1: 2011/12/29(木) 20:19:14.13 ID:YpGz5mBX0
しんしんと降り積もる雪を眺めながら、私は退屈しのぎにシャーペンを手の
中でくるくるとまわしていた。
落ちては拾い、落ちては拾い――を何度も繰り返していると。

ビンポーン、と少し錆び付いたチャイムが鳴る。

つい勢いよく立ち上がってしまったのは、突然すぎて驚いただけだ。
べつに待っていたわけなんかじゃなくって。

部屋を飛び出して、玄関の鍵を開けた。
そこには案の定、あかりちゃんが立っていて、あかりちゃんは「待ったかなぁ?」

ちなつ「……待ったよ」

べつにほんとは待っていたわけなんかじゃなくって。
あかりちゃんを見ると、少し困らせてやりたくなるのだ。
あかりちゃんは私の答えを聞くと、困るどころか「えへへ」と笑ったけれど。
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3: 2011/12/29(木) 20:26:13.51 ID:YpGz5mBX0
あかり「雪がひどかったから、急いで来れなかったの」

ちなつ「寒かった?」

うん、すごく。
そう言いながら、あかりちゃんは雪のいっぱいついた傘を震わせて中へ
入ってきた。
戸を閉めると、外の天気のせいもあって随分と薄暗くなる。

ちなつ「雨漏りしそうだよね」

うちの家、古いからさあ。
少し、言い訳めいたこと。あかりちゃんの家はいつも明るくて綺麗だから。

4: 2011/12/29(木) 20:31:17.13 ID:YpGz5mBX0
けれどあかりちゃんは、「ちなつちゃんのお家ってすごく落ち着くよ」と言って
くれるから嫌いになろうにも嫌いになれない。
寒いのはしかたないとして、せめてもうちょっといい感じ(きらきらなお姫様が出てくる感じの!)の家に
住みたかったなあと思うのは私のわがままだろうし。

あかり「雪、止みそうにないねぇ」

うん、と頷いて家に上がる。
スリッパを履かなきゃ冷たいから、あかりちゃん用に買った新しいスリッパを
まだ靴を脱いでる途中のあかりちゃんの前に置いた。

ちなつ「はい、どうぞ」

あかり「えっ、新しいの!?」

ちなつ「うん、夏用のはさすがに寒いかなあって思って」

8: 2011/12/29(木) 20:40:39.29 ID:YpGz5mBX0
あかり「そっかぁ、ありがとう」

にこにこと本当に嬉しそうに言うから。
あかりちゃんのために買ったわけじゃないけどね、と意地悪を言う気もなくなって
しまった。

あかりちゃんはほんとに素直なんだから。

ちなつ「恥ずかしいでしょ……」

あかり「えっ、どういうこと!?」

なんでもない、と言いながら自分の部屋にあかりちゃんを招く。
あかりちゃんは「ちなつちゃんのお部屋、久し振り」と言って部屋に入ってきた。
パタン、と襖を閉めると私たち二人だけの空間の出来上がり。

9: 2011/12/29(木) 20:46:18.22 ID:YpGz5mBX0
あかり「さっきのスリッパ、もう少し履きたかったなぁ」

私の部屋は畳だから、脱いでしまったスリッパのことを言っているのだろう。
確かにあかりちゃんのスリッパは、もふもふしていて気持ちが良さそうだったけど。
「じゃあ私を触る?」
そう言うと、コートを脱ぎかけていたあかりちゃんは「えっ」と驚いたように
飛び上がった。

ちなつ「私も気持ちいいと思うけどなあ」

あかり「い、い、いいです!」

ぶるぶると首を振るあかりちゃんに。
私はそっかと気の無い返事をしておきながら、そっとあかりちゃんに近付いた。

12: 2011/12/29(木) 20:58:11.76 ID:YpGz5mBX0
ちなつ「じゃあ私が触っていい?」

あかり「……うっ」

そのつもりで来たんでしょ。
そう言うまでもなく、今日のあかりちゃんはなんの抵抗もなく私の手を
受け入れてくれた。

よっぽど寒かったんだろう、あかりちゃんの頬は凍りみたいに冷たくて。
「ちなつちゃんの手、あったかい」というあかりちゃんの声に、不覚にも
ドキリとしてしまった。

14: 2011/12/29(木) 21:04:12.52 ID:YpGz5mBX0
ちなつ「そりゃ、ずっとここにいたから……」

あかり「あかりのこと、待ってたんだよね?」

私を見上げながらそう言ってくるあかりちゃんの目はいつになく真剣だから、
逸らしたくても逸らせない。
こんなふうにはっきりあかりちゃんを前にして認めるのは恥ずかしくて少し
迷ったものの、こくりと頷くとあかりちゃんは「じゃあ、いいよ」

あかり「いっぱい待たせちゃった分、いつもよりいっぱい、いいよ」

17: 2011/12/29(木) 21:15:04.89 ID:YpGz5mBX0
練習しなきゃいけないもんね。

あかりちゃんはそう言って。
どうしてか私の手を掴んでぐいっと引き寄せ、重ねてきた。

あかりちゃんの唇。
私のそれ。
あかりちゃんの全部が冷たいのに、そこだけは妙に温かかった。

お互い微妙な態勢のままだから、私があかりちゃんを押し倒すみたいに畳に
倒れこんでしまう。

18: 2011/12/29(木) 21:24:27.28 ID:qu1Sno5g0
おしまい

引用: ちなつ「大事件は」あかり「起きません!」