6: 2013/06/22(土) 23:13:27.03 ID:Y0maCKOCo
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ポンコツ、と言っては悪いがやたらとドジを踏む少女が身近にいた俺としては、いつかこんな日が来る事を心のどこかで予測していた。

「本当……運が悪いのか良いのか……」

「うう……」

マホが階段から転げ落ちて足首を捻挫したのは昨日の事だ。

部活が終わってすぐに、見たい番組があるとか言って部室を飛び出した数秒後、扉の外から聞こえてきた悲鳴と物音で俺達は何が起こったのかを一瞬で悟ったのだった。

それにしても

「ランチの女王の再放送なんてまたいつかやるだろうが!」

「ちょうど森田君が出る回だったんですよー!」

「録画しとけよ!」

「自慢じゃないですが、マホ、説明書は読まない派です!」

「……はぁ」

怪我をした当人が能天気この上ないのが腹立たしい。
咲-Saki- 25巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
7: 2013/06/22(土) 23:14:17.91 ID:Y0maCKOCo
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「……和も優希も、咲だって心配してたんだからな。」

「……あう……すいませんでした」

叱り過ぎだろうか。

花が萎れるように俯いてしまうマホに少しだけ心が痛む。だが、ここでちゃんと注意しなければマホの為にはならない


「……まあ、なんだ、痕が残るような怪我じゃなくて良かったな」

「はい?」

「はいじゃねぇよ……お前だって女の子だろ?」

「……」

しばらく俺の顔をまじまじと見つめた後、マホはなぜかくすりと笑った。

「マホも女の子として見てもらえてたんですね……」

「当たり前だろ。何言ってんだ」

「だって優希先輩が『京太郎は"ぷっくり"以下は女子とみなしてないじぇ』って……」

「……あいつから麻雀以外の事を学ばんでよろしい」

優希め。今度泣かす、麻雀以外で。

8: 2013/06/22(土) 23:14:51.46 ID:Y0maCKOCo
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俺の内部のどす黒い――されど情けない思いを知ってか知らずかマホは俺に笑いかける。

「須賀先輩、早く部活行きましょう!」

「行くのは良いけど……階段はどうするんだよ」

「あぅ!そうでした……」

本当に、手間がかかる後輩を持ったもんだ。

「ほれ……おぶされよ」

「え……」

「その足じゃ階段上がるのも大変だろ?」

「……はい!」

背中に広がるぬくもりと羽のように軽いが確かに感じる一人分の重さ。

仕方なくやってる事なんだと自分に言い聞かせても頬が赤らむのは止められそうにない。

だけど、お互い様って奴だろう。

俺の首にまわされた彼女の両腕からも確かな力と熱が伝わってきているのだから。

引用: 京太郎「断片集」