194: 2014/08/02(土) 14:16:22 ID:jl/nRLqY0



前回:エレン「この長い髪を切る頃には」【その16】


劇場版 進撃の巨人 前編



11月2日。日曜日。その日は晴天だった。

気候も真夏のような暑さはなく、だんだん涼しくなってくるこの季節。

紅葉も色づいてきて、山登りには最適な季節になった。

オレとミカサは初めてのデートに「山登り」を選択した。

女の趣味にある程度合わせた方がいいという、リヴァイ先生の特別授業を参考にする事にしたのだ。

山登りをするのは初めての経験、という訳でもないが、相当久しぶりだった。

確か、小学五年生の頃、「少年自然の家」とかいうイベントがあって、皆で山登りした以来じゃねえかな。

なので山登りに必要な物とかはミカサと一緒に話し合って装備を大体決めた。

今回登る山は初心者向きのもので、駅から1時間半くらいで着く近場の山を選んだ。

朝の6時には家を出発して、8時頃にその山のスタート地点に着くと、そこには結構、いろんな人達が集まっていた。

エレン「おおおお……やっぱり行楽シーズンなだけあって、結構、人がいるな」

若いカップルだけでなく、熟年の夫婦や家族連れなどもいた。

皆、似たような格好でわいわい言いながら山に登ろうとしている。

今日は山登りが目的なので、オレの服装もそれに合わせた長袖長ズボン。あと帽子をかぶっている。

勿論、ミカサも似たような格好だ。白い長そでのTシャツにジーンズ姿だけど、ミカサは足なげえから、すげえ似合っている。

195: 2014/08/02(土) 14:48:02 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「まずは参拝コースを歩いてみよう。エレン」

エレン「おう!」

神宮参道を歩くのんびり参拝コース。というものがあって、今回はまずそれをなぞってみる事にした。

銅鳥居をスタートして、神宮奉幣殿までの石段の参道をのんびり歩いて登るコースとあったので、初心者には向いているだろう。

参道の周辺には沢山の坊舎跡や名所が見られるとも案内にあったので、楽しみだ。

歩いてすぐ、財蔵坊と呼ばれる民俗文化財を見る事が出来た。内部を見れるのは土日だけとあったが、時間が午前10時からとあったので、中を見る事は出来なかったが、山伏が生活した当時のままの姿を残しているその建物を見て、ミカサは「おおお」と感嘆の声をあげていた。

ミカサ「すごい。古い建物がそのまま残っている」

エレン「歴史を感じるよなー」

と、まるで修学旅行に来た時のようなノリで感心しながら歩いていく。

次は庭園を見た。旧亀石坊庭園と呼ばれるそこを見たり、山道の歴史館みたいなところも有ったけど、博物館関連はやっぱりまだ開いてなかった。来るのが早すぎたみたいだ。

そして最後は神宮奉幣殿にたどり着いた。この山の中心的な建物で、朱塗りの柱が目を引く大きな建物だった。

国の指定重要文化財なんだそうだ。結構、格好いい。

やっぱりこういうところに来たからには拝まないとな。

御賽銭入れて、手を合わせてみる。何を報告するかな。

んー。進路を早めに決めたいので、どの職業が一番いいか教えて下さい!

………なんてな。まあ、他力本願な願掛けをしてみる。

いや、本気で言ってる訳じゃねえよ? こう、ヒントくれ! くらいのノリだ。

ミカサ「よし! エレン、ここから本番」

エレン「だな」

次はここから山頂まで登っていくコースだ。時間にして大体、75~90分くらい歩くコースになるらしい。

神宮奉幣殿から中岳に向けて出発する。下宮を通過して、杉木立の中、石段を登っていく。

エレン「ほ! ほ! ほ!」

ミカサ「エレン、飛ばし過ぎると後で疲れる」

エレン「わり! テンション上がってきたからさ!」

と、石段をぴょんぴょん飛びながら先を行く。空気がうめえな。自然の中はやっぱりいいな!

そして20分くらい登ると、一の岳展望台が見えた。ここで小休止出来るみたいだ。

エレン「どうする? 一回休憩するか?」

ミカサ「うん。ちょっと水を飲もう」

という訳で小休止。慌てる必要はないからな。ゆっくり行くぜ。

ミカサ「ふう……(お茶飲んでいる)」

リラックスモードのミカサが超可愛い。こう、ほっとするよな。

ミカサ「な、なに…? (ドキッ)」

エレン「いや、可愛いなーと思って見てた」

ミカサ「んもう……(照れる)」

あーもう、いいな! こういうの! デート最高!!

196: 2014/08/02(土) 15:08:56 ID:jl/nRLqY0
展望台からの景色も最高だった。晴れて良かったぜ。

自然の中にいると、気持ちも落ち着いてくる。こう、すかっとする感じだ。

展望台にはオレ達以外の人も小休止しているので、あまり露骨なイチャイチャは出来ないが、山頂についたらミカサと少しくらい、エOチな事もしていいよな? ダメかな?

とか思いながら景色を眺めていたら、ミカサもこっちを見て、

ミカサ「エレン、そろそろ行こう」

エレン「おう!」

5分くらい休憩して再開。杉木立の中をまたずんずん登っていく。

あ、途中でベンチもあった。やっぱり休憩所は適度に備えられているようだ。

でもオレ達はベンチはスルーして(というか先客がいたので)先に進んだ。

鎖を使って登る箇所があった。ミカサを先に行かせて、お尻を持ち上げてやる。

ミカサ「ひゃん! んもう、エレン……!」

エレン「いや、落ちない様にと思ってな」

ミカサ「いきなり触られるとびっくりする……」

エレン「悪い悪い(ニタニタ)」

ミカサ「んもう……(赤面)」

とまあ、そういう事もやりながら、先に進む。

中津宮を通過した。大体目安通りに登れているかな。45分くらいでここまで来た。

今度は下りの道だ。こけないように注意しながら先を行く。

再び石段の道が開けてきた。よいしょ。どんどん登っていくぞ。

産霊(ムスビ)神社に到着した。ここまでで75分。大体予定通りだ。

水場があったので、そこで水も頂く事にした。冷たい水が超気持ちいい!

先を行くと、上宮が見えてきたぞ! あともうちょっとだ!

上宮中岳山頂に着いた。ここまでで90分くらいだ。

山頂の広場に着いた。やったー! 予定通り着いたぞー!

ミカサ「着いた……」

エレン「おう! 着いたな! 到着だ!」

ミカサ「結構、意外と人がいる」

エレン「みたいだな。この山、結構人気あるんじゃねえの?」

ミカサ「かもしれない。初心者向きの山登りに案内されているだけはある」

エレン「記念写真撮ろうぜ! ほら、ミカサ! よってよって!」

と、言ってオレ達は広場で(ガラケーだけど)記念撮影した。

エレン「今、何時だ?11:00くらいか。9:30分くらいから出発したからそんなもんか」

ミカサ「少し早いけど、お昼にする?」

エレン「そうだな! 昼飯食おうぜ♪」

お楽しみの昼飯時間だ! やっほーい!

197: 2014/08/02(土) 15:16:39 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「おにぎりとか、卵焼きとか、ハンバーグとか、お煮しめとか」

エレン「基本の弁当きたー! ありがとうな! ミカサ!」

ミカサ「では、手を拭いて……(おしぼり持参)」

エレン「(吹き拭き)いっただきまーす!」

ミカサ「頂きます」

もぐもぐもぐもぐ。うめええええ! 超うめええええ!

なんだこれ?! いつもにも増して飯が超うめええええ!

やっぱり自然の中で食ってるせいかな。空気もうまいし、運動した後だし。

余計にそう感じて、ミカサも頷いている。

ミカサ「ね? 贅沢なデートになった」

エレン「ああ! ミカサの言ってる意味が分かったぜ! こりゃ贅沢だな!」

飯がうまく食えるっていうのは、最高だよな! 本当に!

持参した水とかお茶も適度に飲みながら、オレは腹いっぱい飯をかきこんじまった。

エレン「美味かった! 超美味かった! これは本当に、いいデートだな!」

ミカサ「うん。私もお弁当を作った甲斐があった」

エレン「ありがとうな。いつも、本当にありがてえよ。ミカサ」

ミカサ「うん……どういたしまして」

うるうるしているミカサが超可愛い。

ああもう、周りに人いなければ、ここで押し倒してキスしてハグして一気にやっちまうぞ! 外だけど!!

でも自重する。例の誓約書の件、まだ解決していないからな。

198: 2014/08/02(土) 15:30:34 ID:jl/nRLqY0
エレン「そうだ。ミカサ、例の誓約書の件なんだけどさ」

ミカサ「うん」

エレン「エルヴィン先生曰く「親父の謎かけ」って言っていたけど、どう思う?」

ミカサ「んー……」

エレン「オレ、そういうのあんまり得意じゃねえからさ。ミカサの考えを先に聞きたいんだ」

ミカサ「文章を、そのままあえて、捉えるとすれば、だけど」

と、前置きをして言った。

ミカサ「エレンからの接触はダメで、私からの接触がOKだと仮定すれば、もしかしたら、やっていい事を制限しているのかもしれない」

エレン「やっていい事を制限?」

ミカサ「うーん。例えば、エレンのアレを、私の口でその……するのまではOKとか?」

ぶふううううううう!

危うくお茶零しかけた。ミカサ! オブラートに包み切れてねえぞ!

真っ赤になってオレは答えた。

エレン「いや、まあ、確かにそれは文面上は違反じゃねえけどさ。そんな事されたら、オレ、理性吹っ飛ぶぞ? 無理だぞ? 一気に最後までやっちまうぞ?」

ミカサ「やっぱり無理?」

エレン「多分、無理だと思うぜ。いや、ミカサがどうしてもやりたいって言うなら、我慢してやらなくもねえけど」

ミカサ「じゃあしよう(キリッ)」

エレン「即答かよ! え? 何、ミカサ、抵抗ねえの? そういうの?」

ミカサ「むしろしたくて堪らない(キリッ)」

エレン「そうなのか……いや、意外だったな。なんかそういうのって、あんまり女の方からしたがらねえイメージがあったからさ」

ミカサ「そうなの?」

エレン「んーそういう工口本ばっか見てきたせいかな。嫌々やらされている奴とかの方が多いもんな」

まあ、その嫌そうな顔がかえってそそるという事情もあるんだろうけどな。

ミカサ「工口本? (ぴくっ)エレン、工口本を所持しているの?」

エレン「うぐっ……!」

しまった! 墓穴掘った!! 言うんじゃなかった!

ミカサ「エレン、どんな工口本を見ているの? どういうのが趣味なの? (ゴゴゴ)」

エレン「お、怒るなよ!! アルミンから貰った奴とかだよ!! 中古本だから! アルミンが置く場所困るからって、引き取っただけだけだから!」

199: 2014/08/02(土) 15:40:03 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「本当に? 本当にそうなの? <●><●>」

いかん! また例の目つきになってオレに迫ってくる! 話逸らさないと。

ええっと、リヴァイ先生の特別授業だと『機嫌悪い時は甘いもの』食わせろだったな。

あ、チロルチョコが確かあった筈! よし、ミカサの口に押し込もう!

ぐい!

咄嗟にポケットのチロルチョコを取り出して封をあけてミカサの口の中に押し込んだ。

ミカサ「!」

エレン「イライラしたらダメだろ? チョコでも食って機嫌なおせ」

ミカサ(もぐもぐ)

あ、ちょっと顔色が良くなった。すげえ! さすがリヴァイ先生だ!

特別授業を前もって聞いていて正解だったぜ!

ミカサ(ごっくん)

ミカサ「…………誤魔化されたような気がする」

エレン「あんまり気にするな! とにかく、その……オレとしては、そりゃあやって貰えたら嬉しい限りだけど、そこまでで自重出来るかが、自信はねえかな」

ミカサ「そう……(シュン)」

エレン「なんていうか、こういうのって「ここまで」って決めてやろうとしても、そこまでで済まない気がするんだよ。そういうスイッチが入ってしまうと、オレ、どんどん調子に乗っちまうからさ」

ミカサ「それは私も同じかもしれない」

エレン「だろ? だから、多分、それは違うような気もするんだ。答えが微妙に違うような……」

ミカサ「では、誓約書を交わした「理由」から推理してみよう」

と、ミカサが言い出した。

200: 2014/08/02(土) 15:58:22 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「おじさんは恐らく「私とエレンの間にうっかり子供を作らせない為」にこの誓約書を誓わせたと思う」

エレン「そうだな。そこを一番、親父は心配していたからな」

ミカサ「でも、今の避妊具は性能がいいと言われているので、よほどのドジをしない限りは、ちゃんと使いさえすれば妊娠はしないと思う」

エレン「だよなあ。不良品を使わない限りは多分、大丈夫だと思うんだけどなあ」

ミカサ「私もそう思う。それこそ、何万分の1の確率の話だけで、こんな誓約書を作らないと思う」

エレン「つまり、妊娠の問題だけじゃねえって事なのかな」

ミカサ「恐らくそうだと思う。そもそも妊娠させない為なら、枷は私にも及ぶ筈」

エレン「そうだよなあ。意味ないんだよな。オレだけだと」

あー分からん。親父は一体、何が言いたいんだろう?

ミカサ「エレンからの接触はダメで、私からの接触はOKだと考えるとすれば、それはまるで私の方が主導権を握るような話のように思える」

エレン「あ、まあ……そうなるな。ん? 主導権……」

主導権。なんか、その言葉を聞いた瞬間、ちょっと思い出した。

リヴァイ先生の特別授業だ。

リヴァイ『焦るなよ。焦ったら負けだと思え。若いうちはガンガンやりたくなる気持ちは俺も分かるが、女の体は男が思っている以上に傷つきやすい。やり過ぎて、病院に通う羽目になった女子生徒も多数知っている。勿論、中絶も含めてだ。やりたいだけなら、せめて年上の経験の豊富な女を選べ。同年代でやる場合は、特に経験値ねえんだから、女の方に出来るだけ合わせてやれよ』

これって、つまり。まさか。そういう意味だったのか?

ミカサ「エレン……? どうしたの?」

エレン「あ、いや……もしかして、だけどさ」

オレの中で仮説が組立て上がっていく。間違っているかもしれないけど、今はこれしか思い浮かばない。

エレン「親父、もしかして、の主導権をミカサに握らせたかったんじゃねえのかな」

ミカサ「え……?」

エレン「今、ミカサが言った通りの意味かもしれねえ。多分、きっとそうなんじゃねえかな」

201: 2014/08/02(土) 16:11:56 ID:jl/nRLqY0
思い出せ。何故親父があれだけキレたのかを。

あの時の状況を。墓の前での出来事を。

エレン「親父はもしかして、オレの方が強引に、ミカサにキスするところばっかり見ているから、ミカサの方の気持ちを心配しているのかもしれねえ」

ミカサ「え? え? どういう事?」

エレン「つまり、ミカサがオレに「流されて」付き合っているんじゃねえかって、心配しているんだよ。きっと」

ミカサ「ええええええ!? (ガーン)」

ミカサが凄い顔になった。凄くショックを受けているようだ。

ミカサ「そ、そんな事ないのに。私は、エレンが大好きなのに……(涙目)」

エレン「いや、でも、誤解している可能性は十分にあるぞ。親父、オレの方からキスするところばっかり見ているような気がするし、オレの方から告白したって言ったし、ミカサの気持ちがどの程度なのか、測っていたんじゃねえかな」

ミカサ「だとすれば、つまりのサイクルを決める決定権を私に委ねている…と?」

エレン「かもしれない。いや、本当にそうなのかは、まだ分かんねえけど。でも、そう考えれば誓約書の意味が通じる気がするんだ」

オレの方から接触してはいけない。

でも、ミカサからならの接触はOKだと仮定すれば。

その意味は、それ以外にあり得ない気がする。

ミカサ「では、もしかしたら、「危険日」を避けてやれば、をしてもいいっていう意味なのかしら」

エレン「え?」

ミカサ「そう考えれば辻褄が合う気がする。もしもエレンに主導権を渡せば、私はそういう時でも、求められたらきっと、うっかり応えてしまう。でも、エレンの側からは女の生理のサイクルは分からない。そこをコントロール出来るのは、女の私しかいない」

エレン「つまり、妊娠しづらい時期であれば、所謂「安全日」って呼ばれる期間であれば……」

ミカサ「や、やってもいい……?」

お互いに、その答えにたどり着いて、手を握り合った。

エレン「多分、それだ!!! 親父はそれに気づかせる為に、謎かけみたいな事をしたのか!!」

ミカサ「エレン、家に帰ったらおじさんと答え合わせしよう!」

エレン「ああ、そうだな! あーなるほどな! 何か分かった気がするぜ!!」

202: 2014/08/02(土) 16:29:06 ID:jl/nRLqY0
回りくどい方法で縛った理由も分かった気がする。

つまり、オレの方が我慢している状態で、ミカサの方が我慢出来なくなった時に、その意味が伝わる様に。

ようやくオレ達の「枷」が1個外れるように、誓約書をかわさせたんだ。きっと。

エレン「くっそおおおお親父めええええ!」

なんかこう、踊らされたような気持ちもなくもないが。親父らしいやり口だと思った。

親父には一生敵わない気がする。こういうところ、本当すげえよ。

ミカサ「では私は明日から基礎体温計で基礎体温を測らないといけない」

エレン「ん? なんだそれ」

ミカサ「そういう道具がある。女のリズムを測る道具。ちょっと面倒臭いけれど、それがあれば、妊娠しやすい時期としづらい時期を大体把握する事が出来る」

エレン「そうなのか」

ミカサ「ただ、データを採る為には一月から二月程度の情報が必要なので、すぐには結果が出ない。生理のリズムだけで計算する事も出来なくはないけど、正確な情報が知りたいのであれば、やはり基礎体温は調べるべき」

エレン「おう。なんかその辺はミカサに任せるぞ」

ミカサ「うん。任せて欲しい。早ければ、12月以降にはリズムが掴めると思う」

エレン「じゃあ、来年になれば、オレ達、出来るのかもしれないのか」

ミカサ「かもしれない。勿論、おじさんに確認した上での話だけど」

よしゃああああああ! これで一歩前進だ!!!!

暗闇が晴れてきたような気がした。ああもう、早くうちに帰って親父に直接確認してえええ!!

203: 2014/08/02(土) 17:18:55 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「でも、今日は確かおじさん、お仕事……」

エレン「あ、そうだった。なんか出張行ってるって言ってたな」

親父は医者だから、医学関係の発表会とか研究会とかの出張で全国あちこち出かける時もある。

今日と明日は家にいないんだ。だからすぐには確認出来ない。

電話で言うのもアレだしな。仕事邪魔する訳にはいかないし。待つか。

エレン「あーもう、うずうずするけどしょうがねえか」

ミカサ「うん。しょうがない」

エレン「まあでも、こういうの、わくわくして待っている時間っていうのも大事だよな」

きっと。階段を登っていくように。一個ずつ。

問題をクリアしていく事が、きっと大事なんだと思うんだ。

ミカサ「うん。焦る必要はない。私はずっと、エレンの隣にいる」

エレン「………」

やべえ。うるっとくるだろうが! そんな事言われたら!

あーもう。これから先、どうしようかな。

エOチの件はまあ、1歩前進したとはいえ、まだ進路の事、決めてねえし。

ミカサはオレと同じ道を行くと言っている。

だったら、オレ自身がミカサにどうなって欲しいのか。考えないと。

消防士は……もし万が一、ミカサが火傷したら嫌だから没だな。

自衛隊員は……似合いそうだな。隊服。でも確か、自衛隊員って全国を回るんだよな。

勤務先次第では遠距離恋愛になっちまう可能性もあるよな。それはちょっときついかもしれない。

レスキュー隊……悪くはねえと思う。そういうの、オレ、向いてるらしいし。

最後に医者。

エレン「……………」

204: 2014/08/02(土) 17:20:30 ID:jl/nRLqY0
イメージした瞬間、びびっときてしまった。

白衣を着て、聴診器持って、診察するミカサを想像して、正直、きた。

萌えてしまった。レスキュー隊も悪くはねえんだけど。

女医っていう響きに、オレの心は躍ってしまって、その……。

馬鹿だと思うけど、正直言って、アホだとは思うけど。

進路の中で一番、ミカサになって欲しい職業は「女医」だった。

エレン「……………」

こういう決め方って、本当は良くねえかもしれない。

だけど、男って、案外単純に出来ている生物で。

エレン「ミカサ、あのさ……」

ミカサ「何?」

エレン「オレ、もしかしたら、無理かもしれないけどさ……」

無謀かもしれない。やめとけって止める理性の声も聞こえるけど。

オレの本能は「女医」を選んだ。ああ貶すがいい。むしろ本望だ。

女医の姿になったミカサを、オレは見てみたい。

だから。

エレン「医者の道、チャレンジしてみてえかも……」

ミカサ「医者? おじさんの跡を継ぐの?」

エレン「出来るんだったらな。ミカサも、一緒に医者の道、進んでみるか?」

ミカサ「エレンがその道を進むのであれば、私は何処でもついていく」

微笑んだ、ミカサの顔がとても綺麗で。

オレも一緒に微笑んだ。

エレン「正直、無理かもしれないけどな。でも、オレ、やるだけ、やってみるよ」

ミカサ「うん。一緒に頑張ろう。エレン」

と、言ってオレ達はじっと見つめ合った。

熱っぽい視線を交わして、唇が近づく。その刹那……

205: 2014/08/02(土) 17:29:21 ID:jl/nRLqY0
ハンナ「すごくきれいな場所だねー来てみて良かったね。フランツ」

フランツ「ああ。綺麗だね……ハンナ」

見知った声が聞こえてびっくりした。そっちの方を振り向くと、

うおおおお何だ?! フランツとハンナも山登りデートしに来たのか。

え? でも、フランツって野球部じゃねえ? いいのかサボって。練習大丈夫なのか?

ハンナ「うん。たまには気分転換した方がいいよ。思いつめると良くないって」

フランツ「ありがとう……ハンナ」

ハンナ「いいよ。で、話したい事って、何?」

フランツ「………」

何だ。顔が赤いぞ。まさか……

フランツ「あの……ハンナ。単刀直入に、言うけど」

ハンナ「うん」

フランツ「つきあって、くれないかな。僕と」

ハンナ「え?」

フランツ「だから、その……おつきあいして下さい!」

ハンナ「いいの? でも、野球部、大変だって…」

フランツ「ハンナの応援があれば頑張れる気がするんだ。だから……」

ハンナ「本当に、私でイイの?」

フランツ「ハンナじゃないと、ダメなんだ!」

ハンナ「フランツ! (がばっ!)」

おおおっと?! 山の山頂で告白かよ! 何で遭遇しちまったオレ?!

ミカサ「おおお……ここはデートスポットでもあると書いてあっただけはある」

エレン「そうなのか?」

ミカサ「うん……でもまさかこんなところで2人に遭遇するとは思わなかった」

エレン「オレもだよ。いつの間にあいつら、そういう事になっていたんだ?」

ミカサ「委員会、ではないだろうか。2人は同じ委員に所属していた気がする」

エレン「そうだったっけ? まあ、接点があるならそうなったのも頷けるか」

2人はくっついたばかりで人目も憚らずイチャイチャし始めた。

おおおおおい。ちゅっちゅすんなー。周り見ろー。

人の事は言えないけど。アレだ。人がおっぱじめると、何かアレだな。

自分の事は棚に上げたくなるのが不思議だよな。

206: 2014/08/02(土) 17:40:38 ID:jl/nRLqY0
まあいいや。あっちの馬鹿夫婦は放置しよう。今は自分の事を優先だ。

エレン「そろそろ、下るか? 天気、夕方から崩れるかもって予報で言ってたし。長居はしない方がいいだろ」

ミカサ「うん。そろそろ下ろう」

という訳で、フランツとハンナには声をあえてかけず、オレ達は先に山を下る事にした。

同じ道を下るだけだから道に迷う事はなかったけど、急に雲の様子が怪しくなってきた。

エレン「やべ……予報より早く雨、きそうだな」

ミカサ「少し急ぐ?」

エレン「だな」

という訳で、ちょっと早歩きで下っていると、


ザーザーザー


あともうちょっとってところで雨が降り出してしまった。

エレン「あーもう、運がない」

ミカサ「エレン。展望台で雨宿りしよう」

エレン「そうだなー」

軽く濡れた服をタオルで拭いて雨宿りする。

人の気配はなかった。恐らく、他の人は山頂か別の場所で雨宿りをしているんだろう。

エレン「…………」

雨で少し体が濡れたせいか少し寒そうだ。

ミカサが一回だけ小さなくしゃみをした。

エレン「大丈夫か?」

ミカサ「大丈夫。ちょっと寒いけど」

エレン「………」

ごくり。生唾を飲み込んだ。

人が来たらまずいけど。でも、ミカサの手が少し冷たかったから。

だから。

オレはミカサを自分の方に引き寄せて、服の上から、ミカサの体にそっと触れた。

207: 2014/08/02(土) 17:56:28 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「え、エレン……(びくん)」

エレン「寒くないか? 少し、体冷えてるぞ」

ミカサ「これくらい平気……(ぽやーん)」

ミカサがうっとりしているのが分かる。

雨は、通り雨なのかどうか分からないけど、まだ降り続けている。

小雨になるまではここで休憩するしかない。

その時、オレはまた、リヴァイ先生の特別授業を思い出した。


『女の肌は服を着せたまま1時間は触れ』


それを思い出した瞬間、オレの中で、せき止めていた何かが外れた音がした。

雨が止むまででいい。ミカサの体を温めてあげる為に。

自分に言い訳しながら、これは、そういう意味じゃないって、言い聞かせながら。

自分に嘘をつきながら、オレはゆっくりと、ミカサの体に触れた。

ミカサ「エレン? その……」

エレン「寒くねえように、触るだけだ。大丈夫」

ミカサ「うん……」

嘘だけどな。でも、その嘘にミカサも気づいている。

服の上から、触るだけだ。ゆっくりと、ただ、それだけ。

エレン「擦るだけだ。こうすれば、寒くねえだろ」

ミカサ「う、うん……あっ……」

ビクン……

跳ねる身体が感じている事を表す。ミカサ、やっぱり相当敏感なんだな。

腰の周りと、脇腹の辺りを中心に手を動かして、優しく撫でるだけなのに。

太ももとかも、服の上から触ってみる。少しだけ湿っているのは、通り雨に濡れたからだ。

だけど、その湿り気が余計に興奮を呼んで、オレは、太ももの内側にも指を入れた。

ミカサ「あ……ああ……」

2人の荷物はとっくに床に置いている。

触るだけなのに。ミカサの顔がどんどん、赤くなっていく。染まっていく。

ヤバい。楽しい。すげえ楽しい。

でも我慢だ。服の上から触るだけだ。それ以上の事は、しない。

208: 2014/08/02(土) 18:05:20 ID:jl/nRLqY0
本番は1時間以上もこれ、やるんだよな。すげえ耐久レースな気がするけど。

辛いけど、それをやりたくなる気持ちも分かる。触るだけで十分、ミカサ、感じてくれているんだ。

ミカサ「ああっ……エレン……ん……」

両目を閉じてくたっと力が抜けていくミカサにオレはキスをしてしまった。

あれ? ちょっと待って。ええっと。

いかん。キスはするつもりなかったのに。あれ? 体が勝手に。

ミカサ「ん……は……はああっ……」

まずい。ミカサの感じ方がどんどん、本格的になってきている気がする。

舌を絡ませると、唾液が零れた。人の気配は、まだない。

雨の音を聞きながら、オレ達は展望台の中で、静かな行為に耽っていった。

誰も来ない。雨降ってるせいかな。でも、人が来ても良さそうなのに。

来るかもしれない。見られるかもしれない。その予感があるのに。

ゾクゾクした。その背徳感が余計に、背中から、押してくる気がして。

いかん。ダメだ。これ以上、触ったら。

でも、ミカサの汗の匂いとか。運動したての、匂いが鼻腔をくすぐって、捉えて離さない。

ミカサから発するフェロモンみたいなものにまとわりついて、オレはどんどん、自分の手を動かしていった。

ミカサ「あああっ……ん……」

声、出さない様に必氏にかみ頃しているのが、かえってそそる。

手をミカサの背中の方に回して、オレは尻の方にも手をのばした。

服はまだ脱がせてないんだけどな。服の上からでも、感じ過ぎだろ。ミカサ。

211: 2014/08/02(土) 19:05:14 ID:jl/nRLqY0
ミカサ「は…!」

短い時間、気を失っていたミカサが目を覚ました。

ミカサ「わ、私は何を……(赤面)」

エレン「ごめん、ミカサ……」

ミカサ「エレン……」

エレン「こんなに一杯触るつもりはなかったんだけど、やってるうちに、加減が効かなくなってきて、つい」

ミカサ「ううん。大丈夫…それは大丈夫だけど……(赤面)」

ミカサはもじもじしながら言った。

ミカサ「下着、濡れてしまったので、着替えていいだろうか。着替えは持って来ているので」

エレン「あ、あああ……もちろんだ」

オレはミカサを見ないようにして、外の奴らに見せない様に大きなタオルを壁にしてやった。

そして下着を取り換えたミカサは言った。

ミカサ「どんどん酷くなっている……」

エレン「え?」

ミカサ「私、濡れるのが早いみたいで、すぐこうなるの。ごめんなさい……」

エレン「あ、いや…別に謝る事じゃねえよ。っていうか、立てるか?」

ミカサ「ふ、ふらふらする……」

エレン「少し休んでいくか。ごめんな。ついつい」

ミカサ「大丈夫。大丈夫……(赤面)」

212: 2014/08/02(土) 19:11:23 ID:jl/nRLqY0
と、言ってミカサは少し俯いて、

ミカサ「今日の事は、おじさんには内緒にしよう」

エレン「そうだな。内緒にしねえといけねえな」

罪悪感はあるけど。でも、やっちまったもんは仕方がねえか。

ミカサ「出来るだけ早いうちに誓約書の件を確認しよう。でないと、私もいろいろ辛い……」

と、ちょっとだけ涙ぐむミカサに、オレはよしよしと頭を撫でてやった。

そんな訳で、オレ達の初デートはその、うっかり、一歩進んでしまったけど。

オレ達にとって、そろそろ限界が近づいているのもひしひしと感じてしまった。

もう、いい加減に一つになりたいと、体が訴えているんだ。

親父が心配するのも分かるけど。でも、だからといってこのままでイイ訳がない。

そんな複雑な思いを抱えながら、オレ達はゆっくりと下山した。

苦い思いを抱えながらだけど、でも。

オレとミカサはお互いに手をしっかり握り合い、その手を離す事は決してなかったのだった。

213: 2014/08/02(土) 19:15:12 ID:jl/nRLqY0
リヴァイ×ハンジとは全く逆の状態に陥っているエレン×ミカサでした。

エレンが遂に約束破り始めちゃったよ。バレたらやばいよ!?
というところで続きます。ではまたノシ

216: 2014/08/03(日) 01:24:23 ID:6ZK.Jc620





ミカサが白衣を着ていた。ちょっと大人っぽい。

ミカサ『はい、エレン君。調子はどうですかー?』

おおお。なんか凄く子供目線で話しかけて来た。ん?

つーか、オレ、子供の姿になっている?! え? 小さくなってるぞ?!

あ、これ、夢か! 身体は子供、頭脳は大人のアレの状態になっているようだ。

エレン『はーい! 元気です!』

ミカサ『うん。じゃあ、お口開けてね』

おおおお。なんかこういうの、久々だな。あーん。

腹とか触診されてこそばゆかった。ミカサ、小児科の女医になっているのか。

いいなあ。いいなあ。似合ってる。すげえ可愛い。

デレデレしていたら、今度は別のオレが出て来た。

エレン2『ミカサ先生ー! 抱っこー!』

ミカサ『えええ?』

エレン3『オレもオレもー!』

ミカサ『んもうーわんぱくねえ』

と、言って、オレと同じ顔した小さなオレが集団にミカサ先生にタックルかまして押し倒した。

皆、好き勝手にミカサの上に乗って、キャッキャ言って遊んでいる。

あーもう。オレ、ちょっと自重しろよ。気持ち分かるけどさ。

ミカサ『あん! もう、そこは、触っちゃダメよ。あん!』

と、時々甘い声をあげてくねくねしている。

ああああ! もう一人の小さいオレ達がおっOい揉みまくってるぞ! けしからん!

219: 2014/08/03(日) 01:48:26 ID:6ZK.Jc620
とりあえず顔洗おう。今日は午後から演劇部の部活動の予定が入ってるしな。

時間は……ああ、もう午前11時か。結構寝倒していたんだな。

昼飯食って、準備して学校に行くと、いつものメンバーが大体音楽室に揃っていた。

あれ? でも、珍しくペトラ先輩が音楽室に来ている。

なんかすげえ落ち込んでいるな。体育座りで隅っこにいるけど。

エレン「ペトラ先輩、どうしたんですか?」

ペトラ「!」

ジャン「馬鹿! そっとしとけ!!」

エレン「え?」

ペトラ「うああああああ! (*壁を額にエンドレス殴打)」

エレン「?!」

なんだ?! 急に暴れ出したぞ?!

壊れたおもちゃみたいな動きしているな。

アルミン「あーあ。折角、一回収まったのに。今、ノゲノラのステフ状態なのに」

エレン「は? なんだそれ」

アルミン「ええっとね。詳しい事情は、エルド先輩から聞いて」

と、視線を動かすと、ちゃかりエルド先輩も遊びに来ていた。

220: 2014/08/03(日) 02:01:43 ID:6ZK.Jc620
エルド「や! 久しぶり。すまんね。最近、こっち来れなくて」

エレン「いや、もう受験生なんだから仕方ないですけど。ペトラ先輩どうしちゃったんですか?」

エルド「あー……新しい恋の兆しに混乱している真っ最中……とでも言えばいいかな」

エレン「誰かに告白でもされたんですか?」

エルド「そんな生易しいものじゃないよ。………オルオとうっかりベロチューやっちゃったんだって」

エレン「え?」

ミカサ「え?」

さすがのミカサも一緒に驚いてしまった。

エレン「何がどうなってそうなったんですか? え? キスしちゃったんですか?」

エルド「ああ、まあ……事故チューに近いんだろうけどな。なんか、雰囲気に流されちゃったんだって」

ミカサ「雰囲気に流された程度で、ベロチューは普通しないのでは?」

エルド「まあ、そうなんだけどな。そこはほら、ペトラは「事故チュー」に処理したいみたいだからそう言ってみただけだ」

エレン「えええ……」

一体、何がどうなっているんだ?

ペトラ先輩はある程度、額を壁にぶつけた後、また体育座りをして落ち込んだ。

ペトラ「違うの。オルオとキスしたのは、そういうつもりじゃなくて、その……あいつが急に優しくしてきたもんだから、つい、その、なんか嬉しかっただけで、そういうつもりは全くなくて、っていうか、何であの時、私、抵抗しなかったの? オルオを受け入れちゃったの? オルオの事は嫌いじゃないけど、リヴァイ先生の件が終わった直後にこれって、おかしくない? 私、尻軽過ぎない? っていうか、私の想いってそんなに簡単に変わるようなものだったの? 私、ずっとずっとリヴァイ先生の事が好きだったのに、何でオルオとキスしちゃったの? うわああああああああ?!」

ダメだアレ。なんかもう、完全に壊れているぞ。

221: 2014/08/03(日) 02:18:12 ID:6ZK.Jc620
ブツブツブツブツ言い続けて自分の感情を吐き出しているけど。

ちょっと怖いくらいにおかしな状態になっている。

あれは今、下手に触らない方が良さそうだな。

エレン「ええっと、とりあえず、大体のあらすじを教えて貰えませんかね?」

エルド「あー。ペトラがハンジ先生、ぶった時の事は覚えているよね?」

エレン「まあ、現場見てましたしね」

エルド「んで、その後も、ちょっと1組の女子の間でゴタゴタがあったみたいでね。ペトラ、クラスで完全に孤立しちゃったみたいなんだよ。まあ、元々ペトラはちょっと浮いているところあるんだけどな。ますますそれが酷くなっちゃって。一人ぼっちで意地張っているところに、オルオが「お前がどれだけ周りに嫌われようが、オレはずっとお前の味方だからな」って言ったらしくてね。それにちょっと、絆されちゃったみたいで。オルオが、宥めていたら、ペトラ、ちょっと泣いちゃったみたいで。それで、グラッと。お互いに、その……ってやつ」

エレン「へーいい話じゃないですか。それの何が悪いんですかね?」

エルド「いや、本人的にはそこまでお互いの距離が近づくなんて思っていなかったみたいでね。ただ、体が自然にそう動いちゃった感じだから、お互いに混乱の真っ最中って感じだ。オルオの方はグンタが宥めているよ」

ミカサ「なるほど…」

そうなのか。でも、かえって良かったんじゃねえか?

オルオ先輩、ペトラ先輩の事、好きみたいだったし、こっちもくっついちまえばいいのに。

でも、ペトラ先輩はそれを受け入れられないようで、

ペトラ「っていうか、初めてだったのよ?! 何で初キスをオルオにあげちゃったの私?! もういっそ、途中で舌を噛み切ってやれば良かった! あいつの舌、中に入って来たし! あの時、噛んでやれば良かったのに、何でそれをしなかったの?! っていうか、何で意外と気持ちいいとか思ったの?! あいつ、そういうの手慣れてたの?! 女たらしだったの?! あいつ、彼女とかいたっけ?! そんな話、聞いたことないんですけど?! もしそうだとしたら、私は何人目なわけ?! あああああああ?!」

うわああ。ペトラ先輩、ダメ過ぎる。

ペトラ先輩って元々、カッカすると口悪いから、言っちゃいけないところまでつい漏らしちゃうタイプだけどさ。

心がダダ漏れ過ぎて可哀想だ。どうにかならんのかな。アレ。

222: 2014/08/03(日) 02:30:48 ID:6ZK.Jc620
ミカサ「…………何故か既視感を覚える」

エレン「え?」

ミカサ「まるで、リヴァイ先生とハンジ先生のよう」

エレン「ああ、そうかもな」

ミカサ(こくり)

キスしても、すぐには認められないんだろう。何かと理由をつけて暫くはお互いに認めなさそうだ。

オレ達は短距離ランナーカップルだけど、オルオ先輩達はまさしく、リヴァイ先生達に近いカップルのような気がする。

第二の長距離ランナーカップルが誕生するのかな。くくくっ。

エルド「ペトラ。その辺にしておけよ。皆、困ってるぞ」

ペトラ「は! そうね。ごめんなさい……」

やっと我に返ったのか、ペトラ先輩が顔色を戻した。

ペトラ「ええっと、今日は皆に、お願いがあって来たのよ」

アルミン「お願いですか?」

ペトラ「そう。リヴァイ先生の結婚式についてなんだけど。もともと、その時期って、演劇部では「冬公演」という形で自主公演を行っていたのね。でも、今年はリヴァイ先生の結婚式と日程が重なるから、いっそ結婚式で劇をやって貰えたらなって、思ったのよ」

マーガレット「まーその方がいいですよね。体育館でやるなら、ホール押さえる金も浮きますしね」

ペトラ「うん。私達3年も、手伝えることがあれば出来るだけ手伝うわ。準備期間は短いけど、文化祭のような大掛かりな劇じゃなくていいから、公演を行ってほしいのよ」

と、あくまで「お願い」という姿勢でペトラ先輩が言った。

223: 2014/08/03(日) 02:52:12 ID:6ZK.Jc620
ジャン「結婚式で演劇ですか。珍しいですけど、オレ達らしくていいかもしれないですね」

アルミン「準備期間は、文化祭の時よりかえって余裕あるかもね。今回はクラスの出し物の負担がないわけだし」

ペトラ「あ、それもそうね。確かに冬公演の方が、ゆっくり準備出来るか。でも、あまり尺を取る劇じゃない方がいいと思うけどね。何か、こういうのやってみたいっていうのないかしら?」

エレン「ん~」

結婚式に相応しい劇、かあ。

なんかこう、皆で楽しめるようなのがいいよな。きっと。

ミカサ「恋愛物をまた、やる、とか?」

エレン「あ、やるんだったら、ラブコメの方がいいんじゃないか? コメディ要素を入れようぜ」

ミカサ「なるほど。その方が新鮮でいいかもしれない」

アルミン「ラブコメかあ……」

アニ「ん? アルミン、何かアイデアがあるの?」

アルミン「いや、そういうジャンルなら、僕、割と好きだから、脚本やってもいいかなって」

アニ「いいの?」

アルミン「前回は準備期間があまりに短かったからね。いきなりやる自信はなかったけど、今回は準備する時間もあるし、頑張れば何とかなるかな。エルヴィン先生に台本の書き方を習いながらやれば、だけど」

アニ「いいと思うよ。というより、台本書ける子も育っていかないと、エルヴィン先生ばっかりに負担かける訳にはいかないよ」

アルミン「それもそうだね。うん。ちょっとずつだけど、僕も頑張ってみるよ」

という訳で、オレ達は次の「冬公演(リヴァイ先生の結婚式)」に向けての新しいスタートを切った。

ペトラ先輩は、まだ「うあああああ?!」と時々唐突に叫んでは凹んでいたけれど。

ま、そのうち時間が解決するだろ。自然となるようになる。

そう思いながら、オレとミカサは一緒に苦笑を浮かべていたのだった。

226: 2014/08/03(日) 12:43:16 ID:6ZK.Jc620









11月4日。火曜日。火曜日の1限目は世界史のエルヴィン先生なので、アルミンが授業後、台本について相談していた。

すると、エルヴィン先生は「いいアイデアだねー」とニコニコしていた。

エルヴィン「だったらいっそ、リヴァイとハンジの物語を劇にしちゃおうか」

アルミン「え? いいんですか?」

エルヴィン「あの2人の馴れ初めそのものが既に「ラブコメ」だからね。本人達は恥ずかしがるだろうけど、自分達を一度、客観的に見て、どれだけアホな事やっていたのか自覚させた方がいいと思うよ?」

エルヴィン先生、超悪い顔している。過去最高の悪い顔だ。

アルミン「では、エルヴィン先生の知っているエピソードを基に話を考えていけばいいですね」

エルヴィン「取材なら私だけでなく、他の先生達の話も聞いていいと思うよ。きっと皆、喜んで協力してくれると思うな」

アルミン「分かりました。ではその方針で固めてみたいと思います」

という訳でアルミンもエルヴィン先生と同じくらい悪い顔になった。

でも、台本の内容がもしリヴァイ先生にバレたらどうするんだろ?

エレン「練習風景、見せないようにしねえとリヴァイ先生にバレるかもな」

アルミン「あーそうだね。出来るだけこそこそ練習やろうか」

エレン「あと、問題はリヴァイ先生役を誰がやるか、だな……」

アルミン「ハンジ先生は、エレンがやったら? 身長近いし、髪も今なら長いから丁度いいし、エレンなら出来そうじゃない?」

エレン「ああ、まあ、やってもいいけどさ。女役って言っても、ハンジ先生は中性的だからやり易いだろうしな」

たまに男みたいな仕草しているしな。ハンジ先生自身が。

アルミン「んー身長で言うと僕かアニになっちゃうけど、アニは元々、舞台に出るのが苦手だし……でも僕はちょっとリヴァイ先生とはイメージ違うし」

エレン「んーま、後で決めるか。その辺は。台本出来てから煮詰めようぜ」

アルミン「そうだね。そうしようか」

という訳で、大体の方針が固まったのでとりあえず安心だな。

227: 2014/08/03(日) 13:04:48 ID:6ZK.Jc620
そして次の授業は日本史だった。ナイル先生の授業だった。

アルミンは早速、授業後に取材を開始していた。ナイル先生は「ふん」と笑っていた。

ナイル「ああ……あの2人は最初からいろいろとアレだったな」

アルミン「アレとは?」

ナイル「ある意味伝説の教師達だよ。入学式に滑り込みセーフでヘリコプターを使って登校してくるわ、窓から教室に入ってくるわ……常識という物がないのかってくらい、破天荒なことばかりやらかしていたよ」

エレン「あ、窓から教室に入っていたってのは本当だったんですね」

OBの人達が笑っていたアレだ。

ナイル「ああ。いくら身体能力があるからって、スタントマンじゃないんだから。流石にやめろと私が怒鳴ってやったよ。遅刻しそうになったのは、ハンジ先生の髪を朝から無理やり洗っていたからだ、と言い訳していたが……あの頃からリヴァイ先生自身、ちょっとアレだったな」

と、遠い目をするナイル先生だった。

ナイル「確かにハンジ先生は最初からその、ちょっと臭い先生ではあったし、社会人として、清潔にしていないのを我慢出来ない気持ちも分からんでもないが……リヴァイ先生がそれを改善させる理由なんてどこにもないんだがな。普通は放っておく問題だ」

放っておけなかったからこそ、愛情があった証拠なんだろうな。

ナイル「ま、話せるのはそれくらいだな。他のエピソードは他の先生達から聞きなさい」

アルミン「はい。ありがとうございました」

という訳で1個目のエピソードをGETしたのだった。

228: 2014/08/03(日) 13:37:27 ID:6ZK.Jc620
次は数学のディータ・ネス先生だ。実はディータ先生はもう一人いらっしゃるので、数学の先生の方は皆、「ネス」先生呼びだったりする。

ネス「ああ。リヴァイ先生とハンジ先生の馴れ初めね。再現劇やっちゃうのか」

アルミン「まあそうですね。その方が面白いかと思って」

ネス「ふふふ……だったら、あのエピソードは外せないな」

アルミン「とっておきの話があるんですか?」

ネス「あるぞ。臨海学校のエピソードだけど。学校主催の、生徒達は2年次に毎年行っている物なんだけど。その時の引率だったリヴァイ先生とハンジ先生がね、もうそりゃあ凄かった」

と、懐かしむようにネス先生は言った。

ネス「生徒の一人が、海で溺れていたんだ。それを真っ先にハンジ先生が助けに行った。でも、助けに行ったハンジ先生の方も、流されて溺れてしまったんだ。リヴァイ先生がミサイル並みの速さで追いかけて、生徒とハンジ先生を両方、助けたんだよ」

アルミン「へー。スーパーマンみたいですね」

ネス「2人いっぺんに助けるくらいだからな。でも、その後も凄かったぞ。ハンジ先生、呼吸していなかったし、リヴァイ先生、迷わず人工呼吸をやって蘇生させたんだよ」

アルミン「ヒューヒュー♪」

エレン「生徒の方は助かったんですか?」

ネス「勿論。生徒の方は別の先生が蘇生して、すぐに助けられたけど。その時、リヴァイ先生、迷わずハンジ先生の方を先に人工呼吸し始めたからな。本当は、生徒を先にするべきところなのに。あの時ばかりはハンジ先生を優先したんだよ」

アルミン「まあ、それは当然ですよね。その時は他の引率の先生、いたんでしょう?」

ネス「まあな。でも、あの時のリヴァイ先生、すっごい必氏だった。もうあの頃からきっと、ハンジ先生の事、好きだったんだろうな」

アルミン「なるほど……いいエピソードが聞けました。ありがとうございます」

ネス「もういいのかな? ま、一人1個ずつ聞いていけば、結構集まると思うぞ」

という訳で、次は昼休みを挟んで古典のキッツ先生だ。

229: 2014/08/03(日) 14:24:16 ID:6ZK.Jc620
キッツ「ふん……あの馬鹿夫婦の事なんぞ、話す事はない。見たままを演じればいいだろう」

アルミン「そこを何とかお願いします。出来るだけ古いエピソードが欲しいので」

キッツ「古いエピソード………では、あいつらがまだ着任して間もない頃の話が聞きたいのか?」

アルミン「出来れば是非」

キッツ「ふん……教師になりたての頃のあやつらは、本当にいろいろとふざけておったぞ。学校で生徒達と夏休みにこっそり花火をしおってな。ぼや騒ぎを起こして大目玉食らっていた事もある。ハンジ先生は『化学実験の補習です!』と嘘ばっかり言っておったが、さすがに事が露見した時は2人とも、始末書を書かされていたよ」

えええええ。花火事件の主犯格ってリヴァイ先生とハンジ先生だったのかよ!!

キッツ「クビにならなかっただけでも有難い話だというのに。それでもあの2人は反省の色がなかったな。『自分達が学生の頃はOKだったのに…』とかなんとかブツクサ言っていたが。常識を知らなすぎる2人だったな」

と、嫌そうな表情でキッツ先生もまたエピソードを残してくれた。

エレン「リヴァイ先生が元ヤンだったっていうのは、本当みたいだな」

アルミン「あーなんか、その辺の悪い事はセーフみたいな感じだね」

リヴァイ先生のその辺の線引きが面白いな。18禁はダメだけど、花火はOKなのか。

そして音楽の授業のダリス先生にも話を聞いてみた。キッツ先生と似たような苦い反応だった。

ダリス「そうだな。あの2人は着任した年からずっと、じゃれあっているような関係だった」

アルミン「具体的には?」

ダリス「リヴァイ先生は、今は体操部の顧問をやっておられるが、最初の頃は柔道部の顧問をやっていたんだ。その時、技を見せる時に、ハンジ先生を連れて来て、生徒に寝技の講習なども行っていたよ」

アルミン「という事は、リヴァイ先生は柔道の師範の免許も持っておられるんですか」

ダリス「柔道だけではない。剣道も空手も有段者だ。大学時代にその手の格闘系の資格を全部取りつくしたと言っていたので、着任した当時はそっちの指導に明け暮れていたよ。ハンジ自身も、空手の有段者の筈だから、身体能力はあるが、毎回モデルにしていたのは、今思うとわざととしか思えないな」

アルミン「ですよねー(棒読み)」

ダリス「リヴァイ先生も不器用な先生だからな。理由がないと、ハンジ先生に触れなかったんだろう。ま、同じ男としてその気持ちは分からなくもないが」

アルミン「なるほど。貴重なお話、ありがとうございました」

と、いう訳で今日のところはこんなもんかな。

だんだん面白いエピソードが集まってきてニヤニヤしてきた。

でも、これだけ濃密なエピソードだと、リヴァイ先生役をやる奴と、オレの絡み、相当多くなるよな。

アルミン「んーいっそさ、リヴァイ先生役はミカサにやってもらった方がよくないかな」

エレン「え?」

アルミン「だって、結構アクロバティックなシーンと、濃厚なラブシーン、やる事になりそうだよ? ミカサ以外、無理じゃないかな」

エレン「あー」

まあ、人工呼吸とか、そういうシーンもやるならそうなるか。

エレン「打診、してみるか。今のミカサなら、舞台も大分慣れたみたいだし。やってくれるかもな」

という訳で、その件をミカサにも話してみると、

ミカサ「え、エレンとキスシーン、やるの…? (ドキドキ)」

エレン「人工呼吸のシーンとか入れるみたいだぞ。やるとすれば、オレ達でやるしかないような気もするんだが」

ミカサ「了解した。あのクソちびを演じて見せよう(キリッ)」

あ、意外とやる気満々だった。ちょっと意外だな。

エレン「いいのか? ミカサはリヴァイ先生、嫌いなのに」

ミカサ「嫌いだからこそ、演じてやる。リヴァイ先生をとことん恥ずかしがらせられると思うと……ククク……」

嫌がらせするつもりなのか。ああ、なるほどな。

エレン「分かった。じゃあ、その方向で皆とも話していこうか。今回は、メインのキャスティングオーディションは無しでも良さそうだな」

アルミン「うん。皆、賛同してくれると思うよ。むしろ君達以外では出来ないと思うし」

という訳で徐々に方針が固まって来た。

そして演劇部のメンバーもアルミンの提案に同意して貰えたのでこれで心配はいらない。

後はエピソードをどんどん集めていけばいいな。

230: 2014/08/03(日) 14:53:08 ID:6ZK.Jc620
11月5日。水曜日。1限目は数学でネス先生だったけど、もう聞いたので、次は2限目の公民のゲルガー先生に話を聞いた。

ゲルガー「あー2人のエピソードか。うーん。いろいろあり過ぎて何から話せばいいんだろうな?」

アルミン「とりあえず、1個思いつくものがあれば是非」

ゲルガー「だったら、酒飲み比べ大会の時の話がいいかもしれない」

アルミン「酒飲み比べ大会?」

ゲルガー「まあ、職員同士で飲み会をやる時もあるんだが、その時、誰が一番飲めるか競い合った事もあるんだ。ちなみにその時の優勝者はエルヴィン先生。準優勝はピクシス先生だったけど。3位はハンジ先生だったんだ」

アルミン「その辺のメンバーはお酒強そうなイメージですもんね」

ゲルガー「エルヴィン先生、すごいザルだからな。俺も飲める方ではあるんだが、エルヴィン先生には勝てないよ。で、其の時、俺、初めて泥酔したリヴァイ先生を見たんだけど……」

そう言えば、泥酔させると面白いみたいな事言ってたな。エルヴィン先生。

ゲルガー「なんかもう、リヴァイ先生、20杯が限界値だったみたいでな。それを越えた途端、豹変して、ハンジ先生に濃厚に絡むようになってしまってな。こう、くっついて離れなくなっちまって。子供かってくらいに。これはまずいって事になって、慌ててハンジ先生が蹴り入れて気絶させていたけど。エルヴィン先生曰く、『泥酔すると本性が出るよwww』って事らしいから、多分、そういう事だったんだろうな」

なるほど。エルヴィン先生がニタニタしていた理由ってそういう事だったのか。

もしかしたら、賭けをしていた時に言っていた「根拠」っていうのはコレの事だったのかもしれない。

つまりエルヴィン先生は昔から知っていたんだ。

リヴァイ先生の潜在意識の中に「ハンジ先生」が深く眠って居た事を。

だから、100万賭けても平気な顔していたんだな。納得したぜ。

ゲルガー「ま、其の時の大会は4位がリヴァイ先生で5位が俺だったんだが。上位3人の容量は桁違いだったな。酒強すぎて羨ましいくらいだよ」

アルミン「なるほど。いいお話が聞けました。ありがとうございます」

ゲルガー「いやいや。この程度の事なら大したことねえよ」

と、ゲルガー先生も苦笑をしていたのだった。

231: 2014/08/03(日) 15:38:37 ID:6ZK.Jc620
3限目は地学だ。モブリット先生の担当だけど。

さすがにモブリット先生に問いただすのは酷なので、スルーしようとも思ったんだけど。

なんていうか、キノコが生えているのかってくらい、ずっとじめじめしていたから、つい、声をかけちまった。

エレン「あの……モブリット先生、大丈夫ですか?」

モブリット「あははは……大丈夫だよ。うん。全然、大丈夫だから(げっそり)」

エレン「ご飯、食べてますか? とりあえず、寝てますか?」

モブリット「うん。3日に1回はちゃんとご飯食べているから大丈夫……」

うわあ。それは大丈夫な状態ではないな。

エレン「…………」

そっとしておくしかないのかな。まあ、目の前で好きな人が結婚宣言したら、憔悴してもしょうがねえか。

エレン「あの、モブリット先生」

モブリット「なんだい? (げっそり)」

エレン「その、モブリット先生から見て、ハンジ先生って、どこが魅力的だったんですかね」

モブリット「んー」

ふと疑問に思ったから聞いてみたんだけど、モブリット先生は意外とあっさり答えてくれた。

モブリット「優しいところ、に尽きるかな。ハンジ先生にどれだけ助けられたか分からないよ」

と、言っていた。

モブリット「教師として着任して間もない頃、仕事を捌けなくてアプアプしていた時とかに、ハンジ先生は必ず『大丈夫ー? 手伝おうかー?』とか、『飲み物いるー?』とか『元気出してね! ファイト!』って言ってムードを作ってくれたと言うか。職員の中では皆のムードメイカー的存在だったんだ」

あ、リヴァイ先生と同じ事言ってる。

やっぱり、そういう部分って、惹かれるものなのか。

モブリット「実際、どうしようもない時に何度か仕事を手伝ってくれた事もあったしね。女性なのに男性より仕事を捌くの早いんだ。その上、明るくて、可愛くて、笑っていて。年上だって事を忘れそうになるくらい、チャーミングな女性だと思ったよ。たまにドジやるところも可愛かった。ああああああ…(ズーン)」

しまった。いろいろ思い出して落ち込ませてしまったようだ。

エレン「すんません。思い出させて」

モブリット「いや、いいよ。時間が解決してくれるのを待つしかないね。こればっかりは……」

という訳で、モブリット先生は背中を丸めながら教室を出て行った。

4限目は生物だ。ハンジ先生、今日は何か凄く綺麗だな。

格好はいつもの白衣だけど。髪型がちょっと違う?

こう、くるんとねじって頭を盛っている。着物を着る時の髪型に近い。

アニ「今日も髪型違いますね。ハンジ先生」

ハンジ「ん? ああ……なんか、最近、リヴァイがヘアメイクにはまっちゃってねー。私の髪で遊ぶようになっちゃったんだー。毎日、いろいろやってくれるよ。これもその試作品だね」

と、照れ臭そうだった。

232: 2014/08/03(日) 16:04:35 ID:6ZK.Jc620
そして自分の顔を指さして、ハンジ先生はちょっと自慢げに言った。

ハンジ「実はこのメイクもあいつに全て任せちゃってるんだ。もう完全に『全自動リヴァイ』って感じ? いやーあいつと付き合う事がこんなに楽チンだとは思わなかったね。今までもいろいろ頼っていたけれど、今はもう、あいつ無しじゃ生きていけないくらい、楽な生活を送らせて貰っているよ。もう、本当にどうしようwww」

むしろそれが狙いなのでは? とも思ったけど、まあいいや。

ハンジ先生も実は惚気たいんだろう。顔にそう描いてある。

そんな感じで幸せ新婚気分のハンジ先生の授業が終わると、午後の5時限目は英語の授業になった。

修業が終わってからアルミンがキース先生にも取材していた。

キース先生もまた、苦笑を浮かべている。

キース「あー再現劇をやるのか。ふん……今更な気もするがな」

アルミン「昔からずっとあんな調子だったから、ですか?」

キース「それもあるが、職員の中ではあの2人の掛け合い夫婦漫才は有名だったからな。もう見慣れたというか、今更再現劇を見ても「懐かしいな」としか思わないと思うぞ」

アルミン「いや、そこを再現して、2人を冷やかすのが目的なので」

キース「ふん……まあ、それならいいが。そうだな。ハンジとリヴァイの職員の席は隣同士だから、朝や放課後の職員会議で居眠りするハンジにいつも、リヴァイが足を踏んだり、脇腹つついたりして起こしていたりしていたな」

ぷぷぷ。ありそうな話だな。

キース「それでも起きない時は、髪の毛引っ張ったり、耳引っ張ったり。だんだん過激になって、一回間違えて胸をつついてしまって、ハンジが「んにゃああ?!」と奇声をあげた事もあったな。あの時のリヴァイの顔は傑作だった。胸をつつくつもりはなかったらしいが、脇腹狙ったらしいが、逸れて間違えて触ってしまったそうだ。職員室は一瞬でざわめいたよ」

リヴァイ先生、それ、わざとやってないよな?

事故に見せかけたイチャイチャのように思えなくもない。

キース「勿論、すぐさま『すまない』と謝っていたけどな。あの時のリヴァイの困惑顔は今思い出しても笑えるな」

とまあ、キース先生は「ククク」と笑っていた。

そして6限目は美術。ピクシス先生にも話を聞いてみる事にした。

ピクシス「エルヴィン先生から話は既に聞いている。再現劇をやるんじゃろう?」

アルミン「はい。今、取材をしている最中です」

ピクシス「話したい事は山ほどあるがのう。どのエピソードを暴露しようかのう…(ニタニタ)」

と、手をわきわきしてうずうずするピクシス先生だった。

233: 2014/08/03(日) 16:36:19 ID:6ZK.Jc620
アルミン「あの、ゲルガー先生から聞いたんですけど、リヴァイ先生って泥酔すると本性が出るって、聞いたんですけど」

ピクシス「そうじゃの。20杯を越えると、豹変するぞ。あやつは」

アルミン「その辺のエピソードをもう少しお聞きしたいんですが」

ピクシス「よいぞ。リヴァイは泥酔すると、必ず「ある女」について話してばかりおった」

アルミン「ある女……ハンジ先生ではないんですか?」

ピクシス「まあ、最後まで聞け。その女とは、教育実習生時代に会っていた同期の教習生でな。自分がトラブルを起こした時に、間に入って助けて貰ったそうなんじゃが、其の時に名前や連絡先を聞きそびれて、実習期間を終えてしまったそうなんじゃ」

ああ、そういえばモブリット先生とハンジ先生とリヴァイ先生の3人が揃って学生食堂に居た時にその話はしていたな。

ピクシス「いつか礼を言わねば……そう思い続けているうちに、その女に密かな恋心を持つ自分に気づいたそうでな。ずっと「もう1度会いたい」とぼやいておったんじゃ。………つまり、その「助けて貰った教習生」というのが、ハンジであったんじゃが、あやつ、それにずーっと気づいておらんでのう」

エレン「ああ、最近になってやっと気づいたみたいですよ。ハンジ先生と確認し合ってましたし」

ピクシス「ほほう? いつの間に。それは良かった。そういう訳じゃから、リヴァイの潜在意識の中にはずっと、その若い頃のハンジの姿が眠っておったのじゃ。あやつが何故、ハンジを捕まえて髪や体を洗おうとしていたのか、これで分かるじゃろ?」

エレン「つまり、綺麗にした姿のハンジ先生を、無意識に求めていたと?」

ピクシス「その通りじゃ。そもそも、再会した時に気づいても良さそうなもんじゃけど、あやつは馬鹿だからの。ずっとそれに気づかず、若い時のハンジに惹かれた自分からずっと逃げておったんじゃよ」

アルミン「なるほどー。もう、その時点で本当は恋に堕ちていた訳ですね」

ピクシス「酒を飲ませたら、そう白状したからの。本人は泥酔した時の記憶は毎回無いそうだが……」

と言ってニタニタしている。

ピクシス「リヴァイとハンジの教習時代の頃に会っていたわしから言わせれば、リヴァイはアホとしか言えん。そもそも、その助けて貰った時点で連絡先くらい交換しておかんのが悪いんじゃ。あやつ、自分から行くのが本当に、下手過ぎる」

エレン「え? それって、もしかして……」

ピクシス「ああ。教習時代、あやつらはこの講談高校に教育実習生として来たんじゃよ。わしはハンジの方の担当教官じゃったが……リヴァイは当時の自分の担当教官をぶん殴ったからの。あの時はわしもいろいろ大変じゃった」

と、過去を懐かしむようにそう語る。

ピクシス「殴られた方の教官は、さすがに自主退職していったがの。しかしあの時、ハンジは言っておった。「何で男のあいつが、セクハラにあそこまでキレるんだろう?」と疑問に思ったらしくてな。それからじゃ。ハンジの方からリヴァイによく話しかけておったんじゃが、リヴァイは不器用な男でな。最初は会話もうまくいかず、困惑するばかりじゃったよ。それでも実習期間が終わる頃にはやっと少し仲良くなったようでな。わしはそれを見てほっとしておったんじゃが……あやつら、本当に馬鹿じゃのう」

と、クククと笑っている。

234: 2014/08/03(日) 16:55:46 ID:6ZK.Jc620
ピクシス「リヴァイが23歳、ハンジが20歳の時じゃったな。教習時代に出会った2人が、4年後、まさか同じ職場で一緒に働き出すとは、これはもう、運命としか言えんじゃろ」

エレン「そうですね。もう、神様の采配にしか見えないです」

アルミン「あれ? ちょっと待って下さい。2人は同期なんですよね。という事は、リヴァイ先生って大学卒業してからすぐ、教員になった訳じゃないんですよね」

ピクシス「そうじゃの。年表にすると、こんな感じになる」

と、言ってピクシス先生はわざわざ2人の歴史を紙に書いてくれた。


    リヴァイ      ハンジ

17歳 高校中退    14歳 中学2年生

18歳         15歳 中学卒業&講談高校入学(担当エルヴィン)

19歳 大検受ける   16歳

20歳 大学入学    17歳

21歳 柔剣道資格取得 18歳 高校卒業&大学入学

22歳         19歳

23歳 教育実習受ける 20歳 教育実習受ける

24歳 大学卒業&就職 21歳

25歳 (土方仕事等) 22歳 大学卒業&大学院入学

26歳         23歳

27歳 教職スタート  24歳 大学院卒業&教職スタート

235: 2014/08/03(日) 17:25:10 ID:6ZK.Jc620
ピクシス「これを見ると良く分かると思うんじゃが、リヴァイとハンジはかなりの神ががり的な縁で出会ったのじゃよ。普通は3年という歳の差のズレがあれば、同じ時期に教育実習を受けること自体が難しい。それを、リヴァイは高校中退や大検等で奇跡的にズレを起こし、ハンジと同時期に教育実習を受ける事になってしまった」

エレン「確かに。これを見ると、まるでリヴァイ先生がハンジ先生に合わせたかのようですね」

アルミン「本当だ。ハンジ先生に寄せていってるみたいに見えるよ」

ピクシス「じゃろう? まあ、ここにもうひとつの神がかった縁も加えて初めて2人の運命が動き出す訳じゃが」

エレン「あ、エルヴィン先生の事ですね?」

ピクシス「そうじゃな。このリヴァイの19歳の時、エルヴィンはリヴァイと出会い、奴を召し抱える覚悟で説得したんじゃ。大学に行かせる事を」

エレン「あーやっぱり、エルヴィン先生、割とガチでそう思っていたんですかね」

ピクシス「まあ、そうじゃな。あやつは冗談では動かない奴だし。本気でリヴァイに惚れ込んでしまってな。「あいつが女だったらな…」が口癖じゃったな。しかしまあ、たとえ同性だろうがそれだけ惚れ込める相手に出会えた事は、幸せな事じゃ。リヴァイはエルヴィンの人生を大きく変えたんじゃよ。あやつ自身も、教職を続けるべきか否か悩んでおったからな。若い頃は」

アルミン「そうだったんですか……」

ピクシス「ああ。リヴァイとの出会いがなければとっくに教職をやめて、博打打ちにでもなっていただろうとエルヴィンは昔、良く言っておった。リヴァイを教職に引きずり込んだのは、エルヴィンじゃが……エルヴィン自身、リヴァイに大きく救われたのだと思うぞ」

エレン「へー」

なんか凄いなあ。人に歴史ありって感じだぜ。

ピクシス「なのに、そこから先がグダグダでのう……折角運命が動き出すと思ってこっちはワクワクして待っておったのに、あやつら、ちーっとも先に進まんのじゃ! 1度だけ、リヴァイが30歳の年の12月に2人で旅行に行ってきた時は「遂にキター!」とぬか喜びしたもんじゃ。2人で旅行に行って、全く手出さんとか、本当にピー(自主規制)ついてんのか? と当時は思ったもんじゃよ」

アルミン「あはははは……」

エレン「まあまあ、結果オーライですよ」

ピクシス「まあ、其の時の2人の旅行のエピソードがひっそりと「種」を植え付けていたとは、わしも知らなかったからの。遅咲きの恋にはなったが、無事に花が咲いてほっとしておるよ」

と、満足げに話し終えてピクシス先生は言った。

ピクシス「少し長話をしてしまったようじゃの。あまりいっぱいエピソードを話しても、劇の中で再現するのは難しかろう。使える部分だけ拾って、あやつらを悶絶させる劇を公演してやってくれ。わしは楽しみにしておるぞ」

アルミン「はい。沢山話して頂けてありがとうございました」

という訳でピクシス先生のエピソードが一番内容が濃くて面白かった。

今日のところはここまでかな。だんだんいろいろエピソードが集まって来たな。

アルミン「うーん。尺が短い方がいいって話だったけど、これだけボリュームあると削る方が難しいよね」

エレン「だな。でも、その辺はエルヴィン先生と話し合いながら決めたらいいんじゃねえか?」

アルミン「そうだね。うん。あともうちょい頑張ってみるよ」

という訳で、その日の取材はそこまでで終わったのだった。

239: 2014/08/04(月) 01:33:40 ID:YSQTQJRw0
11月6日。木曜日。1限目の世界史のエルヴィン先生が授業後に「調子はどう?」とアルミンに聞いてきた。

アルミン「はい。順調にエピソードが集まっています。ピクシス先生の話が一番濃いお話でしたけど」

エルヴィン「だろうね。ピクシス先生は私と同じくらい2人の事を気に病んでいたからね。早く2人の子供が見たくて今からうずうずしている筈だよ」

アルミン「子供……で思い出しましたが、あの、個人的に聞いてもいいですか?」

エルヴィン「ん? 何を?」

アルミン「エルヴィン先生自身が、リヴァイ先生が19歳の時に出会った時のエピソードです。リヴァイ先生に惚れ込んだ理由が気になってしまって」

エルヴィン「え? 話していいの? 引かない? 大丈夫? 私、本当にバイの人間なんだけど」

アルミン「あ、はい。それは既に知っているので大丈夫です。これはあくまで取材ですので」

エルヴィン「分かった。そういう事なら、進路指導室で話そうか。ちょっと長い話になるからね。放課後、いいかな」

アルミン「分かりました。では放課後で」

という訳でエルヴィン先生の話は一旦保留にして、次は、3限目の現国のイアン先生に話を聞いてみた。

イアン「ふむ。リヴァイ先生とハンジ先生のエピソードか。私は他の先生方に比べたら、ここに赴任してからまだ年月が浅い方だから、そう詳しく2人の事を知っている訳ではないが、前に一度、居酒屋で偶然、2人と遭遇した事があるぞ」

アルミン「へーそうなんですか。2人で飲んでいたんですか?」

イアン「みたいだな。ハンジ先生の方がかなりテンション高く酔っぱらっていてな。リヴァイ先生の方が車を出していた様子だったから、リヴァイ先生は飲んでいなかったようだが、最後はおぶって連れ帰っていたようだよ。其の時のリヴァイ先生、凄く困った顔をしていたけれど、何だか照れ臭そうだったね」

アルミン「へー何かいい事あったんですかね」

イアン「んーどうだろ? 確かあの日は9月頃だったかな。ハンジ先生、9月生まれだから、もしかしたらささやかな誕生日会でも2人でやっていたのかもしれないね」

アルミン「あ、なるほど。ハンジ先生の誕生日お祝いを2人でしていたのかもですね」

イアン「正確な日付までは覚えていなくてね。すまないね。メモしておけば良かったけど」

アルミン「いえ、十分です。恐らくそれで合っていると思いますので」

イアン「ふふ…再現劇、楽しみにしているよ」

そしてその日の6限目は再び保健体育の授業が行われた。

時間がまた、10分くらい余ってリヴァイ先生が「やれやれ」という顔になる。

リヴァイ「その期待する目つき、やめろ。第二回目の特別授業、やって欲しいのか?」

アルミン「是非お願いします! (頭擦りつけ)」

リヴァイ「全く……お前らも本当に下世話な話が好きだな」

アルミン「思春期なので(キリッ)」

リヴァイ「まあ、気持ちは分からんでもないがな。さて、今回は何の話が聞きたいんだ?」

アルミン「次は、服の上から肌を触った後の事を是非」

リヴァイ「服を脱がす時の作法か。分かった。では、そのやり方もいくつか教えてやろう」

とまた、黒板を使って説明し始めた。

241: 2014/08/04(月) 02:20:39 ID:YSQTQJRw0


リヴァイ「という訳で、今回の特別授業もテストには全く出ないから覚える必要性はないぞ。適当に聞き流しておけ。以上だ」

という訳で第二回目の特別授業が終わって、リヴァイ先生が教室を出ていくと、アルミンは「凄いねえ」と驚いた。

アルミン「なんか、びっくりする事ばかり聞かされたね。女の人が「演技」しているとか何とか」

エレン「ああ。演技されたら嫌だよな。嘘はついて欲しくねえけど」

その辺は男の手腕にかかっているんだろうな。俺も頑張らねえと。

そんな風に思いながら、放課後を迎え、次はエルヴィン先生の話を聞く事になった。

オレとアルミンが先に鍵を貰って進路相談室で待っていると、後からエルヴィン先生がやってきた。

242: 2014/08/04(月) 04:04:30 ID:YSQTQJRw0
お馴染みの紅茶を出してくれた。紅茶を頂きながら、エルヴィン先生の昔話を聞いてみる。

アルミン「まず、お聞きしたいのは、「何処で」リヴァイ先生と初めて遭遇したのか、です」

エルヴィン「ああ。あれは忘れもしない。リヴァイが19歳になった日の12月25日。リヴァイがゴミ捨て場に捨てられていた「子猫」を腕の中に抱いて、自分自身もゴミ捨て場に蹲っていた時の事だ……」

と、遠い記憶を呼び覚ましながらエルヴィン先生は言った。

エルヴィン「その時のリヴァイは、何だかやつれていてね。目に光がなかった。ただ、子猫を抱いて、まるで母親のように子猫を撫でていたけれど。それは子猫の為にやっているというより、自分を慰める為に撫でているように見えたよ。私はこんなクリスマスの当日に、何故こんなところで蹲っている少年がいるのか、気になってね。夜だったけど。こっちから話しかけてしまったんだよ。『一体、何をしているんだい? こんなところで。補導されるよ?』って聞いてみたら、あいつ『俺はもう19歳だ。来年になったら20歳になる。もう子供じゃねえんだよ』と言い返してきてびっくりしたよ。とてもそんな年齢に見えなかったからね。中学生くらいにしか見えなかったんだ。当時のリヴァイは」

ああ、今も十分若いもんな。30歳でも通りそうな外見しているもんな。

その頃からそんな感じだったんだろうな。きっと。

エルヴィン「何か事情があるんだろうか、とも思ったが、一応、『保護者の方はいないのか?』と聞いてみたんだ。そしたらリヴァイは『初めからいねえよ。俺はいつも一人だった』と、言ってね。恐らく孤児だったのかな。リヴァイには血の繋がりのある人間がいないようだった。だからか、少し他人に対して壁があるようにも見えたけど。私は一応、当時、教職に身を置いていたし、このまま見過ごすのも悪いかなとも思って、どうしようかなって暫く考えていたんだが……」

そしてその直後、エルヴィン先生は笑った。

エルヴィン「あいつ、その後に『この子猫、あんたが飼ってやってくれないか? 俺はこいつを助けてやれない』と言ってきてね。私は犬猫を飼う趣味はなかったから、困ってね。『それは無理だよ』ってすぐ答えたら、『そうか……』と言って残念そうに俯いてね。そして『俺にまともに就職する能力があれば、こいつを養ってやれるんだがな……』と、自分に対する憤りを漏らしてね。その瞬間、私は今まで経験したことのない『何か』が降りて来たのを感じたんだ」

エルヴィン先生が少し興奮しているのが分かった。頬が少しだけ赤く染まっている。

エルヴィン「私はリヴァイに聞いたんだ。『就職していないのか?』って。そしたら『高校中退したような奴は、どこもまともに雇ってくれない。運よく採用されても、トラブル起こしてすぐクビになる。所持金も、残りわずかだ。あと一か月、これだけで生き延びられたら奇跡だな』と言って出した金は1000円札1枚だけだった」

アルミン「そんな極貧状態に追い込まれていたんですか…」

エルヴィン「世の中は厳しいよ。確かに高校を中退したような奴に対しては、風当りが厳しい。そんなもんだよ。世の中は」

エレン「…………」

エルヴィン「その当時のリヴァイは言ったよ。『こうなったらもう、生きる為にヤクザにでもなるか』ってね。私は慌てて止めたよ。『ヤクザなんて、やめておけ』って。そしたらあいつ、『だったら、他にどうすればいいんだ? あんた、他に生きる方法を知っているのか?』ってね。私は即答出来ない自分に気づいたよ。確かにヤクザなんてなるもんじゃないけど、だけど、それ以外の進路を提示して、彼が人間らしく生きられる方法を思いつかなかった。教職についているというのに、答えが何も思い浮かばない自分に気づいてね。自分に愕然としてしまったんだよ」

アルミン「いや、それはエルヴィン先生だけじゃないですよ。きっと、他の人だってそんな事を急に訊かれても、即答なんて出来ないですよ」

エルヴィン「アルミン。ありがとう。確かにその通りだと思うよ。でも当時の私は、その事がショックでね。所謂、綺麗事の中で生きていた自分に気づいて、凄くそんな自分が嫌に思えたんだ」

と言って、エルヴィン先生は続けた。

243: 2014/08/04(月) 04:07:27 ID:YSQTQJRw0
エルヴィン「でもその後すぐにリヴァイは『すまん。あんたに聞くような事じゃなかったな』と言って立ち去ろうとしてね。私はその瞬間、リヴァイが本当に氏地に赴く軍人のように思えて、思わず奴の手を握ってその足取りを止めてしまったんだ」

エレン「………」

エルヴィン「リヴァイは怪訝な顔をしていたよ。『子猫、引き取ってくれるのか?』って言ったけど、私は『いや、引き取るのは君自身だ』と何故か、即答してしまってね。リヴァイは『は?』って顔をしていたけど。もう、私も勢いで言ってしまったんだ。『子猫ごと、君を引き取ろう。うちに来い』って言って、殆ど無理やり、奴を家に連れ帰った。リヴァイはパニック状態に陥っていたよ。訳も分からず、拉致られたようなものだからね。でも私もその時、何故か『天啓』のような物が降りて来たのを感じてね。いや、正直、大人としてやってはいけない事なんだろうけど、とりあえず、子猫はうちのマンションで飼う事にしたし、リヴァイには無理やり飯を食わせた。あいつも腹は減っていたから、渋々食ってくれたけど。そこからだな。私は何とかリヴァイを口説き落として、教員用の自分のマンションでの同居生活をさせる事にしたんだ」

うおおおい。本当にこの先生、リヴァイ先生、拉致っていたんか!

「監禁」はしてねえけど。「拉致」はやっていたのか。いろいろ危ない先生だな。

エルヴィン「当時のリヴァイは大分、混乱していたよ。何でいきなり連れて来られたのか分からずにいたからね。だから最初は『俺は言っておくけど、男に抱かれる趣味はねえからな? 手出したら、頃すぞ』と言ってきてね。思わず、ドキッとした自分もいたけど、その当時はまだそこまで自分の気持ちに気づいていなくてね。一応『そういうのじゃないよ』とは言ったけど。最初は信じて貰えなかったね」

そりゃそうだな。オレでも同じ事思うな。

エルヴィン「私はとにかく、彼に合うと思われる適性を探したかった。だからまずは何かを彼にやらせてみる必要性があった。そして彼の事を調べていくうちに、彼は私が講談高校に着任する前年に講談高校を中退している事が分かった。すれ違っていたんだよ。その事を凄く憤る自分もいたけれど、でも、ゴミ捨て場でリヴァイを拾えた自分の幸運にも感謝した。私はとにかく掴んだチャンスを活かしたくて、まずは私の趣味のひとつであった、演劇に携わらせてみたんだ」

エレン「それがリヴァイ先生の初めての「裏方」だったんですね」

エルヴィン「そうだよ。当時の私は裏方のリヴァイを注意深く観察したよ。彼は体力もあったし、呑み込みも早かった。頭も悪くない。協調性は少し欠けるけど、でも、不器用だけど真面目で誠実だった。地味な作業も苦にならないようだし、根気強さも持っている。これだけの有能な人材なのに、何故トラブルばかり起こしてクビになるのか。最初は分からなかったけど、後でそれが分かったよ。リヴァイは「魅力的過ぎる」からだって」

エレン「え?」

エルヴィン「所謂、痴情の縺れによる人間関係の方のトラブルが起きるんだよ。好かれ過ぎて、劇団員の女性メンバーがどんどんリヴァイに堕ちていった。リヴァイの方から手を出している訳じゃないのに。なんだろうね? そういうフェロモンでも出ているのかな。とにかく、リヴァイはいろいろ面倒事に巻き込まれる気質があるようで、その度に、男と喧嘩したり、チーフとも口論したり。その時のリヴァイは一か月程度で『もう辞める!』と根をあげちゃったけど。でも、それで大体の原因は分かったから、後はそれを改善すれば何とかなると思ったんだが……」

エルヴィン先生が紅茶を飲んで一息ついた。

エルヴィン「よく考えたらそんなの、改善の仕様がないって気が付いたよ。だって『人に好かれ過ぎる』なんて、どうやって改善するんだ? って思ってね。リヴァイの場合は特別、イケメンって顔じゃないのに、そんな状態になるって事は、やっぱりそれはもう、あいつの「気質」がそうさせているとしか思えなかった。だから、私も当時は頭を悩ませたよ。いっそアイドルでもやらせた方がいいのかなって思ったけど。そんなのをやらせたら、ストーカー被害に遭うのは目に見えていたし、危ないからやらせられないよね」

エレン「まーその通りですよねー」

教師になってもその吸引力は健在だ。芸能人だったらもっと酷い事になっていただろうな。

244: 2014/08/04(月) 04:44:10 ID:YSQTQJRw0
エルヴィン「うん。だから当時の私は本当に頭を悩ませた。リヴァイ自身もいつまでこの生活が続くんだろう? って顔をしていてね。怪訝な表情のまま私と一緒に生活していたから、早いところ、彼の適性を探してやりたかった。そんな時だ。彼が演劇ホールの中にいた、迷子の子供を肩車して、親を一緒に探してやってる風景に出くわしてね。見ず知らずの子供の為に肩車までしてやって、一緒に探してやっていた。その時は、幸いすぐ親御さんが見つかったけど。その時、私は聞いたんだ。『何故、そんな面倒な事をした? 迷子センターにさっさと連れて行けばいいだろう?』って。そしたら、あいつ、なんて言ったと思う?」

エレン「想像がつかないです」

エルヴィン「私もそうだった。そしたら『肩車すれば、見つけられるかなって思った。親も探している筈だし。迷子になった地点からあまり動かない方が、見つかる確率はかえって高いんだよ。こういう時はちょっとじっとして、様子を見る方がいい。それでも見つからない時は、さすがに迷子センターに預けるけどな。まあ、俺もよく迷子にはなるし、子供の気持ちも分かるから一緒にいてやった方がいいかなって思ったんだよ。余計なお世話かもしれんが』って、照れくさそうに言っていたんだよ」

アルミン「へー」

なるほどな。子供が好きって言うのは、そこで分かったのか。

エルヴィン「その時のリヴァイを見て私は二度目の『天啓』を受けたような心地になってね。リヴァイはきっと、そういう仕事が向いていると、当時の私は思い込んでしまってね。もう、これはやらせるしかない。ってなってしまって。リヴァイを酒に酔わせて、契約書書かせて、大検受けさせて、無理やり大学に行かせる事にしたんだよ」

この辺の強引なところは本当、怖いよなあ。エルヴィン先生。

思い込んだら一途なのかな。リヴァイ先生、パニック状態だったろうなあ。

エルヴィン「リヴァイは『ふざけるな!!! よりにもよって何故、教職になんかつかないといけないんだ!!!』って最初は抵抗していたけどね。でも私も引かなかった。リヴァイにはきっと、教師という職業が向いていると思った。私なんかより、他人の気持ちを慮る気質があるし、何より人に好かれる気質を持っている。体力もあるし、真面目な性格だ。体育教師であればきっとやれると思った。だから無理やりとある体育大学に行かせる事にしてね。その資金は全て私が出す事にしたんだよ」

アルミン「もうリヴァイ先生自身もベルトコンベヤーに乗せられちゃったんですね」

エルヴィン「まあね。リヴァイの事だから、一度契約書を書かせてしまえば、それを反故にはしないだろうと思った。渋々だけど、大検を受けて一発合格して、大学の寮に住まわせて、その後は離れて暮らしたけど。1~2年程度かな。大学に入る前まではリヴァイとは一緒に生活していたんだよ」

エレン「でも、大学卒業してから、すぐには教師にならなかったんですね」

エルヴィン「ああ。大学を卒業したら、以前よりは働ける窓口も増えたようだから、初めは土方仕事や宅配、あとトラックの運転手とかかな? たまに劇団のアルバイトもしていたようだよ。裏方のね。いろんな職業を掛け持ちして、大学資金に利子までつけて、金を返そうとしてきたけど、私は受け取らなかった。それよりも『さっさと諦めて教師になってよ』と口説いてね。私はリヴァイと一緒に仕事をしたくて堪らなかった。その頃かな。ようやくこの気持ちが、ちょっと人より異常だって気づいて、自分でも困ったんだけど」

気づくの遅いなー。エルヴィン先生もあんまり人の事言えねえぞ。

245: 2014/08/04(月) 05:20:25 ID:YSQTQJRw0
エルヴィン「でも、リヴァイはそっちの気は全くないし、むしろ気持ち悪がっているのを知っていたから、さすがにそれを自分から言い出す勇気はなくてね。ちょっと切ない気持ちにもなったけれど、リヴァイもようやく重い腰を上げて『分かった。そこまで言うなら教師を試しにやってみるが、無理だと思ったらいつでも辞めてやるからな』と言って、ようやく私と同じ講談高校に着任したんだ。それが偶然、ハンジの着任した年と重なってね。まあ、その後の事は、もう既に知っているだろうけど。2人があんな感じになっちゃった訳で。私は「早いところくっつかないかな」と思っていて。息子でも娘でもいいから、貰えないかなって、虎視眈々と企んでいた訳だよ」

すげえ人生設計だよな。エルヴィン先生、いろいろすげえ。

アルミン「じゃあもし万が一、リヴァイ先生がエルヴィン先生の気持ちに気づいて、それに応えちゃっていたら、こっちの二人がくっついていた可能性もあった訳ですね」

エルヴィン「リヴァイが男もいける口だったら、の話だよ。もしもの可能性を追っても仕方がない」

エレン「でも、エルヴィン先生、一度も告白していないんですよね? もし告白していたら、リヴァイ先生の気持ちが動いていた可能性あったかもしれないですよね」

エルヴィン「うーん。殴られるのがオチじゃない? 縁切りされる方が怖いよ。そんな事をされたら、私は生きていく意味を無くしてしまう」

と、さらりと言うあたり、エルヴィン先生も問題ある先生だなあと思った。

エルヴィン先生、冷たいようで情熱家な部分もあるんだ。

一途なんだよな。それでいて、目的の為には自分の気持ちも簡単に犠牲に出来るんだ。

エレン「そうですか……でも、リヴァイ先生は『専業主夫』になるのが夢のひとつだって言っていたから、パートナーになる人間って、仕事を持っている方の方が良かった訳ですよね」

エルヴィン「ははは……あれは冗談じゃない? リヴァイなりの」

エレン「んーまあ、そうかもしれませんが。でも、その、エルヴィン先生が進路指導室に来る前に、その、リヴァイ先生自身が『目を逸らしていた事を突き付けるな。俺も薄々、そんな気配は感じる事があったんだが、見ないようにしていたんだぞ』って、言っていたんで、なんとなく、気づいてはいたようでしたよ?」

と、オレが言ってやった瞬間、エルヴィン先生の顔が固まってしまった。

アルミン「え? リヴァイ先生、そんな事を言ってたの?」

エレン「ああ。ミカサと進路指導室に行った時、リヴァイ先生とハンジ先生が今後について話し合っていた時だな。放課後、2人がいろいろ話しているところ、オレ達、聞いちまって。その時に…」

エルヴィン「え……じゃあ、リヴァイ、薄々、私が例の告白をする前から、気づいていたって事?」

エレン「だと思いますよ? きっと。あの感じだと、ずっと前から薄々気づいていて、あえて目を逸らしていただけだったんじゃ……」

エルヴィン「………………そうか」

エルヴィン先生が両目を瞑ってしまった。堪えるように。

エルヴィン「ずっと隠していたつもりだったが、薄々気づいていたのか。リヴァイの奴は……」

エレン「いや、無理でしょう。どう考えても。エルヴィン先生の行動自体が、それを気づかせるに十分な事をやってますからね」

エルヴィン「うううーん。ねえ、もしかして、だけど。押したら、押し倒せた可能性、あったのかな? 私は」

エレン「うううーん。どうなんでしょうかね。それこそ、本人に聞かないと分からないですけど。ただ、何もしなかったのは、ちょっと勿体なかったような気もします」

アルミン「エレン、応援しちゃうの?!」

エレン「いや、そうじゃねえけど! でも、エルヴィン先生もなんか可哀想だなってつい、思っちまってな」

ここにも隠れた恋があった訳だろ? いや、同性同士だけど。

オレはそっちの趣味は分からんが、だからと言って、恋心そのものは否定したくねえ。

246: 2014/08/04(月) 05:38:24 ID:YSQTQJRw0
なんていうか、エルヴィン先生もエルヴィン先生で問題だらけだろ?!

いや、オレももし、リヴァイ先生と同じ立場だったら、「ごめんなさい」しかしねえけど!

エルヴィン先生、頭を抱えちゃって、

エルヴィン「うーん……やっぱり、1回くらい拝み倒してやらせて貰った方が良かったのかな」

と、ちょっとだけ赤面して誤魔化す様に舌を出した。

エルヴィン「いや、でも私も決めたんだ。私はあの2人を見守るってね。2人の幸せを壊してまで自分のエゴを通せないよ。そもそも、そういう道を選ぶわけにはいかないし。仕方がない事だ。リヴァイが幸せになれる方を、私は選んだんだよ」

と、言った後、驚く声が、聞こえた。

リヴァイ「お前、馬鹿じゃねえのか」

エルヴィン「!!!!」

ハンジ「ごめーん、ちょっと出るに出れなくなってね。てへ♪」

エルヴィン「!!!!?????」

奥のソファから人影が出て来た。ソファに隠れていたようだ。

2回目かよ!!! え? でも、オレ達が入った時は鍵、かかってたんだけどな。

リヴァイ「合鍵。進路指導室、鍵は2つあるだろ? ちょっとハンジとここでこっそりイチャイチャさせて貰っていたんだが、まさかお前らが後から入ってくるとは思わなくてな」

ハンジ「エルヴィン~この間のお返しだよ~私を騙したお返しだよ~うふふふ~♪」

エルヴィン「…………やられた」

エルヴィン先生が顔を覆っている。珍しい。エルヴィン先生が出し抜かれるなんて。

247: 2014/08/04(月) 06:06:47 ID:E7j3qB6M0
リヴァイ「やれやれ。何を考えているのか良く分からん奴だと思っていたが……まさかそこまで考えていたとは」

エルヴィン「………………」

エルヴィン先生が珍しく動揺しているのが分かる。顔が少し赤い。

やべえ。なんでこう、オレ、こういう場面に遭遇してばっかりいるんだろ?

まあ面白いからいいけどな。うん。

リヴァイ「エルヴィンがそこまで俺の事を考えて行動していたとは思っていなかった。予想以上に驚いたぞ」

エルヴィン「…………リヴァイには言うつもりなかったんだがな」

リヴァイ「仕方がないだろ。もう聞いちまったんだ。ただまあ、エルヴィンのしてくれた事は、今でも感謝しているし、それに対する『借り』もまだ俺は返していないからな」

エルヴィン「………うん」

エルヴィン先生、リヴァイ先生の方を見れないでいるようだ。

これ、やっぱり本気だったんだな。おどけて誤魔化していただけだったんだ。

リヴァイ「さすがに一発やらせてくれっていう頼みはきけないが、そこまで言うなら、仕方がねえな。エルヴィンの望みをひとつくらいは叶えてやらんといかんよな」

エルヴィン「え?」

リヴァイ「娘が生まれる保証はないが、善処はしてやろう。ただし、娘が嫌がった場合は許さんぞ。実力でちゃんと、落として見せろよ。口リコンの名にかけて」

エルヴィン「え? 本当に、いいのか?」

リヴァイ「あくまで『産まれたら』の話だがな。先の事は分からん」

エルヴィン「じゃあ、本当に…?」

リヴァイ「くどい。俺が約束を破った事、あったか?」

その瞬間、エルヴィン先生が本当に嬉しそうに、顔をあげた。

エルヴィン「ははは……待ち望んだ甲斐があった。本当に。ありがとう。リヴァイ」

リヴァイ「ふん……(照れる)」

ハンジ「あーもう、リヴァイ可愛いー! 顔赤いよ?」

リヴァイ「うるさい。いちいち指摘するんじゃない。俺もどうしたらいいか分からん」

ハンジ「照れちゃって♪ でも危なかったねー。私、もしかしたらエルヴィンにリヴァイを先に取られていた可能性、あったって事だよね?」

エルヴィン「いや、それはない……」

ハンジ「いやいやいや、分かんないよ? 人生なんて、転がった先にどうなるかなんて! だってリヴァイのこの反応、みてよ! 満更でもない顔してるじゃないの!」

リヴァイ「ハンジ! お前は俺の嫁になるんだろうが! ふざけた事を言うんじゃねえ!」

ハンジ「いや、それは分かってるけどさ! でも、なんか私もいろいろ切ないんだよ? エルヴィンにはすっごくお世話になったしさ。エルヴィンにもちゃんと幸せになって欲しいもの!」

リヴァイ「それは俺も同じだが……だからと言って、俺がその……応える訳にはいかんだろうが」

ハンジ「あーうん。でもなんか、エルヴィンならしょうがないかなーって思う自分もいるんだよねー」

リヴァイ「おい、冗談でもそんな事を言うな。エルヴィンが本気にしたらどうする気だ」

248: 2014/08/04(月) 06:28:46 ID:YSQTQJRw0
ハンジ「いっそ、新居に3人で暮らしちゃう? そしたら良くない? ダメかな?」

リヴァイ「アホか!!! エルヴィンが居た堪れないだろうが!!」

エルヴィン「いや、私は、その……2人さえ良ければ、同居も構わないとは思っているが」

リヴァイ「!!!」

ハンジ「じゃあいいじゃん! 一緒に住んじゃおうよ。んで、子育ても手伝って貰えばいいじゃない」

リヴァイ(頭痛くなってきた……)

あ、今、言葉に出してないけど「頭痛」している顔だな。

ハンジ「どうしてもだめかな? 私、エルヴィンとも一緒に住んでもいいと思ってるよ。だって、エルヴィンはもう、リヴァイの「父親代わり」みたいなもんじゃない。私にとっても、その感覚に近いんだよ?」

リヴァイ「いや、確かにやってもらった事は「父親」みたいな事だが、エルヴィン自身がその……俺にそういう気持ちがあるなら、それは父親とは呼ばないだろうが」

ハンジ「そうだけどさー。うーん。リヴァイは本当に、そういう同性愛ってダメな人なの?」

リヴァイ「……………………今までのアプローチしてきた同性愛の奴らは、体目当ての奴らばかりだったからな。エルヴィンのような真剣な想いを聞くのは、俺だって初めてなんだよ」

と、リヴァイ先生自身、少し混乱しているようだった。

リヴァイ「と、いうより、エルヴィンに始まった事じゃないが、どうしてこう、俺は皆に愛されているんだか良く分からん。ペトラも、ニファも、オルオもそうだ。俺はそんなに大した事はやってないんだが、真剣な想いを受ける度に、どうしていいのか分からなくなるんだぞ」

あ、その3名の気持ちも薄々気づいていたんだ。リヴァイ先生。

リヴァイ「そういう意味じゃ、俺を嫌ってくれるミカサの方が余程、プレッシャーがない。あいつは遠慮なくこっちをぶった切ってくれるから、一緒に居て本当に楽だった。たまに癒される事すらあったぞ。もっとお前ら、俺を嫌ってもいいんだぞ!?」

意味不明な事を言い出した。リヴァイ先生、大丈夫か?!

249: 2014/08/04(月) 06:54:13 ID:YSQTQJRw0
ハンジ「そんな事言われてもー。リヴァイがモテキャラなのがいけないんじゃないの」

リヴァイ「俺は顔だって普通だ。むしろ不細工な方かもしれんと思っている。イケメンキャラならともかく、なんでこんな事態になるのか毎回訳が分からん!」

ハンジ「中身がイケメンキャラやってるからでしょうが。あんたのたらしスキルって、相当なものだよー?」

リヴァイ「人をホストみたいな呼び方するな。俺は水商売の男じゃねえよ」

ハンジ「いや、そっちでやっていく才能もきっとあるよ? リヴァイは」

リヴァイ「俺は教師にならなかったら、美容師になりたかったんだが………なんかいつの間にか教師にうっかりなっちまったけど」

ハンジ「あ、だから髪洗うの上手いんだねー。ヘアメイクもその名残り?」

リヴァイ「髪を切るのも好きだが。悪いか」

ハンジ「いやいや、別にいいよ? リヴァイらしくて」

リヴァイ「とにかく、そういう事だから。俺は、その……そんな風に好かれる価値なんて、自分にはないと思っている。だから、どうしたらいいのか……」

エレン「あの、リヴァイ先生。ちょっとこれ、見て貰えませんか?」

さすがにちょっとイラッとしてきたので、オレは以前撮って見せた写メを本人に見せた。

あの面白い顔だ。反応がすげえ楽しい奴。

すると、リヴァイ先生自身もうっかり「ぶは!」と吹いてしまって、

リヴァイ「酷い顔してやがるな……こんな顔していたのか。あの時は」

エレン「ええ。酷い顔でした」

リヴァイ「そうか……こんな顔されたら、確かに写真撮りたくなる気持ちも分からんでもないが」

エレン「ですよね? 分かって貰えました?」

リヴァイ「ああ。そうだな。これも、俺の一部なんだな。むしろこっちの間抜けな俺の方が真実に近いような気がするぞ」

エレン「だったら、これを公表してみませんか?」

エルヴィン「! エレン、その件は……」

エレン「エルヴィン先生、気持ちは分かりますが、最終的な判断を下すのはリヴァイ先生自身です」

エルヴィン「……」

250: 2014/08/04(月) 07:04:14 ID:YSQTQJRw0
エレン「リヴァイ先生は、常々言ってますよね。『俺はそんなに綺麗じゃない』とか、今も『好かれる価値はない』とか、たまにイラッとするくらい自虐的になるんで、いっそ、もう、全部出しちゃいましょうよ」

リヴァイ「全部、出す…?」

エレン「ええ。その上で、皆が慕ってくれるならもうそれは、真実の「愛」だとは思いませんか?」

リヴァイ「…………」

リヴァイ先生が考え込んでいる。意味が通じたかな。

リヴァイ「それは、ファンクラブの件も含めてって事だよな?」

エレン「そうです。もちろん、そのせいで逆にリヴァイ先生のファンが増える可能性もありますが、少なくとも、限りなく真実に近い「リヴァイ先生」を出した上で寄ってくる場合は、先生の危惧する「美化され過ぎた自分」が愛されている訳ではないと思うんですけど。ダメですかね?」

リヴァイ「…………いや」

リヴァイ先生はすぐに納得した様だ。

リヴァイ「その手があったな。何も隠す必要性なんて何もない。むしろジャンジャン出していい」

エルヴィン「リヴァイ、でも、それは……危険だよ」

リヴァイ「何故だ。今のこの「気持ち悪い認識」の方が余程変な状態だぞ。皆、俺を何だと思ってやがるんだ」

エルヴィン「でも、リヴァイ……」

リヴァイ「俺はただの元ヤンの体育教師だ。もうすぐ39歳にもなるおっさん捕まえて、皆、メルヘンチックな幻想を抱くな。愛される側のプレッシャーも少しは考えろ」

エルヴィン「う、ううう……(ぐうの音も出ない)」

251: 2014/08/04(月) 07:17:14 ID:E7j3qB6M0
リヴァイ「エレン、良くやった。あの時は『何勝手に撮ってやがる』と思ったが、ちゃんと理由があったんだな」

エレン「まー衝動的に撮りたくなったのは事実ですけどね。利用出来るかどうかは、リヴァイ先生次第でしたけど」

リヴァイ「分かった。ファンクラブの件も含めて、少し案を煮詰めよう。エルヴィン。その件も含めて、今後の事を少し話したい。この後の時間をくれ」

エルヴィン「はー……(頭抱えている)」

やっちまったって顔しているけど。オレは知らない。決めたのはリヴァイ先生自身だしな。

エルヴィン「どーなっても知らないよ? 私は一応、1度止めたからね?」

リヴァイ「ファンが増えようが減ろうが構わん。とにかくアレだ。皆、俺に対してキャッキャし過ぎるんじゃねえって話だ。そういう意味じゃ、ハンジくらいだぞ。そういう欲目がないのは」

ハンジ「まあねー。こいつ、本当時々、頃したろかってくらいムカつくしねー」

リヴァイ「お互い様だろうが! お前もちょっと知恵を貸せ!」

ハンジ「はいはーい」

という訳でオレとアルミンは進路指導室を追い出された。

後は野となれ山となれって感じだな。

アルミン「えーっと、大体、揃ってきたかなー」

と、ずっとメモに集中していたアルミンがノートを閉じた。

エレン「書けそうか?」

アルミン「うん。大丈夫だと思うよ。後は……出来れば高校時代のリヴァイ先生の情報がもう少し欲しいかな」

エレン「あーそんな古い情報、他に誰か……」

1人、いた。ハンネスさんだ。

エレン「ハンネスさんにも取材するか。確か、元ヤン時代のリヴァイ先生を一番知ってる筈だぜ」

アルミン「そうなんだ。よし、次はそっちに行ってみよー」

と言いながら、移動するオレ達だった。

252: 2014/08/04(月) 07:25:47 ID:YSQTQJRw0
という訳で、かなーりエルリ入っちゃってすみません。
最初に表記するべきか迷ったんですが、ネタバレっぽくなるのも嫌だし、
と思い、あえてカプ表記の中には予め入れませんでした。

ふざけているように見えて、
ちゃんとエルヴィン先生、リヴァイ先生の事、好きだったんですよ。って事で。

エレン「この長い髪を切る頃には」【その18】



引用: エレン「この長い髪を切る頃には」2