いけるんじゃねえか? サシャはオレにちょい背が低いくらいだし、モデルとしての背丈も足りている。

何より、本人がすっかりやる気だ。金の為に頑張るという、下心はあるけど。

でも自分の武器を使わない手はないもんな。

501: 2014/05/23(金) 01:41:00 ID:bbViPeZI0
クリスタ「ついでだから撮影もしちゃう?」

ユミル「そうだな。スマホでもいいのかな?」

クリスタ「いいんじゃない? じゃあサシャ、写すよー」

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

クリスタ「ちょっとサシャ! 変顔しないで!」

サシャ「は! す、すみません。つい!」

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

ユミル「ダメだな。表情がダメだ。面白過ぎる。真面目な写真が苦手なのか?」

サシャ「ついつい、照れくさくて………」

ユミル「真面目な空気が苦手なのか。これじゃモデルは無理だな……」

クリスタ「そこを何とか! 真面目に映る方法を教えてください!」

難しい注文が来たな。真面目に写真を撮られるのが苦手って。

普通の顔をしていればそれでいい筈なのに。どう説明するべきだこれ?

アルミン「履歴書の証明写真の時はどうやって撮ったの?」

サシャ「ええっと、入学の時の集合写真を拡大して焼きまわしました」

アルミン「えええ? それって有りなの?!」

サシャ「幸い、背景に誰もいなかったですし、家に写真を加工するソフトがあるので、背景は一色にして消して、家でプリントアウトしました」

エレン「と言う事は、誰かと一緒に映る時は普通でいられるのか?」

サシャ「? 多分、そうですかね」

エレン「じゃあ誰かと一緒に映ればいいんじゃないか?」

クリスタ「ダメだよ。それだと書類審査で通っても、仕事の時に使えないよ」

エレン「ああ、そうか……」

難しいな。根本的な問題が消えないとダメなのか。

502: 2014/05/23(金) 01:54:21 ID:bbViPeZI0
サシャ「わ、分かりました。では真面目に一人でも写真に写れるように特訓します! 慣れれば何とかなるかもしれませんし」

ユミル「そうだな。習うより慣れろかもしれないな。じゃあ、今日はサシャの撮影会の練習だ。皆、一斉に撮ってみるぞ」

サシャ「えええ?! 全員で行くんですか? それはさすがに恥ずかしいですよ…」

ユミル「ダメだ。練習するんだろ? ほら、携帯スマホ持ってる奴は構えろ!」

と、何故か皆でサシャの写真映りの練習をする事になった。

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

パシャ☆ パシャ☆ パシャ☆

サシャ「うー…ど、どうですかね?」

クリスタ「何だろ。実物より写真の方が可愛くない」

サシャ「うが!」

ユミル「そうだな。実物の方が倍は可愛い。写真映りが悪い方なのかな」

サシャ「ひええ」

アニ「確かに。実物はこんなに可愛いのに」

サシャ「ううう……」

ジャン「やっぱり、芋女にはモデルは無理だな」

コニー「ああ、諦めろ、サシャ」

サシャ「とほほほ……いい案だと思ったんですが」

ライナー「まあまあそう落ち込むな。今すぐ答えが出なくてもいいだろ」

ベルトルト「そうだよ。新しい職場なら、もしかしたら後で見つかるかもしれないし」

サシャ「いい情報があったら、すぐ教えて下さいね……」

と、いう訳でその日はわいわい、いろんな事を話したり、遊んだりしたら、あっという間に時間が過ぎた。

もう夕方だ。飯は大体食べ終えたし、新しい食材を買いにいかないといけない。

冷蔵庫の中とか空っぽになったからな。

皆を玄関まで送って家の中に戻ると、ミカサと目が合った。

また、目を逸らされて地味に凹む。

あー。皆がいた間は普通にしてくれたんだけどなー。

やっぱり、二人きりになるとダメなのか。とほほ…。

503: 2014/05/23(金) 01:58:03 ID:bbViPeZI0
>>501
訂正
サシャ「そこを何とか! 真面目に映る方法を教えてください!」

クリスタの台詞になっててびびった。サシャの台詞です。

504: 2014/05/23(金) 02:14:17 ID:bbViPeZI0
ミカサの携帯が鳴った。何やら話しているようだ。多分、おばさんかな。

ミカサ「………分かった。気を付けてね。お母さん」

電話を切ってミカサが言った。

ミカサ「お母さん、パートの帰りに晩御飯の材料を買ってから帰るから少し遅くなるって」

エレン「そっか。じゃあ買い物はおばさんに任せていいんだな」

この後、買い物に行こうかと思ってたけど、任せていいなら任せよう。

ミカサ「うん……皆のお皿、片付けよう」

エレン「オレもやるよ。量が多いし」

ミカサ「…………エレンは皿を拭くだけでいい」

エレン「分かった」

キッチンに食べ終わった皿を運んで二人で後片付けをする事にした。

ミカサ「…………」

エレン「…………」

あー。徹夜しているせいか、さすがにちょっと眠くなってきたな。

これ終わったら一回、仮眠取ろう。そう思いながら皿を拭いていく。

カチャカチャ……

カチャカチャ……

カチャカチャ……

無言で作業が進む。あー空気が重いなあ。

でも下手に話しかけても、なあ。

オレは仕方なく、黙ってミカサの隣で自分の仕事に専念していた。

しかしその時………

つる………ガチャン!

珍しくミカサが皿を落とした。一枚小皿を割っちまったんだ。

エレン「おい、大丈夫か?」

慌てて割れた皿の破片を拾おうとした、その時、

ミカサの様子がおかしい事に気づいた。自分の体を必氏に支えているのが分かる。

オレは割れた皿を放置して、ミカサの体を支えた。

エレン「おい、ミカサ?!」

なんかおかしい。触ってみると、妙に熱かった。

え? え? これって、まさか。

ミカサ「だ、大丈夫。ちょっと眩暈がしただけ……」

エレン「大丈夫じゃねえだろ!」

酒は飲んでない。なのに熱いって事は、熱があるって事だ。

ミカサ「皿、片付けないと……」

しゃがもうとしたミカサが、そのまま蹲った。

505: 2014/05/23(金) 02:33:16 ID:bbViPeZI0
エレン「!」

ミカサの様子が完全に、おかしい。

オレはすぐさまミカサをとりあえず、リビングのソファまで運んだ。

体温計を急いで取り出して測らせる。熱は38.1度あった。

何でこんな熱あるのに、平気なふりをするんだよ!!!

いや、つか、何でオレ、気づかなかった!

そう言えば皆が集まっている時、サシャの件で騒いでいた辺りから、ミカサ、あんまりしゃべってなかった。

というか、昨日の演劇で裏方やった挙句、多分、ほぼ徹夜で料理して、労働したら、そりゃ熱くらい出る!

過労だ! 完全に! とにかく今は安静にさせないと……。

と、思ったのに、ミカサはヨロヨロ起きようとして、

ミカサ「皿を片付け……」

エレン「オレがやっとくから! お前は寝てろ!」

ミカサ「………ごめんなさい」

エレン「謝るんじゃねえ! つか、部屋に戻れるか? 無理だよな。今日は下で寝るか? 仏間に布団敷くから、そこで寝るか?」

ミカサ「いい。部屋に戻るくらいなら出来る……」

だから、ヨロヨロ立ち上がるな!

ミカサ「あれ? 力が入らない……」

エレン「熱出りゃ皆、そうなる! つか、動くな!」

ミカサ「…………これが、熱?」

エレン「そうだよ! 過労だな。寝れば少しは落ち着く筈だ。ソファで寝るなら、腹にかけるもん持ってくるから!」

506: 2014/05/23(金) 02:49:26 ID:bbViPeZI0
腹にかけるものだけ一枚持ってくると、ミカサが「うんうん」唸っていた。

ミカサ「お酒を飲んだ時と全然、違う……」

エレン「そりゃそうだろ。多分」

酒は健康な時に飲むもので、気分が陽気になるものだが、過労の時の熱とは別物だ。

オレは酒飲んだ経験がないから「多分」としか言えないが。

ミカサ「……………」

ミカサが両目を閉じた。その様子を眺めながらオレは落ち込んだ。

……熱出すくらい、悩ませたのかな。

もしそうだとしたら、オレ、告白なんてするんじゃなかった。

後悔した。本当に。くそ…情けねえ!

オレのせいで、こんな風になっちまうなんて。

暫く様子を見て熱が下がらないようだったら、親父の病院に直行しよう。

そう、考えていたら、

ミカサ「エレンは………」

エレン「ミカサ、今はしゃべるな」

オレはとにかくミカサを安静にさせたかった。

でもミカサはこっちを見て、

ミカサ「……………」

何かを言おうとしたみたいだったけど、口を閉ざした。

そしてそのままソファの上で仮眠をとり始めたミカサをみてオレもようやく安心した。

おばさんが7時頃に帰ってきた。すると「あらあら」と言い出して、

ミカサの母「熱出しちゃったの? 頑張り過ぎたのかしら?」

エレン「すみません。オレがついていながら……」

ミカサの母「まあいいわよ。ミカサが熱出すなんて、はしかやおたふく風邪以来かしらね」

エレン「え? そうなんですか? でも…」

あれ? でも前に熱を出した経験がないとか言ってたような。

ミカサの母「小さい頃の流行り病の記憶なんて誰も覚えてないでしょう? この子も熱くらいは出したことあるわよ」

と、言っていた。

509: 2014/05/23(金) 22:01:42 ID:jphKE.Vs0
おばさんはアイスノンを用意してミカサの額にのせたり、ポカリを用意している。

しまった! オレもそういう事をするべきだった。

慌てて手伝おうとしたら、「大丈夫よ」と止められた。

ミカサの母「エレン君は、キッチンを片付けて頂戴。お願いね」

エレン「は、はい…」

そうだった。割れた皿もまだ片付けていない。オレは皿の片づけをして、ミカサの看病はおばさんに任せた。

そして親父が帰ってきた。今日はいつもより早い。親父がリビングにやってくると、

グリシャ「ん? どうかしたのか? ………ミカサ?」

と、顔色を変えた。

エレン「親父! あの、ミカサが…」

グリシャ「ふむ…」

親父はすぐにミカサの傍について医者の顔に戻った。

グリシャ「熱は測ったか?」

エレン「38.1度いってた」

グリシャ「咳や吐き気は?」

エレン「いや、それは無かった。あ、でも、眩暈がするって…」

親父はミカサの手首を取って脈拍を確認して、

グリシャ「うん、正常値かな。エレン。ミカサの具合が悪くなる前の行動を詳しく教えてくれ」

オレは昨日の演劇部の活動と、その後の料理の事を親父に伝えた。すると、

グリシャ「うん、だとしたら軽い熱中症かもしれないね。今はこのまま休ませた方がいいな」

と言って、親父は玄関に戻った。

エレン「親父?」

グリシャ「念の為、一回病院に戻る。ミカサが目覚めたら、点滴を一本うちでうっておこう」

と言って、親父は一回病院に戻って治療道具を取りに戻った。

そして仮眠をとったミカサが目覚めた頃、点滴をうつ。

ミカサは針を刺される瞬間、ちょっと嫌そうに、まるで梅干を食べたような酸っぱい顔をしていたが、大人しく針を刺されていた。

510: 2014/05/23(金) 23:03:54 ID:jphKE.Vs0
手当てを済ませてから親父が言った。

グリシャ「昨日と今日、暑い環境で労働をしたせいで、一時的に自律神経が狂ったんだろう。夏場は多いんだ。料理中に熱中症になる事も決して珍しくはないんだよ」

ミカサ「で、でも…キッチンはちゃんとエアコンもつけていたのに。暑いって感覚はなかったのに…」

グリシャ「それはいけない。夏場は「暑い」って感覚があるのが普通だ。それがないって事は、危険信号を出している証拠だよ」

ミカサ「エアコンをつけていても、そうなるの?」

グリシャ「ああ。調理中は感覚が鈍くなる事も多いからね。ミカサ、罰として、8月一杯迄は料理禁止だよ」

ミカサ「ガーン…」

ミカサが露骨にショックを受けていた。

グリシャ「うん、そんな顔をしてもダメなものはダメ。エレン、8月中はミカサを見張っているように。いいね」

エレン「分かった」

親父は一度決めたら頑固だ。撤回はない。

ミカサはすっかり青ざめているが……。

グリシャ「ミカサ、熱中症を甘く見てはいけない。今回は軽度で済んだけど、酷い時は命を落とす場合もあるんだよ。夏場の体調管理はとても大切だ。ましてや部活で疲労しているところに、そんな過労をしては、倒れるのも当たり前だよ。どうしてそんな事をしたんだい?」

ミカサ「…………」

ミカサは親父から視線を逸らした。オレと目が合って、またプイッと逸らした。

うっ……。罪悪感で胸が痛くなる。するとそこに、

ミカサの母「ごめんなさいあなた。ミカサは悩み事があると、料理に没頭してしまう悪い癖あるのよ」

グリシャ「そうなのかい? それは初耳だ」

ミカサの母「でも、人には言わない……言えない悩みなのよね。そうでしょ? ミカサ」

ミカサ「………うん」

ごめん。ミカサ。オレのせいで。

こんなに悩ませるなら、言うんじゃなかった。

グリシャ「ふむ…。悩みがあるせいで、そういう行動をとった訳だね。だとしたら、悩みが解決しない事には、また、同じことを繰り返すかもしれないね」

ミカサ「………」

グリシャ「自分でどうしても解決したいんだね。分かった。詳しい事は聞かないよ。でも、もう2度と、同じ過ちをしてはいけないよ。分かったかい? ミカサ」

ミカサ「分かった」

そしてミカサはその日の夜、ゆっくりリビングで休む事になった。

次の日の朝になるとすっかり顔色も元に戻り、いつものミカサの姿になった。

511: 2014/05/23(金) 23:17:26 ID:bbViPeZI0
オレも一晩ゆっくり眠ったおかげで気持ちも楽になった。頭の中で整理もついたし。

午後からミカサと部活に行く途中、オレは道の途中で、ミカサに言ったんだ。

エレン「悪かった」

ミカサ「え?」

エレン「この間の事、悪かった。突然、あんな事、言っちまって…」

オレは決めた。あの時の事を、忘れようと。

エレン「忘れてくれ。オレの言った事。ミカサの迷惑になるんなら……」

それはつまり、ミカサに振られるという事だ。

ミカサは優しいから、「ごめんなさい」が言えなくて苦しんだんだろう。

だったら、

自分から終わらせよう。そう、思ったんだ。

…………なのに。

ミカサ「迷惑なんて、言ってない……」

と、ミカサが言ってきたんだ。

エレン「ん? でも、ミカサ……」

ミカサ「悩んだのはエレンの事ではない……ので、エレンが気にする事ではない」

エレン「え?」

でも、オレが告白したせいでミカサの調子が狂ったんじゃないのか?

エレン「でも、ミカサが悩んだのって、オレがミカサに好きだって、告白したせいじゃ…」

ミカサ「………」

無言だ。肯定なのか、否定なのか。どっちだよ。

ミカサ「エレンは私の家族……なので」

ミカサは一度立ち止まって言った。

ミカサ「家族なので、大事にしたいと思っている……ので」

それは、オレも同じ気持ちだったけど。

今は、それよりも大きな気持ちになってしまっている。

……ミカサはオレとは違うんだろ?

エレン「ミカサ、もういいって」

それ以上、はっきりと言わせたくなかった。

答えはもう、見えたようなもんだ。

エレン「無理すんな。オレも悪かった。オレ達、家族になったんだし、そういうの、良くなかったよな。もう……そういう目では見ない様に、オレも気をつけるからさ」

オレ、うまく笑えているかな。

今、笑わないと、オレは大根役者になっちまう。

………だから。

エレン「忘れてくれ……な?」

と、自分の気持ちに蓋をして、再び偽りの仮面を被る事にしたんだ。

515: 2014/05/24(土) 21:34:46 ID:6VkJ4IVQ0
ミカサはそれに対して、呆れたような、怒ったような、複雑な顔をしていたけど……。

ミカサ「エレンがそう言うなら……」

と、納得してくれたようだ。

音楽室に行くと、そこにはマルコ、アニ、ジャンの姿があった。

先輩達も大体集まっている。まだ全員揃ってないけど。

先に準備運動をしたりしていたみたいだ。

ニコニコしたマルコがこっちに声をかけてきた。

マルコ「やあエレン! ミカサ! 今日から早速、仮入部させて貰える事になったよ。よろしくね」

エレン「おう! よろしくな! ………アルミンは」

アニ「アルミンは8月末まではまだバタバタしているみたいで、こっちに来られるのは来週からになるかもしれないって」

エレン「……そっか。了解」

そう、すぐに入部出来る訳じゃねえか。

さてと。オレも気持ちを入れ替えて、部活しねえとな。

ミカサに振られた事は、部活に持ち込んじゃいけない。

そう思って、いつも以上に気合を入れた。

……でも、

ペトラ「ストーップ!」

ペトラ先輩が演技の途中で、ストップをかけてきた。

ペトラ「エレン、いつもより表情が硬いわよ? うーん、疲れが残っているのかしら?」

エレン「いえ、大丈夫です」

ペトラ「いーや、大丈夫じゃないわね。ちょっと休憩を入れましょうか」

ペトラ先輩の気遣いは有難い……訳じゃなかった。

今は別の事をしている方が気が紛れていいんだけどな。

でも、表情が硬いって事は、まだ気持ちの切り替えが出来てない証拠だ。

こういう時は、早口言葉をするに限る。

エレン「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵…」

オルオ「遅いな。その倍は早く言わないと」

エレン「え?」

オルオ「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生ごふっ!」

ペトラ「早くても、噛んじゃダメでしょうが」

音楽室がどっと笑いに包まれた。

オルオ先輩のこういうところ、有難いな。

なんていうか、ムードメーカー的な存在で、この人がいるだけで、部が明るくなる気がする。

516: 2014/05/24(土) 21:36:11 ID:6VkJ4IVQ0
オルオ「う、うるさいな! とにかく早口言葉は早く言わないと、ダメだろ。エレン、もっと気合入れて練習しておけよ」

エレン「はい!」

という訳で、生麦生米生卵や基本的な早口言葉を繰り返しやっていたら、自然と顔の強張りが取れてきた気がした。

休憩を挟んで練習再開。

今度はペトラ先輩に注意される事もなく、通し稽古が無事に終わった。

良かった。ちゃんと集中出来た。凹んでいたけど、そのせいで足を引っ張らなくて済んだみたいだ。

ペトラ「九州大会は今年はO県で行われるから、前日の朝にはここを出発するので、そのつもりで皆、準備しておいてね」

一同「「「はい!」」」

ペトラ「今日から仮入部の2名が入ってきたけど、2人も九州大会についてきて、皆のサポートをお願いするわ。宜しくね」

アニ「はい」

マルコ「はい!」

ペトラ「今年は例年と違って、ちょっと特殊な日程になっているからきついと思うけど、皆、頑張ろうね」

エレン「え? 例年と違う?」

オレは思わず、声に出してしまった。すると、オルオ先輩が、

オルオ「ああ。今年は何故か例年と違う日程なんだ。いつもの年なら、6月に地区大会があって、10月頃に県大会があって、12月頃にブロック大会、つまり九州大会があって、翌年の8月頃に全国大会になるんだが……」

ペトラ「うん。ブロック大会、つまり今回、九州大会で勝ち上がった場合は、また来年の夏の全国大会に上演するから、私達は九州大会でどのみち引退になるのよね」

と、今頃驚くような事を言われてびっくりした。

エレン「え? じゃあ今年は地区大会を飛ばしていきなり県大会をやったんですか?」

ペトラ「そうね。出場校が年々、減ってきているのと、予算とかの都合かしらね?」

オルオ「オレは前のやり方の方がいいけどな。慌ただしいだろう。実際」

エルド「でも試験的に今回、こういう日程になったらしいぞ。不評だったら元に戻るんじゃないか?」

ペトラ「もしかしたら、来年はまた元に戻るかもしれないわね」

と、先輩達がいろいろ言っている。

エレン「じゃあ今度の大会で、勝っても負けても、先輩達は引退になるんですね」

ペトラ「そうね。ま、悔いの残らないように精一杯、頑張るわよ」

と、3年の先輩達は全員、ぐっと拳を握っていた。

517: 2014/05/24(土) 21:38:35 ID:6VkJ4IVQ0
ペトラ「13、14、15日はお盆だから学校もさすがに開いてないわ。間違えて来ないように気をつけて。16日の朝9時、校門前に集まって、バスで移動するから遅れないようにしてね。以上、解散!」

という訳で、今日は軽めの練習をした後、家に帰ることになった。

オレはいつものようにミカサを待っていたけど………

ミカサ「あの、エレン。ごめんなさい」

エレン「ん?」

ミカサ「今日はちょっと、アニと一緒に寄るところがあるので、先に帰って貰えないだろうか」

と、珍しくミカサの方からそう言われてしまって、

エレン「あ、ああ……」

と、頷いた。

エレン「き、気をつけて帰れよ」

まだちょっと気まずいからかな。ミカサがぎこちない。

いや、それを言ったらオレもそうなんだけど。

仕方がない。今日は一人で帰るか…。

と、校門前でミカサとアニと分かれて、家の方向へ歩いていたら……

エレン「そういや、お盆は今年はどうするのかな」

と、ふと思った。

オレの家は毎年、母さんの墓参りに行く。

花とかをお供えに行って墓を掃除したりするんだけど。

もしかして、ミカサの家もそうなのかな。亡くなったお父さんの墓参りに行くのかもしれない。

まだお盆の日程については親父に聞いてないけど、お盆だけは毎年必ずお休みを取っているので、今年も墓参りにはいくとは思う。

帰りに花屋に寄って、お供え用の花を買って帰ろうかな。そう思いながら、駅に向かった。

エレン「今年は何の花を置こうかな」

駅を乗り継いで、商店街に立ち寄る。

母さんは花なら何でも大体好きだった。だから、こだわる必要はない。

エレン「今年は………>>518の花を供えようかな」

オレは花屋でその花を買う事にした。

519: 2014/05/26(月) 15:13:57 ID:RyV0CUQ.0
昔、母さんが育てていた、白くて綺麗な花だ。カサブランカを何本か店員さんに包んで貰って、家に帰る。

オレが家に帰った後、少し遅れてミカサが家に帰ってきた。

手には見慣れたビニール袋。本屋に寄ってきたようだ。

エレン「ミカサ、本、買ってきたのか?」

ミカサ「う、うん……」

びくびくしている。そんなに怯えられたら傷つくだろ。

どういう距離感で話せばいいか分からない。あんまりこっちから話しかけない方がいいのかな…。

しかし今度はミカサから話しかけて来て、

ミカサ「あ、カサブランカ……」

と、オレが買ってきた花に気づいたようだ。

エレン「ああ、お盆だし、母さんの墓参りに行くから、お供え用にと思って買ってきたんだ」

ミカサ「お花、好きだったの?」

エレン「まあな。昔はうちにもいろんな花、植えていたんだ」

オレは花にそう詳しい訳じゃないけど、母さんが育てていたものくらいなら、大体覚えている。

名前を覚えていないものもあるけど、花の形や色で覚えているんだ。

エレン「今は世話する人がいないから、ある程度処分しちまったけどな」

ミカサ「も、勿体ない。残っていたら、私が世話したのに」

エレン「ああ、庭を復活させたいなら、自由に使っていいぞ。ミカサの好きにしていい」

と、言ったら両目を輝かせて、ぱあっと明るくなった。

ミカサ「い、イタリアンパセリとか、植えようかしら」

エレン「え? パセリ?」

ちょっと意外なチョイスだと思った。しかし、それだけでは終わらず、

ミカサ「あ、でも、夏植えるものを優先した方がいいかもしれない。まずは畑を耕して、石灰を撒いて、土を作らないと…(ブツブツ)」

おい。すっかり本格的にやる気満々だな。

農家の娘の様だ。いや、多分、ミカサみたいなマメなタイプは農家の娘として歓迎されそうだけど。

ああでも、ミカサがそうやって趣味に没頭している様を見るのは嫌じゃない。

なんか可愛いって、つい思っちまう。無理しない程度に頑張って欲しいな。

520: 2014/05/26(月) 15:25:58 ID:RyV0CUQ.0
そして今日も少し早めに親父が帰ってきた。

お盆前だから、仕事も早めに切り上げてきたようだ。

久々に四人揃って夕飯を食べている時に、お盆の日程を話し合った。

13日はオレの母さんの方の墓参り。

14日はミカサのお父さんの方の墓参り。

15日は4人揃って、家の方でお坊さんにお経をあげて貰うという事になった。

次の日。13日の午前中。家族全員、車で出発した。

幸いこの日は天気にも恵まれて、いい墓参り日和だった。

車の中で、ミカサと後部座席に並んで座っていた。

意外な事に、ミカサは昨日のようにびくびくしていない。機嫌がいいみたいだ。

晴れやかな顔をしている。墓参りがそんなに楽しみなのかな?

いや、でも自分の親の方ならともかく、ミカサにとってはオレの母さんの墓参りの方はテンションが上がるような事ではない筈だ。

まあでも、びくびくされたり、距離を取られたり、無理させるのよりはよっぽどいいか。

車で30分程度の距離にあるお寺に到着する。

母さんの墓はお寺に管理を任せているので、今日はついでにお布施もする筈だ。

某宗派のお寺の庭の敷地内に小さな墓がある。そこがうちの母さんのお墓だ。

墓を掃除して、水を換えて、花を添えて、線香をたてて、皆で手を合わせる。

今年一年の報告を、天国の母さんに心の中で伝える。

521: 2014/05/26(月) 15:48:35 ID:RyV0CUQ.0
母さん……。

今年の春から家族が増えました。

親父は再婚したよ。母さんの事、忘れた訳じゃねえけど、

やっぱり男一人だと、寂しかったんだろうな。ごめんな。

母さんとは正反対の、おっとりとした、いいお母さんだ。

口喧しくねえし、優しいし、でも…。

オレは、いつも口喧しかった母さんの方が好きだ。

いつも、母さんのいう事、聞かなかった事、今も後悔してんだ。

生きている間に、もっと、母さんのいう事、聞けば良かったって今でも思ってる。

だから今は、母さんの言っていた事、出来るだけ思い出して、守る様にしている。…たまに忘れるけど。

オレも春から高校生になった。アルミン以外の奴とも、少しずつ、つるむようになったし、今は何より、連れ子のミカサが傍にいる。

家族だけど、もっと、大事にしたい。

そういう気持ちになっちまって、気持ちを伝えたら、振られちまったけど。

でも、それでも、好きな気持ちは変わってねえんだ。だから、

母さん、オレの好きな子を、紹介するよ。

……………。

口には出して言えない事を、両目を閉じて天に伝えた。

目を静かに開けると、親父とおばさんは席を外していた。

オレと、ミカサの二人きりだった。

エレン「あれ? 親父は」

ミカサ「お布施を払いに行くって」

エレン「あ、ああ…そっか」

沈黙が、落ちる。

ミカサ「……エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「報告、終わった?」

エレン「…ああ」

少し長い黙祷だったから、察してくれたようだ。

ミカサ「あのね、エレン」

エレン「ん?」

ミカサ「やっぱり、私、無理かもしれない」

エレン「何が?」

突然、何の話だ? するとミカサは下を向いて、

ミカサ「エレンの言った事、忘れられない……」

と、あの時の事を、言い出したんだ。

エレン「あ、いや、でも…」

ミカサ「エレン、聞いて」

ミカサが遮るように言う。だからオレはすぐに押し黙った。

何だろう。大事な事を言われる予感があった。

緊張して、口の中が乾いていく…。

522: 2014/05/26(月) 16:02:24 ID:RyV0CUQ.0
ミカサ「あの日の夜、私が悩んでいたのは、2つある」

エレン「ふ、2つ?」

え? オレの告白の件だけじゃなかったのか?

ミカサはこくり、と頷いてまた下を見る。

ミカサ「ひとつは、連れ子同士の場合は、日本の法律では結婚出来るのか、という点」

エレン「!」

あ、そう言えば前にアニが「恋人同士にはなれない」って言っていた気がする。

どうしよう。忘れていた。オレ、そう言う事、何も考えずに、勢いでミカサに告白しちまった。

それにジャンにミカサとの関係を言った時も、喜んでいたじゃねえか。

それってつまり、出来ないって事だよな。

ああ、だからミカサは冷静に、その事をちゃんと確認して、ダメだって分かったから、どうやってオレを傷つけないで断ろうかと、考えてああなったのか。

ミカサ、つくづくお前は優しいな。本当に。

と、オレがいろいろ考え込んでいたら、

ミカサ「その点については、アニと一緒に本屋に寄って、法律の本を買って確認したので、間違いないと思う」

エレン「……そうか」

そっか。わざわざ本屋で確認してきてくれたのか。アニもいい奴だな。

ミカサ「結論から言えば、私達は結婚出来る。法律上、問題ない」

エレン「そーかそーか、やっぱり……………って、え?」

なんだって?

聞き間違いじゃねえよな?

エレン「結婚……出来るのか?」

すぐには信じられなかった。するとミカサはやっとこっちを見て頷いた。

ミカサ「出来る。血の繋がりのない他人同士なので、大丈夫。問題ない」

エレン「え……じゃあ、何で……」

ミカサ「エレン、悩んだのは、2つあると言った」

そしてミカサは急にもじもじし始めたんだ。

ミカサ「あの…私が懸念するのは…その…もし、その……あの…」

やばい。ミカサ、可愛い。襲いたい。ぎゅっとしたい。ペロペロしたい。

……って、赤面するミカサに発情するな、オレ。

自重、自重、と、いつものように呪文を唱えて、ミカサの言葉を辛抱強く待つ。

ミカサ「そ、そういう空気になって、え、エOチな事をする時に、もし、万が一、私が、弾みで、反撃して、しまったら、その……エレンに怪我を負わせやしないかと、心配で……」

エレン「………え?」

ワンスモア?

ミカサ「い、いや、勿論! 抵抗しない様に、極力気をつける…ので、それにどうしようもなければ、最悪、体を縄等で拘束するという手もある……ので! でも、それすらも馬鹿力で解いて、やっぱり私が途中で「嫌だ」と思ったら、エレンの骨を折りかねないと思うと、怖くて、その……」

エレン「…………」

ミカサの言いたい事を要約すると、アレだ。

エOチの際、うっかり反撃して、オレが怪我しちまう可能性があるかもしれないから、心配ですぐに頷けなかっただけって事か?

それってつまり、ミカサ自身の気持ちの方は…。

523: 2014/05/26(月) 16:15:22 ID:ECxYU26M0
ミカサ「な、なので! エレン、私から提案したいのは、その、段階を踏んで、徐々に慣らしていくようにしていけば、私も慣れるかもしれない……ので、その、そういう条件であれば、私は……」

オレはもう、我慢出来なかった。

母さん、ごめん。墓の前だけど。ミカサをその場で抱きしめた。

嬉しくて、嬉しくて、止められなかったんだ。

ミカサ「え、エレン…?」

エレン「それって、イエスって事だよな?」

ミカサ「…………(こくり)」

オレの腕の中でミカサが頷いた。

8月13日。オレ達はこの日、お互いの気持ちを確認し合い、両想いになった。

ミカサ「で、でも……その、エレン……うぐっ」

ミカサの唇に食いつくようなキスをした。

ミカサ「………!」

もう、骨を折られても、別にいいや。骨は折れても治るし。

嫌だったら、抵抗して見せろ。ミカサ。

でも、ミカサはキスくらいじゃ嫌がらなかった。

それはとても甘くて、気持ち良くて、刹那の時間だったけど……。

グリシャ「あー……おほん」

その声でハッと我に返った。

慌ててお互いの体を離す。ミカサとの距離を取った。

親父にじーっと見られた。やばい。まずい。親父達の事、完全に忘れていた。

自分達の世界に入り込んでいたせいで、親父達がすぐ戻ってくるだろうって事、忘れていた。

滝のような汗が背中に貼りついた。ミカサも凄い顔をして焦っている。

そして親父は残酷な現実を突きつけた。

グリシャ「エレン、家に帰ったら、家族会議だ(☆☆キラーン)」

ひい! 親父の眼鏡が光った! やばい!

524: 2014/05/26(月) 16:28:44 ID:RyV0CUQ.0
オレは車の中で一言も話せず、またミカサも黙り込んで家に帰る事になった。

家に帰ってリビングでお茶を飲んで、4人で一旦落ち着くと、親父に「墓の前で何を報告していたんだい?」と黒い笑みを浮かべて言われちまった。

エレン「えっと、その……」

ミカサ「ご、ごめんなさい」

とりあえず二人そろって頭を下げる事にした。

二人して、説教かな。これ。

グリシャ「やれやれ。ここ最近、ミカサの様子が変だったのも、そのせいだったのかな」

ミカサ「………はい」

ミカサは素直に白状した。

グリシャ「ふむ、二人の事を、話せる範囲でいいから話しなさい。親として、知っておきたいからね」

と、言われちまったので、オレは親父達に、恥ずかしいけど、事の流れを詳しく説明する事になった。

オレの方から好きになった事。そして告白した事。

墓の前で返事を貰って、お互いの気持ちを確認した事。そして当然、キス以上の事はしていないと。

グリシャ「………では、二人はこれから男女のお付き合いをしたいと考えているのかい?」

オレは勿論、頷いた。

エレン「両想いになったんだ。別にいいだろ。法律だって禁止してないんだし」

と、オレはこっちの強みを前面に押し出した。

しかし親父はそれに難色を示したんだ。

グリシャ「……ダメだ」

エレン「え?」

グリシャ「二人の交際は認めないよ。父さんは反対だ」

えええ?! 何で?!

ミカサ「ど、どうしてですか?」

ミカサも当然疑問に思った。すると、オレは親父に睨まれて、

グリシャ「墓の前で手を出すような理性のない男は何を言っても信用がないよ、エレン」

エレン「うぐっ!」

あ、あれは勢い余って、ついつい…。

530: 2014/05/27(火) 01:34:05 ID:Wk030uLE0
グリシャ「はあ……やっぱりエレンは高校入学と同時に学校の寮に入れるべきだったかな」

エレン「え?」

グリシャ「迷ったんだよ。年頃の娘さんと年頃の息子を同居なんてさせて、もし万が一、間違いがあっては困るからね。でも母さんが、ミカサの為だけにエレンにそんな事はさせられないって……」

親父は頭を抱えているが、おばさんの方を見ると、相変わらずのんびりと優しい笑顔だった。

ミカサの母「家族は一緒に暮らすべきですよ。それにミカサなら、自分の意に沿わない事は絶対にやらないと、信じていましたから」

グリシャ「いやでも、しかしだね……」

ミカサの母「あなた、少し落ち着いて。お茶のおかわりは?」

グリシャ「ああ、頂くよ」

ズズズ……

お茶の音がうるさくリビングに響いた。

グリシャ「うちの愚息が本当にすみません……」

ミカサの母「いえいえ、頭を上げて下さい」

親父はおばさんに対して、申し訳なく思っているようだ。

でもおばさんの方は、落ち着いている。それが救いだった。

ミカサ「お母さんも、反対?」

恐る恐る、ミカサが言うと、

ミカサの母「ん? そうねえ。お母さんは賛成も反対もしないわ」

と、あくまで中立の立場らしい。

ミカサの母「ただ、親としては心配はするのよ。特に女の方には、妊娠と言うリスクがあるから」

ミカサ「そ、そんな事はしない…」

赤面して、ミカサがそう言うけど、

ミカサの母「今はしなくとも、付き合いが長くなれば、自然とそうなる場合もあるのよ。弾みでやってしまったり、お父さんも、その事を一番心配しているのよ。ねえ?」

グリシャ「ああ……エレン、前にお金の使い方についていろいろ言っていたのは、この為だったんだね?」

エレン「うぐっ…!」

正確に言えば違うけど、違うとは言えなくもない。

あの時はミカサと付き合う為とか考えていなくて、いつか来るかもしれない未来に備えての事だったけど。

多分、それを言っても信じては貰えないだろう。

531: 2014/05/27(火) 01:50:48 ID:Wk030uLE0
グリシャ「全く……本当に参ったね。いやしかし、事前に露見して幸いだった。そういう事なら、以前言った事は撤回させて貰うよ」

エレン「え?」

グリシャ「エレン、隠れて外でミカサとラOホテルに休憩したりしたら、問答無用で家から追い出す。勿論、家の中でやった場合も同罪だ」

エレン「え、ええええ?!」

親父の目が本気だった。冗談を言っている顔じゃない。

グリシャ「今後、エレンからのそういった接触は一切禁止だ。これは命令だ。いいね、エレン」

ミカサ「そ、そんな……」

ミカサもオロオロし出した。

エレン「お、横暴過ぎんだろ! 親父?!」

こんな親父は珍しい。いつもなら、話せば分かってくれるのに。

オレ、そんなに信用ねえのか。

…………いや、当然か。

外で、しかも墓の前でミカサとキスなんかしたりしたから、親父、怒っているんだ。

でもここで、オレも引けなかった。引いちゃいけないと思った。

オレの本気を、親父に認めさせないと。

そう思って、すぐに決心した。

エレン「分かった……」

ミカサ「エレン…!?」

エレン「親父の言う通り、オレの方からは一切、そういう事はしない。でも……」

ここで言わなきゃ、男じゃねえ!

エレン「その代わり、ミカサと交際する事だけは認めてくれ! 絶対、手出さないから、オレ達の事、認めて欲しい!」

グリシャ「!」

ミカサの母「!」

ミカサ「……わ、私からもお願いします」

深々と、二人で頭を下げた。

すると親父はようやく表情を変えて、

グリシャ「エレンが18歳になる日の3月30日までだ」

エレン「!」

グリシャ「その日まで、エレンの方からはミカサに一切、性的な接触をしない。そう誓えるかい?」

エレン「ああ、誓う!」

すぐに答えた。ここは怯んでいる場合じゃねえ。

すると親父は納得してくれたのか、

グリシャ「……分かった。じゃあ誓約書を作ろうか」

親父は一度、自分の書斎に戻って簡単な書面を作ってくれた。

そして自分のサインを入れて、ちゃんと約束する。

これでもう、後には引けない。

約束を破ったら、オレは家を追い出される。

まずは親父を安心させないと。オレはやるしかねえんだ。

ミカサの母「………あなた、いいんですか?」

おばさんは少し心配そうに親父を見ている。

ミカサの母「この誓約書の内容だと……」

グリシャ「母さん、それはここでは(しっ)」

何だ? 何かごにょごにょ内密な話をしているようだけど。

ミカサの母「……分かりました。そういう事なら」

ミカサ「お母さん?」

ミカサの母「ううん、何でもないのよ。うふふ」

誓約書には、こう書かれていた。

532: 2014/05/27(火) 02:03:15 ID:Wk030uLE0



グリシャ・イェーガー 殿


           誓約書

私、エレン・イェーガーは18歳になる2017年3月30日まで、

ミカサ・アッカーマンに対し、自分から性的な意味を持って接触しないとここに誓います。


           記

1.誓約を破った場合は、自宅から追い出される事に対し、不服申し立てを致しません。

2.誓約中は、ミカサとの交際を続行出来る権利を有します。




2014年8月13日

エレン・イェーガー


                        以上



別に何もおかしいところはねえよな?

とにかくアレだ。18歳になるまでは我慢しろって事だな。

………ある意味じゃ拷問だけど、これも試練だと思って耐えるしかねえ。

537: 2014/05/27(火) 22:27:30 ID:Wk030uLE0
しかしその時、ミカサがおずおずと挙手したんだ。

ミカサ「あの、確認したい事が」

グリシャ「ん? 何だい?」

ミカサ「おはようやおやすみ、いってらっしゃい、いってきます等のキスは性的な意味ではないので、許可して下さい」

グリシャ(ズコーッ)

こっちがびっくりするくらい、親父がずっこけた。

ミカサ、ナイスだ。それはいいツッコミだ。

「バナナはおやつに入りますか?」みたいな質問だけど、そこをはっきりさせないとな。

グリシャ「だ、ダメだ! ここは日本なんだから、そんな挨拶は一般的ではないよ、ミカサ!」

エレン「でも、日本的ではないから、日本ではやっちゃいけないなんてルールはないだろ?」

ミカサの母「そうねえ。昔はミニスカートも日本的ではないから、非難されていたけれど、今はいつの間にか、ファッションとして浸透しているものね」

グリシャ「母さん!」

ミカサの母「いいじゃありませんか。親がしている事を、子供にしてはいけないとは言えませんよ」

エレン「え? そうだったのか? 親父」

グリシャ「…………(よそ向いている)」

親父が赤い。ほほう。隠れてやってやがったのか。それはいい事を聞いた。

エレン「じゃあキスはいいよな? そう言う意味じゃないなら、欧米では普通だし?」

ミカサ「うんうん」

グリシャ「……分かった。だったら追記するよ」

という訳で、挨拶のキスは、それぞれ一回だけ許可するという旨も付け加えられた。ただし5秒以内。

ちっ。こういうところは抜け目がねえな、親父は。

538: 2014/05/27(火) 22:29:13 ID:Wk030uLE0
ミカサ「は、ハグもダメ…?」

グリシャ「それはダメ。それも許したらずるずる線引きがあいまいになるからね」

エレン「でもハグしないで、どうやってキスするんだよ。鳥みたいに口をつつき合うのは不自然だろ?」

グリシャ「うっ……」

ミカサの母「あなた」

グリシャ「……分かったよ。ハグも5秒以内だ。それなら許可する」

よっしゃあ! ミカサのおかげで細かい点も確認出来た。

ミカサの機転で一筋の光が見えた気がした。

そして正式に約束を取り交わして、この日は無事に終わった。

夜、寝る前に、ミカサの部屋の前で、おやすみのキスを1回だけする。

ああ、短い触れあいだけど、無いよりはマシか。

そして自分の部屋で寝ようと、部屋に戻ろうと、したら、

親父に捕まった。

グリシャ「エレン、今日から寝る時だけは、仏間を使いなさい(にっこり)」

親父の怒りはまだ解けそうにないけど。

取り敢えず、オレはこの日から、ミカサとの新しい関係を一歩、踏み出したのだった。

539: 2014/05/27(火) 22:52:27 ID:Wk030uLE0





14、15日は親父の目もあってあんまり露骨にはイチャイチャ出来なかったけど、16日からは九州大会の移動の為、朝から家を出る。

家を離れたら、もう少しイチャイチャする時間を作れるかなと、考えていたんだけど、よく考えたら、こっちにはもっと重要な問題があった。

ジャンだ。

あいつ、ミカサに好きな人がいるかもしれない、となった時でさ、台詞が飛ぶほど動揺していたんだ。

もし、オレとミカサが付き合う事になったのを知られたら、まともに舞台に上がれなくなるんじゃ…。

それだけはまずい。3年の先輩達に申し訳が立たなすぎる。

だからミカサに、家を出る前に、言っておいたんだ。

エレン「ミカサ、オレ達の事は、学校の奴らには言うなよ」

ミカサ「え、でも…」

エレン「特にジャンには言わないでくれ。頼む!」

ミカサ「あ、アニにはもう、話してしまっているけど」

エレン「あ、アニだけならいい! アルミンとかには、オレから話すし、とにかくジャンにだけは、ミカサからは伝えないでくれ。頼む!」

ミカサ「わ、分かった」

理由を問わずとも頷いてくれた。助かったぜ。

540: 2014/05/27(火) 23:32:41 ID:ntaYpvrw0
少なくとも大会が終わるまでは言わないでおこう。

その後だったら、たとえバレたとしても、オレが殴られる程度で済む筈だ。

学校に到着すると、舞台のセット等の大荷物も同時に業者に頼んで運んで貰うところだった。

オレ達1年も当然それを手伝って、全員揃ってからバスに乗り込んだ。

今回は残念ながら、アルミンは同行出来ない。

入部は3年の先輩達の引退と入れ替わりになるだろう。

リヴァイ「忘れ物はないか?」

と、一応、念の為にリヴァイ先生が確認する。

リヴァイ「向こうに着くまでにバスで2時間くらいかかるから、もし忘れ物があっても取りに戻る事は出来ない。最終確認だ。不安だったらもう一度、確認しておけ」

皆、ごそごそと、自分の荷物を確認してOKを出した。

リヴァイ「では出発する。バスに酔ったら遠慮なく吐けよ」

エチケット袋もちゃんと用意してあった。

そしてバスは出発した。目指すO県の某旅館だ。

研修旅行の時はK県だったけど、今度はO県だ。O県もK県と負けないくらい温泉地がある。

湯上りのミカサが見れるかなと思うと、ついつい頬がにやけてしまった。

すると、隣の席のオルオ先輩が、

オルオ「何、ニヤニヤしているんだ? エレン。やらしい顔をしているぞ」

エレン「え? し、してませんよぉ」

やべー。顔に出ていたかな。

オルオ「いや、していたな。大方、入浴中の女子を妄想していたんだろ?」

エレン「うぐっ……」

大体あってるけど。

オルオ「言っておくが、混浴はないからな。残念だが」

エレン「期待していませんよ! 何言っているんですか?!」

オルオ「はは!」

オルオ先輩にからかわれてしまった。

その様子をミカサにも見られてくすっと笑われてしまった。恥ずかしい。

ちなみにバスの席順はこんな感じだ。


        前

エルド グンタ   ペトラ リヴァイ

アニ  ミカサ   エレン オルオ

マルコ ジャン   アーロン エーレン

マーガ ガーネ   スカーレット

カジ  キーヤン  マリーナ

553: 2014/06/16(月) 01:29:21 ID:kQTqH2x60
なんでこんな席順になったかは、まあ……察してくれ。

後ろの方の席が空いているのに、リヴァイ先生の隣を真っ先にキープしたペトラ先輩とか、さり気にそのすぐ後ろの席を陣取ったオルオ先輩とか。

それ以外の席は適当だ。いつの間にかこうなった。

エルド「バスの中でカラオケやってもいいですか? 先生」

リヴァイ「ああ、別に構わんが、マイクは確か1本しかなかったと思うぞ」

エルド「十分です。では折角何で、向こうに着くまでにゲームでもいしょうか」

ペトラ「ゲーム? カラオケでゲームするの?」

グンタ「ああ、折角備えてあるんだし、使わないと勿体ないだろ?」

二人がまるで打ち合わせていたかのように意気ピッタリに言う。

もしかして、前もってゲームを考えて準備していたのかもしれない。

オルオ「別にいいが、カラオケでやれるゲームなんてあったか?」

ペトラ「うろ覚えでどこまで歌えるか、とかやるの?」

エルド「いや、それも楽しいけど、今回は別のをやろう。題して『カラオケdeしりとりゲーム』だ」

ズコーッ

オレはバスの中でずるっと、背中を滑らせてしまった。

554: 2014/06/16(月) 01:54:46 ID:kQTqH2x60
またしりとりか。バスの中でやるのが流行ってんのか?

まあいいけど。今回は普通のしりとりとは違うみたいだし。

エルド「ルールは簡単だ。歌のタイトルでしりとりをしていく。一人目の歌が歌い終わるまでに次の人が曲を入力できなかったり、最後に「ん」のつくタイトルをうっかり間違えて選んだら負けだ」

ペトラ「曲名でしりとりねえ」

オルオ「勝敗がつきにくそうだな。歌詞を見ないで歌う目隠しも入れたらどうだ?」

ペトラ「そうね。そうなると歌える曲がかなり絞られるし、いいかもね」

エレン「え?! カラオケなのに、歌詞見ないで歌うんすか?!」

それはちょっときつい気がするけど…。

ペトラ「その方が面白いじゃない。……で? 勝ったら何か貰えたりするの? エルド」

エルド「ああ、勝ち残った奴は……先生」

リヴァイ「ああ、オレの金で何か奢ってやる」

ペトラ「え?! 何かプレゼントを貰えるんですか?」

リヴァイ「ああ。何を奢るかは、勝ってからのお楽しみだ」

ペトラ「やった! 燃えてきたわ!」

オルオ「まじですか……こりゃ負けられんぞ」

ミカサ「…………」

おーい。ミカサ、一人だけテンション下げるなよ。

他の皆は「何貰えるんだろ?」とわくわくしているのに、ミカサだけ、物凄く興味のない顔してる。

あの例の一件があって以来、ミカサは本当に、リヴァイ先生に対しては風当りが強くなっちまったよな。

オレはリヴァイ先生の事、嫌いじゃないし、むしろ好きな方だから、あんまり邪険にしてほしくねえんだけどな。

まあでも、仕方ねえ。

バスの中の暇つぶしだし、これも付き合いって奴だ。

555: 2014/06/16(月) 02:43:42 ID:kQTqH2x60
エルド先輩からスタートしたスタートしたカラオケdeしりとりは、『紅蓮の弓矢』(エルド)→『やさしさに包まれたなら』(グンタ)→『らいおんハート』(ペトラ)→『とんぼのめがね』(オルオ)ときて次はオレの番だ。

エレン「ね?! ねのつく歌ってあったっけ?!」

意外な字がまわってきて混乱した。

しかも歌詞を暗記して歌える曲となると………

エレン「う、歌えるか分からんけど、>>556を歌います!」

(*タイトルに『ね』のつく歌をお願いします)

557: 2014/06/16(月) 07:15:03 ID:kQTqH2x60
オレが入力したのは『狙い通りのDestiny』というアニメのキャラソンだ。少年漫画のキャラソンだ。

知っている人がいないかもしれんが、マイナーな曲はダメという縛りはない。

イントロがかかると、マーガレット先輩がガタッと反応したのが分かった。

マーガレット「まさかの黒バス?! エレン、やるわね?!」

エレン「え? ああ…うろ覚えかもしれないですけど」

この曲自体はそう難しくはない。

ただ細部はどうかな。でもやるしかねえ。

エレン『言った筈だろ~決して落ちる訳はないの~だと~♪』

マイクを持って記憶の限り歌詞をなぞる。

アイマスク着用で歌っているので、判定は画面を見ている他のメンバーに委ねる事になる。

エレン『悪く思うな~運命が決めた~こと~だ~♪』

後ろでマーガレット先輩達がノリノリで合いの手を入れていた。

多分、ミカサは知らん曲だから聞いてもつまらんかもしれんが、オレ、この曲割と好きなんだよ。

受験応援ソングと某サイトでは言われているくらい、前向きで明るい曲なんだ。特に歌詞が。

一応歌い終わって、アイマスクを外して、

エレン「………歌詞、合ってました?」

するとすぐさま後ろの席から、

マーガレット「合格! ミス無しだったよ!」

エレン「ほっ……」

スカーレット「いやはや、アニソン有りなら私ら有利だね。入れちゃうよ? いろいろ」

ガーネット「ふふふ……」

オレがアニソンの流れを作ったから、先輩達もやる気になったようだ。

次はミカサだ。アイマスクとマイクをリレーして渡す。

曲は何を入れたんだろ?

ミカサ「……>>558を歌います」

(*タイトルに『い』のつく歌をお願いします)

559: 2014/06/16(月) 14:02:48 ID:kQTqH2x60
ミカサ『情景はrain~揺れるyour long hair~♪』

エレン「?!」

英語の部分の歌詞の発音が完璧すぎてびびった。

前回の打ち上げの時は気づかなかったけど、ミカサ、英語歌ってもイケるのか。すげえ。

日本人っぽくない発音だ。綺麗な発音につい聞き惚れる。

オルオ「お? いい曲を選んできたな」

ペトラ「しぶいわね~♪」

そしてミカサは華麗に歌い終わった。新しい発見が出来てちょっと嬉しい。

エレン「ミカサ、うまかったぞ」

ジャン「ああ、ミカサは歌うまいな、本当に」

ミカサ「この曲は母がたまにきいているので」

へえ。おばさんの趣味なのか。初めて知ったぜ。

そして曲が終わりきる前に、アニが、

アニ「この場合、『ゆ』で続けるの? それとも『う』で続けるべき?」

と言った。すると、

オルオ「この場合は『う』だろうな」

ペトラ「そうね。『う』で統一しましょ」

アニ「分かりました。じゃ…>>560を歌います」

(*タイトルに『う』のつく歌をお願いします)

564: 2014/06/17(火) 00:03:28 ID:jNMFgZNA0
アニ『会いたい~想いが~相対な君の手に~♪』

マーガレット「ボカロキタコレ!!!」

スカーレット「今年の一年、豊作ね」

ええっと、これはちょっとオレは良く知らない。ボカロ曲は有名どころしか知らん。

初音ミクで『うそつき』という曲らしいが、初音ミクの曲は多すぎてさすがに全部は把握無理だ。

しかしアニの奴、逆転の件といい、ボカロといい、案外オタク要素を持ってるのか?

今度ちょっとさり気に話を振ってみようと思ってしまった。

ペトラ「失恋ソングよね~これ。いい曲よね」

あれ? ペトラ先輩も知ってるのか。有名な曲なのか? 知らないのオレだけか?

エレン「ミカサはこの曲知ってるか?」

ミカサ「いえ、知らない……」

やっぱり知名度はそこまでメジャーではないよな? みっくみっくに比べたら。

淡々と歌いこなしてアニが歌い終わりそうだ。次はマルコだな。

マルコ「次は『き』かあ………どれにしよう」

早くしないと間に合わないぞ。多分。

時間ぎりぎりでマルコが曲を入れていた。何の曲を歌うのかな?

マルコ「ええっと、僕も歌詞は自信ないけど、>>565を歌います」

(*タイトルに『き』のつく歌をお願いします)

566: 2014/06/17(火) 17:55:16 ID:jNMFgZNA0
バラード曲っぽいイントロだ。

反応したのは、何故かジャンだ。

ジャン「マルコ、おまっ……ここでモモクロいくか?!」

マルコ「これしか思いつかなかったんだよ…」

モモクロか。オレはアイドルの歌はそんなに詳しくない。

代表曲なら分かるけど、この曲は知らないな。

マルコ『旅立つ為に~無理に隠した~キミへの想いが胸を叩く~♪』

キミノアト。か。いい曲だな。

マルコらしい優しい感じの曲だ。いい曲選んできたなあ。

ジャンが頭悩ませているな。次は『と』だ。

曲が終わるまでに次の曲を入れるつーのは、意外と時間がない。

オレの時は特に「とんぼのめがね」だったから歌う時間短かったし。

ジャンがやっと決めたようだ。急いで入力している。

曲が大体終わりそうな気配が近づいて、マイクとアイマスクをリレーする。

意外と皆、歌詞を間違えずに歌えてるな。

これは脱落者、出ないで最後までいけるかな。

ジャン「オレは>>568を歌います」

(*タイトルに『と』のつく歌をお願いします)

569: 2014/06/17(火) 20:33:43 ID:jNMFgZNA0
画面を見て吹いた。ジャン、気づいてねえのか?

マルコ「ジャン……これじゃ負けだよ」

ジャン「え……あ、しまったあああ!!!」

『曇天』じゃ、最後に『ん』ついているから負けじゃねえか。

オルオ「ははは! 脱落決定だな」

ペトラ「この場合、次の人は何を歌えばいいの?」

エルド「次の人も『と』から始めればいい」

アーロン「了解ー」

ジャン「ううう………これしか思いつかなかったんだよ」

マルコ「はは。ジャン、最後までちゃんと歌いなよ」

ジャン「分かってるよ」

その直後の、ジャンの本気の歌声にちょっと、いや、かなりビビった。

ジャン『鉛の空~重く垂れこみ~真白に澱んだ~太陽が砕けて~♪』

本気出し過ぎだろ! いや、ジャンが歌上手いのは知ってるんだが。

前回の打ち上げのカラオケの時も本気で歌ってたからな。

ジャン『耳鳴りを~尖らせる~♪』

ジャン『ひゅるり~ひゅるり~低いツバメが~♪』

ジャンのライブが続いている間、ミカサが「しまった」と言った。

ミカサ「わざと「ん」のつく曲を選んでドロップアウトすればよかった」

エレン「こらこら、それじゃゲームにならないだろ、ミカサ」

ミカサ「しかし私は先生のご褒美に興味ない……ので」

エレン「そんな事言うなよ。オレは楽しみだけどな」

ミカサ「む……エレンは欲しいの?」

エレン「そりゃな。何を貰えるか分からんけど」

ミカサ「むー……では仕方がない。頑張る」

よしよし。ミカサもちゃんと参加するようだ。良かった。

570: 2014/06/17(火) 21:33:20 ID:jNMFgZNA0
『時の河を越えて』(アーロン)→『手のひらを太陽に』(エーレン)→『虹』(スカーレット)→『じゃじゃ馬にさせないで』(ガーネット)→『でたらめな歌』(マーガレット)→『戦え! 仮面ライダーV3』(カジカジ)→『いーあるふぁんくらぶ』(キーヤン)→『ぶっ生き返す!!』(マリーナ)という風に回って、またエルド先輩に戻った。

つか、マリーナがまさかデス声出すとは思わなかった。芸達者過ぎるだろ。

あと、仮面ライダーV3って、相当昔の歌だろ。リヴァイ先生が吹いているのが聞こえたぞ。

だんだんカオスなカラオケになってきた気がするが……まだ時間はあるようだ。2週目に行くようだ。

エルド「じゃあオレは>>571を歌うよ」

(*タイトルに『す』のつく歌をお願いします)

572: 2014/06/18(水) 03:51:32 ID:UbfNd3TE0
エルド『四次元空間こ~えて~戦う姿はボイジャー♪ ワープだ~ワープだ~クロノス~チェ~ンジ♪』

なんだこの曲? 全然知らん。

そしてリヴァイ先生がまた盛大に吹いたようだ。

リヴァイ「また古い曲を……お前ら、オレをどうしたいんだ」

エルド『いや~先生も知ってそうな曲がいいかと思いまして』

リヴァイ「他の奴らが完全においてけぼりだぞ」

エルド『別にいいですよ。それはそれで』

マーガレット「あ、大丈夫。私この曲分かるんで」

リヴァイ「マニアックな奴め……おっさんホイホイソングだぞ。しかも一部の」

そうなんだ。と言う事はそうとう古い曲なんだな。

エルド『ゆがんだ時間(とき)の流れに~一発逆転チャンス~♪ スペース~ファルコン~決めれば~I'll get you♪』

リヴァイ「やれやれ。筋肉マンのキャラソンがまさか入っているとは……」

筋肉マンの曲なのか。へー知らんかった。

『ストップ ザ タイム』っていう曲だから、次は『む』だな。

グンタ「む? むって難しくないか?」

しりとりの中でも「む」は次に繋げにくい言葉だもんな。あるかな。

グンタ「ええっと……じゃあオレは>>573でいきます」

(*タイトルに『む』のつく歌をお願いします)

574: 2014/06/18(水) 15:47:43 ID:UbfNd3TE0
グンタ『い・か・さ・まファイトで~♪ に~んきを稼ぐ~♪ ニセの仮面を~はいで~やる~♪』

またまたリヴァイ先生が吹いた。これも曲の感じからして古い感じだけど…。

リヴァイ「お前ら、筋肉マン世代じゃないだろう! 何で知ってるんだ」

グンタ『いや、親父が筋肉マン好きなんで、いろいろ持ってるんですよ」

エルド「そうなんですよ」

リヴァイ「ああ……そうか。お前らの親の世代がドンピシャか」

リヴァイ「ああ……オレも年くったな(遠い目)」

マーガレット「あ、うちも実はそうなんですよ。いまだに消しゴムありますよ?」

リヴァイ「今じゃプレミアムついているから、大事にとっておけよ」

筋消しのことだな。筋肉マンの形をした消しゴムが昔、流行ってたってのはさすがに知ってる。有名だから。

クイズ番組とかでも良く問題に出されるし、実物は見た事ないけど、名前くらいなら知ってる。

グンタ『正義も~悪魔も~みんなまとめて~俺のマントの~コレクション~♪』

ペトラ「えっと…この流れだと、古い歌を歌った方がいいのかしら???」

リヴァイ「無理するな。無理におっさんホイホイソングにしなくてもいい」

ペトラ「ええ…でも……」

ペトラ先輩は優しいな。一生懸命、古い曲を探しているようだ。

ペトラ「ええっと、私は『無冠の帝王』だから、『う』よね。>>575を歌います!」

(*タイトルに『う』のつく歌をお願いします。古い曲でも可)

576: 2014/06/18(水) 21:21:45 ID:UbfNd3TE0
ペトラ『私の胸の鍵を~こわして逃げて行った~あいつはどこにいるのか~盗んだ心を返せ~♪』

リヴァイ先生がまた反応していた。笑いを必氏に堪えているようだ。

ペトラ『う~Wanterd!! Wanted!!』

リヴァイ「ペトラ、お前もよくやるな…」

ペトラ『ぴんく・レディーなら大丈夫ですよね?!』

リヴァイ「ああ。リアルタイム世代じゃないけど、歌は分かる」

ペトラ『え?! そうなんですか? もしかしてもうちょっと上世代?!』

リヴァイ「エルヴィン世代だろうな。いや、でも分かる。大丈夫だ」

ぴんく・レディーは有名だもんな。これはオレ達の世代でも歌を聞いたことはあるだろう。

テレビ番組で懐かしの名曲では必ず出てくる曲だもんな。

ペトラ『あん畜生にあったら~今度はただでおかない~私の腕にかかえて~くちづけ責めにあ・わ・せ・る!』

何だかペトラ先輩にぴったり(?)な曲のように思えた。

そして何故か途中で声が変わった。

リヴァイ『ある時謎の運転手~ある時アラブの大富豪~ある時ニヒルな渡り鳥~あいつはあいつは大変装~♪』

ぶは! そこリヴァイ先生やっちゃった! 思わず吹いてしまった。

バスの中が爆笑に包まれた。しかもうまいし!

ペトラ先輩の声が乱れていた。無理ねえよ。リヴァイ先生、お茶目だなあ。

ペトラ『好きよ~好きよ~こんなに好きよ~♪ もうあなたなしでは~いられない~ほどよ~♪』

ペトラ『からっぽよ~心はうつろよ~何もないわ~あの日あなたが~盗んだのよ~♪』

と、1番を大体歌い終わったけど、

ペトラ『しまった! 2番はさすがに分からない! ごめーん!』

オルオ「ふん…ペトラは脱落だな」

リヴァイ「貸せ。続きは代わりに歌ってやる」

マジか。リヴァイ先生、酒入ってないのに歌ってくれるのか。ラッキーだなこれ。

リヴァイ『両手には鉄の手錠を~足には重い鎖を~♪』

オルオ「うーん、リヴァイ先生のおかげで繋いでいる間に次の曲を入れないと」

オルオ「『ど』か……どうするかな。よし、これにするか」

オルオ「オレは>>577を歌わせてもらう」

(*タイトルに『ど』または『と』のつく歌をお願いします)

578: 2014/06/19(木) 01:08:15 ID:G0f5oHlU0
オルオ『道路は~続く~はるか遠い街まで~♪』

オルオ『スピードは~僕の気持ちを乗せて走る~♪』

ペトラ「スキマノスイッチ! トラベラーズ・ハイね!」

ミカサ「あ、これは知ってる。母がよく聞いている曲のひとつ」

エレン「おばさん、割といろいろ聞いているんだな」

ミカサ「音楽が好きなので。いろんな曲を聞きながら家事仕事をしている」

エレン「そっか」

そう言えばたまにリビングから曲が流れていたような気がする。

オルオ先輩も無事に歌い終わってオレに戻ってきた頃、リヴァイ先生が、

リヴァイ「そろそろつくぞ。エレンでラストだな」

エレン「ええ? まじっすか」

もうそんなに時間経ってたのか。びっくりだ。

エレン「オレでラストか……何歌おう?」

『い』のつく歌か。どれにしようかな……。

エレン「そうだ。ラストだから、これにします」

そして入れた曲は『いい日旅立ち』だ。中学生の時に音楽の授業で習った曲だ。

するとまたまたリヴァイ先生が反応して、

リヴァイ「お前ら、本当に10代なのか? 百枝ちゃん歌えるのか」

エレン『え? ももえちゃん? 誰ですか?』

ミカサ「この曲は学校の授業で習う定番のものですが」

ジャン「ああ、習ったな。確か」

マルコ「僕も習ったね」

リヴァイ「…………すまん。そうだったな。いちいち反応してしまった」

マーガレット「ああ、伝説のアイドル、山口百枝の代表曲ですもんね」

リヴァイ「マーガレット、お前の守備範囲もどうかしているぞ」

マーガレット「褒め言葉として受け取りますw」

そんな感じで皆でわいわい歌っていたら、あっという間に2時間近く経った。

皆、結構意外と歌えて、結局、脱落者はジャンとペトラ先輩の二名だけだった。

バスが旅館に到着して荷物を全部運び終わると、リヴァイ先生は言った。

リヴァイ「ご褒美は大会が終わってから渡す。今日は昼飯食ったら、会場の下見をした後は自由時間だ。好きにしていいぞ」

一同「「「あざーす!」」」

という訳で、下見が終わった後は、旅館の中で自由に過ごす事になった。

579: 2014/06/19(木) 01:30:11 ID:G0f5oHlU0
下見の為に見に行った会場は県大会の時より大きな会場だった。客席の数が前回の倍以上ある。

こんなに大きいところでまた、演劇をやるのか。そう思ったら急にぶるっと震えがきた。

リヴァイ「………急ごしらえでよくこれだけのキャパの会場をおさえられたな」

オルオ「え? 急ごしらえ? 会場は前々から押さえているもんじゃないんですか?」

リヴァイ「あ、いや………何でもない。気にするな」

何だろ? 今、リヴァイ先生が口を滑らせたような感じだった。

気になってつい、オレはツッコミを入れてしまう。

エレン「何か、あったんですか?」

漠然とだけど、リヴァイ先生は何か隠しているように思えた。

だからつい、そう言ったんだけど、

リヴァイ「……………」

エレン「リヴァイ先生?」

リヴァイ「あまり、大っぴらには言わないと誓えるか?」

エレン「………はい」

オレはすぐに頷いた。何か大事な話をされる予感があったからだ。

リヴァイ「………実はな、うちの県の去年の演劇大会で、大きな事故があったんだ」

オルオ「え? 何ですかそれ。初耳っすよ」

リヴァイ「あまり大っぴらには言えない事故だ。去年はお前らは九州大会に出てないから知らなかったかもしれんが………その年の九州大会で、考えられない事故が起きた。そのせいで、高校演劇の為に毎年会場を貸してくれていた責任者が、来年はもう貸し出せないって言い出してな」

エルド「え? じゃあまさか、今年、公演が変則的な日程になった理由って、本当は……」

リヴァイ「ああ。表向きには発表していないが、そういう事だ。例年、貸し出して貰っていた会場が押さえられなくて、地区大会をやる為の会場も押さえられなかったそうだ。だから前の年に県大会に出場した高校だけで予選大会をやる事になった」

ペトラ「そ、そうだったんですか……」

エレン「……………」

オレはなんて言葉を返せばいいのか分からなかった。

あの時、事故を起こしかけたオレには何も言う資格がない気がして。

580: 2014/06/19(木) 01:45:11 ID:G0f5oHlU0
重い空気の中、リヴァイ先生は続けた。

リヴァイ「正直言って、今の高校演劇は、そのバックアップがなさ過ぎて生徒に無茶な日程を組ませ過ぎる。その弊害が表に現れてしまったせいでその事故が起きたようなもんだ」

と、苦々しく言った。

リヴァイ「プロの世界ですら、仕込みには数日かけることもあるくらいなのに、平均して1時間もない時間でどうやって準備を完璧に仕上げられる。上の奴らにその無謀っぷりを何度も説き伏せたが、予算がないからと言って無理を強いる。これじゃ何の為の演劇なのかさっぱり分からん」

ミカサ「前回はでも、ギリギリセーフでしたけど、間に合いましたよね」

リヴァイ「そりゃ場見を最優先にしてそれ以外の事は殆ど省いているからだ。本来ならもっと、あらゆる事故が起きないように想定する作業が必要なんだ。それが起きなかったのは、ただ運が良かっただけとしか言えない」

ミカサ「……………」

リヴァイ「ま、こんな事を今言ってもしょうがねえけどな。改善出来ないのはオレ達大人の力不足だ。無理を強いてすまないと思っている」

リヴァイ「脅すような事を言ってすまない。しかしこれが現実だ。マーガレット、スカーレット、ミカサ。お前たち裏方三人は特に注意してくれ。そして決して無理はするな。何か起きた場合は、オレが体を張ってでも止める」

マーガレット「分かりました。約束します」

スカーレット「了解です」

ミカサ「…………了解」

そんな感じでしんみりとした空気に飲まれながらオレ達は旅館に帰る事になってしまった。

エレン「…………」

オレは余計な事を聞いたせいだな。

旅館に戻ってからも、何だか申し訳ない気持ちで一杯だったが、ペトラ先輩が、

ペトラ「エレンが落ち込むような事じゃないわよ」

と、わざわざ声をかけてくれた。

581: 2014/06/19(木) 01:55:50 ID:G0f5oHlU0
エレン「ペトラ先輩………」

ペトラ「先生が話してくれたって事は、それは私達が知ってもいいという情報よ。調べようとしなかっただけで、知らずにいた私達の方がダメだったのよ」

エレン「え、でも……」

ペトラ「エレンが聞いてくれたおかげでかえって気合が入ったから、結果オーライよ。だから落ち込まない。ね?」

エレン「…………」

そうだな。オレがここで落ち込んでもどうしようもねえ。

起きてしまった「過去」は変える事は出来ない。

なら、今後は同じことを起こさない様にするしかないんだ。

ペトラ「温泉、折角あるんだし、楽しみましょ? ね?」

エレン「はい」

夕飯を食べ終わった後、オレ達男子は全員一緒に男風呂に入ることになった。女子も同じく。

うおおおお? 露天風呂だ。湯気が凄い。つか、熱い?!

リヴァイ「………ちっ。湯加減が熱めだな」

ジャン「本当だ。ちょっと熱いっすね」

エレン「熱いの苦手か?」

ジャン「得意ではねえな。でも折角来たんだし、一応入ってみるさ」

エレン「そうだな」

オレも熱いのはそんなに得意じゃねえが、まあしょうがない。

あ、リヴァイ先生は足しか入れてない。熱いの苦手なのかな。

582: 2014/06/19(木) 02:13:58 ID:G0f5oHlU0
リヴァイ「この熱さなら足風呂で十分だ」

ジャン「オレは腰風呂でいいや」

エレン「オレもそうするわ」

肩まで入ったらのぼせそうな温度だった。

にしても、リヴァイ先生の腹筋、すげえな。ミカサもすげえんだけど、その上を行く腹筋だった。

何だろ。こうも体の違いを見せつけられると軽く凹むけど、同時に尊敬もする。

ジャン「あの、リヴァイ先生」

リヴァイ「なんだ」

ジャン「リヴァイ先生はいつ頃、その……裏方を経験されたんですか?」

あ、それはオレも聞いてみたかった事だ。すると、

リヴァイ「いつだったかな………」

何故かはぐらかされてしまった。ん? 聞いちゃダメは質問だったのかな?

と、思っていたらそうではなく、

リヴァイ「……………ああ、高校を中退した後、フラフラしてた時だったな。思い出した」

オルオ「?! 先生、高校を中退してるんですか?」

リヴァイ「ああ。言ってなかったか? オレは中退後に大検を受けて、教師の免許を取ったんだ。だから現役合格者ではないぞ」

と、さらりと言われてしまった。

何だろう。中退して大検取って、大学に入って、その間に何があったのか気になる。

リヴァイ「オレが初めて裏方を経験したのは、中退してフラフラしていた頃、劇団員をやっていたエルヴィンに拾われて、無理やり裏方をやらされたのが初めてだ」

オルオ「ええ? エルヴィン先生が劇団員? それも初めて聞きました」

リヴァイ「ああ。劇団員と言っても、プロのそれじゃなくて、所謂有志が集まってやる趣味の物だったがな。教師の仕事をしながら趣味でそっちの方の手伝いもしていたんだよ。エルヴィンは。その頃の奴に、その……何だ。無理やり裏方をやらされたのが切欠だ」

なんという裏話。すげえ。

エルヴィン先生、どうやって無理やりやらせたんだろ。気になる。

583: 2014/06/19(木) 02:30:42 ID:G0f5oHlU0
リヴァイ「こっちは何にも知らん素人なのに、今思うと奴に無理難題ばっかり押し付けられたな(遠い目)」

エレン「じゃあ先生は、そこからどうやって教師になろうと思ったんですか?」

リヴァイ「ん? ああ………なろうと思ってなったと言うより、エルヴィンに「お前は教師に向いている。億単位で賭けてもいい。だから大学に行け」ってまた無理やり勧められて大学に行く羽目になった」

リヴァイ「思えばオレの人生は奴に乗せられてばかりいる気がする……(更に遠い目)」

エレン「そ、そうだったんですか」

エルヴィン先生の勧めで教師になったのか。

意外だった。リヴァイ先生って「受け身」な人生を送っているんだ。

いや、勝手にオレが「自分の意志でガンガン行く」タイプだと勘違いしてただけだけど。

リヴァイ「オレ自身は全くこれっぽっちも教師に向いているとは思ってないんだがな。ただまあ、このご時世、教員免許はあっても学校に採用される枠が少ないから、ここに置いて貰えるだけでも有難いとは思っている」

リヴァイ「もしクビになっても、まあその時は土方仕事でもやれば食いっぱぐれはないだろう」

オルオ「そ、そんな事言わないで下さいよ、先生」

エルド「そうですよ。オレ達、リヴァイ先生が顧問で良かったと思ってますし」

リヴァイ「エルヴィンが演劇部の顧問をするっていう話もあったんだがな。奴は今は進路指導もやってるから、笑顔で『無理』と言われてオレが兼任する事になった」

リヴァイ「本来なら兼任より、ちゃんとした顧問が一人、常についている方がいいと思うんだがな」

オルオ「た、体操部の方をやめるって訳にはいかないんですか?」

リヴァイ「それも無理だ。オレ以外に指導が出来る教員がいねえ。体育教師が増えればそれも出来るんだろうが」

と、複雑そうな顔をするリヴァイ先生だった。

584: 2014/06/19(木) 02:59:26 ID:G0f5oHlU0
リヴァイ「……いや、一応、生物のハンジの奴が出来なくもないが、あいつも女子の方だけで手いっぱいだろうしな。リコも陸上部の方で手一杯だろうし……」

と、頭を悩ませるリヴァイ先生だった。

リヴァイ「本当なら演技指導の出来る教員が顧問をやった方がいいと思うんだがな……」

と、リヴァイ先生は更に頭を悩ませる。

リヴァイ「もし来年、そういう先生が入ってきたら、顧問にしてもらっても………」

エレン「それはダメです! 絶対ダメです!」

オルオ「そうですよ! リヴァイ先生があってこその、劇部ですから」

オレとオルオ先輩は二人してリヴァイ先生に訴えた。

だけどリヴァイ先生はまた困った顔になって、

リヴァイ「しかし県大会の公演で、オレは大失敗をやらかしたんだぞ」

オルオ「演出の件なら、あれはペトラも納得の上の事故でしかないですよ。先生のせいじゃないですし、怪我の功名と言うか、エレンの機転で劇は成功しました! だから気に病む事じゃないですよ!」

リヴァイ先生があの時の事をまだ気に病んでいたとは、思いもしなかった。

あ、もしかして、だからさっきのカラオケ大会も、あんな風に「ご褒美」とか言い出したのかな。

罪滅ぼしのつもりでゲームを考えたんだとしたら、何というか、いじらし過ぎるだろ。

その事が分かったのか、ジャンもオレと同じように複雑な顔になった。

ジャン「いや、アレはアレで結果オーライじゃないですか」

リヴァイ「だから、それは運が良かっただけとしか言えない……」

エレン「先生! 合宿でのこと、思い出して下さいよ!」

リヴァイ「!」

エレン「先生自身が「失敗」してもいいって言ったじゃないですか。それって、先生自身も含めての話ですよね?」

リヴァイ「…………」

エレン「だとしたら、先生の演出の失敗のおかげで、オレ達、九州大会に出られたようなもんじゃないですか。そう捉えてしまえば、失敗も活かせますよね?」

仮面の演出が変わってしまったのは、特殊メイクを省くというリヴァイ先生のアイデアを採用したせいではあるが、それを採用したのはオレ達だ。

先生一人が責任を感じる事じゃないし、何よりそれあったからこそ劇的に変化したんだ。

エレン「だったら、これっていい経験になるんじゃないんですか? そうですよね?」

リヴァイ「…………(はあ)」

リヴァイ「ブーメランになるとは、あの時は思わなかったな」

と、リヴァイ先生があきれ返っている。多分、自分自身に。

585: 2014/06/19(木) 03:10:46 ID:G0f5oHlU0
リヴァイ「…………続けても、いいんだな? 役に立たない顧問かもしれんが」

オルオ「続けて貰わないと困りますよ!」

エレン「そうですよ! なあ、みんな」

ジャン「そうですね。オレはリヴァイ先生が適任だと思いますよ」

エルド「勿論ですよ」

グンタ「全くです」

アーロン「いいと思いますよ」

エーレン「同じく」

カジカジ「異議なしです」

キーヤン「まあ、よくやってる方だと思いますよ」

マルコ「うーん、あの、話がよく見えてこないんだけど……」

と、マルコだけ、不思議な顔になっていた。

ジャン「あ、そういえばマルコはあの件、知らないんだったな」

マルコ「どういう事なの?」

ジャン「かくかくしかじか」

ジャンが簡潔に事情を説明すると、今更ながら「ええ?」と驚かれた。

マルコ「あの仮面が外れるところ、ガチだったの? それは全く分からなかった!」

と、言っていた。

587: 2014/06/19(木) 03:31:12 ID:G0f5oHlU0
マルコ「そうか……なるほど。リヴァイ先生のアイデアが仇になったせいで、脚本の流れが変更になって、アドリブを混ぜる事になったんだ」

エレン「まあな。でも、アレはアレで良かっただろ?」

マルコ「確かに。客観的に見ていた僕としては違和感はなかったけど………」

ジャン「けど? 何だよ」

マルコ「僕はリヴァイ先生の言い分も分かるよ。本当に自分がここにいていいのかって、不安に思うのも頷ける」

ジャン「おいおい、マルコ……でも」

マルコ「まあ聞いてよ。これってまるで野球でいう投手と捕手の関係に似ているじゃないか」

ジャン「え? 何でそうなる?」

マルコ「だってそうだろ? 捕手の指示通りに投手が投げたのに、まるでホームランを打たれたような……打たれたら傷つくのはどうやっても投手側だ。捕手じゃない。だからリヴァイ先生が胸を痛めてしまうのも当たり前だよ」

リヴァイ「…………なかなかいい表現だな。まあ、そういう事だ」

と、リヴァイ先生が照れたようにふいっと視線を逸らした。

ジャン「あ、ああ……なるほど。何となく、意味は分かりました」

オレはまだイマイチ分からないぞ。どういう事なんだよ?

エレン「マルコ、どういう事だよ」

マルコ「野球の場合は捕手が失敗すれば、公式の記録には投手側が傷つく。つまり演劇の場合は舞台に出ている役者が傷つく。支える側の人間にとって、それだけは許せない事なんだ」

エレン「そ、そういうもんか?」

マルコ「そういうものだよ。裏方には裏方のプライドがあるし、自分がそれが出来ないと思えば、出来る誰かにやって貰うべきだと考えるのも当たり前だ。悔しいけど、優先すべきものを間違えちゃいけないからね」

オルオ「……………そ、そうか」

エルド「オレ達は感情論だけで、考えてしまったな」

グンタ「でも、リヴァイ先生以外に適任の先生なんて……」

何だかもやもやしてきたぞ。どうすりゃいいんだこの問題。

588: 2014/06/19(木) 03:41:28 ID:G0f5oHlU0
マルコ「あの、今、兼任の話で思ったんですけど、演劇部の顧問の先生を「二人」にする事って出来ないんですか?」

リヴァイ「え?」

マルコ「一人で二つの顧問をするのがOKなら、その逆がダメな理屈はないですよね?」

リヴァイ「あ、ああ……そう言われればそうだな」

マルコ「だったら経験者である、エルヴィン先生にも「副顧問」の形でついてもらったらどうですか?」

リヴァイ「!」

マルコ「そうすれば、表はエルヴィン先生を中心に、リヴァイ先生が出来ないところはエルヴィン先生に頼んで、リヴァイ先生が裏方を中心に専念すれば、もっと効率よく出来ると思ったんですが」

リヴァイ「……………」

マルコ「だ、ダメですかね?」

リヴァイ「いや、それは有りかもしれない。というより、何でそれを思いつかなかったんだ……」

おお? 何かマルコのおかげで問題が一気に解決できそうな気配だぞ?

リヴァイ「マルコ。お前の言う通りだ。確かにその方が効率がいい。第一、オレにばっかり仕事を押し付けるエルヴィンが前々から気に食わなかったんだ。あいつにも、仕事を回してやる。ククク……」

おお? 何かリヴァイ先生の表情が一気に明るくなったぞ。

良かった。これがうまくいけば、リヴァイ先生の精神的な負担が軽くなるに違いない。

ジャン「マルコ、お前すげえな。さすがだな」

マルコ「え? そうかな? 僕は思った事を言ったまでだよ」

ジャン「いやいや、それに気づいて提案するってのが、なかなか出来ないんだ。やっぱりお前は大した奴だ」

エレン「そうだな。さすがマルコだぜ!」

そんな感じでオレ達の風呂は終わって、わいわいと部屋に戻ると、

ペトラ「あれ? 男子の方が遅かったですね。珍しい」

と、女子の方が先に部屋に戻っていたようだった。

589: 2014/06/19(木) 03:50:32 ID:G0f5oHlU0
今回はここまで。お休みなさい。


引用: エレン「この長い髪を切る頃には」