145: 2016/01/03(日) 00:13:24.08 ID:Wu9x5Ox1o

146: 2016/01/03(日) 00:14:02.26 ID:Wu9x5Ox1o

「別離」

_____8月 横須賀鎮守府大演習場

瑞鶴「よし! ここで……決める! 攻撃隊、いっけえぇぇぇ!」

翔鶴「きゃあぁぁぁっ!」

赤城「翔鶴!?」

翔鶴「や、やられました……」

横須賀提督『そこまで! 横須賀艦隊全艦撃沈判定! よって、演習は幌筵艦隊の勝利!』

瑞鶴「やったぁ! 加賀さん、やったよ! 私達の勝ちだよ!」

そう言って加賀さんに駆け寄りハイタッチ。本当はパイタッチしたかったんだけど殴られそうなのでやめた。

147: 2016/01/03(日) 00:14:45.89 ID:Wu9x5Ox1o

雷「本当に勝っちゃったの、私達!?」

浜風「努力の成果ですね」

鈴谷「瑞鶴、やるじゃん! 大和と翔鶴さん倒したのは凄かったよ!」

榛名「榛名、感激しました!」

撃沈判定を受けて場外に退避してたみんなも駆け寄ってくる。そうだ。この勝利、私一人の力で掴んだものじゃない。
私と加賀さんが制空権を取り、浜風と雷が露払いと護衛を。鈴谷と榛名がきっちりと相手の主力に効果的にダメージを与えた。
まさにみんなで掴んだ勝利。余興の演習とは言え、横須賀で最高の練度を誇る艦隊に勝ったんだ。

加賀「瑞鶴……」

加賀「よく頑張ったわ」

優しく微笑んで、頭を撫でてくれる加賀さん。みんなと一緒に戦えて、本当に良かった……そう思える至福の瞬間。

148: 2016/01/03(日) 00:15:27.30 ID:Wu9x5Ox1o

翔鶴「瑞鶴、加賀さん……」

翔鶴「私達の完敗よ。二人とも本当に強くなったわね」

赤城「練度ならもう私達よりも上ですね」

瑞鶴「えっ!? そ、そんな、勿体無い言葉!」

赤城「ふふ。瑞鶴さんったら珍しく謙遜しちゃって。ね? 加賀さんもそう思うでしょう?」

加賀「そうね……私が見る限りでは、お二人よりも練度は高くなってると思います」

瑞鶴「~~~~~っ!」

加賀「でも、この勝利に慢心しないでこれからも精進を……って、なっ!?」

一瞬、頭が真っ白になるけどすぐに我に返って加賀さんに抱きつく。

149: 2016/01/03(日) 00:16:27.31 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「加賀さんっ! 加賀さん加賀さん!」

加賀「ちょっ、瑞鶴!? 何をしているの、離れなさい! 皆見ているでしょう!?」

加賀さんが私を認めてくれた! あの赤城先輩よりも、翔鶴姉よりも強いって!
嬉しすぎて、加賀さんをより強く抱き締めた。

加賀「い、痛いっ! 痛いわ、やめなさい瑞鶴!」

翔鶴「あらあら」

赤城「二人は本当に仲良しね」

私と加賀さんの関係は良好。未だに喧嘩したり、ぶつかり合ったりすることもあるけれど……
最後にはお互いの良いところも悪いところも認めて、受け入れて……高め合っていく。
恋人であって好敵手。先輩であって良き相棒。そんな最高の関係が、これからもずっと続いていくと思ってた……



少なくともこの時までは……

150: 2016/01/03(日) 00:17:19.23 ID:Wu9x5Ox1o

_____10月 幌筵泊地

加賀さんが大破した。浜風と一緒に南方のサーモン海域に偵察に行ってたんだけど……
ちょうど私があのレ級を倒した辺りの場所で、見たこともない深海棲艦と遭遇。
艦載機による攻撃はその重装甲に跳ね返され、禍々しい主砲から放たれた凶弾でなす術もなく大破。
その後敵は追撃をせずに撤退していき、浜風に曳航されて何とか帰還は出来たんだけど……
加賀さんの意識は戻らず……今朝方、呉の海軍病院に搬送された。
艤装もうちの泊地では修復不可能な程の状態。こちらは横須賀の海軍工廠で大規模整備中となっている。

瑞鶴「加賀さん……」

戦艦レ級にみんながやられた時と似たような感情がふつふつと沸いてくる。
行きたい。今すぐ加賀さんの仇を討ちに南方に行きたい……けど、私は旗艦なんだ。
勝手に暴走して突っ走るわけにはいかない。第一、敵についての手掛かりは殆どない。

151: 2016/01/03(日) 00:17:57.78 ID:Wu9x5Ox1o

鈴谷「瑞鶴~、提督が呼んで……うわぁっ!?」

色々と考えていると、鈴谷が私を呼びに来た……のはいいけど、何? その驚き様は?

瑞鶴「す、鈴谷……? どうしたの?」

鈴谷「いやだって今の瑞鶴、ガチで人頃しそうな顔してたよ! 怖いってマジで!」

瑞鶴「えっ?」

そっか……私、そんな顔してたんだ……加賀さんのことになるといつもこうだ。

152: 2016/01/03(日) 00:19:15.92 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「ごめんね、鈴谷」

一旦深呼吸して心を落ち着ける。よし、これで大丈夫。

瑞鶴「えっと、提督さんが呼んでるんだよね? すぐ行くから」

鈴谷「瑞鶴!」

立ち上がって部屋を出ようとする私を、鈴谷が呼び止める。

鈴谷「私達が、いるから……! 瑞鶴にはみんながついてるんだからね。忘れないで……」

瑞鶴「ん、ありがとね」

ヤバい。その一言が嬉しくて、つい頬が緩む。私は悟られないように足早に部屋を出て行った。

153: 2016/01/03(日) 00:19:43.90 ID:Wu9x5Ox1o

_____執務室

瑞鶴「失礼します」

幌筵提督「瑞鶴ちゃん……良かった。一人で加賀さんの敵討ちとか行っちゃってたらどうしようかと」

瑞鶴「もう、提督さん。私はそこまで単純じゃないよ?」

幌筵提督「そうだったわね。ごめんね」

少し頬を膨らませる仕草を見せると、提督さんは素直に謝罪。
まあ、本当にほんの少し……欠片1ミリくらいはそんな考えもあったんだけどさ。

154: 2016/01/03(日) 00:20:33.69 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「で、提督さん。何の用なの?」

幌筵提督「うん、大本営から指令が来てるのよ。次の作戦で瑞鶴ちゃんの力を借りたいって」

瑞鶴「大本営が?」

珍しいな。今まで私達のことなんて、まるで存在しないかのように扱ってきたのに。

幌筵提督「もし話を聞く気があるなら一週間以内に横鎮まで来るようにって」

瑞鶴「提督さん、その作戦って……」

幌筵提督「ええ、情報漏洩防止の為に詳細までは書かれてないけど……恐らくはレイテね」

瑞鶴「レイテ……か」

155: 2016/01/03(日) 00:21:33.48 ID:Wu9x5Ox1o

赤城先輩達が西方海域を攻略したのが去年の11月。それから3ヶ月後……翌年の2月から、軍による南方海域の攻略が開始された。
南方攻略自体はゆっくりだけど着実に進んでいた。5月にはポートモレスビーを攻略。
8月のあの大演習の後は、持ち得る全資源を投入してサブ島沖に出撃。
その最深部で南方海域を統べる深海棲艦、南方棲戦姫と交戦することになった。
激戦の末に彼女を退けたことで艦娘側は南方戦線に於ける優位を確立。海域攻略も時間の問題だと思われていた。

しかしそれから数日後、サーモン海域北方から現れた深海棲艦の大部隊が南西諸島海域に侵攻してきた。
軍はサブ島沖攻略の際に備蓄していた資源を殆ど使い切ってしまい、主力を動かすのが難しい状態。
南西諸島周辺の泊地に滞在している残存戦力で抵抗を試みたものの、多勢に無勢。レイテ島上陸を許してしまった。
不幸中の幸いで轟沈艦は出ていないものの、迎撃に参加したブルネイとタウイタウイの艦娘達はリンガ泊地まで後退。
これによって南西諸島海域の制海権は喪失。本土と西方、南方が分断されて、各地の資源を本土に輸送するのが非常に難しくなった。
一刻も早くレイテ島を占拠している深海棲艦を撃滅し、シーレーンを回復させなければ資源集めすらままならなくなる。

幌筵提督「瑞鶴ちゃん、どうする?」

レイテ……私はその場所に、何故か苦手意識を持っている。ずっと昔っからそう。
名前を聞くだけで身構えてしまい、近くを通るだけで言い知れぬ不安に襲われる。

156: 2016/01/03(日) 00:22:17.72 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「行きます」

それでも私は即答した。加賀さんが深海棲艦にやられて……敵討ちしたいけど独断では動けない。
そんなモヤモヤした気持ちがここ数日続いてたから、それを何かにぶつけたかったんだと思う。

幌筵提督「わかった。お父さ……横須賀の提督には私から伝えておくわ」

ああ、そっか。確か横鎮の提督ってこの人のお父さんなんだっけ。

幌筵提督「ん? どしたの、瑞鶴ちゃん」

瑞鶴「いや、その、親娘二代で提督やってるのってすごいなーとか思ってさ……」

幌筵提督「そうかなー? そう言えば、瑞鶴ちゃんのご両親は何してる人なの?」

……そっか。提督さん、翔鶴姉とはそう言う話はしなかったのか。

157: 2016/01/03(日) 00:22:54.65 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「両親はもういないよ」

幌筵提督「え?」

瑞鶴「お父さんは私が生まれる前に亡くなった。体が弱くて、持病があったみたいで」

瑞鶴「お母さんは、艦娘学校に入る直前くらいかな。乗ってた船が事故に遭って亡くなった」

幌筵提督「そ、そうだったんだ……ごめんね? 辛いこと聞いちゃって」

瑞鶴「ううん、いいの。その後は翔鶴姉がずっとお母さんの代わりもやってくれててさ」

瑞鶴「生活も苦しかったけど、二人で協力して生きてきたのは良い経験になってると思うよ」

幌筵提督「そっか」

158: 2016/01/03(日) 00:23:45.29 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「あ、でも心残りが無いわけじゃない……かな」

瑞鶴「お母さん、よくジャガイモの入った味噌汁を作ってくれたんだけどさ……」

幌筵提督「ああ、食べられなくて泣いちゃった話?」

瑞鶴「うぇ!? て、提督さん! 何でその話知って……あっ」

鈴谷だ。もう、あのお喋りJKめ。いつか絶対爆撃してやるんだから。

瑞鶴「まあ、その……ジャガイモ自体は好きなんだけど、味噌汁に入ってるのは何か苦手で」

瑞鶴「お母さんは好き嫌いとかして欲しくなかったから、色々レシピをアレンジして作ってくれたりしたんだけどね」

瑞鶴「結局最後まで食べられないままだったなぁ……」

瑞鶴「っと、話が長くなっちゃった。そろそろ部屋に戻るね」

幌筵提督「瑞鶴ちゃん……どんな作戦かはわからないけど、無茶だけはしないでね?」

瑞鶴「わかってるって! 加賀さんを残して、私が沈むわけないじゃん」

159: 2016/01/03(日) 00:24:48.69 ID:Wu9x5Ox1o

_____数日後 横鎮応接室

横須賀提督「待たせたな。早速だが軍令部次長より考案されたレイテ島奪還作戦の説明に入らせてもらう」

応接室で待たされること1時間。横須賀の提督が大量の資料を片手に部屋に入ってくる。
うちの提督さんのお父さん……なんだけど、面影は殆どない。提督さんはお母さん似なのかな。

横須賀提督「この作戦は三つの艦隊を編成し、それらを二つの部隊に分けて行う」

横須賀提督「まず空母を軸とした第一艦隊と護衛の第二艦隊から成る連合艦隊」

横須賀提督「こちらが攻略の主力となる艦隊だ。レイテ島に突入し、敵旗艦を叩いてもらう」

横須賀提督「だがいくら精強な機動部隊と言えど、敵の機動部隊と何度もぶつかって消耗してしまっては主力を倒すのは難しいだろう」

横須賀提督「加えて現在の資源備蓄状況ではそう何度も出撃は出来ん。一度の失敗も撤退も許されない状況だ」

160: 2016/01/03(日) 00:25:29.69 ID:Wu9x5Ox1o

横須賀提督「そこで第三艦隊の出番と言うわけだ。こちらも機動部隊を編成し、エンガノ岬付近に出てもらう」

横須賀提督「こちらの小規模な機動部隊が単独で行動中と聞けば、敵も必ず機動部隊を動かして撃滅に来るだろう」

横須賀提督「敵機動部隊を釣り上げ、本陣の守備が手薄になった所を連合艦隊で叩くと言うのが軍令部が考案した作戦だ」

横須賀提督「第三艦隊……言うなれば囮機動部隊の旗艦を、君には務めてもらいたい」

囮機動部隊……確かにそれが成功すれば、レイテ奪還には大きく近づくけど……

瑞鶴「そんなに上手くいくかな? 囮機動部隊を撃破しに来るとしても、最低限の戦力しか向けてこないことも……」

十分考えられる……って言うか、それが普通だ。敵からしたらわざわざ本陣の守りを薄くして、リスクを負う必要はない。

161: 2016/01/03(日) 00:26:10.59 ID:Wu9x5Ox1o

横須賀提督「いや。君が旗艦となれば敵は必ず撃沈せんと、多数の戦力を向けてくるだろう」

瑞鶴「私にそんな、戦局を左右するような力は……っ!?」

横須賀提督「偵察部隊から確認も取れている。敵機動部隊の旗艦は……こいつだ」

差し出された写真を見て戦慄する。かつて私が南方で沈めた大悪魔……破壊を具現化した黒き氏神……

瑞鶴「戦艦レ級……!」

横須賀提督「ああ。以前君が倒したものと同一個体であることが確認されている」

なるほど……こいつなら、私には全力で復讐に来るかも知れない。

瑞鶴「…………」

162: 2016/01/03(日) 00:27:01.50 ID:Wu9x5Ox1o

横須賀提督「瑞鶴、この際だからハッキリと言っておく。この作戦、第三艦隊は特に危険に晒されるだろう」

横須賀提督「何せ最低限の人数で敵の精鋭機動艦隊を何度も相手にせねばならんのだからな」

横須賀提督「撃滅は勿論期待されてはいない。出来る限り時間を稼いで撤退するのが役目だが……」

横須賀提督「最悪の場合は轟沈すら覚悟しなければならない。それだけ苛烈な戦いとなるだろう」

横須賀提督「だから私も無理強いはしない。君がこんな作戦は受け入れられないと言うのなら、また別の作戦を考案するよう申し立てるつもりだ」

確かにこの囮機動部隊作戦は私がいないと成立しない。他の作戦って言っても、そんなすぐに思いつくものでもないし。
補給線を断たれてる現状では時間が経てば経つほど不利になっていく。それなら多少リスクを負ってでもすぐに作戦行動に移れた方が……

瑞鶴「大丈夫です。引き受けます」

横須賀提督「……すまない」

提督は力無く答える。きっとこの人も、この作戦は本意ではないのだろう。
でも……それでも私達は、大切なものを守る為に戦わなくちゃいけない。それが艦娘の使命なんだから……!

163: 2016/01/03(日) 00:27:52.79 ID:Wu9x5Ox1o

横須賀提督「随伴艦はこちらになる。確認したまえ」

手渡された資料に目を通す。前にレ級と戦った時と同じく5人編成。見知った顔も入ってる。
幼馴染みの軽空母、瑞鳳。西方攻略の時に一緒に戦ったプリンツ・オイゲン。
その西方海域解放によってこちらの艦隊と合流したドイツからの助っ人、戦艦ビスマルク。それに……

瑞鶴「葛城……!」

横須賀提督「彼女か。最近メキメキと力を付けてきてな。君を目標に相当な努力をしてきたようだぞ」

前の演習の時に彼女の動きは見せてもらった。確かにすごい成長してたけど……

瑞鶴「それでも、レ級が相手となると……」

164: 2016/01/03(日) 00:28:45.78 ID:Wu9x5Ox1o

あの悪魔を相手に葛城を守りながら戦い抜く自信は……はっきり言って無い。それ程までにレ級の力は頭一つ抜けてる。

瑞鶴「あまりにも危険すぎると思うんですが……」

???「先輩っ!」

瞬間、応接室のドアが勢いよく開かれて……今話題に出ていた彼女が駆け寄ってくる。

葛城「葛城は大丈夫ですからっ! 先輩と一緒に戦いたいです!」

横須賀提督「ヤツの恐ろしさは彼女も知っているよ。君がレ級と戦った時の映像を何度も何度も見ているからな」

横須賀提督「それでも彼女は、君と共に在りたいと……この囮機動部隊に志願したのだ」

165: 2016/01/03(日) 00:30:26.89 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「葛城……」

彼女の目をジッと見つめる。決意を秘めた、力強い目付き。

瑞鶴「保障は出来ないよ……?」

葛城「承知の上です! むしろ葛城が足を引っ張りそうになったらその場で切り捨てちゃって下さい!」

瑞鶴「わかった……一緒に行こう!」

彼女の覚悟と意志を確認した私はそれ以上何も言わず……ただ、絶対に守り切ると背中で答えた。

166: 2016/01/03(日) 00:31:09.71 ID:Wu9x5Ox1o

_____横鎮空母寮 客室

艦載機の整備も何とか終了。夕食の時間までまだ少しありそうだし、第三艦隊のみんなに挨拶でもしとこうかな。

???「瑞鶴、いる?」

瑞鶴「あれ? 翔鶴姉? それに先輩達も」

扉が開かれて、翔鶴姉と赤城先輩、蒼龍先輩が部屋に入ってくる。飛龍先輩の姿は見当たらない。

瑞鶴「どうしたの?」

翔鶴「瑞鶴! 囮機動部隊の旗艦を引き受けたって話、本当なの!?」

瑞鶴「ああ、その話ね。うん、どこまで時間を稼げるかわからないけど、頑張るよ」

翔鶴「そんな……危険すぎるわ。相手は戦艦レ級だけじゃないのよ!」

蒼龍「確認されただけでも敵空母の数は10隻以上……たった5人で相手に出来るとは思えないよ」

瑞鶴「確かに危険だけどさ、それだけの価値がある作戦でしょ? 今はとにかくレイテを取り戻すのが先決なんだから」

167: 2016/01/03(日) 00:32:21.61 ID:Wu9x5Ox1o

赤城「生き急いでるわね? 瑞鶴さん」

瑞鶴「えっ?」

それまで黙ってやり取りを見ていた赤城先輩が口を開く。生き急いでる……か。

赤城「私達の置かれている状況はよろしくない。言うなれば真綿で首を絞め付けられている状態」

赤城「その上加賀さんまであんな目に遭ってしまって……あなた自身もどこか焦っているのでしょう?」

ああ、やっぱりこの人には何もかも見抜かれてるなぁ……

赤城「作戦はもう発動してしまった。今さら変更なんて出来ないでしょう」

赤城「だからせめて最後まで……決して自暴自棄にならずに、冷静に、臨機応変に、色々なことに考えを巡らせなさい」

瑞鶴「赤城先輩……」

168: 2016/01/03(日) 00:33:51.33 ID:Wu9x5Ox1o

赤城「あなたの帰りを待っていてくれる人、あなたを失ったら悲しむ人がたくさんいるのよ」

赤城「それをどうか、忘れないで……」

翔鶴「瑞鶴……!」

瞬間、翔鶴姉に抱き締められる。この感覚、本当に久しぶりだ。

翔鶴「必ず、帰ってくるのよ……瑞鶴」

瑞鶴「翔鶴姉……!」

そう……だよね。今の私に必要なのは、敵を撃滅する武勲でも、玉砕覚悟で戦う勇気でもない。
氏なないこと……ただ、それだけだ……! それを改めて認識する。

169: 2016/01/03(日) 00:34:40.49 ID:Wu9x5Ox1o

_____横鎮 食堂

瑞鳳「あっ、瑞鶴! 久しぶり~!」

第三艦隊のメンバーが集まってる食堂に行くと、開口一番に瑞鳳が駆け寄ってくる。
今までも横須賀に行く機会は結構あったんだけど、その時に限って瑞鳳は任務や遠征に出てたりして会えなかった。
ちゃんと話をしたのは1年以上も前……幌筵での例の件以来だ。

瑞鳳「今日は瑞鶴の為にいっぱい玉子焼き作ってきたから、食べて!」

葛城「ちょっと瑞鳳先輩! 抜け駆けはずるいですよ! 私だって瑞鶴先輩の為にオニギリ作ってきたんですから!」

瑞鶴「ちょ、二人とも……苦しい、やめっ……!」

二人の後輩に無理矢理食べ物を口に押し込まれる。まったくモテる女は辛いぜ……なーんてね。

170: 2016/01/03(日) 00:36:06.89 ID:Wu9x5Ox1o

プリンツ「瑞鶴久しぶり~! 相変わらず賑やかだね~!」

瑞鶴「オイゲン! それに……」

お握りと玉子焼きを一気に水で流し込んでから、そちらに視線を向ける。
重巡プリンツ・オイゲンとは西方攻略以来の再会。そしてもう一人が、恐らくこの第三艦隊の最重要戦力。

ビスマルク「Guten Abend! 私が戦艦ビスマルクよ」

スラッとした美脚に、流れるようなサラサラの金髪。オイゲンは可愛い系だけど、この人はまさに正統派美人って感じ。

ビスマルク「あなたが旗艦の瑞鶴ね? このビスマルクを率いて戦えることを誇りに思いなさい!」

瑞鶴「うん。短い間だけどよろしくね、ビスマルク……」

その凜とした佇まいに、同性の私でも思わず見惚れそうになる。

171: 2016/01/03(日) 00:36:37.77 ID:Wu9x5Ox1o

葛城「ちょっと瑞鳳先輩! あの二人、すっごい絵になってませんか!? お姫様と女騎士みたいな感じで!」

瑞鳳「ぐぬぬ……もう、瑞鶴! これ以上フラグ乱立なんてさせないんだからぁ!」

瑞鶴「んー? どしたの、二人とも……そんな怖い顔しちゃってさ」

ふと見ると、二人が物凄い熱視線を送っているのに気付く。
ああそっか、ドイツの艦娘と会うの初めてだから緊張してるのか。まったく可愛い後輩達だなぁ。

瑞鶴「大丈夫だよ! 今の見てたでしょ? ちゃんと日本語通じるから!」

瑞鳳・葛城「もう……! 瑞鶴(先輩)の、鈍感!」

172: 2016/01/03(日) 00:37:30.77 ID:Wu9x5Ox1o

_____数日後 瀬戸内海

いよいよ作戦決行の日だ。恐らくはあと数日のうちに起きる、レイテ沖での戦い……
この一戦に、私達の未来が懸かっていると言っても過言ではない……けど、今の私にはそんな重圧は皆無だった。

葛城「瑞鶴先輩、何だかスッキリした顔をしてますね?」

瑞鶴「まあ、その……ちょっと色々あってね~」

173: 2016/01/03(日) 00:38:46.77 ID:Wu9x5Ox1o

昨日の夜、加賀さんが意識を取り戻した。病室に入ってその姿を見た時は色んな思いが溢れて、言葉が出なかった。
すぐに駆け寄って唇を奪って、舌を絡めて……しばしの沈黙の後に今回の囮作戦に参加することを告げた。

みんなの前では気丈に振る舞っていたけど、本当はレイテが怖くて仕方ないってことも伝えた。
それを聞いた加賀さんは微笑して、自分も何故かミッドウェーが苦手なのだと語ってくれた。
どうやら殆どの艦娘が、理由はよくわからないけど苦手とする海域があるらしい。
赤城先輩や二航戦の二人は加賀さんと同じでミッドウェーが、翔鶴姉はマリアナが苦手なんだとか。

それでも翔鶴姉は、赤城先輩と一緒にマリアナでのあ号艦隊決戦で勝利してそれを乗り越えてみせた。
大切な人や守るべきもの……そう言ったものがあれば乗り越えて行けるんだって聞いて少し勇気を貰った。

174: 2016/01/03(日) 00:39:17.76 ID:Wu9x5Ox1o

その後は……加賀さんに優しく押し倒されて、唇を重ねて。体を……重ねた。
翔鶴姉と赤城先輩がいつもやってる、空母でも出来る夜戦。
お互い初めて同士だから恥じらいもあったけど、それ以上に温かくて、幸せな気持ちに包まれて……



最後に、必ず生きて帰ってくるって約束をした。

175: 2016/01/03(日) 00:40:02.91 ID:Wu9x5Ox1o

プリンツ「あれ? レーダーに反応? 単艦みたいだけど……」

出港からしばらく経って、オイゲンがそれに気付く。深海棲艦? こんな場所で?
まだ戦闘区域にすら入っていない。当然、索敵機も出していないから相手の正体は不明。

瑞鳳「瑞鶴、どうするの?」

仮にここで戦闘になって燃料や弾薬を消費したとしても、明日、大分にでも寄って補充すれば問題ないか……

瑞鶴「全艦警戒体勢! 瑞鳳、葛城は目視距離に入ったらいつでも発艦できるようにして……ん?」

まだ結構遠いけど、ぼんやりと見えてくる。あれは……

176: 2016/01/03(日) 00:40:47.12 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「あ、やっぱ今のなし! 大丈夫、味方だよ」

プリンツ「嘘!? この距離から見えるの!?」

ビスマルク「空母娘はとても目が良いって聞いてたけど……」

葛城「いや、私には全然見えないですよ!」

瑞鳳「瑞鶴が特別なんです」

とりあえず戦闘にはならないけど、でも何であの人がこんなところにいるの?

177: 2016/01/03(日) 00:41:23.59 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「こんな所で何してるんですか、飛龍先輩!」

みんなも驚きの顔を浮かべている。飛龍先輩は第一機動艦隊に編成されてたはず。
私達とは別ルートで、ちょっと前にレイテへ向かって出発したと思ってたのに……

飛龍「いやーそれがさー。寝坊したら置いていかれちゃって」

葛城「えぇーーー!?」

飛龍「結構頑張って追いかけたんだけど、途中でこりゃダメだなって思って」

飛龍「仕方ないからここで君達が来るのを待って、こっちの部隊に加わろうと思ったんだよ」

ビスマルク「なんていい加減なのかしら。規律が緩んでるどころの話じゃないわよ」

この人が……飛龍先輩が、こんな大事な決戦の時に、そんなこと……あり得るのかな?

178: 2016/01/03(日) 00:42:32.65 ID:Wu9x5Ox1o

飛龍「ずーいーかーくー!」

瑞鶴「うわあっ!?」

なんてことを考えてると、頭を掴まれて耳打ちをされる。

飛龍「この作戦、ハッキリ言って嫌な予感がするんだよね……」

瑞鶴「えっ?」

飛龍「軍令部の連中、多分瑞鶴達の生存は期待してないと思うんだよね」

飛龍「冷静に考えてみたらさ、この少人数で何十隻もの精鋭機動部隊を相手にするなんて無理に決まってるよ」

飛龍「連中にしてみたらレイテ島の奪還は至上命令。だけど、逆に言えば……」

飛龍「それさえ達成できれば、末端の艦娘がどうなろうが関係ないってスタンスなんだと思うよ」

飛龍「だからこんな無茶な作戦をゴリ押してきたのよ。瑞鶴が断らないのをわかった上でね」

179: 2016/01/03(日) 00:43:32.73 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「飛龍先輩……」

飛龍「見過ごせるわけがないじゃん。可愛い後輩が、上の奴らにいいように使われてむざむざと沈んでいくなんて……」

飛龍「そんなの、私が許さない!」

飛龍先輩は本気だ。独断でこんなことをして、どんな処分が下るかもわからないのに……
それでも飛龍先輩は来てくれた。私達を助ける為に……!

ビスマルク「ちょっと二人とも。さっきから何をコソコソと話しているの?」

瑞鶴「あ、ごめん。えっと、飛龍先輩も一緒に来てくれることになったから」

プリンツ「本当!? やった、心強いよ!」

飛龍「まあ任せといてよ。さあ瑞鶴、行くよ!」

瑞鶴「はいっ!」

180: 2016/01/03(日) 00:44:41.20 ID:Wu9x5Ox1o

_____エンガノ岬

呉を出てから数日。敵の哨戒網を潜り抜け、ここまで辿り着いた。
索敵機からの情報によると、私の姿を見たと思われる「アイツ」が多数の艦隊を率いて接近中とのこと。
主力連合艦隊はこちらが戦闘に入り次第レイテ突入の予定。いよいよ決戦の時だ!

飛龍「見えてきたわね……第一波、来るよ!」

目視距離。戦艦レ級を旗艦に、戦艦ル級改1隻、重巡リ級2隻、後期型駆逐艦が2隻。

レ級「やあ、久しぶりだねえ瑞鶴。会いたかったよ」

赤いオーラを纏って更に強大になった悪魔。その言葉遣いは穏やかだけど、底知れぬ憎悪がこもっている。

瑞鶴「こっちはアンタの顔なんて二度と見たくなかったんだけどね」

けど、どうしてだろう? あの時みたいな威圧感を全く感じない。

181: 2016/01/03(日) 00:45:26.27 ID:Wu9x5Ox1o

レ級「去年の5月に君に沈められてから、ずっと復讐することだけを考えてきたんだ!」

レ級「絶望と苦痛の中で……沈めッ!」

咆哮と同時に尻尾から次々と艦載機を発艦。その数、180! 前よりも大分増えてる……けど!

瑞鶴「航空戦用意! 航空隊、全機発艦!」

飛龍「オッケー! 徹底的に叩くわよ!」

飛龍先輩と同時に全機発艦。以前戦った時とは艦載機の性能も練度も比べ物にならないほど上がってる。

飛龍「お、烈風改? 瑞鶴、スゴイ物積んでんじゃん!」

瑞鶴「加賀さんから預かったんです。今の私なら、きっと使いこなせるって」

そう。これは大切な艦載機……加賀さんの宝物。これをあの人に返す為にも、私は負けられないんだ!

182: 2016/01/03(日) 00:45:57.41 ID:Wu9x5Ox1o

葛城「行くわよ! 葛城だって、出来るんだから!」

瑞鳳「数は少なくても、瑞鶴の力になってみせる!」

やや遅れて二人も発艦。こちらの艦戦は烈風改24機、私と飛龍先輩の烈風が33機。
葛城、瑞鳳から発艦された紫電改二が合計で48機。数は相手の方が遥かに上だけど……!

レ級「なっ……!?」

両陣営の航空戦力が激突。こちらの艦戦がレ級の艦載機を次々と叩き落としていく。

瑞鶴「制空権……確保! 攻撃隊、一気に叩いて!」

レ級「こんな……こんなハズは!?」

ほぼ損失無しで敵の包囲網を突破した熟練航空隊が一斉に攻撃を仕掛ける!

183: 2016/01/03(日) 00:46:36.30 ID:Wu9x5Ox1o

リ級A「グホッ!? バカな……この、威力は……!?」

リ級B「光……が……!?」

レ級「ば、馬鹿な……このボクが……!? こんな、こんなはずは……!?」

重巡1隻がレ級を庇い盾となるが、そんなの物ともせず一気に中破まで持っていった。
更にもう1隻の重巡も沈める大戦果! これでこっちが圧倒的に有利。このまま一気に畳み掛けたい。

レ級「くっ……ナメるなァ!」

直後、レ級は体勢を立て直して切り札の魚雷を発射。しかし中破していて上手く狙いを定められないのか、容易に躱す。

184: 2016/01/03(日) 00:47:12.55 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「砲戦、開始します! 全艦突撃用意!」

ビスマルク「腕が鳴るわね!」

水偵を飛ばしたビスマルクが先陣を切って敵陣に突撃。レ級に狙いを定めて主砲を斉射する。

後期イ級「やらせはせん!」

しかし、すかさず駆逐艦が盾となってレ級への直撃を許さない。

レ級「沈めェ!」

間髪入れずレ級の砲撃。放たれた砲弾は自らの盾となった駆逐艦もろとも吹き飛ばし、私に向かってくる。

瑞鳳「瑞鶴ッ!?」

私は即座に横っ跳びで回避。砲弾は艤装を掠めただけで無傷。
駆逐艦を撃ち抜いた影響で僅かに威力と速度が減退したのが幸いした。

185: 2016/01/03(日) 00:48:03.34 ID:Wu9x5Ox1o

プリンツ「よし、露払いは任せて! 主砲、砲撃開始!」

後期ロ級「グギャアァァァァ!」

今度はオイゲンが切り込んで主砲で一閃。駆逐艦を撃沈。残りは戦艦クラスの2隻だけ!

ル級改「艦娘共がッ……調子に乗るなァ!」

主砲を構えながら前衛に出てくるル級改。狙いは葛城か! フォローが間に合うかどうかのギリギリの距離!

葛城「こ、怖くなんか……ないんだからぁ!」

瑞鳳「いつまでも、瑞鶴に守られてばっかりじゃないのよ!」

186: 2016/01/03(日) 00:49:33.88 ID:Wu9x5Ox1o

着艦を終えた二人がル級改に攻撃を仕掛ける。攻撃隊は相手が斉射するよりも早く捕捉!

ル級改「グッ……アァァ! ば、バカな……この、私がッ!?」

攻撃隊の同時爆撃を受けた戦艦は唸りを上げて爆発四散。二人とも、すごく強くなってる。私がフォローに入るまでも無かった。

葛城「ず、瑞鶴先輩ッ! 見ててくれました!?」

瑞鳳「私達だって、頑張れば活躍できるのよ!」

瑞鶴「すごいよ二人とも! あの戦艦を倒しちゃうなんて!」

これで障害は無くなった! 私は攻撃隊を再編し、レ級を見据える。

187: 2016/01/03(日) 00:50:31.78 ID:Wu9x5Ox1o

レ級「くっ……この役立たず共めッ!」

瑞鶴「よし、決めますよ! 飛龍先輩!」

飛龍「オッケー、やっちゃおうか! 自信持っていきなよ、あんたならできる!」

瑞鶴「はい! 攻撃隊、発艦!」

レ級「な、何だ、これは……こんな、こんなことが……?」

相手は対空砲火で抵抗を試みるけど、練度の高い攻撃隊には焼け石に水。よし、決める!

レ級「馬鹿な……こ、このボクが……こんな、奴らに……!」

大量の攻撃機がレ級を一気に撃ち抜いた。あの大悪魔が、自分でも驚くくらいあっさりと沈んでいく。

188: 2016/01/03(日) 00:51:17.50 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鳳「す、すごいよ、瑞鶴、飛龍さん! あいつをあんなあっさりと……!」

葛城「先輩、流石です!」

ビスマルク「中々やるじゃない。今回だけは一番を譲ってあげるわ」

飛龍(瑞鶴……私の友永隊よりも早く接触してレ級を貫いた。本当にこの子は、底が知れないわね)

レ級「クク……精々、喜んでいるが……良いさ。精鋭機動部隊は、君達を捕捉している……!」

レ級「奴等の、物量に……勝てる、ワケが……!」

そう言い残して沈んでいくレ級。それがただの負け惜しみじゃないことはわかってる。
この勝ちに慢心するつもりはない。ここから先も気を引き締めて行かなくちゃ!

189: 2016/01/03(日) 00:52:12.04 ID:Wu9x5Ox1o

プリンツ「偵察機より入電! 敵艦隊第二波、来ます!」

瑞鶴「編成は?」

プリンツ「空母ヲ級改2隻、ヌ級1隻、戦艦タ級2隻、軽巡ツ級1隻です!」

プリンツ「ツ級はエリート、他は全員フラグシップクラス! 輪形陣を組んでます!」

ついに本格的な機動部隊のお出ましか。今のは敵の航空戦力がレ級だけだったから対処も簡単だった。
けど、ここからはそうはいかないみたい。苛烈な航空戦が幾度となく繰り広げられることになるだろう。

瑞鶴「でも……退くわけにはいかない! みんな、いくよ!」

190: 2016/01/03(日) 00:52:54.14 ID:Wu9x5Ox1o

_____数時間後

瑞鶴「はぁ、はぁ……! これで、終わって……!」

ネ級「きゃあぁん! や、やるじゃん……でも、まだまだ……これから……だし」

第四波の最後の敵を撃沈。これまでの敵編成はいずれも第二波と同等の精鋭機動部隊。
度重なる戦闘でこちらの被害も拡大しつつある。私はかすり傷で済んでるけど、飛龍先輩とビスマルクは小破。他の三人が中破。
特に葛城と瑞鳳の中破が痛い。着艦が出来ない為、二人の仕事は直掩機による航空支援に限られてしまう。

瑞鶴「潮時か……?」

稼いだ時間は十分とは言えないかも知れないけど、これ以上の被害は看過できない。
燃料や弾薬、艦載機の消費も激しくなってきてる。もう一波、凌げるかどうかさえわからない。
あとは翔鶴姉達に全てを託して撤退した方が……

191: 2016/01/03(日) 00:53:38.69 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「総員、撤た……」

プリンツ「ダメです! 敵機動部隊第五波接近中! 捕捉されてます!」

瑞鶴「くっ……仕方ない。みんな、対空戦の用意をしながら聞いて!」

瑞鶴「この戦闘、敵の殲滅は考えなくていいから! 損害を与えて、隙を見て撤退して!」

考える。赤城先輩が言ってた通り、追い詰められている極限状況でも尚、考えなきゃダメだ。

瑞鶴「最悪の場合は私と飛龍先輩がしんがりになります! 私が命令を出したら躊躇わず撤退するように!」

葛城「そんな……! 先輩を置いて逃げるなんて!」

瑞鶴「葛城! 戦場では上官の命令は絶対だよ!」

厳しい言葉を投げ掛ける。でも仕方ない。こんな状態で甘いことは言ってられないんだから。

192: 2016/01/03(日) 00:54:27.01 ID:Wu9x5Ox1o

葛城「……………………」

瑞鳳「葛城、信じようよ。瑞鶴が加賀さんを残して沈むわけがない!」

葛城「先輩。絶対、絶対に無茶はしないって約束してください!」

上目遣いで懇願される。でも約束なんてできないよ。無茶をしなきゃ、みんなを救えないかも知れないんだから。

飛龍「大丈夫大丈夫。私もついてるんだから」

飛龍「それに、しんがりになるのはあくまで最悪のパターンになった時だけ」

飛龍「先制攻撃で叩いて逃げちゃえばオッケーなんだからさ。とにかくこの航空戦、集中して!」

葛城「わかりました! 全力で行きます!」

193: 2016/01/03(日) 00:55:28.35 ID:Wu9x5Ox1o

プリンツ「敵編成、空母ヲ級改2隻、戦艦タ級1隻、重巡ネ級2隻と……アレは、何だろう……?」

怪訝な顔をするオイゲン。まさか、ここに来て今まで見たことのない新型深海棲艦の登場ってワケ?

プリンツ「飛行甲板と対空砲がついた艤装に座ってる、銀髪の女の人……」

目視距離。翔鶴姉みたいな綺麗な銀髪。でも顔はヲ級の帽子みたいな艤装で隠されていて見えない。
飛行甲板がついてるってことは、空母か。ヲ級改2隻に加えて恐らく鬼、姫クラスの空母。

194: 2016/01/03(日) 00:55:57.87 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「でも……やるしかない! 航空戦用意ッ!」

飛龍「よし、全力で叩くわよ!」

空母水鬼「全航空隊、発艦始め……!」

号令と共に敵も発艦。あの旗艦から発艦された艦載機は……艦戦66機、艦攻と艦爆が60機ずつ!
あのレ級エリートをも上回る、デタラメな搭載数。しかもその全てが髑髏の形をした新型艦載機。
私と飛龍先輩の航空隊に、葛城、瑞鳳の直掩機が合流して敵航空戦力とぶつかり合うが……

瑞鶴「ダメ……制空権が取れない! 航空戦力拮抗!」

飛龍「敵攻撃機、結構抜けてくるよ! 対空砲火、用意して!」

ビスマルク「ちょっと数が多すぎるわよ!」

プリンツ「だ、ダメです! 防ぎ切れません!」

二人が必氏に防空に努めるが、さすがにあの数を撃墜するのは不可能。敵機の大半が攻撃を仕掛けてくる。

195: 2016/01/03(日) 00:56:42.52 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鳳「きゃあぁぁぁ!」

葛城「痛っ……き、機関部は!? 機関部はまだ無事、よね?」

瑞鶴「瑞鳳、葛城!?」

敵機の攻撃で二人が大破。対してこちらの戦果はネ級1隻を中破させただけ。

プリンツ「このままじゃ水偵も飛ばせないよ。それは相手も同じだけど……どうするの?」

ここが分水嶺。私と飛龍先輩がしんがりとなってみんなを退避させるか、少しでも戦力を残して戦うか。

196: 2016/01/03(日) 00:57:33.34 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「ビスマルク。ちょっと大変だと思うけど、三人の護衛……頼まれてくれる?」

ビスマルク「曳航ならオイゲンだけで十分でしょう? 私は残るわ」

瑞鶴「いいの? 保障は出来ないよ?」

ビスマルク「当たり前じゃない。このままで終われるわけがないでしょ?」

ビスマルク「そういう訳だからオイゲン、二人のこと、頼むわよ」

プリンツ「わかりました、ビスマルク姉様。必ず再会できるって信じてますから!」

瑞鳳「瑞鶴、絶対に戻ってきてね! 約束だからね!」

葛城「先輩……どうか、ご武運を!」

オイゲンは二人を連れて撤退。三人の安全を確保しつつ、私達も隙を見て撤退……できるかな?

197: 2016/01/03(日) 00:58:39.57 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「私は……」

私は別に、自己犠牲が美徳だなんてこれっぽっちも思っちゃいない!
そんなものはアニメやラノベの主人公にでも任せておけばいい!!!

瑞鶴「あの人が……加賀さんが、待っててくれてるんだから! こんなところで、沈むわけにはいかない!」

砲戦開始。早々に着艦を終えて攻撃体勢に入る。とにかく一番損傷の少ない私が1隻でも多く倒す!

空母水鬼「やらせは……しないよ!」

瑞鶴「あれ? その声……」

遠い昔に聞いたことあるような、どこか懐かしさを感じる声……

198: 2016/01/03(日) 00:59:24.24 ID:Wu9x5Ox1o

飛龍「瑞鶴! 何ボサッとしてんの!? 来るよ!」

瑞鶴「うわぁっ!?」

真上まで迫ってきた敵機の急降下爆撃を間一髪のところで躱すが、目の前には重巡。今攻撃されたらさすがに避けきれない……!?

ネ級A「いただきっ!」

ビスマルク「させないわ! Feuer!」

ネ級A「やぁん!」

ビスマルクの砲撃で中破していたネ級は撃沈。もう、何やってるんだ私は! もっと集中しないと!

199: 2016/01/03(日) 00:59:58.69 ID:Wu9x5Ox1o

私はすぐさま体勢を立て直し、敵艦隊を見据える。よく狙いを定めて……

瑞鶴「攻撃隊、稼働機! 全機発艦!」

タ級「っ! 馬鹿な……こ、この、私が……!?」

攻撃隊の数は大分減っちゃったけど、それでも何とかタ級を撃沈。あと4隻!

飛龍「やるわね、瑞鶴! こっちも行くよ! 友永隊、発艦!」

ネ級B「いやあぁぁぁ!」

よし! 飛龍先輩もネ級を撃沈。これで数だけなら互角!

200: 2016/01/03(日) 01:00:38.44 ID:Wu9x5Ox1o

ヲ級改A「ネ級がやられたようね。まあ、あの子達はこの艦隊の中では最格下」

ヲ級改B「手負いの艦娘ごときに倒されるとは、深海棲艦の面汚しよ」

2隻のヲ級達は余裕の表情。でも、それなら付け入る隙はある。だって慢心してるってことでしょ?

ヲ級改A「堕ちろ!」

飛龍「ッ!? や、やられた! 誘爆を防いで!」

瑞鶴「えっ?」

ヲ級の艦載機が一瞬で飛龍先輩を捉えて大破まで持っていった……そんな!? 先輩の回避力でも躱せないなんて!

ヲ級改B「そういうことさ。てぇっ!」

ビスマルク「うぐっ!? 舵は……ちょっとヤバいわね……」

直後、もう1隻のヲ級の攻撃によってビスマルクも大破させられる。

201: 2016/01/03(日) 01:01:05.46 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「ふ、二人とも……!?」

飛龍「あー、やられちゃったか~。こうなったら仕方ないかな」

こんな時でも飄々とした物言いの飛龍先輩。でも、何かを覚悟したかのような目……

飛龍「ここは私が引き受ける。瑞鶴はビスマルクを曳航しながら離脱して」

瑞鶴「!?」

そして口から出てきたのは、予想通りにして一番聞きたくなかった言葉。

瑞鶴「そ、そんなの……」

202: 2016/01/03(日) 01:01:49.77 ID:Wu9x5Ox1o

ビスマルク「撤退ぃ? 認められないわぁ。やられっぱなしじゃ私の気が済まないの。最後まで暴れてやるわよ」

私が言葉に詰まっていると、ビスマルクが前に出て進言。飛龍先輩は微笑して返した。

飛龍「アンタ、聡明そうに見えるけど大概馬鹿よね」

ビスマルク「寝坊した所為でこんなことになってる誰かさんには言われたくないわね」

飛龍「違いないや。背中、任せてもいいかな? 戦友……!」

ビスマルク「仕方ないわね。まああなたも、このビスマルクの背中を守ってもいいのよ?」

203: 2016/01/03(日) 01:02:38.47 ID:Wu9x5Ox1o

飛龍「はは。そう言うわけだからさ、瑞鶴。一人で離脱して。出来るわよね?」

瑞鶴「イヤです。そんなこと、できません」

当たり前だ。一番余力がある私が残って二人を撤退させる。それ以外の選択肢はありえない。

飛龍「あのね瑞鶴。冷静になって。ここで三人とも沈むのと、一人でも生き残るの。どっちがマシだと思う?」

瑞鶴「そんなの決まってるじゃないですか。全員が生き残ることです」

瑞鶴「私は絶対に逃げない! 二人の安全を確保するまで、逃げてなんかやらないんだから!」

ビスマルク「……どうやら、一番の馬鹿はこの子みたいね」

204: 2016/01/03(日) 01:03:24.53 ID:Wu9x5Ox1o

飛龍「こうなったらもうアンタは絶対に考えを変えないわよね。ホント、昔っから困ったちゃんなんだから……」

瑞鶴「ええ。だから早く逃げ……」

飛龍「もう手遅れみたいよ」

先輩が指差した方向からは駆逐艦5隻に軽巡が1隻。敵の増援部隊か。
距離はまだ大分あるけど、大破した二人の速度じゃ振り切れそうにない。

飛龍「わかったでしょ? アンタ一人じゃ引きつけられる敵の数にも限界がある。撤退しても追撃されるわ」

瑞鶴「そ、それでも……それでも私は!」

205: 2016/01/03(日) 01:04:17.17 ID:Wu9x5Ox1o

飛龍「わかってる。だからもう退けなんて言わない。三人で戦おう……最後まで!」

瑞鶴「飛龍先輩……」

飛龍「別に、ヤケになって言ってるわけじゃないわよ? ほんの少しだけど、まだ希望はある」

多分、先輩は私と同じことを考えてる。

瑞鶴「旗艦さえ倒せば……敵は退くかも……ですね」

206: 2016/01/03(日) 01:04:54.96 ID:Wu9x5Ox1o

ビスマルク「簡単に言ってくれるじゃない。私と飛龍が大破しているのに、どうするつもり?」

飛龍「瑞鶴。あなたにもう一回、重荷を背負わせちゃうけど……」

瑞鶴「やります」

飛龍「いいの? 加賀さんの烈風改、壊しちゃっても」

瑞鶴「加賀さんはきっと、烈風改より私のことを大事に思ってくれてますよ」

飛龍「違いないや。よし、行こう!」

作戦は決まった。前にレ級やヲ級改となった翔鶴姉を倒すのに使った禁じ手。
飛龍先輩とビスマルクが敵を引きつけて、私が敵旗艦の懐に飛び込む。
そして、ゼロ距離から全艦載機を特攻させる! もうこれしか手はない!

207: 2016/01/03(日) 01:05:35.18 ID:Wu9x5Ox1o

ビスマルク「さあ、かかってらっしゃい!」

飛龍「多聞丸……見ててね!」

ヲ級改A「観念したか。では、沈め!」

ヲ級改B「二度と浮上できぬ、海の底へ!」

飛龍「こちとら毎日赤城さんや翔鶴さんと訓練してんのよ! そんな攻撃なんて!」

ビスマルク「甘く見ないで!」

二人は最後の力を振り絞って回避! やった、これでヲ級達は着艦を終えるまで攻撃できない!

瑞鶴「もらったぁ!」

持ち前の速力で一気に詰めてゼロ距離。ここなら外さない!

208: 2016/01/03(日) 01:06:30.48 ID:Wu9x5Ox1o

空母水鬼「……瑞鶴」

瞬間、敵の飛行甲板から大量の艦載機が突撃してきて……

瑞鶴「!?」

そうだった。特攻は私だけの専売特許じゃない。言ってしまえば空母なら誰だって出来るんだ。

瑞鶴「っ……!」

今まで受けたこともない衝撃。思わず声にならない悲鳴が上がる。
私って、酷いヤツだなぁ……翔鶴姉に、こんな痛い思いさせてたなんて……

瑞鶴「ぅあぁぁっ!?」

更に別の方向からの衝撃。振り返ると増援の駆逐艦達に包囲されていた。
魚雷5、6本くらい撃ち込まれたのか……艤装は殆ど吹き飛んで大破。
まだ沈んでないのが奇跡って言える程の状態。

209: 2016/01/03(日) 01:07:34.20 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「……ここまで……か」

空母水鬼「瑞鶴……やはり貴方でも、変えられなかったのね」

今、こいつは何て言ったんだろう? 優しげな声色だったけど、よく聞き取れない。

空母水鬼「おやすみなさい、瑞鶴……」

次の瞬間には敵空母が発艦。もう動く気力もないし、私はただ空を睨んで覚悟を決めるだけ。

翔鶴姉、先に逝くね。飛龍先輩、最後まで、言うことを聞かない駄目な後輩でごめんなさい。
瑞鳳、葛城……二人になら、空母の未来を任せられる。だからどうか、無事でいて……



加賀さん……さようなら。

210: 2016/01/03(日) 01:08:46.63 ID:Wu9x5Ox1o

瑞鶴「や、やだ……沈みたくない……沈みたく……ない、よ」

やっぱ無理! 怖いよ……覚悟なんて、出来るわけない!
やだ、やだよ、氏にたくない! 助けて……加賀さん、助けてよ!!!
 
加賀さん……! 加賀さん、加賀さん! 加賀さん!

瑞鶴「加賀さーーーーーん!!!」

つづく!

211: 2016/01/03(日) 01:10:41.01 ID:Wu9x5Ox1o

設定

飛龍(24):二航戦の片翼で非常に練度の高い正規空母。瑞鶴を妹のように可愛がっている。
飄々としているが仲間を想う気持ちは誰よりも強い。

ビスマルク(23):西方攻略後に軍に加わった、ドイツの戦艦娘。雷装を備え、昼夜問わず比類なき火力を発揮する。
非常にプライドが高いが自らが認めた相手には協力を惜しまない。

葛城(17):瑞鶴の後輩。彼女を目指して鍛練を積んだ結果、ル級改すら倒せるようになった。
瑞鶴のことはまだまだ諦めていない、とことん一途な性格。

瑞鳳(19):瑞鶴の後輩。彼女を慕う気持ちは相変わらず。似たような境遇の葛城とは気が合い、共に行動していることが多い。

戦艦レ級:地獄から蘇った悪魔。エリートクラスになって攻撃方法もパワーアップしているが再生怪人は弱い法則で瞬殺される。
実際のゲームではここまで上手く行くことは稀で、相変わらず5-5攻略を阻む強敵として立ち塞がっている。

空母水鬼:レ級撃沈後に機動部隊旗艦を引き継いだ謎の深海棲艦。瑞鶴のこともよく知っている様子。

212: 2016/01/03(日) 01:12:11.84 ID:Wu9x5Ox1o
今回はここまでです。今後もスローペースで修正、投下作業を進めたいと思います。
それではここまで読んで下さった方、レス下さった方、ありがとうございました。

加賀「瑞鶴は私のこと好きよね?」 瑞鶴「愛してます!!!」【その5】

引用: 【瑞加賀】加賀「瑞鶴は私のこと好きよね?」 瑞鶴「愛してます!!!」