144: 2013/07/15(月) 03:17:44.24 ID:2qe43UK5o
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俺が彼女を"女"として見た事が無いと言えば、嘘になる。
プライドの表れのようにも見える露出の多い改造制服。
短くとも癖っ毛のせいか、女性的な柔らかい印象のある髪型。
次いで個人的に挙げるなら――時折、無防備にちらつくヘソ周り。
このように、二条泉という少女の魅力的な点は思いつくまま適当に挙げるだけでも、3、4個はすぐに挙げられる。

ならば、なぜ俺が普段、泉に対して"そういう気分"にならないのかというと、同学年の気安さというか、泉と接している時の俺の気分が男友達とのそれに非常に近しいからである。
要するに俺は、泉との関係を男友達との関係の延長線上に据えていた。
決して、彼女の首から下の局所的特異性性差別的部位が同世代のそれと貧しいからとか、そんな下世話な理由では無い。たぶん。きっと。おそらく。

だが、そんな俺でも今の泉にはかなり"きている"のは否定できない。
普段のやたらと自信に満ち溢れた瞳は、嘘のようにしおらしく伏せられ、視線だけが捨てられた子犬のように俺と泉自身の足元をうろうろしている。
緊張の為か、ほの赤く染まった頬は泉が何かを喋ろうと口を開けたり閉じたりする度にせわしなくゆれている。
放課後の誰もいない教室という舞台も加わり、緊張した面持ちの泉に呼応するように俺の心臓もまた鼓動を速めていた。

――やがて、決心がついたのか、泉が俺と目を合わせる。

「……京太郎……」

その瞳から伝わる熱は俺の内側にまで入り込んできて

「……私と……」

次に聞こえてくるであろう言葉に対する期待感を否が応にでも高めた。


「……付き合ってくれへん?」









「え、やだ」

「は!?」
咲-Saki- 27巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
145: 2013/07/15(月) 03:18:48.43 ID:2qe43UK5o
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「待って待って待って……おかしいやん……おかしいやん、今の」

「え、やだ」

「二回も言わなくてええわ!」

なんということでしょう、匠の一言ですっかり泉の化けの皮が剥がれてしまいました。
このひどすぎる劇的ビフォーアフター。
数分前にこいつにちょっとドキドキしていた俺はなんだったんだろうか。

数十秒前とはうってかわって興奮する泉を眺めながら、俺は最初からあった違和感が正しい事を確信する。
やはり何らかの意図があったに違いない
いくら気安さを感じているからといって、俺には誰かの真剣な告白を茶化すような趣味はない。

まだるっこしいのも面倒なので、単刀直入に俺は泉に問う。

「そもそも、なんで唐突に告白なんかしてくるんだよ」

「えーっと……」

核心を突かれたのか、泉の目が泳ぐ。それは、さっきのような気恥ずかしさをこらえるような仕草ではなく、自らの醜態を隠そうとするようなものだった。
怪しい。滅茶苦茶怪しい。
これは船久保先輩のタブレットをポテチ食った直後の手でイジったのを誤魔化した時と同じ感じだ。

「ほ、ほら!女心と秋の空って言うやんか!昨日、突然京太郎への恋心を自覚したんや」

「……自分で言うもんじゃねぇだろそれ。あと昨日って……」

昨日の話題:カップヌードルのシーフードとカレーのどちらが雑炊に適しているか?

「…………」

「…………」

「……あの話がきっかけでな」

「苦しすぎんだろうが!」

146: 2013/07/15(月) 03:19:31.29 ID:2qe43UK5o
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「どうせあれだろ?知り合いに『麻雀部ッテ大変ソーダネー?遊ブ時間モナサソウダシ彼氏ナンテ無理ッショー』とか煽られたんだろ?」

正直、この言葉は一種のお決まりのギャグのつもりだった。
いつものように俺がボケ、いつものように泉がそれにツッコむという、いつもの光景。いつもの俺達。

だから、無言の肯定と受け取れるほどに、俺の言葉を受けた泉が顔を真っ赤にして全身を震わせた時、俺は――


笑った。


「笑うなや!そこは『仕方ないなぁ……じゃあ俺が彼氏役やってやんよ!』とか引き受ける所やろ!」

「……泉、お前高校何年生?」

「……は?あんたと一緒の高一やん」


ものすごく笑った。


「うがー!あんたに話した私がアホやったわ!

「まぁまぁ落ちつけって!…………クク」

「あんたなぁ…………もし、清水谷先輩に同じこと言われたら?」

「謹んでお受けするに決まってんだろーが。ていうか"役"じゃなくて本物を目指すね」

「本ッ当に腹立つなぁ!もう!」

147: 2013/07/15(月) 03:20:24.35 ID:2qe43UK5o
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これ以上は流石に可哀想なので止めておく。
演技から羞恥へ、羞恥から怒りへと、顔面温暖化三段活用を終えた泉が落ち着くのを待ってから話しかける。

「正直に話した方が良いんじゃねぇのか?相手の子だって他意があって言った訳じゃ無いだろ」

「むぅ……それはわかっとる……でも」

「でも?」

「……なんか悔しいやんか」

ぽつりと零れ落ちた泉の言葉。
その言葉に込められた想いは何なのだろう?
麻雀に打ち込む自分の姿を人にとやかく言われたくないからなのか、あるいは、単なる女の意地か。

だが、ふと俺は気がつく。
これが泉の強さの元なのかもしれない。
どれだけ些末な事にも倦まず弛まず妥協せず、自分の力を信じ、常に理想の自分へと近づこうとする意志。
他人の目には、生意気、負けず嫌い、鼻持ちならないと映るのかもしれない。
でも、彼女は、俺の見た二条泉は――



やっぱりおかしいから笑っておこう

「もうええわ!ちゃんと正直に話します!」

「ははは、悪い悪い……あ、そういえばさ」

「……何や?」

148: 2013/07/15(月) 03:21:14.12 ID:2qe43UK5o
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「お前、演技とか意外とうまいのな」

「……はぁ?」

「さっきの告白だよ。あまりにも突然過ぎて怪しかったからあんな返事したけど、正直かなりドキドキしたんだぜ」

「ああ、あれなぁ……あれは本番の――」

「本番?」









人が爆発する瞬間を、俺は確かに見た。

「―――――!うっさいぼけ!帰る!」


今日一番の赤い顔をしながら教室を飛び出る彼女の背中を俺はぼけっと見つめる。

――本番、か

泉が置いていった鞄を持つと、俺も教室を出る。
泉が途中で鞄が無い事に気づいて戻ってきた時に渡そう。

――いや、走って渡しに行く方が良いな。

息が上がった事にすれば、俺の顔も赤くなってる事に言い訳がつくだろうから

149: 2013/07/15(月) 03:25:16.58 ID:2qe43UK5o
書くネタはたくさん思いつくのですが、文章に出力しようとすると齟齬が生じる日々
莉子ちゃん、モモと書き上げてもしっくりこなくてボツったのが多いですね
あと、最新号のはやりんが想像以上に想像以上でドッキリの草稿を改訂してました

のよりんの投下は気長にお待ちください

それにしても、このプロきつい…… フ........〉

引用: 京太郎「断片集」