1: 2015/12/02(水) 01:13:20 ID:sDSK9/Q.0

遠く、黒く、暗い。
夜の空に数え切れない光がある。



見上げれば、澄んだ空気がうつしだす銀河が視界を覆う。

直下には、打ち寄せる波と潮風が響く砂浜があった。

周囲に動くものがあるとすれば、揺れる木々や葉、そして白波。



辺りに人の気配は見当たらない。

けれど無人ではない、砂浜には影が二つ。
ふらいんぐうぃっち(14) (週刊少年マガジンコミックス)
2: 2015/12/02(水) 01:14:12 ID:sDSK9/Q.0

それらは身を寄せ合い、横たわる影にもうひとつの影が覆いかぶさるシルエット。
暗がりの中、銀河の明かりに照らされて、雫のついた髪はまるで銀糸のよう。


そこで何か。

そうだ、何か『自分』は会話をした。



「     はや   く」



そしてそこに、光を見た。


濡れた身体、いつしか繋いだ手、震える口は何かを告げている。


「おき    よ   ってば」



なんといったのか。

3: 2015/12/02(水) 01:15:47 ID:sDSK9/Q.0

 「 おき    」


おき。




 「起きろーーー!!!!」



そう、起きろと――――。


その言葉に吸い込まれるように、どこかぼんやりとした意識が浮上する。
横たわる身体に感じる慣れ親しんだ布団の感触、そして聞き慣れ親しんだ、声。


ξ#゚⊿゚)ξ「いつまで寝てるの! 遅刻するわよ!」

なんだか母親のような物言いだ、内藤はもう少しと応えて寝返りをうつ。
ふと何かを忘れている気がした、気になる夢を見ていた筈なのに、思い出せない。

4: 2015/12/02(水) 01:16:40 ID:sDSK9/Q.0

考えているうちに頭が冴えて、ふと先ほどの声の主を見やる。

(;つω^)「ちょ…何やって……」

見れば制服姿のツインテ女子がせっせっと何かしている、
知っている顔だった、ツン、今自分が住んでいるアパートの隣人だ。
その隣人が今、出しっぱなしの衣服を畳みだしたり、漫画雑誌を片付けたりしてる。

ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと戻さないと駄目じゃないの」

(;^ω^)「いやいや! んな事しなくていいってばお!」

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ、私そういう本とか気にしない方だから」

(;^ω^)「そういう話ちゃう」

ξ゚⊿゚)ξ「いいから早く起きて着替えて、ご飯食べて学校行くわよ?」

(;^ω^)「だったら部屋から出てってよカーチャン!!」

膨らんだ下半身に布団をかぶせ内藤は叫ぶ。
尚、膨らんでいるといっても、それは股間ではなく下腹部。

というか全体的に、彼は太っている。しかも割りと中途半端に。

人に聞けば、まあどちらかというと太い、程度ではあるが、なんにせよメタボだった。

5: 2015/12/02(水) 01:18:26 ID:sDSK9/Q.0

こうして、あらあらと部屋を出た彼女を追うように、重たい身体を床に付ける。

( ^ω^)(うーん……何だったかなぁ、あれ……)

制服に腕を通しながら、もう一度見た夢についてを考えてみる。
しかし記憶は、開け広げられたカーテンの間から抜けていってしまった。

窓の外は快晴、すっかり見慣れた景色には、いつもの大きな白い鳥。
木々や建物などいくつかの障害物の先には海が見える。


もっともっと高いところから見渡せば、360度の大パノラマ海景色も見られるだろう。


ここはとある離れ島、これといった名物もなく、しかし田舎でもない。

あるのは綺麗な海と、綺麗な砂浜と、綺麗な星空があるくらい。

だけど、それがあるので観光地としては成り立っており、

繁華街へ繰り出せばそれなりに娯楽も整っている、
でも遠い、バスは日に7本くらい。

6: 2015/12/02(水) 01:19:29 ID:sDSK9/Q.0

そんな島唯一の学園高校へ通うため、内藤が島の外からやってきたのが去年の春。

綺麗な景色につられ、海を渡って入学してから今は今年の春、つまりは一年が過ぎる頃。

ここでの生活にもすっかり慣れた内藤は、今日もクラスメートと談笑に暮れる。

良い友人たちにも恵まれ、楽しいスクールライフ。



だが、内藤はそんな青春に不満を感じていた。



( ゚∀゚)「世話焼きな彼女もいるしな」

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君に彼女? できたの?!」

(;゚∀゚)「お前……」

それは女の子関係、いわゆる彼氏彼女、恋人関係の類情事。

友人筆頭である長岡君が言うのは、無論ツンという女子のことなのだが。

このツンという子がまた悩みの種の一つ。

7: 2015/12/02(水) 01:21:26 ID:sDSK9/Q.0

まずかわいい、僕から見てもあらかわいい、更には名に似合わず器量良しでツンが無いと評判の娘っ子。

きっかけはちょっとした島の外の話からだった、皆珍しいのかよく話をしにきたが、
中でもツンは特に興味があるようで、ついには放課後にお茶をする、までに至り、
更には住んでる寮も同じで、クラスでも席が近いのもあってすぐに親しくなった。

そしてどういう訳か、彼女はやたらと世話をやくようになった。

お昼のオススメ、近隣の遊び場、生活のために必要な物、
ツンが一緒になって探したり、用意したり、仕舞には毎朝迎えにくるように。

これは完全にフラグもいいとこもろたで工藤。
内藤もこの状況にはにっこりであった。


 が。


この内藤、すでに三回、ガチで告って振られていた、ツンが無ければデレも無く、
デレが無いからツンも無い、まあそれだけならば、ある意味はよかった。

8: 2015/12/02(水) 01:22:33 ID:sDSK9/Q.0


ξ゚ -゚)ξ「でも、友達で居てくれる?」

( ´ω`)「アッハイ」

といった事があった翌日どころかその日からして、気まずい空気は内藤しか持たず、
一緒に下校して遊びに行って、晩御飯も一緒した挙句、朝迎えに来た。

生頃しというのか何と言うのか。

しかし、優越感的な物もあって内藤はそれに甘んじた。
実際、一度どころでなく、ツンは告白やらお誘いやらと受けている。

その度に内藤の存在が引き合いに出されることもあったが。

(;'A`)「ど、どど、どうして!? だって僕によく挨拶してくれたのに!」

ξ;゚⊿゚)ξ「う、うん…? ごめんなさい…でも付き合うとかそういうのは…」

('A`)「やっぱり、あの内藤とかいう余所者の事が?」

ξ゚⊿゚)ξ「内藤君? なんの関係があるの?」

('A`)「えっ」

あまりにナチュラルな反応に言う側も次第に飽き始め。

というか、そもそも甲斐甲斐しいその姿はまさに雛鳥に餌を与える親鳥のそれで、
今では保護者という言葉で落ち着いてしまっている。

9: 2015/12/02(水) 01:24:26 ID:sDSK9/Q.0
まっている。

もちろん内藤とてこのままじゃいかんと、他の子へアッタクした事もあった。

だがそれもツンを理由に断られ、それを知ったツンがあろうことかその相手を問い詰めた結果、


「いい人だと思うし、嫌いじゃないけど、好みじゃない」


という報告を受けるという、いろんな意味で精神的ダメージ傷を負った。


( ;ω:)「酷いやカーチャン!!」

ξ゚ー゚)ξ「元気だして、ほら、私がいるじゃない」

( ^ω^)「だから問題やっちゅうに」

やはり青春に色恋沙汰は切っても切れない間柄、愛だけに。
恋人とデートゥ、そんな青春謳歌はもうすぐ目の前にあるのに届かない、
そんなもどかしさがこの頃の、いや前からの悩みの種だった。

10: 2015/12/02(水) 01:25:41 ID:sDSK9/Q.0
  _,
(;゚∀゚)「いやー……そうはいってもなぁ、どう見たってお前ら好きあってるだろ」

( ^ω^)「ぼく、ツンちゃん、好き」

ξ゚⊿゚)ξ「私も、長岡君に負けないくらい好きよ」

( ^ω^)「じゃあつきあって!」

  _,
ξ゚⊿゚)ξノシ
    _,
∂( ^ω^)
 _,
(;゚∀゚)



(;゚∀゚)「……そ、そういえば、ついに本決まりしそうなんだってな」

ξ゚⊿゚)ξ「廃校の話?」

( ゚∀゚)「ああ、早けりゃ来年の新入生が最後かもって」

( ^ω^)「へー」

ξ゚⊿゚)ξ「そっかー」

( ゚∀゚)「反応薄くない? 学校なくなっちゃうんだってよ?」

11: 2015/12/02(水) 01:26:36 ID:sDSK9/Q.0

ξ゚⊿゚)ξ「私そういうの気にしない方だから」

( ^ω^)「それもどうかと思うけど、まあその頃の僕らはそれより先を考えないと」

( ゚∀゚)「進路なー、まあ俺は普通に大学行くつもりだけど」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

( ^ω^)「島を出て行くってことかお?」

( ゚∀゚)「あたり前だろ他に無いんだから、ツンは就職ってのか知らんけど実家継ぐんだっけ?」

ξ゚⊿゚)ξ「――そうよ、あと内藤君もこっちで就職ね」

( ^ω^)「選択権が無いんですがそれは」

ツンの実家は由緒正しいお寺のような場所らしい、一人娘の彼女はそこの巫女さんになる事が決められている。
どんな所なのかの情報はまったく無いのだが、少なくとも礼儀や常識を説いている訳ではないらしい。

しかしそんな境遇に対し、彼女自身、当然ながら思うところはあるのだろう、
少しばかり言いよどんでいたのに二人は気付いていたが、知らない振りをした。

( ^ω^)「まあ学校なくなるのはしょうがないにしても……」

( ^ω^)「結局、その理由って何なんだお?」

12: 2015/12/02(水) 01:27:38 ID:sDSK9/Q.0

そう、決まったという割に肝心の理由、あるいは原因といったものが明かされていない。
人が少ない、ようには正直見えないし、校舎も古びた様子もないむしろ不自然なまでに綺麗だ。

( ゚∀゚)「まあ……やっぱあの―――いや、修学旅行が無いからじゃねぇかなぁ」

( ^ω^)「毎日が南国気分なせいかあまり気にならないけどなぁ……」

長岡は何かを言いかけてやめた、内藤もその理由をわかっていた。

実はこの頃学園内で奇妙な噂が流れている。

事件とまでは行かないが、おかしな怪奇現象が多発しているというもの。
目の前に居た人間がとつぜん姿を消した、といったものから、
不気味な格好をした人間が夜中に徘徊している、といったもの。

極めつけは神隠し、失踪事件まで起きているらしいのだが、
特にこの失踪事件、何が恐ろしいかって別に誰も消えてないところがもう怖い。


要するに、何かこの学校危ないから、取り壊しになるのでは?

というオカルトからくる廃校の噂があったのだ。
しかしそれはあまりに荒唐無稽で、本気に捉える人間は居なかった。

13: 2015/12/02(水) 01:29:14 ID:sDSK9/Q.0

内藤も同様、しかしながら先ほどは気にしないとは言ったものの、
やはりわざわざ遠出して入った学校が、そのまま潰れて無くなってしまうというのは少し寂しい。
かと言ってできる事などある筈もない、戦車道だって全国優勝しただけでは駄目だったのだ。

( ^ω^)「じゃあアイドル活動で……廃校阻止」

( ゚∀゚)「お前がぁ?」

(;^ω^)「いやいや、あるじゃないかおこの学校には」

ちなみにスクールアイドル的な物は存在する。
この学校ばかりか、全国的にそういったグループ活動は行われていた。

( ^ω^)「こないだやってたフライナイトのしぃ先輩とか、凄かったお」

( ゚∀゚)「確かに、ステージに雪降らせたり、モノクロ背景で綺麗だったなー」

( ^ω^)「あの歌声は本物だったお、僕感動しちゃったもの」

( ゚∀゚)「確かに確かに、プロでも食ってけるよあの人は」

( ^ω^)「しぃ先輩ならワンチャン優勝も狙えるお」

( ゚∀゚)「確かにたしかし確かに」


ξ;゚ -゚)ξ「……?」

ξ゚⊿゚)ξ「……それで、アイドルの大会なんてやってないけど何を優勝すればいいの?」

ふと、世界が切り取った写真のように固まって見えた気がした。

14: 2015/12/02(水) 01:30:54 ID:sDSK9/Q.0

「しぃ」

呼ばれた声に少女が振り返ると、そこには奇妙な姿の男が居た。
しかし彼女はさして動揺することもなく、ただ目を伏せる。

(* - )「………」

辺りは静寂と、暗闇に包まれている。

今はただ彼女が腰かけるソファを照らすスポットライトだけが、
この世界の全てであるかのように、彼女とその前に居る男を映し出す。

「また一つ、片がついた」

(*゚ー゚)「……まだ、繰り返すの?」

「繰り返してはない、進んでいるだけだ」

(*゚ー゚)「進んでなんかない、それならどうして…」

(*゚ー゚)「あなたは忘れてしまったの?」

「忘れてない、そのためにこうしてんだ」

男が背を向け、暗闇の中へと消えていく。
うそつき、という呟きもまた、同じように見えなくなった。

15: 2015/12/02(水) 01:33:23 ID:sDSK9/Q.0

・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・



( ^ω^)「…あ」

移動教室で廊下を歩いていると、先の方がすこしだけ騒がしい。

これもよく見慣れたものだ、アイドル活動なんてものがあるのもそうだが、
それに近いだけの眩しい人気者というのも存在した。


某映画よろしく人波避けていく中心を歩くのは、この学園の生徒会長。


長身に黒髪ロングが映える彼女は常に背筋を整えまっすぐに前を見据える、
厳格な空気をまとう様はまさに学園の高嶺の花。


しかし雨にうたれる子犬を見捨てられない優しさを持ち、今も通りすがりの内藤へ、


川 ゚ -゚)「やあ、こんにちわ内藤君」

と気さくに話しかけてくる。

16: 2015/12/02(水) 01:34:38 ID:sDSK9/Q.0

どうやら珍しい島の外からの入学生ということで、気にかけられているらしく。
以前から見かけては気軽に挨拶や会話するようになっていた。


(;゚ω゚)「あっ…こ、こんにちわ、ですお」

尚、そんな内藤はいまだにちゃんと目を見て話すことはできないでいた。
何か目力がすごくて見てられない、そんなアレ。

すると傍に居た二人がひょいと顔を覗かせた。


lw´‐ _‐ノv「かいちょー、怯えてるよ」

川;゚ -゚) 「む……なぜだ」

( ´∀`)「クール会長は笑顔が無いからモナ、もっと僕を見習うモナ」

lw´‐ _‐ノv「いつもこんなだらしない顔のかいちょだったらやだなぁ」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ、怖くないぞ、さあ先輩の胸に飛び込んでおいで」

内藤は困惑しながらも、反射的に『無いじゃん』という単語が浮かんだが、
これを口にしたら色々な意味で色々なことが終わると、自分を必氏に押さえ込んだ。

17: 2015/12/02(水) 01:36:54 ID:sDSK9/Q.0
・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・


いくつもの巨大な歯車が、カタカタとその重厚さには似合わない高音をあげて回る。
その遥か下、闇の中にいくつものスポットライトが照らす空間があった。

ライトの中心には、それぞれ大きな建造物がある。

美術などで用いられる、不恰好な関節人形のような姿だ。

更に奥に人だかりが見える。

その誰もが奇妙な格好をしており、特に異様なのは全員がそれぞれ仮面をつけている点。

歓声があがるなか、数人の中心と思わしき人物たちが正面の巨大モニタの前に立ち、
モニタの映像にもまた、同じような仮面を被った人間が映り、対峙するかのように顔を見合わせた。

と、そこで画面越しの二人は三本指を顔に水平に構え、

((ρÅρ)「綺羅星!」
((β∵β){綺羅星!}

ほぼ同時に叫ぶと、それに合わせるように周囲からも同様のコールが起こる。
そして再び静寂がおとずれると、小さく嘲笑するような声が響いた。

((ρÅρ)「ハッ……どうした、敗者がまだ何か用か」

18: 2015/12/02(水) 01:38:39 ID:sDSK9/Q.0

そう言って切り出したのは、モニタの前、壇上に立つ男だった。
つづいて、モニター内の男がノイズ交じりに返事をした。

((β∵β){君がそう勘違いしてると思ったからさ、ゴールキャット}

((ρÅρ)「強がるなよ網羅、無い袖はふれねぇんだぜ?」

((β∵β){まだ決着はついていない}

((ρÅρ)「だがホ〇レットキスは潰したし、手前ぇももう何もできねぇ」

((ρÅρ)「もうまともに動けるのなんざ、『あの』ジャンヌスターくらいのもんだろ?」

((ρÅρ)「約束は果たされた、俺らの勝ちだ」

((β∵β){それでも、止める……止めなきゃいけない}

((ρÅρ)「……まあいいさ、やってみな、できるもんならよ」

映像が遮断され、ふたたび歓声があがる。
壇上の者たちは並び立ち、にぃと笑みを浮かべると両手を広げ。

((ρÅρ)「さあ御前ら、俺たちの邪魔をし続けてきた連中もこれでようやく片付いた」

((ρÅρ)「ほぼ一年……ああ、随分とかかったが、今度こそ悲願達成の時」

((ρÅρ)「これより、第三フェーズへの移行を開始する!!」

19: 2015/12/02(水) 01:41:01 ID:sDSK9/Q.0

・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・



放課後になった。

長岡を誘ってどこかへ寄って帰ろうかと考えたが、
部活があるといって断られ、内藤は一人廊下を歩いていた。

窓から差し込む夕焼けが、斜めの黒線の影を映す。

あたり一面をオレンジに染める世界は、先に見える海をより輝かせ、
一年暮らした今でも見入ってしまうような、美しい光景だった。

( ^ω^)「……どこ行ったんだろ」

綺麗なのはいいが、内藤がこうしているのは、ツンを待っているためである。

特に約束があるわけではないが、もはや習慣の一種、
とはいえ普段であれば待っているのは逆であり、何かちょっとした用事があるにせよ、
下駄箱で合流するのが普段だったが、今日に限って中々やってこない。

仕方が無いので教室へ戻ることにした内藤だったが、
しかしそこにもツンの姿はなく、あてもなく廊下を歩いていた。

20: 2015/12/02(水) 01:42:37 ID:sDSK9/Q.0

下校時刻はとうに過ぎている、もはや校内に人の姿は見当たらない。

やがて実はもう帰ったのでは、と若干の寂しさと虚しさを感じつつ帰ろうと踵を返した。

と、その時。


   「……!!!!」
 

何やら喧嘩のような、叫び声のようなものが聞こえてきた。

(;^ω^)「え……」

何だかやばい予感がして、身体が一瞬固まった。
これは早いところ逃げたほうがよさそうだと、
好奇心を触らぬ神心が上回ったところで、声は怒声から悲鳴に変わっていた。

女性の声だ、遠巻きにはっきりとは分からないが、何故か今ここに居ない彼女と重なって、
内藤はこっそりと、しかし気付けば足早に声のする方へと向かった。

21: 2015/12/02(水) 01:43:41 ID:sDSK9/Q.0

(;^ω^)(ツン!?)


ξ;゚⊿゚)ξ「嫌っ!! やだってば! 離してよ!!!」

(('α')「ふ、フヒ! い、いいから、来い! いいところに連れてってやる!!」

そこにはやはりツンと、彼女の腕を無理矢理に引っ張る、奇妙な仮面の男の姿があった。

どこからどうみても変Oとの遭遇場面、だが正義感と恐怖心が揺れる。

(;゚ω゚)(どうしようどうしよう、なんだおあの変Oは!? 何で学校にあんなのが居るんだお!?)

そもそも何処へ連れて行こうとしているのか、ふと先を見ればそこには職員用エレベーターがある。
あの中で致すつもりなのか、それとも屋上、あるいはあるのか知らないけど地下。

どこで何を致すのか、どこに致されてしまうのか、やはり中に致されてしまうのか。

( ゚ω゚)(そんなの許せない!!!)

(♯`ω´)「ツンを離せそこの変O野朗!!!!!」

22: 2015/12/02(水) 01:45:17 ID:sDSK9/Q.0

すぐに正義感にずるいという感情が上乗せされて、内藤は勢いそのままに飛び出していた。
だが内藤を見つけた二人の反応は、およそ想像から外れたものだった。

ξ ⊿ )ξ「ぇ…………」

(('α')「ひぃゃぇぁあ、ご、ごめんなs」

(;^ω^)「えっ」

男は素っ頓狂な声をあげて明らかに脅えており、
肝心のツンに至っては、何か、悪いことを見つかった子供のように、
内藤のことを困惑と悲しみを混ぜたような表情で見据えていた。

と、そこで男が我に返ったかのように内藤へと向きなおした。

(('α')「はっ……な、なななんだお前は!!」

( ^ω^)「お前なんかに名乗る名前は無い、だお!!」

男のキョドル様を見て、なんだか勝てそうな気がしていた。
見れば体つきも鍛えているようでもなく、ガリガリとも言えるほど痩せている。

タックルすれば勝てる、そう踏んでいた。

23: 2015/12/02(水) 01:46:32 ID:sDSK9/Q.0

しかし、制止する声が思わぬところから飛び、内藤は訳も分からず固まった。

ξ;゚⊿゚)ξ「待って、内藤君、いいの、違うの、これは……これは、何でもないから!」

(;^ω^)「え? え? 何でもないって……だって」

ξ;゚⊿゚)ξ「大丈夫なの! 大丈夫だから、お願い、今日は先に帰って!」

(;^ω^)「そんな訳ないお! だってさっき明らかに嫌がってたじゃないかお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「それは………違う、違うの…」

(;^ω^)「それにあんな変Oに無理矢理引っ張られて、あんなの見て放っておけないお!」

ξ ⊿ )ξ「いい…から……」

(;^ω^)「心配しなくていいお、僕が絶対守るから…!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「っっ……いいから帰って!! あなたには関係無いでしょ!!!!!!!」

24: 2015/12/02(水) 01:47:15 ID:sDSK9/Q.0

(;^ω^)「……え」

ξ;゚⊿゚)ξ「…ぁ………」

(('α')「だそうだ」

(;^ω^)「!?」

いつの間にか、仮面の男は内藤のすぐ横に立っている。
そして冷静さを取り戻したのか、にぃと口の端を上げた。

(('α')「つーて悪いが、この場を見られた以上、このまま帰すわけにはいかないな」

(♯`ω´)「この…っ」

咄嗟に払うように手を出すが、拳が男に顔面に触れた瞬間、
まるで大きな石を殴ってしまったかのような衝撃を受け、内藤は悲鳴を上げた。

そして男が手を振り上げる。

次の瞬間、内藤は鈍器、ハンマーか何かで殴られたとしか思えないような衝撃を受け、
一瞬で意識の大半を持っていかれ、訳も分からないまま横たわる。


「こちらリアジュウブル、巫女の他にもう一人連れてく……ああ、例の余所者だよ」

25: 2015/12/02(水) 01:51:35 ID:sDSK9/Q.0


薄れいく意識の中、内藤はツンが呼ぶ声を聞いた気がした。


そうして、夢うつつの中にいくつかの断片的な映像を見た。

何処か小さな個室から、外が見える。

大きな歯車。

大きな橋と、そこから流れ出る水流。

長い橋を渡ると、そこには沢山の人。

頭上にはまた歯車があり、周囲は暗闇に包まれている。

この場所だけが、闇の中にぽっかりと浮かび上がっていた。

更には大小様々なモニターや、たくさんの機械類。


(;^ω^)(……う、ううん……あれ、ここは…どこだお?)


この辺りでようやく意識がぼんやりと戻ってきた。

26: 2015/12/02(水) 01:52:26 ID:sDSK9/Q.0

それは古い神殿のように神秘的であり、宇宙が舞台の物語に出てくるコクピットのように電子的。
人形は至るところに存在し、何かの暗示なのか様々なポーズを取っている。

祈るような仕草から、争いあう姿、よく見れば半数以上は錆のように茶色く変色していた。

見回せば、それらはどこぞの芸術品のよう。

あまりの荘厳さに見入ってしまうばかりで、恐怖の類は生まれなかった。


「開け、電気棺!」


そんな静寂を裂くように声。
続いて列車の扉が開いたときのような音と、金属質な衝突音。

そちらを見れば、多数の仮面をつけた人間が見えた。
いや、よくよく見てみればそこら中に、声の先を見据える姿がある、
流石にその異様さに背筋に寒さを感じるが、音の先に唯一、仮面のない人物が居た。

(;^ω^)(ツン!)

立ち上がろうとして、後ろ手に縛られている事を盛大に転んだことで気がついた。
そんな物音に、視線がいっせいに内藤の方へと向かう。

27: 2015/12/02(水) 01:53:41 ID:sDSK9/Q.0

(('α')「…っっ!!?? な、何だ!?」

ξ;゚⊿゚)ξ(内藤君…っ)

(('οο)「あのコ、目が覚めたみたいネ」

ミ,,(`θ´)「たく、連れてくるにしたって怪我でもさせたらわかってんのか」

(( Ц Ц)「何か事件でも起こせば、連中が黙ってないのはわかってます」

(`λ´))「……あんなのいいから、早く進めない?」

((ρÅρ)「…………始めろ、リアジュウブル」

内藤を殴りつけた男は、促されるように前へ出ると、
ケーブルだらけの重厚な箱へと足を踏み入れた。

何が何だか分からないが、とても嫌な予感がした。

行かなくては、何とか重たい身体を持ち上げて、先に見える彼女の元へ。
足が遅くて疾走感とは無縁の走り方だったが、懸命に息を切らせている。

奇妙なことに、そんな姿を止めようとする者は居ない。
その誰もが無関心であり、視線は常に内藤の向かう先にあった。

28: 2015/12/02(水) 01:55:11 ID:sDSK9/Q.0

仮面の男が入った箱の蓋が、大きな音を立てて閉ざされる。

内部は狭く、一人分のスペースに斜め上を向いた椅子があるばかり、
腰かけると男の正面に、いくつもの細いガラス線が走るパネルが現れた、
パネルの中心には、顔の上半分を象ったようなレリーフが見える。

そして男は、おもむろに自らの仮面を外し。

(♯'A`)「アプリボワゼ! アレフィスト!!」

叫びと共に、眼前のレリーフへ向けて仮面を押し当てた。

瞬間、虹色の光が仮面を中心にあふれ、ガラス線を通ってパネルと、
箱の中までを光が走り、やがて全てが光の中へと消えていく。

(;^ω^)「!?」

外側では、更に不可思議な事が起きていた。
箱に電気のような奔流がいくつも流れたかと思えば、
付近にあった人形の一つに変化が起きた。

ちょうど顔の辺りが何か光ったように見え、続けて人形の形状が変わっていく。

29: 2015/12/02(水) 01:56:37 ID:sDSK9/Q.0

骨組みでしか無かった両腕と両足は、巨大なガスボンベのように太く重厚な装甲を纏い。
球体関節の肩には、複数の排気口を備えた装甲と、全身の半分はあろうとかという巨大な二本角。

しかし胴体は不釣合いなまでに細く、胸元には赤い二つの光が目のように輝いている。

そして巨大な緑色の人形は、何かに吊られるようにそのまま宙へと浮かび上がっていく。

内藤は思わず言葉を失った、周りの様子が気になって見回せば、彼女が見えた。

自分を見ていた。それが余計に、今自分がすべき事を明確にさせて、再び走り出したところで。


内藤は、世界が写真のように固まる瞬間を見た。


世界が色を無くし、モノクロの輪郭だけが全てとなって、
人も、風も、橋から流れ落ちる水も、そして時計の針も動くことをやめた。

完全に静止した世界で、あの大きな人形だけが色を持ち、やがてゆっくりと動き始める。
するとその下のほうにいくつもの小さな光が生まれ、街の夜景のように周囲を埋めた。

30: 2015/12/02(水) 01:59:11 ID:sDSK9/Q.0

光は、奇妙な格好の人々がつけた仮面から発せられ、その輝きに溶かされるようにして、
色を取り戻していくと、それぞれ身動きを始め、同時に言葉も発し始めた。

全てはまだモノクロの中、その中にまた別の光があった。

仮面ではなく胸元から光を放ち、静止した中を動く姿がある。

彼女はずっと一点を見据えていた、背景と共に色を無くした少年の姿だった。


(('οο)「頼りない勇者様だったネ」

そんな様子を、仮面の一人があざ笑う。
ここから先は関係者以外立ち入り禁止と続け。

そして色を無くした世界が、端から何かに埋め尽くされていく。

まるで生まれ変わるようにして、新たな世界がすべてを塗り替えた。

31: 2015/12/02(水) 01:59:55 ID:sDSK9/Q.0


・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・








闇があった。

どこにも何も無い、全てが無い世界。




「さあ、望みを言え」



やがて内藤は、暗闇の中に声を聞いた。

前が見えない、身体は動かない、自分が呼吸をしてるのかさえわからない。
夢のように不鮮明で、思い出のように儚くて、なのに意識だけは鮮明な不可思議な世界。

32: 2015/12/02(水) 02:01:07 ID:sDSK9/Q.0

しかし聞こえてくる声は更に続く。

「なぁってば、どうするんだよ!?」

しかも急に何だか軽くなった。

ふと、誰かが目の前に居る、ような気がした。
見えないが、わかる、銀髪の女性がいる。

( ´ω`)「どうするって言われても……もう、わけがわからないお…」

「じゃあ聞き方を変えよう、今何しに来たんだっけ?」

( ´ω`)「ツンを、助けようと思って」

「ならそれがお前の望みだろ?」

( ´ω`)「そうかも」

「そうだろ」

( ´ω`)「でも、何をどうしたらいいのかわからないんだお」

「ハハハハ、大丈夫さ、ちゃんと教えてあげるよ」

33: 2015/12/02(水) 02:02:39 ID:sDSK9/Q.0

( ´ω`)「? 教えてくれるのかお?」

「まあ…お前がやりたい事と、やるべき事が同じなら、だけど」

( ´ω`)「やりたい事と、やるべき事…」

「さあ手を伸ばしな、お前の光に」

内藤は、相変わらず闇の中だったが、確かに光が見えたような気がした。
身体だって動かないままだったけど、それでも手を伸ばそうとした。


从 ∀从


目の前に居るはずの、笑顔が眩しい女性に向けて。





そして、世界が開けた。





                                         .

34: 2015/12/02(水) 02:06:00 ID:sDSK9/Q.0

世界は、先ほどの場所どころか、見たことも無いような世界へと変わっていた。

見渡す限り白の大地がつづく遠い先を、エメラルドに輝く炎のような雲が覆っている。
磨かれた石のような白い大地が映すのは、銀河の中心を思わせる量の星々と、巨大な歯車。

目の前には、先ほども見たあの二本角をもった大きな人形。

真上には、立体映像のような紋様が浮かび上がり。

十字を中心に四つの歯車が存在し、それぞれ音も無く回り続けている。
しかしよくよく見れば、そのうちの一つはひび割れ回転を止めていた。

世界のあまりの美しさに目を奪われる内藤だったが、不思議といくつかの単語が頭に浮かんでいた。

(;^ω^)「……ゼロ時間、それに、サイバディ……?」

周囲からどよめきが聞こえてくる。
見上げれば、シャボン玉のような物があちこちに浮いており、
中には仮面をつけた人々が居て、内藤のことを驚愕の雰囲気で眺めていた。

((β∵β)「あれは……?」

((`π´)「見ない子ね、何なの一体」

(('οο)「あレって、さっきの子? なんでここに…いヤ、なんで生身で!?」

35: 2015/12/02(水) 02:07:14 ID:sDSK9/Q.0



と、内藤の胸元から輝きが溢れ、斜め十字に光が走る。

周囲のどよめきはより一層強くなり、あちらこちらで一つの単語が聞こえてきた。



((ρÅρ)「シルシ…? 本物か?」

ミ(`θ´)「おいどうなってんだ! 誰だよあいつ!!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君…!? あなた、どうして……まさか…」

(;'A`)「な、え…? さっきの…? え?え?え?」


どよめきを他所に、内藤は自分の中に先ほどと同じ声を聞いた。
その声は自分に様々なことを教えている、色々なことがわかってきた。

ここはゼロ時間、あのサイバディと呼ばれる人形を封じ込めるための牢獄。
ここにはシルシを持つもの以外は入れない、ツンが居るのはそういう事だと。



((ρÅρ)「巫女を追ってきたなら、厄介だな……リアジュウブル!」

(;'A`)「あっ、ひゃい!」

36: 2015/12/02(水) 02:09:07 ID:sDSK9/Q.0

((ρÅρ)「そいつを捕まえろ、身動き取れないようにだ」

('A`)「わ、わわ、わかった、任せろ!」

緑の人形がその大きな腕を内藤へと向ける、だがそれよりも早く、
大地を砕きながら現れたもうひとつの白い腕が、その内藤との間に割り込んだ。

(;'A`)(なんだよこれ…! そんな、こんなの話が違う!!)

(;'A`)(もう、これ以上サイバディは存在しないんじゃなかったのかよ!!!)

(;'A`)「?……待てよ、これ、もしかして棺無しで動いてるってのか、まさかお前…!!!??」

地面から生える腕の傍らで、しかし内藤は臆することなく眼前を見据えた。
二本角の手には一つの球体が見える、中に居るのはツンだ。

声は今も聞こえてくる、目を閉じればその眩しさはずっとこの胸に灯っている。
やりたい事とやるべき事がはっきりと分かる、内藤はもう一度、その光に手を伸ばす。


(;'A`)「銀河美少年か―――――!!」

(♯`ω´)『アプリボワゼーーーーーーーーーーーー!!!!!』



閃光、内藤の身体が光に包まれた。

37: 2015/12/02(水) 02:11:10 ID:sDSK9/Q.0

続けて地面に大きな亀裂が走り、伸びていた腕から先、やはり大きな人形が現れた。

その姿は最初に沢山並んでいた人形のように細身で、白と赤を基調とした幅広の装甲が各所を覆い、
頭部には貴族のような幅広帽子と仮面、腰周りにはいくつかのフィンがマントを象るように並んでいる。


そして胸部には球状の物体があり、光になった内藤がそこへ吸い込まれると、
更なる輝きとなって斜め十字の閃光が辺りを貫き、中心には人影が一つ。


長身の影は内藤とは似ても似つかず、広い肩幅から引き締まった腰周り、
両手両足はすらりと伸びて、女のようなセミロングの銀髪から覗くのは真紅の瞳。



从 ゚∀从「颯爽登場!」



未だ収まらない輝きの中、こちらもまた貴族を思わせるような衣服を身に纏い、
やがて彼は辺りの光を振り払うように腕を回し、その全貌を露にした。



从 ゚∀从「銀河美少年! タウ・バーン!!」

38: 2015/12/02(水) 02:12:47 ID:sDSK9/Q.0

名乗りを上げたその姿に、視線がいっせいに注がれる。
しかし怯むことなく、少年はまっすぐに指を指す。
すると人形もまったく同じ動きで追従し、対する二本角を指差した。

その動きに、周囲からは更に驚きの声があがる。

((β∵β)「あいつ、サイバディに直接乗り込んでいる…!?」

((`π´)「なによあの子…! ちょちょちょ超絶イケメンじゃないの!!」

((ρÅρ)「第三フェーズ…いや、それよりも」

(('οο)「あたし達の知らない…22体目のサイバディ!!」


从 ゚∀从「さぁて、ツンを返してもらおうか!」

ξ;゚⊿゚)ξ「な、内藤君…なの!?」

(;'A`)「内藤…? さっきのデブ、あの余所者!? あれが!!??」

体系も容姿も、何もかもが違う。文字通り変身した。
顔立ちはアイドルのように整い、今もどこからか黄色い声が聞こえてくる。

39: 2015/12/02(水) 02:14:41 ID:sDSK9/Q.0

更には自信に満ち溢れた、余裕の表情。

(;'A`)「い、いい気になるなよ…!! サイバディに乗ってんのはお前だけじゃないんだ!!!」

从 ゚∀从「ああ! ならば勝負だな!! 行くぜ!!」

(#'A`)「ぐぉああ、爽やかにしやがって!!!」

対に向き合う人形が、地面を砕きながら互いへ向けて疾走する。
二本角はその特徴である角を前面に押し出し、対するは手刀、両者の姿が交差した。

((ρÅρ)「お前だけじゃない、だと…何を馬鹿な…あれが本物の銀河美少年なら…」

二対の人形の中間に、大きな棒が突き刺さる。
そして二本角だった人形が、気付けば一本角に変わっていた。

((ρÅρ)「第二フェーズのままで、そう簡単に破れるものではないぞ…!!」

从 ゚∀从「ツン、もう少しだけ待ってておくれよ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「………」

(;'A`)「嘘だ…こんなの、何かの間違いだ!!!」

(;'A`)「もう少しだったんだ、もう少しで、封印を解いて!」

(;'A`)「スターとして、俺がこの世界で…! もう少しで…!!!」

40: 2015/12/02(水) 02:16:08 ID:sDSK9/Q.0

一本になってしまった角で、再び人形が襲い掛かる。
また先と同じように二対が交差するが、今度は先ほどと違う大きな金属音が響く。

从;゚∀从「うわ硬っ!! 何だ今の!?」

(;'A`)「邪魔するな、邪魔するな、邪魔するな!!!」

从 ゚∀从「そういえばあの時も……そうか、そういう能力、そういうのもあるのか」

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君、危ない…!!」

再び一本角が、背面からジェット噴射を行い旋回しながら突進してくる。
ちらりと内藤は周囲を見やると、正面から向き合う姿勢を取った。

(#'A`)「やれ、アレフィスト! バッファロークラアアアアアッシュ!!!」

そしてまた交差、内藤はギリギリのところで回避。
横へ横へと更に距離をとった。

从 ゚∀从「危ない危ない!」

(#'A`)(くそっ、もっと、もっと速度を…!!)

ξ;゚ -゚)ξ「っっっ………!!」

41: 2015/12/02(水) 02:17:39 ID:sDSK9/Q.0

一本角が助走をつけるように更に大きく旋回。
内藤はとある場所で停止、そして再び迎撃の構えを取る。

从 ゚∀从「さあ、来い!!」

(♯'A`)「今度こそ、終わりだッーーーー」

やがて加速を続けた姿は、緑色の流星となり、白い騎士を狙った。


続いて衝突。


地面が砕け、隆起し、煙が一時その空間を埋め尽くす。
すぐに煙が晴れると、そこには突進してきた物を受け止める姿があった。

(;'A`)「そんな!? あれだけの速度で…いや、これは!?」

しかしよく見れば、何かつっかえ棒のような物が緑の人形に突き立っている。
最初の交差で折られた角だ、それが地面に突き立てられたまま、自身へ向けられていた。

だがそれでも、硬化した人形の装甲を抜くことはできない、
男はもう一度突進すべく距離を取ろうとして、ある物が無いことに気がついた。

42: 2015/12/02(水) 02:19:38 ID:sDSK9/Q.0

見れば白い人形の手には、球状の物体が握られている。

从 ゚∀从「返却どうも」

(♯'A`)「こいつ、最初から巫女を狙って……!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君…!」

从 ゚∀从「分かってる、偽りの仮面を打ち砕け、そういう事なんだな…!」

(♯'A`)「今度はもう、受け止める術はない!!」

从 ゚∀从「銀河を満たせ、タウの輝き!!」

(♯'A`)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

从 ゚∀从「炸裂! タウ銀河! ビイイイイイイイムッ!!」

真っ直ぐに向かってくる一本角を、白い人形の胸部から放たれた閃光が貫く。
衝突の瞬間こそ拮抗していたものの、すぐに角は融解し、装甲が剥がれ落ち。

(;'A`)「そんなb

(;'

(

.

43: 2015/12/02(水) 02:21:22 ID:sDSK9/Q.0


やがて閃光の中、いくつもの連続した爆発を起こした後、
天に向かって火柱が立ち上り、更に大きな爆炎の輝きを銀河の空に咲かせた。



炎から庇うように立つ人形は、炎をシルエットにまるで後光が指すかのよう。

ツンはしばしその光景に見惚れていると、内藤だったはずの人間と目が合った。

ツンは目を細めた、うしろの光と、何より少年の笑顔が、とても眩しく見えたのだ。










・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・

44: 2015/12/02(水) 02:22:10 ID:sDSK9/Q.0

「……タウバーン、か」


「いよいよ…」


「いや、ようやく、かな? どうするの?」


「まずは様子見だ」


「のんびりだね」


「そうでもないさ、ただ、果たしてあの子はどんな道を選ぶのか」

「それを確かめてからでも、充分に遅くはない」


「ふーん……それで、待った甲斐はありそう?」


「わからない…と思っていたけど……ふふ、気が変わったよ」


lw´‐ _‐ノv「んん? かいちょーそれはどういう?」

川 ゚ー゚)「彼女がついている、それがわかった、だから――――」

45: 2015/12/02(水) 02:23:20 ID:sDSK9/Q.0


('A`)


ミ(`θ´)「とんだ失態だな、リアジュウブル」


('A`)


(('οο)「サイバディを失うばかりカ、本当に余計なモノをつれて来たネ」


('A`)


(( Ц Ц)「……あといっぽだったのに」


('A`)


((ρÅρ)「リアジュウブル、お前を除籍する」


('A`)



('A`)ウツダ シノウ

46: 2015/12/02(水) 02:24:57 ID:sDSK9/Q.0






オレンジ色の夕日が、水平線の中に溶けるように沈んでいく。
太陽に焦がされた空は黒くなって、銀河の明かりをより強くさせた。

暗くなっていく海辺には、人の手にも見える岩場がある。

その上に二つの人影があった。

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

( ^ω^)「……………」

お互いに言葉が出てこないのか、黙ったまま見つめあっていたが、
やがて観念したように、ツンがぽつぽつと語り始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「………知ってたの?」

( ^ω^)「……さっきまでは、何も」

( ^ω^)「でも今は、少しだけ」

47: 2015/12/02(水) 02:26:06 ID:sDSK9/Q.0

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

ξ゚ -゚)ξ「………あなたに、知られたくなかったの」

ξ゚ -゚)ξ「私は、この島でとある役割がある、島から出ることは許されない」

ξ゚ -゚)ξ「だから、あなたの話が、あなたの存在が、あなたが持つ空気が」

ξ゚ -゚)ξ「羨ましくて、妬ましくて、だけど、少しでも感じていたくて」

ξ゚ -゚)ξ「……だから、ああやって付きまとっていたの」

ξ゚ -゚)ξ「あなたの気持ちさえ、利用して……」

ξ゚ -゚)ξ「助けてもらっておきながら、ずるいよね、最低だよね……」

ξ゚ -゚)ξ「だから、もう……」

( ^ω^)「ありがとうだお、ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「…え?」

( ^ω^)「ツンのおかげで、この一年すごく楽しかったお」

48: 2015/12/02(水) 02:27:58 ID:sDSK9/Q.0

( ^ω^)「そして、僕はそれをこれからも失いたくない……」

( ^ω^)「理由なんてどうだっていい、僕の真実は、それだけだお」

ξ゚⊿゚)ξ「……まだ、一緒に居て、いいの?」

( ^ω^)「居てほしいんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「………ありがとう」

( ^ω^)「ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「内藤君……」

ξ゚⊿゚)ξ「………?」

ξ;゚⊿゚)ξ「え、ちょ、ちょっと待って、近、近い…」

ξ;>⊿<)ξ「だ、駄目、そういうのは違うよ!!!」

(;^ω^)「ファッ!?」

これは行ける、致せると踏んだ内藤がツンへと迫るが、
慌ててツンは身を避けつつ、軽く、本当に軽く内藤を押した。

49: 2015/12/02(水) 02:29:14 ID:sDSK9/Q.0


ξ;゚⊿゚)ξ「!?」

つもりだったのだが、次の瞬間、内藤の姿が一瞬でかき消えて、
続けて奥の方から大きな波しぶきがあがった。



「ぬおおお、何も見えない!! 夜の海は危険が危ないお!?」


「内藤君!? ご、ごめんなさい、大丈夫!?」


「あ、足がつかな、た、たすけてーーーーー」


「待って、今行くから、きゃ、足場が!?」


銀河の光と波しぶきが混ざる海は、輝きを遠く水平線まで運んでいく。

とある二人はそんな中に混ざる異物か、新たな光だったのか、
今はただ、取り合う手のぬくもりに、今までと違う何かを感じるばかりであった。



                                          終

50: 2015/12/02(水) 02:32:06 ID:sDSK9/Q.0
http://www.star-driver.net/
↑この話の元ネタ
http://www.nicovideo.jp/watch/1401260611
↑第一話は無料だよ!合わせて見よう!むしろこれを見よう!そうしよう!

引用: 从 ゚∀从 スクールτアイドルのようです