55: 2016/11/18(金) 18:39:47 ID:NGZxpddA0


学園近くの寮の一室に、カタカタ、カチカチ、そんな音がだけが響く部屋があった。
そこにはパソコンチェアに腰かける男が一人、最後に何かを確認するように見回すと、

( ´_ゝ`)「よし、これで完了と」

最後のワンと、その結果を見て満足そうに肩をおろした。

(´<_ ` )「終わったん?」

( ´_ゝ`)「ああ」

(´<_ ` )「…おお、この短時間でここまで編集してあるのか……流石は兄者」

( ´_ゝ`)「うむ、しかしどうだ? 見れば見るほど興味深いとは思わないか?
なにせ聞けば、誰もその存在を知らないそうだぞ?」

( ´_ゝ`)「そんな事があり得るのか…?」

(´<_ ` )「いや分かんないけど、まあ、どうでもいい事でしょ
たしかにいいよあいつ、面白いじゃないか」

(´<_ ` )「んじゃ次は早速、遊ばせてもらおうかな」

( ´_ゝ`)「何? 抜け駆けは許さんぞ弟者」

(´<_ ` )「へえ、じゃあどうするのさ兄者」
ふらいんぐうぃっち(14) (週刊少年マガジンコミックス)
56: 2016/11/18(金) 18:40:54 ID:NGZxpddA0

( ´_ゝ`)「無論、勝負して決めようじゃないか、次の戦いで勝ったほうが奴と戦る」

(´<_ ` )「いいね乗った、それでいこう!」

(´<_ `;)「……と思ったけどいいのか、あいつ巫女を守ったって事はきっと兄者の所に…」

( ´_ゝ`)「関係ないな、邪魔になるなら抜けるだけだ」

(´<_ `;)「おいおい、それはあんまりじゃないか?」

( ´_ゝ`)「何を白々しい、お前もそうだろう弟者」

言葉に、弟者は笑みを浮かべることで返した。

そんな二人の奥にはパソコンのディスプレイ。
画面には新聞のような見出しと枠組み、文字にはこう書かれている。



『 銀河美少年 現る! 』

57: 2016/11/18(金) 18:42:01 ID:NGZxpddA0

・      ・     ・    ・   ・  ・ ・・・・・・・・






ちらり


「……うん」


( ^ω^)「視線を、感じる」

海鳥の声がとおく響く、清々しい朝の通学路で内藤がふと呟いた。
目的地はもうすぐ近くだけあって、辺りは生徒で賑わっている。

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

ξ゚⊿゚)ξ「……保健室よってく?」

そんな隣をあるく彼女は、少しだけ考えるような素振りを見せるも、
様々な過程をすっ飛ばして、ストレートに頭の心配をしている。

そうではないと抗議するが、ツンは聞く耳を持たなかった。

58: 2016/11/18(金) 18:43:55 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「いや、だから気のせいじゃ…あ、ほら、またこっち見てるお」

ξ;゚⊿゚)ξ「そういえば…」

ξ゚⊿゚)ξ「内藤君、まるっきり別人になってたもんね…
     二つの意識が混ざり合い、人格崩壊……ありがちね」

(;^ω^)「違う……そういうのでは無いんだお……」

といった風に彼女はまるで相手にしてくれないが、
内藤目線からした今日の朝は、どうにもこうにも様子がおかしい。

全てでは無いが、ちらほらとこちらを見ていたり、何かヒソヒソと話をしていたり。
出荷とか、そんなー、とか聞こえてきたり、とにかく注目を受けている感があった。

しかしそんな違和感はすぐに晴れることになる。

教室へたどり着くなり友人代表長岡君が、
内藤を見つけるなり寄ってきて、開口一番こう言ったのだ。

( ゚∀゚)「よお有名人!!」

(;^ω^)「へ?」

( ゚∀゚)「へ? じゃねぇだろ、とぼけるなよ!」

(;^ω^)「いや、本当に何のことだか……」

( ゚∀゚)「なーに言ってんだ銀河美少年!」

59: 2016/11/18(金) 18:44:36 ID:NGZxpddA0

(;゚ω゚)「ぶっ!!!!!」

( ゚∀゚)「たく、知ってたなら最初から言えよなー、こっちはずっと余計な気を」

(;゚ω゚)「いや! いやいやいや!! ちょっと待ってお!?」

(;゚∀゚)「あー? なんだよ?」

(;゚ω゚)「何で、それ、その、銀河、って…お前が知ってるんだお?」

( ゚∀゚)「そりゃまぁ、見たからだよ」

(;゚ω゚)「はぁ!?」


ふと思い返せば、あの人形が並ぶ神殿のような場所。
あそこには怪しい格好の人間が、確かにたくさん居たのだ。


思わず動揺してしまったが、冷静に考えて見ればあの場に居たという事は。


(;^ω^)「……お前、まさか…あいつらの仲間…」

(;゚∀゚)「ばっかおめー、一緒にすんなって俺は違ぇよ」

(;^ω^)「イミフなんですが?」

( ゚∀゚)「俺は反対派だからな、むしろお前の仲間だ、友達で、仲間だ」

長岡はサムズアップして微笑んだ。
内藤はそんな言葉に不思議と胸の高鳴りを感じていた。

( ^ω^)「やだなにこのきもち」

60: 2016/11/18(金) 18:45:16 ID:NGZxpddA0

ξ゚⊿゚)ξ「もいきー」

(;^ω^)「って、そんなこと言われてももっとわからんお、
       なんだお反対って、何に反対して…? じゃあ賛成派もあるのかお?」

(;゚∀゚)「おいおい……わからんって、お前こそ何なんだよ?」

ξ゚⊿゚)ξ「…無駄よ長岡君、彼は本当に―――何も知らないのよ」

(;゚∀゚)「……そ、そう…なのか?」

( ^ω^)「そうだお、知る権利を要求するお」

(;゚∀゚)「いやそりゃこっちの台詞なんだが……まあ、いいか」

( ゚∀゚)「百分は一分に過ぎずって言うもんな、じゃあ昼休みちょっと付き合えよ」

( ^ω^)「百聞な、精神と時の部屋にでも行く気か……んで、どこに?」

( ゚∀゚)「来ればわかるさ、それに……」

長岡がふと視線を時計のほうへやると、
示し合わせたかのようにして、チャイムの音が響いた。


そして昼休み。

パンの入った袋を抱え、やってきたのはパソコン教室。
入るなり室内がざわついた、内藤は嫌な予感を覚えていた。

キャーとか、本物、とか。
何アレ、とか違う、とか。

そして、長岡がパソコンの一つを操作して、とあるHPを表示させた。
どうやら学校のHPのようだが、紹介というよりは生徒の交流を目的としたサイトらしい。

( ゚∀゚)「で、まあ、まずはこれだ」

61: 2016/11/18(金) 18:45:56 ID:NGZxpddA0

言って表示されたのは、学園内で活動中のアイドルグループ等の一覧。
いくつもの美男美女が並べられるその中に、何となく見覚えのある顔があった。

銀髪の、凛々しくも無邪気な笑顔を見せる少年の画。

ξ;-⊿-)ξ「ぁー…」

(;^ω^)「???」

ツンは頭をおさえて何やら難しい表情。
内藤はその姿を見てもわからない。
ただ、同姓から見てもわかるくらい、イケメンだった。


当然だった、まだその姿を鏡越しに見たことがないのだから。


( ゚∀゚)「んで、本題がこっちな」

続けて長岡がマウスを弄り、今度はあちらこちらへと操作する。
同じ写真を何度か押したり、戻る違うページを表示させ、やがて一つの窓が表示された。

何かパスワードを要求されている、しかし長岡は慣れた様子で入力を終え、
すぐに次のページが現れると、同時に内藤は絶句した。

デカデカと、先ほどの少年の姿が載せられたページの見出しには、
『銀河美少年現る!』と書かれており、あの時の人形の姿までもがそこにあった。

流石に全てを察した内藤は、初めて自分がどういう姿になっていたかを知る。

しかしあまりにも違いすぎて、己として認識する事ができなかった。
それほどに、文字通り美少年となった少年はイケメン過ぎた。

( ゚∀゚)「……実は動画もある」

62: 2016/11/18(金) 18:46:59 ID:NGZxpddA0

(;゚ω゚)「えっ」

言って、長岡はすぐ横の小窓の再生ボタンを押した。
まず映ってきたのは、よく見知った自分の姿。

この姿を見てホッとしたのは、生まれて初めてだと内藤は思う。

しかし安心するのも束の間。

映し出されたのは、あの時の不思議な世界、ゼロ時間の中。
そんな動画には、いくつものコメントと思わしき物が次から次へ流れてくる。

そして。

『アプリボワゼーー!!!』

僕と思わしき僕が、変身してサイバディに乗り込む様が、
バッチリ映し出されていた。

:(;゙゚'ω゚'):

ふと辺りを見渡すと、即座に視線を逸らす者ばかり。
現状の理由はわかったが、もっと分からない事が沢山生まれた。

長岡はほら、と同意を求める。

( ゚∀゚)「な? 有名人」

(;゚ω゚)「な? じゃねえよ!? どどど、どうなっとんじゃこりゃ!?」

( ゚∀゚)「語尾語尾」

(;゚ω゚)「ツン…!? 何で、これ、どうやって!?」

63: 2016/11/18(金) 18:48:32 ID:NGZxpddA0

ξ;゚⊿゚)ξ「……スマホ、とか?」

(;゚ω゚)「ああ、iPhoneならね、って違う!」

( ゚∀゚)「実際謎なんだけどな、この手のもんは持ち込めないはずだし、
     どうやって録画したのやら……」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……流石はあいぽんって事かしら……いいなぁ」

(;゚ω゚)「ていうか二人とも、何でそんなに冷静なんだお?! こんな!?」

(;゚ω゚)「学校で、あんな物の映像、こんな、パニック!!」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に…知らないのね」

(;^ω^)「へ?」

ξ゚⊿゚)ξ「あのね、確かに内藤君みたいな人も居るから公にできる事じゃないんだけど」

ξ゚⊿゚)ξ「基本的に、この学園に通ってる子は、ほとんど関係者なのよ」

と言っても、全てがああやって地下に集まってどうこうしている、という意味ではなく、
あくまで存在を知っている、または聞いた事がある、程度のものが多数ではあるのだが、

こういったサイトの存在もあって、徐々に皆知識が増えて行きその数はお察しの状態という。

( ^ω^)「じゃあ、長岡もあそこに…? やっぱりお前…」

(;゚∀゚)「だから俺はそっちじゃねぇって」

(;^ω^)「?????どっち?」

どうにもよく分からなくなってきた、周囲の様子がおかしい理由は分かったが、
このサイトも、今一要領を得ない長岡とツンの煮え切らない態度も。

何かもっと根本的な、大事な点が抜けたまま話が進んでしまっている。

64: 2016/11/18(金) 18:49:39 ID:NGZxpddA0

(;゚∀゚)「色々あんだよここには」

(;^ω^)「だからその色々を教えてくれお、反対派とか言ってたじゃないかお」

(;゚∀゚)「おう、だから封印を解くことをだな……」

(;^ω^)「封印?」
  _  
( -∀-)「あー……だから、いや、つか俺もそこまで詳しくなくってな」

( ゚∀゚)「…そうだな、つか放課後もあいてるよな? 会わせたい人が居るんだよ」

( ^ω^)「いや、普通に怪しすぎるんだけども」

( ゚∀゚)「おいおい親友を疑うのか? つか飯食わねぇと時間無くなるぜ」

( ^ω^)「もう食べてますが、それよりちゃんと話せお、誰だおその人って」

( ゚∀゚)「なら順番的に次はお前が話すべきじゃねぇの? 人のこと怪しい言う前に」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、 それね、私も聞きたいわ」

(;^ω^)「ツンまで……僕の? 何を言えばいいんだお?」

( ゚∀゚)「お前、何者なんだよ? 魔法少女もびっくりの変身じゃねえか」


三個目であるマヨチーズ焼きパンに手を伸ばしながら、内藤は思った。


そういえば、何だろうと。


今も何となくこうなってたのかー、と半ば感心しながら動画を見ていたが。

言われて見ればそう、ツンも言ってた通り、この学園に通う多くが関係者であるならば、
自分自身こそが最大の異物で、正体不明な存在という事になる。

65: 2016/11/18(金) 18:50:48 ID:NGZxpddA0

しかし、先日あんな事になるまで、内藤はあの世界は勿論、島の事も何も知らなかった。


今はどういうわけか、知識としてサイバディの事やあの世界を知ってはいるが、
あくまで大雑把な物でしかなく、例えるなら以前にwikiでちらっと読んだ、程度の知識。

それがどういう物か、まではわかっても、こういった経緯と原因があってこうなった。
という部分がすっぽり抜け落ちている、ゆえに、さっぱりわからない。

まるでネタバレだけを見たアニメの感想を語るような心持ち。
自身の姿が変わっている事にすら、映像を見てようやく気付いたほどなのだ。

うーん、と考え始めた内藤だったが、既に五個目のバナナクリームパンまで完食した。


(;゚∀゚)「いつまで食って考えてんだ」

( ^ω^)「…と言われても、わからないんだお」

( ゚∀゚)「そんな話があるかい」

(;^ω^)「いや本当に、何で急にあんな事ができるようになったのか、さっぱりなんだお」

(;゚∀゚)「あのサイバディは?」

(;^ω^)「タウバーン……って名前の、サイ、バディ…?」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

ふとツンへと振ってみれば、彼女も首を横にふった。

あの地下組織や長岡のことを怪しいと言っておきながら、
内藤は自分の怪しさにもはや笑うしかなかった。

66: 2016/11/18(金) 18:51:50 ID:NGZxpddA0

ふと動画を見る、銀髪の、自分で言うのも何だかすごいイケメンが映る。


憧憬。

ふと不思議な感情を得た。

とても温かく、懐かしい何かのような、胸が締め付けられるような。
以前にどこかで、見たような、誰かに似ているような。


(;゚∀゚)「おいおい、自分に見惚れんなよ」

( ^ω^)「いや、そういう訳じゃ………まあ、なくもない、けども」

( ゚∀゚)「こいつめ」

ξ゚⊿゚)ξ「すごいレスね……豚とか元が酷いとか詐欺ってのも多いけど…」

( ^ω^)「…………」





・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・





そして放課後になった。

68: 2016/11/18(金) 18:53:09 ID:NGZxpddA0

長岡はお昼に宣言したとおり、内藤達を連れ出した。
場所は一度外に出て、校舎の反対側にある建物、いわゆる旧校舎だ。

こっちだぜ、と先行する長岡について行く最中、ツンがこっそりと耳打ちする。

ξ゚⊿゚)ξ「……大丈夫だとは思うんだけど………一応、気をつけてね」

( ^ω^)「気をつける? 何お?」

ξ゚⊿゚)ξ「……もしかしたら、また、戦うことになるかも」

(;^ω^)「え、誰と? 長岡?」

ξ゚⊿゚)ξ「違う……本当に、こっちはまず大丈夫だとは思うんだけど、一応ね」

( ^ω^)「……」

一気にきな臭くなってきたな、と内藤は少し気を引き締めた。
危ないなら行かなくても、とも思ったが、肝心のツンが行く気満々な上、


(必要な事だと思う、私にとっても、そして何より内藤君自身のために)


とまで言われてしまっては引くに引けない。
段々に嫌な予感が強まっていく中、やがてとある場所にたどり着く。


重厚な自動ドアと、上下のボタンが見える扉の前。


もはや考えるまでもない、これから向かおうとしている先。
ここまで来て、もはや逃げるという選択肢はなかった。

69: 2016/11/18(金) 18:54:52 ID:NGZxpddA0

促されるままに乗り込むと、箱型の乗り物はすぐに降下を始めた。

ぐんぐんと降りていく、余程の深さがあるようで、中々たどり着かない。

( ^ω^)「…しかし校長室に隠し通路ならぬエレベーターって」

( ゚∀゚)「俺もよくは知らねーけど、すげぇ昔のセンスらしいぜ」

( ^ω^)「額縁を毎回斜めにされてる人かわいそう」

無駄話をしていると、やがて身体に圧を感じ、排気音と共に扉は開かれた。
そこには大方予想通り、あの神殿のような場所によく似た空間が広がっている。

しかし違う箇所がいくつもある、特に大きな違いは、あの大量の人形が見当たらない点。
そしてもう一つは、立ち並ぶ柱や床などはひび割れ、あるいは塗装が剥がれ落ち、
よく言えば年季と歴史を感じる建築、悪く言えば古びて薄汚れていた。

しかし手入れや掃除はきちんとされているようで、周囲にゴミは見られず埃っぽさも感じない。

見回して、更にもう一つ大きな違いがある。そこに居る人たちの姿だ。

仮面をつけた妙な人間と、素顔のままの人間が混じっている。

「お、長岡じゃん」

( ゚∀゚)「ちっと人連れて来たんだけど、網羅さん居る?」

「奥に居るよ…そうか、例の……」

長岡は何度かあたりの者達と挨拶を交わし、慣れた様子で進んでいく。
やがて大きなモニタと、あの場所でも見たケーブルだらけの鉄箱が横たわる場所に着いた。

すると、そこに居た一人がこちらの姿を見るなり寄ってきた。

70: 2016/11/18(金) 18:56:20 ID:NGZxpddA0

((β∵β)「……」

(;^ω^)「っ…!?」

仮面をつけたその姿に、内藤はすぐさま警戒の姿勢を取るが、
その人間はそんな様子を察したのか、仮面を外して素顔を見せた。

( ・∀・)「来てくれると思っていたよ」

言って男は手を差し出した。
内藤は空気にのまれ、反射的についその手を取ってしまう。

( ・∀・)「僕はモララー、ここの綺羅星十字団の一応のまとめ役をしている者さ」

(;^ω^)「あ、どうも……内藤と申しますお……きらぼ…え?」

( ・∀・)「まずは挨拶と、筋を通さなければいけないね」

言って、モララーは離した手を広げ周囲を見渡し、
戸惑う内藤を横目に声高に叫んだ。

( ・∀・)「皆、彼に賞賛を!!」

(;^ω^)「え、なn!?」

声が響くなり、スポットライトが内藤を照らし。


『ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』


続いて、そこら中から歓声が上がる。

いくつもの拍手や口笛に混ざり、聞こえてくるのは彼の言うとおり賞賛だ。
凄い、よくやった、ありがとう、周囲は歓喜に満ちている。

71: 2016/11/18(金) 18:57:42 ID:NGZxpddA0

一方で内藤は、何が何やらと戸惑うばかり。

(;^ω^)「こわい!」

( ・∀・)「ありがとう内藤君、君には感謝しかない」

(;^ω^)「それは……あのサイバディのことで、かお?」

( ・∀・)「勿論だとも、もはや万策尽きたかと思った矢先に現れたのが君だった」

( ・∀・)「よくぞあの状況で巫女を守り、戦ってくれた……君はまさに、我々の救世主だ」

あまりの持ち上げぶりに、もはや言葉も出てこない。
モララーはお構いなしに続けてこう言った。

( ・∀・)「我々は君を全力で支援する用意がある、共に戦おう内藤君」

(;^ω^)「共にって……僕はただ」

( ゚∀゚)「網羅さん、いいすか?」

( ・∀・)「どうした?」

( ゚∀゚)「こいつ、内藤は、どうも何も知らないみたいなんすよ」

( ・∀・)「知らない?」

訝しげな問いかけに答えたのはツンだ。
彼女はことのあらましと現状を語った。

モララーは終始、小さく相槌をうつばかりだったが、
周囲の反応はさまざまで、しかし波紋のようにざわつきが広がっていく。

最も、そんな馬鹿な話が、といった反応が多数だ。
内藤もあまりよろしくない空気を察し気まずそうに目をそらす。

72: 2016/11/18(金) 18:58:48 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)(ん?)

「ニャーン」

(;^ω^)(猫…? こんなところに?)

暗がりに溶け込むようにして、黒猫が佇んでいる。
金色の瞳がくっきりと浮かび上がるその様は、こちらを伺うように見えた。

( ・∀・)「一つ、いいかい内藤君?」

(;^ω^)「えっ、あっ…なんですかお?」

と、そんな意識を遮って名を呼ばれ、視線を向ければ、
呼応するように黒猫が視野の外へと消えていった。

( ・∀・)「今、君は自分があまりよくない……はっきり言わせてもらえば、
      怪しまれているという自覚はあるかい?」

(;^ω^)「それは……まあ…」

( ・∀・)「それでも君は何も知らないと言うんだね?」

( ^ω^)「……」

問いに、内藤は気を落ち着けるように呼吸を一つ、
そして頷きと共に言葉をつづけた。

( ^ω^)「だから、僕はここに来たんだお」

( ^ω^)「僕の知らない、僕に起こったことを知るために」

73: 2016/11/18(金) 19:00:10 ID:NGZxpddA0

( ・∀・)「そうか」

ふ、とモララーは笑みとも取れる息を一つ。
だが周囲では、未だ怪しむ声が上がっている。

「網羅さん、いいんですか!?」

「いくらなんでも、おかしいってレベルじゃないでしょ!」

( ・∀・)「彼は、島の外からやってきた……それが、かつての星の一つだった、
      そうありえない話でもない、いつだって綺羅星は僕らの理解の外にあるのだから」

そんな言葉に、周囲もどこか平静さを取り戻していく。
刺すような視線も落ち着いて、内藤もようやく一息つけた。

( ^ω^)「それで、その、星って?」

( ・∀・)「これは、島に伝わる古いお話でね」

言って、モララーは大きなモニタ前に立ち、正面のパネルで何かを操作する、
やがて映し出されたのは、広大な宇宙の映像。

そして語り口はこうだった。

( ・∀・)「内藤君は、地球外生命体というものを信じるかい?」

(;^ω^)「宇宙人? まあ、居てもおかしくない、とは思ってるお」

( ・∀・)「なら話は早い、かつて―――」

74: 2016/11/18(金) 19:01:55 ID:NGZxpddA0

かつて、

銀河の彼方からやってきた存在が居た。


(;^ω^)「宇宙人が!? 来たのかお!?」

( ・∀・)「正確には宇宙人ではないよ、やってきたのは……星だ」



 ☆

遠い、遥か昔、古の時代。

星降る夜、島に小さな星が舞い降りた。

だが光は地に落ちることはなく、まるで意思をもつかのように辺りを漂い、

やがて吸い込まれるように、島民たちの身体へ消えていった。

すると、人々は自分の中にもう一つ、新たな意思が芽生えた事を知る。

そうして、実態の無い光でしかなかった彼らは人の身を寄り代に生を得た。


( ・∀・)「そして、寄り代となった人間は不思議な力を操れるようになった」

( ・∀・)「その力によって、この本土から離れた島は一気に発展を遂げ、
      人々は星たちに感謝し、共存の道を進んでいった」

75: 2016/11/18(金) 19:03:19 ID:NGZxpddA0

それが、古代銀河文明。

だがあるとき、そのうちの一人が子を孕んだ。
それも、運悪く難産となった。

結果、子を生むとほぼ同時に母親は命を落とす事になる。

形ある存在でない星たちに、寿命も氏も無いが、主が消えれば自身も消滅を免れない。

故に彼らは、自身を子へと移植、あるいは譲渡させ。
自分の存在を『シルシ』として受け継いでいく道を選んだ。

(;^ω^)「……!」

(;^ω^)(まさか……あの時の光って!?)

( ・∀・)「そう、君にはあるはずだ、あの輝きの下に、その証が」

(;^ω^)「じゃあ、じゃあこの島の人はみんな!?」

( ・∀・)「そう……と、言いたい所だが、確実にそうだと言えるのはほんの一握りだけ」

( ・∀・)「何故ならその証たるシルシはもう、既に失われているから」

(;^ω^)「失った?」

( ・∀・)「そう、長い年月の中、シルシの譲渡と共に星たちの存在は希薄になっていった」

しかし、星たちもただ消えていく事は望まない。
どうにかして自分たちを存続させる方法を探した。

そして人々は、星に促されるまま、ある物を創り出した。

76: 2016/11/18(金) 19:04:51 ID:NGZxpddA0

生命を持たず、超常能力的存在であった彼らが、
存分に己が力を発揮できるもう一つの身体。

もっと強いものを。
消えないものを。
悠久の存在を。

自身の新たな寄代となる人形。

超常能力発現体、サイバディはこうして完成した。

そして移植作業は始まった。

だが、結果は彼らの期待を裏切るものだった。

(;^ω^)「失敗ってことかお?」

( ・∀・)「いや、移植そのものは成功した、問題はその後」

( ・∀・)「最初に話したとおり、星たちは意思を持たない存在だった、
      それはどれだけの年月を経ても、変わらなかったのさ」

( ・∀・)「残った星たちは悲しんだ、これでは人形と変わらない」

( -∀-)「やはり人の、人間の意志こそが、何よりも尊いものだったのだと」

こうして、星たち、彼らは人の意思の中で生きていくことを選んだ。
たとえその結果が消え行く定めだとしても、心で在ることを望んだ。

( ^ω^)「……いい人、いや、いい星たちだったんだお」

( ・∀・)「そう、良き存在だったんだ」

( ・∀・)「それ故に、星たちは知らなかった」

77: 2016/11/18(金) 19:06:00 ID:NGZxpddA0

意思にも種類があることを知らなかった。


そして時が過ぎ、彼らは最早存在すらも失われ、
ただの、能力として認識されるようになった頃。


それはついに、悪意という形になった。


(  ∀ )『この力をもってすれば、世界だって思うがまま』

(  ∀ )『サイバディだ、あれを使わない手は無い!!』

シルシを受け継いだ、一部の者たちだ。

彼らはサイバディを研究し、自分たちが乗り込んで操れるよう改良を重ね、
ついには自らを星を操るもの『スタードライバー』を名乗り、
その力をもって世界を征服せんと徒党を組んだ。

(;^ω^)「それは……また大変な事に」

( ^ω^)「でも、それはうまくいかなかった?」

( ・∀・)「そう、星たちは知らずとも、人々は悪意を知っていた」

( ・∀・)「ゆえに、対策はすでに練られていた」


いくつもの星を取り込んだ、物言わぬ人形たち。

言わば友の魂と呼べる存在だ、悪用される事はあってはならない。
きたるべき際には、止めるための装置も同時に生み出していた。


それが時の牢獄、零時間。

78: 2016/11/18(金) 19:07:26 ID:NGZxpddA0

もしもサイバディが友の意思と違う別物が起動したとき、
それらは時の静止した別次元へと閉じ込められ、外部への干渉を一切封じるといったもの。

これにより、サイバディは外界との干渉の一切を封じられ、
輩共の計画は頓挫、同時にシルシも剥奪され、島からも追放された。

( ・∀・)「これが、かつてこの島で起きた…言わば歴史というものだ」

(;^ω^)「それじゃあ」

(;^ω^)「僕は、その、悪いことをしようとした人たちの…?」

( ・∀・)「否定はできない、だが輩共はシルシを剥奪されたとある」

( ・∀・)「なら前例はないが、純粋に島を出たものたちの一人、という方が
      よほど信憑性があると僕は思う、それでも疑問はあるけどね」

(;^ω^)「……」

( ・∀・)「それに、どちらにしても、かつては関係が無い」

( ・∀・)「現に今がそう」

( ・∀・)「もはや星の…存在と呼べるものは無い、あるのは、人の意思だけ
      そして善意と悪意、それらは今また、かつてと同じ事を繰り返そうと」

( ・∀・)「サイバディの、ゼロ時間からの開放を目論んでいる」

内藤は頭の中で、いくつかのキーワードがかみ合うのを感じた。
それはあの零時間の最中に、自分を導くように聞こえてきたあの声。

あの 从 ∀从 言葉。

(;^ω^)「鍵…! それが、封印の鍵…!?」

79: 2016/11/18(金) 19:09:11 ID:NGZxpddA0

( ・∀・)「そうだ、この島のどこかに、ゼロ時間の封印を施した星たちの末裔が居る」

( ・∀・)「僕らは当初、その彼女達…巫女がもつシルシそのものが、
      封印の役割を果たしていることを突き止めた、言い訳だが、知識欲のために」

(#・∀・)「だが奴らは違った、初めから封印を解く事を目的として…
      星を見守るために発足されたこの綺羅星十字団へ潜り込んだ!!!」

(#・∀・)「そして巫女を見つけた時、奴らはついに動き始めた…!」

(#・∀・)「新設したアジトを乗っ取り、解放派として僕らを追い出し、
      挙句の果てには封印の巫女の一人を攫い、そのシルシを破壊したんだ!!」

(;^ω^)「一つ目の…そう、そうだ、それで…サイバディが」

内藤の中に、不思議と知識が浮かんでくる。
四方の巫女が守る封印、それにはそれぞれ役割がある、
そして一つ目とは、まさに最初の鍵、サイバディを起動可能にする物だった。

( ^ω^)「ちなみに、その巫女っていうのは…」

( ・∀・)「彼女は有名人だから、君も知っているだろう、しぃという子だよ」

(;^ω^)(フライナイトの!? マジか…)

( ・∀・)「そうして、僕らは追いやられたが、なんとか旧アジトだけは守りぬけた、
      おかげで今まで何とか抵抗できたんだけど」

(;^ω^)「え…裏ではそんな過激な抗争があったんですかお?」

(;^ω^)(ていうか、もしかして最近の変なうわさって)

( ・∀・)「いや、幸い生徒会の目もあってね、表立った事はなく、
      あくまでサイバディでの決闘によるものだ」

80: 2016/11/18(金) 19:10:58 ID:NGZxpddA0

言って、モララーが暗闇の先を指さした。
するとライトが奇妙な柱を照らし出す。

(;^ω^)「これは?」

( ・∀・)「電気棺―――シルシを失くした僕らが星の力を取り戻すための装置であり、
      かつての…悪意が創り出した過ちその物でもある」

ジェットコースターのようなレールが敷かれた柱に向かって、
たくさんのケーブルが伸びており、それらは先端で収束してプラグのような形に。

レールを下った先には、四角い物体がある。
四隅を巨大なボルトで止められた、無骨で奇妙な箱だった。

( ・∀・)「そしてこの、シルシが刻まれた仮面」

(β∵β)

手にして見せたのは、最初に被っていた仮面だ。
どこぞの貴族の舞踏会を思わせるような、顔の上半分を隠す形。

( ・∀・)「これらを使うことで、僕らは擬似的にシルシを取り戻し、
      星の力を操る、スタードライバーとして、サイバディをも操ることが可能になる」

(;^ω^)「スター、ドライバー…」

(;^ω^)「モララーさんも? じゃあ、他にもたくさん?」

( ・∀・)「少なくともこれまでは、21体のサイバディが全てだと思われていた」

( ・∀・)「そして、情けない話だが、僕ら保守派のサイバディは、
      そのほとんどがまともに機能できないほどにやられてしまったんだ」

81: 2016/11/18(金) 19:12:07 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「そんなに多くの人間が、その解放派に?」

( ・∀・)「多く、と言えばそうだが……その事よりも奴らの主犯格
      ゴールキャットと呼ばれる男が問題だ」

(;^ω^)「え、ど、どこのお方ですお?」

( ・∀・)「通り名だよ、綺羅星十字団では互いの素性に干渉しないのがルールだったからね
      僕らは本名を伏せ、それぞれシルシと、通り名だけを公開していた」

しかし、それも綺羅星が分かたれる前のこと。
少なくとも保守派の中ではもう、そのしきたりはなくなっている。

ただ、向こうに素性が知られるのはよろしくない。
さすがにお互い多少の推測はついているが、そこは暗黙の了解。

( ・∀・)「内藤君も、できれば僕が仮面をつけている際には網羅と呼んでほしい」

(;^ω^)「はぁ…それで、そのごるキャットさんが?」

(;・∀・)「奴は、強い」

(;・∀・)「先日の戦いでは傍観していたが、あのリアジュウブルなんかとは
      比べ物にならないほど、奴の駆るレシュバルは強すぎる」

(;・∀・)「奴一人のために、僕らは連敗を喫し、幾つかのサイバディが破壊された」

( ・∀・)「いよいよ追い詰められ、対抗する術も失くしかけた……
      その時だ、奴らは再び巫女を連れ去ろうとした」

( ・∀・)「その巫女こそが、そこに居る最後の鍵でもある……ツンさんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……っ」

(;^ω^)(最後…?)

( ・∀・)「そして同時に現れたのが、君だ、内藤君」

82: 2016/11/18(金) 19:13:45 ID:NGZxpddA0

(; ω )「……」

( ・∀・)「これが…少なくとも僕らが持ち得る情報の全てであり、
      君が先日より巻き込まれた事件の、全てだ」

(; ω )「そんな……それじゃあ、僕は―――」

( ・∀・)「そう、君は僕ら…いや、奴らから見ても、スペシャルなんだよ」

( ・∀・)「とうに失われた筈のシルシを携え、棺無しでサイバディに乗り込み、
      星と一体となる銀河美少年、それが君だ」

周囲の視線が集まっているのを、内藤は改めて感じていた。
同時に、少なくともこの空間で注がれているその意味は、重いものだ。


( ・∀・)「もう一つ付け加えるなら、君の乗るサイバディ」

( ・∀・)「あれも、僕らの記録には無い存在……22体目の、謎のサイバディという事になる」

(;^ω^)「じゃ、じゃあ…あの声は? あれは何なんだお?
       どこか知らない世界から聞こえてくるような、あの声は」

( ・∀・)「声?」

(;^ω^)「そうだお、ゼロ時間に、サイバディに触れたとき、聞こえてくる声だお
       あの声が僕を導いて、僕にやるべき事を教えてくれたんだお」

( -∀-)「なるほど……」

(;^ω^)「?」

( ・∀・)「君の中の星は、今でも輝いているんだね」

(;^ω^)「星……さっきの話の? あの声は、じゃあそういう事なのかお!?」

83: 2016/11/18(金) 19:15:20 ID:NGZxpddA0

( ・∀・)「そう考えるのが自然だ」

(  ω )(そう……なの、かお…?)

確かにモララーの言うとおり、これまでの話が真実ならば、それが自然だ。
かつての星の意思が、内藤を導いている。

けれど、もやのかかったような頭の奥。

記憶の片隅にある事柄が、それを否定している。

暗闇。

波音。

星空。

そして。




从 ∀从

そこに誰かが居た。
何より尊く、何より輝いて、何より憧れて、そして何より――――儚くて。

夢で見ただけの。大事な何か。

しかし夢は夢、いやむしろ、その夢こそが星の造った物なのかもしれない。

84: 2016/11/18(金) 19:17:10 ID:NGZxpddA0

( ・∀・)「そういう訳だ内藤君、言葉を繰り返すが」

( -∀-)「僕らは君を支援する用意がある、綺羅星の一つとして共に……いや」

( ・∀・)「君の力を、僕らに貸してほしい」

(  ω )「………」



しばしの、静寂があった。



(  ω )「一つ、確認したいですお」

( ・∀・)「聞こう、幾つでも」

(  ω )「ここの人たちは、巫女を、ツンを…守るために居る、それでいいのかお?」

( ・∀・)「無論、僕らは巫女の封印を守るためにこれまで戦ってきた、
      それはこれからも変わらない、君の返事にかかわらずだ」

( ^ω^)「なら、歩く道は一緒だお」

( ・∀・)「ああ―――では」

内藤はモララーと固く握手を交わす。
その傍らでは、終始落ち着かない様子だった長岡がようやく一息ついた様子で、
ツンは目を閉じ、何か考えるようなそぶりを見せた後、すぐに顔を上げた。

85: 2016/11/18(金) 19:18:23 ID:NGZxpddA0

( ^ω^)「それで、これからどうしたら?」

( ・∀・)「しばらくは奴らも大人しくしているだろう、普通に過ごしてくれて構わないよ」

( ・∀・)「有事の際には恐らく、嫌でも分かる事だ、その際には力を貸してほしい」

(;^ω^)「……もし、私生活で襲われたら?」

( ・∀・)「それは無いさ、生徒会が居る」

(;^ω^)「そういえばさっきも言ってましたお…でも、生徒会って言ったって」

( ・∀・)「彼らもスタードライバーだ」

(;^ω^)「え!?」

( ・∀・)「クール会長と、いつも連れているモナーとシュール、この三人
      彼らは中立として、表沙汰の事件が起きることのないよう監視役を承っている」

( ・∀・)「中でも会長は別格だ」

( ・∀・)「かつて創られたサイバディの中でも、頂点とうたわれし存在、
      これまで現れる事もなかった王のシルシを持つ、ザメクのスタードライバー」

( ・∀・)「彼女に逆らえば、束になろうとまず無事には済まないだろう、故に…」

(;^ω^)「クーさんが…」

( ・∀・)「………?」

( ・∀・)(そういえば……会長が転校生をよく気にかけていると耳にした事がある)

( ・∀・)(会長は、まさか彼の存在を知って―――?)

86: 2016/11/18(金) 19:19:53 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「…じゃあ、普通に学校生活をおくる分には」

( ・∀・)「そう、許容されているのはゼロ時間の決闘のみ、
      傷害事件でも起こそうものなら……奴らもその辺りは慎重だ、問題ないだろう」

( ・∀・)「それと…もう一つ、いや一人、紹介しておこう、君のうしろに居る」

ζ( ^ω^)「?」

ζ(゚( ^ω^)「…?」

ζ(゚ー゚(゚ω゚;)「!!!!!??」ビクッ

ζ(^ー^*ζ「こんにちわぁ」
(;^ω^)(近っ、近い!!)

(;^ω^)「あの、この子は?」

( ・∀・)「彼女はデレ、二つ目の鍵、封印の巫女が一人だ」

ζ(゚ー゚*ζ「みたいなの、よくわかんないけど」

(;^ω^)「わ、わかんないて」

ζ(゚ー゚*ζ「あなたも自分のことよくわからないって言ってたじゃない、
      それと同じ、私もこの学校に入るまで知らなかったもの~」

仲間ね、と言ってデレは内藤の手を取った。
小さく細い指が絡む感触に、内藤の思考はそこで止まった。

87: 2016/11/18(金) 19:20:55 ID:NGZxpddA0
 _,
ξ゚⊿゚)ξ

(;^ω^)ギクッ

しかし、突き刺さるような視線に我に返ると、すぐさま手を離す。
デレはそんな様子を知ってか知らずか、不思議そうに首をかしげた。

ζ(゚ー゚*ζ「そういえば動画見たよ? すごくかっこよかったね~」

(;^ω^)(完全にテレビ感覚のノリ……)

( ・∀・)「これでも、本来拒絶することが出来ないはずのゼロ時間への召集から
      逃れ続けてきた上級ドライバーの一人だ、こちらで保護している」

(;^ω^)(これでもって言った)

ζ(゚ー゚*ζ「でも本当、別人だねー…わ、お腹ぷにぷにしてる!」

(*^ω^)「ちょ、やめ」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ

(;^ω^)「ひいいい」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ内藤君も、私を守るためにがんばってくれるのかな?」

(;^ω^)「え? えと、まあ、そうなると思う…」

ζ(^ー^*ζ「そうなんだ……」

朗らかな笑顔で、両手をあわせ、可愛らしい仕草で、
ポツリと、小さく、しかしデレは確かに言った。

88: 2016/11/18(金) 19:22:27 ID:NGZxpddA0






「いいのに―――」



同時に、下校時刻を告げる鐘の音が、遠く響く。
モララーはそれぞれに解散と帰宅を告げた。

( ゚∀゚)「もうこんな時間か」

ξ゚⊿゚)ξ「今日のところは退散ね、行きましょう内藤君」

ξ゚⊿゚)ξ「……内藤君?」

(;^ω^)(今の)

内藤はさりゆく背中を見つめていた。

すぐ側に居たから、その言葉が最後まで聞こえた。
その意味をすぐには受け入れられず、困惑したまま。

89: 2016/11/18(金) 19:24:25 ID:NGZxpddA0



・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・




帰り道、特に会話もないまま、水平線を横目に夕暮れの道を行く。
道路わきの道はすでに人通りもなく、車すら通っていない。

この一年ですっかり慣れ親しんだ、ツンと二人の下校。
初めの頃とはまた違う、何ともいえない気まずさがある。

けれど苦ではなく、無理して話をする必要もない、それを互いに知っていた。

だが、どうしても気がかりがある内藤は、今日は一歩踏み出した。

( ^ω^)「ツン、話というか、相談があるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ん、なぁに?」

( ^ω^)「……島から出られるなら、って、どういう意味だと思う?」

ξ゚ -゚)ξ「っ」

(;^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「なんで?」

(;^ω^)「え、ああ…デレさんが、最後に小声で言ってたんだお」


「いいのに」

「それで、島を出ることができるなら」

90: 2016/11/18(金) 19:25:34 ID:NGZxpddA0

これまで、どこかゆるふわな雰囲気だった彼女とは思えないような、
過激で、しかし耳から離れないほど、悲しい声だった。


(;^ω^)「ツンも、確か同じようなこと言ってたお?
       その……役割ってのは、やっぱりそんなに重いものなのかなぁ、って」


言いながら、ふと気づく。
横を歩いていたはずのツンが、足を止めていた。

ふりむけば、夕日を横から受けてツンの表情が見えにくい、
手で顎に触れ、何かを考えているような仕草。

ξ゚⊿゚)ξ「……そうね、何せ、私たち巫女は、今まで一度も島を出たことがないくらいだから」

(;^ω^)「出たくない、わけじゃないんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、皆そうなんだと思う」

( ^ω^)「で、でもほら、ちょっとくらいなら、いいんじゃないかお?」

(;^ω^)「だから、その…ええーと……」

91: 2016/11/18(金) 19:26:31 ID:NGZxpddA0

二人っきりで、島の外へ遊びに行こう。
つまり、デートをしたい、のだが。

先の言葉が出てこない。

長い時間を共にした。

気を許した間柄。

告白すら、もう軽くできてしまう。

はずなのに。


『最低だよね』

『あなたの気持ちを、利用して』


そう思っていた、だけだったのだろうか。

今でも、彼女に対する感情は一つだ。
想いは変わっていない、ただ。

少なくとも自分への好意が、これまで思っていた物と違うことを知ってしまった。
内藤は自分でも気づかないまま、臆病になっていた。

92: 2016/11/18(金) 19:27:34 ID:NGZxpddA0

その結果。



(;^ω^)「みんなで、遊びに行こう、僕案内するお」


そんな逃げの言葉を吐いていた。
対するツンは、一度、長く頷いて、俯いたまま、間をおいてから。


「うん、その時はお願いね」


笑顔で答えた。


しかしそれが作られたものであり、
表情には影が落ち、目の光は暗く淀んでいたことは、
そんな様を眺める猫だけが、知っていた。





・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・

93: 2016/11/18(金) 19:28:28 ID:NGZxpddA0

それから、数日。

普通の日々を送っていた内藤だったが、当番であるゴミ捨てに向かう最中、
どこかで見かけたことのある姿を見つけ、立ち止まる。

すると相手も気づいたようで、視線を合わせるなり微笑み、歩み寄ってきた。


ζ(゚ー゚*ζ「や、奇遇ね~」

( ^ω^)「あ、どうも」

ζ(゚ー゚*ζ「相変わらずぷにぷにー」

(;^ω^)「やめてやめて」

それにしてもボディタッチが激しい、これは下手すれば、
しなくても、勘違いさせられてしまう危ないやつだ。

内藤は心をつよく持とうと思う。

しかし、目の前で笑う彼女を見ていると、
すぐさま折れそうになる自分に気がついた。

( ゚ω゚)(おああーーーー落ち着け僕、これは絶対違うやつぅーーーー!)

ζ(゚ー゚*ζ「変な顔ー」

(;^ω^)「そ、それより、あれから変わりないかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「ん、最近はずっと平和よ」

94: 2016/11/18(金) 19:29:11 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「何よりだお……あ」

ふと、先日の別れ際を思い出す。

きっと色々思うところあっての事、とは思うもののやはり気にかかる、
なにせ、自分が助けると言った返事がノーだったのだ。

内藤はそれとなく、あのときの言葉の意味を聞いてみる事にした。


ζ(゚ー゚*ζ「だって、シルシが無ければ気兼ねなく外に遊びにいけるでしょ?」

(;^ω^)「それだけ?」

ζ(゚ー゚*ζ「それだけよー、なんで?」

(;^ω^)「そんなに、島の外って行きたいものなの?」

ζ(゚ー゚*ζ「もちろんだよ~!」

( ^ω^)「でも、ここは海も綺麗で、空も綺麗で星もよく見えて凄いし
       それに、街だってちゃんとしてる…」

( ^ω^)「島の外って言っても、都心まで行かなきゃそう変わらないお?」

むしろ、ここより何も無いところだって多い。

にも関わらず、彼女達は言う、島の外。
あくまでも、都心に行きたいでもなく、島の外だ。

内藤が感じている違和感は、そこにある。

95: 2016/11/18(金) 19:42:04 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「何よりだお……あ」

ふと、先日の別れ際を思い出す。

きっと色々思うところあっての事、とは思うもののやはり気にかかる、
なにせ、自分が助けると言った返事がノーだったのだ。

内藤はそれとなく、あのときの言葉の意味を聞いてみる事にした。


ζ(゚ー゚*ζ「だって、シルシが無ければ気兼ねなく外に遊びにいけるでしょ?」

(;^ω^)「それだけ?」

ζ(゚ー゚*ζ「それだけよー、なんで?」

(;^ω^)「そんなに、島の外って行きたいものなの?」

ζ(゚ー゚*ζ「もちろんだよ~!」

( ^ω^)「でも、ここは海も綺麗で、空も綺麗で星もよく見えて凄いし
       それに、街だってちゃんとしてる…」

( ^ω^)「島の外って言っても、都心まで行かなきゃそう変わらないお?」

むしろ、ここより何も無いところだって多い。

にも関わらず、彼女達は言う、島の外。
あくまでも、都心に行きたいでもなく、島の外だ。

内藤が感じている違和感は、そこにある。

96: 2016/11/18(金) 19:42:47 ID:NGZxpddA0

これではまるで、ただ、島から出ることが目的のよう。

デレはしばし、微笑んだまま内藤を見据え、
やがてゴミ捨て場近く、校舎階段へと腰掛けた。

ζ(゚ー゚*ζ「………これが、そっか…」

( ^ω^)「?」

ζ(^ー^;ζ「なんか…わかっちゃうなぁ、あの子のきもち」

(;^ω^)「何の話だお?」

ζ(゚ー゚*ζ「こっちの話、それよりも…じゃあ教えてよ、外のこと」

(;^ω^)「いいけど…別に変わらないお?」

ζ(゚ー゚*ζ「いいの、あなたから、聞きたいの」

上目遣いに、デレが言う。
心臓が早鐘を打つのを内藤は感じていた。

( ゚ω゚)(あああああああああああおおおおおおおおおおん!!!!!)

( ゚ω゚)(罠、これは罠だああああああああああああああああああああ!!!!)

ζ(゚ー゚*ζ「変な顔ー」

97: 2016/11/18(金) 19:43:51 ID:NGZxpddA0

そうして、しばらく二人は談笑に興じた。
気づけば内藤も突っ込んだことまで口にしており、ふとした言葉にハッとするも、
デレはさして気にした様子もなく、それに答えていた。

特に気にかかったのは。

やはりデレの家はそういう家系か、と問えばそんなことはない、普通の家だと答え。
今まで島を出たことはないのかと問えば、やはり無いと答えた。

(;^ω^)「それは、しきたりだから?」

ζ(゚ー゚*ζ「んー…そうね~、そんな感じかなぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「……あとは、こわいのかも、しれないね」

( ^ω^)「怖い?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、嫌な思いも、するかもしれないから」

(;^ω^)「どんなイメージ……」

( ^ω^)「まあ、なんなら、その時は僕が案内するお」

ζ(゚- ゚*ζ「…内藤君が?」

ふ、とデレの瞳に影が落ちたのを内藤は感じた。

ζ(゚ー゚*ζ「それって、もしかして、私デートに誘われてる?」

(;^ω^)「え、あ、いや、今のは、そんなつもりでは…!」

98: 2016/11/18(金) 19:45:11 ID:NGZxpddA0

ζ(^ー^*ζ「いいのに~…わたし、実はあなたのこと……」

(;゚ω゚)「ふぁっ!?」

ζ(゚ー゚*ζ「冗談よー、また変な顔してるー」

(;^ω^)「ぐぬぬ」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへ…いじわるするから、おかえしっ」

(;^ω^)「してないのに!?」

言って、デレは立ち上がって日向のほうへ。
すると目を細め、天を仰ぐ。

「まぶしい…なぁ」

そんなささやきが、聞こえた。

(;^ω^)「デレさん?」

内藤はそんな背を追いかけた。
デレはそのまま、手をかざして陽を避ける。

そして、あの時のように、ポツリと、口にした。

ζ(゚ー゚*ζ「私ね……太陽って、苦手なんだ」

99: 2016/11/18(金) 19:46:30 ID:NGZxpddA0

( ^ω^)「それはまた、どうして?」

ζ(゚ー゚*ζ「繰り返しているから」

ζ(゚ー゚*ζ「何千、何万回と、ぐるぐるぐるぐる、同じところを回っている、
      それって……恐ろしいことだと思わない?」

(;^ω^)「ん、んー…どうだろう…」

(;^ω^)「いやでも、繰り返すから、そうやって光が生まれるわけで…」

ζ(^ー^*ζ「ふふっ、ごめん、変なこと言ったね…私おかしいでしょ? 自覚はあるんだー」

( ^ω^)「んー、まあでも、太陽嫌いなのは別に変じゃないお?」

ζ(゚ー゚;ζ「え? そ、そう?」

( ^ω^)「うん、女の子が日差し…紫外線とか気にして避けるのは、普通だったお」

( ^ω^)「むしろ都心の方じゃ、太陽を避ける術ばかり磨かれてたお、
       やれ日傘やら、クリーム塗らなきゃだの、なんか大変そうだったお」

ζ(゚ー゚*ζ「………避けても、いいの、かな」

( ^ω^)「健康考えたら避けないほうがいいかもしれないけど……
       別に嫌なら、日陰に逃げたっていいと思うお」

ζ( ー *ζ「逃げても………いいの?」

100: 2016/11/18(金) 19:47:56 ID:NGZxpddA0

( ^ω^)「いいお、それなら、あっちに戻ろう」

言って、内藤はようやくデレの表情に気がついた。
彼女は、その瞳に涙をためていた。

(;^ω^)「え…」

ζ(;ー;*ζ「内藤君は……私を、巫女を守ってくれるんだよね?」

(;^ω^)「そ、その、つもりだお…?」

ζ(;ー;*ζ「じゃあ………助けては、くれないのかなぁ…?」

(;^ω^)「いや、だから僕はそのつもりで…!」

ζ(;ー;*ζ「これから先…ずっとそうなのかな……変な人たちに付け狙われて、
       逃げることもできずに、ずっとこの島の中で…?」

ζ(;ー;*ζ「ねえ、内藤君……もし、もしも私が――――」


言いかけた、その瞬間だった。


( ゚ω゚) !?

世界がすべての色を失くし。
モノクロの中に閉じ込められていく。

そして全てが静止した。

101: 2016/11/18(金) 19:49:27 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「これは……ゼロ時間!?」

止まった世界の中、内藤は胸元から十字の光を放ち、周囲を見渡した。
まだ変化はない、目の前にはやはり言葉も途中に止まったままのデレが居る。

だが、今度はデレの胸元からも光が溢れ、やがて一つの形を象った。
モノクロだった彼女にも、再び色が戻っていく。

そして、浮かべていた涙を拭い、再び視線を合わせた。

ζ(゚ー゚*ζ「……呼んでる」

( ^ω^)「……みたいだお」

次いで、遠くで光の柱が立ち上った。
天を貫かんばかりに伸びた光は、やがて羽のように開き、
その中心部から、まばゆい世界が広がり、モノクロを覆い隠していく。

眩しさに目を閉じる内藤だったが、次に目を開けたとき、
そこに広がっていたのは、やはりあの時と同じ景色だ。

空には大きな模様と、鎖のような物が蠢いている。
地は白く、どこまでも続く果てには炎のような光が揺らいでいた。

ただ違うのは、自分は今、シャボン玉のような中で浮かび上がっていること、
もう一つは、今度ははじめから、二つの巨体が存在している事だ。

(;^ω^)(サイバディが二体…!? どういう事だお、これはどうすれば!?)

102: 2016/11/18(金) 19:51:26 ID:NGZxpddA0

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君!」

( ^ω^)「あ、ツン」

シャボンの一つが、流れるように近づいてくる。
中に居るのはツンだ、しかし気のせいか、近づくにつれ表情が険しく。
  _,
ξ゚⊿゚)ξ「は?」

(;^ω^)「ひい!?」

ζ(゚ー゚*ζ「やだ、怖い顔」

内藤はデレと同じシャボンの中、身を寄せ合っていた。
そして、ツンはとても冷ややかな声色で言った。

ξ゚⊿゚)ξ「何をしてるの…?」

(;^ω^)「いや、これは、たまたま……」

ξ゚⊿゚)ξ「内藤君じゃない! あなた、どういうつもり!?」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

ξ;゚⊿゚)ξ「なんでここに居るの!? そんな事をしたらあいつら…!!」

ζ(゚ー゚*ζ「私だって、見届けたいの……わかるでしょ?」

ξ;゚⊿゚)ξ「っ……」

103: 2016/11/18(金) 19:53:00 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「そ、それより、モラ……網羅さんは!? どこに!?」

((β∵β)「ここに居るよ、内藤君」

(;^ω^)「ああ、よかった…あの、この状況は」

((β∵β)「決闘だよ……形式上は、保守派と解放派の」

(;^ω^)「僕も行った方が…?」

((β∵β)「不要さ、結果がどうあれ、特に彼らに関しては」

(;^ω^)「へ? それはどういう…」

((β∵β)「それより警戒してくれ、デレさんがこちらへ来てしまった以上、
      奴らはどんな手でくるかわからない…!」

( ^ω^)「奴ら……」

そんな内藤たちのちょうど反対側に、数人分のシャボンが浮かんでいる。
彼らの視線もまた同様に、目下のサイバディではなくその先にあった。

(('οο)「アレって、巫女じゃナイの?」

(( δδ)「そ、そうなんです…?」

((ρÅρ)(ついに現れたか、日氏の巫女)

((ρÅρ)「この好機を逃す手はない…か、あとは奴がうまくやれば…」

104: 2016/11/18(金) 19:55:08 ID:NGZxpddA0




『さあ、役者は揃ったぞ!』

『始めていいんでしょ?』



次いで、巨体から声が響いてくる。
そして、それに始めろ、と答える声があった。

同時に、二体のサイバディがそれぞれ輝く剣を手に、構えを取る。
よく似た姿の、黒ずくめのマントを羽織ったサイバディはまるで兄弟のよう、
しかしそれぞれ特徴もあり、輝く剣と同様の、赤と黄色のカラーリングがされていた。


((`γ´)『往くぞ、オートスター!!!!』
赤色の光る剣を振るい、一体が駆けた。

(`λ´))『来いよ、ジャンヌスタァアアアア!!!』
黄色く輝く剣を真っ直ぐに、受ける姿勢を取る。


そして、二体が衝突。


爆発めいた衝撃が空間を揺らし、砕け飛んだ地面が衝突の威力を物語り。
ぶつかりあう光の剣が、電撃のようなエフェクトを放ちながら両者の間に散る。

だがそんな均衡も僅かな間、すぐさま剣戟は二つ、三つ、と重なっていく。

白い雷光が幾度も弾け、爆発音が鼓膜を叩く。

105: 2016/11/18(金) 19:57:34 ID:NGZxpddA0

平らだった地面はブロック状に抉れ。
内藤はそんな惨状にあらためて恐怖を覚えた。

(;^ω^)(こんなものが解き放たれたら、それこそ大変だお
       道も建物もメチャクチャになる、シンゴジラとどっこいだ)


(`λ´))『そこだ!!』

((`γ´)『甘いわ!!!』

(`λ´))『っ……は、ははは!!! いい、最高だ!!』

((`γ´)『ああ、ああ!!! この高揚感、もっとだ、もっと打ってこい!!!』


やがてそんな中に笑い声が響く頃。
内藤はようやくこの戦いの違和感に気づいた。


周りが、どうもこの戦いに対してあまり関心がない。
現にこちらはデレと、反対側の方へとばかり目を向けているし、
相手側も遠くて見えないが、少なくとも戦いを応援するような空気ではない。

さらに言えば、いくつか浮かんでいるギャラリーと思われるものたち。


「変身しないのかなー」

「やっぱ詐欺だよあれ…」

「まだー?」


(;^ω^)「……」

106: 2016/11/18(金) 19:59:32 ID:NGZxpddA0

明らかに、内藤へと向かって視線と、野次を投げかけている。
緊張感も何もあったものじゃない。

だが、その均衡もついに崩れる時が来た。

(;^ω^)(あっ!)

((`γ´)『ぬっ!?』

内藤側に立っていた、赤い剣をもつ方のサイバディが、
地面の大穴に足を取られ、バランスを崩して片膝をついてしまう。

(`λ´))『もらったああああああああ!』

その隙を逃さず、黄色い剣をもつサイバディが地を蹴り砕く。
暴風のような勢いで迫って斬りかかる。

よろめきながらも抵抗しようとする赤い剣の姿があるが、
突撃してくる勢いを頃しきれるわけもなく、
最早成すすべもないまま、黒衣の姿が黄色い光に貫かれた。


だがそれだけでは終わらない、貫いた勢いそのままに、
今度は黄色い剣が横薙ぎに払われれば、横線の残光と共に、胴体を真横に切り裂かれ、
真っ二つになった上半身と下半身は、やけにゆっくりとした動作で別方向へと倒れた。

107: 2016/11/18(金) 20:01:39 ID:NGZxpddA0

((`γ´)『ちぃ…!』

(`λ´))『凡ミスだな、だがこれで…!!』


瞬間。


(`λ´))『っっ、何!?』


どこからか、まばゆい光が放たれ、その場の誰もが動きを止めた。
だが、それもつかの間、すぐに原因は察せられ、一部からは歓声があがる。

光の出所は、内藤だった。


(#^ω^)「行きますお…!」

((β∵β)「待て、まだあいつらは…!」

静止の声もあったが、今、目の前で仲間と思わしき相手がピンチだ。

今しがた、ゴミ捨て場で見てしまった涙の件も相成って、使命感に背中を押され、
これ以上黙ってはいられないと、内藤はシャボンの球体から駆け出していた、

そして飛び出しながら、内藤は叫ぶ。

(#^ω^)『アプリボワゼーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!』

108: 2016/11/18(金) 20:05:32 ID:NGZxpddA0

胸の十字の光がより強く輝くと、呼応するように何もない空間に巨大なひびが走る。

亀裂は飛び出した内藤の背中側から広がっていくと、奥には輝く世界が覗く。

ついには零時間の景色を砕き割るようにして、まず現れたのは巨大な手。
そしてこじ開けた穴を無理やりくぐるかのように、紅白のシルエットが姿を現した。

それはやはり、貴族の帽子を被ったような姿に、腰元には浮遊したフィンが並ぶ。
この場に至っては異端そのものである、22体目のサイバディ。

『颯爽登場!』

胸部の球体に十字の光が走れば、次いで人影が現れた。

从 ゚∀从『銀河、美少年! タウ・バーン!!』

名乗りを上げ、再びあの姿となった内藤は、
そのまま二体のサイバディの間へと割り込んだ。

全周囲モニタ、あるいは透明な球体の中とも思える空間から、
自分の操るサイバディの一部が見える。

試しに片手をあげてみれば、巨大な腕も同じように動く。
最早これは、操るといったものではなく、ただ、自分の身体を動かす事と変わりない。

まさに一心同体。

同時に、全身に力がみなぎるのを感じる、これなら、これならば、と内藤は思う。

109: 2016/11/18(金) 20:07:14 ID:NGZxpddA0

从 ゚∀从『そこまでだ、これ以上やるなら僕が相手になる』

(`λ´))『あーららいいとこだったのに……主賓がきちゃったよ』

从 ゚∀从『迷惑だったかい』

(`λ´))『ヘヘ、とんでもない、お待ちかねだってんだ………よぉ!!!!』

言葉より先に、黄色い剣のサイバディがタウバーンへと斬りかかる。
だが、その行動は背後に現れた存在によって止められた。

(`λ´))『っ、ジャンヌスター!?』

从;゚∀从『お、 無事だったk……ええ!?』

((`γ´)『まったく、こいつと闘りあう時用のとっておきだったんだがな…』

見れば、赤い剣を持つ黒衣のサイバディは、やはり上下に分断されたままだ。
しかし、上半身は剣を構えたまま、宙に浮かび上がっている。

((`γ´)『何にせよ、抜け駆けは許さんぞオートスター』

(`λ´))『いやいや、そんなつもりは』

(`λ´))『それよりどうだ、もういっそ二人がかりでこいつを…』

((`γ´)『そんな見え透いた手に乗るか、それにもう止めだ……興がそがれた』

110: 2016/11/18(金) 20:09:50 ID:NGZxpddA0

(`λ´))『何故だ、絶好の機会だぞ!』

((`γ´)『……この状況下では、どちらについても面白くない』

(`λ´))『まーたフェア精神? ほんと、変なとこ頑固だよ』

((`γ´)『とにかく止めだ、帰るぞオートスター』

(`λ´))『しょうがないな…』

言って、二体の黒衣姿が光に包まれ、二体の巨人がその場から消え去り、
跡には仮面をつけた二人組みが腕を組み、タウバーンを見上げていた。

从 ゚∀从

((`γ´)(……あいつ)

((`γ´)(ここまでを見ていて、まだ俺を仲間だとでも思っているのか?)

ジャンヌスター、兄者はふと、ここ数日間の事を思い返す。

彼がスタードライバーとして得た能力は憑依。
この力によって、兄者は意思の弱い他生物のからだを乗っ取り、
猫や鳥となって内藤の行動を観察していた。

((`γ´)(巫女のために戦う、か…まるでどこぞの誰かさんのようだな)

111: 2016/11/18(金) 20:11:21 ID:NGZxpddA0

(`λ´))「で、勝敗はどうするんだよ?」

((`γ´)「お前の勝ちでいいさ」

(`λ´))「え、マジ? ラッキー」

((`γ´)(ならば見せてもらおう銀河美少年、その願いが過ちと知ったその時
       お前はどうする、それでも戦うと言えるのか、それとも―――奴同様に)


ちらりと兄者は解放派の面々を一瞥すると、可笑しそうに微笑んだ。
一方、そんな勝手気ままな兄弟の行動に、解放派の一人が怒りを顕に身を乗り出す。

(('οο)「…あいつラ、また勝手なコトを!!」

((ρÅρ)「放っておけ、それよりも―――」


ζ(゚ー゚*ζ「終わったの?」

ξ゚⊿゚)ξ「そのはず、だけど……内藤君?」

从 ゚∀从『……』

サイバディに乗り込んだまま、内藤は周囲を見渡した。
あたりには、シャボン玉がいくつも浮かんでいるばかりで変化は無い。

だが変化が無いゆえ、内藤は違和感を覚えた。

112: 2016/11/18(金) 20:13:51 ID:NGZxpddA0

((β∵β)「どうした内藤君、サイバディがあってはゼロ時間は解けない、終わったなら」

从 ゚∀从『来る』

え、という誰かの疑問符が、突如として響いた爆音によってかき消された。
次いで、遠く炎の影から煙が生まれ、一筋の線となって伸びてくる。

ブォォオオオン、という音を連れ、姿を見せたのは巨大なバイクのシルエット。
それはタウバーンの周囲を大きく旋回し、白い地面にいくつもの跡を刻みながら、
高速で走行し、やがて正面にて停止すると、ウィリーのような行動を取る。

見れば前後のタイヤ部は、円形の光そのもので、
光が消えると両方の先端がふたつに別れ、変形と共に一つの形となっていく。

ζ(゚ー゚;ζ「な、なにあれ!?」

((β∵β)「テトリオート!? ドッグキャットか!!」

紺色にマゼンタのラインが走るサイバディだった。
喉元には特徴的な四本のマフラーが覗き、排気の煙が立ち昇る。

ミ(`θ´)『よお銀河美少年、いきなりだが…俺は解放派として、タウバーン、お前に決闘を申し込む!!』

从 ゚∀从『決闘…? ああ、いいよ、受けて立とう!』

ミ(`θ´)『へ、いい度胸だ、なら威勢だけで終わるなよ?』

113: 2016/11/18(金) 20:15:55 ID:NGZxpddA0

((β∵β)「ま、待て!!」

从 ゚∀从『ん、網羅さん? どうしたんだ?』

((β∵β)「ドッグキャット!! なぜ、どうやってここに居る!! 」

((β∵β)「まさか……まさか、貴様にもシルシが!!?」

ミ(`θ´)『おいおい、早合点だぞ』

ξ゚⊿゚)ξ「生徒会の棺を…使ったのね」

ミ(`θ´)『正解、あいつらが闘うってんで、潜り込んでずっと待機してたんだわ』

((β∵β)「馬鹿な…そんな真似をしたら連中も黙っては」

ミ(`θ´)『お前が馬鹿、ちゃんと許可とったに決まってんだろ』

((ρÅρ)「ふん…網羅、あの問題児共が揃って棺を使うんだ、念のために対抗策を講じるのは当然のことだろう」

((β∵β)「っ…ゴールキャット、貴様が…!」

ミ(`θ´)『さあ、話は終わりだ!』

ミ(`θ´)『行くぞタウバーン、この俺ドッグキャットと!』

言って、紺色のサイバディの両腕、シールド状の装甲に先ほどの光が灯る。
しかし今度はギザギザの形状で、丸ノコのように回転し火花を散らす。

114: 2016/11/18(金) 20:17:49 ID:NGZxpddA0

ミ(`θ´)『このサイバディ、テトリオートがお前をぶっ倒す!!!』

そして、その二つをタウバーンへと投げつけた。
光輪はそのまま回転を強め、空気を切り裂き飛翔する。

从 ゚∀从『おっと!』

しかし内藤、タウバーンはそれらを難なくすり抜ける。
避けた光輪は地面に大きな亀裂を二つ、綺麗な線を描いて伸びていく。

从 ゚∀从『流石に追尾はしないか』

从 ゚∀从『って、あれ?』

ふりむいて光の行くさまを見届けた後、ふたたび正面を向くが、
そこには紺色のサイバディ、テトリオートの姿は無く、
煙と大きなタイヤ跡だけが残されていた。

从;゚∀从『消え…? っ!!』

と、言葉も途中、タウバーンが背後からの衝撃に身をよろけさせる。
内藤は右腕にしびれと、痛みを感じていた。

ミ(`θ´)『今のを避けるか……褒めてやる』

从 ゚∀从『どーも、あんたもすげー早いな』

115: 2016/11/18(金) 20:19:29 ID:NGZxpddA0

ミ(`θ´)『当然だ、だが……まだこんなものではないぞ!!』

いつの間にか、最初に見たバイクの姿となったテトリオートが、
再び排気の爆音を響かせながら、地面を抉るように発進、
すぐさま、目でも追いきれぬ速度で旋回を始めた。

内藤も追おうとはするものの、あまりにも速度が違う、
ほぼ立ちすくんで警戒するのに精一杯だった。

ミ(`θ´)『もっとだ……もっと早く…!!』

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君!! 危ない!!」

从;゚∀从『っっ…! ぐぁ!!』

やがて、光るタイヤが作る残光だけが見えるほどの速度に達すると、
当初は掠めるだけだったものが、ついには避けきれず、受けた手が弾かれた。

从;゚∀从『いてて……こりゃ止めるのも無理そうだな』

ミ(`θ´)『どうした、抵抗もできないのか!?』

从 ゚∀从『ならば…!』

从 ゚∀从『銀河を満たせ、タウの輝き!!』

タウバーンの周囲に、いくつもの十字の光が輝く。
それらは両肩から手のひらへと収束し、輝く玉となり、

(('οο)「アレは、リアジュウブルをやった光…!?」

116: 2016/11/18(金) 20:21:13 ID:NGZxpddA0

从 ゚∀从『タウ・銀河…ビーーーーーーーーーム!!!!!!』

一筋の光線となって、今も疾走するテトリオートまでの空間を貫いた。
だが、それもあと一歩届かない、追従する形でビームが地面を抉っていく。

ミ(`θ´)『ああ、いいぞ…テトリオート!!』

从;゚∀从『何!?』

と、そこでテトリオートが反転、勢いそのままにビームを掻い潜り、
線に沿って直進、さらには速度を重ねて上げて、
ついにタウバーン本体を捕らえた。

衝撃。

吹き飛ばされたタウバーンの巨大が宙に浮かび、

全身が痺れ、浮遊感だけがそこにある。

誰かの悲鳴を聞きながら、内藤の意識は。




(; ω ) か、かてない…

そんな言葉に支配されかけていた。

117: 2016/11/18(金) 20:22:20 ID:NGZxpddA0

(  ω ) あんな早いの、どうしたら、こわい、むりだお、だけど


けれど、それでも折れずにいられるのは、
ひとえに、聞こえてくる声があるからに他ならない。


「諦めるなって、まだ終わってないぞ」


サイバディに乗り込んだときから、ずっと声は聞こえている。
恐れや不安も、この声が励まし、内藤に力と勇気を与えていた。


(  ω ) でも、いわれたとおりにしたのに

「言われた通りにしか、してないからだよ」

「もっとよく見ろ、そして考えろ、大丈夫、やれるさ」

「なにせ」




从 ∀从「お前には、わたしがついてるんだから!」

118: 2016/11/18(金) 20:25:21 ID:NGZxpddA0

从;゚∀从「っ!!!!!」

意識が戻る、地面が近い。

どうにか着地すれば、地面が大きく抉れてクレーターが出来上がる。
正面を見れば、テトリオートが再び走り始める、その瞬間しかまともに視認できない。

気を抜けばすぐに視野の外へ見えなくなる。

だが、それでも。

从 ゚∀从『恐れずに、前を向け、そういう事なんだな!!』

从 ゚∀从(だが、奴の足を止めるには…!)

あたりを見渡せど、何も見あたらない。
どこまでも地面が広がって、相手に有利なフィールドだ。

从 ゚∀从「…地面? 道路…?」

はっ、とあの兄弟の戦いを思い返す。
あのとき内藤は、その様子を見てなんと思ったのか。

そうだ、ともう一度声が聞こえた。

"彼女"では無い自分では、力不足で劣った戦いしかできない。
けれど声は言った、考えろと、そして諦めるな、と。

从 ゚∀从『これだ…! パイルよ!!』

119: 2016/11/18(金) 20:27:35 ID:NGZxpddA0

ミ(`θ´)『そろそろお終いにしようぜ!!』

テトリオートが更に加速するべく、タウバーンから距離を取る。
タウバーンはその場に仁王立ち、腰元のフィンを頭上に展開させた。

そして、自分を中心に円を描くようにして、パイルから射出されたビームが、
地面を砕きながら、どんどんその範囲を広げていく。


(('οο)「なんだ? 気でも狂ったのか?」

((ρÅρ)「…頃合か」

(('οο)「ん、ゴールキャット? 何処へ…」

从 ゚∀从『そして、タウ銀河・ビーーーーーーーム!!!!!』

次いで、更に地面を抉りながら、再度光線を放つ。
だがやはり直線的な攻撃は、見切られ避けられてしまう。

ミ(`θ´)『こいつでぇ…終わりだあああああああああああああああああああああああああ』

突進。

対する内藤は、しかし不敵に笑う。

从 ゚∀从『よく見て走れよ、不幸と踊らないようにさ!!』

ミ(`θ´)『馬鹿め、路面を荒らして足止めって魂胆だろうがなぁ…』

ミ(`θ´)『この程度で、この俺を止められるか!!!!』

120: 2016/11/18(金) 20:30:07 ID:NGZxpddA0

言うとおり、荒れた路面は酷く陥没し、あるいは隆起し荒れ果てている。

だが既に速度を纏った巨体は、そんな物は物ともせず、
弾き、あるいは砕きながら疾走を緩めない。


両者の距離が近づき、近づき、近づく。


从 ゚∀从『それは、どうかな!!!』

从 ゚∀从『パイルクロス、アターーック!!!!!!!』


同時に、頭上のパイルが一斉に降下。

それぞれが回転しながら直下、地面に追突、その瞬間。


ミ(`θ´)『こ、これは!!!??』


周囲は一瞬にして巨大な亀裂が暴れまわるように走り。

地面が文字通り、崩壊した。

一息の間に地面には大穴が空き、ものみな崩落していく。

121: 2016/11/18(金) 20:31:51 ID:NGZxpddA0


((β∵β)「これは…!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「落とし穴!?」


ミ(`θ´)『っっ…こいつ、自分ごと!?』


ドッグキャットは、目の前で一緒に落下していく姿を見る。
タウバーンは、一際大きな瓦礫に足をかけ、姿勢を低く沈み込ませていた。


从 ゚∀从『パァアアアイルゥ……!!』


その腕には、地面をこうまで砕いたフィンを纏い、
回転を早めながら、やがて光を放ち。


ミ(`θ´)『しま…っっ!!!!』


テトリオートも逃れようとするが、宙に浮いた状態では、
タイヤも空回りするばかり、排気音だけが悲鳴のように響く。


从#゚∀从『クラッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』


次いで、アッパーの形で放たれたフィンが、
回転しながら周囲の瓦礫を砕きながら突き進み、そのまま天へと貫いた。

122: 2016/11/18(金) 20:34:17 ID:NGZxpddA0



瓦礫の山の上、二体のサイバディが相対する。
頭部をまるごと失くしたテトリオートの奥、タウバーンが踵を返す。


从 ゚∀从『こんなものが暴れたら、道路は走れなくなるものさ』

ミ(`θ´)『……ああ、そう、かもな』


そして。

爆発。

勢いはその場に留まらず、天へと昇り、
まるで壁にぶつかったかのように、暴炎を空中に広げた。

そして、その音と光が。


とある知った人間の悲鳴を、かき消していた。


从 ゚∀从『ん…? なんだ?』

やがて光が収まって、穴の底から見上げれば、
ツンとモララーが何やら慌てた様子で、何かを指し示して叫んでいる。

123: 2016/11/18(金) 20:36:28 ID:NGZxpddA0

示しているのは、空の中心。

大きな歯車のような形の、巨大な模様。
このゼロ時間の封印を表す、牢獄の刻印。

見れば、そこに何か浮かび上がっている。

从;゚∀从『あれは……サイバディ?』

紋のなかの一つ、人型の、まるで羽衣をまとう天女のような、
どこか神秘的なシルエットの存在がそこにある。

内藤が見惚けていると、上から声が続く。


ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君! あの子が!!!」

((β∵β)「頼む、奴を止めてくれ!!!」

从;゚∀从『あの子…? それに奴って…』


そこで、内藤はようやく気がついた。

先ほどまで、ツンと同じ場所に居たはずの、もう一人の姿が無い。
自分が守ると、そう宣言した彼女、デレが、居なかった。

从;゚∀从『まさか…あれは!?』

ξ;゚⊿゚)ξ「内藤君、急いで! このままじゃ……このままじゃ、封印が!!!」

124: 2016/11/18(金) 20:37:45 ID:NGZxpddA0

从;゚∀从『く、くそ!!!』

すぐさま駆け出すが、穴の底からでは時間がかかる上に、疲労も大きい。
見れば、空の紋のサイバディの正面には、ひとつの球体が浮かんでいる。

ζ(゚‐゚;ζ『……内藤君』

从;゚∀从『デレさん、今助けに…!!』

((ρÅρ)「……お前も、か、だが…!!!」


と、その球体から光が溢れる。

白く、眩く、とても強い光だった。


((ρÅρ)「スターソード…ディアマン!!」


遠目に、その正体は球体の中、一人の人間の手から放たれている。
そして光は収束し、ついにはとある形を作り出した。

剣だ。

光り輝く剣が、仮面の男の手に握られていた。

男は、その光を振りかざし。

125: 2016/11/18(金) 20:40:18 ID:NGZxpddA0

从;゚∀从『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』

((ρÅρ)「もう遅い!!!!」


更に肥大した光の剣で、封印の紋ごと、サイバディを斬り裂いた。


ζ( ‐ ;ζ「っっっ、づあ、あ、あぐ!!!」

サイバディの正面、球体の中でデレが苦悶の声を上げ、
その胸元から一際大きな光が浮かぶと、今度は弾けたように消え去った。

同時に。

((ρÅρ)「ふっ」

从;゚∀从『あ、あ……』

空にいくつもあった鎖の一部が、ほどけて消えていく。

夜を思わせるような色をしていた空が、明るさを増してより青く。

そして封印の紋が、歯車がゆっくりと回転を始め、ガチリ、ガチリと音を立て、形を変えていく。



こうして、二つ目の封印が、解かれた。

想いは違えど、誰も言葉を発せ無いまま。


やがてゼロ時間も解かれ、周囲がそれぞれの景色に戻っていく。

126: 2016/11/18(金) 20:42:13 ID:NGZxpddA0


・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・



とある一室に、巨大なボルトで止められた、機械仕掛けの棺がある。
それはやがて大きな音を立て、蓋がゆっくりと開かれれば、その端に手がかかり、
中から人間がよろめきつつ、その姿を現した。

ミ,,-Д-彡「……」

ミ,,゚Д゚彡「ん?」

と、男は入り口のところに寄りかかる人影を見つけた。
暗がりの中で分かり辛いが、確かに目が合った。

( ´∀`)「お疲れ様ドッグキャット……いや、今はもう、フサギコと呼ぶべきモナ?」

そこに居たのは、生徒会の一員、会長であるクーの取り巻きの一人だ。
同時に、此度の決闘においてフサギコの参加を許可した本人である。

ミ,,゚Д゚彡「……どうでもいいっての」

棺のあるこの部屋も、また隠し通路の先にある。
モナーは当然、管理者の一人として鍵閉めなどで残っていた。

フサギコは舌打ちを一つ、モナーを横目に通り抜けようとする、

( ´∀`)「聞いてもいいモナ?」

ミ,,゚Д゚彡「あ? なんだよ?」

127: 2016/11/18(金) 20:43:22 ID:NGZxpddA0

( ´∀`)「さっきの戦い、本気でやってたモナ?」

ミ,,゚Д゚彡「……どういう意味だよ」

( ´∀`)「言ったままモナ、だってあのサイバディ……ほんとは飛べるはずモナ」

( ´∀`)「そうしたら、少なくともあんな負け方は…」

ミ,,゚Д゚彡「馬鹿か、バイクってのは飛ぶものんじゃねぇ、走るもんなんだよ」

( ´∀`)「そんなこだわりの為に、君は理想を捨てたのかモナ?」

ミ,,゚Д゚彡「理想? んなもんねーな、俺はただ…もっと速く走ってみたかった、それだけだ」

( ´∀`)「それを理想というモナ、外の、もっと広い世界を走りたいのではないのかモナ?」

ミ,,゚Д゚彡「外の……じゃあそれこそ、あいつの言うとおりなんじゃねえの」

( ´∀`)「あいつ?」

ミ,,゚Д゚彡「あんなもん外で走らせたら―――走る道が、無くなっちまうだろ」

言い捨てるように、フサギコはその場を後にした。


モナーはその背を見送りながら、何かを小さくつぶやいた。
細い瞳の奥には、怪しくも淀んだ輝きが灯っている。

128: 2016/11/18(金) 20:46:00 ID:NGZxpddA0

・・・ ・  ・   ・   ・   ・    ・    ・     ・




内藤は自分が、元居た場所、ゴミ捨て場前にいることに気づき、
急ぎ周囲を見渡した。一緒に居たはずの存在を探して。


ζ(゚‐゚*ζ「……」

だがその姿は探すまでも無い、目前、既にそこに居た。

呆然とした様子で、何度か内藤と視線を交わした後、
恐る恐るといった様子で、自らの胸元に触れる。

(;^ω^)「デレさん……その…」

ζ(;‐;*ζ「あ……っ」

(;´ω`)「ごめん、本当に…ごめん、だお……」

(;´ω`)「守るって言ったのに……こんな…」

ζ(;‐;*ζ「う、ううん、ちが…の」

ζ(;ー;*ζ「違うの…これは、そうじゃ…そうじゃないの」

129: 2016/11/18(金) 20:47:17 ID:NGZxpddA0

(;^ω^)「え…? デレさん…?」

ζ(;ー;*ζ「こんな、あっさり……なんだ、ね」

ζ(;ー;*ζ「なんだか、馬鹿みたい……何してたんだろ、わたし」

デレは、涙ながらも、どこか晴れたように天を仰ぐと、
今度は内藤へ笑いかけたまま、その両手を取って自分の額へと当てた。

ζ(;ー;*ζ「内藤君は、悪くないよ、悪いのは私だから」

ζ(;ー;*ζ「だから、ごめんなさい……私のわがままで、困らせて」

(;^ω^)「なんでデレさんが謝るんだお、悪いのは僕で…!!」

ζ(;ー;*ζ「………それなら、一つ、今度は私からお願いしても、いい?」

(;^ω^)「なんだお?」

ζ(;ー;*ζ「今度、島の外に行くときは、案内してくれる?」

(;^ω^)「え、それは…」

(; ω )「…」

(; ω )「……っ!!」

ζ(;ー;*ζ「だめ?」

(; ω )「い、いや、そんなこと、ないお……大丈夫、任せて、お」

ζ(;ー;*ζ「うん」

130: 2016/11/18(金) 20:48:32 ID:NGZxpddA0



「ありがとう」



守ることができなかった約束と、それに対する彼女の反応によって、


内藤は、ようやく、気づいてしまった。



彼女が言った、いじわる、の意味を。


そう、思い違いをしていた。

巫女である彼女達は、島から出ることが出来ない。

これはおそらく、しきたりとか、そういった類の話ではなく、
本当に、何らかの力があって、島を出ることができないのだ。

ゼロ時間という、時の牢獄。

それを司る、その意味は。

彼女達もまた、牢獄に囚われているも同義なのだ。

131: 2016/11/18(金) 20:50:11 ID:NGZxpddA0

つまり内藤は。

封印を守るということは。
封印をするということ。


島を出て、遊びに行きたい。
島を出て、安全に生きたい。


そんなささやかな願いを、叶えない為に戦うということ。

外へ憧れるあまり、こんな自分の側にずっと居てくれた彼女に、
言わば内藤は、外を見せると言いながら、外には出させないと、そう言ったのだ。

こんな意地の悪い話があろうか。

それなのに、彼女はそれを知りながら、それでも同じ想いで、


ツンは、ただ受け入れてくれたのだ。




なら。

132: 2016/11/18(金) 20:51:26 ID:NGZxpddA0




(  ω )(僕は……)








(いったい、誰のために、戦っているんだ?)






戦うことを支えてくれた。
あの声は、今は何も、聞こえない。





                     終

133: 2016/11/18(金) 20:55:58 ID:NGZxpddA0
おしまい、おつ。

ようやく書こうと重い腰を上げたらおよそ一年経ってて笑う笑えない
スタドラ元ネタなのは言わずもがなだけど、細かい設定やら過去がどうとか
かなり創作と自己解釈入ってるのでそこだけご了承。

あと原作は見よう、そうしよう。

引用: 从 ゚∀从 スクールτアイドルのようです