88: 2015/12/31(木) 05:08:21.83 ID:HpBH4fjfo
89: 2015/12/31(木) 05:09:00.16 ID:HpBH4fjfo
「眠り」
_____1月中旬 幌筵泊地
この島に来てからそろそろ一ヶ月になります。生活の変化にも大分慣れてきたし、皆さんとの関係も良好。
加賀さんも漸くやる気を出してくれたみたいで、任務の方も滞り無く順調です。
今日の任務が片付いたら、久しぶりにあの子と連絡を取ってみようかしら。私の大切な妹、瑞鶴と……
90: 2015/12/31(木) 05:09:36.34 ID:HpBH4fjfo
幌筵提督「さて。それじゃあ今日の任務の確認ね」
幌筵提督「島の外れに防空壕があるのは知ってるわよね? 多分ずっと昔に使われてたものだと思うわ」
幌筵提督「落盤かなんかで崩れてて、奥までは行けないようになってるんだけど……」
幌筵提督「まあそう言う場所のお約束で、子供達がそこを遊び場にしてたのよ」
幌筵提督「遊んでる最中にね、中から人の声が聞こえたんだって。その場にいた子達はみんな聞いたらしいわ」
幌筵提督「街の人達に聞いてみたら、その子達以外にも近くを通る時たまに声を聞いたって人もいるのよ」
幌筵提督「とにかく気味が悪いから調べて欲しい……と言うのが今回の依頼ね」
幌筵提督「まあただの調査だから、翔鶴一人で大丈夫だとは思うけど……心配なら加賀さんと一緒に行ってもいいわよ」
91: 2015/12/31(木) 05:10:14.47 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「加賀さ~ん、オバケとか怖いので、ついてきてくれませんか~?」
提督の話を聞くや否や、私は目を輝かせながら加賀さんに懇願するけど……
加賀「オコトワリシマス」
予想通り一蹴。
翔鶴「そうですよね、加賀さん怖がりですものね」
加賀「なっ!? ち、違います! 今日は子供達に勉強を教える約束があって!」
翔鶴「うふふ。そう言うことにしておきます。結果報告は事細かにしますので、楽しみにしてて下さいね」
加賀「私には関係のないことですし、聞きませんから」
あたふたしてる加賀さんの顔が見れたので満足。このデイリー任務をこなさないと、私の一日は始まらないのです。
翔鶴「それじゃあ加賀さん、提督。行ってきますね」
加賀「行ってらっしゃい」
幌筵提督「気を付けてね~」
92: 2015/12/31(木) 05:11:08.91 ID:HpBH4fjfo
_____防空壕
道を塞いでいた岩を爆弾で破壊して内部へ。中は予想通り暗闇の世界。探照灯を持ってきておいて良かった。
翔鶴「ここまで……ね」
中に入ってから物の2、3分で奥まで到達。そこまで深い壕じゃないみたい。
当然ながら人の姿など無く、風通しも無いので人の声と聞き間違えそうな要素は見当たらない。
翔鶴「本当にオバケの仕業なのかしら? 私、霊感は無いのよね」
なんて冗談を言っても、突っ込みを入れてくれる人は周りにはいない。とりあえず部屋を隅々まで探してみましょう。
93: 2015/12/31(木) 05:13:21.18 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「あら?」
あまり広い部屋ではなく、程なくしてそれは見つかった。
翔鶴「声の正体はこの子だったのね……」
壊れた艦載機と、そのパイロットだったと思われる妖精さんの服。
私達艦娘の艤装の妖精さん達は、その命が尽きると直ちに自然へと帰る。
ここに入り込んでしまった妖精さんが、落盤で出られなくなって助けを求めてたのだろう。
そしてここ数日で、ついに力尽きてしまったと言うことね。
翔鶴「あら?」
艦載機を回収しようとしてしゃがみ込むと、ふと足元に違和感を覚える。
94: 2015/12/31(木) 05:14:04.23 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「まだ何かありそうね」
部屋の床には板が敷かれていて、私が今立っている場所は明らかに他とは感覚が違う。
その下に何らかの空間があることが容易に想像できる。
翔鶴「艦載機の皆さん、お願いしますね」
パイロットの妖精さん達を機体から降ろし、整備用の工具等で慎重に床板を剥がすよう指示する。
翔鶴「これは……!」
床板の一部を削り取って出てきたのは、更なる地下へ続く石造りの階段。
穴を掘って、板を敷いただけの簡易な作りの防空壕からは明らかに浮いている。
これが瑞鶴の好きな漫画だと、この下には悪の組織の秘密基地があったりするんだろうけど……
翔鶴「……行きますか」
ここでまごついてても何も始まらない。私は意を決して階段を下りる。
95: 2015/12/31(木) 05:14:56.79 ID:HpBH4fjfo
石造りの螺旋階段を下りて少し歩くと、これまた重々しい漆黒の扉に出くわす。
鍵は掛かっていないみたいで、扉は容易に開いた。人の気配は無いけど、少し身構えながら足を踏み入れる。
加賀さんにはあんな風に言ったけど、実は私も結構怖がりだったりするのよね。
とりあえず部屋の中心にあった机に探照灯を置く。それだけでは部屋の全容は把握出来ないので、
更に艦載機を大量に並べてライトを点灯。十分な明るさを確保して部屋の調査に移る。
部屋は階段と同じく石造り。床には食料の空袋やインスタント食品の容器、本などが散らかっていて、人が生活していた痕跡がある。
家具は部屋の真ん中にある机以外には本棚のみ。床に散らばっている物を含めても、本の数はそれ程多くは無い。
翔鶴「……っ!」
そして、部屋の隅には白骨化した遺体。部屋の様子からしてあるとは思ってたけど、
やっぱり身構えていても急に目にすると少しは動揺してしまいます。
96: 2015/12/31(木) 05:15:51.40 ID:HpBH4fjfo
さて。遺体の手の近くには一冊のノートとフラッシュメモリ。見た感じ、壊れてはいない。
一先ずフラッシュメモリを懐にしまい、ノートの方を開いてみる。
翔鶴「これは……」
深海棲艦の絵……? 兵装やスペックが事細かに書かれている。深海棲艦の研究者の方だったのでしょうか?
翔鶴「……!?」
しかしその考えはすぐに否定される。ノートの後半には深海棲艦の艤装の設計図や、対艦娘用の戦術などが書かれていた。
この遺体は深海棲艦側の技術者のもの? 深海棲艦に肩入れしている人間がいると言うこと? それがどうしてこんな所に?
97: 2015/12/31(木) 05:16:52.67 ID:HpBH4fjfo
色々と疑問は尽きないけど、とりあえずわかっているのはこのノートが深海棲艦と戦う上で非常に有益な情報を齎してくれると言うこと。
恐らくフラッシュメモリの方にも深海棲艦に関して何か重要な情報が入っていると思われる。
翔鶴「部屋に戻ってからでもいいんだけど……」
何となく。本当にただ何となくだけど、ここで見なきゃいけない気がして……私は持ってきたノートパソコンを立ち上げる。
フラッシュメモリを挿して中身を確認すると、先程見たノートとほぼ同一内容のデジタル画像と、動画が一つ。
『あなたがこの動画を見ている時、恐らく私はこの世にはいないだろう』
動画を再生すると、この手のお決まりの台詞からスタート。この遺体の人なんだと直感した。
『……………………』
『……………』
『……』
…………………………………………
98: 2015/12/31(木) 05:17:42.93 ID:HpBH4fjfo
『あなたがどうか、この欺瞞に満ちた世界を是正してくれる人物であることを祈る』
翔鶴「そんな……もしこれが本当なら、私達は……」
目にするべきでは無かった、あまりにも信じられない……信じたくない内容。
私達艦娘は元々人型侵略兵器として、大本営によって極秘に開発、設計が進められていた。
そのプロトタイプとして造られたのが、現在私達が戦っている深海棲艦に酷似した艦達。
彼女達は兵器としての完成度を高める為、様々な非人道的実験に使われて……その多くが海の底に沈んでいった。
深海棲艦の正体……それはこの時に沈められた艦達に怨念が宿って蘇ったものだと言う。
自らを沈めた大本営への復讐と、元々持っていた侵略兵器としての本能……それが彼女達を戦場へと駆り立てている。
99: 2015/12/31(木) 05:19:02.19 ID:HpBH4fjfo
大本営はこれに対抗する為に、深海棲艦を造った際の技術を応用した、艤装と呼ばれる兵器を開発した。
そして、独自の調査システムを用いて艤装に適合する人間を各地から捜し出して徴兵。
学校と言う形式の軍事施設で戦闘訓練を受けさせて、艦娘として戦場に送り出した。
これが今日に於ける、私達艦娘と深海棲艦の戦争の真相……
思えば私達は、今まで深海棲艦について何一つ知らされていなかったんだ。
その名の通り突如深海から現れた、人類に害成す敵……その正体の一切が不明。
軍令部に言われたその言葉を、ただ盲目的に信じていた。
もしこの動画の内容が真実であるなら、私達の存在意義すら揺らいでしまう……
勿論、この動画で説明されたこと全てを簡単に信じるわけじゃないけど……
以前から大本営に対する不信感と言うのは確かにあった。
それが強まるきっかけとなるには十分だった……
100: 2015/12/31(木) 05:19:41.74 ID:HpBH4fjfo
_____幌筵泊地、執務室
幌筵提督「ご苦労様、翔鶴。オバケはいた?」
加賀「わ、私はこれで失礼します!」
幌筵提督「まあまあ、せっかくだから報告を聞いていこうよ」
慌てて逃げ出そうとする加賀さんを捕まえて満面の笑みを浮かべる提督。
この人は……知っているのかしら? 聞きたいけど、怖くて聞けない。
だって、一番尊敬するこの人が私達を欺いてずっと戦争をさせてたとしたら……
私はきっとこの世の全てを信じられなくなって、狂ってしまうだろう。
101: 2015/12/31(木) 05:20:09.36 ID:HpBH4fjfo
幌筵提督「ん~? どったの、翔鶴? まさか、本当にオバケがいた?」
翔鶴「いましたよ……亡霊が……」
幌筵提督「え?」
翔鶴「すいません、提督。今日は疲れてしまったので……調査報告はまた後ほど」
幌筵提督「……翔鶴?」
不思議そうな表情の提督と、青ざめてる加賀さんを尻目に部屋を出て行く。
102: 2015/12/31(木) 05:21:30.41 ID:HpBH4fjfo
_____翔鶴、加賀の部屋
翔鶴「…………」
昼間のことを私なりにまとめてみる。
あの動画を真実だと仮定するなら……遺体の人はその機密を持ち出して逃亡。
追われる身となった。そして逃げ込んだ先があの防空壕。
地下に逃れた後、持ち込んだ艦載機によって落盤を起こして人の手では容易に進入できないよう封印を施した。
後は艦娘の誰かが自らを見つけてくれることをただひたすら待っていた……と言うのが私の考え。
翔鶴「動画のこと……やっぱり提督に聞く勇気はないわ……」
翔鶴「行くしかなさそうですね……東京に」
それからしばらく悩んで出した結論。大本営に行って確かめるのが一番確実だと考えた。
103: 2015/12/31(木) 05:22:17.40 ID:HpBH4fjfo
_____翌日、執務室
幌筵提督「なるほど……妖精が入り込んじゃってたのね」
加賀「ほら、やっぱり幽霊なんていなかったでしょう? こんな騒ぎは大概にして欲しいものね」
心底安心し切った表情の加賀さん。ついからかいたくなるけど、今は報告の方が優先。
翔鶴「はい。それで内部はかなり老朽化していて、落盤の可能性も高くて非常に危険なので……」
幌筵提督「わかった。例の防空壕は立ち入り禁止としておきましょう」
翔鶴「はい。そうしていただけると……」
昨日の出来事の報告。勿論地下のことは話していないし、地下への入り口も塞いでおいた。
これでしばらくは、あの場所に調査の手が入ることはないと思われる。後は例のことをお願いするだけ。
104: 2015/12/31(木) 05:23:32.59 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「それで、提督。任務の方も一段落ついたので、少しお暇を頂きたいのですが……」
幌筵提督「休暇を?」
翔鶴「はい。実は私、この泊地に来たことをまだ瑞鶴に言ってなくて……」
翔鶴「ちゃんと話をしたいと思ってたんです。それに、卒業試験も近いので色々とアドバイスもしたいし」
加賀「瑞鶴……そう、あの子ももうすぐ実戦配備されるのね」
翔鶴「うふふ。加賀さんは瑞鶴のこと特に気に掛けていましたよね。楽しみですね」
加賀「別に……私はただ先達として教えるべきことを教えていただけです」
翔鶴「瑞鶴も加賀さんと一緒に戦えるのを楽しみにしてますよ」
加賀「ありえません。私はあの子には嫌われてますから」
翔鶴「そうかしら? 瑞鶴は加賀さんのこと、大好きだと思うけど」
105: 2015/12/31(木) 05:24:21.24 ID:HpBH4fjfo
幌筵提督「本当に!? キマシ!? ねえ、キマシ案件なの!?」
加賀「提督までそんな……翔鶴さんもからかわないで下さい」
加賀「私と瑞鶴がそんな関係になるなんて、未来永劫ありえませんから」
ああ、加賀さんのこの様子だと本当に瑞鶴の気持ちには気づいてないみたい。
まあ瑞鶴も瑞鶴で、素直に好意を伝えられない意地っ張りな面があるから仕方ないかも知れないけど……
幌筵提督「まあいいわ。こっちは大丈夫だから、行ってきなさい」
翔鶴「ありがとうございます、提督。それじゃあ加賀さん、後のことは頼みますね?」
加賀「わかりました」
瑞鶴をダシに使っちゃった……まあ、事が済んだら瑞鶴にも会いに行く予定だから嘘は言ってないけど……
106: 2015/12/31(木) 05:25:13.15 ID:HpBH4fjfo
_____数日後 大本営会議室
翔鶴「失礼します」
異様に広い会議室に入ると、奥には軍令部の方達が3人。
翔鶴「本日はお忙しい中、時間を割いて頂いてありがとうございます」
軍令部A「全くだ。我々は君と違って多忙なんだ。手短に頼むよ」
軍令部B「今さら何の用だ? 言っておくが、横須賀にお前の居場所はないぞ!」
第一部一課に所属するお二人は私に厳しい言葉をぶつける。まあそれも仕方のないこと。
軍の悲願だった沖ノ島海域攻略を目前にして、私は命令違反の撤退をしてしまった。
上層部の方達からは要注意人物として目を付けられている。
107: 2015/12/31(木) 05:25:50.61 ID:HpBH4fjfo
次長「まあまあ、お二人ともそう言わずに」
次長「今日、我々が栄えていられるのも現場の彼女達の働きがあってのこと」
次長「非礼、お詫び申し上げますよ。翔鶴さん」
軍令部次長。40代の男性と聞いていたけど、外見は20代後半と言われても違和感がないくらい相当お若く見える。
末端の私からしたら雲の上の存在だけど、先の上官達と違って物腰柔らかで非常に紳士的。
本来なら問題を起こした私が上層部と話をしたいと言っても門前払いにされるだけなんだけど、
今回はこの次長の計らいがあって、特別に謁見を許可された。感謝はしたいところだけど、話の内容によってはこの人も……
108: 2015/12/31(木) 05:26:52.48 ID:HpBH4fjfo
次長「それで、翔鶴さん。本日はどう言ったご用件でしょう?」
翔鶴「はい。私が現在配属されている幌筵泊地に、古い防空壕があるのはご存知でしょうか?」
軍令部B「ふん、知らんわそんなどうでもいい拠点の話なぞ!」
翔鶴「その地下で、このような物を見つけたのですが……」
険しい表情で怒鳴り散らす上官殿を無視して、次長に例のノートを手渡す。
次長「これは……ほう、興味深い資料です」
109: 2015/12/31(木) 05:27:21.80 ID:HpBH4fjfo
軍令部A「じ、次長!? それは!?」
翔鶴「そしてこちらが……」
冷静な次長とは対照的に動揺の色を浮かべる上官殿二人。私は間を置かずにノートパソコンを起動し、例の動画を再生する。
軍令部B「こ、これは……何故、こんな物が……!」
軍令部A「次長! マズイですよこれは!」
二人の上官殿の顔がみるみる青くなっていく。最早確認するまでもないことだけど……
翔鶴「これは、本当のことなのでしょうか?」
110: 2015/12/31(木) 05:28:00.19 ID:HpBH4fjfo
次長「……それで?」
表情一つ変えず、涼しい顔のまま言葉を返す次長。
次長「仮にこれが真実だったとして、貴女はどうする気ですか?」
次長「生い立ちがどうであれ、今の深海棲艦は人類に害成す敵であることに変わりはないのですよ」
次長「まさか、彼女らに同情して滅びを甘受するべきなどと考えているのですか?」
翔鶴「そ、そんなことは……! 私はただ、これが真実であるのなら……!」
次長「公表して、大本営が過去の過ちを認めた上で立ち向かうべき……などと綺麗事を?」
翔鶴「……はい。私はそう思っています」
次長「そうですか。あの方と同じ事を……やはり母娘か……」
少し俯きながら呟く次長。今何て言ったのか……最後の方はよく聞き取れなかった。
111: 2015/12/31(木) 05:28:57.03 ID:HpBH4fjfo
軍令部B「次長、このままではマズイですよ。余計なことを口走られたら……」
軍令部A「知られたからには、やはりタダで帰すべきではないかと……」
次長「……そうですね。彼女はあの方と同じで聡明だ。先のことまで踏み込まれては困る。少しだけ、教育を受けてもらいましょうか」
瞬間、凄まじい轟音と共にドアが吹き飛び、女性が部屋に入ってくる。
翔鶴「あなたは……!?」
長く綺麗な黒髪に、艶やかな漆黒のドレスを纏った美女。しかしその背後には異様な存在。
戦艦クラスの主砲を肩に乗せた、禍々しいと言う言葉すら生温い醜悪な獣。
容姿から深海棲艦と思われるけど、例のノートにも該当する艦の姿はなかった。
112: 2015/12/31(木) 05:30:08.98 ID:HpBH4fjfo
次長「さあ、可愛がってやりなさい。戦艦棲姫!」
翔鶴「全航空隊、発艦!」
私は即座に艤装を展開し、大量の艦爆を嗾ける。あの巨体だし、距離は実際の海戦に比べて遥かに短い。回避する術はない!
戦艦棲姫「何かしら、それ……?」
翔鶴「そ、そんな!?」
大量の九九艦爆による爆撃を受けたのに、戦艦棲姫と呼ばれた女性は傷一つ付いていない。
113: 2015/12/31(木) 05:30:50.00 ID:HpBH4fjfo
戦艦棲姫「沈みなさぁいっ!」
その巨大な主砲が火を吹くけど既のところで回避。砲弾は分厚い鉄筋コンクリートの壁を跡形もなく消し飛ばした。
こんな砲撃を一度でも受けたら、間違いなく致命傷となる。その上こちらの攻撃では敵の装甲を貫けない。
戦艦棲姫「へえ、今のを躱すなんて……少しはやるじゃない」
敵は次発装填中。私も立ち上がり、相手の動きを警戒しながら着艦を始める。
翔鶴「……あなた達の目的は大本営への復讐ではなかったのですか? どうして彼らに従っているの!?」
着艦と第二次攻撃隊の編成をしながら、先程から疑問に思っていたことを口にする。彼女は深海棲艦ではないのか……?
114: 2015/12/31(木) 05:31:43.26 ID:HpBH4fjfo
戦艦棲姫「あら? 本当に何も知らないのねぇ……この人間達は、自らの保身の為に貴方達を売ったと言うのに」
翔鶴「えっ……?」
軍令部B「ちょ、戦艦棲姫様!?」
次長「困るな。そっちの方こそ、本当に隠しておきたかった真実だと言うのに」
どう言うことなの……? 次長が私達を売った? まさか……!?
戦艦棲姫「いいじゃない。どうせこの小娘は、ここで氏ぬしかないのだから!」
そう言って彼女は副砲を掃射。主砲の一撃と違って威力はないけど、弾速が速くて連射も利く。
徐々に被弾が増える。このままじゃ体力を削られて、いずれは主砲の餌食になってしまう……
115: 2015/12/31(木) 05:32:57.54 ID:HpBH4fjfo
軍令部B「ふはは、圧倒的ではないか! 我が軍は!」
翔鶴「……!」
跳躍。不用意に前に出てきた上官殿の背後を取って、喉首に矢を突き立てる。
軍令部B「なっ!? 翔鶴、キサマァ!」
勿論本当に殺めるつもりはない。脅しでこの場を切り抜けて、何とか人目につく所まで逃げる。
そうすれば、敵もそんな目立つ場所で追撃するわけにはいかなくなるはず。
ノートもフラッシュメモリも捨てることになるけど、バックアップは別の媒体に取ってあるので問題はない。
惜しいのはノートパソコンの加賀さんフォルダに入ってる寝顔画像集だけだ。
116: 2015/12/31(木) 05:33:44.94 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「抵抗を止めて、道を開けて下さい!」
軍令部B「くっ、た、助け……!」
次長「待て、頃すな!」
翔鶴「それなら彼女を撤退させて……!?」
次の瞬間、私は次長の言葉が誰に向けて発せられたものなのかを理解した。戦艦棲姫の主砲はこちらを向いたままだ。
次長「例の空母ヲ級改の艤装……彼女を素体にして性能を試してみたい」
戦艦棲姫「さあどうかしら? 小娘があまりにも脆すぎると殺っちゃうかもね?」
軍令部B「じ、次長!? 何を!? や、やめ、助けてくれェーーー!」
翔鶴「くっ……!」
戦艦棲姫は躊躇なく主砲を斉射。私は上官殿を突き飛ばして砲弾の軌道から外す。
そのまま私自身も回避体勢に入るけど間に合わず被弾……凄まじい衝撃。
117: 2015/12/31(木) 05:34:38.69 ID:HpBH4fjfo
次長「生きていますか。さすがは翔鶴型……中々の防御性能ですね」
冷笑を浮かべながら私の髪を掴む次長。私は……辛うじて意識は保ってるけど、指一本動かせない……
次長「それでは最後に一つだけ、本当のことを教えてあげよう」
次長「大本営の中にはね、私とその腹心を中心に深海側に協力している連中が存在する」
やっぱり……そう言うこと……か。
118: 2015/12/31(木) 05:35:57.66 ID:HpBH4fjfo
次長「我々は深海棲艦に抵抗することへの無意味さにいち早く気付いたのです」
次長「何せ彼女らは、この世界に負の感情が蔓延る限り無限に湧いてくる。勝ち目などありはしない……」
次長「そこで我々は、深海棲艦側と接触を図り取引を持ちかけました」
次長「こちらの情報を流したり、深海側の兵装開発に協力する代わりに彼女らが地上を制圧した際は我々を特別な待遇で迎え入れる……と言う物です」
次長「勿論、他の者達に我々の動きを悟られないよう、目立たない範囲での行動ですがね」
次長「それでも僅かずつではあるが、戦局が深海側に有利になるよう仕向けていたのですよ」
このことを、誰かに伝えないと……でも、もう動けない。駄目……意識が、遠くなって……
戦艦棲姫「ウフフ、良かったじゃない小娘。真実を知ることができて……!」
次長「それではお別れだ、翔鶴さん。君が、君の意思を取り戻すことはもう二度とないだろう」
戦艦棲姫と次長の嘲笑が響く中で、私の意識は途切れた。
119: 2015/12/31(木) 05:37:23.73 ID:HpBH4fjfo
_____6月5日 ブッソル海峡
瑞鶴「翔鶴姉……! さようなら……!」
ヲ級改「っ!?」
凄まじい轟音と衝撃。それまで希薄だった意識は一気に覚醒し、同時に頭の中にこれまでの記憶が流れ込んでくる。
翔鶴「瑞……鶴……?」
ああ、そうか。私は赤城さんを傷つけて……加賀さんを、この手に掛けてしまったのか。
色々と伝えたいこともある。謝らなければいけないことも、たくさんあるのに……
120: 2015/12/31(木) 05:37:59.78 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「強く……なったわね……あなたなら、もう……大丈夫。私が……いなくなっても……」
翔鶴「あの人……を……貴方の一番大切な……加賀さんを……助けて……あげて」
今、ここで瑞鶴が引き揚げてくれれば私は助かるかも知れない。でも、そうなると加賀さんは……
だから、私のことはいい。私は沈むけど、それでいいの。
精一杯微笑みながら、瑞鶴に私の最後の願いを託す。勝手な言い分かも知れない。
あの子にまた、重いものを背負わせてしまうかも知れないけど……それでも私は、瑞鶴が一番大切な人と一緒にいられることを願った。
翔鶴「鈴谷さん、榛名さん。雷さん、浜風さん……後は、お願いね……?」
そして、かつての仲間達に大切な妹を託すと……私は糸が切れた人形のように崩れ落ち、冷たい水底に沈んでいく。
瑞鶴……最後の最後まで、お姉ちゃんらしいこと、何一つしてあげられなくてごめんなさい……
赤城さん……あなたと出会えて、あなたを好きになって良かった。
加賀さん……どうか、生きて……生きて、瑞鶴と一緒に……
お母様……今、そちらに行きます……
121: 2015/12/31(木) 05:39:02.32 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「…………?」
冷たくて暗い海の中。体は動かせず、意識も朦朧としたままだけど、私はそれを認識した。
???「翔鶴……」
翔鶴「お母……様……?」
柔らかくて優しいその声色。聞き間違えるはずもない。
数年前、民間船に乗っていた際に深海棲艦の襲撃を受けて亡くなったお母様の声。
翔鶴「迎えに来て、くれたのですね……お母様……」
瞬間、とても優しくて温かい光に包まれるのを感じながら……私は自らの命の終焉を認識した。
122: 2015/12/31(木) 05:40:29.96 ID:HpBH4fjfo
_____11月 タウイタウイ泊地
58「て、てーとく! 大変でち!」
タウイ提督「何じゃ、騒々しい」
58「人が、打ち上げられてて……とにかく来るでち!」
タウイ提督「わわっ! これこれ、老い先短い老人をそんな急かすでない!」
168「あ、司令官!」
タウイ提督「みんな来とったか。打ち上げられてた人間とはその娘じゃな」
19「すっごい美人さんなのね!」
8「ただ、この女性。どこかで見たことあるような気がするのですが……」
123: 2015/12/31(木) 05:41:17.93 ID:HpBH4fjfo
タウイ提督「むっ……翔鶴! 翔鶴ではないか!?」
58「しょーかく……思い出したでち! 確か横須賀機動部隊にいた、あの美人さん!」
タウイ提督「うむ……しかし、何故この娘がこんなところに?」
タウイ提督「確か今年の始めに行方不明になって、6月頃に深海棲艦と化した姿で妹やかつての仲間達の前に姿を現した……」
タウイ提督「そして幌筵艦隊と氏闘の末に実の妹、瑞鶴の手により撃沈されたと聞いとったが」
19「うぅ……姉妹同士で戦うなんて哀しいのね」
124: 2015/12/31(木) 05:41:57.55 ID:HpBH4fjfo
タウイ提督「まあともかく、生きてはいるようじゃな。高速修復材を使って入渠させ、意識を取り戻すのを待とう」
58「じゃあゴーヤは大本営に連絡するでち!」
タウイ提督「待て。今は待った方が良いだろう」
58「どうして?」
タウイ提督「ワシの、長年の勘みたいなモノじゃ。意識を取り戻すまで待とう」
58「ふーん。てーとくがそう言うなら……」
125: 2015/12/31(木) 05:42:43.23 ID:HpBH4fjfo
_____数日後
翔鶴「う、うー……ん……?」
ここ……は? 私、生きてる……? あの時、確かに沈んだはずなのに……
58「目を覚ましたでち!」
布団から起き上がると、周囲には潜水艦娘の子達と老提督。と言うことはここは……タウイタウイ?
タウイ提督「大丈夫か? 自分の名前は? ワシが誰だかわかるかね?」
翔鶴「翔鶴型航空母艦一番艦、翔鶴です。ご無沙汰しております、老師」
潜水艦隊を駆り、オリョールに於ける通商破壊作戦で多大な戦果を上げている老提督。
海軍の中では最年長で、他の提督や艦娘達からは老師と呼ばれ尊敬されている。
私も東部オリョール海を攻略する際、横須賀に来ていた老師に助言をして頂いたことがあった。
126: 2015/12/31(木) 05:43:48.79 ID:HpBH4fjfo
タウイ提督「うむ。お主は数日前にこの島の海岸に打ち上げられておった」
タウイ提督「しかし、お主が沈んだのはここから遥か遠いブッソル海峡付近。それも5ヶ月以上も前のこと」
タウイ提督「これについて何か覚えていることはあるか?」
翔鶴「えっ……!? 5ヶ月も……!?」
いや。そもそも私自身が、あの時確かに自分は沈んだものだと思っていたし……
翔鶴「す、すいません老師。私、その……」
駄目……一気に流れてくる記憶と、今の状況が飲み込めずに混乱する一方。
タウイ提督「すまん。事を急ぎすぎたようじゃ。まずは食事にしようか。イムヤの奴がちょうどカレーを作っておる」
翔鶴「えっ? でも……」
19「いいから来るの! イムヤのカレーは絶品なのね!」
127: 2015/12/31(木) 05:44:20.07 ID:HpBH4fjfo
_____タウイタウイ泊地 食堂
タウイ提督「そうだな。まずは順を追って話してもらうことにするか」
翔鶴「はい。あ、でもその前に……お代わり、貰ってもよろしいでしょうか?」
久しぶりに食べるカレー。しかもそれがイムヤさんの自信作だけあって美味しすぎて……ついいっぱい食べたくなってしまう。
168「飛龍と一緒にご飯食べてる時にも思ったけど、やっぱり空母ってすごく食べるのね」
168「ま、その方が作り甲斐があるってものだけど! どんどんお代わりしちゃってね!」
翔鶴「ありがとうございます! いただきます!」
128: 2015/12/31(木) 05:45:08.53 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「ご馳走様でした。生き返ったような気分です」
食事の時間が終わる。本当はもう少し食べたかったんだけど、他の泊地と言うこともあるので遠慮してしまって。カレーは控えめに6杯だけ。
タウイ提督「うむ。それでは話してもらおうか。1月にお主が行方不明になったと聞いているが……」
翔鶴「はい。私は……」
翔鶴「瑞鶴に会いに行こうとしてたんです。幌筵に左遷されてから、一度も連絡を取っていませんでしたから」
翔鶴「でも、その途中で深海棲艦と遭遇してしまって……多勢に無勢。敗れた私は彼女等に鹵獲されてしまいました」
翔鶴「そして、改造された空母ヲ級の艤装を取り付けられて……深海棲艦側の尖兵にされてしまったのです」
違和感。私の記憶……確かにこれで正しいはずなのに、頭の中で何かが「違う」と囁いてるような気がする。
でも……どれだけ手繰り寄せても他の記憶は出てこなくて……諦めて話を続ける。
129: 2015/12/31(木) 05:46:05.50 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「その後は恐らく老師もご存知かとは思われますが……かつての仲間達に矢を向けました」
そして、加賀さんをこの手で……あっ、そうだ! 加賀さん! 加賀さんはあの後……!
翔鶴「老師! すいません、その……加賀さんは!? 加賀さんはどうなったんですか!?」
タウイ提督「そうじゃったな……お主は加賀を……だが、安心せい。お主の妹が命を懸けてサルベージしたわい」
タウイ提督「今でも幌筵泊地で二人仲良くやっとる。中々お似合いのコンビだと評判じゃぞ?」
翔鶴「そ、そうですか……良かったぁ……」
心の底から安心する。本当に良かった。瑞鶴、加賀さん……
130: 2015/12/31(木) 05:46:41.50 ID:HpBH4fjfo
タウイ提督「うむ。では話を戻そうか。瑞鶴に沈められた後のこと、覚えておるか?」
翔鶴「その……沈んでいく中で、亡くなったお母様の声が聞こえたような気がして……」
翔鶴「お母様が迎えに来てくれたんだって思ったんですけど、そこからはよく覚えてません」
翔鶴「何かの光に包まれたかと思ったら意識を失って……気がついたらここにいました」
タウイ提督「そうか。奇跡と言って片付けてしまうにはあまりにも不可解じゃな……」
タウイ提督「だが何にしても、せっかく助かった命じゃ。大事にしなさい」
翔鶴「はいっ……!」
131: 2015/12/31(木) 05:47:25.57 ID:HpBH4fjfo
_____大本営 軍令部会議室
次長「彼女が生きていたと?」
軍令部C「はっ! 先日タウイタウイより報告がありました。現在横須賀に向かっているそうです!」
軍令部D「氏に損なったか……どうします? 戦艦棲姫様の力をお借りして、今度こそ本当に……」
次長「いえ、捨て置いて構いませんよ。例の大規模作戦の準備で忙しいのでね」
軍令部D「しかし……聞いたところによると奴は、この戦争の真実を知っていると……!」
次長「問題ありません。ヲ級に改造した際に記憶を改竄しておきました」
次長「それよりも今、私が興味があるのは妹の方。幸運の空母……」
次長「彼女の利用価値がどれ程の物かは、その作戦で明らかになるはずです」
次長「その時は貴女にも出てもらいます。よろしく頼みますよ、空母水鬼……」
空母水鬼「はい……」
132: 2015/12/31(木) 05:49:49.17 ID:HpBH4fjfo
_____大本営 深海棲艦会議室
戦艦棲姫「何故、あの娘を助けたの……?」
空母水鬼「…………」
戦艦棲姫「あなたなんでしょ? あの沈んだ小娘を拾って助けたのは」
空母水鬼「そうです。次長に報告でもしますか?」
戦艦棲姫「いいえ。そのことについて糾弾するつもりはないの。ただ純粋に興味があるだけよ」
空母水鬼「あの子は……私にとって特別な存在なの。だから、あそこで終わって欲しくなかった……」
戦艦棲姫「肉親の情ってヤツかしら?」
空母水鬼「そう取ってもらっても構いません」
133: 2015/12/31(木) 05:50:30.94 ID:HpBH4fjfo
戦艦棲姫「へえ……以前のことをしっかりと覚えているのね」
戦艦棲姫「でもそれなら尚更、例の作戦はとても辛いものになるんじゃないかしら?」
戦艦棲姫「あなたにとっても、あの小娘達にとっても」
空母水鬼「そうね。でもそれを乗り越えられなければ、この欺瞞と絶望に満ちた世界を変えることはできません」
空母水鬼「全ては彼女達の心の強さ次第でしょう。私はできることをやるだけです……」
空母水鬼「それでは私はこれで……」
戦艦棲姫「……まだ、変わることを望んでいるのね」
戦艦棲姫「母娘揃って、おめでたい子達……!」
134: 2015/12/31(木) 05:50:57.86 ID:HpBH4fjfo
_____横須賀港
翔鶴「老師、色々とお世話になりました」
タウイ提督「うむ。翔鶴、達者でな」
58「たまには遊びに来て欲しいでち!」
翔鶴「はい。いつか必ず……!」
老師と潜水艦娘の皆さんに別れを告げて船を降りる。
翔鶴「本当に、帰ってきたんだ……この場所に!」
135: 2015/12/31(木) 05:51:31.56 ID:HpBH4fjfo
少し歩くと、見知った三人の姿。蒼龍さんと飛龍さん。あれ? 赤城さんだけは何故かこちらに背を向けている。
蒼龍「翔鶴さんッ!」
飛龍「本当に……本当に生きてたんだ! 翔鶴さん!」
二人の後輩が抱きついてくるけど、赤城さんは背を向けたまま微動だにせず。
翔鶴「あ、あの……」
飛龍「おっと、私としたことが。翔鶴さんに会えたのが嬉しすぎてつい空気の読めないことを……」
蒼龍「翔鶴さん!」
そう言って私の背中を押す二人。大好きな赤城さんの背中が……綺麗な黒髪がすぐ目の前にあって……
こういう時、何て言えばいいんだろう? ごめんなさい? 会いたかった? いや、違う。
136: 2015/12/31(木) 05:52:19.25 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「赤城さん……」
翔鶴「ただいま……!」
赤城「翔鶴……!」
赤城さんが振り返って、胸に飛び込んでくる。私はそれを受け止めて、力一杯抱き締める。
赤城「ふぇぇ……しょーかく、おかえり……翔鶴……!」
人前では決して涙を見せたことがなかったあの赤城さんが、こんなに……
私は、どれだけこの人に悲しい思いをさせちゃったんだろう……どれだけこの人に、愛されてたんだろう……
そう思うと胸がいっぱいになって、赤城さんをより強く、もう二度と離さないってくらいに強く抱き締めた。
その後も赤城さんにはいっぱい泣かれて……ベッドの上では鳴かされて……本当に戻ってきたんだって実感する。
137: 2015/12/31(木) 05:53:05.92 ID:HpBH4fjfo
_____翌日 横鎮空母寮
さて、後は幌筵の子達に会うだけなんだけど……どうも瑞鶴と加賀さんは二人で長期休暇を取って出掛けてるみたい。
蒼龍「二人とも翔鶴さんが生きてたことも知らされてないみたいですよ」
赤城「そうね。あの二人がそれを知ったら間違いなく旅行を中断して帰ってきてしまうもの。あの提督なりに気を遣ってるのよ」
飛龍「でも、これはこれで面白そうだね~。いいこと思いついちゃった」
悪戯っぽい微笑みを浮かべる飛龍さん。こう言う時の彼女は本当に生き生きしてる。
飛龍「二人には最後の最後まで伝えないでおいてさ、帰投したら翔鶴さんが出迎えるってのはどう?」
飛龍「きっと二人ともすっごく驚くと思うよ」
蒼龍「もう、飛龍ったらロクなこと考えないんだから。いくら何でもそれはねぇ……翔鶴さん?」
138: 2015/12/31(木) 05:53:45.49 ID:HpBH4fjfo
翔鶴「そうね。特に加賀さんに対しては……沈めてしまった負い目がありますから」
飛龍「でもさー、見たくない? 翔鶴さんのことお化けだと思って狼狽える加賀さんの顔……」
翔鶴「!?」
何それ見たい。すっごく見たい! でもダメ。ダメよ、翔鶴。私は加賀さんに酷いことを……
赤城「…………」
翔鶴「あ、赤城さん?」
赤城さんは無言で、満面の笑みを浮かべながら私に三角頭巾と白装束を渡してくる。
ああ、やれってことなのね。赤城さんの命令には逆らいたくないけど、やっぱり加賀さんに悪いし……出来れば穏便に済ませたいな。
139: 2015/12/31(木) 05:54:39.58 ID:HpBH4fjfo
蒼龍「ちょ、赤城さんまでそんなこと……」
赤城「蒼龍、あなたこの前加賀さんに41cm砲で痛めつけられたのを忘れたの?」
蒼龍「あ、あれは、そもそも赤城さんが瑞鶴と加賀さんのセッ……夜戦を覗こうとしたから……!」
蒼龍「完全に自業自得じゃないですか! 私はとばっちりですけど!」
は? 加賀さんと瑞鶴が、夜戦……?
翔鶴「ちょっと蒼龍さん? その話、詳しく聞かせてくれない?」
蒼龍「え? あっ……」
140: 2015/12/31(木) 05:55:54.84 ID:HpBH4fjfo
蒼龍さんを審問して色々聞き出した。加賀さんが瑞鶴を無理矢理襲ったこと。
それで仲違いをしたけど紆余曲折あって仲直り。そして良い雰囲気になってまた加賀さんが瑞鶴を押し倒した……と。
うふふ。加賀さん、やってくれますねぇ。あなたは結婚するまで清い関係を貫いてくれるタイプだと思ってたのに……
飛龍「て言うかさー、今二人っきりで旅行してるんだよね。絶対ヤってるよねあの二人」
翔鶴「!? ふふ……うふふふふふ……赤城さん、私、行ってきますね」
飛龍「あーあ、蒼龍の所為で翔鶴さんが見たこともないような黒い笑みを浮かべてるよ」
蒼龍「ちょっ!? 私が悪いの!? 元はと言えば二人が……!」
赤城「今度は加賀さんに46cm砲でどやされるかも知れませんが……強く生きるのよ、蒼龍」
蒼龍「えっ!? ちょっとぉ! やだやだ! なんで私ばっかり~!?」
翔鶴「加賀さん、待ってて下さいね」
その後、加賀さんは私の幽霊姿に予想以上に驚いてくれて……その顔は新しく作った加賀さんフォルダの記念すべき1枚目を飾ったのでした。
つづく!
次回「別離」
141: 2015/12/31(木) 05:56:57.88 ID:HpBH4fjfo
設定
翔鶴(24):瑞鶴に沈められたと思われていたが空母水鬼に救出される。加賀さんをからかうのが生き甲斐。
この後赤城さんと婚約した。
戦艦棲姫:多くの艦を率いる深海側のボス格。好戦的で、圧倒的な火力と装甲を持つ。
空母水鬼:謎に包まれた深海棲艦。一体誰の母親なんだ……!?
142: 2015/12/31(木) 05:58:27.02 ID:HpBH4fjfo
今回はここまでです。次回の投下は年が明けてからになると思います。
それではここまで読んで下さった方、レス下さった方、ありがとうございました。
良いお年を。
加賀「瑞鶴は私のこと好きよね?」 瑞鶴「愛してます!!!」【その4】
それではここまで読んで下さった方、レス下さった方、ありがとうございました。
良いお年を。
加賀「瑞鶴は私のこと好きよね?」 瑞鶴「愛してます!!!」【その4】



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